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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D
管理番号 1276876
審判番号 不服2012-17765  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-12 
確定日 2013-07-17 
事件の表示 特願2006-312307「美容用フェイスマスクの包装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月 5日出願公開、特開2008-125685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年11月18日の出願であって、平成24年6月1日付けで拒絶査定がなされた。本件は、同査定を不服として平成24年9月12日に請求された拒絶査定不服審判事件であって、請求と同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされた。
その後、当審において平成25年2月14日付けで拒絶理由を通知したところ、同年4月22日付けで手続補正書及び意見書が提出された。

2 本願発明
平成25年4月22日付け手続補正書による補正は、いわゆる新規事項を含まない適法な補正であるから、本願の請求項1に係る発明は、前記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの発明であって、その発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「化粧水を含まないフェイスマスク(1)において、圧縮手段を用いないで、縦又は横に半折し、この半折したフェイスマスク(1′)を、一方から他方に向けてロール状に巻いてスティック状に形成し、該ロール状に巻いてスティック状に形成したフェイスマスク(1″)のみを、個々に細筒状の包装袋(X)に入れて包装することを特徴とする美容用フェイスマスクの包装方法。」

3 引用例
上記本願発明について、当審において通知した拒絶理由で提示した本願出願前に日本国内において頒布された刊行物は特開平10-81612号公報(以下「引用例」という。)であって、その記載事項は以下のとおりである。
(1)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以下の課題が克服され手軽に携行出来、何時でも、何処でも手軽にスキンケアが出来るフェイスマスク・パックの提供を課題とするものである。
(1)できるだけコンパクトで、嵩張らない形態にすること
(2)使うときには広げやすく、扱いやすいこと
(3)薬液を添加する手間を無くすこと、あるいは適量の化粧水やスキンケア薬剤を容易に含浸させられることという課題を克服したフェイスマスク・パックを提供することを目的とする。」

(2)「【0007】本発明の携帯用フェイスマスク・パックは、スティック状に巻いてあるため、嵩張らず、小さなバッグやコスメティックファンデーションケースに必要な数だけを入れて持ち歩くことができる。また、実質上乾燥した状態でシール包装されてなるスティック形携帯用フェイスマスク・パックは、包装袋を液充填用の容器として使用できるため好きな化粧水を好きな量だけ含浸させることができる。また、適当量のスキンケア薬液を添加、飽充し、シール包装した携帯用フェイスマスク・パックは、スキンケアに必要な材料が1パックになっており、シール包装の包装を破りスティック状体になっている布帛を広げて顔に当てるだけで、スキンケアができる優れたものである。」

(3)「【0013】
【実施例】以下実施例を示すが、この例にのみ本発明が限定されるものではない。
〔実施例1〕レーヨン短繊維(単糸デニール2.5d、41mm長)70重量%とポリエステル短繊維(単糸デニール1.7d、38mm)30重量%の混合湿式スパンレース不織布を布帛として用い、図1に示す製造工程によりスティック状体のフェイスマスク・パックを製作した。
【0014】前記の混合湿式スパンレース不織布を幅250mmのスリットロール(1)に加工した。このスリットロール(1)をスティックタイプ・ウエットロール製造設備(進和技研社製)にかけ、図中矢印の方向に向かう一連の加工を経て携帯用フェイスマスク・パックを製作した。すなわち、スリットロール(1)から引き出された不織布スリット(2)は先ず図1で示す工程中、その中心線に沿って2つに折り(3)を形成する工程、ついで、回転する1対のロータリー打ち抜きロールにより、図中点線(4)に沿って2つ折りフェイスマスク(5)の形が打ち抜かれる。このように、半分に折り畳まれた形状で打ち抜きフェイスマスク(5)は、図2で示される展開形状(5’)を有するフェイスマスクである。次に、更に半分に折り畳まれ、細長い状態になった折り畳みフェイスマスクシート(6)を先端から直径約10mm、長さ68mmの略円筒状のスティック状体(7)に巻きあげた。このときスキンケアローションをノズルを用いて添加、飽充することもできる。このようにして得たフェイスマスクのスティック状体をアルミラミネートシートを用いて、シール(9)、(9’)及び(9’’)してパック包装して同様の携帯用フェイスマスク・パック(8)を得た。この実質上乾燥した状態でシール包装されてなるスティック形携帯用フェイスマスク・パック(8)は、ちょうどスティックシュガーのような形状を有し、持ち運びにも邪魔にならず、旅先などで区分包装されたスキンケアローションを含浸させて手軽に使えるスキンケアパックであった。また、適当量のスキンケア薬液を添加、飽充し、シール包装した携帯用フェイスマスク・パック(8)は、シール包装の包装を破りスティック状体になっている布帛を広げ顔に当てるだけで、スキンケアができるものであった。
【0015】実質上乾燥した状態でシール包装されてなるスティック形携帯用フェイスマスク・パックを作る際には、円筒状のスティック状体(7)に巻き上げるとき、またはその前後の工程にて少量の香料などをノズルを用いて添加することもできる。その場合は、後から使用者がスキンケアローションなどを浸潤できるように水分量を小さく調節することが肝要である。…(以下略)」

(4)「【0016】
【発明の効果】本発明の携帯用フェイスマスク・パックは、スティック状体であり、かつ一個一個が独立して包装されているので、嵩張らず、携行に便利であり、旅行等の際には必要な数量を携行することができるとともに、衛生的であり使用時には簡単に拡げることができる。さらに、実質上乾燥した状態でシール包装されてなるスティック形携帯用フェイスマスク・パックは、包装袋をスキンケア液充填用の容器として使用できるため、スペースもとらずに適当な量のスキンケア液を含浸させることができ、また、適当量のスキンケア薬液を添加、飽充し、シール包装した携帯用フェイスマスク・パックは、何処ででも簡単に、しかも何の準備も必要とせずにスキンケアができる。本発明の携帯用フェイスマスク・パックは、前記の優れた利便性に加えて、包装材料の節減も可能にするという利点がある。」

(5)【図1】


上記記載事項(1)?(5)を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「縦に半分に折り畳まれた形状で打ち抜かれたフェイスマスク(5)を更に縦に半分に折り畳み、細長い状態になった折り畳みフェイスマスクシート(6)を先端から巻きあげることにより、直径約10mm、長さ68mmの略円筒状の実質上乾燥した状態のフェイスマスクのスティック状体(7)を得て、当該スティック状体(7)を一個一個独立してシール包装する方法。」

4 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「実質上乾燥した状態のフェイスマスク」が、使用時にスキンケアローション即ち化粧水を含浸して使用されるものであることは明らかであるから、本願発明の「化粧水を含まないフェイスマスク(1)」に相当する。
また、引用発明の「一個一個独立して」は、本願発明の「個々に」に相当し、引用発明が「直径約10mm、長さ68mmの略円筒状の」「スティック状体(7)を」「シール包装する」ことからして、シール包装袋として細筒状の袋が形成されることは明らかであるし、引用発明のフェイスマスクが美容用であることは技術常識である。
そして、引用発明の「縦に半分に折り畳まれた形状で打ち抜かれたフェイスマスク(5)を更に縦に半分に折り畳み、細長い状態になった折り畳みフェイスマスクシート(6)を先端から巻きあげる」という事項と、本願発明の「圧縮手段を用いないで、縦又は横に半折し、この半折したフェイスマスク(1′)を、一方から他方に向けてロール状に巻いてスティック状に形成」するという事項を対比すると、引用発明は、フェイスマスクを折り畳み、それを巻き上げることによってスティック状としていることは明らかといえるから、前記2つの事項は、「フェイスマスクを折り畳み、この折り畳んだフェイスマスクを一方から他方に向けてロール状に巻いてスティック状に形成」する点で一致するといえる。

そうすると、本願発明と引用発明は、
「化粧水を含まないフェイスマスク(1)において、フェイスマスクを折り畳み、この折り畳んだフェイスマスク(1′)を、一方から他方に向けてロール状に巻いてスティック状に形成し、該ロール状に巻いてスティック状に形成したフェイスマスクを個々に細筒状に包装する美容用フェイスマスクの包装方法。」である点で一致しており、次の点で相違する。
〈相違点1〉
フェイスマスクをスティック状に形成する際、本願発明は「圧縮手段を用いない」とともに、折り畳みに関して「縦又は横に半折し」たのみであるのに対し、引用発明は、圧縮手段を用いているか否か明らかでなく、また、折り畳みに関して、縦に半分に折り畳まれたものを更に縦に半分に折り畳んでいる点。
〈相違点2〉
包装態様に関して、本願発明はフェイスマスク「のみを」、「細筒状の包装袋(X)に入れて包装」しているのに対し、引用発明は、フェイスマスクのみが包装されるものであるかどうか明らかでなく、シール包装を採用して細筒状に包装している点。

5 相違点についての検討と判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用例には、フェイスマスクの折り畳み工程において、「回転する1対のロータリー打ち抜きロールにより、……2つ折りフェイスマスク(5)の形が打ち抜かれる」(上記3(3)の【0014】参照)と記載され、「ロール」を用いる旨の記載はあるものの、圧縮することを意図して「ロール」を用いることは記載されていないし、不織布を折り畳むに際し、特段の圧縮手段を用いなくとも折り畳みが可能なことは、当業者に明らかである。また、各工程のいずれにも圧縮手段を用いる旨の記載はなく、引用例に記載された「使うときには広げやすく、扱いやすいこと」という解決しようとする課題(上記3(1)の【0003】参照)からして、引用発明は、圧縮減容することなく、折り畳んでロール状に巻いてスティック状に形成するものと認められる。そうすると、フェイスマスクをスティック状に形成する際、「圧縮手段を用いない」ように構成することは、引用例に記載されているに等しい、もしくは、引用発明から当業者が容易に想到し得る事項である。
また、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、フェイスマスクの折り畳みを「縦又は横に半折」するのみとすることに格別の技術的意義を見いだすことはできない上、引用発明をそのような半折のみとするように変更する、すなわち、「更に縦に半分に折り畳」む行程を省略するように変更することができない格別の事情を見いだすこともできないから、引用発明におけるフェイスマスクをロール状に巻いてスティック状に形成する前段階であるフェイスマスクを折り畳む回数は、フェイスマスク包装体をどの程度コンパクトにするか、フェイスマスクを展開する際の容易性等々を考量の上、当業者が適宜選択することができる設計的事項にすぎない。

(2)相違点2について
使用する化粧品等が、個々人で嗜好が分かれるものであることは一般的な事項であるし、引用例には「また、実質上乾燥した状態でシール包装されてなるスティック形携帯用フェイスマスク・パックは、包装袋を液充填用の容器として使用できるため好きな化粧水を好きな量だけ含浸させることができる。」(上記3(2)の【0007】参照)と記載されているとおり、好きな化粧品を好きな量だけ含浸させ得ることも示唆されている。加えて、引用例には、従来の技術として「最近では、携帯用と称して、フェイスマスク布帛を固くプレスし、小さくして持ち運びに便利にしたものも知られているが、しかしこれも薬液を別に小分けして持ち運び、使用するときには含浸容器や計量具などを用意する必要がある製品でしかなく、結果として利便性に欠けるものであった。」(段落【0002】参照)と記載されているとおり、フェイスマスクとは別に用意した化粧薬液をフェイスマスクに含浸させて用いる態様は、従来から良く知られている態様である。そうすると、引用例に記載されている、シール包装袋にスキンケアのための液体を区分けして一体とする態様に代えて、使用者個々人が好みに応じて用意した化粧料を用いることを前提として、スキンケアのための液体の一体化を省略することは、当業者が適宜なし得る設計的事項であるといえる。したがって、フェイスマスクのみを包装する点に格別の困難性を見出すことはできない。
また、物品を包装する際、予め用意した包装袋内に物品を入れて包装することは慣用されている包装態様であるから、引用発明のフェイスマスクをシール包装するに際し、最終的な包装形状である細筒形状の包装袋を用意し、その包装袋内にロール状に巻いてスティック状に形成したフェイスマスクを入れ、開口部をシールしてシール包装するよう構成する程度のことは、当業者ならずとも格別の困難なくなし得る事項であるし、そのような包装態様を採用する点に格別の技術的意義を見いだすこともできない。

(3)小括
以上検討のとおりであるから、本願発明は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-08 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-27 
出願番号 特願2006-312307(P2006-312307)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 蓮井 雅之
関谷 一夫
発明の名称 美容用フェイスマスクの包装方法  
代理人 三原 靖雄  

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