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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1277441 |
審判番号 | 不服2011-24388 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-11 |
確定日 | 2013-07-29 |
事件の表示 | 特願2011- 51890「水不溶性食物繊維含有果汁飲料及びその製造方法、並びに、果実感改善方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日出願公開、特開2012-187019〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年3月9日の出願であって、平成23年6月9日付け拒絶理由通知に対して、同年7月19日付けで意見書が提出された後、同年8月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月11日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで特許請求の範囲の全文についての手続補正がなされたものである。 第2 平成23年11月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成23年11月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の請求項1に記載された発明 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項5の 「【請求項5】 水不溶性固形物として水不溶性食物繊維を含有する、水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法であって、 粘度A(cP)を10?80に、水不溶性固形物の遠心沈殿量B(%)を10?25に、且つ、該粘度Aと該遠心沈殿量Bを下記式(1)の関係を満たすように、調整する工程、を少なくとも有する、 0.05A+10≦B≦0.25A+10 ・・・(1) 水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法。」 を、 「【請求項3】 水不溶性固形物として水不溶性食物繊維を含有する、水不溶性食物繊維含有果汁飲料が、容器内に封入された容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法であって、 粘度A(cP)を10?80に、水不溶性固形物の遠心沈殿量B(%)を10?25に、且つ、該粘度Aと該遠心沈殿量Bを下記式(1)の関係を満たすように、調整する工程、を少なくとも有し、 0.05A+10≦B≦0.25A+10 ・・・(1) 前記調整する工程において、前記飲料の総量に対する前記水不溶性固形物の含有割合が以下の関係を満たす水不溶性食物繊維含有果汁飲料を作製する、 1.7mm以上 :0.0?3.0% 1.7mm未満 1.0mm以上 :0.2?4.0% 1.0mm未満 0.5mm以上 :0.5?4.0% 経ストロー飲食用の容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法。」 とする補正を含むものである。 上記補正は、補正前の請求項が削除されたことに伴い、補正前請求項5を請求項3に繰り上げ、発明を特定するために必要な事項である「水不溶性食物繊維含有果汁飲料」が「容器内に封入された容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料」であり、かつ、「経ストロー飲食用の容器詰」のものであること、さらに「調整する工程において、前記飲料の総量に対する前記水不溶性固形物の含有割合が以下の関係を満たす水不溶性食物繊維含有果汁飲料を作製する、 1.7mm以上 :0.0?3.0% 1.7mm未満 1.0mm以上 :0.2?4.0% 1.0mm未満 0.5mm以上 :0.5?4.0%」ことに限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)について、以下に検討する。 2 引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された刊行物1(原査定の引用文献1)、刊行物2(原査定の引用文献2)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。以下、同じ。 (1)刊行物1:特開平10-210956号公報の記載事項 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 果実パルプ質の磨砕物と、果汁とを含有する果実飲料であって、長手方向の長さが500 μm以上のパルプ質の断片が残っており、全体の粘度が15?50cps とされていることを特徴とする果実飲料。 【請求項2】 前記果実パルプ質及び前記果汁が、ミカン、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、モモ、ナシ、ウメ、グアバ、トマト、スイカから選ばれた少なくとも一種から得られたものである請求項1記載の果実飲料。 【請求項3】 前記果実パルプ質の磨砕物及び前記果汁の他に、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを含有する請求項1又は2記載の果実飲料。 【請求項4】 回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を磨砕処理し、これに果汁と、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整し、殺菌した後、容器に充填することを特徴とする果実飲料の製造法。 【請求項5】 回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を含有する果汁を磨砕処理し、これに糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整し、殺菌した後、容器に充填することを特徴とする果実飲料の製造法。 【請求項6】 前記果実パルプ質及び前記果汁が、ミカン、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、モモ、ナシ、ウメ、グアバ、トマト、スイカから選ばれた少なくとも一種から得られたものである請求項4又は5記載の果実飲料の製造法。」 (1b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、果実パルプ質の磨砕物と果汁とを含有する果実飲料及びその製造法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、ミカン、グレープフルーツ、リンゴ、ブドウ、イチゴ等の果実を用いて、例えば、果汁飲料、果肉飲料、果肉粒入り果実飲料等の種々の果実飲料が製造され、市販されている。 【0003】果汁飲料は、果実を搾汁した後、果実パルプ質等を除去して得られる果汁を用い、必要に応じて、水、糖類、酸味料、香料等を添加して製造されており、低粘度で、のどごしがよく、清涼感のある飲料である。 【0004】また、果肉飲料は、果肉全体をパルプ質を含んだ状態でホモゲナイザー等を用いて破砕し、粘稠性の高い果汁としたもので、一般にネクターと呼ばれている。この場合、ナシ、グアバなどの石細胞を有する果実の場合には、ホモゲナイザーにかける前に、回転砥石等により磨砕処理を行うこともある。 【0005】果肉粒入り果実飲料は、例えば「粒入りオレンジ」などと呼ばれているもので、オレンジのさのうや、パイナップルの細片物などを、粒状のまま果汁と一緒に含有させた果実飲料である。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、果汁飲料は、果実に含まれる豊富な繊維質が除去されるので、種々の生理活性効果が期待される繊維質を有効利用できず、また、サラッとしすぎて、飲みごたえに乏しいという問題があった。 【0007】一方、ネクター等の果肉飲料は、粘度が高く、どろりとしているので、のどごしが悪く、飲料としての清涼感に欠けるという問題があった。なお、果肉飲料の一般的な粘度は100cps前後である。 【0008】更に、果肉粒入り果実飲料は、粘度が低くサラッとした果汁と、さのうや果肉の細片物とが、口の中で分離しやすく、異物感があるという問題があった。また、この果実飲料を充填した缶や瓶から飲む際に、さのうや果肉の細片物が飲み口に付着しやすく、飲みにくいという問題もあった。 【0009】本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、果実に含まれる有益な繊維質を含有し、比較的さらりとしてのどごしがよく、異物感が少ない果実飲料及びその製造法を提供することにある。」 (1c)「【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の第1は、果実パルプ質の磨砕物と、果汁とを含有する果実飲料であって、長手方向の長さが500 μm以上のパルプ質の断片が残っており、全体の粘度が15?50cps とされていることを特徴とする果実飲料を提供するものである。なお、本発明における粘度は、20℃の条件下でB型粘度計を用いて測定した粘度を意味する。 【0011】本発明の第2は、前記第1の発明において、前記果実パルプ質及び前記果汁が、ミカン、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、モモ、ナシ、ウメ、グアバ、トマト、スイカから選ばれた少なくとも一種から得られたものである果実飲料を提供するものである。 【0012】本発明の第3は、前記第1又は2の発明において、前記果実パルプ質の磨砕物及び前記果汁の他に、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを含有する果実飲料を提供するものである。 【0013】本発明の第4は、回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を磨砕処理し、これに果汁と、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整し、殺菌した後、容器に充填することを特徴とする果実飲料の製造法を提供するものである。 【0014】本発明の第5は、回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を含有する果汁を磨砕処理し、これに糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整し、殺菌した後、容器に充填することを特徴とする果実飲料の製造法を提供するものである。 【0015】本発明の第6は、前記第4又は5の発明において、前記果実パルプ質及び前記果汁が、ミカン、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、モモ、ナシ、ウメ、グアバ、トマト、スイカから選ばれた少なくとも一種から得られたものである果実飲料の製造法を提供するものである。 【0016】本発明の第1によれば、果実パルプ質の磨砕物と、果汁とを含有する果実飲料であって、長手方向の長さが500 μm以上のパルプ質の断片が残っており、全体の粘度が15?50cps とされているので、繊維質に富んでいるにも係らず、異物感が少なく、比較的さらりとしてのどごしがよく、清涼感もあって飲みやすい果実飲料を提供できる。 【0017】本発明の第2によれば、果実パルプ質及び果汁が、ミカン、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、モモ、ナシ、ウメ、グアバ、トマト、スイカから選ばれた少なくとも一種から得られたものであるので、原料果実を選択することによって、種々の果実飲料を提供することができる。 【0018】本発明の第3によれば、果実パルプ質の磨砕物及び果汁の他に、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを含有するので、果実の種類等に応じて、粘度、甘さ、酸味度、風味等を調整することができる。 【0019】本発明の第4によれば、回転砥石を有する磨砕装置を用い、回転砥石間隔0.5?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を磨砕処理することにより、長手方向の長さが500 μm以上のパルプ質の断片が残っているが、異物感を感じることがない程度に微細化されたパルプ質を含有する果実飲料を得ることができる。また、これに、果汁と、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整することによって、比較的さらりとしてのどごしがよく、清涼感もあって飲みやすい果実飲料を得ることができる。 【0020】本発明の第5によれば、果実パルプ質を含有する果汁を上記と同じ条件で磨砕処理することにより、上記と同様に、長手方向の長さが500 μm以上のパルプ質の断片が残っているが、異物感を感じることがない程度に微細化されたパルプ質を含有する果実飲料を得ることができる。また、これに糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整することにより、比較的さらりとしてのどごしがよく、清涼感もあって飲みやすい果実飲料を得ることができる。 【0021】本発明の第6によれば、果実パルプ質及び果汁として、ミカン、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、モモ、ナシ、ウメ、グアバ、トマト、スイカから選ばれた少なくとも一種を用いることにより、種々の果実飲料を提供することができる。」 (1d)「【0022】 【発明の実施の形態】本発明において、果実パルプ質及び果汁の原料となる果実は、通常、果実飲料に用いられているものであれば特に限定されず種々のものを用いることができ、トマト、スイカ等も含む広い意味での果実であればよい。特に、ミカン、グレープフルーツ、レモン、リンゴ、ブドウ、イチゴ、パイナップル、モモ、ナシ、ウメ、グアバ、トマト、スイカ等が好ましく用いられる。 【0023】本発明の果実飲料の原料としては、これらの果実から、果皮、大きな種等の不可食部分を除去し、チョッパーで細断し、パルパー等で搾汁して得られる、細片化された果実パルプ質と果汁との混合物(粗搾汁液)をそのまま用いることもでき、また、この果実パルプ質と果汁との混合物からフィニッシャー等で篩別することにより分離された果汁と果実パルプ質とをそれぞれ別々に用いることもできる。なお、上記のような方法で分離された果汁と果実パルプ質は、業務用として市販されているので、それらを別々に購入して原料とすることができる。 【0024】本発明の果実飲料の製造法においては、上記のような方法で果汁から分離された果実パルプ質を必要に応じて1?2重量倍の水を加えて磨砕処理した後、この磨砕処理物と、果汁とを混合してもよく、あるいは、上記果実パルプ質と果汁との混合物(粗搾汁液)をそのまま磨砕処理して、磨砕された果実パルプ質と果汁との混合物を得るようにしてもよい。 【0025】磨砕処理は、回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、より好ましくは1?2.5mm 、回転速度300 ?2000rpm の条件で行う。これによって、果実パルプ質が磨砕されて異物感の少ない断片となるのが、長手方向の長さが500 μm以上の断片が残った状態となる。回転砥石間隔が0.5 未満では、果実パルプ質が磨砕されすぎてペクチン等が溶解してネクターのような粘稠性の高い飲料となってしまい、回転砥石間隔が3mmを超えると、大きすぎる断片のものが残って異物感が発生するので好ましくない。また、回転速度300rpm未満では、果実パルプ質の磨砕効果が十分でなく、2000rpm を超えると必要以上に果実パルプ質が磨砕されてしまうので好ましくない。 【0026】なお、回転砥石を有する磨砕装置としては、「MKZA15-30 」(商品名、増幸産業株式会社製)等を用いることが好ましい。また、果実パルプ質を含有する水又は果汁の、磨砕装置への供給量は、50?300 リットル/時間とすることが好ましい。 【0027】果実パルプ質を磨砕処理した後、果実パルプ質を含有する果汁を用いた場合にはそのまま、果実パルプ質のみを磨砕処理した場合にはこれに果汁を混合する。そして、いずれの場合も、更に糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整する。 【0028】上記において、糖類としては、砂糖、異性化糖、果糖、ブドウ糖、糖アルコール等が好ましく用いられる。また、酸味料としては、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が好ましく用いられる。更に、香料としては、天然香料、合成香料等を用いることができる。 【0029】次いで、通常の果実飲料と同様にして、例えばプレートヒータ等の瞬間加熱殺菌装置を用い、85?95℃の温度下に、10?60秒間保持して加熱殺菌を行い、常法に従って瓶、缶等の容器に充填することにより、本発明の果実飲料を得ることができる。 【0030】こうして得られた本発明の果実飲料は、果実パルプ質の磨砕物と、果汁とを含有する果実飲料であって、長手方向の長さが500 μm以上、好ましくは500 μm?20mmのパルプ質の断片が残っており、全体の粘度が15?50cps 、好ましくは20?30cps とされている。この果実飲料は、繊維質に富んでいて、しかも異物感が少なく、比較的さらりとしてのどごしがよく、清涼感もあって飲みやすいという特徴を有している。 【0031】なお、果実パルプ質の磨砕物の長手方向の長さが全て500 μm未満になるように磨砕した場合は、パルプ質に含まれるペクチン質などが溶解して粘度が高くなり、どろっとしてのどごしが悪くなる。また、果実パルプ質の磨砕物の長手方向の長さが20mmを超えるものが含まれていると、異物感が発生するので好ましくない。 【0032】また、全体の粘度が15cps 未満の場合には、サラッとしすぎて、飲みごたえが十分でなく、また、果実パルプ質の異物感が強くなるので好ましくない。更に、全体の粘度が50cps を超えると、どろっとしてのどごしが悪くなり、清涼感もなくなるので好ましくない。」 (2)刊行物2:国際公開第2005/067740号の記載事項 (2a)「[0002]果汁を含有する果汁飲料としては、これまで、柑橘類、リンゴ、ブドウ等の果汁を用いて製造されるものが多く知られていた。また、その製造技術としては、果汁の品質向上や果汁を含む飲料組成の検討等によるものが多かった。しかしながら、近年の嗜好の多様化に伴い、果汁以外の素材を含む果汁飲料が広く市販されるようになっている。このような果汁飲料としては、具体的には、例えば、果肉を用いるタイプのもの(果肉飲料)、果粒を用いるタイプのもの(果粒入り果汁飲料)、パルプを用いるタイプのもの(パルプ入り果汁飲料)等を挙げることができる。 [0003]上記果肉飲料は、果肉を加熱破砕して裏ごししてクリーム状にしたピューレを用い、水、糖類、酸味料、香料等を添加した後に、ホモゲナイザー処理して製造される。その特徴は、粘調(100cps程度)で甘く濃厚感があり、口当たりがよい、すなわち「とろみ」という食感を実現できるという点であり、例えば、ネクター(登録商標)等を挙げることができる。なお、果肉飲料で使用される果実としては、モモ、アンズ、ナシ、リンゴ、ミカン、バナナ、グァバ、パッションフルーツ、およびこれらの混合品を挙げることができるが、その主流はモモである。 ・・・略・・・ [0005]次に、上記果粒入り果汁飲料は、果汁に加えて、果粒すなわちさのうや果肉を細かくしたものを含有する飲料である。その特徴は、「さらり」とした口当たりでありながら、果粒由来の果実感を楽しめるという点であり、例えば、いわゆる「つぶつぶみかんジュース」を挙げることができる。 [0006]次に、上記パルプ入り果汁飲料は、果汁に加えてパルプ分を含有する飲料である。その特徴は、「さらり」とした口当たりでありながら、生搾り風の果実感を楽しめるという点であり、例えば、粘度調整のためにパルプを加える技術が知られている。」 (2b)「[0018]本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも、パルプを微細化する際に、その粒度画分を規定するとともに、好ましくは、粘度および/または微細パルプの含有量、さらには製造過程における微細化条件(特にホモゲナイザー圧力)を規定することによって、微細パルプ成分と液状成分とが渾然一体となり、「とろみ」と「ざらつき」という二つの食感を同時かつ制御可能に実現した新しい食感を示す飲料が得られることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。」 (2c)「[0066]具体的には、本発明にかかるパルプ飲料においては、微細パルプ成分の含有量は、パルプ飲料全重量のうち、その下限が10重量%以上であればよく、15重量%以上であることが好ましい。10重量%未満であれば、パルプ飲料に十分な粘度を与えることができなくなり、「とろみ」の食感が不十分となるため好ましくない。一方、微細パルプ成分の含有量の上限は特に限定されるものではないが、飲料として好ましい流動性を有し、かつ、上記二つの食感を同時に実現するためには、50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましく、40重量%以下がより好ましい。 [0067]ここで、微細パルプ成分の含有量を製造方法から規定することもできる。具体的には、例えば、微細パルプが、ホモゲナイザーにより原料パルプを破砕したものである場合には、ホモゲナイザー圧力からその上限を規定することができる。なお、この点については、後述する(3)製造方法にて説明する。」 (2d)「[0072]<パルプ微細化工程> 本発明で行われるパルプ微細化工程は、前述した原料パルプを微細化する工程であれば特に限定されるものではないが、具体的には、原料パルプを破砕する手法と、原料パルプを摩砕する手法とを挙げることができる。前者の手法ではホモゲナイザーが用いられるのに対して、後者の方法では摩砕機が用いられる。 [0073]上記ホモゲナイザー(均質化装置、均質機)は特に限定されるものではなく、公知のものを好適に用いることができる。 [0074]ホモゲナイザーにより原料パルプを微細化する場合の条件も特に限定されるものではないが、そのホモゲナイザー圧力(ホモ圧と略す)は、総圧力の下限が5kg/cm^(2)以上であることが好ましく、50kg/cm^(2)以上であることがより好ましい。一方、上限については特に限定されるものではないが、微細化効率等から考えると300kg/cm^(2)以下であればよく、100kg/cm^(2)以下であることが好ましい。ホモ圧の特に好ましい範囲としては、50?100kg/cm^(2)の範囲内を挙げることができる(実施例参照)。 [0075]ホモ圧を上記の範囲内とすることによって、原料パルプの微細化の程度、すなわち微細パルプの大きさの範囲や粒度分布を制御することができる。ホモ圧が上記範囲内であれば、「ざらつき」の食感が好ましいものとすることができる。 [0076]もちろん、ホモ圧が上記範囲内である場合、微細化の条件によっては、微細パルプの大きさの範囲が、前記(1)微細パルプ含有飲料の成分で述べた範囲から一部外れることもありうるが、この場合であっても、ホモ圧が上記範囲内に規定されることで、「とろみ」と「ざらつき」という2つの食感を十分両立させることができる。 [0077]次に、上記摩砕機(摩砕装置)も特に限定されるものではなく、公知のものを好適に用いることができる。例えば、回転砥石を有する構成構成のものが挙げられる。摩砕機により原料パルプを微細化する場合の条件も特に限定されるものではなく、公知の条件を好適に用いることができる。」 3 対比・判断 刊行物1の上記記載事項(特に上記(1a))から、刊行物1には、 「回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を磨砕処理し、これに果汁と、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整し、殺菌した後、容器に充填する果実飲料の製造法。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。 そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。 (ア)本願補正発明の「水不溶性固形物」について、本願明細書を参照すると、段落【0034】に「本実施形態の水不溶性食物繊維含有果汁飲料に含まれる水不溶性固形物は、果汁などの液状成分に溶解せずに、該液状成分中で浮遊、分散或いは沈殿している固体状成分である。」と記載され、さらに段落【0035】に「上記の水不溶性固形物の主成分は、果実由来の水不溶性食物繊維であり、これには、ストレート果汁および濃縮果汁に若干含まれる水不溶性食物繊維の他、果実パルプ由来の水不溶性食物繊維が含まれる。」と記載されている。 また、「果実パルプ」について、本願明細書には、段落【0036】に「果実パルプは、一般的には、上述した原料となる果実から、果汁等の液状成分及び果皮や種等を分離して得られるパルプ質のものであり、果実に含まれる水不溶性食物繊維を含有する。果実パルプは、通常、原料となる果実を粉砕機や摩砕機を用いて粉砕或いは摩砕し、さらに篩別、裏濾し、濾過及び/又は遠心分離などの工程を経ることで得ることができる。例えば、果実が柑橘類の場合には、果汁を搾汁して得られるじょうのう膜などの薄皮部分を粉砕して得られるものが挙げられる。なお、本実施形態において用いる果実パルプは、果汁を含んでいてもよく、また、例えば、柑橘類のさのう(砂じょう)、パイナップルの細片物、果皮や種等を含んでいてもよい。本実施形態においては、果実パルプ(水不溶性食物繊維)は、オレンジ等の柑橘類の果実由来のパルプ(水不溶性食物繊維)であることが好ましい。本実施形態における果汁パルプは、上記果実由来のパルプのいずれか1種を単独で用いたもの、或いは、2種以上を併用したもののいずれであっても構わない。2種以上を併用する場合、各果実パルプの割合は、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。」と記載されている。 そうすると、刊行物1発明の「果実パルプ質」は、本願明細書に記載された「果実パルプ」に相当するものであって、水不溶性固形物に含まれる水不溶性植物繊維の一種ということができ、本願補正発明の「水不溶性固形物」としての「水不溶性食物繊維」に含まれるものである。 (イ)刊行物1発明の「果実飲料」は、磨砕処理した「果実パルプ質」と、「果汁」と、「糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合」したものである。 そして、本願補正発明の「水不溶性食物繊維含有果汁飲料」は、上記(ア)のとおり、水不溶性固形物に含まれる水不溶性植物繊維の一種として「果実パルプ」を含むものであり、さらに本願明細書の段落【0037】に「本実施形態で用いる果実パルプは、水不溶性食物繊維含有果汁飲料の粘度および遠心沈殿量を所定の範囲に調整する観点から、原料パルプを破砕或いは摩砕する又は篩い分けする等してサイズ(繊維長)が原料段階で調整されたもの、飲料製造工程前あるいは工程中で調整されたものが好ましい。原料パルプの破砕或いは摩砕又は篩い分けは、当業界で公知の手法にしたがって行えばよく、特に限定されない。例えば、原料パルプをチョッパーで細断した後にパルパー等で搾汁して得られる、細片化された果実パルプ質と果汁との混合物(粗搾汁液)をそのまま用いることもでき、また、この果実パルプ質と果汁との混合物からフィニッシャー等で篩別することにより分離された果実パルプ質又はこれをさらに破砕又は摩砕して得られる果実パルプ質を用いることもできる。なお、上述した果実パルプの調製は、当業界で公知の手法にしたがっておこなうことができるが、市販品を入手することによって省略することができる。」と記載されていることから、磨砕処理した「果実パルプ」であってもよいことが記載されている。なお、摩砕と磨砕とは同義と解される。 さらに、本願明細書の段落【0045】には、「なお、本実施形態の水不溶性食物繊維含有果汁飲料は、上記の果汁原料、水不溶性固形物としての水不溶性食物繊維(果実パルプ)及び水以外に、当業界で公知の他成分を含んでいてもよい。かかる他成分としては、例えば、果糖ブドウ糖等の糖類、酸類等の酸味料、ソルビトールやアスパルテーム等の甘味料、アミノ酸類、電解質溶液、天然色素や合成色素等の着色料、ビタミン類、亜鉛、カルシウム、鉄、銅、マグメシウムなどのミネラル類などの強化剤あるいはその塩、pH調整剤、酸化防止剤、天然香料や合成香料等の香料、二酸化炭素などが挙げられる。」と記載されており、果汁原料と果実パルプ及び水以外に、糖類、酸味料、香料などを含んでもよいものである。 そうすると、本願補正発明の「水不溶性食物繊維含有果汁飲料」は、磨砕処理した「果実パルプ」と果汁及び水を含み、これ以外に糖類、酸味料、香料を含んでもよいものであるので、刊行物1発明の「果実飲料」は、本願補正発明の「水不溶性食物繊維含有果汁飲料」に相当する。 (ウ)刊行物1発明の「回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を磨砕処理し、これに果汁と、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整」することと、 本願補正発明の「粘度A(cP)を10?80に、水不溶性固形物の遠心沈殿量B(%)を10?25に、且つ、該粘度Aと該遠心沈殿量Bを下記式(1)の関係を満たすように、調整する工程、を少なくとも有し、 0.05A+10≦B≦0.25A+10 ・・・(1) 前記調整する工程において、前記飲料の総量に対する前記水不溶性固形物の含有割合が以下の関係を満たす水不溶性食物繊維含有果汁飲料を作製する、 1.7mm以上 :0.0?3.0% 1.7mm未満 1.0mm以上 :0.2?4.0% 1.0mm未満 0.5mm以上 :0.5?4.0%」こととは、 「粘度A(cP)を所定の範囲に調整する工程、を少なくとも有」する点で共通する。 (エ)本願補正発明の「容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法」について、本願の明細書の記載を参照すると、段落【0052】に「水不溶性食物繊維含有果汁飲料の容器への封入は、当業界で公知の手法により行うことができる。例えば、プレート式ヒータやチューブ式ヒーター等の加熱殺菌装置を用い、85?95℃の温度下に、10?60秒間保持して加熱殺菌を行い、常法にしたがって容器に充填することにより、容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料を得ることができる。」と記載されており、殺菌する工程を含むものである。 (オ)刊行物1発明は「容器に充填する果実飲料の製造法。」と記載されていることから、製造された果実飲料は、容器に充填されているといえ、また、上記(ア)(イ)からすると、刊行物1発明の「果実飲料の製造法」は、本願補正発明の「水不溶性固形物として水不溶性食物繊維を含有する、水不溶性食物繊維含有果汁飲料が、容器内に封入された容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法」に相当する したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。 (一致点) 水不溶性固形物として水不溶性食物繊維を含有する、水不溶性食物繊維含有果汁飲料が、容器内に封入された容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法であって、 粘度A(cP)を所定の範囲に調整する工程、を少なくとも有する、 容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法。 (相違点1) 「粘度A(cP)を所定の範囲に調整する工程」が、 本願補正発明では、「粘度A(cP)を10?80に、水不溶性固形物の遠心沈殿量B(%)を10?25に、且つ、該粘度Aと該遠心沈殿量Bを下記式(1)の関係を満たすように、調整する工程」、「0.05A+10≦B≦0.25A+10 ・・・(1)」であって、 「前記調整する工程において、前記飲料の総量に対する前記水不溶性固形物の含有割合が以下の関係を満たす水不溶性食物繊維含有果汁飲料を作製する、 1.7mm以上 :0.0?3.0% 1.7mm未満 1.0mm以上 :0.2?4.0% 1.0mm未満 0.5mm以上 :0.5?4.0% 」 であるのに対し、 刊行物1発明では、 「回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を磨砕処理し、これに果汁と、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整」するものである点。 (相違点2) 「容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料」が、本願発明では、「経ストロー飲食用」のものであるのに対し、刊行物1発明では、かかる規定はしていない点。 そこで、上記各相違点について、検討する。 (相違点1について) (ア)刊行物1発明の「回転砥石を有する磨砕装置を用いて、回転砥石間隔0.5 ?3mm、回転速度300 ?2000rpm の条件で、果実パルプ質を磨砕処理」することについて、刊行物1の記載を参照すると、この処理を行うことによって、果実パルプ質が磨砕されて異物感の少ない断片となるが、長手方向の長さが500 μm以上の断片が残った状態となること(1d)、そして、回転砥石間隔が0.5 未満では、果実パルプ質が磨砕されすぎてペクチン等が溶解してネクターのような粘稠性の高い飲料となってしまい、回転砥石間隔が3mmを超えると、大きすぎる断片のものが残って異物感が発生するので好ましくないこと(1d)、さらに、回転速度300rpm未満では、果実パルプ質の磨砕効果が十分でなく、2000rpm を超えると必要以上に果実パルプ質が磨砕されてしまうので好ましくないこと(1d)が記載されており、これらの記載からすると、果実パルプ質を磨砕処理することによって、適切な粘調性となり、異物感が生じない程度の果実パルプ質の長手方向の長さとするものである。 (イ)また、刊行物1発明は、この後にさらに「これに果汁と、糖類、酸味料、香料から選ばれた少なくとも一種と、水とを添加混合して、全体の粘度が15?50cps となるように調整」するものである。なお、この刊行物1発明の粘度の数値範囲は、本願補正発明の調整する工程における粘度の数値範囲に含まれる。 (ウ)そして、こうして調整されて、得られた果実飲料について、刊行物1には、長手方向の長さが500 μm以上、好ましくは500 μm?20mmのパルプ質の断片が残っており、全体の粘度が15?50cps 、好ましくは20?30cps とされたものであって、繊維質に富んでいて、しかも異物感が少なく、比較的さらりとしてのどごしがよく、清涼感もあって飲みやすいという特徴を有していることが記載されている(1d)。 (エ)ところで、一般に、飲料においては、様々な種類のものが流通しており、好みに応じて、清涼感が求められることもあれば、粘調性の高い、いわゆるネクターと呼ばれるようなものが望まれる場合もあることは、刊行物1や刊行物2の従来の技術として記載されているとおりである(1b,2a)。 そして、家庭などにおいて、オレンジなどを搾った、果実の生搾りなどもジュースなどもよく作られるものであり、流通する果汁飲料においても、こうした生の果実から作られた生ジュース風のものも嗜好されることは、よく知られるところであり、刊行物2には、果汁に加えてパルプ分を含有する、パルプ入り果汁飲料について、生搾り風の果実感を楽しめることが記載されている(2a)。 (オ)刊行物1発明で製造される果実飲料も、果汁に加えて果実パルプ質を含有する、パルプ入り果汁飲料であるので、刊行物1発明の、果実パルプ質を磨砕処理することによって、粘調性や果実パルプ質の長手方向の長さを調節し、これに果汁や水などを添加混合して粘度を調整することで、生の果実から作られた生ジュース風のものになるようにしようとすることは、当業者が容易に思い至ることといえる。 (カ)そして、その際、生の果実から作られた生ジュース風のものであるかの判断の基準となる、果実飲料における風味を評価する観点として、例えば刊行物1に記載された「のどごし」や「飲みごたえ」(1b,1d)、刊行物2に記載された「果実感」(2a)や、「口当たり」(2a)、粘調性と関連する「とろみ」や微細パルプに関連する「ざらつき」の食感(2a?2d)の他に、フレッシュ感、パルプ感、香立ち、広がり、まとまり、後味などが挙げられることは、下記刊行物A?Cにも記載されているとおりであって、日常生活において普通に誰しもが経験することである。 ・刊行物A(特開平6-335371号公報):「【0004】本発明は、繊維入り飲料に関する上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、繊維入り飲料の嗜好性を高めることができて、りんごをおろし金ですりおろした様なすりりんごそのものの自然な食感と喉ごしを与える繊維入り飲料であって、添加物と飲料の一体感がある繊維入り飲料を提供することである。」 ・刊行物B(特開2004-350503号公報)「【0006】【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記課題を克服するために鋭意検討を重ねた結果、みかん果汁、桃果汁、梅果汁を含む調合を行うことにより、酸味と甘味のバランスのとれた風味を持ち、さっぱりした後味の果汁入り飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」 「【0019】(官能試験) モニター30名により、官能試験をおこなった。結果、まず口の中に桃の香が広がり、続いてみかんと梅の酸味、さっぱりした感じが持続するとの多数の意見があった。まずいといった意見は聞かれなかった。」 ・刊行物C(特開2003-289836号公報)「【0002】【従来の技術】従来より、飲食品にはその嗜好性を高めるために様々な果汁が用いられている。また、近年の消費者の天然志向や本物志向のニーズに応えるため、果汁を含有する飲食品のフルーツ感、フレッシュ感及びジューシーさ等を増強させる様々な方法が提案されている。」 (キ)そして、果実パルプ質を含む水不溶性固形物の量として、遠心沈殿量を把握することは、例えば下記刊行物Dに記載されているとおり、本願出願日前の慣用技術である。 刊行物D(特開2002-238513号公報):「【0016】本発明におけるマンゴー果汁加工品は、マンゴー果汁を脱パルプ処理してパルプ分を低減して得ることができる。本発明でいうパルプ分とは、不溶性成分のうちの、日本農林規格検査法で定義される不溶性固形物のことをいう。パルプ分は、日本農林規格検査法に記載の方法によって算出する。すなわち、遠心沈降管に試料を入れ、回転半径14.5cmの遠心分離機で、20℃において、3,000回転、10分間遠心した後の沈殿物の容量%を、不溶性固形物測定用遠心沈殿管(目盛り付き)で読み取り、その体積を全試料の体積の百分率として表わす(「最新果汁・果実飲料事典」、(社)日本果汁協会、574ページ)。」 (ク)また、果実パルプ質である水不溶性固形物の大きさを分別する手段として、篩い分けを用いることも、例えば刊行物Aに記載されているとおり、本願出願日前の慣用技術である。 刊行物A(特開平6-335371号公報):「【0007】本発明に用いるパルプは、りんごパルプであり、通常の果肉用クラッシャーでりんごを破砕した後、荒目の布または漉器等で搾汁し、得られた搾汁液を篩分けして得られるものである。図1にこのりんごパルプが得られる詳細な工程図を示した。この工程から得られたりんごパルプの粒度は、150?7メッシュが適当であり、より好ましくは48?16メッシュのものである。このような粒度のりんごパルプを加えた飲料は、喉ごし感がおろし金ですりおろした自然な食感、清涼感を与えるものであり、最適な粒度である。」 (ケ)そうすると、果実パルプ質を磨砕処理し、これに果汁などを添加混合して果実飲料を製造する刊行物1発明において、上記(オ)のとおり、生の果実から作られた生ジュース風のものを製造することを考えて、果実パルプ質を磨砕処理して粘調性や果実パルプ質の長手方向の長さを調節し、さらにこれに果汁や水などを添加混合して粘度を調整することによって、生の果実から作られた生ジュース風の果汁飲料を製造すること、そして、生ジュースに近い風味かどうかの果実飲料の評価において、上記(カ)のとおりに、果実感、飲み応え、フレッシュ感、パルプ感、口あたり、香立ち、広がり、まとまり、後味などの観点を用い、これらの観点からの風味評価をもとにして、(a)適切な粘度の値とすること、(b)磨砕処理した果実パルプ質などの飲料に含まれる水不溶性植物繊維を水不溶性固形物として、上記(キ)、(ク)の慣用技術に従って、水不溶性固形物の量を遠心沈殿量で、その大きさを篩い分けによって把握し、飲み応えやパルプ感、口当たりなどの風味評価の観点から、その量や大きさなどを適切な範囲を規定すること、(c)さらに、磨砕処理した果実パルプ質が一定の粘調性を有するものであることから、これを含む水不溶性固形物の遠心沈殿量と粘度との相関関係についても着目し、上記風味評価の観点から、適切な両者の関係を求めること、は、周知慣用技術に基いて、当業者が容易になし得たことであって、また、その具体的な数値範囲についても、果汁や果実パルプ質の種類、消費者の嗜好に応じて、当業者が適宜に設定し得たことである。 (相違点2について) 刊行物1発明の「容器に充填する」ことについて、刊行物1の記載を参照すると、常法に従って瓶、缶等の容器に充填することにより、本発明の果実飲料を得ることができると記載されている(1d)。 ジュースなどの飲料をストロー付きの容器に充填することは、例えば実願平3-99315号(実開平5-42143号)のCD-ROM),特開2006-325837号公報,特開2009-149329号公報などに記載されているとおり、本願出願日前の周知技術であるので、刊行物1発明の「容器に充填する」ことについて、経ストロー飲食用の容器詰水不溶性植物繊維含有果汁飲料とすることも、周知技術に従って、当業者が適宜になし得たことである。 (本願補正発明の効果について) 果実を生搾りして得られる果汁(生ジュース)に近似した果実感を有し、風味全体のバランスにも優れる水不溶性食物繊維含有果汁飲料が製造されること、また、果実パルプのサイズ(繊維長)を調整することで、粘度上昇の寄与の少ない水不溶性固形物が高配合され、ストローで吸引して口腔内に搬送された際の風味が優れるとの本願補正発明の効果は、刊行物1,2に記載された事項及び周知慣用技術から当業者が予測し得たものであり、またその程度も格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1,2に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 むすび したがって、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成23年11月11日付けの手続補正は、上記のとおり却下されることになったので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし10記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項5は、次のとおりである。(以下、請求項5に係る発明を「本願発明」という。) 「【請求項5】 水不溶性固形物として水不溶性食物繊維を含有する、水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法であって、 粘度A(cP)を10?80に、水不溶性固形物の遠心沈殿量B(%)を10?25に、且つ、該粘度Aと該遠心沈殿量Bを下記式(1)の関係を満たすように、調整する工程、を少なくとも有する、 0.05A+10≦B≦0.25A+10 ・・・(1) 水不溶性食物繊維含有果汁飲料の製造方法。」 2 引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1?2及びその記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の「水不溶性食物繊維含有果汁飲料」が「容器内に封入された容器詰水不溶性食物繊維含有果汁飲料」であり、かつ、「経ストロー飲食用の容器詰」のものであるとした構成を省き、さらに「調整する工程において、前記飲料の総量に対する前記水不溶性固形物の含有割合が 以下の関係を満たす水不溶性食物繊維含有果汁飲料を作製する、 1.7mm以上 :0.0?3.0% 1.7mm未満 1.0mm以上 :0.2?4.0% 1.0mm未満 0.5mm以上 :0.5?4.0%」 との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含んだ本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、刊行物1,2に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物1,2に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明及び周知慣用の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-04 |
結審通知日 | 2013-06-05 |
審決日 | 2013-06-18 |
出願番号 | 特願2011-51890(P2011-51890) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A23L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 名和 大輔 |
特許庁審判長 |
田村 明照 |
特許庁審判官 |
菅野 智子 齊藤 真由美 |
発明の名称 | 水不溶性食物繊維含有果汁飲料及びその製造方法、並びに、果実感改善方法 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 遠山 友寛 |
代理人 | 田中 克郎 |
代理人 | 内藤 和彦 |