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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E06B
管理番号 1277633
審判番号 不服2011-26674  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-09 
確定日 2013-08-08 
事件の表示 特願2005-375089号「操作コード接続具及び操作コード接続具の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年7月12日出願公開、特開2007-177440号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成17年12月27日の特許出願であって、平成23年9月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年9月13日)、これに対し、同年12月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、平成25年2月13日付けで当審にて拒絶理由通知がなされ、同年4月22日付けで意見書の提出がなされたものである。

2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年8月24日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「それぞれ操作コードを取着した第一の接続部材と第二の接続部材を弾性的に嵌合して、無端状の操作コードを中間部で接続する操作コード接続具において、
前記第一の接続部材と第二の接続部材の少なくともいずれかを操作コードの結び目を設けない端部に対しアウトサート成型したことを特徴とする操作コード接続具。」

3 刊行物について
(1)当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-184456号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審にて付与。以下同様。)。
ア 「【請求項1】ロールスクリーン、ブラインド、カーテン等の日除け部材を懸架する支持枠を窓周面の壁面に配置し、支持枠から垂下するこれらの日除け部材を左右または上下に開閉する垂れ下がっている操作コードにおいて、操作コードの伸長方向に急激な力が加わったときに分解する着脱可能な安全具を操作コードに配置してあることを特徴とする日除け部材の操作コード。
【請求項2】前記操作コードが、日除け部材であるブラインドの昇降を操作する操作コードで、この操作コードの末端をブラインドの底板に固着し、その他端側を上方に設置した回転部に接続し、ブラインドのラダコードを昇降させるものであることを特徴とする請求項1に記載の日除け部材の操作コード。
【請求項3】前記操作コードが、窓枠に固着した支持枠に軸支した回転軸に捲回して収納し、巻きほぐしたときに日除け部材であるロールスクリーンが垂れ下がるようになっている回転軸を操作するものであることを特徴とする請求項1に記載の日除け部材の操作コード。
【請求項4】前記操作コードが、日除け部材であるカーテンの開閉部材に関連してカーテンレールに設けた回転体に接続され、下方に垂れ下がった部分を操作するものであることを特徴とする請求項1に記載の日除け部材の操作コード。」(【特許請求の範囲】)
イ 「【発明の属する技術分野】本発明は、窓枠などに取り付け、窓から進入する光線を遮断する日除け部材を開閉操作する日除け部材の操作コードに関する。
【従来の技術】ロールスクリーン、ブラインド、カーテンなどの窓からの外部光線を遮断する日除け部材を窓枠などに取り付ける支持枠は一般的に壁面に固着してある。この窓枠に取り付けられた日除け部材を左右または上下に開閉する操作に際しては日除け部材を移動させる駆動杆または駆動軸に連結した操作コードが支持枠より垂れ下がって配設してあり、これら操作コードは手動または自動によって操作されるようになっている。
【発明が解決しようとする課題】窓枠に日除け部材を取り付け、この日除け部材の操作コードが窓の近傍にヒラヒラと垂れ下った状態では時として歩行者に絡みつくことがあり、特に、子供や老人の場合は転倒したり、首に絡みついたり、などの危険性があった。また、昨今では室内にペットを飼育する家庭が多く、これらペットが操作コードに絡みついて、棚上の器具類を壊すこともあった。本発明の課題は、ロールブラインドやロールスクリーン、カーテンなどの日除け部材の操作コードによる前述のような事故を防止することができる日除け部材の操作コードを提供することである。また、本発明の他の課題は、従来の操作コードを取り替えるだけの簡易方法で安全な日除け部材の操作コードを提供することである。
【課題を解決するための手段】本発明の前記課題は、ロールスクリーン、ブラインド、カーテン等の日除け部材を懸架する支持枠を窓周面の壁面に配置し、支持枠から垂下するこれらの日除け部材を左右または上下に開閉する垂れ下がっている操作コードにおいて、操作コードの伸長方向に急激な力が加わったときに分解する着脱可能な安全具を操作コードに配置してある日除け部材の操作コードの構成によって達成できる。
また、前記課題は、前記操作コードが、日除け部材であるブラインドの昇降を操作する操作コードで、この操作コードの末端をブラインドの底板に固着し、その他端側を上方に設置した回転部に接続し、回転部を操作してブラインドのラダコードを昇降させる操作コードの構成、または窓枠に固着した支持枠に軸支した回転軸に捲回して収納し、巻きほぐしたときに日除け部材であるロールスクリーンが垂れ下がるようになっている回転軸を操作する操作コードの構成によって達成できる。
更に、日除け部材であるカーテンの開閉部材に関連してカーテンレールに設けた回転体に接続され、下方に垂れ下がった部分を操作する日除け部材の操作コードの構成によって達成することができる。」(段落【0001】?【0006】)
ウ 「【発明の実施の形態】以下、本発明の日除け部材の操作コードについて実施の形態に基づき図面を参照して詳述する。図1は本発明日除け部材の操作コードの1実施形態を取り付けた九十九折りブラインドの斜視図及び側面図である。図2は図1の安全具の拡大斜視図及び分解説明図である。図3は本発明の操作コードをブラインドに取り付けた実施形態を示す斜視図である。図4は図3の操作コードに取り付けた第2の安全具の分解説明図である。図5は図3のブラインドの底板に装着する第3の安全具の分解説明図である。図6は本発明の操作コードを取り付けたローマンシェードの斜視図及び側面図である。図7は図6の操作コードに取り付けた第4の安全具の拡大斜視図及び分解説明図である。図8は本発明操作コードのボールチェーンに第5の安全具を取り付けた状態を示す斜視図である。図9は図8の操作コードに連結した第5の安全具の拡大斜視図及び分解説明図である。図10は本発明の操作コードに取り付けるホック状の安全具を示す拡大斜視図及び分解説明図である。図11は操作コードに取り付ける安全具の位置を説明する実施形態図である。
本発明の日除け部材の操作コードについて図面に示す実施形態に基づいて説明する。カーテンレール等を窓枠に支持枠1が取り付けてあり、この支持枠1の両端に支持された回転杆2に、日除け部材であるブラインド4のラダコード3が捲回してある。この回転杆2にはこれを回転させる操作コード5が連結してあり、この操作コード5の下端部の折り返し近傍に第1の安全具6が介在してある。この第1の安全具6は底板10側の操作コード5aを固着した雌部6aとこれに嵌合する突部6bとからなり、雌部6aの内側溝に係合する突条を突部6bに形成してあり、この突部6bには他方の操作コード5bが接続してある。操作コード5aの他端はブラインド4のΠ状に形成したレール状の底板10に取り付けてある。
図3に示す日除け部材であるスラット板を配設したブラインド4の昇降コード7がガイドローラ8を経由して支持枠1の片側端に設けたガイド9経て操作コード5に連結してある。この操作コード5の下方を折り返してブラインド4のレール状の底板10に第2の安全具11を介して取り付けてある。この第2の安全具11はブラインド4の底板10のレール内に嵌装する嵌合部11bおよび取付部11aは合成樹脂などから形成され、弾力性を有している。また、図5に示す第3の安全具は底板10のレール内に挿入するもので、この挿入部材である嵌合部11bに取付部11aを差し込むものである。」(段落【0007】?【0009】)
エ 「図8に示す実施の形態は日除け部材であるロールスクリーン14の巻取りを行うボールチェーン15(操作コード)の一部のボールに代えて第5の安全具16を使用した実施例である。この第5の安全具16は球形のボールを半分にして脱着自在にしてある。本発明の操作コード5の中間に介在する安全具は種々のものが考えられるが、操作コード5に急激な力が加えられたときに分解する構造であればよく、図面に示されるものに限定されるものではない。例えば、図10に示すようなボタンのホック17のような係合部材でも良い。」(段落【0011】)
オ 「このよう構成してある本発明の日除け部材の操作コードは、歩行者やペットなどが操作コード5に引っ掛けたときに操作コード5に力が加わったときに安全具6?が分解されて操作コード5が分離するので歩行者の転倒やペットの被害を防止することができる。
【発明の効果】本発明の日除け部材の操作コードは、操作コードの一部に連結して介在した安全具があるから、操作コードの歩行者などへの絡みつきを防止することができる。しかも、構造が簡易であるからインテリアとしても美観を呈し、使用者に対して不快感を与えることがない。」(段落【0013】?【0014】)

上記ア?オの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「操作コード5aの末端を底板10に取り付けてあり、他端を固着した雌部6aと、操作コード5bの一端を回転杆2に連結してあり、他端を接続してある突部6bとを操作コード5に力が加わったときに分解されるように嵌合させた、操作コード5の中間に配置してある日除け部材用の安全具6において、
雌部6aに操作コード5aを固着した、インテリアとしても美観を呈する日除け部材用の安全具6。」

(2)同じく、当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭57-182449号(実開昭59-88196号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている
ア 「本考案は、窓等に装着されたブラインドの羽根角度を調節する等の操作用ワイヤと、樹脂製ツマミを結合する際に、結合強さを安定して確保するとともに安価に構成してなる操作用ワイヤと樹脂製ツマミの結合構造に関するものである。
従来、この種のツマミ構造は、第1図に示すように、ワイヤaに接着剤を塗布して内側樹脂ツマミbに圧入接着し、この内側樹脂ツマミbを外側樹脂ツマミcに結合していた。
しかしながら、上述した従来の構造では、内側樹脂ツマミbの応力弛緩及び接着剤の経時変化により、ワイヤaと内側樹脂ツマミbとの結合力が低下して、樹脂ツマミbがワイヤaより脱落する等の欠点があつた。」(第1頁第15行?第2頁第8行)

4 対比
刊行物1に記載された発明(以下「前者」という。)と本願発明(以下「後者」という。)とを対比する。
前者の「操作コード5aの末端を底板10に取り付けてあり、他端を固着した雌部6aと、操作コード5bの一端を回転杆2に連結してあり、他端を接続してある突部6bとを操作コード5に力が加わったときに分解されるように嵌合させた」ことと、後者の「それぞれ操作コードを取着した第一の接続部材と第二の接続部材を弾性的に嵌合」することとは、「それぞれ操作コードを取着した第一の接続部材と第二の接続部材を嵌合」することで共通する。
そして、前者の「操作コード5の中間に配置してある日除け部材用の安全具6」は、操作コード5aの末端を底板10に取り付けてあり、また、操作コード5bの一端を回転杆2に連結してあり、操作コード5には、端がないといえることから、後者の「無端状の操作コードを中間部で接続する操作コード接続具」に相当する。
また、前者の「雌部6aに操作コード5aを固着した」「安全具6」と、後者の「第一の接続部材と第二の接続部材の少なくともいずれかを操作コードの結び目を設けない端部に対しアウトサート成型したこと」とは、後者において、結び目は操作コードに対してアウトサート成型により固着されるものであるから、両者は、「第一の接続部材と第二の接続部材の少なくともいずれかを操作コードの端部に固着したこと」で共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「それぞれ操作コードを取着した第一の接続部材と第二の接続部材を嵌合して、無端状の操作コードを中間部で接続する操作コード接続具において、
前記第一の接続部材と第二の接続部材の少なくともいずれかを操作コードの端部に固着した操作コード接続具。」

[相違点1]
第一の接続部材と第二の接続部材との嵌合が、本願発明では、弾性的な嵌合であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、操作コード5に力が加わったときに分解されるような嵌合である点。

[相違点2]
第一の接続部材と第二の接続部材の少なくともいずれかの操作コードの端部への固着が、本願発明では、操作コードの結び目を設けない端部に対しアウトサート成型したことによるものであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、操作コードの結び目を設けない端部に対しアウトサート成型したことによるものであるか否か不明である点。

5 当審による判断
(1)上記相違点1について
刊行物1の記載事項ウ(前記3(1))には、安全具の別の実施例として、「安全具11は」「合成樹脂などから形成され、弾力性を有している」ことが記載され、また、同記載事項エ(前記3(1))には、「本発明の操作コード5の中間に介在する安全具は種々のものが考えられるが、操作コード5に急激な力が加えられたときに分解する構造であればよ」いことが記載されている。
すなわち、刊行物1には、安全具を合成樹脂など弾力性を有している部材から形成することについて記載されている。
そうすると、刊行物1に記載された発明において、安全具6を剛体により形成していたのでは、操作コード5に力が加わったときに安全具6を分解できないため、操作コード5に力が加わったときに分解できるように、合成樹脂など弾力性を有している材料から形成することは当業者が適宜なし得たものである。

(2)上記相違点2について
刊行物1に記載された発明は、安全具6の雌部6aに操作コード5aの端を固着するものである。そして、固着する手段としてどのような手段を採用したかは、【図2】(a)に図示された内容をみても、その詳細は明らかでない。
そして、刊行物1の記載事項エ(前記3(1))に記載された、球形のボールを半分にして脱着自在にした第5の安全具16を示した【図8】には、ボールチェーン15(操作コード)が、球形のボールを半分にした第5の安全具16に、結び目を設けない操作コードの端部を結合したことが図示されている。
ところで、「固着」について、[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]には、「かたくしっかりとつくこと。」とある。ここで、操作コード5aの端に結び目を形成して、安全具6の雌部6aに接続した場合について検討する。操作コード5aの端に結び目が形成されても、操作コード5aは、雌部6aに対して移動可能な状態となることから、操作コード5aの端に結び目を形成することは、ここでいう「固着」されたことに含まれないことは明らかである。
してみると、刊行物1に記載された発明において、操作コード5aと安全具6の雌部6aとの結合には、操作コード5aの端に結び目を設けない結合態様を含むものと解される。
また、刊行物1に記載された発明の安全具6は、操作コード5に力が加わったときに分解されるように雌部6aと突部6bとを嵌合させたものであるから、操作コード5aの端と、雌部6aの固着には、力が加わったときに雌部6aと突部6bとが分解される以上の結合強さを有するものであることは明らかである。そうすると、刊行物1に記載された発明において、操作コード5aの端と雌部6aとの固着には、力が加わったときに雌部6aと突部6bとが分解される以上の結合強さを必要とするという自明の課題を内在するものである。
一方、刊行物2の記載事項ア(前記3(2))、及び、第1図の図示内容によると、ブラインドの操作用ワイヤに関し、結合強さを安定して確保するために、ワイヤaに接着剤を塗布して内側樹脂ツマミbに圧入接着することにより、ワイヤaの外周面と樹脂ツマミbとの間の接触面積を確保した、ワイヤaと樹脂ツマミbとの結合構造についての発明について記載されている。
してみると、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、日除け部材用の操作コード結合部材という共通の技術分野に属する発明であり、しかも、操作コードと操作コード結合部材との間で結合強度を向上させるという共通の課題を有するものである。
さらに、操作コードの外周面に対し結合部材をアウトサート成型により形成することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、当審による拒絶の理由に引用された実公昭62-45025号公報、第2ページ3欄に記載された、紐体1外周面に合成樹脂材料の射出成形によりボールを形成したことや、実願昭60-65123号(実開昭61-181146号)のマイクロフィルム、第3ページ8?19行に記載された、紐外周面に合成樹脂を射出成形してボール7を形成固着したことを参照。)。
したがって、刊行物1に記載された発明において、安全具6に結合される操作コード5aとして、操作コード5aの端に結び目を設けない態様のものを採用するとともに、刊行物2に記載された発明を適用して、操作コード5aの結び目を設けない端に、安全具6を外周面から固着するとともに、その際に、固着手段として、接着剤を用いることに換えて、本願出願前に周知のアウトサート成型を用いて雌部6aを形成し、上記相違点2に係る本願発明が具備する発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。

(3)小括
刊行物1に記載された発明のは、インテリアとして美観を呈するものである。また、上記(2)において検討したように、操作コード5aの端と安全具6の雌部6aとの結合には、操作コード5aの端に結び目を設けない結合態様を含むものである。
そうすると、本願発明の効果についてみても、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものであるといえる。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-12 
結審通知日 2013-06-18 
審決日 2013-06-25 
出願番号 特願2005-375089(P2005-375089)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 辻野 安人  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 木村 史郎
瀬津 太朗
発明の名称 操作コード接続具及び操作コード接続具の製造方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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