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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1277680
審判番号 不服2010-21651  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-27 
確定日 2013-08-07 
事件の表示 特願2000-580071「インテリジェント・パワー・マネジメントを提供するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月11日国際公開、WO00/26756、平成14年 9月10日国内公表、特表2002-529807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、1999年11月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年11月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年5月15日付けで通知した拒絶理由に対して、同年10月2日付けで誤訳訂正及び手続補正がなされたが、平成22年5月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。

その後、当審において、平成23年8月31日付けで前置報告書(特許法第164条第3項)を利用した審尋を行ったところ、同年11月22日に回答書が提出され、平成24年2月17日付けで通知した最後の拒絶理由に対して、同年5月28日付けで手続補正がなされ、同年8月27日付けで通知した最後の拒絶理由に対して、平成25年1月31日付けで手続補正がなされたものである。


2.本願発明

本願の請求項1及び2に係る発明は、平成25年1月31日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
プロセッサ・ベース・システムの回路用のパワー・マネジメント装置であって、
プロセッサ・ベース・システムを処理するのに使用する命令シーケンスを格納するためのメモリと、
メモリに結合されたプロセッサとを含み、格納された命令シーケンスが、当該プロセッサに
(a)前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになった後、前記プロセッサ・ベース・システムの回路にアクセスが発生するまでの時間が第1の所定のタイムアウト値よりも早ければ、前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになるまでのタイムアウト無活動期間T[t0]を増やすこと、及び、(b)前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになった後、前記アクセスが発生するまでの時間が前記第1の所定のタイムアウト値と異なる第2の所定のタイムアウト値よりも遅ければ、前記タイムアウト無活動期間T[t0]を減らすこととを行わせるパワー・マネジメント装置。」

3.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平9-6465号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、以下、摘記事項の下線は当審で付した。)

ア.「【請求項37】プロセッサ手段と、メモリ手段と、一定時間間隔の信号を与える第1の手段と、最後の処理動作から設定時間が経過したことを通知する節電タイマーと、節電タイマーからの通知に応じて節電動作を開始する第2の手段と、次の処理動作によって節電動作を停止する第3の手段と、節電動作の開始から停止までの経過時間を計測する第4の手段と、節電動作の開始から停止までの経過時間に応じて前記節電タイマーの設定時間を変更する第5の手段と、を具備することを特徴とする情報処理装置
【請求項38】前記第5の手段は、節電動作の開始から停止までの経過時間を予め与えられた基準値と比較して、該経過時間が該基準値よりも大きければ前記節電タイマーの設定時間をより小さい値に変更し、該経過時間が該基準値よりも小さければ前記節電タイマーの設定時間をより大きな値に変更することを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置」

イ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パーソナル・コンピュータを始めとする情報処理装置及びその制御方法に係り、特に、使用状況が低下した電気回路に対する電力供給を適宜低下若しくは停止させる節電動作(「パワー・マネージメント」ともいう)機能を備えた情報処理装置及びその制御方法に関する。更に詳しくは、本発明は、最適なタイマー値によって節電動作に遷移することができる情報処理装置及びその制御方法に関する。」

ウ.「【0030】A.パーソナル・コンピュータ(PC)100のハードウェア構成
図1には、本発明の実施に供されるパーソナル・コンピュータ(PC)100のハードウェア構成を、主にデータの流れに着目して示している。
【0031】PC100内では、メイン・コントローラであるMPU(Micro Processing Unit)11が、オペレーティング・システム(OS)の制御下で、各種プログラムを実行するようになっている。MPU11は、データ信号線、アドレス信号線、コントロール信号線などからなる共通信号伝送路(「バス」ともいう)12を介して各部と連絡している。
【0032】メイン・メモリ13は、MPU11が実行する各プログラム(OSやアプリケーションなど:C項参照)をロードしたり、MPU11が作業領域として用いたりするための揮発性メモリ(RAM)である。メイン・メモリ13には、比較的大容量を安価で入手可能なダイナミックRAM(DRAM)が用いられる。メモリ・コントローラ14は、メイン・メモリ13へのアクセス動作を制御するためのものである。ROM15は、製造時に書き込みデータを決めてしまう不揮発性メモリであり、システムの始動時に行うテスト・プログラム(POST)やシステム100内の各ハードウェアを制御するためのプログラム(BIOS)などをコード化して半永久的に格納するために用いられる。」

エ.「【0040】電力管理プロセッサ45は、主としてシステム100内の各部への電力供給を管理するために設けられた周辺コントローラであり、好ましくは日立製作所(株)製の1チップ・コントローラIC"330/H8"である。このタイプのICは、16ビットのCPUの他に、RAM、ROM、タイマー、8本のアナログ入力ピン、16本のデジタル入出力ピンを持ち、その機能はプログラム可能である。本実施例の電力管理プロセッサ45は、バス12を介して各部と連絡しており、キー30やマウス31によるユーザ入力操作やシステムの活動状況をモニタしたり、電力制御レジスタ46内のビット・セルの内容を書き替えることができる(B項参照)。また、電力管理プロセッサ45は、LCDオフ・タイマー,MPUスピード・スロウ・ダウン・タイマー,サスペンド・タイマー,ハイバーネーション・タイマーなどの各節電タイマーの機能も備えており、最後のユーザ・アクセスから各節電タイマーの設定時間が経過する度毎にバス12上に割り込みを発生するようになっている。」

オ.「【0052】オペレーティング・システム(OS)は、システム100のハードウェア及びソフトウェアを総合的に管理するための基本ソフトウェアであり、(中略)本実施例に係るオペレーティング・システムは、節電動作(D項参照)を実行するためのPM(パワー・マネージメント)プログラムをモジュールの1つとして含んでいる。」

カ.「【0055】D-1.サスペンド/レジューム・ルーチン
図4には、サスペンド・モードに入るためのルーチン(サスペンド・ルーチン)、及びサスペンド・モードから復帰してタスクを再開するルーチン(レジューム・ルーチン)をフローチャート化して示している。
【0056】(1)サスペンド・ルーチン
電力管理プロセッサ45は、OSやアプリケーション・プログラムによる通常のオペレーションを実行中も、キーボード30やマウス31からのユーザ入力、及びシステム100の処理動作の状況をモニタしている。そして、最後のユーザ入力及び最後の処理動作から設定時間(T_(SUS))が経過したことを、内部のサスペンド・タイマーによって検出すると、バス12上に割り込みを発生する(A項参照)。割り込みコントローラ26は、この割り込みを検出してBIOSに通知する。BIOSは、割り込みの発生源を探索して、割り込み要因が電力管理プロセッサ45であることを突き止める。これをトリガにして、システム100の支配権はPM(パワー・マネージメント)プログラムに移し、サスペンド・ルーチンを開始する。
(中略)
【0059】次いで、PMプログラムは、この時点におけるRTC28の実時間(T_(1))を、メイン・メモリ13内の所定領域にタイムスタンプする(ステップS16)。
【0060】データ・ストア及びタイムスタンプが終了すると、PMプログラムは、電力管理プロセッサ45に対して、所定の電力線(ここではV_(cc5A)以外の電力線)の給電停止を要求する。電力管理プロセッサ45は、この命令を受けて、電力制御レジスタ46内の各ビット・セルの内容を変更する。これによって、メイン・メモリ13以外の電気回路への電力供給は遮断され、サスペンド・ルーチンは終了する(ステップS18)。
【0061】(2)レジューム・ルーチン
電力管理プロセッサ45は、サスペンド・モードの間も定期的に起動してキーボード30やマウス31からの入力(若しくはレジューム要求)の有無をモニタしている。そして、入力があると、先行するステップS18にて各電力線からの給電を再開する(ステップS20)。そして、MPU11は、まずROM中のPOSTプログラムを実行する(ステップS22)。
【0062】POSTの実行が終了すると、システム100の支配権はPMプログラムに移り、レジューム・ルーチンを開始する。
【0063】レジューム・ルーチンでは、まず、この時点におけるRTC28の実時間(T_(2))を、メイン・メモリ13内の所定領域にタイムスタンプする(ステップS22)。
【0064】次いで、ステップS30では、ステップS16及びS22においてタイムスタンプされた時間間隔(ΔT)を算出し、この時間間隔ΔTに応じて、サスペンド・タイマーの設定時間T_(SUS)を変更する。本明細書ではT_(SUS)を変更するための2つの手法を提供するが、各々の詳細は後続のD-2及びD-3項を参照されたい。
(中略)
【0067】また、サスペンド・タイマーは、ステップS30にて変更された新しい設定時間T_(SUS)に基づいて、最後のユーザ入力及びシステム100の最後の処理動作からの経過時間をカウントする。当然ながら、システム100がサスペンド・モードに入り且つレジュームする度毎に、サスペンド・タイマーの設定時間T_(SUS)は逐次更新される。このような節電タイマーの動的な更新がパワー・マネージメントとユーザビリティの双方の要求を満たすということは、後続の説明で明らかになるであろう。」

キ.「【0068】D-2.サスペンド・タイマーの設定時間の変更(第1例)
図5には、サスペンド・タイマーの設定時間T_(SUS)を変更するための手法(すなわち図4におけるステップS30)の第1例を示している。この例では、サスペンドに入ってからレジューム要求が起こるまでの時間間隔ΔT_(1)(=T_(2)-T_(1))に応じてT_(SUS)を更新する。
【0069】まず、ステップS40では、サスペンド・モードに入ってからレジューム要求が起こるまでの時間ΔT_(1)が所定の基準値T_(th1)より大きいか否かを判断する。T_(th1)は、平均的なサスペンド・モードの期間であり、経験的に得られた値でもよい。
【0070】ΔT_(1)が所定の基準値T_(th1)より小さい場合は、サスペンド・モードに入ってから比較的早い時期にレジューム要求が起こったことを意味する。サスペンドへの遷移が不本意な場合、ユーザは往々にして直ぐにレジュームを要求する。したがって、この場合は、サスペンドに遷移するタイミングT_(SUS)がユーザにとって早過ぎて、ユーザビリティが低下している可能性があるので、T_(SUS)をより大きな値に更新する必要がある。
【0071】更新に先立って、まずT_(SUS)をT_(max)と大小比較する(ステップS42)。T_(max)は、サスペンド・タイマーの設定時間の最大値であり、それ以上大きくするとシステム100のパワー・マネージメント効果を維持できなくなる限界値である。したがって、T_(SUS)が既にT_(max)以上であれば、T_(SUS)の更新は行わない(ステップS44)。一方、T_(SUS)がT_(max)未満であれば、T_(SUS)を所定値αだけ加算する(ステップS46)。
【0072】逆に、ΔT_(1)が所定の基準値T_(th1)より大きい場合は、長い間ユーザ入力及びシステム100の処理動作がなく、システム100が放置されたことを意味する。したがって、サスペンドにするタイミングT_(SUS)が遅過ぎて、パワー・マネージメント効果が低下している可能性が高いので、T_(SUS)をより小さな値に更新する必要がある。
【0073】更新に先立って、まずT_(SUS)をT_(min)と大小比較する(ステップS48)。T_(min)は、サスペンド・タイマーの設定時間の最小値であり、それ以上小さくするとシステム100のユーザビリティを維持できなくなる限界値である。したがって、T_(SUS)が既にT_(min)以下であれば、T_(SUS)の更新は行わない(ステップS50)。一方、T_(SUS)がT_(min)を越えていれば、T_(SUS)から所定値βだけ減算する(ステップS52)。
【0074】このような手法によれば、ユーザのワーク・ハビットに順応して、サスペンド・タイマーの設定時間を動的に変更して、より最適な節電動作を実現できるのである。
【0075】なお、上述した所定の加算値α及び減算値βは、経験的に与えられる値でもよい。但し、節電モードに入るための時間や通常モードに復帰するための時間(すなわち節電動作の遅延時間)が長い場合には、なるべく節電モードに遷移しない方向(すなわちαを大きめに、βを小さめに)に、逆に節電動作に要する時間が短い場合には、なるべく節電モードに遷移しやすい方向に設定した方が、より効果的であろう。」

ク.「【0083】なお、D項では、サスペンドを例にとって説明したが、LCDオフやMPUスピード・スロウ・ダウンなど他の節電動作であっても、上述した節電タイマーの動的設定を同様に適用可能であることは言うまでもない。
【0084】また、本実施例では、これら一連の節電動作を実行するPMプログラムはオペレーティング・システムに含まれていることを前提にして説明したが、このような形態には限定されず、PMプログラムと等価なファンクションを持つソフトウェア・モジュールを他の形態で備えていてもよい。例えば、ROM15中にコード化してストアしていてもよい。」

上記「ア.」ないし「ク.」の記載によれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

電気回路に対する電力供給を停止させる節電動作(「パワー・マネージメント」)機能を備えた情報処理装置であって、
PM(パワー・マネージメント)プログラムを格納するメモリ手段と、
メモリ手段に結合されたプロセッサ手段と、を具備し、
最後の処理動作から設定時間が経過したことに応じて節電動作を開始し、次の処理動作によって節電動作を停止し、
プロセッサ手段が、格納されたPM(パワー・マネージメント)プログラムを実行し、節電動作の開始から停止までの経過時間が予め与えられた基準値よりも小さければ、前記設定時間をより大きな値に変更し、節電動作の開始から停止までの経過時間が予め与えられた基準値よりも大きければ、前記設定時間をより小さい値に変更する情報処理装置。


4.対比

引用発明と本願発明とを対比する。

引用発明の「情報処理装置」は、「プロセッサ手段」(MPU)および「メモリ手段」(メイン・メモリ、ROM)を含み、本願発明の「プロセッサ・ベース・システム」に相当する。
そして、引用発明は、「情報処理装置」の「電気回路に対する電力供給を停止させる節電動作(「パワー・マネージメント」)機能を備えた」「装置」であるから、情報処理装置の電気回路のパワー・マネージメントを行う装置であるといえ、本願発明の「プロセッサ・ベース・システムの回路用のパワー・マネジメント装置」であるということができる。

引用発明の「PM(パワー・マネージメント)プログラム」は、「情報処理装置」を処理するのに使用するプログラムであるから、本願発明の「プロセッサ・ベース・システムを処理するのに使用する命令シーケンス」に相当する。
すると、引用発明の「PM(パワー・マネージメント)プログラムを格納するメモリ手段」は、本願発明の「プロセッサ・ベース・システムを処理するのに使用する命令シーケンスを格納するためのメモリ」に相当する。

引用発明の「プロセッサ手段」は、本願発明の「プロセッサ」に相当する。
引用発明の「プロセッサ手段が、格納されたPM(パワー・マネージメント)プログラムを実行し、」所定の処理を行うことは、格納されたPM(パワー・マネージメント)プログラムが、プロセッサ手段に所定の処理を行わせるといい換えることができ、本願発明の「格納された命令シーケンスが、当該プロセッサに」所定の処理「を行わせる」ということができる。

引用発明の「経過時間」は、「情報処理装置」の「電気回路に対する電力供給を停止させる節電動作」「の開始から」「次の処理動作によって節電動作」の「停止までの」時間であり、「次の処理動作」は、情報処理装置の電気回路に次のアクセスが発生することで行われることは明らかであるから、本願発明の「前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになった後、前記プロセッサ・ベース・システムの回路にアクセスが発生するまでの時間」に相当する。
引用発明の「設定時間」は、情報処理装置の電気回路に対する「最後の処理動作から」「情報処理装置」の「電気回路に対する電力供給を停止させる節電動作」「を開始」するまでの時間であるから、本願発明の「プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになるまでのタイムアウト無活動期間T[t0]」に相当する。
引用発明の「予め与えられた基準値」は、本願発明の「所定のタイムアウト値」に相当する。
すると、引用発明の「節電動作の開始から停止までの経過時間が予め与えられた基準値よりも小さければ、前記設定時間をより大きな値に変更」することは、本願発明の「(a)前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになった後、前記プロセッサ・ベース・システムの回路にアクセスが発生するまでの時間が」「所定のタイムアウト値よりも早ければ、前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになるまでのタイムアウト無活動期間T[t0]を増やすこと」に相当し、引用発明の「節電動作の開始から停止までの経過時間が予め与えられた基準値よりも大きければ、前記設定時間をより小さい値に変更」することは、本願発明の「(b)前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになった後、前記アクセスが発生するまでの時間が」「所定のタイムアウト値よりも遅ければ、前記タイムアウト無活動期間T[t0]を減らすこと」に相当する。

以上のことから、引用発明と本願発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 プロセッサ・ベース・システムの回路用のパワー・マネジメント装置であって、
プロセッサ・ベース・システムを処理するのに使用する命令シーケンスを格納するためのメモリと、
メモリに結合されたプロセッサとを含み、格納された命令シーケンスが、当該プロセッサに
(a)前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになった後、前記プロセッサ・ベース・システムの回路にアクセスが発生するまでの時間が所定のタイムアウト値よりも早ければ、前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになるまでのタイムアウト無活動期間T[t0]を増やすこと、及び、(b)前記プロセッサ・ベース・システムの回路の電源がオフになった後、前記アクセスが発生するまでの時間が所定のタイムアウト値よりも遅ければ、前記タイムアウト無活動期間T[t0]を減らすこととを行わせるパワー・マネジメント装置。」である点。

[相違点]
「所定のタイムアウト値」について、本願発明では、「第1の」「所定のタイムアウト値」と「前記第1の所定のタイムアウト値と異なる第2の」「所定のタイムアウト値」を用いるのに対して、引用発明では、(一つの)「予め与えられた基準値」を用いることが特定されているにとどまる点。


5.判断

上記相違点について検討する。

制御装置の技術分野において、所定の基準値に基づいて状態変更の制御を行うものにあっては、その状態変更が必要以上に発生しないためのヒステリシスを前記所定の基準値に持たせることは、周知である(例えば、特開平10-222256号公報(【0029】-【0030】,【0071】-【0072】,【0086】-【0087】、図4,6,9,11,13,16等を参照。電力制御装置において、基準電流値にヒステリシスを持たせることが記載されている。)等を参照のこと。)。
そして、パワー・マネージメント機能を備えた装置、すなわち、制御装置に関する引用発明において、上記周知の技術を適用することを妨げる特段の事情も窺えないので、「予め与えられた基準値」にヒステリシスを持たせ、第1の予め与えられた基準値、これと異なる第2の予め与えられた基準値、を用いるようにすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。

そして、上記相違点により本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-08 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-26 
出願番号 特願2000-580071(P2000-580071)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 剛史杉藤 泰子  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 関谷 隆一
馬場 慎
発明の名称 インテリジェント・パワー・マネジメントを提供するための方法および装置  
代理人 杉村 憲司  

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