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審決分類 |
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C07C |
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管理番号 | 1277698 |
審判番号 | 不服2011-22125 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-13 |
確定日 | 2013-08-07 |
事件の表示 | 特願2007-505068「多環式芳香族炭化水素のキシレンへの触媒による変換」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月20日国際公開、WO2005/097714、平成19年11月1日国内公表、特表2007-530556〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 この出願は、2005年3月22日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2004年3月24日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月21日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月7日に拒絶査定がされたところ、これに対し、同年10月13日に審判が請求され、同年11月24日に審判請求書についての手続補正書(方式)が提出されたものである。 この出願に係る発明は平成23年4月6日付けで手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。 「芳香族炭化水素のトランスアルキル化方法において、該方法は、ナフタレン及びC_(11)芳香族炭化水素を含む供給物ストリームをトランスアルキル化条件で触媒と接触させて、C_(8)芳香族炭化水素を含む生成物ストリームを生成することを含み、前記触媒は、固体酸支持物質と、金属成分とを含み、前記固体酸支持物質がモルデン沸石であり、前記金属成分が、白金、錫、及びレニウムから成る群から選択され、前記供給物ストリーム及び生成物ストリームが、D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点をもつことを特徴とする芳香族炭化水素のトランスアルキル化方法。」(以下、「本願発明」という。) 第2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、 「この出願については、平成23年 1月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?3によって、拒絶をすべきものです。」 というものであり、上記拒絶理由通知書に記載した理由のうちの理由3は、 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」 というものである。そして、理由3についての「備考」として、 「下記4の出願の当初明細書(先願明細書4)には、芳香族炭化水素のトランスアルキル化方法であって、ナフタレン、インダン、及びC11+を含む供給物ストリームを、白金又はレニウムとモルデナイト型ゼオライトを含有する触媒存在下で接触させて、C8芳香族炭化水素を含む生成物ストリームを製造する方法が記載されている(実施例5、6)。 したがって、本願請求項1に係る発明は、先願明細書4に記載された発明と同一である。」 と記載されており、「下記4の出願」とは、 「特願2003-27996号」出願(以下「先願」という。) であると認められる。 そして、原査定の「備考」として、 「先願明細書4には、芳香族炭化水素のトランスアルキル化であって、ナフタレン、C11+を含む供給物を白金又はレニウムとモルデナイト型ゼオライトを含有する触媒存在下で接触させて、C8芳香族炭化水素を含む生成物を製造する方法が記載されている。 先願明細書4には、「供給物ストリーム及び生成物ストリームがD2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点をもつ点」について記載されていない点で、本願請求項1に係る発明と先願明細書4に記載された発明とは、一見相違するが、先願明細書4の供給物中の組成成分及びトランスアルキル化用の触媒等が本願発明のものと共通することから、生成物も本願発明のものと一致すると認められる。 したがって、先願明細書4供給物及び生成物は、本質的に、D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点をもつものであるということができ、本願請求項1に係る発明は、先願明細書4に記載された発明と同一である。」 と記載されている。 そうすると、原査定の拒絶の理由は、本願発明は、「特願2003-27996号」出願(先願)の「当初明細書」に記載された発明と同一であって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである、という理由を含むものであると認められる。 第3 当審の判断 当審は、原査定のとおり、本願発明は、先願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下これらを併せて「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であって、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである、と判断する。 1 先願明細書に記載された事項 1a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼンを含有してなる重質油を供給原料油として水素存在下で、酸型触媒と接触させて、キシレンを製造する方法。 … 【請求項5】 酸型ゼオライトがモルデナイト型ゼオライト、ベータ型ゼオライト、CFI型ゼオライトから選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項記載のキシレンを製造する方法。 【請求項6】 酸型触媒が、白金、パラジウム、レニウムのいずれかの1つの成分を含有してなる請求項1?5のいずれか一項記載のキシレンを製造する方法。」 1b 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、石油精製工程で生成する重質油、特に、芳香族炭化水素を主成分とする重質油からキシレンを製造する方法に関するものである。パラ-キシレンはポリエステル原料として極めて重要な素原料である。」 1c 「【0002】 【従来の技術】 … 【0003】 …石油精製において、重質油成分が増大している。重質油成分は原油の産地、蒸留、熱分解、改質、抽出等の各操作によって成分組成が大きく異なる。芳香族炭化水素に限定しても、キシレンよりも沸点の高い、エチルトルエン、トリメチルベンゼン、エチルキシレン、テトラメチルベンゼン、ジエチルベンゼン等いずれにしても非常に多くの成分からなる混合物である。本発明に関わる原料としては、特に、エチルキシレン、テトラメチルベンゼン、ジエチルベンゼン等を含有する重質油成分である。 【0004】 このような重質油成分は、溶剤或いは、燃料油に混合して利用されているに過ぎない。しかし、かかる重質油から、キシレンを回収できれば、新たなるキシレン供給源となり、重質油の新たなる有効活用が図れる。しかし、重質油には、インダン、インデン、ナフタレン、高沸点化合物等、触媒活性を低下させる成分が多く存在し、実用化することが出来なかった。」 1d 「【0005】 重質油のハイドロクラッキングとしては、357?603℃の沸点を有する重質油を、白金を担持した酸型モルデナイト触媒を用いるハイドロクラッキングにより、ロウ成分であるノルマルパラフィンを分解することによる脱ロウ方法が開示(…)されている。更に、重質油中のノルマルパラフィンをより選択的に分解する脱ロウ法については、MFI型ゼオライトに所属するZSM-5触媒による脱ロウ方法…が知られている。しかし、何れの方法においても、ロウ成分であるパラフィンを分解することを主たる目的としており、キシレンを製造する方法を開示していない。」 1e 「【0011】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼンを含有する重質油からキシレンを製造する方法に関するものである。これら重質油からキシレンを製造することが出来れば、経済的に優位なプロセスとなりうる。」 1f 「【0014】 本発明においては、かかる供給原料を水素の存在下で、酸型触媒と接触させることによって達成できる。」 1g 「【0051】 実施例1 上記のようにして合成されたベータ型ゼオライトを…触媒Iとした。 【0052】 触媒Iを反応管に7.5グラム充填し、表1に示す組成の供給原料Aを用い、次の反応条件で反応した。 【0053】 【0054】 反応条件 LHSV(hr^(-1)) 2.0 反応温度(℃) 375 反応圧力(MPa) 3.5 H_(2)/Feed(N-m^(3)/m^(3)) 500」 1h 「【0061】 実施例5 上記のようにして合成されたモルデナイト型ゼオライト-Iを絶対乾燥基準(500℃、20分間焼成した時の灼熱減量から計算)で20グラム取り、実施例1と同様にして成形し、アンモニウムイオン交換した。このアンモニウム交換したモルデナイト型ゼオライト-I成形体を120℃で一晩乾燥した。アンモニウム交換したモルデナイト型ゼオライト-I成形体の乾燥品20グラムを、Ptとして4ミリグラム含む塩化白金酸水溶液40ml中に室温で浸漬し、2時間放置した。30分毎に攪拌した。その後、液を切り、120℃で一晩乾燥した。触媒反応の使用に先立って、540℃、2時間焼成し、触媒Vとした。触媒Vに担持されたPtをICP発光分光分析で分析した結果、触媒Vに担持されている白金はPtとして169重量ppmであった。 【0062】 触媒Vを反応管に7.5グラム充填し、供給原料Aを用い、実施例1と同様にして反応させた。その結果、キシレン収率24重量%を得た。 【0063】 実施例6 実施例5と同様にして調製したアンモニウム交換したモルデナイト型ゼオライト-I成形体の乾燥品20グラムを、Reとして80ミリグラム含む過レニウム酸水溶液40ml中に室温で浸漬し、2時間放置した。30分毎に攪拌した。その後、液を切り、120℃で一晩乾燥した。触媒反応の使用に先立って、540℃、2時間焼成し、触媒VIとした。 触媒VIに担持されたReをICP発光分光分析で分析した結果、触媒VIに担持されているレニウムはReとして2010重量ppmであった。 【0064】 触媒VIを反応管に7.5グラム充填し、供給原料Aを用い、実施例1と同様にして反応させた。その結果、キシレン収率27重量%を得た。」 2 先願明細書に記載された発明 先願明細書は、「石油精製工程で生成する重質油、特に、芳香族炭化水素を主成分とする重質油からキシレンを製造する方法」(摘示1b)に関して記載するものである。詳しくは、その【従来の技術】の欄に記載されるとおり、「重質油から、キシレンを回収できれば、新たなるキシレン供給源となり、重質油の新たなる有効活用が図れる」のではあるが、従来は、「重質油には、インダン、インデン、ナフタレン、高沸点化合物等、触媒活性を低下させる成分が多く存在し、実用化することが出来なかった」(摘示1c)。ところが、「本発明においては、かかる供給原料を水素の存在下で、酸型触媒と接触させる」(摘示1f)ことによって、「重質油から、キシレンを回収できる」という方法、すなわち、 「エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼンを含有してなる重質油を供給原料油として水素存在下で、酸型触媒と接触させて、キシレンを製造する方法」(摘示1a【請求項1】について記載するものである。 その「エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼンを含有してなる重質油」は、摘示1cによれば、「インダン、インデン、ナフタレン、高沸点化合物等を含む」ものであるから、「エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼン、さらに、インダン、インデン、ナフタレン、高沸点化合物等を含有してなる重質油を供給原料油」であるといえる。そして、その「高沸点化合物等」には、供給原料油の具体的な組成例である実施例で用いられた「供給原料A」(摘示1g【表1】)をみると、インダン、ナフタレンのほか、C11+及びC12+成分が含まれていることが認められる。 そうすると、「エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼンを含有してなる重質油」は、「エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼンを含有し、さらに、インダン、ナフタレン、C11+及びC12+成分を含有する重質油」を包含するものと認められる。 また、その「酸型触媒」は、具体的には「モルデナイト型ゼオライト、…ゼオライトから選ばれた少なくとも一つ」(摘示1a【請求項5】)であって、「白金、パラジウム、レニウムのいずれかの1つの成分を含有してなる」(摘示1a【請求項6】)触媒を包含するものであり、実施例に、「モルデナイト型ゼオライト」に、白金を担持した「触媒V」(摘示1h「実施例5」)、及び、レニウムを担持した「触媒VI」(同「実施例6」)が記載されている。 そして、重質油の流れを水素存在下で酸型触媒と接触させて製造されるキシレンは、キシレンを含む流れとして得られるものであると認められる。 そうすると、先願明細書には、 「エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼンを含有し、さらに、インダン、ナフタレン、C11+及びC12+成分を含有する重質油を供給原料油として水素存在下で、モルデナイト型ゼオライトと白金又はレニウムとを含む酸型触媒と接触させて、キシレンを含む流れを製造する方法」 の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているということができる。 3 本願発明と先願発明との対比 (1) 本願発明について 本願発明と先願発明との対比に先立ち、本願発明の「D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点をもつ」との事項について、審査官が拒絶査定において、明確性がない旨を指摘するので、先ずこの点について検討する。 この事項は、本願発明における「供給物ストリーム」及び「生成物ストリーム」を特定する事項である。そして、「供給物ストリーム」は、例えば、「既知の精製及び石油化学処理から誘導」(本願明細書段落【0020】)されるものであって、様々な(芳香族を含む)炭化水素の混合物であり(例えば、同段落【0037】の【表1】を参照)、また、「生成物ストリーム」も同様に様々な(芳香族を含む)炭化水素の混合物である(例えば、同段落【0038】ないし【0039】の【表2】ないし【表3】を参照)。これらの混合物流れに含まれる様々な炭化水素は、低沸点から高沸点にわたる、様々な沸点をそれぞれ持つものである(必要であれば、例えば、先願明細書の「供給原料A」の沸点(摘示1g【表1】)等を参照)。 このような石油の精製や化学処理から得られる混合物流れは、そこに含まれる(芳香族を含む)各炭化水素の組成等を調べるため、蒸留ガスクロマトグラフィー(蒸留GC)法による測定法が慣用されており、「D2887」は、そのような「蒸留GC」法のうちの一つであって、米国材料試験協会(ASTM)で規定された規格である。そして、「D2887シミュレート蒸留GC法」は、その「D2887」に規定する方法にシミュレートした蒸留GC法であり、規格にシミュレートした測定法は当業者に明らかであると認められる(本願明細書にも特段の説明は付されていない。)。 そして、「蒸留GC法」においては、測定試料について低沸点成分から高沸点成分へ順次測定し、試料のほぼ全量(例えば、99%とか99.5%)を測定した時点で終了するものであり、その終了時点(終端)における成分の沸点が、本願発明の「終端沸点」であると認められる。 そうすると、「D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点」とは、米国材料試験協会(ASTM)の「D2887」の規格にシミュレートした蒸留GC法で、試料の99.5%を測定した時点における成分の沸点、をいうことは明らかである。 そして、本願発明の「供給物ストリーム」及び「生成物ストリーム」は、上記のとおり、低沸点から高沸点にわたる様々な沸点を持つ炭化水素の混合物であるから、「D2887シミュレート蒸留GC法」で測定試料について低沸点成分から高沸点成分へ順次測定し、試料100%のうち99.5%を測定する時点は存在し、その時点における測定された成分の沸点(終端沸点)があること、すなわち、「D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点」をもつことは、明らかである。 そうすると、本願発明の「供給物ストリーム」及び「生成物ストリーム」が「D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点をもつ」との特定事項は、明確であるといえる。 なお、審査官の拒絶査定における、上記事項は明確ではない旨の指摘に対して、審判請求人は、審判請求書についての手続補正書において、上記事項は明確である旨の釈明をしている。 (2) 対比 本願発明と先願発明とを対比する。 先願発明における、「エチルキシレン及び又はテトラメチルベンゼンを含有し、さらに、インダン、ナフタレン、C11+及びC12+成分を含有する重質油」の流れは、本願発明における「ナフタレン及びC_(11)芳香族炭化水素を含む供給物ストリーム」に包含されるものと認められる。 先願発明においては、その供給原料流れに、「水素存在下で、モルデナイト型ゼオライトと白金又はレニウムとを含む酸型触媒と接触させて、キシレンを含む流れを製造する方法」である。他方、本願発明もその供給物ストリームに、「触媒と接触させて、C_(8)芳香族炭化水素を含む生成物ストリームを生成する」方法であり、その生成物ストリームにおける「C_(8)芳香族炭化水素」とは、主に、キシレンである(例えば本願明細書【0011】等参照)と認められる。また、先願発明の触媒「モルデナイト型ゼオライトと白金又はレニウムとを含む酸型触媒」は、本願発明の「固体酸支持物質と、金属成分とを含み、前記固体酸支持物質がモルデン沸石であり、前記金属成分が、白金、錫、及びレニウムから成る群から選択」る触媒に包含されると認められる。なお、本願発明において、「水素存在下」で接触させることについて明示の規定はないが、本願明細書段落【0021】、実施例等によれば、本願発明の接触に水素存在下で接触させる態様が包含されることは、明らかである。 そうすると、先願発明の「キシレンを含む流れを製造する方法」は、本願発明に包含される供給原料に本願発明に包含される触媒を水素存在下で接触させ本願発明と同じC_(8)芳香族炭化水素を含む生成物ストリームを生成する方法であるから、本願発明の「芳香族炭化水素のトランスアルキル化方法」ということができ、触媒の接触も「トランスアルキル化条件」で触媒と接触させているということができる。 以上によれば、本願発明と先願発明とは、 「芳香族炭化水素のトランスアルキル化方法において、該方法は、ナフタレン及びC_(11)芳香族炭化水素を含む供給物ストリームをトランスアルキル化条件で触媒と接触させて、C_(8)芳香族炭化水素を含む生成物ストリームを生成することを含み、前記触媒は、固体酸支持物質と、金属成分とを含み、前記固体酸支持物質がモルデン沸石であり、前記金属成分が、白金、錫、及びレニウムから成る群から選択される芳香族炭化水素のトランスアルキル化方法。」の点で一致し、以下の点Aで一応相違すると認められる。 A 供給物ストリーム及び生成物ストリームについて、本願発明は、「D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点をもつ」と特定するのに対して、先願発明は、そのような特定がされていない点 (以下、「一応の相違点A」という。) 4 一応の相違点Aについての判断 一応の相違点Aに係る本願発明の構成、すなわち、供給物ストリーム及び生成物ストリームが「D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点をもつ」、とは、上記1(1)において検討したとおり、供給物ストリーム及び生成物ストリームが、米国材料試験協会(ASTM)の「D2887」の規格にシミュレートした蒸留GC法で、試料の99.5%を測定した時点における成分の沸点をもつ、ということである。 他方、先願発明の「供給原料油」流れはその具体例(摘示1g【表1】)示されるとおり、様々で広範な沸点を有する(芳香族を含む)炭化水素の混合物の流れであると認められ、また、「キシレンを含む流れ」も様々で広範な沸点を有する(芳香族を含む)炭化水素の混合物であることは明らかである」。 そうすると、先願発明の「供給原料油」流れ、及び、「キシレンを含む流れ」も、「D2887シミュレート蒸留GC法」で測定試料について低沸点成分から高沸点成分へ順次測定し、試料100%のうち99.5%を測定する時点は存在し、その時点における測定された成分の沸点(終端沸点)があること、すなわち、「D2887シミュレート蒸留GC法で測定して99.5重量%の終端沸点」をもつことは、明らかである。 したがって、この一応の相違点Aは、両発明の相違点であるとはいえない。 よって、本願発明は、先願発明と同一である。 5 まとめ 以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が先願発明をした者と同一ではなく、また、この出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもない。 よって、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上によれば、本願発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-03-06 |
結審通知日 | 2013-03-12 |
審決日 | 2013-03-25 |
出願番号 | 特願2007-505068(P2007-505068) |
審決分類 |
P
1
8・
16-
Z
(C07C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 品川 陽子 |
特許庁審判長 |
柳 和子 |
特許庁審判官 |
大畑 通隆 木村 敏康 |
発明の名称 | 多環式芳香族炭化水素のキシレンへの触媒による変換 |
代理人 | 五十嵐 和壽 |