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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1278386
審判番号 不服2011-12803  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-15 
確定日 2013-07-31 
事件の表示 特願2008-520419「サービスアプリケーションとしての無線ゲームを提供するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月18日国際公開、WO2007/008713、平成21年 1月 8日国内公表、特表2009-500127〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2006年7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年7月8日,2005年8月9日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年2月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされたものである。
その後,当審において,平成24年6月5日付けで拒絶理由通知を行ったところ,同年12月10日付けで意見書と手続補正書が提出されたものである。


第2 当審で通知した拒絶理由通知
当審において,平成24年6月5日付けで通知した拒絶理由は,次のA.?C.である。

A.この出願は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしていない。



特許請求の範囲の記載が不明りょうであると共に,発明の詳細な説明(本願では,「明細書」が「発明の詳細な説明」に相当する。)に記載されたものでなく,発明の詳細な説明では特許請求の範囲の記載について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。例えば以下のとおり。

1 請求項1の「デバイスがセルラ通信ネットワークのサービスを使用することを許可する装置」との記載は,何を意味しているのか不明であり,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。「デバイス」とは具体的に何のことであるか不明であり,「許可」とはいかなることを意味しているのか不明であり,請求項1に係る発明のなかでどのようなこと構成を意味しているのか不明確である。そして,これらの不明確な構成は,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
また,「前記データベースに格納された関心情報を処理することにより,ゲームイベントの各形式のそれぞれの関心を判定し,今後のイベントについての情報を処理することにより,前記第2のレベルのゲームサービスに関連するゲームイベントの各形式のそれぞれの発生を判定し,判定されたそれぞれの関心と判定されたそれぞれの発生との比較に基づいて,情報の要求と独立して,各セルラ電話にそれぞれの発生についての情報を送信する」との記載も,何を意味しているのか不明であり,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。「ゲームイベントの各形式」,「今後のイベントについての情報を処理」,「ゲームイベントの各形式のそれぞれの発生を判定」,「情報の要求と独立して」とは,どのような構成を意味しているのか不明であり,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。また,「関心を判定」,「今後のイベントについての情報を処理」,「判定されたそれぞれの関心と判定されたそれぞれの発生との比較」との記載は,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
さらに,「データベースに格納された複数のセルラ電話のそれぞれの加入者情報を処理することにより,前記データベースから,インターネットにアクセスせずにセルラ通信ネットワークの音声サービスを使用することが許可されている複数のセルラ電話を抽出し」,「各サービス群に関連する各課金レート」との記載も,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。「インターネットにアクセスせずにセルラ通信ネットワークの音声サービスを使用することが許可されている」セルラ電話とは,「インターネットにアクセスしない音声サービスを使用することができる」セルラ電話ということか,「インターネットにアクセス」することができなセルラ電話であって,「音声サービスが使用できる」ということか等,意味が不明である。
2 請求項3,4は何を意味しているのか不明であり,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。「ゲームサービスはアドオンサービスを有する」とはどういう意味か不明であり,発明の詳細な説明に記載されたものではなく,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。「セル等電話サービスの結果として提供される」と,請求項4で付加された構成も同様である。
3 請求項5の「カスタマイズ可能なダウンロード」は「カスタマイズ可能な呼び出し音」等と並列に記載されており,発明の詳細な説明の【0028】に「カスタマイズ可能ダウンロード(スクリーンセーバ,着信音等)」との記載を参酌しても何を意味するのか不明である。
4 請求項8に関して,「ニュース」とは「新しい出来事。また,その知らせ。報道。報知。特に新聞・ラジオ・テレビによる報道。[株式会社岩波書店広辞苑第六版]」であるが,賭けを行う機能を含んだゲームサービスの「ニュースサービス」とはどのようなことを意味しているのか不明確である。
5 請求項9において,「各デバイスに関連するユーザ」との記載は何を意味しているのか不明である。そして,当該記載は発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
6 請求項11の「仮想カジノに含まれるユーザ選択の活動の識別情報」との記載は何のことか不明確であり,「ゲームサービス」が当該「識別情報を含む」との記載はどのような意味か不明である。そして,これらの記載は発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
7 請求項13,19の記載は何を意味しているのか不明であり,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
8 請求項21の「それぞれの発生」とは何を意味しているのか不明であり,請求項21全体としても不明確であり,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
9 請求項22に関し,請求人は当該請求項に係る発明について日本国内で権利を発生させることを求めていると認められるが,日本には米国等の「州」に該当する場所がないところ,当該請求項の「州」は何を意味しているのか不明である。
10 請求項23,25の記載では,「装置」が法律の内容を理解し,「位置」が合法であるかを判定しているかのようであり,不明確であると共に,そのような事項は発明の詳細な説明に記載されておらず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
11 請求項24の「送信された情報」との記載では何から何に送信されたのか不明であり,「送信された情報に関連する各発生」との記載は何を意味しているのか不明である。そして,これらの記載は発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
12 請求項27は何を意味しているのか不明であり,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
13 請求項28については,発明の詳細な説明に記載されたものと認められない。
14 請求項1等の「メモリ装置」,「デバイス」,「セルラ通信ネットワーク」,「加入者情報」,「音声サービス」,「セルラ電話」,「第1の部分」,「第1のサービス群」,「第2の部分」,「第2のサービス群」,「第1のレベル」,「第3の部分」,「第3のサービス群」,「第2のレベル」,「ゲームイベントの各形式」,「それぞれの関心を判定」,「今後のイベント」,「それぞれの発生を判定」,「情報の要求と独立」,「各セルラ電話にそれぞれの発生についての情報を送信」,請求項2の「固有のセルラネットワーク」も発明の詳細な説明に記載されておらず,発明の詳細な説明に記載されたものとの関係が不明である。


B.平成23年6月15日付けでした手続補正(補正書4)は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



上記手続補正による補正事項は当初明細書等に記載されておらず,平成22年5月6日付け,平成22年12月14日付けの意見書,及び審判請求書の補正の根拠記載を参酌しても,当初明細書等の記載から明らかなものでもない。
例えば以下のとおり。
1 請求項1の「デバイスがセルラ通信ネットワークのサービスを使用することを許可する」との構成については,平成22年12月14日付け手続補正書で同様に補正している。そして,当該補正書と同日付けの意見書で補正の根拠とされている当初明細書等の【0013】には「デバイス」も「許可する」命令もなく,当初明細書等に記載されておらず,当初明細書等から自明な事項でもない。
2 請求項1等の「メモリ装置」,「第1の部分」?「第3の部分」,「第1のサービス群」?「第3のサービス群」,「第1のレベルのゲームサービス」,「第2のレベルのゲームサービス」,「各サービス群に関連する各課金レート」等の記載も「抽出」という処理も当初明細書等になく,当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
3 上記A.で指摘した箇所については,「4」,「9」を除いて全て当初明細書等に記載されておらず,当初明細書等の記載から自明であるとも認められない。


C.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



1 請求項1について
1-1 請求項1に係る発明の認定
請求項1の記載は不明確であるが,仮に「デバイスがセルラ通信ネットワークのサービスを使用することを許可する装置」は,本願明細書【0017】の「例えば図1に示すように,・・・ゲーム通信装置13は,通信ネットワーク16にゲーム情報を送信し,通信ネットワーク16からゲーム情報を受信する。ゲーム情報はまた,ネットワーク16とコンピュータ18(サーバ等)との間で送信される」との記載と,【0063】の「無線ゲームシステムの様々な実施例の他の態様が,図2?8に図示されている。例えば図2に示す一実施例によれば,通信ネットワークはセルラネットワーク22を有する。」との記載,及び【図1】でゲーム通信装置13は通信ネットワーク16がゲームサービスプロバイダ20のコンピュータ18と接続されていると認められることからみて,「セルラネットワークを介して送受信するコンピュータ」のことであると解釈し,「セルラ通信ネットワーク」は「セルラネットワーク」のことであると解釈する。
また,「前記データベースに格納された関心情報を処理することにより,ゲームイベントの各形式のそれぞれの関心を判定し,今後のイベントについての情報を処理することにより,前記第2のレベルのゲームサービスに関連するゲームイベントの各形式のそれぞれの発生を判定し,判定されたそれぞれの関心と判定されたそれぞれの発生との比較に基づいて,情報の要求と独立して,各セルラ電話にそれぞれの発生についての情報を送信する」は,【0041】の「・・・ゲームサービスを受信することに加入している場合,ユーザ912は,ユーザ912から関心のある情報を求める電子送信されたアンケートを受信してもよい。アンケートへのユーザの回答は,ユーザの関連の顧客プロファイル924に格納されるため,コンピュータ918に送信されてもよい。従って,コンピュータ918がKentuckyDerbyに関する情報を収集又は受信すると,コンピュータ918は,どのユーザ912が一般的に競馬に関する情報又は特にKentuckyDerbyに関する情報を受信する顧客の嗜好を示しているかを決定してもよい。コンピュータ918は,顧客プロファイル924に関連する通信装置913(従って,KentuckyDerby又は一般的に競馬についての関心を示すユーザ912)のみに情報を配布してもよい。」との記載からみて,「ユーザーの関心情報に基づいて情報を配布する」ことであると解釈する。
さらに,「データベースに格納された複数のセルラ電話のそれぞれの加入者情報を処理することにより,前記データベースから,インターネットにアクセスせずにセルラ通信ネットワークの音声サービスを使用することが許可されている複数のセルラ電話を抽出し」は,【0013】の「ゲームシステムにより,参加者は,遠隔及び/又は移動位置からゲーム活動に参加することが可能になる。可能なゲーム活動は,カジノにより提供されるようなギャンブルを含む。・・・ゲームはまた,賭けでないゲーム及びイベントを含んでもよい。・・・ゲームシステムは,セルラネットワーク又はプライベート無線及び/又は有線ネットワークのような通信ネットワークで実施されてもよい。後者の例は,WiFi及びWiMaxネットワークを含む。一実施例では,ゲームシステムの通信ネットワークは,完全にインターネットと無関係である。他の実施例では,ゲームシステム動作は,セキュリティ問題がない情報のみがインターネットを介して送信されるように,及び/又は情報が暗号化され得るように,インターネットの最小限の使用を行う。通信ネットワークにより,プレイヤが遠隔位置(例えばカジノのゲーム地域の外側)からゲームに参加することが可能になることが好ましい。また,システムにより,ゲーム活動に参加中にプレイヤが移動することを可能にしてもよい。」,及び【0020】の「少なくとも1つの実施例では,ゲーム情報の通信は,インターネットの関与なしに行われる。しかし,特定の実施例では,ゲーム情報の部分は,インターネットで送信されてもよい。また,ゲーム情報の一部又は全部は,部分的にインターネット通信パスで送信されてもよい。特定の実施例では,ある情報は完全に又は部分的にインターネットで送信されるが,この情報はゲーム情報ではなく,安全に保持される必要のないゲーム情報である。例えば,ユーザのゲーム通信装置でテーブルゲームのグラフィック表示を生じるデータは,少なくとも部分的にインターネットで送信されてもよいが,ユーザにより送信される賭け情報は,完全に非インターネット通信ネットワークで送信され得る。」等のインターネットに関する記載からみて,「ゲーム情報の通信は,インターネットの関与なしに行われ」との意味であると認められる。

そうすると,請求項1に係る発明は以下のとおりのものである(下線は当審にて解釈した部分。)。
「少なくとも1つのプロセッサと,前記プロセッサに電子的に結合されたメモリ装置とを有し,セルラネットワークを介して送受信するコンピュータであって,
前記メモリ装置は,前記プロセッサにより実行されたときに,前記プロセッサに対して,
ゲーム情報の通信は,インターネットの関与なしに行われ,
複数のセルラ電話のうち第1の部分が加入する第1のサービス群を特定する前記加入者情報の部分を処理することにより,前記複数のセルラ電話から,前記セルラネットワークのゲームサービスを許可されていない前記複数のセルラ電話のうち第1の部分を抽出し,
前記複数のセルラ電話のうち第2の部分が加入する第2のサービス群を特定する前記加入者情報の部分を処理することにより,前記複数のセルラ電話から,前記セルラネットワークの第1のレベルのゲームサービスを許可されている前記複数のセルラ電話のうち第2の部分を抽出し,
前記複数のセルラ電話のうち第3の部分が加入する第3のサービス群を特定する前記加入者情報の部分を処理することにより,前記複数のセルラ電話から,前記セルラネットワークの第2のレベルのゲームサービスを許可されている前記複数のセルラ電話のうち第3の部分を抽出し,前記第2のレベルのゲームサービスは,賭けを行う機能を含み,
前記セルラネットワークに結合された1つ以上のコンピュータにより実行される1つ以上のサービスアプリケーションへの前記複数のセルラ電話のアクセスを可能にすることにより,各セルラ電話が許可されているレベルのゲームサービスに基づいて,前記セルラネットワークの各レベルのゲームサービスが前記複数のセルラ電話のそれぞれによりアクセスされることを可能にし,
前記複数のセルラ電話のうち前記第2及び第3の部分の各加入者が各レベルのゲームサービスにアクセスしたときに,課金情報を前記データベースに送信することにより,各サービス群に関連する各課金レートに基づいて,前記セルラネットワークの使用と各レベルのゲームサービスの使用との双方を前記複数のセルラ電話のうち前記第2及び第3の部分の各加入者に課金し,
前記セルラ電話のうち第3の部分のセルラ電話毎に,
ユーザーの関心情報に基づいて情報を配布する
ことを実行させる命令を格納する
コンピュータ。」(以下,「本願発明1」という。)

1-2 引用刊行物
刊行物1:柿井 弘,まるごと図解 最新iモードがわかる,株式会社技術評論社,2000年9月29日,初版第2刷,.36-37,48-49,62-63,78-83,94-95,108-111
刊行物2:特開2003-053042号公報
刊行物3:特開2002-56270号公報
刊行物4:特開2002-263375号公報
刊行物5:特開2001-340656号公報
刊行物6:特表2004-536638号公報

(1)刊行物1
本願の優先権主張の日より前に公開された刊行物1には,以下の記載がある。
(1a)「●基本料金
iモードを利用するためには,携帯電話の使用料の他に基本料金として300円/月が必要です。その内訳はパケット/ライトプランの使用量が200円/月,iモード使用料が100円/月となっています。」(48ページ4行?7行)
(1b)「iモードのネットワークは,iモードセンターを中心にして,パケット通信網,専用線,インターネット網に接続されています。情報は,各サービスにより適切なルートに分けられます。」(62ページ1行?3行)
(1c)「オンラインサービスの中には,セキュリティに細心の注意を払う必要があるものが少なくありません。特に金銭の授受が発生するモバイルバンキングなどの場合は,専用線を使用します。・・・専用線を使うことにより,情報が物理的にインターネット網に流れないようにしているのです。」(62ページ下から8行?63ページ3行)
(1d)「情報の秘匿性や安定した回線品質という点では,専用線接続が望ましい接続方式です。」(78ページ10行?11行)
(1e)「●iモード情報料
オンラインサービスの中には,iモード情報料が課金されるメニューがあります。料金は,月額50円?300円が一般的です。」(78ページ20行?21行)
(1f)「●オンラインサービスの種類
・・・
サービスメニューは,月ごとにNTTドコモから発信されている「iモード」メニュー一覧で確認できますが,新着サイトは,直接iモード端末のiMenu『今週のお知らせ』で知ることができます。
・・・
エンターテイメント系では,・・・ネットワークゲーム,プレゼントコーナーなど,面白いサービスが次々に提供されています。」(80ページ4行?81ページ8行)
(1g)「iモードの有料サイトにアクセスする場合には,iMenuの中のマイメニューに登録する必要があります。なぜこのような作業が必要かというと,マイメニューに登録されてはじめてiモード情報料が発生していることがiモードセンター側に知らされるからです。
実は,マイメニューはiモードセンターで管理されていて,マイメニューの情報はiモードセンターの個人用データベースに登録されているのです。したがって,料金回収時のiモード情報料の計算は簡単で,月毎にマイメニューに登録されているメニューから,iモード情報料が発生する有料サイトをピックアップして足し算をすればよいのです。」(108ページ11行?19行)

記載(1e),(1f)からみて,ネットワークゲームには有料のものがあることは明らかである。
そうすると,記載(1a)?(1g)からみて,刊行物1には以下の発明が記載されている。
「iモードセンターを中心にして,パケット通信網,専用線,インターネット網に接続されており,
オンラインサービスの一つとして有料であるネットワークゲームを有し,
iモードの有料サイトにアクセスする場合には,マイメニューに登録する必要があり,マイメニューに登録されてはじめてiモード情報料が発生していることがiモードセンター側に知らされ,
マイメニューの情報はiモードセンターの個人用データベースに登録されており,
料金回収時のiモード情報料の計算は,月毎にマイメニューに登録されているメニューから,iモード情報料が発生する有料サイトをピックアップして足し算をする
iモードによるネットワークゲームシステム。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
本願の優先権主張の日より前に公開された刊行物2には,以下の記載がある(下線は,当審にて付与。)。
(2a)「【0043】前記ユーザ端末4としては,携帯電話や固定的に設置されるパーソナルコンピュータとしての端末などゲーム端末として使用可能なものであれば何れで構成しても良い。但し,前記ユーザ端末4については,前述した動画データ,音声データや静止画像データを表示するための表示手段14及びスピーカ19が夫々設けられている。
【0044】すなわち,この図1に示すカジノシステム1は,インターネット網6を介して不特定多数のユーザの所有する端末4が接続されるようになされている。ユーザ端末4は,インターネット網6などの通信回線網を介して互いに音声データや文字データの授受を例えばTDMA(TimeDivisionMultipleAccess)と呼ばれる時分割多重接続方式で行うことができる。
【0045】この発明における広域ネットワークとは,前記インターネット網6の他,前記ユーザ端末4が携帯電話を採用した場合には,携帯電話会社が運営するパケット網/PDC網,基地局や情報センタなどがこれに相当する。」
(2b)「【0080】上述した実施の形態では,ユーザ端末4とゲームサーバ7との間のインターネット網6で,前記遊技条件情報が送受信されるようにしているが,前記インターネット網6で第3者の不正がないように図6に示すカジノシステムでは,監視サーバ3とユーザ端末4との間でインタ-ネット網6を介在することなく,専用回線5にて接続するように構成している。この変形例では,ユーザ端末4と監視サーバ3との間で遊技条件情報を送受信する回線をも専用回線としているから,より第3者の不正が働き難くなる環境を提供でき得るものである。」

(3)刊行物3
本願の優先権主張の日より前に公開された刊行物3には,以下の記載がある。
(3a)「【0026】前記エンティティによる情報端末装置の操作により選択可能な前記所定事象の種類が,前記エンティティの属性に応じて規定されていることを特徴とする(請求項13記載の発明)。
【0027】この場合,エンティティの属性に応じて適切な種類の所定事象が提供されるため,本システムが社会の一般的な道徳観念に反する事態を防止できる。」
(3b)「【0033】図1に示すシステムは,ネットワークを通じて後述する種々のデータを送受信するデータ通信手段1と,インターネット上のゲームサイトに「ルーレット」,「スロット」,「競馬」等の複数種類のゲームを提供するゲーム提供手段2と,ゲーム提供手段2により提供されるゲーム(所定事象)の結果に応じて特典を付与することを決定する決定手段3とを備えている。本実施形態のシステムでは,複数のエンティティEと,デパートや航空会社等の業者Fとが当事者として含まれている。エンティティEは携帯電話,PHS等の画像表示機能を有するモバイル(本発明の「情報端末装置」)4を有している。業者Fはその業務に係るデータ処理を実行する業務システム5を有している。
【0034】エンティティEがそのモバイル4を操作して業者Fの業務システム5により開設されている業者Fのホームページ又は業者Fにリンクされたホームページにアクセスし,自己のメールアドレスを入力する。」
(3c)「【0037】ゲームサイトで準備されているゲームの種類がエンティティEの年齢に応じて制限される。具体的には,業者Fのホームページにアクセスする際に入力されたメールアドレス等の情報に基づいて業者Fのサーバに記憶された生年月日の情報によりエンティティEが幼年,少年であることが確認された場合は,ギャンブル性が高くよからぬ影響があると懸念されるゲーム(「競馬」等)が省略された形でその他の種類のゲームのみがモバイル4のディスプレイに表示される。」
(3d)「【0047】また,エンティティEが幼年,少年であるか否か(属性)に応じて適切な種類のゲームが提供されるため,本システムが社会の一般的な道徳観念に反する事態を防止できる。」

(4)刊行物4
本願の優先権主張の日より前に公開された刊行物4には,以下の記載がある(下線は,当審にて付与。)。
(4a)「【0040】ゲームセンタ100に訪れた利用者は,まず端末110の表示部130に表示された種々のガイドにしたがって本人の氏名,嗜好等の所定のユーザ情報を入力部120から登録する。」
(4b)「【0046】上述の各欄に入力されたデータは登録/転送要求部125によりサーバ410へ転送され,サーバ410によりユーザ情報記録部420に記録される。名前欄14,住所欄16,電子メール・アドレス欄18,電話番号欄20,年齢欄22,誕生日欄24および性別欄26等は,利用者を識別する際に用いられる識別データが入力される欄であり,サーバ410はこれらの識別データに基づいてユーザ識別子を作成することができる。一方,ジャンル欄30,ゲーム名欄38およびサービス欄42は利用者のゲームに対する嗜好または希望等の嗜好情報が入力される欄であり,ゲーム機300a等のサービス処理部340a等は,この嗜好情報に基づいて種々のサービスを提供することができる。」
(4c)「【0053】3.利用者の嗜好情報によるサービス
(1)新着ゲーム通知サービス
上述の新着ゲーム通知サービスは利用者のゲーム履歴に基づくサービスであったが,嗜好情報のジャンル欄32で格闘ゲームを選択した利用者に対して新着ゲームに関する通知を転送してもよい。
【0054】(2)ランキング・サービス
上述のランキング・サービスは利用者のゲーム履歴に基づくサービスであったが,利用者の嗜好情報に基づいて,あるゲームを嗜好する利用者に対してのみ当該ゲームのランキングを転送することもできる。」

1-3 本願発明1と刊行物1記載の発明の対比
刊行物1記載の発明は,iモードが「iモードセンターを中心にして,パケット通信網,専用線,インターネット網に接続されており,オンラインサービスの一つとしてネットワークゲームを有し」ているから,
本願発明1の「セルラネットワークを介して送受信するコンピュータ」とは,「セルラネットワークを介して送受信する装置」である点で共通する。

また,刊行物1記載の発明は,「オンラインサービスの一つとして有料であるネットワーク ゲームを有し」ているから,
本願発明1の「複数のセルラ電話のうち第2の部分が加入する第2のサービス群を特定する前記加入者情報の部分を処理することにより,前記複数のセルラ電話から,前記セルラネットワークの第1のレベルのゲームサービスを許可されている前記複数のセルラ電話のうち第2の部分を抽出し」,「複数のセルラ電話のうち前記第2及び第3の部分の各加入者が各レベルのゲームサービスにアクセスしたときに,課金情報を前記データベースに送信することにより,各サービス群に関連する各課金レートに基づいて,前記セルラネットワークの使用と各レベルのゲームサービスの使用との双方を前記複数のセルラ電話のうち前記第2及び第3の部分の各加入者に課金し」とは,
「ゲームサービスを利用する加入者に課金」する点で共通する。

そうすると,刊行物1記載の発明と本願発明1は,
「セルラネットワークを介して送受信する装置であって,
ゲームサービスがセルラ電話のそれぞれによりアクセスされることを可能にし,
ゲームサービスを利用する加入者に課金する装置。」で一致し,以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明1が「少なくとも1つのプロセッサと,プロセッサに電子的に結合されたメモリ装置とを有し,セルラネットワークを介して送受信するコンピュータ」であり,「メモリ装置」が「プロセッサにより実行されたときに,プロセッサに対して」,「実行させる命令を格納する」のに対し,刊行物1記載の発明は,プロセッサとメモリ装置を有したコンピュータであるか不明である点。

<相違点2>
本願発明1は,「ゲーム情報の通信は,インターネットの関与なしに行われ」るのに対して,刊行物1記載の発明はそのようなものであるか不明である点。

<相違点3>
本願発明1は,「複数のセルラ電話のうち第1の部分が加入する第1のサービス群を特定する加入者情報の部分を処理することにより,複数のセルラ電話から,セルラネットワークのゲームサービスを許可されていない複数のセルラ電話のうち第1の部分を抽出」することを実行する命令をメモリ装置が格納するのに対して,刊行物1記載の発明はそのような命令をメモリ装置が格納するのか不明である点。

<相違点4>
本願発明1は,「複数のセルラ電話のうち第2の部分が加入する第2のサービス群を特定する加入者情報の部分を処理することにより,複数のセルラ電話から,セルラネットワークの第1のレベルのゲームサービスを許可されている複数のセルラ電話のうち第2の部分を抽出」することを実行する命令をメモリ装置が格納するのに対して,刊行物1記載の発明はそのような命令をメモリ装置が格納するのか不明である点。

<相違点5>
本願発明1は,「第2のレベルのゲームサービスは,賭けを行う機能を含み」,「複数のセルラ電話のうち第3の部分が加入する第3のサービス群を特定する加入者情報の部分を処理することにより,複数のセルラ電話から,セルラネットワークの第2のレベルのゲームサービスを許可されている複数のセルラ電話のうち第3の部分を抽出」することを実行する命令をメモリ装置が格納するのに対して,刊行物1記載の発明はそのような命令をメモリ装置が格納するのか不明である点。

<相違点6>
本願発明1は,「セルラネットワークに結合された1つ以上のゲームサービスプロバイダのコンピュータにより実行される1つ以上のサービスアプリケーションへの複数のセルラ電話のアクセスを可能にすることにより,各セルラ電話が許可されているレベルのゲームサービスに基づいて,セルラネットワークの各レベルのゲームサービスが複数のセルラ電話のそれぞれによりアクセスされることを可能に」することを実行する命令をメモリ装置が格納するのに対して,刊行物1記載の発明はそのような命令をメモリ装置が格納するのか不明である点。

<相違点7>
本願発明1は,「複数のセルラ電話のうち第2及び第3の部分の各加入者が各レベルのゲームサービスにアクセスしたときに,課金情報を前記データベースに送信することにより,各サービス群に関連する各課金レートに基づいて,セルラネットワークの使用と各レベルのゲームサービスの使用との双方を複数のセルラ電話のうち第2及び第3の部分の各加入者に課金」することを実行する命令をメモリ装置が格納するのに対して,刊行物1記載の発明はそのような命令を格納したメモリ装置があるか不明である点。

<相違点8>
本願発明1は,「セルラ電話のうち第3の部分のセルラ電話毎に,ユーザーの関心情報に基づいて情報を配布する」することを実行させる命令をメモリ装置が格納するのに対して,刊行物1記載の発明はそのような命令を格納したメモリ装置はない点。

1-4 相違点の判断
<相違点1について>
プロセッサにより実行されたときにプロセッサに対して実行させる命令をメモリ装置に格納して,情報処理をプロセッサとメモリ装置を有したコンピュータで行うことは当業者に当然の技術事項であるから,本願発明1の相違点1に係る構成は格別のものではない。

<相違点2について>
刊行物1の記載(1c)や刊行物2の記載(2b)には,セキュリティを要する通信をインターネットを介さずに専用線で行うことが記載されており,ゲーム情報の通信を必要に応じてインターネットの関与無しに行うことは,当業者が容易に想到したことである。

<相違点3,4について>
刊行物1記載の発明は,ネットワークゲームのサービスを受けるためにマイメニューに登録してiモードセンター側に知らされており,当該マイメニューの情報からどのようなゲームサービスを許可されているか,或いは許可されていないかは認識されるから,許可されていない携帯電話や特定のゲームサービスを許可されている又はされていない携帯電話を抽出することは,必要に応じて当業者が適宜なし得る事項である。
そして,実行させる命令をメモリ装置に格納して,情報処理をプロセッサとメモリ装置を有したコンピュータで行うことは当業者に当然の技術事項にすぎない。

<相違点5について>
刊行物2には,記載(2a),(2b)と図1及び6からみて,携帯電話をユーザ端末にしてカジノを行うゲームサーバとの間を専用回線でつなぐ点が記載されている。
そして,ネットワークゲームの一種として刊行物2のカジノのように賭けを行うゲームを採用することは当業者が容易に想到したことであるし,マイメニューの情報からどのようなゲームサービスを許可されているか,或いは許可されていないかは認識されるから,賭けを行う特定のゲームサービスを許可されている携帯電話を抽出することは,必要に応じて当業者が適宜なし得る事項である。
そして,実行させる命令をメモリ装置に格納して,情報処理をプロセッサとメモリ装置を有したコンピュータで行うことは当業者に当然の技術事項にすぎない。

<相違点6について>
刊行物3に記載されたものは,記載(3c)の「業者Fのホームページにアクセスする際に入力されたメールアドレス等の情報に基づいて業者Fのサーバに記憶された生年月日の情報によりエンティティEが幼年,少年であることが確認された場合は,ギャンブル性が高くよからぬ影響があると懸念されるゲーム(「競馬」等)が省略された形でその他の種類のゲームのみがモバイル4のディスプレイに表示される」ものであり,記載(3b)の「携帯電話,PHS等の画像表示機能を有するモバイルを有して」との記載,及びメールアドレスにより携帯電話が特定されることからみて,携帯電話毎にアクセスできるゲームのレベルが決まっているといえる。
そして,iモードによるネットワークゲームシステムである刊行物1記載の発明はゲームのサービスを行うものであって,幼年,少年に良からぬ影響があると懸念されるゲームを幼年,少年に提供しないようにすることは社会的にみて当然であるから,刊行物1記載の発明に,携帯電話毎にアクセスできるゲームが決まっている刊行物3に記載された技術を適用することは,当業者が容易に想到したことである。
そして,実行させる命令をメモリ装置に格納して,情報処理をプロセッサとメモリ装置を有したコンピュータで行うことは当業者に当然の技術事項にすぎない。

<相違点7について>
従量制で課金されるネットワークゲームは当業者に周知であって(特開2002-109376号公報の【0013】,特開2002-253866号公報の【0046】参照。),ゲームサービスにアクセスしたときに課金するものである。また,ゲームにより課金を変えることは当然の事項にすぎない。
そして,実行させる命令をメモリ装置に格納して,情報処理をプロセッサとメモリ装置を有したコンピュータで行うことは当業者に当然の技術事項にすぎない。

<相違点8について>
刊行物4には,利用者の嗜好情報により新着ゲームやランキングなどの情報を転送することが記載されており,本願発明1のユーザーの関心情報に基づいて情報を配布する事項に相当し,刊行物1記載の発明のゲームも種々のゲームがあり,ユーザーは種々の関心を持つと認められるから,刊行物1記載の発明に当該事項を適用することは当業者が容易に想到したことである。そして,どのようなゲームについて適用するかは,当業者が実施時に適宜決める事項である。
そして,実行させる命令をメモリ装置に格納して,情報処理をプロセッサとメモリ装置を有したコンピュータで行うことは当業者に当然の技術事項にすぎない。

以上のとおりであり,本願発明1の作用効果は,刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項から予測できる程度のものである。

1-5 まとめ
したがって,本願発明1は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 請求項2について
請求項1についての検討に加え,iモードは,株式会社NTTドコモが提供する携帯電話向けのサービスであり,当該携帯電話で電話をかけることができることは技術常識である。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求項3について
請求項1についての検討に加え,刊行物1に記載された発明において,「マイメニュー」への登録は,請求項3に係る発明の「アドオン・サービス」に相当する。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 請求項4?5
請求項1についての検討に加え,一つのサービスは他のサービスに入っていることを前提で行えるようにすることは社会一般で行われていることであり,刊行物1記載の発明においてそのようなことをすることは,当業者が容易に想到することである。また,他のサービスをどのようなものにするかは,当業者が適宜決めうる事項であり,請求項5により付加された構成とすることも格別のことではない。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 請求項6?7
請求項1についての検討に加え,携帯電話を利用した際に請求書が生成されて送られてくることは文献を例示するまでもなく周知である。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 請求項8
請求項1についての検討に加え,ゲームサービスとして,具体的にいかなるサービス(コンテンツ)を提供するかは,当業者が適宜設計しうる事項にすぎない。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 請求項9,10,15
請求項1の検討において,「賭け」のサービスについては,<相違点5について>で検討したとおりであり,「カジノ」については刊行物2に記載されている。通信を用いるゲームである点については,刊行物1記載の発明は通信を用いるゲームであると認められる。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

8 請求項11
ゲームサービスにおいて,ユーザーが選択した情報を用いることは一般的なことにすぎない。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

9 請求項12
ネットワークとして具体的にいかなるものを採用するかは,当業者が適宜設計しうる事項にすぎない。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

10 請求項13,14
刊行物1の記載(1g)に,マイメニューに登録されているメニューからiモード情報料が発生する有料サイトをピックアップして足し算をし,情報料を計算する旨が示されていることから,セル等電話がどのゲームサービスを許可されているか判定されるものであると認められ,記載(1e)には,料金が月額として記載されている。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

11 請求項16
1回のサービスの提供毎に,所定の課金を行うことは,商取引一般においてごく一般的に行われている,文献を例示するまでもなく周知の事項である。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

12 請求項17?19
個別に課金するものを複数組み合わせて課金することは,商取引一般においてごく一般的に行われている周知の事項であり,家族割引も周知な事項である(必要であれば,特開2002-135468号公報の【0030】,【0037】,【0040】,【0046】,【0049】,特開2001-344400号公報の【0057】参照)。また,子供に対して所定のサービスの提供をしないよう設計することも,刊行物5の【0015】,【0024】,【0025】で例示されるように周知のものである。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?5に記載された発明及び周知な事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

13 請求項20
サービスに対して課金する際に,一定の使用量までを基本料金とし,当該一定の使用量を超過した場合に,超過した使用量に応じた超過料金を基本料金に加えて課金することは,本願出願前において,NTTドコモの「パケットパック」等で,実施されている周知の事項にすぎないことから,ゲームサービスを提供する際に,そのような周知の事項を考慮した課金を行うことに格別の困難性はない。
また,一定の基本料金で,所定のサービスを使い放題にすることも,本願出願時において実施されている周知の事項にすぎない。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

14 請求項21?25
刊行物6の【0008】,【0013】,【0031】,【0035】,【0038】,【0039】には,ユーザー(ゲームコントローラ)の場所によりゲームのタイプを規制する思想が開示されており,刊行物1に記載された発明において,刊行物5に開示の思想を取り入れて本請求項に係る構成とすることに格別の困難性はない。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4,6に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

15 請求項26
iモードはどのようなゲームを利用するかは記載(1g)に示されているようにマイメニューの登録により行うのであり,賭けのゲームを登録しないようにすることは適宜なし得ることである。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

16 請求項27
ゲームには参加型のものと非参加型のものがあることは当業者に周知な事項であり,カジノ等のゲームが参加型であることも当業者に周知である。そして,賭け以外のゲームを参加型とするか非参加型とするかは当業者の設計的事項と認められる。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

17 請求項28
どのようなゲームをいくつ設けるかは,当業者の設計的事項である。
したがって,本請求項に係る発明は刊行物1?4に記載された発明及び周知な技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第3 平成24年12月10日付けの手続補正書による補正
上記の拒絶理由通知に対し,請求人は特許請求の範囲において,請求項22,24,28を次のように補正した。(下線部は補正箇所。下線は当審にて付与。)
[補正前(平成23年6月15日付け手続補正書)]
【請求項22】
第2の位置が第1の位置と同じ都市及び州のうち少なくとも1つである場合,第1の位置は,第2の位置の近くであると判定される,請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記第2のレベルのゲームサービスは,各セルラ電話を使用して,送信された情報に関連する各発生でそれぞれ賭けを行うことを可能にすることを含む,請求項23に記載の装置。
【請求項28】
前記第2のレベルのゲームサービスは,前記第1のレベルのゲームサービスに含まれるものより多くのゲームを含む,請求項1に記載の装置。

[補正後(平成24年12月10日付け手続補正書)]
【請求項22】
第2の位置が第1の位置と同じ都市及び区域のうち少なくとも1つである場合,第1の位置は,第2の位置の近くであると判定される,請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記第2のレベルのゲームサービスは,各セルラ電話を使用して,前記送信された情報に関連する各発生でそれぞれ賭けを行うことを可能にすることを含む,請求項23に記載の装置。
【請求項28】(削除)


第4 当審の判断
上記補正により,拒絶理由Aの9,13,拒絶理由Bの3における拒絶理由Aの13該当部,拒絶理由Cの17の拒絶理由は解消したが,他の拒絶理由は解消していない。
拒絶理由Cについては,平成23年6月15日付け手続補正書の請求項1の記載が不明りょうであることから「第2 C.1 1-1」のとおり認定したが,仮に平成23年6月15日付け手続補正書から補正されていない平成24年12月10日付け手続補正書の請求項1に記載されたとおりだとしても,結論には影響しない。

請求人は平成24年12月10日付け意見書の「4.(1)」において,「『インターネットにアクセスせずにセルラ通信ネットワークの音声サービスを使用することが許可されている』とは,セルラ通信ネットワークの音声サービスを使用することができるセルラ電話であり,インターネットにアクセスしないインターネットであることを意味します。」と主張している。しかしながら,上記拒絶理由「A.1」で示した「『データベースに格納された複数のセルラ電話のそれぞれの加入者情報を処理することにより,前記データベースから,インターネットにアクセスせずにセルラ通信ネットワークの音声サービスを使用することが許可されている複数のセルラ電話を抽出し』,(中略)との記載も,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。」との拒絶理由について,発明の詳細な説明における記載箇所を示しておらず,「インターネットにアクセスしないインターネットであることを意味します。」との不明りょうな主張を行っている。当審において,この点に関して請求人に電話で説明を求め,回答の平成25年2月4日付けファクシミリの「4.」及び平成25年2月12日付けファクシミリの「2.」では当初明細書の【0013】,【0020】,【0024】?【0026】,【0067】段落を示しているが,それらの箇所を見ても,「データベースに格納された複数のセルラ電話のそれぞれの加入者情報を処理することにより,前記データベースから,インターネットにアクセスせずにセルラ通信ネットワークの音声サービスを使用することが許可されている複数のセルラ電話を抽出し」との構成は記載されておらず,当該構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。
また,上記拒絶理由「A.1」で示した「『前記データベースに格納された関心情報を処理することにより,ゲームイベントの各形式のそれぞれの関心を判定し,今後のイベントについての情報を処理することにより,前記第2のレベルのゲームサービスに関連するゲームイベントの各形式のそれぞれの発生を判定し,判定されたそれぞれの関心と判定されたそれぞれの発生との比較に基づいて,情報の要求と独立して,各セルラ電話にそれぞれの発生についての情報を送信する』との記載も,何を意味しているのか不明であり,発明の詳細な説明に記載されたものとも認められず,発明の詳細な説明では当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとも認められない。」との拒絶理由について,請求人は前記意見書の「4.(1)」において,「『ゲームイベントの各形式のそれぞれの関心』については,明細書段落0041に,一例として競馬についての関心が示されており,ユーザによる何からのイベントに対する関心を意味しています。本願発明では,このような関心を示すユーザに対して適切な情報を送信しています。このような処理は,請求項の記載から当業者に明瞭に理解できるものと思料します。また,明細書にも明確かつ十分に記載されています。」と主張している。しかしながら,【0041】段落には判定や比較等の記載はない。平成25年2月4日付けファクシミリの「5.」では,「明細書段落0041に記載のように関心のあるユーザのみに情報を配布するために,それぞれの関心と,それぞれの発生との比較が行われることは自明であると思料します。」と主張しているが,【0041】にそのようなことまで記載されているということはできない。
さらに,拒絶理由B.に示したように,これらの構成は出願当初明細書等に記載されておらず,当初明細書等の記載から明らかなものでもない。
拒絶理由A.B.について,他にも縷々主張しているが,出願当初明細書及び図面等に基づかない主張である。

また,拒絶理由Cについて,請求人は同意見書の「4.(3)」において以下のように主張している。
1.相違点2について,刊行物1に記載のiモードは,上記のようにインターネットに基づくサービスであるため,刊行物1には,本願発明のように「インターネットにアクセスせずにセルラ通信ネットワークの音声サービスを使用することが許可されている複数のセルラ電話を抽出」することは記載されていません。また,このような本願発明の特徴は,刊行物2にも記載されていません。
2.相違点3?6について,本願発明のように加入者情報によって複数のレベルのゲームサービスを提供することは,刊行物1に記載されていません。また,このような本願発明の特徴は,刊行物2及び3にも記載されていません。
3.相違点8について,本願発明のようにゲームイベントの関心を判定し,それぞれの発生についての情報を送信することは,刊行物1に記載されていません。また,このような本願発明の特徴は,刊行物4にも記載されていません。
更に,上記の相違点は,刊行物5及び6にも記載されていません。」

1.については,このような抽出は既に示したように当初明細書等や補正後の発明の詳細な説明等に記載されていないが,平成25年2月12日付けファクシミリの「2.」等では本願明細書の【0067】における「顧客がゲーム用の装置を使用する場合,必要に応じてシステムは音声電話の発信又は受信を妨げてもよい。更に,必要に応じて音声は完全に除去されてもよい。更に,装置はインターネットに“接続”することを許可されないことが好ましい。」,「ある実施例では,特定の非ゲーム情報は,インターネットを含むパスで転送されてもよいが,システムのゲーム活動に関する他の情報は,インターネットを含まないパスで転送される。」との記載を根拠としているので,「ゲーム情報の通信は,インターネットの関与なしに行われ」ることを意味していると認められる。
そうすると,当審拒絶理由通知の「C. 1-4 相違点の判断 <相違点2について>」で示したとおり,当該構成は当業者が容易に想到したことである。
2.については,当審拒絶理由通知の「C. 1-4 相違点の判断 <相違点3,4について>,<相違点5について>,<相違点6について>」で示したとおりである。
3.についても当審拒絶理由通知の「C. 1-4 相違点の判断 <相違点8について>」で示したとおりである。


第5 むすび
したがって,
この出願は,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号,第2号に規定する要件を満たしておらず,
平成23年6月15日付けでした手続補正(補正書4)は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず,
この出願の請求項1?27に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,
本願は,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-01 
結審通知日 2013-03-05 
審決日 2013-03-18 
出願番号 特願2008-520419(P2008-520419)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 536- WZ (A63F)
P 1 8・ 561- WZ (A63F)
P 1 8・ 537- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古川 直樹  
特許庁審判長 鈴野 幹夫
特許庁審判官 樋口 信宏
中川 真一
発明の名称 サービスアプリケーションとしての無線ゲームを提供するシステム  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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