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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1278803
審判番号 不服2011-18583  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-29 
確定日 2013-09-04 
事件の表示 特願2000-398747「毛髪セット剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年7月10日出願公開、特開2002-193766〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年12月27日の出願であって、平成22年3月31日付けで拒絶理由が通知され、同年6月2日に手続補正がなされるとともに同日付けで意見書が提出されたが、平成23年5月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年8月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、平成22年6月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】 組成物全量基準で、下記の一般式(1)で表される反応性シリコーン系ブロック共重合体(A)0.01?30重量%、皮膜形成性高分子(B)0.01?20重量%、及び下記の一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体(C)または下記の一般式(3)で表されるシリコーン化合物(D)0.01?10.0重量%を含有することを特徴とする毛髪セット剤組成物。
一般式(1):
【化1】

[式中、R^(1)は互いに独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、フェニル基又はフェネチル基から選ばれる脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基、X^(1)は
一般式:
-R^(3)-Z^(1)(R^(3)は直接結合または炭素原子数1?20の2価炭化水素基、Z^(1)はアミノ基含有基またはアンモニウム基含有基を表す。)で表される反応性官能基を表し、R^(2)は互いに独立して、R^(1)またはX^(1)のいずれかを表し、nは2?4の整数であり、aは少なくとも2の整数であり、cは少なくとも4の整数であり、dは少なくとも2の整数であり、b×dは少なくとも1の数であり、Yは炭素-珪素によって隣接珪素原子にそして酸素原子によってポリオキシアルキレンブロックに結合し、-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH(CH_(3))CH_(2)-又は-(CH_(2))_(4)-から選ばれる2価の有機基を表し、各シロキサンブロックの平均分子量は250?1,000,000であり、各ポリオキシアルキレンブロックの平均分子量は200?10,000であり、シロキサンブロックは共重合体の25?95重量%を構成し、そしてブロック共重合体は20,000?1,500,000の平均分子量を有する。]
一般式(2):
【化2】

[式中、R^(4)は、互いに独立して、水素、水酸基、置換もしくは無置換の1価の炭化水素基、アルコキシ基、または式-CxH2xO(CyH2yO)zR^(7)で表される基であり、R^(5)、R^(6)は、互いに独立して、置換もしくは無置換の1価の炭化水素基、または式-CxH2xO(CyH2yO)zR^(7)で表される基であり、xは、互いに独立して、2?6の整数であり、yは2?4の整数であり、zは少なくとも4の整数であり、R^(7)は互いに独立して、水素、置換もしくは無置換の1価の炭化水素基であり、mは、0?500の整数であり、そしてpは、0?100の整数である。但し、pが0であるとき、R^(4)及びR^(6)で表される全部の基のうち少なくとも1つが-CxH2xO(CyH2yO)zR^(7)で表される基である。]
一般式(3):
【化3】

[式中、R^(9)は、互いに独立して、水素、置換もしくは無置換の1価の炭化水素基、X^(2)は
一般式:
-R^(11)-Z^(2)(R^(11)は直接結合または炭素原子数1?20の2価炭化水素基、Z^(2)は反応基含有基を表す)で表される反応性官能基を表し、R^(8)は、互いに独立して、水素、水酸基、置換もしくは無置換の1価の炭化水素基、アルコキシ基、またはX^(2)で表される基であり、R^(10)はR^(9)またはX^(2)のいずれかを表し、qは少なくとも1の整数であり、rは0または少なくとも1の整数であり、平均分子量は250?1,000,000である。]」

第3 引用例の記載事項
1 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成12年2月15日に頒布された「特開2000-44434号公報」(原査定の引用文献5。以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、以下、下線は当審で付与した。

(1a)「【請求項1】(A)下記一般式(I)
【化1】

(式中、R^(1)は炭素原子数1?24のアルキル基を表し、1種または2種以上を用いることができる);a、b、cは、a:b:c=30?50:20?30:25?45(重量%比)の関係を満足する)で表される構成単位を有するベタイン型両性高分子の1種または2種以上と、(B)下記一般式(II)
【化2】

(式中、R^(2)はメチル基、または一部のR^(2)がメチル基で残りのR^(2)がフェニル基を表し;R^(3)はメチル基または水酸基を表し;kは3,000?20,000の整数を表す)で表される高分子量シリコーン、および下記一般式(III)
【化3】

{式中、R^(4)はメチル基、または一部のR^(4)がメチル基で残りのR^(4)がフェニル基を表し;R^(5)はメチル基、水酸基、またはR^(6)と同一の基を表し;R^(6)はR^(7)Z〔ここでR^(7)は炭素原子数3?6の2価のアルキレン基を表し;Zは-N(R^(8))_(2)、-N^(+)(R^(8))_(3)A^(-)、-NR^(8)(CH_(2))_(d)N(R^(8))_(2)、-NR^(8)(CH_(2))_(d)N^(+)(R^(8))_(3)A^(-)、および-NR^(8)(CH_(2))_(d)N(R^(8))C=O(R^(9))(ここでR^(8)は水素原子または炭素原子数1?4のアルキル基を表し;R^(9)は炭素原子数1?4のアルキル基を表し;Aはハロゲン原子を表し;dは2?6の整数である)からなる群から選ばれる1価の基を表す〕で表されるアミノ基またはアンモニウム基を有する置換基を表し;mおよびnはそれぞれ正の整数で、m+nは3,000?20,000であり、n/mは1/500?1/10,000である}で表されるアミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーンの中から選ばれる1種または2種以上、とを含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】(A)成分の配合量が毛髪化粧料全量中、乾燥固形分として0.05?10.0重量%である、請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】(B)成分の配合量が毛髪化粧料全量中、0.1?50.0重量%である、請求項1または2記載の毛髪化粧料。」

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は毛髪化粧料に関する。さらに詳しくは、塗布後、乾燥仕上げまでの過程でべたつかず、くせづけしやすく、また仕上がった髪がなめらかでゴワゴワしないなど良好な感触を有し、セット保持力、さらには枝毛の修復・毛髪への接着効果に優れた毛髪化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に毛髪は、洗髪、ブラッシング、ドライヤーによる熱、ヘアカラー、ブリーチ剤等による美容処理を頻繁に繰り返し行うと著しく損傷劣化し、その結果、乾燥してぱさついたり、枝毛、切れ毛、抜け毛等の増加および強度低下を引き起こすことはよく知られたことである。
・・・
【0004】また、毛髪に光沢となめらかさを付与しながら毛髪の損傷を防止する目的で、特開昭63-183517号公報、特開昭63-24301号公報、特開昭63-313712号公報、特開平5-85918号公報等にみられるように、高分子量のジメチルポリシロキサン、高分子量のメチルフェニルポリシロキサン、あるいはアミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーン等を用いる技術が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、毛髪化粧料の基剤として天然抽出原料を用いた場合、毛髪損傷防止効果が十分でなく、使用後のなめらかさなどの感触の点においても十分に満足できるものでない。また、高分子量のシリコーン類を用いた場合、毛髪損傷防止効果、使用後の毛髪への光沢およびなめらかさの付与にはある程度の効果を有するが、ブラッシングやドライヤー処理によるその効果の持続性の点、および整髪効果の点では十分に満足できるものではなかった。
【0006】一方、毛髪セットの目的で、高分子化合物、ポリビニルピロリドン系ポリマー、酸性ポリビニルエーテル系ポリマー、酸性アクリル系ポリマー、カチオン性ポリマー等が用いられている。これらは毛髪の固定すなわちセット力に優れるものの、光沢、なめらかさの点において十分に満足できる効果を得るのが難しい。
【0007】本発明者らは、このような従来技術の不具合を解決すべく、両性高分子とアミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーンを併用した毛髪化粧料を従前に開発した(特開平8-119837号公報)。本発明はこの毛髪化粧料をさらに改良したものである。本発明では、上記公報に記載の毛髪化粧料で用いた両性高分子に含まれていなかった構成単位であるジメチルアミノエチルメタクリレートを使用している。本発明では、上記公報に記載の毛髪化粧料に比べ、特に使用中のべたつきの低減化、さらには枝毛の修復・毛髪への接着効果の点においてより一層の効果が得られる。
【0008】すなわち本発明は、使用の際、べたつかず、毛髪に優れた光沢を与え、なめらかな感触を付与し、頭髪の脂じみがなく、かつ適度なセット力を有し、さらには枝毛の修復効果に優れた毛髪化粧料を提供することを目的とする。」

(1c)「【0027】上記一般式(I)中、R^(1)は、べたつかず、なめらかな被膜形成、セット保持力などのより一層の効果を奏するという点から、メチル基、ブチル基、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基の中から選ばれる1種または2種以上を用いるのが好ましい。中でも、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基の中から選ばれる1種または2種以上を用いるのが好ましい。
・・・
【0030】(A)成分は1種または2種以上を用いることができ、その配合量は、本発明毛髪化粧料全量中、乾燥固形分として0.05?10.0重量%が好ましく、特には0.2?5.0重量%である。配合量が少なすぎるとセット剤としての効果が得られ難く、一方、多すぎると洗髪上好ましくない。」

(1d)「【0034】(B)成分は、下記一般式(II)
・・・、および下記一般式(III)
【0037】
【化13】

【0038】{式中、R^(4)はメチル基、または一部のR^(4)がメチル基で残りのR^(4)がフェニル基を表し;R^(5)はメチル基、水酸基、またはR^(6)と同一の基を表し;R^(6)はR^(7)Z〔ここでR^(7)は炭素原子数3?6の2価のアルキレン基を表し;Zは-N(R^(8))_(2)、-N^(+)(R^(8))_(3)A^(-)、-NR^(8)(CH_(2))_(d)N(R^(8))_(2)、-NR^(8)(CH_(2))_(d)N^(+)(R^(8))_(3)A^(-)、および-NR^(8)(CH_(2))_(d)N(R^(8))C=O(R^(9))(ここでR^(8)は水素原子または炭素原子数1?4のアルキル基を表し;R^(9)は炭素原子数1?4のアルキル基を表し;Aはハロゲン原子を表し;dは2?6の整数である)からなる群から選ばれる1価の基を表す〕で表されるアミノ基またはアンモニウム基を有する置換基を表し;mおよびnはそれぞれ正の整数で、m+nは3,000?20,000であり、n/mは1/500?1/10,000である}で表されるアミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーンの中から選ばれる1種または2種以上である。
・・・
【0041】他方、上記一般式(III)で表されるアミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーンでは、式中、R^(4)がメチル基、R^(5)がメチル基、水酸基、R^(6)が-(CH_(2))_(3)NH_(2)、-(CH_(2))_(3)N(CH_(3))_(2)、-(CH_(2))_(3)N^(+)(CH_(3))_(3)Cl^(-)であるもの等が好適に用いられる。
【0042】また、一般式(III)中、m+nは3,000?20,000であるが、好ましくは4,000?20,000である。m+nが3,000未満では油状になり、毛髪保護効果が不十分となり、一方、20,000を超えるとシリコーン油等の他の原料に溶解しにくくなり、本系に配合することが難しい。またn/mは1/500?1/10,000であるが、好ましくは1/500?1/2,000である。n/mが1/500を超えると高分子量シリコーン中のアミノ基またはアンモニウム基の含有率が高くなり、製造時に架橋反応等が起きたり、あるいは原料臭の点からも好ましくなく、一方、1/10,000未満では、毛髪に対する相互作用が不十分となり、毛髪保護効果の持続性が悪くなる。
【0043】該アミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーンは常法により製造することができる。すなわち、例えばγ-アミノプロピルメチルジエトキシシランと環状ジメチルポリシロキサンとヘキサメチルジシロキサンとをアルカリ触媒下で重縮合反応させることによって製造することができるが、これに限定されるものでないことはもちろんである。これら変性された高分子量シリコーンは軟質ゴム状であり、多量に用いたり長い間連用しても毛髪、頭皮のべたつきがなく、毛髪に優れた光沢や滑らかな感触を付与し、毛髪の保護効果を高めることができる。」

(1e)「【0044】(B)成分として、一般式(II)で表される高分子量シリコーン(以下、単に「高分子量シリコーン」と記す)と、一般式(III)で表されるアミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーン(以下、単に「アミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーン」と記す)の中から1種または2種以上が用いられるが、好ましくは高分子量シリコーンとアミノ変性またはアンモニウム変性高分子量シリコーンとの併用がよい。」

(1f)「【0055】(B)成分の配合量は、本発明毛髪化粧料全量中、0.1?50.0重量%が好ましく、より好ましくは1.0?30.0重量%である。配合量が少なすぎると本願発明の十分な効果が得られ難く、一方、多すぎると溶解性の点において好ましくない。」

(1g)「【0068】
実施例3(ヘアクリーム)
(配合成分) (重量%)
(1)デカメチルシクロヘキサシロキサン 25.0
(2)アミノ変性高分子量シリコーン 6.0
(一般式(III)中、R^(4)はメチル基;R^(5)は水酸基;R^(6)は
-(CH_(2))_(3)N(CH_(3))_(2);m=3,000、n=6)
(3)グリセリン 3.0
(4)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(120EO) 3.0
(5)ベタイン型両性高分子(分子量15万) 3.0
(乾燥固形分)
(一般式(I)中、R^(1)はステアリル基(α)、メチル基(β)を
α:β=7:3の割合で含む;a:b:c=25:30:45)
(6)エタノール 10.0
(7)イオン交換水 バランス
(8)ポリビニルアルコール 1.0
(9)香料 適 量
(製法)(1)に(2)を溶解し、これを(3)、(4)の混合物に加えて乳化し、次いで(5)?(9)と混合してヘアクリームを得た。
・・・
【0071】
実施例6(ヘアブロー)
(配合成分) (重量%)
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 15.0
(2)高分子量シリコーン 3.0
(一般式(II)中、R^(2)、R^(3)はメチル基;k=3,000)
(3)アミノ変性高分子量シリコーン 6.0
(一般式(III)中、R^(4)はメチル基;R^(5)は水酸基、R^(6)は
-(CH_(2))_(3)N(CH_(3))_(2);m=3,000、n=6)
(4)1,3-ブチレングリコール 2.0
(5)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO) 2.0
(6)ベタイン型両性高分子(分子量12万) 1.0
(乾燥固形分)
(一般式(I)中、R^(1)はベヘニル基(α)、ステアリル基(β)、
ブチル基(γ)をα:β:γ=4:4:2の割合で含む;
a:b:c=45:30:25)
(7)エタノール 15.0
(8)イオン交換水 バランス
(9)香料 適 量
(製法)(1)に(2)、(3)を溶解し、これを(4)、(5)の混合物に加えて乳化し、次いで(6)?(9)と混合してヘアブローを得た。」

(1h)「【0077】これら実施例1?6、比較例1?4で得られた毛髪化粧料を試料として用い、(1)塗布後、乾燥までのべたつきのなさ、(2)塗布後、乾燥までのなめらかさ、(3)セット保持力、(4)仕上がった後のゴワゴワ感のなさ、(5)枝毛の修復・毛髪接着効果について下記試験により評価した。結果を表1に示す。
【0078】[塗布後、乾燥までのべたつきの少なさ]被験者(20名)により、毛髪ストランド(4g)に試料3gを塗布し、櫛で形を整え、乾燥するまでのべたつきの少なさについて官能評価した。
(評価)
A: 18名以上が、べたつきがないと回答
B: 14?17名が、べたつきがないと回答
C: 8?13名が、べたつきがないと回答
D: 7名以下が、べたつきがないと回答
【0079】[塗布後、乾燥までのなめらかさ]被験者(20名)により、毛髪ストランド(4g)に試料3gを塗布し、櫛で形を整え、乾燥するまでのなめらかさについて官能評価した。
(評価)
A: 18名以上が、なめらかであると回答
B: 14?17名が、なめらかであると回答
C: 8?13名が、なめらかであると回答
D: 7名以下が、なめらかであると回答
【0080】[セット保持力(整髪保持効果)]長さ15cm、重さ1gの毛束にゲル状整髪料の試料を0.5gを均等に塗布し、直径2cmのロッドに巻き、45℃の高温室内に6時間放置して、完全に乾燥させた。乾燥後、ロッドをはずして、毛束の見かけの長さ(L_(1))を測定した。次に温度25℃、湿度90%の恒温恒室内に毛束を吊し、30分後に取り出し、再び毛束の見かけの長さ(L_(2))を測定した。セット保持力を下記の数1に示す式により求めた。
【0081】
【数1】整髪保持力(%)=(15-L_(2))/(15-L_(1))×100
【0082】(評価)
A: 非常に良好(整髪保持力80%以上)
B: 良好(整髪保持力50%以上、80%未満)
C: やや悪い(整髪保持力30%以上、50%未満)
D: 悪い(整髪保持力30%未満)
【0083】[仕上がった髪のゴワゴワ感のなさ]被験者(20名)により、毛髪ストランド(4g)に試料3gを塗布し、櫛で形を整え、乾燥した後の仕上がった髪のゴワゴワ感のなさについて官能評価した。
(評価)
A: 18名以上が、髪のゴワゴワ感がないと回答
B: 14?17名が、髪のゴワゴワ感がないと回答
C: 8?13名が、髪のゴワゴワ感がないと回答
D: 7名以下が、髪のゴワゴワ感がないと回答
【0084】[枝毛の修復・毛髪への接着効果]被験者(20名)により、毛髪ストランド(4g)に試料3gを塗布し、ブラシを10回通した後の試料の毛髪からの剥離の程度について官能評価(総合評価)した。
(評価)
A: 非常に良好(試料が髪に接着していて剥がれない)
B: 良好(試料が髪に接着しているが、わずかに剥がれる)
C: やや悪い(試料が髪に接着しているが、ほとんど剥がれる)
D: 悪い(試料が髪に接着していない)
【0085】
【表1】

【0086】表1の結果から明らかなように、本発明の毛髪化粧料は、セット保持力に優れ、しかもべたつかず、なめらかで良好な感触を有し、さらには枝毛の修復・毛髪接着効果に優れるものであった。」

(1i)「【0087】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、塗布後、乾燥仕上げまでの過程でべたつかず、くせづけしやすく、また仕上がった髪がなめらかでゴワゴワしないなど良好な感触を有し、しかもセット保持力に優れ、さらには枝毛の修復・毛髪接着効果に優れる毛髪化粧料が得られる。」

2 原査定の拒絶の理由に引用され本出願日前である平成9年6月10日に頒布された「特開平9-151119号公報」(原査定の引用文献1。以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(2a)「【請求項1】次式:
【化1】

[式中、R^(1)は脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基を表し、
Xは次式:
-R^(3)-Z
(式中、R^(3)は直接結合または炭素原子数1?20の二価炭化水素基を表し、Zはアミノ基含有基、アンモニウム基含有基またはエポキシ基含有基を表す)で表される反応性官能基を表し、
R^(2)はR^(1)またはXのいずれかを表し、
nは2?4の整数であり、aは少なくとも2の整数であり、bは少なくとも1の整数であり、cは少なくとも4の整数であり、dは少なくとも2の整数であり、
Yは炭素-珪素によって隣接珪素原子にそして酸素原子によってポリオキシアルキレンブロックに結合している2価の有機基を表し、各シロキサンブロックの平均分子量は約250?約10,000であり、各ポリオキシアルキレンブロックの平均分子量は約200?約10,000であり、シロキサンブロックは共重合体の約25?約95重量%を構成し、そしてブロック共重合体は少なくとも約1,000の平均分子量を有する]で表される反応性シリコーン系ブロック共重合体を含有することを特徴とする毛髪化粧料。」

(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定のシリコーン系ブロック共重合体を含有し、シャンプー剤、リンス剤、セットローション剤、ヘアスプレー剤、パーマネントウエーブ剤、ムース剤、染毛剤等として使用できる毛髪化粧料に関する。」

(2c)「【0003】特に、最近のシリコーン系高分子技術の進歩により、各種ポリシロキサン系重合体が合成され、その特異な性質が着目され、毛髪化粧料の主成分として配合されるようになってきた。中でも本出願人は特開平4-211605号において、毛髪に帯電防止効果を与え、櫛通り性を良くし、仕上がりの風合いが良くつややかで、ボリューム感、バルキー感、しっとり感を与え、乳化効果、泡立ち効果をよくする毛髪化粧料として特定の線状ポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体を配合した毛髪化粧料を提案した。
【0004】しかし、上記毛髪化粧料により毛髪に形成された被膜は一時的なもので、シャンプーやブロー、ブラッシング等日常の毛髪の手入れによりその効果は容易に衰えてしまうという欠点があった。また、近年、シリコーン類が配合された毛髪化粧料が広く使用されるようになり、従来のシリコーン類配合毛髪化粧料よりも更に良い風合いを与えることができる毛髪化粧料が強く望まれるようになった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、毛髪に帯電防止効果を与え、櫛通り性を良くし、仕上がりの風合いが従来のシリコーン類配合毛髪化粧料より良く、つややかで、ボリューム感、バルキー感、しっとり感を与え、セット性が良く、乳化効果、泡立ち効果をよくし、シャンプーやブロー、ブラッシング等日常の毛髪の手入れに対するそれらの効果の持続性が良い毛髪化粧料を提供することを課題とする。」

(2d)「【0008】
【発明の実施の形態】上記式中、R^(1)は互いに独立して脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、フェニル基、フェネチル基等であるが、メチル基、エチル基およびフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
・・・
【0010】上記式において、Yで表される2価の有機基の例は、-R^(4)-,-R^(4)-CO-,-R^(4)-NHCO-,-R^(4)-NHCONHR^(5)-NHCO-または-R^(4)-OOCNH-R^(5)-NHCO-(式中、R^(4)は2価のアルキレン基、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等であり、R^(5)は2価のアルキレン基、例えばR^(4)として例示した基または2価のアリレン基、例えば、-C_(6)H_(4)-,-C_(6)H_(4)-C_(6)H_(4)-,-C_(6)H_(4)-CH_(2)-C_(6)H_(4)-,-C_(6)H_(4)-CH(CH_(3))-C_(6)H_(4)-などである。)である。基Yの好適な例は以下のものである。-CH_(2)CH_(2)-,-CH_(2)CH_(2)CH_(2)-,-CH_(2)CH(CH_(3))CH_(2)-,-CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)-,-(CH_(2))_(2)CO-,-(CH_(2))_(3)NHCO-,-(CH_(2))_(3)NHCONHC_(6)H_(4)NHCO-または-(CH_(2))_(3)OOCNHC_(6)H_(4)NHCO-。特に好ましい基Yは2価のアルキレン基、-CH_(2)CH_(2)-,-CH_(2)CH_(2)CH_(2)-,-CH_(2)CH(CH_(3))CH_(2)-等であるが、-CH_(2)CH(CH_(3))CH_(2)-が最も好ましい。」

(2e)「【0018】また、毛髪化粧料中の上記反応性シリコーン系ブロック共重合体の配合量は限定されないが、好ましくは0.01重量%?80重量%であり、特に好ましくは0.1?40重量%である。上記反応性シリコーン系ブロック共重合体の配合量が少なすぎると本発明の効果が少ないし、多すぎると毛髪に均一に塗布するのが困難になるからである。また、上記反応性シリコーン系ブロック共重合体は予め揮発性環状シリコーン類に溶解もしくは分散させてから配合すると取扱いが容易でかつ毛髪に良くなじむので好ましい。」

(2f)「【0021】実施例1?9、比較例1?6:毛髪化粧料(一般例)
下記の表1および2に示した組成に従って、本発明品1?9および比較品1?6を常法により調製し、外観を観察した。それらの組成物で毛髪を下記方法で評価をし、その結果を表1および表2に示した。
(評価方法)日本人女性枝毛毛髪30cm/5gを束にし、組成物を毛髪に5g直接塗布した後、自然乾燥させ、以下の基準で評価した。その後、下記洗髪方法により5回洗髪してから同様の評価を行った。また、洗髪工程の替わりにブラシを20回通した後、同様の評価を行った。これらの評価結果を表1及び2に示した。
(評価基準)
接着効果:
◎:接着していてはがれない。
○:接着しているが、わずかにはがれる。
△:接着しているが、ほとんどはがれる。
×:接着していない。
感触:
手で触った感触を以下の基準で評価した。
◎:総合的に非常に良い感触である。
○:総合的に良い感触である。
△:総合的にあまり良くない感触である。
×:総合的に非常に悪い感触である。
帯電防止性:
○:ほこりは付着していなく、毛髪のもつれもない。
△:少量のほこりの付着が認められ、毛髪もややもつれている。
×:ほこりが付着し、毛髪ももつれている。
(洗髪方法)2%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液0.3gを塗布して洗浄し、温油で十分すすいだ後、自然乾燥する。
【0022】
【表1】

【表2】

【0023】本発明品1?9及び比較品1?6を調製するのに使用した化合物1?8は次式を有するものである。
【化22】

・・・
【化27】

・・・
【化30】

【0024】表1および表2に示されるように、本発明品1?9は外観、枝毛の接着効果、感触、帯電防止性が全て優れ、洗髪やブラッシングによっても効果の低下は少なく毛髪化粧料として好適なものであった。それに対し、本発明の範囲から外れる比較品1?6は、それらの性能を全て満足させなかったり、洗髪やブラッシングによって効果の低下が大きかった。」

(2g)「【0043】実施例28:エアゾールヘアラッカー
下記の表8に示す処方でエアゾールヘアラッカーを調製したところ、処理後の毛髪のセット性、仕上がり、つや、感触、櫛通り性、枝毛の予防および修復効果等が優れ、ボリューム感、バルキー感、しっとり感があり、更に静電気の発生および蓄積等の問題が起きず、洗髪やブラッシングによっても効果が持続する良好なエアゾールヘアラッカーが得られた。
【表8】



(2h)「【0049】
【発明の効果】本発明の毛髪化粧料は、反応性基を導入した特定のポリジオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレン交互ブロック共重合体を含有するので、泡立ちや乳化性が良く、毛髪を処理した場合の毛髪の仕上がり、風合い、つや、セット性、感触、櫛通り性、枝毛の予防および修復効果等が優れ、ボリューム感、バルキー感、しっとり感があり、静電気の発生および蓄積等の問題が起きず、更にシャンプーやブラッシング等日常の手入れに対する上記の効果の持続性が良い、従来のものより優れたシャンプー剤、リンス剤、セットローション剤、ヘアスプレー剤、パーマネントウエーブ剤、ムース剤、染毛剤等として使用でき、産業上非常に有効である。」

第4 引用例に記載された発明
引用例1の請求項1には、(A)の一般式(I)で表される構成単位を有するベタイン型両性高分子の1種又は2種以上と、(B)の一般式(II)で表される高分子量シリコーン、及び一般式(III)で表されるアミノ変性又はアンモニウム変性高分子量シリコーンの中から選ばれる1種又は2種以上とを含有する毛髪化粧料の発明が記載されている(上記(1a)【請求項1】参照)。
そして、この毛髪化粧料の実施の形態である実施例3には、(A)の一般式(I)で表される構成単位を有するベタイン型両性高分子と、(B)の一般式(III)で表されるアミノ変性高分子量シリコーンとを含有するヘアクリームが記載されていることからみて(上記(1g)参照)、引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。

「デカメチルシクロヘキサシロキサン 25.0重量%、アミノ変性高分子量シリコーン(一般式(III)中、R^(4)はメチル基;R^(5)は水酸基;R^(6)は-(CH_(2))_(3)N(CH_(3))_(2);m=3,000、n=6) 6.0重量%、グリセリン 3.0重量%、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(120EO) 3.0重量%、ベタイン型両性高分子(分子量15万)(一般式(I)中、R^(1)はステアリル基(α)、メチル基(β)をα:β=7:3の割合で含む;a:b:c=25:30:45) 3.0重量%(乾燥固形分)、エタノール 10.0重量%、イオン交換水 バランス、ポリビニルアルコール 1.0重量%、及び香料 適量からなるヘアクリーム。
一般式(I)

一般式(III)



第5 対比
そこで、本願発明と引用例1発明を対比する。

1 引用例1発明の「ヘアクリーム」は、引用例1に記載の毛髪化粧料の実施の形態の一つであり、引用例1に記載の毛髪化粧料は、毛髪をセットするためのものであるから(上記(1b)【0001】参照)、本願発明の「毛髪セット剤組成物」に相当する。

2 引用例1発明のベタイン型両性高分子は、毛髪化粧料に配合される皮膜形成性高分子であることは、当業者が普通に理解することである。そのうえ、引用例1には、(A)のベタイン型両性高分子に関する説明に、置換基の選択に関するところではあるが、「べたつかず、なめらかな被膜形成、セット保持力など」の効果を奏するとの観点が示されており(上記(1c)【0027】参照)、このことからも、引用例1に記載のベタイン型両性高分子は、毛髪化粧料に配合される皮膜形成性高分子であるといえる。
一方、本願発明の皮膜形成性高分子は、両性ポリマーであってよく(本願明細書段落【0033】、【0037】参照)、本願明細書の実施例では、引用例1に記載のベタイン型両性高分子と同様の、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(ユカフォーマーSM)を用いている(実施例2(参考例)の本発明品2、及び実施例6参照)。

よって、引用例1発明の「ベタイン型両性高分子(分子量15万)(一般式(I)中、R^(1)はステアリル基(α)、メチル基(β)をα:β=7:3の割合で含む;a:b:c=25:30:45) 3.0重量%(乾燥固形分)」は、本願発明の「皮膜形成性高分子(B)0.01?20重量%」と「皮膜形成性高分子(B)3.0重量%」である点で一致する。

3 引用例1発明のアミノ変性高分子量シリコーンは、一般式(III)中のR^(4)がメチル基、R^(5)が水酸基、R^(6)が-(CH_(2))_(3)N(CH_(3))_(2)、m=3,000、n=6のものである。
ここで、本願明細書には、本願発明の一般式(3)で表される反応性シリコーン化合物(D)の置換基X^(2)について、その具体例として-(CH_(2))_(3)N(CH_(3))_(2)をあげている(段落【0044】参照)。
したがって、引用例1発明のアミノ変性高分子量シリコーンは、本願発明の一般式(3)で表されるシリコーン化合物(D)において、R^(8)が水酸基、R^(9)及びR^(10)が無置換の1価炭化水素基(メチル基)、X^(2)が、-R^(11)-Z^(2)におけるR^(11)が炭素原子数3の2価炭化水素基(-(CH_(2))_(3)-部分)、Z^(2)が反応基含有基(-N(CH_(3))_(2)部分)であって、qが3,000、rが6であるものに相当する。
また、引用例1発明のアミノ変性高分子量シリコーンは、一般式(III)から分子量を計算すると、約223,518となるから、この平均分子量は250?1,000,000の範囲に入るといえる。

よって、引用例1発明の「アミノ変性高分子量シリコーン(一般式(III)中、R^(4)はメチル基;R^(5)は水酸基;R^(6)は-(CH_(2))_(3)N(CH_(3))_(2);m=3,000、n=6) 6.0重量%」は、本願発明の「下記の一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体(C)または下記の一般式(3)で表されるシリコーン化合物(D)0.01?10.0重量%(式略)」と、「下記の一般式(3)で表されるシリコーン化合物(D)6.0重量%
一般式(3):
【化3】

[式中、R^(9)は、互いに独立して、1価の炭化水素基、X^(2)は
一般式:
-R^(11)-Z^(2)(R^(11)は炭素原子数3の2価炭化水素基、Z^(2)は反応基含有基を表す)で表される反応性官能基を表し、R^(8)は、水酸基、R^(10)はR^(9)を表し、qは少なくとも1の整数であり、rは0または少なくとも1の整数であり、平均分子量は250?1,000,000である。]」である点で一致する。

4 引用例1発明は、さらに「デカメチルシクロヘキサシロキサン」、「グリセリン」、「ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(120EO)」、「エタノール」、「イオン交換水」、「ポリビニルアルコール」、及び「香料」を含むが、この点は本願発明に包含され相違点ではない。
すなわち、本願発明は、(A)、(B)、さらに(C)又は(D)を含む毛髪セット剤組成物であって、他の成分を含んでよいものである。
そして、本願明細書には、液状の環状シリコーン(段落【0045】)、水溶性多価アルコール(段落【0053】)、乳化剤(段落【0051】?【0052】)、その他の添加剤としての樹脂類、希釈剤や香料(段落【0059】)を含んでよいことが説明されており、本願明細書の実施例5(参考例)では、これらの物質を含んだヘアクリームが記載されている。

5 以上のことから、両発明は、本願発明の表現に倣えば、次の一致点及び相違点を有する。

一致点:
「組成物全量基準で、皮膜形成性高分子(B)3.0重量%、及び下記の一般式(3)で表されるシリコーン化合物(D)6.0重量%を含有する毛髪セット剤組成物。
一般式(3):
【化3】

[式中、R^(9)は、無置換の1価の炭化水素基、X^(2)は
一般式:
-R^(11)-Z^(2)(R^(11)は炭素原子数3の2価炭化水素基、Z^(2)は反応基含有基を表す)で表される反応性官能基を表し、R^(8)は、水酸基であり、R^(10)はR^(9)を表し、qは少なくとも1の整数であり、rは0または少なくとも1の整数であり、平均分子量は250?1,000,000である。]」

相違点:
毛髪セット剤組成物が、本願発明では、「下記の一般式(1)で表される反応性シリコーン系ブロック共重合体(A)0.01?30重量%、(式略)」を含むのに対し、引用例1発明はこれを含まない点

第6 判断
そこで、上記相違点ついて検討する。

1 引用例1には、毛髪化粧料の従来技術に関し、毛髪は洗髪等の美容処理で損傷することなどから、光沢となめらかさを付与しながら毛髪の損傷を防止する目的で高分子量のシリコーンを用いる技術が知られているが、毛髪損傷防止効果、使用後の毛髪への光沢及びなめらかさの付与にはある程度の効果を有するが、ブラッシングやドライヤー処理によるその効果の持続性や整髪効果は十分に満足できるものではなかったことが記載されている(上記(1b)【0002】、【0004】、【0005】参照)。

2 ところで、引用例1発明では、アミノ変性高分子量シリコーンとともに、ベタイン型両性高分子を配合している。これに関し、引用例1には、従来から毛髪化粧料には、毛髪セットの目的でポリビニルポロリドン系ポリマーなど高分子化合物を用いていたが、これらはセット力に優れるものの、光沢、なめらかさは十分に満足できるものではなかったことから、既に両性高分子(高分子化合物)とアミノ変性高分子量シリコーンを併用した毛髪化粧料を開発し、光沢、なめらかさに関する不具合を解決したこと、さらに引用例1においては、両性高分子を引用例1記載の特定のベタイン型両性高分子とすることにより、使用中のべたつきを低減し、枝毛の修復、毛髪への接着効果が得られるものとしたことが記載されている(上記(1b)【0006】?【0008】参照)。

そして、実施例では、(1)塗布後、乾燥までのべたつきのなさ、(2)塗布後、乾燥までのなめらかさ、(3)セット保持力、(4)仕上がった後のゴワゴワ感のなさ、(5)枝毛の修復・毛髪接着効果について評価したことが示されている(上記(1h)【0077】参照)。

3 そうすると、引用例1発明では、毛髪化粧料にベタイン型両性高分子とアミノ変性高分子量シリコーンとを併用して、使用の際、べたつかず、毛髪に優れた光沢を与え、なめらかな感触を付与し、頭髪の脂じみがなく、かつ適度なセット力を有し、さらには枝毛の修復効果に優れた毛髪化粧料としたものといえる(上記(1b)【0008】参照)。
一方で、高分子量シリコーン類を用いた場合での従来技術の課題とされていた、ブラッシングやドライヤー処理によるその効果の持続性や整髪効果については、解決されたとまでは示されていないということもできる。

4 これに対し、引用例2には、毛髪化粧料に配合し得る高分子量シリコーン類であって、アミノ基含有基又はアンモニウム基含有基とポリオキシアルキレン基とを有する反応性シリコーン系ブロック共重合体が記載されている(上記(2a)参照)。
そして、引用例2の毛髪化粧料は、引用例1と同様に毛髪セット用の化粧料も含むものである(上記(2b)参照)。
さらに、引用例2には、前記反応性シリコーン系ブロック共重合体について、従来の特定の線状ポリシロキサン-ポリオキシアルキレンブロック共重合体は、シャンプーやブロー、ブラッシング等日常の毛髪の手入れによりその効果は容易に衰えてしまうという欠点があったことから、毛髪に帯電防止効果を与え、櫛通り性を良くし、仕上がりの風合いが従来のシリコーン類配合毛髪化粧料より良く、つややかで、ボリューム感、バルキー感、しっとり感を与え、セット性が良く、乳化効果、泡立ち効果をよくし、シャンプーやブロー、ブラッシング等日常の毛髪の手入れに対するそれらの効果の持続性が良い毛髪化粧料を提供することを目的としてなされたものであることが記載されている(上記(2c)参照)。

また、引用例2の実施例1?9には、反応性シリコーン系ブロック共重合体を配合した毛髪化粧料の評価について、枝毛の接着効果、感触、帯電防止性が全て優れ、洗髪やブラッシングによっても効果の低下は少なく毛髪化粧料として好適なものであったことが示されている(上記(2f)参照)。
そして、実施例1?9の毛髪化粧料は、上記(2f)の【表1】に示されるとおり、引用例2の反応性シリコーン系ブロック共重合体をオクタメチルシクロペンタシロキサン又はエタノールと配合したものであり、特に、その「本発明品8」は、反応性シリコーン系ブロック共重合体と、引用例1記載のアミノ変性高分子量シリコーンと類似する化合物5とを併用したものである(上記(2f)【0023】参照)。
他にも、引用例2の実施例28には、引用例2の反応性シリコーン系ブロック共重合(化合物1)と、酢酸ビニル(65重量%)/クロトン酸(10重量%)/tert-ブチル-安息香酸ビニル(25重量%)共重合体とを併用したエアゾールヘアラッカーが記載されている(上記(2g)参照)。この共重合体は毛髪化粧料における皮膜形成性高分子として周知のものである(特開平4-261114号公報の段落【0013】、実施例1、特開平9-143037号公報の段落【0012】、【0015】参照)。
このように、引用例2には、反応性シリコーン系ブロック共重合体を、引用例1発明と同様に、環状シリコーンやエタノール、あるいは皮膜形成性高分子と併用して用いることが記載されており、かつ、引用例1のアミノ変性高分子量シリコーンと類似する化合物と併用して、枝毛の接着効果、感触、帯電防止性が全て優れ、洗髪やブラッシングによっても効果の低下は少なく毛髪化粧料として好適なものであったことが示されている(上記(2f)参照)。

5 そして、引用例2に記載の反応性シリコーン系ブロック共重合体は、本願発明の一般式(1)で表される反応性シリコーン系ブロック共重合体(A)に相当する。
すなわち、引用例2の請求項1の式の説明(上記(2a)参照)と、本願発明の一般式(1)の式の説明とを対比すると、以下のとおりである。
引用例2のR^(1)は、脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、フェニル基、フェネチル基等であるから(上記(2d)【0008】参照)、本願発明のR^(1)に相当する。
引用例2のXは、-R^(3)-Zであり、R^(3)は直接結合または炭素原子数1?20の二価炭化水素基、Zはアミノ基含有基、アンモニウム基含有基)で表される反応性官能基であるから、本願発明のX^(2)であって、-R^(11)-Z^(2)であるものに相当する。
引用例2のR^(2)は、R^(1)又はXのいずれかであるから、本願発明のR^(2)に相当する。
引用例2のnは2?4の整数であり、aは少なくとも2の整数であり、bは少なくとも1の整数であり、cは少なくとも4の整数であり、dは少なくとも2の整数であるから、b×dは少なくとも2の整数であり、よって、それぞれ本願発明のn、a、c、dに相当し、b×dの条件も満たす。
引用例2のYは、炭素-珪素によって隣接珪素原子にそして酸素原子によってポリオキシアルキレンブロックに結合している2価の有機基であって、基Yの好適な例として、-CH_(2)CH_(2)-,-CH_(2)CH_(2)CH_(2)-,-CH_(2)CH(CH_(3))CH_(2)-,-CH_(2)CH_(2)CH_(2)CH_(2)-が示されているから(上記(2d)【0010】参照)、本願発明のYに相当する。
引用例2の各シロキサンブロックの平均分子量は約250?約10,000であり、各ポリオキシアルキレンブロックの平均分子量は約200?約10,000であり、シロキサンブロックは共重合体の約25?約95重量%を構成するとの特定は、本願発明の同様な条件に含まれる範囲である。
そして、引用例2のブロック共重合体は少なくとも約1,000の平均分子量を有するものであり、先に示した本発明品8(上記(2f)【表1】参照)や実施例28(上記(2g)【表8】参照)に具体的に示されている化合物1(上記(2f)【0023】参照)から分子量を計算すると、約68,320となるから、本願発明の20,000?1,500,000の平均分子量の範囲に入る。

6 また、引用例1には、一般式(III)で表されるアミノ変性又はアンモニウム変性高分子量シリコーンは、一般式(II)で表される高分子量シリコーンと併用して用いてよいことが記載されている(上記(1a)、(1e)参照)。
そして、実施例6には、両者を併用したヘアブローが示され(上記(1g)参照)、一般式(III)で表されるアミノ変性高分子量シリコーンのみを配合した実施例3(引用例1発明)に比べて、「枝毛の損傷・毛髪接着効果」に優れることが示されている。
すなわち、引用例1には、高分子量のシリコーン化合物を複数併用してよいことが示されており、引用例1発明のアミノ変性高分子量シリコーンのみより、他のシリコーン化合物を併用することで枝毛の損傷・毛髪接着効果の改善を図ることも記載されている。

そうしてみると、引用例1発明において、従来からの課題として認識されていたブラッシングやドライヤー処理によるその効果の持続性や整髪効果を改善し、枝毛の接着効果の向上をも期待して、これらの効果に優れ、同様な毛髪化粧料に配合される引用例2に記載の反応性シリコーン系ブロック共重合体をさらに配合してみることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その配合量については、2種のシリコーン化合物を配合する場合、例えば、引用例1の実施例6で3.0重量%、6.0重量%(上記(1g)参照)、引用例2の本発明品8では、4.0重量%、1.0重量%で用いている(上記(2f)参照)。また、引用例1には、(B)成分のシリコーン化合物の配合量は0.1?50.0重量%、好ましくは1.0?30.0重量%と記載され(上記(1a)【請求項3】、(1f)参照)、引用例2には、反応性シリコーン系ブロック共重合体の配合量は0.1?40重量%であることが好ましいと記載されている(上記(2e)参照)。
よって、配合量に関しても、引用例1、2に例示された範囲及び具体的に配合されている量に基づき、本願発明に特定された0.01?30重量%程度の範囲とすることは、当業者が適宜決定し得ることである。

7 なおここで、念のため、引用例1発明のベタイン型両性高分子及びアミノ変性又はアンモニウム変性高分子量シリコーンの配合量などについても検討するに、引用例1には、ベタイン型両性高分子の配合量は、乾燥固形分として0.05?10.0重量%であることが示されており(上記(1a)【請求項2】、(1c)【0030】参照)、アミノ変性又はアンモニウム変性高分子量シリコーンの配合量は、上記のとおり、(B)成分全体として0.1?50.0重量%が示されていることから、本願発明で特定する、皮膜形成性高分子(B)の0.01?20.0重量%や一般式(3)で表されるシリコーン化合物(D)の0.01?10.0重量%程度の範囲と特定することも、当業者が適宜なし得たことである。
また、アミノ変性又はアンモニウム変性高分子量シリコーン化合物についても、引用例1に記載の他の実施例や請求項1に例示された化学式に基づき、引用例1発明のもの以外とすることも容易である。

8 次に、本願発明の効果について検討する。
審判請求人は、平成23年8月29日付け審判請求書において、本願発明は、反応性シリコーン系ブロック共重合体(A)、皮膜形成性高分子(B)、及び一般式(3)で表されるシリコーン化合物(D)を特定の割合で併用することにより、相乗作用効果により、しっとりした感触や、優れた光沢、滑らかな感触を毛髪に付与することができる旨主張し、本願明細書の段落【0042】に、シリコーン化合物(D)について、「主剤の反応性シリコーン系ブロック共重合体(A)に配合し、相乗作用により、主剤の効果をさらに良くするものである。特に、優れた光沢、滑らかな感触を毛髪に付与する。」と記載されていると主張している。
また、本願明細書の実施例、比較例の対比から、10回ブラッシングした場合の自然な感触、10回ブラッシングした場合のフレーキングや、枝毛の修復・接着効果について顕著な差を示しており、当業者が予測し得る効果の範疇を超えた格段顕著な効果を奏するものである旨主張している。

そこで、本願明細書の記載を検討するに、上記3成分を併用した実施例は、段落【0067】【表1】の本発明の試料5、6、及び段落【0095】【表3】の実施例4と認められる。(なお、後者の“実施例4”は、明細書全体の記載からみて、段落【0078】の実施例6を示しているもの解され、したがって、前記【表3】中の実施例1?5は、それぞれ実施例3?7の誤記と解される。)
これをみると、(A)と(B)の2成分のみを併用したものと、(A)と(B)と(C)又は(D)の3成分を併用したものとは、いずれも評価が同じであるか、2成分のみを併用したものの方が良い評価であることが示されている(【表1】の本発明の試料1や【表3】の実施例5参照)。
そもそも、本願明細書の前記【表1】に示された評価は、フレーキングの評価とセット保持力の評価に関しては、その評価基準が示されているものの、他のものは評価基準が示されていない(本願明細書の段落【0062】?【0066】参照)。
そうしてみると、これらの結果からは、審判請求人の主張する3成分による相乗作用効果を把握することはできない。

そして、本願発明のシリコーン化合物(D)に関する「優れた光沢、滑らかな感触を毛髪に付与する」という効果については、引用例1に、「これら変性された高分子量シリコーンは軟質ゴム状であり、多量に用いたり長い間連用しても毛髪、頭皮のべたつきがなく、毛髪に優れた光沢や滑らかな感触を付与し、毛髪の保護効果を高めることができる。」(上記(1d)【0043】)とあるように、アミノ変性高分子量シリコーンがもともと有する効果である。
また、引用例2には、本願発明の(A)と、(D)に相当する成分であって引用例1に記載のアミノ変性高分子量シリコーンと類似の化合物とを併用した本発明品8と、後者のみを使用した比較品2が示されており(上記(2f)【表1】、【表2】参照)、これによると、両者を併用したことにより枝毛の接着効果、感触、帯電防止性が向上したことが示されている。

そうしてみると、本願発明の効果は、本願発明の(A)に相当する化合物の「泡立ちや乳化性が良く、毛髪を処理した場合の毛髪の仕上がり、風合い、つや、セット性、感触、櫛通り性、枝毛の予防および修復効果等が優れ、ボリューム感、バルキー感、しっとり感があり、静電気の発生および蓄積等の問題が起きず、更にシャンプーやブラッシング等日常の手入れに対する上記の効果の持続性が良い」(上記(2h)参照)という引用例2に記載された効果と、本願発明の(D)に相当する化合物の「多量に用いたり長い間連用しても毛髪、頭皮のべたつきがなく、毛髪に優れた光沢や滑らかな感触を付与し、毛髪の保護効果を高める」(上記(1d)【0043】)という引用例1に記載された効果、及びさらにベタイン型両性高分子と併用することによる「塗布後、乾燥仕上げまでの過程でべたつかず、くせづけしやすく、また仕上がった髪がなめらかでゴワゴワしないなど良好な感触を有し、しかもセット保持力に優れ、さらには枝毛の修復・毛髪接着効果に優れる」(上記(1i))という引用例1に記載された効果から予測し得るものであって、格別なものとはいえない。

9 まとめ
以上のとおりであり、引用例1発明において、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することに格別の創意工夫が必要であったとは認められず、採用したことによって格別に予想外の作用効果を奏しているとも認められない。

第7 むすび
したがって、本願発明は、引用例1?2の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-24 
結審通知日 2013-07-02 
審決日 2013-07-16 
出願番号 特願2000-398747(P2000-398747)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川島 明子  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 菅野 智子
関 美祝
発明の名称 毛髪セット剤組成物  
代理人 河備 健二  

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