• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1279518
審判番号 不服2011-21060  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-29 
確定日 2013-09-17 
事件の表示 特願2004-265948「液晶表示部制御装置、方法及び液晶表示部制御装置を用いた携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月23日出願公開、特開2006- 79013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年9月13日を出願日とする特許出願であって、平成22年9月16日付けで明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成23年2月10日付けで明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正2」という。)がなされ、平成23年8月12日付けで、決定をもって、補正2についての補正の却下の決定がなされ、同日付け(送達日:同年8月18日)で拒絶査定がなされたところ、これに対し、平成23年9月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、当該請求と同時に、明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(その後、平成23年11月15日付けの手続補正により方式上の瑕疵について治癒された内容を含め、以下「補正3」という。)がなされたものである。
その後、当審より平成24年4月24日付けで審尋を行い、請求人より平成24年6月8日付けで回答書が提出され、当審より平成25年1月11日付けで拒絶理由を通知(発送日:同年1月15日)したところ、平成25年3月11日付けで意見書が提出されるとともに同日付で明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正4」という。)がなされた。

第2 当審が通知した拒絶理由
当審が平成25年1月11日付けで通知した拒絶理由の概要は、請求項1ないし8に係る発明は、それぞれ、下記の刊行物1に記載された発明、刊行物3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項9に係る発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

1.国際公開第2003/056541号
2.特開2001-222276号公報
3.特開2003-274010号公報
4.特開2003-29957号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、補正1、補正3、補正4により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項4】
表示データを表示する液晶表示部を備える携帯電話機において、
前記携帯電話機の制御を行う制御用CPUと、
アプリケーション機能を実行するアプリケーション用CPUと、
前記制御用CPUに接続され、前記制御用CPUから送られる表示データを格納する第1の表示データ格納部と、
前記アプリケーション用CPUに接続され、前記アプリケーション用CPUから送られる表示データを格納する第2の表示データ格納部と、
前記第1の表示データ格納部、前記第2の表示データ格納部から表示データを読み出し、表示データを書き換える時に前記液晶表示部に転送し、前記液晶表示部の表示領域毎に表示する制御を行う制御回路を備え、
前記制御用CPU及び前記アプリケーション用CPUをスリープ対象とし、前記制御用CPU及び前記アプリケーション用CPUのうち表示機能を含む機能が使用されていないCPUを使用されていない期間スリープ状態にすることを可能とすることを特徴とする携帯電話機。」

第4 引用発明
1 引用刊行物1の記載事項
当審が平成25年1月11日付けで通知した拒絶理由において刊行物1として引用され、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である国際公開第2003/056541号(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「近年、携帯電話機の表示画面に動画像(以下、単に動画とも言う)を表示する要求力塙まっている。しかし、従来の携帯電話機は主としてテキストを含めた静止画像(以下、単に静止画とも言う)表示を行うことを目的としているため、その駆動制御回路には静止画・テキスト・システム・I/O・インターフェースのみを具備し、動画対応のインターフェースは内蔵されていない。そのため、従来の駆動制御回路では動画の表示は可能であるが、スムーズに観察される高画質での動画の表示を行うことは難しい。
・・・・・
また、上記のような画面チラツキを回避するための構成を液晶コントローラ・ドライバに付加すると、表示装置の消費電力が増加し、特に携帯電話機のような携帯端末では好ましいものではない。本発明の目的は、動画表示時に画面チラツキがなく、かつ高画質の動画表示機能を付加したことによる電力消費を抑制して低消費電力化した表示駆動制御システムを提供することにある。
[発明の開示]
上記目的を達成するために、本発明は、第2機能とされる静止画モードにおけるシステム・インターフェースに加えて第1機能とされる動画対応のインターフェースを用い、さらに必要な期間のみ動画対応のインターフェースを動作させるように静止画インターフェース(システム・インターフェース)との切り換えを行うことによって低消費電力化した点に特徴を有する。」(明細書第1頁第16行?第4頁第23行)

<記載事項2>
「第1図は本発明の一実施例の全体構成の説明図であり、本発明による表示駆動制御システムの一例である第1機能とされる動画対応のインターフェース(すなわち、動画データが転送される第1ポートを含む)を有する携帯電話機の駆動回路システム構成の一実施例を説明するブロック図である。この駆動制御システム1は第20図に示したものと同様の音声インターフェース(AUI)2、高周波インターフェース(HFI)3、画像データ処理装置である画像プロセッサ4、画像表示メモリであるメモリ5および表示駆動制御回路である液晶コントローラ・ドライバ(LCD-CDR)6、第2機能とされる静止画・テキスト・システム・I/Oバス・インターフェース(SS/IF)7(すなわち、静止画データが転送される第2ポートを含む)等で構成される。
メモリ5は少なくとも画像1フレーム分の表示データを格納するフレームメモリ(ビットマップメモリ)であり、以下ではグラフィックRAMとも称する。また、実施例の説明でも、静止画・テキスト・システム・I/Oバス・インターフェース(SS/IF)7をシステム・インターフェース7、あるいは動画インターフェースとして説明する場合もある。
そして、画像プロセッサ4には、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)411とASIC412およびマイコンMPUでを有するベースバンド・プロセッサ41に加えて、動画対応プロセッサ(MPEG)421と液晶表示コントローラ(LCDC)422を有するアプリケーション・プロセッサ(APP)42を備えている。なお、参照符号9はマイクロフォン(M/C9、10はスピーカ(S/P)、11はビデオカメラ(C/M)、12はアンテナ(ANT)、13は液晶パネル(液晶ディスプレイ:LCD)である。ASIC412はその他の携帯電話システム構成上必要な周辺回路機能を有する。また、画像プロセッサ4は、単結晶シリコンの様な1つの半導体基板(チップ)に形成されても良いし、ベースハンドプロセッサ4 1及びアプリケーションプロセッサ42のそれぞれが1つの半導体基板(チップ)に形成されても良い。
前記した第21図に示された携帯電話機システムにおいて一般的に具備されるベースバンド・プロセッサBBPでは動画処理能力が不足する。このベースバンド・プロセッサBBPの他にアプリケーション・プロセッサ(APP)と称するサブMPUが知られている。第1図におけるアプリケーション・プロセッサ(APP)42には、MPEG動画処理などを行うためにMPEGプロセッサ(MPRG)421が内蔵される。また、アプリケーション・プロセッサ(APP)42は動画インターフェース(MP/IF)8で液晶コントローラ・ドライバ(LCD-CDR)6に画像データを転送する。静止画表示データやテキスト表示データは、第21図に示されたシステムと同様にシステム・インターフェース(SS/IF)7を介して液晶コントローラ・ドライバ(LCD-CDR)6に転送される。
第2図は本発明の表示駆動制御システムの一実施例を用いた携帯電話機の表示画面における動画像の画面更新の様子を説明する模式図である。動画インターフェースMP/IF8では、表示動作に必要な同期信号(垂直同期信号VSYNC,水平同期HSYNC,ドットクロックDOTCLK)により表示動作を行い、表示動作に同期して後述する表示データ信号(例えば、18ビット:PD17-PD0、以下PD17-0のように表記する)、データイネーブル信号(ENABLE)により表示データを液晶コントローラ・ドライバ(LCD-CDR)6のメモリ(内蔵RAM:M)5に書き込む。これにより、第2図の(a)の画面表示から同(b)の画面表示への画面の更新は当該画面の先頭から行われ、画面の途中からの切り換えは起こらない。
第3図は本発明による液晶コントローラ・ドライバの回路構成とその関連回路を説明するブロック図である。図中、第1図と同一つ参照番号は同一機能部分に対応する。液晶コントローラ・ドライバ(LCD-CDR)6は、例えば、単結晶シリコンの様な1つの半導体基板(チップ)に公知のCMOS製造プロセスによって形成されており、シリアルアドレス生成回路(SAG) 61、表示アドレス生成回路(DAG)62、表示メモリ(M) 63、および液晶駆動回路(DR)64を有している。表示データの書き込みは、データバス(PD17-0)から行われる。この時の書き込みアドレスDAは動画インターフェース信号(VSYNC,HSYNC,DOTCLK)に基づいて表示アドレス生成回路(DAG)62で生成される。
表示データの読み出しは、動画インターフェース信号から生成される表示アドレスDAに従って内蔵のメモリ(M)63から読み出されて液晶駆動回路(DR)64に与えられる。表示データの書き込みアドレスと読み出しアドレスは、共に動画インターフェース信号を基準として生成される。
第4図は本発明の表示駆動制御システムの一実施例を用いた携帯電話機の表示画面における動画像の画面更新の様子を動画インターフェースでの表示動作として説明する模式図である。システム・インターフェース(SS/IF)7からの表示データの書き込みは、第3図における動画インターフェース(MP/IF)8からのドットクロックDOTCLKに従って表示メモリ(M)63に書き込まれる。
表示データは、動画インターフェース信号(VSYNC,HSYNC,DOTCLK)に従って読み出される。画像データの書き込みと表示読み出しは同一の号を基準として動作するため、同一の一定速度で行われる。」(明細書第8頁第8行?第10頁第19行)

<記載事項3>
「次に、本発明による動画インターフェースとシステム・インターフェースにおける動画表示と静止画表示の各表示モードの切り換えを実現するための具体的なシステム構成およびその動作を説明する。
第10図は本発明の表示駆動制御システムを構成する液晶コントローラ・ドライバを具体化したドライバチップの回路構成の説明図である。このドライバチップ600への静止画データ、テキストデータ等はベースバンド・プロセッサ41からシステム・インターフェース601に書き込まれ、内部のアドレスカウンタ(AC)606の示すアドレスのメモリすなわちグラフィックRAM (GRAM)610に表示データとして書き込まれる。この表示動作は次のとおりである。すなわち、内部クロツク生成回路(CPG)630で生成したクック信号に基づいてタイミング発生回路622は表示動作に必要なタイミング、表示アドレスを発生する。
このタイミング、表示アドレスでグラフィックRAM (GRAM)610から表示データを読み出し、液晶表示に必要な電圧レベルに変換して液晶パネルに送出する。動画表示モードと静止画表示モードの切り換えは、表示動作切り換えレジスタ(DM)621、RAMアクセス切り換えレジスタ(RM)605により行う。
動画表示モードでは、動画表示データ(PD17-0)、垂直同期信号VSYNC、水平同期信号HSYNC、ドットクロックDCLK、データイネーブル信号ENABLEがアプリケーション・プロセッサ42から外部表示インターフェース620に入力する。表示動作切り換えレジスタ(DM)621によりタイミング発生回路622内でのタイミングを内蔵クロック基準から同期信号(VSYNC、HSYNC)に切り換え、必要なタイミング信号を生成する。
また、RAMアクセス切り換えレジスタ(RM)605によりアドレスカウンタ(AC)606の動作をドットクロックDCLK、データイネーブル信号ENABLEより発生する信号に切り換える。そして、グラフィックRAM(GRAM)610へのデータバスを表示データ(PD17-0)へ切り換える。これにより、表示動作、RAMアクセス動作は、システム・インターフェース601と内部クロック生成回路(CPG)630から動画インターフェースである外部表示インターフェースモジュール620に切り換えられる。
なお、第10図において、参照符号602はゲートドライバ・インターフェース(シリアル)、603はインデックスレジスタ(IR)、604はコントロールレジスタ(CR)、607はビット単位の演算処理を行うビットオペレーション回路、608は読み出し(リード)データラッチ回路、609は書込み(ライト)データラッチ回路である。また、参照符号623、624、626はラッチ回路、625は交流化回路、627は駆動回路で、表示駆動回路(ここでは液晶駆動回路)64を構成する。そして、640はガンマ(γ)調整回路、650は階調電圧生成回路であり、液晶パネルヘの表示データ処理回路を構成する。
・・・・・
表1に示したように、RAMアクセス切り換えレジスタ(RM)は内蔵した表示メモリ(グラフィックRAM)GRAMへのアクセスを行うインターフェースの切り換えを設定する。このRAMアクセス切り換えレジスタ(RMレジスタ)の設定を「RMの設定状態」で説明すると、「RM=0」のときはシステムインターフェースのみからメモリGRAMへの表示データの書込みが可能となる。また、「RM=1」のときはアプリケーション・インターフェース(動画インターフェース、表1のRGBインターフェース)のみからメモリGRAMへの書込みがで可能となる。
・・・・・
第11図はシステム・インターフェースとアプリケーション・インターフェースを備えて内蔵メモリによるデータ転送を行う液晶コントローラ・ドライバの実施例の構成とその動作の説明図である。また、第12図は第11図の液晶コントローラ・ドライバによる静止画表示の様子を説明する模式図である。本実施例では、静止画データ等を入力するシステム・インターフェース(ベースバンド・インターフェース)41、動画インターフェースであるアプリケーション・インターフェース42は共に、そのデータは表示メモリである内蔵RAMメモリ(表示メモリM)63に格納される。
垂直同期信号VSYNCは表示動作の画面先頭を示すタイミング信号、水平同期信号HSYNCは表示動作のライン周期を示すタイミング信号、ドットクロックDOTCLKは画素単位のクロックで動画インターフェースすなわちアプリケーション・インターフェース(APP)42による表示動作の基準クロックとなる。また、このドットクロックDOTCLKは表示メモリ(M)63の書込み信号ともなる。表示データはこのドットクロックDOTCLKに同期して画像データを転送する。なお、イネーブル信号ENABLEは、各画素データが有効であることを示す信号である。このイネーブル信号ENABLEが有効のときのみ転送データが表示メモリ(M)63に書き込まれる。
すなわち、第12図に示したように、画面のRAMデータ表示エリア(静止画表示領域)SSDAの内のイネーブル信号ENABLE力有効とされた領域である動画表示領域MPDAに動画表示データPD17-0が表示される。なお、画面の上下にはバックポーチ期間(BP3-0)とフロントポーチ期間(FP3-0)が設けてあり、その間に表示期間(NL4-0)が設けられている。」(明細書第12頁第8行?第16頁第13行)

<記載事項4>
「本発明は、上記説明したような画面のRAMデータ表示エリア(静止画表示領域)SSDAの内に動画表示領域MPDAをはめ込む際の動画データ表示領域の選択した領域のみに当該動画データを転送することもできる。
第16図は本発明による動画転送を実現する回路構成の一実施例を説明するブロック図である。また、第17図は第16図の液晶コントローラ・ドライバによる選択領域のみへの静止画表示の様子を説明する模式図である。
動画バッファリングを用いない場合、液晶パネルの一部分を使用して動画表示を行う際に動画表示領域MPDA以外の静止画表示領域SSDAも含めて動画インターフェースから表示データを常時転送する必要があった。このため、データ転送数が増し、消費電力が増加する。本実施例の選択領域転送方式では、動画インターフェースから転送する表示データは、動画表示領域MPDAの表示データのみを転送可能である。
選択領域転送方式では、事前に表示メモリヘ静止画データを書き込んで置き、ENABLE信号にて指示された表示メモリの部分にのみ動画インターフェースから表示データを書き込む。これにより、表示メモリ上で静止画と動画が合成され、表示動作時に同時に読み出されて液晶パネル13に表示がなされる。このように、本実施例によれば、選択的に動画表示領域を指定することができ、動画領域分に相当する最小限のデータ転送で動画表示が可能となり、データ転送時の消費電力を低減することができる。なお、以上は携帯電話機の表示装置に限るものではなく、パソコンやディスプレイモニターなどの大サイズの表示装置についても同様に適用できる。」(明細書第17頁第26行?第18頁第17行)

2 引用刊行物1に記載された技術事項
上記記載事項1ないし4及び図面の記載から、以下の技術事項が読み取れる。

(1)上記記載事項1の「上記のような画面チラツキを回避するための構成を液晶コントローラ・ドライバに付加すると、表示装置の消費電力が増加し、特に携帯電話機のような携帯端末では好ましいものではない。本発明の目的は、動画表示時に画面チラツキがなく、かつ高画質の動画表示機能を付加したことによる電力消費を抑制して低消費電力化した表示駆動制御システムを提供することにある。」との記載、
上記記載事項2の「第1図は本発明の一実施例の全体構成の説明図であり、本発明による表示駆動制御システムの一例である第1機能とされる動画対応のインターフェース(すなわち、動画データが転送される第1ポートを含む)を有する携帯電話機の駆動回路システム構成の一実施例を説明するブロック図である。」との記載、
上記記載事項2の「第2図は本発明の表示駆動制御システムの一実施例を用いた携帯電話機の表示画面における動画像の画面更新の様子を説明する模式図である。」との記載、
上記記載事項4の「なお、以上は携帯電話機の表示装置に限るものではなく、パソコンやディスプレイモニターなどの大サイズの表示装置についても同様に適用できる。」との記載、
また、第1図には、「駆動制御システム1」とともに、アンテナANT12、マイクロフォンM/C9、スピーカS/P10、液晶パネル(液晶ディスプレイ)LCD13等からなるブロック図が記載されており、この図は携帯電話機のブロック図であるといえるから、上記各記載及び第1図の記載からみて、
引用刊行物1には、液晶パネルを備える携帯電話機に係る発明が記載されているといえる。

(2)上記記載事項2の「画像プロセッサ4には、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)411とASIC412およびマイコンMPUでを有するベースバンド・プロセッサ41に加えて、動画対応プロセッサ(MPEG)421と液晶表示コントローラ(LCDC)422を有するアプリケーション・プロセッサ(APP)42を備えている。」との記載、
上記記載事項2の「前記した第21図に示された携帯電話機システムにおいて一般的に具備されるベースバンド・プロセッサBBPでは動画処理能力が不足する。このベースバンド・プロセッサBBPの他にアプリケーション・プロセッサ(APP)と称するサブMPUが知られている。第1図におけるアプリケーション・プロセッサ(APP)42には、MPEG動画処理などを行うためにMPEGプロセッサ(MPRG)421が内蔵される。」との記載及び第1図の記載からみて、
「携帯電話機システムにおいて一般的に具備されるベースバンド・プロセッサと動画処理などを行うためのアプリケーション・プロセッサとを備える携帯電話機」との技術事項が読み取れる。

(3)上記記載事項3の「第10図は本発明の表示駆動制御システムを構成する液晶コントローラ・ドライバを具体化したドライバチップの回路構成の説明図である。このドライバチップ600への静止画データ、テキストデータ等はベースバンド・プロセッサ41からシステム・インターフェース601に書き込まれ、内部のアドレスカウンタ(AC)606の示すアドレスのメモリすなわちグラフィックRAM (GRAM)610に表示データとして書き込まれる。」との記載及び第10図の記載から、
「ベースバンド・プロセッサにシステム・インターフェースを介して接続され、ベースバンド・プロセッサから静止画データが書き込まれる表示用のメモリ」との技術事項が読み取れる。
上記技術事項については、上記記載事項3の「第11図はシステム・インターフェースとアプリケーション・インターフェースを備えて内蔵メモリによるデータ転送を行う液晶コントローラ・ドライバの実施例の構成とその動作の説明図である。また、第12図は第11図の液晶コントローラ・ドライバによる静止画表示の様子を説明する模式図である。本実施例では、静止画データ等を入力するシステム・インターフェース(ベースバンド・インターフェース)41、動画インターフェースであるアプリケーション・インターフェース42は共に、そのデータは表示メモリである内蔵RAMメモリ(表示メモリM)63に格納される。」との記載及び第11図の記載からも読み取ることができる。

(4)上記記載事項3の「動画表示モードでは、動画表示データ(PD17-0)、垂直同期信号VSYNC、水平同期信号HSYNC、ドットクロックDCLK、データイネーブル信号ENABLEがアプリケーション・プロセッサ42から外部表示インターフェース620に入力する。表示動作切り換えレジスタ(DM)621によりタイミング発生回路622内でのタイミングを内蔵クロック基準から同期信号(VSYNC、HSYNC)に切り換え、必要なタイミング信号を生成する。
また、RAMアクセス切り換えレジスタ(RM)605によりアドレスカウンタ(AC)606の動作をドットクロックDCLK、データイネーブル信号ENABLEより発生する信号に切り換える。そして、グラフィックRAM(GRAM)610へのデータバスを表示データ(PD17-0)へ切り換える。これにより、表示動作、RAMアクセス動作は、システム・インターフェース601と内部クロック生成回路(CPG)630から動画インターフェースである外部表示インターフェースモジュール620に切り換えられる。」との記載、
上記記載事項3の「RAMアクセス切り換えレジスタ(RM)は内蔵した表示メモリ(グラフィックRAM)GRAMへのアクセスを行うインターフェースの切り換えを設定する。このRAMアクセス切り換えレジスタ(RMレジスタ)の設定を「RMの設定状態」で説明すると、「RM=0」のときはシステムインターフェースのみからメモリGRAMへの表示データの書込みが可能となる。また、「RM=1」のときはアプリケーション・インターフェース(動画インターフェース、表1のRGBインターフェース)のみからメモリGRAMへの書込みがで可能となる。」との記載及び第10図の記載から、
「アプリケーション・プロセッサに動画インターフェースを介して接続され、アプリケーション・プロセッサからの動画表示データが書き込まれる表示用のメモリ」との技術事項が読み取れる。
上記技術事項については、上記記載事項3の「第11図はシステム・インターフェースとアプリケーション・インターフェースを備えて内蔵メモリによるデータ転送を行う液晶コントローラ・ドライバの実施例の構成とその動作の説明図である。また、第12図は第11図の液晶コントローラ・ドライバによる静止画表示の様子を説明する模式図である。本実施例では、静止画データ等を入力するシステム・インターフェース(ベースバンド・インターフェース)41、動画インターフェースであるアプリケーション・インターフェース42は共に、そのデータは表示メモリである内蔵RAMメモリ(表示メモリM)63に格納される。」との記載及び第11図の記載からも読み取ることができる。

(5)上記記載事項3の「第12図に示したように、画面のRAMデータ表示エリア(静止画表示領域)SSDAの内のイネーブル信号ENABLE力有効とされた領域である動画表示領域MPDAに動画表示データPD17-0が表示される。なお、画面の上下にはバックポーチ期間(BP3-0)とフロントポーチ期間(FP3-0)が設けてあり、その間に表示期間(NL4-0)が設けられている。」との記載、
上記記載事項4の「本発明は、上記説明したような画面のRAMデータ表示エリア(静止画表示領域)SSDAの内に動画表示領域MPDAをはめ込む際の動画データ表示領域の選択した領域のみに当該動画データを転送することもできる。
第16図は本発明による動画転送を実現する回路構成の一実施例を説明するブロック図である。また、第17図は第16図の液晶コントローラ・ドライバによる選択領域のみへの静止画表示の様子を説明する模式図である。
動画バッファリングを用いない場合、液晶パネルの一部分を使用して動画表示を行う際に動画表示領域MPDA以外の静止画表示領域SSDAも含めて動画インターフェースから表示データを常時転送する必要があった。このため、データ転送数が増し、消費電力が増加する。本実施例の選択領域転送方式では、動画インターフェースから転送する表示データは、動画表示領域MPDAの表示データのみを転送可能である。
選択領域転送方式では、事前に表示メモリヘ静止画データを書き込んで置き、ENABLE信号にて指示された表示メモリの部分にのみ動画インターフェースから表示データを書き込む。これにより、表示メモリ上で静止画と動画が合成され、表示動作時に同時に読み出されて液晶パネル13に表示がなされる。」との記載、
並びに、第12図の記載、第16図の記載及び第17図の記載からみて、
「表示用のメモリにおいて、液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域に、静止画データが書き込まれ、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域に、動画データが書き込まれる」との技術事項が読み取れる。

(6)上記「(5)」の「表示用のメモリにおいて、液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域に、静止画データが書き込まれ、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域に、動画データが書き込まれる」が、上記「(3)」、「(4)」において述べた表示用のメモリにおいて成り立つことは、上記記載事項3、上記記載事項4、第10図、第11図、第12図、第16図及び第17図の記載からみて明らかである。
したがって、上記「(3)」、「(4)」、「(5)」の各技術事項を総合することにより、上記「(3)」、「(4)」、「(5)」において指摘した各記載から、「前記ベースバンド・プロセッサにシステム・インターフェースを介して接続され、前記液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域に、前記ベースバンド・プロセッサからの静止画データが書き込まれるとともに、前記アプリケーション・プロセッサに動画インターフェースを介して接続され、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域に、前記アプリケーション・プロセッサからの動画表示データが書き込まれる表示用のメモリ」との技術事項が読み取れるといえる。

(7)上記記載事項3の「第10図は本発明の表示駆動制御システムを構成する液晶コントローラ・ドライバを具体化したドライバチップの回路構成の説明図である。このドライバチップ600への静止画データ、テキストデータ等はベースバンド・プロセッサ41からシステム・インターフェース601に書き込まれ、内部のアドレスカウンタ(AC)606の示すアドレスのメモリすなわちグラフィックRAM (GRAM)610に表示データとして書き込まれる。この表示動作は次のとおりである。すなわち、内部クロツク生成回路(CPG)630で生成したクック信号に基づいてタイミング発生回路622は表示動作に必要なタイミング、表示アドレスを発生する。
このタイミング、表示アドレスでグラフィックRAM (GRAM)610から表示データを読み出し、液晶表示に必要な電圧レベルに変換して液晶パネルに送出する。」との記載からみて、タイミング発生回路622は、表示動作に必要なタイミング、表示アドレスを発生し、このタイミング、表示アドレスでグラフィックRAM (GRAM)610から静止画データである表示データを読み出し、液晶表示に必要な電圧レベルに変換して液晶パネルに送出するための回路であり、また、第10図の記載からみて、タイミング発生回路622は、ラッチ回路623、624、626、交流化回路625、駆動回路627に信号を送って液晶パネルの駆動を制御しているから、グラフィックRAM (GRAM)610から表示データを読み出し、液晶パネルに送出し表示する制御を行う制御回路であるといえる。
したがって、「表示用のメモリから静止画データである表示データを読み出し、液晶パネルに送出し表示する制御を行う制御回路」との技術事項が読み取れる。

(8)上記「(7)」において述べたように、タイミング発生回路622は、グラフィックRAM (GRAM)610から表示データを読み出し、液晶パネルに送出し表示する制御を行う制御回路であるといえるが、このことが、上記「(7)」のように表示データが静止画データである場合だけでなく、動画表示データである場合においても成り立つことは、上記記載事項3の「動画表示モードでは、動画表示データ(PD17-0)、垂直同期信号VSYNC、水平同期信号HSYNC、ドットクロックDCLK、データイネーブル信号ENABLEがアプリケーション・プロセッサ42から外部表示インターフェース620に入力する。表示動作切り換えレジスタ(DM)621によりタイミング発生回路622内でのタイミングを内蔵クロック基準から同期信号(VSYNC、HSYNC)に切り換え、必要なタイミング信号を生成する。
また、RAMアクセス切り換えレジスタ(RM)605によりアドレスカウンタ(AC)606の動作をドットクロックDCLK、データイネーブル信号ENABLEより発生する信号に切り換える。そして、グラフィックRAM(GRAM)610へのデータバスを表示データ(PD17-0)へ切り換える。これにより、表示動作、RAMアクセス動作は、システム・インターフェース601と内部クロック生成回路(CPG)630から動画インターフェースである外部表示インターフェースモジュール620に切り換えられる。」との記載及び第10図の記載から明らかである。
したがって、「表示用のメモリから動画表示データである表示データを読み出し、液晶パネルに送出し表示する制御を行う制御回路」との技術事項が読み取れる。

(9)上記記載事項3の「第12図に示したように、画面のRAMデータ表示エリア(静止画表示領域)SSDAの内のイネーブル信号ENABLE力有効とされた領域である動画表示領域MPDAに動画表示データPD17-0が表示される。なお、画面の上下にはバックポーチ期間(BP3-0)とフロントポーチ期間(FP3-0)が設けてあり、その間に表示期間(NL4-0)が設けられている。」との記載、
上記記載事項4の「本発明は、上記説明したような画面のRAMデータ表示エリア(静止画表示領域)SSDAの内に動画表示領域MPDAをはめ込む際の動画データ表示領域の選択した領域のみに当該動画データを転送することもできる。
第16図は本発明による動画転送を実現する回路構成の一実施例を説明するブロック図である。また、第17図は第16図の液晶コントローラ・ドライバによる選択領域のみへの静止画表示の様子を説明する模式図である。
動画バッファリングを用いない場合、液晶パネルの一部分を使用して動画表示を行う際に動画表示領域MPDA以外の静止画表示領域SSDAも含めて動画インターフェースから表示データを常時転送する必要があった。このため、データ転送数が増し、消費電力が増加する。本実施例の選択領域転送方式では、動画インターフェースから転送する表示データは、動画表示領域MPDAの表示データのみを転送可能である。
選択領域転送方式では、事前に表示メモリヘ静止画データを書き込んで置き、ENABLE信号にて指示された表示メモリの部分にのみ動画インターフェースから表示データを書き込む。これにより、表示メモリ上で静止画と動画が合成され、表示動作時に同時に読み出されて液晶パネル13に表示がなされる。」との記載、
並びに、第12図の記載、第16図の記載及び第17図の記載から、
「表示用のメモリにおいて、液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域から静止画データを読み出し、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域から動画データを読み出し、前記液晶パネルの静止画表示領域、動画表示領域にそれぞれ表示する」との技術事項が読み取れる。

(10)上記「(9)」の「表示用のメモリにおいて、液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域から静止画データを読み出し、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域から動画データを読み出し、前記液晶パネルの静止画表示領域、動画表示領域にそれぞれ表示する」が、上記「(7)」、「(8)」において述べた制御回路(タイミング発生回路622)の制御により行われることは、上記記載事項3、上記記載事項4、第10図、第11図、第12図、第16図の記載及び第17図の記載からみて明らかである。
したがって、上記「(7)」、「(8)」、「(9)」の各技術事項を総合することにより、上記「(7)」、「(8)」、「(9)」において指摘した各記載から、「表示用のメモリにおいて、液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域から静止画データを読み出し、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域から動画データを読み出し、前記液晶パネルに送出し、前記液晶パネルの静止画表示領域、動画表示領域にそれぞれ表示する制御を行う制御回路」との技術事項が読み取れるといえる。

以上のことを踏まえると、引用刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「液晶パネルを備える携帯電話機において、
携帯電話機システムにおいて一般的に具備されるベースバンド・プロセッサと、
動画処理などを行うためのアプリケーション・プロセッサと、
前記ベースバンド・プロセッサにシステム・インターフェースを介して接続され、前記液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域に、前記ベースバンド・プロセッサからの静止画データが書き込まれるとともに、前記アプリケーション・プロセッサに動画インターフェースを介して接続され、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域に、前記アプリケーション・プロセッサからの動画表示データが書き込まれる表示用のメモリと、
前記表示用のメモリの上記各記憶領域から静止画データ、動画表示データをそれぞれ読み出し、前記液晶パネルに送出し、前記液晶パネルの静止画表示領域、動画表示領域にそれぞれ表示する制御を行う制御回路を備えることを特徴とする携帯電話機。」

3 引用刊行物2の記載事項
当審が平成25年1月11日付けで通知した拒絶理由において刊行物3として引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2003-274010号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、2次電池を電源としている携帯電話機においては、長時間使用できることが重要であり、そのためには消費電力を減らすことが必要である。そのため、動作に必要のない回路ブロックの動作を停止またはセーブして、消費電力の低減を図る方法が採られている。
一方、各種のアプリケーションを快適に使用するために高速の処理性能を有するプロセッサが使われるようになっているが、この高速な処理を行うプロセッサは消費電力が増大するという問題がある。
【0008】しかしながら、上記特願2001-312820に記載の従来技術では、待受時に、アプリケーション機能用プロセッサの動作を制御して、消費電力を低減するということには配慮されていないという問題があった。すなわち、表示部の表示制御をアプリケーション機能用プロセッサから制御しているため、待受時等の電話機能のみが動作している場合にも、表示部への表示制御はアプリケーション機能用プロセッサが行っているので、アプリケーション機能用プロセッサを動作させておく必要がある。このため、待受時の消費電力が低減できず、電池寿命が短くなるという問題があった。特に、消費電力の大きなアプリケーション機能用プロセッサの動作を、待受時に少なくとも消費電力の少なくなるスタンバイモード(いわゆるパワーセーブモード、スリープモード等)にできないことは、電池寿命の観点から見て大きな問題であった。さらには、画像等を表示する主表示部と電話機能の情報を表示する副表示部をもった折りたたみ式携帯電話機等の場合、副表示部への制御についても何ら配慮されていないという問題があった。すなわち、副表示部をアプリケーション機能用プロセッサで表示制御している場合は、受信待受時にスタンバイモードにできず、省電力化ができないという問題があった。
【0009】また、別の問題として、折りたたみ式の携帯電話機の場合には、折りたたんだ状態のときにアプリケーション機能用プロセッサをスタンバイモードにすることについて配慮されていないため、省電力化することができないという問題があった。すなわち、折りたたんだときは、ゲーム等のアプリケーションの表示をしている主表示部が見えなくなり、ゲーム等のアプリケーション機能の表示が使用者に視認できなくなるため、アプリケーションを止め、待受状態としているが、この際にアプリケーション機能用プロセッサをスタンバイモードに移行させていないので、消費電力を低減できないという問題があった。
【0010】したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、上記した従来技術のもつ問題点を解消することにあり、本発明の目的とするところは、電話機能を処理する電話機能用プロセッサとアプリケーション機能を処理するアプリケーション機能用プロセッサの少なくとも2つのプロセッサを装備した携帯電話機において、待受時の省電力化を図り、以って、電池寿命の延命化を可能とすることにある。」

<記載事項2>
「【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0019】まず、本発明の第1実施形態を、図1?図4によって説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る携帯電話機の構成を示すブロック図である。図1において、101は電話機能に関する処理を行う電話機能用プロセッサ、102はアプリケーションに関する処理を行うアプリケーション機能用プロセッサ、103は主に動画等のアプリケーション関連の表示を行うための主表示装置、104は主に電話機能に関する表示を行う副表示装置、105は基地局との無線通信を行うための無線機能部、106は着信音や動画の音声データ等を発音するためのオーディオ機能部である。
【0020】本実施形態では、携帯電話機として通信またはアプリケーションの実行等を行っていない待受時(すなわち、携帯電話機全体としての待受状態時)には、電話機能用プロセッサ101、アプリケーション機能用プロセッサ102は、ともに消費電力削減のためにスタンバイモードの状態をとるようになっているが、電話機能用プロセッサ101は、待受時にも電波状況等の各種確認のため定期的に起動し、無線機能部105を介して基地局との間で通信を行って、状況を副表示装置104に表示する。ここで、上記消費電力削減のためのスタンバイモードの状態とは、パワーセーブモードまたはスリープモードのような呼称で呼ばれる機能で、プロセッサ内の処理を制御して消費電力を低減する機能である。例えば、使用していない処理ブロックの動作を止めるまたは制限する手法、動作用クロックを下げて、処理を遅くする手法等を用いることにより、プロセッサの消費電力を低減するものである。なお、プロセッサの消費電力を低減する手法は、上記手法に限定されるものではないことは言うまでもない。また、通信時には、電話機能用プロセッサ101のみを起動し、同様の処理を行う。また、アプリケーションの実行をしているときには、電話機能用プロセッサ101及びアプリケーション機能用プロセッサ102の両プロセッサを起動し、副表示装置104及び主表示装置103への表示制御、オーディオ機能部106への音声制御、及び図示していない各ブロックへの必要な制御をしている。このようにすることにより、待受時には電話機能用プロセッサが時々起動するだけであり、消費電力を低減できる。
【0021】次に、図2、図3によって、制御信号の切換手段について詳細に説明する。図2は、主表示装置103への表示用の制御信号を切換える切換手段などの構成を示すブロック図である。図2において、1021は主表示装置103への表示用の制御信号を切換えるための切換手段、1022は電話機能用プロセッサ101内の表示用の制御信号を生成する電話用表示制御部、1023はアプリケーション機能用プロセッサ102内の表示用の制御信号を生成するアプリケーション用表示制御部である。
【0022】待受時には、先にも述べたように、電話機能用プロセッサ101、アプリケーション機能用プロセッサ102は、ともに消費電力削減のためにスタンバイモードとなっているが、電話機能用プロセッサ101は、待受時にも電波状況等の各種確認のため定期的に起動して、無線機能部105を介して基地局との間で通信を行って状況を確認し、必要な通信機能に関する情報を、電話用表示制御部1022の制御に従い、少なくとも副表示装置104に表示させている。
【0023】アプリケーション機能用プロセッサ102は、スタンバイモードとアプリケーション処理モードの2モードを持っており、スタンバイモード時には、切換手段1021から主表示装置103に対して、電話用表示制御部1022(電話機能用プロセッサ101)からの制御信号が出力されるようになっており、主表示装置103においても電波状況等の電話機能に関する表示を行うことができるようになっている。また、アプリケーション機能用プロセッサ102は、アプリケーション処理モード時には、アプリケーション用表示制御部1023から制御信号を出力して、これが切換手段1021から主表示装置103に出力され、主表示装置103ではアプリケーションに関する表示がなされるようになっている。」

4 引用刊行物2に記載された技術事項
上記記載事項1、2及び図面の記載から、以下の技術事項が読み取れる。

(1)上記記載事項1から、「携帯電話機においては、消費電力を節減するために、従来から、動作に必要のない回路ブロックの動作を停止またはセーブして、消費電力の低減を図る方法が採られてきたが、各種のアプリケーションを快適に使用するために高速の処理性能を有するアプリケーション機能用プロセッサが使われる場合には、表示部の表示制御をアプリケーション機能用プロセッサから制御しているため、待受時等の電話機能のみが動作している場合にも、アプリケーション機能用プロセッサを動作させておく必要があり、消費電力の大きなアプリケーション機能用プロセッサの動作を待受時にスタンバイモード(いわゆるパワーセーブモード、スリープモード等)にできないという問題があったことに鑑み、本発明は、当該従来技術の問題点を解決するために、電話機能を処理する電話機能用プロセッサとアプリケーション機能を処理するアプリケーション機能用プロセッサの少なくとも2つのプロセッサを装備した携帯電話機において、待受時の省電力化を図り、以って、電池寿命の延命化を可能とすることを、その目的とする。」との技術事項が読み取れる。

(2)上記記載事項2、図1ないし図3の記載から、「電話機能に関する処理を行う電話機能用プロセッサ、アプリケーションに関する処理を行うアプリケーション機能用プロセッサを備えた携帯電話機において、アプリケーション機能用プロセッサが、スタンバイモードとアプリケーション処理モードの2モードを有するようにし、スタンバイモード時には、切換手段から主表示装置に対して、電話機能用プロセッサからの制御信号が出力され、主表示装置において電波状況等の電話機能に関する表示を行うことができるようにし、また、アプリケーション処理モード時には、アプリケーション機能用プロセッサから制御信号を出力して、主表示装置でアプリケーションに関する表示がなされるようにし、携帯電話機として通信またはアプリケーションの実行等を行っていない待受時(すなわち、携帯電話機全体としての待受状態時)に、電話機能用プロセッサ、アプリケーション機能用プロセッサが、ともに消費電力削減のためにスタンバイモードの状態をとるようにする。」との技術事項が読み取れる。

以上を総合すると、引用刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「携帯電話機においては、消費電力を節減するために、従来から、動作に必要のない回路ブロックの動作を停止またはセーブして、消費電力の低減を図る方法が採られてきたが、各種のアプリケーションを快適に使用するために高速の処理性能を有するアプリケーション機能用プロセッサが使われる場合には、表示部の表示制御をアプリケーション機能用プロセッサから制御しているため、待受時等の電話機能のみが動作している場合にも、アプリケーション機能用プロセッサを動作させておく必要があり、消費電力の大きなアプリケーション機能用プロセッサの動作を待受時にスタンバイモード(いわゆるパワーセーブモード、スリープモード等)にできないという問題があったことに鑑み、当該従来技術の問題点を解決するために、電話機能に関する処理を行う電話機能用プロセッサ、アプリケーションに関する処理を行うアプリケーション機能用プロセッサを備えた携帯電話機において、アプリケーション機能用プロセッサが、スタンバイモードとアプリケーション処理モードの2モードを有するようにし、スタンバイモード時には、切換手段から主表示装置に対して、電話機能用プロセッサからの制御信号が出力され、主表示装置において電波状況等の電話機能に関する表示を行うことができるようにし、また、アプリケーション処理モード時には、アプリケーション機能用プロセッサから制御信号を出力して、主表示装置でアプリケーションに関する表示がなされるようにし、携帯電話機として通信またはアプリケーションの実行等を行っていない待受時(すなわち、携帯電話機全体としての待受状態時)に、電話機能用プロセッサ、アプリケーション機能用プロセッサが、ともに消費電力削減のためにスタンバイモードの状態をとるようにする。」

第5 当審の判断
当審は、当審が平成25年3月7日付けで通知した拒絶理由において、請求項1ないし8に係る発明について指摘したように、本願発明は、刊行物1(引用刊行物1)に記載された発明(引用発明)、刊行物3(引用刊行物2)に記載された発明(引用発明2)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「液晶パネル」は、本願発明の「表示データを表示する液晶表示部」に相当する。

(2)引用発明の「携帯電話機システムにおいて一般的に具備されるベースバンド・プロセッサ」は、本願発明の「携帯電話機の制御を行う制御用CPU」に相当する。

(3)引用発明の「動画処理などを行うためのアプリケーション・プロセッサ」は、
本願発明の「アプリケーション機能を実行するアプリケーション用CPU」に相当する。

(4)引用発明の「前記ベースバンド・プロセッサにシステム・インターフェースを介して接続され、前記液晶パネルの静止画表示領域に対応する領域に、前記ベースバンド・プロセッサからの静止画データが書き込まれるとともに、前記アプリケーション・プロセッサに動画インターフェースを介して接続され、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する領域に、前記アプリケーション・プロセッサからの動画表示データが書き込まれる表示用のメモリ」と、
本願発明の「前記制御用CPUに接続され、前記制御用CPUから送られる表示データを格納する第1の表示データ格納部」とは、ともに、
「前記制御用CPUに接続され、前記制御用CPUから送られる表示データを格納する表示データ格納部」の点で共通する。

(5)引用発明の「前記ベースバンド・プロセッサにシステム・インターフェースを介して接続され、前記液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域に、前記ベースバンド・プロセッサからの静止画データが書き込まれるとともに、前記アプリケーション・プロセッサに動画インターフェースを介して接続され、前記液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域に、前記アプリケーション・プロセッサからの動画表示データが書き込まれる表示用のメモリ」と、
本願発明の「前記アプリケーション用CPUに接続され、前記アプリケーション用CPUから送られる表示データを格納する第2の表示データ格納部」とは、ともに、
「前記アプリケーション用CPUに接続され、前記アプリケーション用CPUから送られる表示データを格納する表示データ格納部」の点で共通する。

(6)引用発明の「前記表示用のメモリの上記各記憶領域から静止画データ、動画表示データをそれぞれ読み出し、前記液晶パネルに送出し、前記液晶パネルの静止画表示領域、動画表示領域にそれぞれ表示する制御を行う制御回路」において、静止画データ、動画表示データをそれぞれ読み出し、前記液晶パネルに送出すると、液晶パネルにおいて静止画データ、動画表示データが更新され表示が書き換えられるから、上記静止画データ、動画表示データを前記液晶パネルに送出するのは、液晶パネルにおいて静止画データ、動画表示データを書き換える時であるいうことができる。
したがって、引用発明の上記「前記表示用のメモリの上記各記憶領域から静止画データ、動画表示データをそれぞれ読み出し、前記液晶パネルに送出し、前記液晶パネルの静止画表示領域、動画表示領域にそれぞれ表示する制御を行う制御回路」と、
本願発明の「前記第1の表示データ格納部、前記第2の表示データ格納部から表示データを読み出し、表示データを書き換える時に前記液晶表示部に転送し、前記液晶表示部の表示領域毎に表示する制御を行う制御回路」とは、ともに、
「前記表示データ格納部から表示データを読み出し、表示データを書き換える時に前記液晶表示部に転送し、前記液晶表示部の表示領域毎に表示する制御を行う制御回路」の点で共通する。

(7)以上のことから、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「表示データを表示する液晶表示部を備える携帯電話機において、
前記携帯電話機の制御を行う制御用CPUと、
アプリケーション機能を実行するアプリケーション用CPUと、
前記制御用CPUに接続され、前記制御用CPUから送られる表示データを格納する表示データ格納部と、
前記アプリケーション用CPUに接続され、前記アプリケーション用CPUから送られる表示データを格納する前記表示データ格納部と、
前記表示データ格納部から表示データを読み出し、表示データを書き換える時に前記液晶表示部に転送し、前記液晶表示部の表示領域毎に表示する制御を行う制御回路を備える携帯電話機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
表示格納部及び制御回路に関して、本願発明は、第1と第2の2つの表示格納部を備え、各表示格納部が、それぞれ制御用CPU、アプリケーション用CPUに接続され、それぞれのCPUから送られる表示データをそれぞれ格納し、制御回路が各表示格納部からそれぞれ表示データを読み出すのに対し、引用発明は、1つの表示用のメモリが2つの記憶領域、すなわち、液晶パネルの静止画表示領域に対応する記憶領域と液晶パネルの動画表示領域に対応する記憶領域の2つの記憶領域を備えており、各記憶領域にベースバンド・プロセッサ、アプリケーション・プロセッサからそれぞれ表示データが書き込まれ、制御回路は各記憶領域からそれぞれ表示データを読み出す点。
[相違点2]
本願発明が、前記制御用CPU及び前記アプリケーション用CPUをスリープ対象とし、前記制御用CPU及び前記アプリケーション用CPUのうち表示機能を含む機能が使用されていないCPUを使用されていない期間スリープ状態にすることを可能とするのに対し、引用発明は、そのような構成を具備しない点。

2 相違点についての検討
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
液晶表示装置において、静止画データと動画データを液晶表示部の表示領域毎に表示するために、引用発明のように、1つの表示用のメモリに第1と第2の記憶領域を設け、各記憶領域に静止画データと動画データをそれぞれ書き込み、各記憶領域からそれぞれのデータを読み出して表示するように構成することも、本願発明のように、第1と第2の2つの表示格納部を設け、各表示格納部に静止画データ、動画データをそれぞれに書き込み、各表示格納部からそれぞれのデータを読み出して表示するように構成することも、いずれも、例えば、当審が平成25年1月11日付けで通知した拒絶理由において刊行物2として挙げた特開2001-222276号公報に示されるように周知技術である。
そして、引用発明において、静止画データと動画データを液晶表示部の表示領域毎に表示するために、引用発明の上記構成に代えて、上記周知技術が示す他方の構成に変更すること、すなわち、本願発明のように、第1と第2の2つの表示格納部を設け、各表示格納部に静止画データ、動画データをそれぞれに書き込み、各表示格納部からそれぞれのデータを読み出して表示するような構成に変更することを妨げる特段の阻害要因も見当たらない。
してみると、引用発明において、上記周知技術を適用して、静止画データと動画データを液晶表示部の表示領域毎に表示するための具体的な構成として、1つの表示用のメモリに第1と第2の記憶領域を設けることに代えて、第1と第2の2つの表示格納部を設け、各表示格納部が、それぞれベースバンド・プロセッサ(本願発明の制御用CPUに相当)、アプリケーション・プロセッサ(本願発明のアプリケーション用CPUに相当)に接続され、それぞれのプロセッサから送られる表示データをそれぞれ格納し、制御回路が各表示格納部からそれぞれ表示データを読み出すようにすること、すなわち、上記相違点1に係る本願発明のごとく構成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計変更である。

(上記周知技術に関して、上記特開2001-222276号公報の以下の記載を参照。
「【0004】この場合、携帯電話機の表示部には、例えば図3に示す液晶パネル22には、受信された動画が動画表示領域22Aに表示される。一方、液晶パネル22の静止画表示領域22Bには、例えばその動画に関する説明、操作情報などの静止画が表示される。
【0005】動画表示領域22Aに動画を表示するためには、液晶ドライバ内のRAMの記憶領域のうち、動画表示領域22Aと対応する動画記憶領域にて、周期的に、しかもほぼリアルタイムに動画データを書き換える必要がある。
【0006】一方、静止画表示領域22Bに表示される静止画は、携帯電話機のキー操作時等に応じて変更され、RAMの記憶領域のうち、静止画表示領域22Bと対応する静止画記憶領域の静止画データを書き換える必要が生じる。
【0007】しかし、RAMの静止画記憶領域にて静止画データを書き換えるには、周期的に動画データが伝送されるバスラインを使用して、一画面の動画データと次の一画面の動画データを伝送する間の隙間を利用するしかない。」との記載、
「【0123】図12に示すXドライバIC300が図4に示すXドライバIC24と相違する点は、まず第1,第2の表示データRAM310,320を設けた点である。第1の表示データRAM310には静止画データが記憶され、第2の表示データRAM320には動画データが記憶される。
・・・・・
【0124】図13は、第1の表示データRAM310の静止画表示領域310、第2の表示データRAM320の動画記憶領域320A、液晶パネル22の動画表示領域22Aおよび静止画表示領域22Bの関係を示している。
【0125】第1,第2の表示データRAM310,320は液晶パネル22の一画面の全画素と対応する記憶領域を有する。これにより、図13に示す静止画記憶領域310Aおよび動画記憶領域320Aは任意に変更可能となる。なお、図13では説明の便宜上、第1,第2の表示データRAM310,320の各メモリ空間と、液晶パネル22の表示空間とを同一の大きさに描いている。
【0126】例えば1秒間に20枚のフレームレートにて第2の表示データRAM320の動画記憶領域320Aにデータが書き込まれ、例えば1秒間に60枚のフレームレートにてデータが読み出されて液晶パネル22の動画表示領域22Aに表示される。一方、例えば1秒間に90枚のフレームレートにて第1の表示データRAM310の静止画記憶領域310Aにデータが書き込まれ、例えば1秒間に60枚のフレームレートにてデータが読み出されて液晶パネル22の静止画表示領域22Bに表示される。
【0127】このように、第2の実施の形態では第1の実施の形態とは異なり第1,第2の表示データRAM310,320を設けている。このため、第1の表示データRAM310に対応させて、第1のカラムアドレス制御回路142、第1のI/Oバッファ312、第1のページアドレス制御回路152および第1の表示アドレス制御回路330を設けている。同様に、第2の表示データRAM320に対応させて、第2のカラムアドレス制御回路144、第2のI/Oバッファ322、第1のページアドレス制御回路154および第2の表示アドレス制御回路340を設けている。
【0128】さらに、第1,第2の表示データRAM310,320からの表示データを、MPU系制御回路130からの出力に基づいて選択してPWMデコーダ回路180に出力するセレクタ350を設けている。
【0129】本発明の第2の実施の形態においても、静止画、動画は第1,第2のバスライン110,120により別系統にて伝送される。また、第1のRAM310,第2のRAM320にデータを書き込むためのカラムおよびページアドレスも、静止画と動画とで別系統で指定される。このため、動画データを第2のRAM320に書き換えながら、同時に静止画データを第1のRAM310にて書き換えることができ、動画データの書き込みの終了を待って静止画データを書き込む必要がない。」との記載、
並びに、図3、図12及び図13の記載。)

[相違点2について]
引用刊行物2には、「携帯電話機においては、消費電力を節減するために、従来から、動作に必要のない回路ブロックの動作を停止またはセーブして、消費電力の低減を図る方法が採られてきたが、各種のアプリケーションを快適に使用するために高速の処理性能を有するアプリケーション機能用プロセッサが使われる場合には、表示部の表示制御をアプリケーション機能用プロセッサから制御しているため、待受時等の電話機能のみが動作している場合にも、アプリケーション機能用プロセッサを動作させておく必要があり、消費電力の大きなアプリケーション機能用プロセッサの動作を待受時にスタンバイモード(いわゆるパワーセーブモード、スリープモード等)にできないという問題があったことに鑑み、当該従来技術の問題点を解決するために、電話機能に関する処理を行う電話機能用プロセッサ、アプリケーションに関する処理を行うアプリケーション機能用プロセッサを備えた携帯電話機において、アプリケーション機能用プロセッサが、スタンバイモードとアプリケーション処理モードの2モードを有するようにし、スタンバイモード時には、切換手段から主表示装置に対して、電話機能用プロセッサからの制御信号が出力され、主表示装置において電波状況等の電話機能に関する表示を行うことができるようにし、また、アプリケーション処理モード時には、アプリケーション機能用プロセッサから制御信号を出力して、主表示装置でアプリケーションに関する表示がなされるようにし、携帯電話機として通信またはアプリケーションの実行等を行っていない待受時(すなわち、携帯電話機全体としての待受状態時)に、電話機能用プロセッサ、アプリケーション機能用プロセッサが、ともに消費電力削減のためにスタンバイモードの状態をとるようにする。」との発明(引用発明2)が記載されている。
携帯電話機において、消費電力を低減することは周知の課題であり、引用発明においてもそのような課題が設定されているから(引用刊行物の明細書の第4頁第13行?第17行の記載参照。)、引用発明と引用発明2とは消費電力の低減という共通の課題を有している。
そして、引用発明のベースバンド・プロセッサ、アプリケーション・プロセッサは、引用発明2の電話機能用プロセッサ、アプリケーション機能処理用のプロセッサに相当するから、引用発明と引用発明2とは、ともに、このような2つのプロセッサを有する点においても共通している。
さらに、引用発明においては、アプリケーション・プロセッサが液晶パネルの表示制御を行っているのではなく、液晶コントローラドライバが、アプリケーション・プロセッサ、ベースバンド・プロセッサから各インターフェースを介して各表示データ等を受けて、液晶パネルの表示制御を行っているから、引用発明2と同様に、待受時にアプリケーション・プロセッサをスタンバイモードにすることができることは明らかであり、引用発明に引用発明2を適用することを妨げる特段の阻害要因はないといえる。
してみると、引用発明において、消費電力を削減するために、引用発明2を適用して、アプリケーション・プロセッサがスタイバイモードとアプリケーションモードの2つのモードを有するようにし、待受時にベースバンド・プロセッサとアプリケーション・プロセッサの双方をスタンバイモードとすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用発明2に示されているように、従来から動作に必要のない回路ブロックの動作を停止またはセーブして消費電力の低減を図る方法が採られてきたのであるから、上記のように待受時のみならず、ベースバンド・プロセッサとアプリケーション・プロセッサの双方について、動作の必要がないときにスタンバイモードとなるようにすればより一層の消費電力の低減化が図れることは当業者にとって明らかである。
以上のとおりであるから、引用発明において、消費電力を削減するために、引用発明2を適用して、ベースバンド・プロセッサとアプリケーション・プロセッサの双方をスタンバイ(スリープ)対象とし、これらのプロセッサのうち表示機能を含む機能が使用されていないプロセッサを使用されていない期間スタンバイ(スリープ)状態にすること、すなわち、上記相違点2に係る本願発明のごとく構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は、引用発明、引用発明2及び周知技術から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別のものではない。

よって、本願発明は、引用発明、引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について
請求人は、平成25年3月11日付けの意見書において、概ね以下のような主張をしている。
引用発明、引用発明2及び周知技術は相互に異なる発明であり、本願発明とも相違しているから、これらについて、本願発明と一見して類似する部分を単に寄せ集めても、本願発明を容易に発明することはできない。

上記主張について検討する。
上記「2」の「[相違点1について]」において述べたように、引用発明と周知技術は、ともに、静止画データ及び動画データを液晶表示部の表示領域毎に表示する技術に係るものであり、周知技術に示されるように、静止画データ及び動画データを液晶表示部の表示領域毎に表示するための具体的な構成として、引用発明の構成も本願発明の構成もともに周知であり、さらに、引用発明に周知技術を適用して、引用発明の構成を本願発明の構成に変更することに特段の阻害要因も見当たらないことから、引用発明に上記周知技術を適用して、相違点1に係る本願発明のごとく構成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計変更である。
また、上記「2」の「[相違点2について]」において述べたように、引用発明と引用発明2は、携帯電話機における消費電力の低減化という共通の課題を有しており、ともに、ベースバンド・プロセッサ、アプリケーション・プロセッサという2つのプロセッサを有する点でも共通しており、引用発明に引用発明2を適用することを妨げる特段の阻害要因もなく、さらに、引用発明2には、従来から動作に必要のない回路ブロックの動作を停止またはセーブして消費電力の低減を図る方法が採られてきたことも示されているから、引用発明において、消費電力を削減するために、引用発明2を適用して、上記相違点2に係る本願発明のごとく構成することは当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、上記「2」において述べたように、本願発明は、引用発明、引用発明2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項4に係る発明)は、引用発明、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願発明(請求項4に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項1ないし3に係る発明、請求項5ないし9に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-05 
結審通知日 2013-07-08 
審決日 2013-08-01 
出願番号 特願2004-265948(P2004-265948)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 忠紀  
特許庁審判長 下中 義之
特許庁審判官 飯野 茂
中塚 直樹
発明の名称 液晶表示部制御装置、方法及び液晶表示部制御装置を用いた携帯電話機  
代理人 浅野 雄一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ