• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
管理番号 1279674
審判番号 不服2011-28124  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-27 
確定日 2013-09-25 
事件の表示 特願2005-353383「作業機械」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月21日出願公開、特開2007-155586〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年12月7日を出願日とする特許出願であって、平成22年10月15日付けで明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成22年12月28日付けで明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正2」という。)がなされ、平成23年9月27日付けで、決定をもって、補正2についての補正の却下の決定がなされ、同日付け(送達日:同年10月4日)で拒絶査定がなされたところ、これに対し、平成23年12月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、当該請求と同時に、明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下「補正3」という。)がなされたものである。
その後、当審より平成24年7月23日付けで審尋を行い、請求人より平成24年9月24日付けで回答書が提出され、当審より平成25年3月7日付けで拒絶理由を通知(発送日:同年3月12日)したところ、平成25年5月10日付けで意見書が提出されるとともに同日付で明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正4」という。)がなされた。

第2 当審が通知した拒絶理由
当審が平成25年3月7日付けで通知した拒絶理由の概要は、請求項1に係る発明、請求項2に係る発明は、それぞれ、下記の刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3ないし6に係る発明は、それぞれ、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

1.特開2005-269828号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、補正1、補正3、補正4により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
キャパシタと、
該キャパシタの電力を利用して作動する電動モータと、
前記キャパシタの内部抵抗値を算出するための内部抵抗値算出手段と、
該内部抵抗値算出手段により算出された内部抵抗値に対応する前記キャパシタの充電量を算出する充電量算出手段と、
該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信するバッテリ状態管理部と、
を備えた作業機械。」

第4 引用発明
1 引用刊行物の記載事項
当審が平成25年3月7日付けで通知した拒絶理由において刊行物1として引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-269828号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、「ハイブリッドシステム」(発明の名称)の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【0001】
本発明は、エンジンから少なくとも機械的駆動力と電力を取り出すハイブリッドシステムに関し、特に、このハイブリッドシステムにおける蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や、建設機械などの作業機などにおいては、エンジンを駆動源とする発電機と、この発電機による発電電力を蓄電する蓄電装置としてのバッテリ(二次電池)と、このバッテリから供給される電力が用いられて駆動するモータ(電動機)とを備え、発電機によるバッテリの蓄電と、モータによるエンジンのトルクアシストとを行うことで、省エネルギー化を図りつつ、エンジンを有効に使用することによって効率的な運転を可能とする、いわゆるハイブリッドシステムが採用されており、このような技術が今後の主流となりつつある。」

<記載事項2>
「【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るハイブリッドシステムの構成の一例を示す図、図2は定電流制御回路の構成を示す図、図3は定電流制御回路による定電流制御の制御フローを示す図、図4は均等制御回路の構成を示す図、図5はバッテリ電圧の変化を示す図、図6は蓄電システム部の他の構成を示す図、図7はバッテリとキャパシタ蓄電装置それぞれの充放電特性を示す図である。
【0015】
まず、ハイブリッドシステムの構成について図1を用いて説明する。
なお、本実施例においては、モータ及び発電機の機能を兼ね備えたモータジェネレータ11を有するハイブリッドシステムを用いて説明するが、これに限定されず、モータと発電機とを別々に備えた構成のハイブリッドシステム等においても本発明の効果を得ることができる。つまり、本発明は、エンジンにかかる負荷に応じて、エンジンをアシストするモータへのバッテリからの電力の供給、及び発電機によるバッテリの蓄電を行うことを可能とするハイブリッドシステムにおいて適用可能である。
本ハイブリッドシステムは、エンジン2の出力軸部の駆動を、エンジン2とモータとして機能するモータジェネレータ11との両方により可能としている。前記出力軸部から取り出された駆動力は、クラッチ部や動力伝達装置などを介して、自動車や作業機などにおける走行部や各種作業部などの負荷7に伝達される。
【0016】
モータジェネレータ11は、エンジン2のクランク軸にその駆動軸が連結された状態で付設されており、インバータコンバータ12を介して蓄電システム部20と電気的に接続されている。
また、モータジェネレータ11は、モータまたは発電機として機能するものであり、モータとして機能することによって負荷7を駆動するエンジン2のトルクアシストを行い、発電機として機能することによってその発電電力及び負荷7側の慣性力などによる回生発電を蓄電装置へと蓄電する。
前記インバータコンバータ12は、インバータまたはコンバータとして機能するものであり、入力される電力を直流または交流に変換するとともに、所定の電圧及び周波数に変換するものである。
前記蓄電システム部20は、昇降圧チョッパ22、キャパシタ蓄電装置21、及びバッテリ28を備えており、後述するように、蓄電システム部20が有する各作動態様に応じて作動する。
以上のエンジン2、インバータコンバータ12、及び昇降圧チョッパ22は、制御手段としてのシステムコントローラ1と通信接続されており、該システムコントローラ1によって本ハイブリッドシステムが制御される構成となっている。
【0017】
このような構成のハイブリッドシステムにおいて、前述したようにモータ及び発電機としての機能を有するモータジェネレータ11は、作業状況などに応じて各機能を発揮する。
モータジェネレータ11をモータとして作動させる場合には、キャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28から電力が供給される。キャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28から供給される電力は、昇降圧チョッパ22を介してインバータコンバータ12に入力される。この際、昇降圧チョッパ22は昇圧チョッパとして機能し、キャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28から供給される電力の電圧を所定の電圧に昇圧してインバータコンバータ12に出力する。このとき、インバータコンバータ12はインバータとして機能して、入力された電力を所定に変換し、この変換された電力をモータジェネレータ11に供給する。
このように、モータジェネレータ11がモータとして作動することにより、その駆動力が、エンジン2のクランク軸と連結しているモータジェネレータ11の駆動軸からエンジン2に伝達されトルクアシストが行われる。
【0018】
一方、モータジェネレータ11を発電機として作動させる場合には、エンジン2の駆動力によりモータジェネレータ11が作動して発電が行われる。モータジェネレータ11で発電される電力は、インバータコンバータ12に入力される。この際、インバータコンバータ12はコンバータとして機能する。そして、インバータコンバータ12によって所定の変換が行われた電力は、昇降圧チョッパ22を介してキャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28に入力され蓄電される。このとき、昇降圧チョッパ22は降圧チョッパとして機能し、インバータコンバータ12から出力される電力を所定の電圧に降圧してキャパシタ蓄電装置21に蓄電する。
【0019】
このようなモータジェネレータ11によるトルクアシスト及び発電は、システムコントローラ1からインバータコンバータ12へ送信される速度指令(モータ指令)及びエンジン2の燃料噴射量や機関回転数などを基準にして、エンジン2にかかる負荷に応じて行われる。つまり、エンジン2にかかる負荷が一定値より高くなった場合にモータジェネレータ11をモータとして作動させ、エンジン2のトルクアシストを行い、エンジン2にかかる負荷が一定値より低くなった場合にモータジェネレータ11を発電機として作動させ、該モータジェネレータ11による発電電力をキャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28へと蓄電するように制御されている。」

<記載事項3>
「【0021】
次に、蓄電システム部20について詳細に説明する。
蓄電システム部20は、発電機として作動するモータジェネレータ11からの発電電力の蓄電及びモータとして作動するモータジェネレータ11への電力の供給を行うキャパシタ蓄電装置21と、インバータコンバータ12への直流電圧供給及びキャパシタ蓄電装置21に対する充放電制御を行う昇降圧チョッパ22と、モータとして作動するモータジェネレータ11への電力の供給を行うバッテリ28とを備えている。
なお、前述したように、ハイブリッドシステムにおいて昇降圧チョッパ22を用いない構成とする場合、この蓄電システム部20においては、昇降圧チョッパ22によるキャパシタ蓄電装置21の制御機能と同様の機能を有する制御手段を別途設けるか、または、システムコントローラ1に、昇降圧チョッパ22によるキャパシタ蓄電装置21の制御機能を備える構成とする。
【0022】
また、蓄電システム部20は、キャパシタ蓄電装置21の充放電電流の検出及びキャパシタ蓄電装置21のキャパシタ電圧やバッテリ28のバッテリ電圧の検出を行う電流・電圧センサ25と、発電機として作動するモータジェネレータ11からキャパシタ蓄電装置への充電電流の定電流制御を行う定電流制御回路100と、均等制御回路200とを備え、第1切換スイッチ30aと第2切換スイッチ30bが設けられている。
第1切換スイッチ30a及び第2切換スイッチ30bは、機械式スイッチ、またはパワートランジスタ等の半導体素子から構成されるものであり、システムコントローラによってその入切が制御される。
第1切換スイッチ30aは、キャパシタ蓄電装置21への通電の入切を行うためのスイッチであり、第2切換スイッチ30bは、バッテリ28への通電の入切を行うためのスイッチである。
【0023】
キャパシタ蓄電装置21は、所定に接続される複数(本実施例では直列接続される2個)の電気二重層キャパシタ(以下、「キャパシタモジュール」という。)21a・21bを有している。すなわち、前記均等制御回路200は、キャパシタモジュール21a・21b毎の電圧を均等化するためのものである。そのため、キャパシタ蓄電装置21が複数のキャパシタモジュールを有する場合に用いられるものであり、キャパシタ蓄電装置21が単数のキャパシタモジュールによって構成される場合は、蓄電システム部20を均等制
御回路200を用いない構成とすることもできる。
【0024】
昇降圧チョッパ22は前述したように、モータジェネレータ11がモータとして作動する場合には、キャパシタ蓄電装置21からモータジェネレータ11へ供給される電力を昇圧し、モータジェネレータ11が発電機として作動する場合には、モータジェネレータ11による発電電力を降圧してキャパシタ蓄電装置21へと蓄電するものであり、この昇降圧チョッパ22には、システムコントローラ1から充電リミッタ、電圧リミッタ、充電開始指令、及び充電停止指令などの信号が入力される。
電流・電圧センサ25は、昇降圧チョッパ22とキャパシタ蓄電装置21との間の電流の検出、及びキャパシタ蓄電装置21のキャパシタ電圧やバッテリ28のバッテリ電圧の検出をするものであり、この電流・電圧センサ25によって検出された電流値・電圧値は、昇降圧チョッパ22に入力される。」

<記載事項4>
「【0038】
このような構成の蓄電システム部20においては、以下に示すような作動態様を有している。以下、各作動態様について説明する。
【0039】
まず、第1の作動態様について説明する。
本作動態様においては、トルクアシストを行うモータジェネレータ11への電力の供給は、主としてキャパシタ蓄電装置21によって行われる。そして、このキャパシタ蓄電装置21の蓄電量が、予め設定される規定値を下回った場合は、キャパシタ蓄電装置21からモータジェネレータ11への電力の供給を停止し、バッテリ28によってモータジェネレータ11への電力の供給を行う。
【0040】
つまり、本作動態様においては、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが、予め設定される規定値QNを上回っている場合は、前記第1切換スイッチ30aを入状態とするとともに前記第2切換スイッチ30bを切状態とし、キャパシタ蓄電装置21によって、発電機として作動するモータジェネレータ11からの発電電力の蓄電及びモータとして作動するモータジェネレータ11への電力の供給を行う。そして、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが、予め設定される規定値QNを下回った場合は、第1切換スイッチ30aを切状態とするとともに第2切換スイッチ30bを入状態とし、バッテリ28からモータとして作動するモータジェネレータ11への電力の供給を行うことを特徴としている。
【0041】
前記キャパシタ蓄電装置21の蓄電量(残存容量)Qは、該キャパシタ蓄電装置21の電荷を蓄える能力を示す静電容量をC、キャパシタ蓄電装置21のキャパシタ電圧をV_(C)とすると、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qは次式(1)により表される。
Q=CV_(C)^(2)/2 ・・・(1)
(当審注:式(1)における「Q=CV_(C)2/2」は、「Q=CV_(C)^(2)/2」の誤記であることは明らかであるから、その旨訂正した。)
つまり、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qはキャパシタ蓄電装置のキャパシタ電圧V_(C)から把握することができ、キャパシタ電圧V_(C)がキャパシタ蓄電装置21の耐電圧である場合に、キャパシタ蓄電装置21の満充電状態を示すこととなる。この式(1)に基づき、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qは、前記電流・電圧センサ25によって検出されるキャパシタ電圧V_(C)と、キャパシタ蓄電装置21の静電容量Cとから算出される。前記規定値QNは、例えば、キャパシタ電圧V_(C)がキャパシタ蓄電装置21の耐電圧の1/2の時の蓄電量に設定される。
【0042】
このようにして算出されるキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qは、システムコントローラ1にて、予め設定されている規定値QNを上回っているか下回っているかが判断される。つまり、システムコントローラ1には予め規定値QNが設定されており、このシステムコントローラ1において、前述のようにして算出されるキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qと規定値QNとが比較され、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが規定値QNを上回っているか下回っているかが常に判断されている。
【0043】
こうした判断の下、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが規定値QNを上回っている状態では、トルクアシスト時におけるモータジェネレータ11への電力の供給は、キャパシ
タ蓄電装置21によって行われる。すなわち、この場合、キャパシタ蓄電装置21への通電の入切を行う第1切換スイッチ30aは入状態となり、バッテリ28への通電の入切を行う第2切換スイッチ30bは切状態となっており、エンジン2が高負荷状態となってトルクアシストを行うモータジェネレータ11への電力の供給は、キャパシタ蓄電装置21により行われる。また、この場合、エンジン2が低負荷状態となった際の、発電機として作動するモータジェネレータ11からの発電電力の蓄電もキャパシタ蓄電装置21によって行われる。
【0044】
そして、エンジン2の高負荷状態が長時間続いたり連続したりして、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが低下し、この蓄電量Qが規定値QNを下回った場合、キャパシタ蓄電装置21によるモータジェネレータ11への電力の供給は停止し、代わりにバッテリ28によって行われる。すなわち、この場合、前記第1切換スイッチ30aは切状態となり、前記第2切換スイッチ30bは入状態となって、モータとして作動するモータジェネレータ11への電力の供給がバッテリ28により行われることとなる。そして、このようにキャパシタ蓄電装置21の蓄電量が低下した場合は、バッテリ28によってモータジェネレータ11への電力が供給されるため、バッテリ28は、エンジン2に急激に高い負荷がかかった場合などモータジェネレータ11に対して瞬時に大電流を供給することができるバッテリ容量を有するものとする。
また、ここで第1切換スイッチ30aを切状態とするのは、バッテリ28からモータジェネレータ11への電力の供給を行うために第2切換スイッチ30bを入り状態とすることにより、バッテリ28からキャパシタ蓄電装置21へ瞬時に過大な電流が流れ込むのを防止するためである。
【0045】
このように、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが低下することにより、バッテリ28によるモータジェネレータ11への電力の供給が行われる状態となった場合、その後のキャパシタ蓄電装置21の再充電は、エンジン2の負荷が定常状態となった際に行われる。つまり、エンジン2にかかる負荷が下がり、モータジェネレータ11によるトルクアシストが必要なくなった状態で、エンジン2の余剰出力によって発電機として作動するモータジェネレータ11の発電電力がキャパシタ蓄電装置21に蓄電される。この際、モータジェネレータ11による発電電力がキャパシタ蓄電装置21のみに蓄電されるようにするため、第1切換スイッチ30aは入状態とし、第2切換スイッチ30bは切状態とする。このようにして、本作動態様において主たる蓄電装置としてのキャパシタ蓄電装置21によって、発電機として作動するモータジェネレータ11からの発電電力の蓄電及びモータとして作動するモータジェネレータ11への電力の供給を行う状態に戻る。
【0046】
なお、前述のようにしてバッテリ28によってモータジェネレータ11への電力の供給を行うことで、バッテリ28の蓄電量が低下した場合のバッテリ28の充電は、モータジェネレータ11からの発電電力によってキャパシタ蓄電装置21の充電が終了した後、このモータジェネレータ11からの発電電力をバッテリ28に蓄電することによって行う。つまり、前述したようにキャパシタ蓄電装置21の再充電が行われ、キャパシタ蓄電装置21がモータジェネレータ11からの発電電力によって満充電状態となった後に、第1切換スイッチ30aを切状態とし、第2切換スイッチ30bを入状態にすることによって、モータジェネレータ11からの発電電力がバッテリ28に蓄電されるようにして行う。また、このバッテリ28の充電は、別途充電器などを用いて外部充電を行うこともできる。
【0047】
この蓄電システム部20の第1の作動態様においては、通常は、バッテリと比較して出力密度の高いキャパシタ蓄電装置21によって、発電機として作動するモータジェネレータ11からの発電電力の蓄電及びモータとして作動するモータジェネレータ11への電力の供給を行うことで、モータジェネレータ11によるトルクアシスト性能及び電力回生性能を向上させることができ、エンジン2の急激な負荷変動に対応することが可能となる。
そして、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量が低下した場合には、モータとして作動するモータジェネレータ11への電力の供給は、モータジェネレータ11への瞬時の大電流の供給が可能なバッテリ容量を有するバッテリ28によって行われるので、モータジェネレータ11によるトルクアシストが長時間に及んだ場合など、バッテリと比較してエネルギー密度の低いキャパシタ蓄電装置21の電力不足を補うことができる。
【0048】
また、前述したように第1切換スイッチ30a及び第2切換スイッチ30bを制御することにより、バッテリ28からモータジェネレータ11への電力の供給を行う際に、バッテリ28からキャパシタ蓄電装置21に瞬時に過大な電流が流れ込むのを防ぐことができるので、内部抵抗が低いキャパシタ蓄電装置21の破壊・故障を防止して保護することができる。そして、キャパシタ蓄電装置21の再充電を行う際には、モータジェネレータ11からの発電電力がバッテリ28へ供給されることがないので、キャパシタ蓄電装置21の充電を効率良く行うことが可能となる。」

2 引用刊行物に記載された技術事項
上記記載事項1ないし4及び図面の記載から、以下の技術事項が読み取れる。

(1)上記記載事項1の「【0001】 本発明は、エンジンから少なくとも機械的駆動力と電力を取り出すハイブリッドシステムに関し」、「【0002】 近年、自動車や、建設機械などの作業機などにおいては、・・・いわゆるハイブリッドシステムが採用されており、」との記載、上記記載事項2の「【0015】・・・本ハイブリッドシステムは、エンジン2の出力軸部の駆動を、エンジン2とモータとして機能するモータジェネレータ11との両方により可能としている。前記出力軸部から取り出された駆動力は、クラッチ部や動力伝達装置などを介して、自動車や作業機などにおける走行部や各種作業部などの負荷7に伝達される。」との記載からみて、引用刊行物には、ハイブリッドシステムに係る発明とともに、ハイブリッドシステムを採用した作業機に係る発明が記載されている。

(2)上記記載事項2の「【0016】 モータジェネレータ11は、エンジン2のクランク軸にその駆動軸が連結された状態で付設されており、インバータコンバータ12を介して蓄電システム部20と電気的に接続されている。また、モータジェネレータ11は、モータまたは発電機として機能するものであり、モータとして機能することによって負荷7を駆動するエンジン2のトルクアシストを行い、発電機として機能することによってその発電電力及び負荷7側の慣性力などによる回生発電を蓄電装置へと蓄電する。」との記載、上記記載事項2の「【0017】 このような構成のハイブリッドシステムにおいて、前述したようにモータ及び発電機としての機能を有するモータジェネレータ11は、作業状況などに応じて各機能を発揮する。モータジェネレータ11をモータとして作動させる場合には、キャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28から電力が供給される。」との記載及び図1の記載からみて、「キャパシタ蓄電装置21と、前記キャパシタ蓄電装置21から電力が供給されるモータジェネレータ11とを備えるハイブリッドシステム」との技術事項が読み取れる。

(3)上記記載事項4の「【0041】 前記キャパシタ蓄電装置21の蓄電量(残存容量)Qは、該キャパシタ蓄電装置21の電荷を蓄える能力を示す静電容量をC、キャパシタ蓄電装置21のキャパシタ電圧をV_(C)とすると、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qは次式(1)により表される。
Q=CV_(C)^(2)/2 ・・・(1)
・・・この式(1)に基づき、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qは、前記電流・電圧センサ25によって検出されるキャパシタ電圧V_(C)と、キャパシタ蓄電装置21の静電容量Cとから算出される。」との記載からみて、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qは、キャパシタ蓄電装置21の静電容量Cとキャパシタ電圧V_(C)とから算出されるものであり、当該算出を行う蓄電量算出手段をハイブリッドシステムが備えることは明らかである。
したがって、「キャパシタ蓄電装置21の静電容量Cとキャパシタ電圧V_(C)とからキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qを算出する蓄電量算出手段を備えるハイブリッドシステム」との技術事項が読み取れる。

(4)上記記載事項2の「【0016】・・・ 以上のエンジン2、インバータコンバータ12、及び昇降圧チョッパ22は、制御手段としてのシステムコントローラ1と通信接続されており、該システムコントローラ1によって本ハイブリッドシステムが制御される構成となっている。」との記載、
上記記載事項2の「【0017】・・・ モータジェネレータ11をモータとして作動させる場合には、キャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28から電力が供給される。キャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28から供給される電力は、昇降圧チョッパ22を介してインバータコンバータ12に入力される。この際、昇降圧チョッパ22は昇圧チョッパとして機能し、キャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28から供給される電力の電圧を所定の電圧に昇圧してインバータコンバータ12に出力する。このとき、インバータコンバータ12はインバータとして機能して、入力された電力を所定に変換し、この変換された電力をモータジェネレータ11に供給する。」との記載、
上記記載事項2の「【0018】・・・ 一方、モータジェネレータ11を発電機として作動させる場合には、エンジン2の駆動力によりモータジェネレータ11が作動して発電が行われる。モータジェネレータ11で発電される電力は、インバータコンバータ12に入力される。この際、インバータコンバータ12はコンバータとして機能する。そして、インバータコンバータ12によって所定の変換が行われた電力は、昇降圧チョッパ22を介してキャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28に入力され蓄電される。」との記載、
上記記載事項3の「【0024】・・・ 昇降圧チョッパ22は前述したように、モータジェネレータ11がモータとして作動する場合には、キャパシタ蓄電装置21からモータジェネレータ11へ供給される電力を昇圧し、モータジェネレータ11が発電機として作動する場合には、モータジェネレータ11による発電電力を降圧してキャパシタ蓄電装置21へと蓄電するものであり、この昇降圧チョッパ22には、システムコントローラ1から充電リミッタ、電圧リミッタ、充電開始指令、及び充電停止指令などの信号が入力される。」との記載からみて、
「キャパシタ蓄電装置21の蓄電、放電の制御に関連する指令に係る信号を出力するシステムコントローラを備えるハイブリッドシステム」との技術事項が読み取れる。

(5)上記「(4)」の技術事項については、以下の記載からも読み取ることができ、また、以下の記載から、システムコントローラによるキャパシタ蓄電装置21の蓄電、放電の制御が、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qに基づいて行われるとの技術事項が読み取れる。

上記記載事項3の「【0022】・・・ 第1切換スイッチ30a及び第2切換スイッチ30bは、機械式スイッチ、またはパワートランジスタ等の半導体素子から構成されるものであり、システムコントローラによってその入切が制御される。
第1切換スイッチ30aは、キャパシタ蓄電装置21への通電の入切を行うためのスイッチであり、第2切換スイッチ30bは、バッテリ28への通電の入切を行うためのスイッチである。」、
上記記載事項4の「【0042】 このようにして算出されるキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qは、システムコントローラ1にて、予め設定されている規定値QNを上回っているか下回っているかが判断される。つまり、システムコントローラ1には予め規定値QNが設定されており、このシステムコントローラ1において、前述のようにして算出されるキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qと規定値QNとが比較され、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが規定値QNを上回っているか下回っているかが常に判断されている。
【0043】 こうした判断の下、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが規定値QNを上回っている状態では、トルクアシスト時におけるモータジェネレータ11への電力の供給は、キャパシタ蓄電装置21によって行われる。すなわち、この場合、キャパシタ蓄電装置21への通電の入切を行う第1切換スイッチ30aは入状態となり、バッテリ28への通電の入切を行う第2切換スイッチ30bは切状態となっており、エンジン2が高負荷状態となってトルクアシストを行うモータジェネレータ11への電力の供給は、キャパシタ蓄電装置21により行われる。また、この場合、エンジン2が低負荷状態となった際の、発電機として作動するモータジェネレータ11からの発電電力の蓄電もキャパシタ蓄電装置21によって行われる。」、
上記記載事項4の「【0044】 そして、エンジン2の高負荷状態が長時間続いたり連続したりして、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが低下し、この蓄電量Qが規定値QNを下回った場合、キャパシタ蓄電装置21によるモータジェネレータ11への電力の供給は停止し、代わりにバッテリ28によって行われる。
・・・
【0045】 このように、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qが低下することにより、バッテリ28によるモータジェネレータ11への電力の供給が行われる状態となった場合、その後のキャパシタ蓄電装置21の再充電は、エンジン2の負荷が定常状態となった際に行われる。つまり、エンジン2にかかる負荷が下がり、モータジェネレータ11によるトルクアシストが必要なくなった状態で、エンジン2の余剰出力によって発電機として作動するモータジェネレータ11の発電電力がキャパシタ蓄電装置21に蓄電される。この際、モータジェネレータ11による発電電力がキャパシタ蓄電装置21のみに蓄電されるようにするため、第1切換スイッチ30aは入状態とし、第2切換スイッチ30bは切状態とする。」との記載。

(6)上記「(5)」において挙げた各記載及び以下の記載から、システムコントローラによるキャパシタ蓄電装置21の蓄電、放電の制御が、エンジン2にかかる負荷に応じて行われることが読み取れる。

上記記載事項2の「【0019】
このようなモータジェネレータ11によるトルクアシスト及び発電は、システムコントローラ1からインバータコンバータ12へ送信される速度指令(モータ指令)及びエンジン2の燃料噴射量や機関回転数などを基準にして、エンジン2にかかる負荷に応じて行われる。つまり、エンジン2にかかる負荷が一定値より高くなった場合にモータジェネレータ11をモータとして作動させ、エンジン2のトルクアシストを行い、エンジン2にかかる負荷が一定値より低くなった場合にモータジェネレータ11を発電機として作動させ、該モータジェネレータ11による発電電力をキャパシタ蓄電装置21またはバッテリ28へと蓄電するように制御されている。」との記載。

(7)上記「(4)」、「(5)」、「(6)」の各技術事項を総合することにより、上記「(4)」、「(5)」、「(6)」において指摘した各記載から、「キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qに基づいて、エンジン2にかかる負荷に応じて、キャパシタ蓄電装置21の蓄電、放電の制御に関連する指令に係る信号を出力するシステムコントローラを備えるハイブリッドシステム」との技術事項が読み取れるといえる。

以上のことを踏まえると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「キャパシタ蓄電装置21と、
前記キャパシタ蓄電装置21から電力が供給されるモータジェネレータ11と、
キャパシタ蓄電装置21の静電容量Cとキャパシタ電圧V_(C)とからキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qを算出する蓄電量算出手段と、
キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qに基づいて、エンジン2にかかる負荷に応じて、キャパシタ蓄電装置21の蓄電、放電の制御に関連する指令に係る信号を出力するシステムコントローラと、
を備えたハイブリッドシステムを採用した作業機。」

第5 当審の判断
当審は、当審が平成25年3月7日付けで通知した拒絶理由において指摘したように、本願発明は、引用刊行物に記載された発明(引用発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると考える。
その理由は、以下のとおりである。

1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「キャパシタ蓄電装置21」は、本願発明の「キャパシタ」に相当する。

(2)引用発明の「前記キャパシタ蓄電装置21から電力が供給されるモータジェネレータ11」は、本願発明の「該キャパシタの電力を利用して作動する電動モータ」に相当する。

(3)引用発明の「キャパシタ蓄電装置21の静電容量Cとキャパシタ電圧V_(C)とからキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qを算出する蓄電量算出手段」と、
本願発明の「該内部抵抗値算出手段により算出された内部抵抗値に対応する前記キャパシタの充電量を算出する充電量算出手段」とは、ともに、
「前記キャパシタの充電量を算出する充電量算出手段」の点で共通する。

(4)引用発明の「キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qに基づいて、エンジン2にかかる負荷に応じて、キャパシタ蓄電装置21の蓄電、放電の制御に関連する指令に係る信号を出力するシステムコントローラ」における「エンジン2にかかる負荷に応じて」について検討すると、当該負荷が、エンジン2の始動後、当該エンジン2を搭載した作業機を運転中にエンジン2にかかる負荷を意味していることは明らかである。
したがって、引用発明の上記「キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qに基づいて、エンジン2にかかる負荷に応じて、キャパシタ蓄電装置21の蓄電、放電の制御に関連する指令に係る信号を出力するシステムコントローラ」は、本願発明の「該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信するバッテリ状態管理部」に相当する。

(5)引用発明の「ハイブリッドシステムを採用した作業機」は、本願発明の「作業機械」に相当する。

(6)以上のことから、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「キャパシタと、
該キャパシタの電力を利用して作動する電動モータと、
前記キャパシタの充電量を算出する充電量算出手段と、
該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信するバッテリ状態管理部と、
を備えた作業機械。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
キャパシタの充電量の算出に関し、本願発明が、キャパシタの内部抵抗値を算出するための内部抵抗値算出手段を備え、該内部抵抗値算出手段により算出された内部抵抗値に対応する前記キャパシタの充電量を算出するのに対し、引用発明は、上記内部抵抗値算出手段を備えておらず、キャパシタ蓄電装置21の静電容量Cとキャパシタ電圧V_(C)とからキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qを算出する点。

2 相違点についての検討
上記相違点について検討する。
キャパシタの電圧は、内部抵抗による電圧降下分だけ端子電圧と異なるため、この電圧降下分を差し引いてキャパシタの電圧を求めなければならないということは、例えば、特開2002-325377号公報(当審が平成25年3月7日付けで通知した拒絶理由において指摘した刊行物2)の段落【0034】に「キャパシタ5の電圧は、充電時には、内部抵抗rの分による電圧上昇(r・I)があるので、その分を差し引いて電圧を判定する必要がある。」と記載されているように、技術常識である。
したがって、引用発明において、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qをキャパシタ蓄電装置21の静電容量Cとキャパシタ電圧V_(C)とから算出するに当たり、上記技術常識によれば、当該キャパシタ電圧V_(C)は、内部抵抗による電圧降下分だけ端子電圧と異なるため、端子電圧からこの電圧降下分を差し引いて当該キャパシタ電圧V_(C)を求めなければならないから、まず内部抵抗値を求め、当該内部抵抗値を用いて、キャパシタの端子電圧から上記内部抵抗による電圧降下分を差し引いてキャパシタ電圧Vcを算出し、静電容量Cと当該算出したキャパシタ電圧Vcとからキャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qを算出するようにすることは、上記技術常識をわきまえた当業者であれば容易に想到し得ることである。
よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明のごとく構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は、引用発明に記載された発明から予測し得る範囲内のものであって格別のものではない。

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求人の主張について
請求人は、平成25年5月10日付けの意見書において、概ね以下の(1)ないし(3)の主張をしている。
(1)刊行物1(引用刊行物)と刊行物2との組み合わせについては阻害要因が存在するから、刊行物1(引用刊行物)と刊行物2との組み合わせから本願発明が容易想到であるとすることはできない。

(2)刊行物1(引用刊行物)には、本願発明の「該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信するバッテリ状態管理部」に関する記載がなく、刊行物2にも「該充電量に基づいて、前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信する」ことは記載されていないから、刊行物1(引用刊行物)と刊行物2との組み合わせから本願発明が容易想到であるとすることはできない。

(3)本願発明は、「該内部抵抗値算出手段により算出された内部抵抗値に対応する蓄電地の充電量を算出する」こと、及び、「該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信する」ことにより、劣化状態(内部抵抗)に対応した充電量を把握しつつ充放電制御を行うことができ、キャパシタの更なる劣化を抑制することができるとともに、作業機械の適正な継続運転を実現すると言う効果を奏することができる発明であるのに対し、刊行物1、刊行物2のいずれにも、「該内部抵抗値算出手段により算出された内部抵抗値に対応する蓄電地の充電量を算出する」こと、及び、「該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信する」ことは、一切、記載がないので、仮に、刊行物1と刊行物2とを組み合わせても、本願発明の上記効果を奏することはできない。

請求人の上記主張(1)ないし(3)について検討する。
ア 主張(1)について
当審が平成25年3月7日付けで通知した拒絶理由は、その拒絶理由通知書に、
「上記相違点1について検討する。
キャパシタの電圧は内部抵抗による電圧降下分だけ端子電圧と異なるため、この電圧降下分を差し引いてキャパシタの電圧を求めなければならないということは、例えば、刊行物2の段落【0034】に指摘されているように、技術常識である。
したがって、刊行物1に記載された発明において、キャパシタ蓄電装置21の蓄電量Qを算出するに当たり、まず内部抵抗値を求め、該内部抵抗値を用いてキャパシタ電圧Vcを算出し、静電容量C及び当該キャパシタ電圧Vcから蓄電量Qを算出するようにすること、すなわち、上記相違点1に係る請求項1に係る発明のごとく構成することは当業者が容易に想到し得ることである。」
と記載されているように、請求項1に係る発明が容易想到であるということを指摘するに当たり、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明との組み合わせに基づいて容易想到であると指摘しているのはなく、キャパシタの電圧は内部抵抗による電圧降下分だけ端子電圧と異なるため、この電圧降下分を差し引いてキャパシタの電圧を求めなければならないということが、例えば、刊行物2に指摘されているように技術常識であることを踏まえ、当該技術常識をわきまえた当業者であれば、刊行物1に記載された発明において、上記相違点1に係る請求項1に係る発明のごとく構成することは当業者が容易に想到し得ることであると指摘しているのである。
したがって、刊行物1(引用刊行物)と刊行物2との組み合わせについては阻害要因が存在するから、刊行物1(引用刊行物)と刊行物2との組み合わせから本願発明が容易想到であるとすることはできないとの請求人の主張(1)は、当審が通知した上記拒絶理由を正しく理解した上での主張ではなく、その前提において誤っているから、採用することはできない。

イ 主張(2)について
刊行物1(引用刊行物)に、本願発明の「該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信するバッテリ状態管理部」に相当する記載があることは、上記「第4」の「2」の「(4)」ないし「(7)」、上記「第5」の「1」の「(4)」において述べたとおりである。
また、主張(2)は、主張(1)と同様に、刊行物1(引用刊行物)と刊行物2との組み合わせに関しての主張であるから、当審が通知した上記拒絶理由を正しく理解した上での主張ではない。
したがって、請求人の主張(2)を採用することはできない。

ウ 主張(3)について
引用発明において、「内部抵抗値算出手段により算出された内部抵抗値に対応する蓄電池の充電量を算出する」ことが容易想到であることは、上記「2 相違点についての検討」において述べたとおりである。
そして、引用発明が、「該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信する」点で、本願発明と一致することは、上記「1 本願発明と引用発明との対比」において述べたとおりである。
また、本願発明(請求項1に係る発明)は、上記「第3」に示したとおりのものであり、充電量を把握しつつ充放電制御を行う点に関しては、「該内部抵抗値算出手段により算出された内部抵抗値に対応する前記キャパシタの充電量を算出する充電量算出手段と、該充電量に基づいて、始動後の運転中に前記キャパシタの充放電の制御に関連する指令信号を発信するバッテリ状態管理部」と特定するにとどまるものである。
すなわち、本願発明(請求項1に係る発明)においては、劣化状態に関して何も特定されておらず、内部抵抗と劣化状態との関連についても何ら特定がなく、況んや、劣化状態に対応した充電量を把握しつつ充放電制御を行うとの特定は存在しない。
したがって、請求人の効果に関する上記主張は、特許請求の範囲の請求項1の記載に基づくものではない。
よって、請求人の主張(3)を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-05 
結審通知日 2013-07-16 
審決日 2013-08-01 
出願番号 特願2005-353383(P2005-353383)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 知晋  
特許庁審判長 下中 義之
特許庁審判官 中塚 直樹
飯野 茂
発明の名称 作業機械  
代理人 小島 誠  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ