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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1280242
審判番号 不服2012-7425  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-23 
確定日 2013-10-10 
事件の表示 特願2006-257419「電池寿命予測方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月 3日出願公開、特開2008- 76295〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年9月22日を出願日とする特許出願であって、平成23年12月22日付けで特許請求の範囲についての手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成24年1月17日付け(送達日:同年1月24日)で拒絶査定がなされたところ、これに対し、平成24年4月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、当該請求と同時に、明細書(発明の名称)及び特許請求の範囲についての手続補正(以下「補正2」という。)がなされたものである。
その後、当審より平成24年10月10日付けで審尋を行ったところ、請求人より平成24年12月7日付けで回答書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、補正1、補正2により補正された明細書(発明の名称)及び特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
電池の寿命を遠隔地で予測する電池寿命予測方法であって、
所定の管理センタに設けられたサーバから、遠隔地に設けられた電池の内部抵抗の検出を指示するステップと、
遠隔地において、指示に応じて、電池の内部抵抗を検出するステップと、
検出した内部抵抗をサーバに送信するステップと、
送信された電池の内部抵抗に基づいて、サーバで電池の寿命を予測するステップとを含む、
電池寿命予測方法。」

第3 引用発明
1 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平2003-123847号公報(以下「引用刊行物」という。)には、「蓄電池の保守管理方法」(発明の名称)の発明に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

<記載事項1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 電源装置に用いられ、単位蓄電池を複数直列接続して構成された蓄電池の保守管理方法において、前記蓄電池の各単位蓄電池の使用状態を常時監視して外部に測定データを発信する監視装置と、前記監視装置から発信された前記測定データを有線又は無線の通信網等の通信回線を経由して受信して蓄積するサーバと、前記サーバからの必要な測定データの収集を行い前記測定データの解析診断を行う診断装置を内部に有する管理センタとを備えた保守管理システムを用いて、保守管理が必要な単位蓄電池を特定するとともに、前記測定データの解析診断結果を前記管理センタから前記電源装置の使用者に自動的に報告することを特徴とする蓄電池の保守管理方法。
【請求項2】 前記測定データの解析診断結果を、前記管理センタから前記蓄電池の供給者に自動的に報告することを特徴とする、請求項1記載の蓄電池の保守管理方法。
【請求項3】 前記測定データの解析診断結果を用いて、前記電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告することを特徴とする、請求項1記載の蓄電池の保守管理方法。」

<記載事項2>
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、通信設備、情報システム、制御システム、社会インフラ設備等に用いられる電源装置の停電対策として非常時に電力を供給する蓄電池の使用中の品質を遠隔地から診断して蓄電池の品質を良好な状態に維持し電源装置を高い品質に維持する方法に関するものである。」

<記載事項3>
「【0026】そこで、本発明では、蓄電池の使用状態を単位蓄電池ごとにオンラインで正確に把握し、データの解析を行って蓄電池の使用環境や単位蓄電池ごとの寿命を判断する蓄電池の最適な保守管理方法を、安価な費用で実現する手法を提案することにある。」

<記載事項4>
「【0037】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1は本発明の蓄電池の保守管理方法に用いられる蓄電池管理システムの全体構成の一例を示す概略説明図である。図1において、蓄電池設置場所1内には、負荷設備2、電源装置3、蓄電池4、監視装置5、無線通信部6、有線通信部7、表示部8がある。
【0038】負荷設備2は、電源装置3に接続されている。電源装置3は、通常は蓄電池4に充電しながら負荷設備2に電力を送り、停電等の場合には蓄電池4に充電されていた電力を負荷設備2に送るものである。蓄電池4は、電源装置3で利用するために蓄電池4の最小単位である単位蓄電池を複数個直列にして用いられる。
【0039】監視装置5は、蓄電池4の各単位蓄電池の内部抵抗をオンラインで測定する機能と、蓄電池4の設置された箇所の使用環境温度を測定する機能と、測定データを無線通信部6または有線通信部7に発信する機能とを有する。
・・・・・
【0041】また、図1において、11はサービスプロバイダ、12はサーバ、13は管理センタ、14は診断装置である。ここで、サーバ12はサービスプロバイダ11内に設置されているが、管理センタ13内に設置されていてもよい。ここで、サーバ12および診断装置14は、通信網9に接続されている。
・・・・・
【0042】診断装置14は、サーバ12から転送された測定データを受信し、解析診断して蓄電池4のメンテナンスの要否等を判定する。」

<記載事項5>
「【0043】次に、監視装置5のブロック図の一例を図2に示す。図2において、監視装置5は、データ測定部21とデータ処理部22とからなる。
【0044】また、データ測定部21は、アナログ信号、デジタル信号相互間の変換を行うコンバータ211と、蓄電池4の各単位蓄電池の内部抵抗を測定する内部抵抗検出手段212と、蓄電池4の使用環境温度を測定する温度検出手段213とからなる。ここで、内部抵抗検出手段212は停電検知機能を有していてもよく、温度検出手段213は使用環境温度の代わりに、蓄電池温度を検出するようにしてもよい。
【0045】コンバータ211は、内部抵抗検出手段212に定電流を供給可能とするためのデジタル信号をアナログ信号に変換し、内部抵抗検出手段212および温度検出手段213により測定されたデータをアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0046】内部抵抗検出手段212には、蓄電池4の各単位蓄電池の内部抵抗が測定可能となるように内部抵抗センサ214が接続され、温度検出手段213には、蓄電池4の使用環境温度が測定可能となるように温度センサ215が接続されている。また、蓄電池の内部抵抗測定方法としては、蓄電池に一定の交流電流を印加し、その際に各蓄電池端子間に生じる交流電圧を測定し、該電流と電圧から個々の蓄電池の内部抵抗を演算して求めることが出来る。
【0047】また、データ処理部22は、演算部221、記憶部222、インターフェイス部223、表示制御部224からなる。
【0048】演算部221は、記憶部222に記憶されたプログラムに基づきコンバータ211に、蓄電池4の各単位蓄電池の内部抵抗および蓄電池4の使用環境温度の測定を開始させるための信号を発信する。また、コンバータ211からの測定データを受信し、記憶部222に記憶するとともにインターフェイス部223に発信する。
【0049】記憶部222は、演算部221を動作させるためのプログラムを格納する機能と、演算部221がコンバータ211から受け取ったデータを格納する機能とを有する。
【0050】インターフェイス部223は、監視装置5の外部との接続を行うためのもので、例えばイーサネット(登録商標)コントローラ、RS-232C、SCSI等のインターフェイスが用いられる。イーサネットコントローラを用いた場合は有線通信部7を経由して通信網9に接続することが可能であり、その他のインターフェイスを用いた場合は、無線通信部6および無線基地局10を経由して通信網9に接続することが可能である。また、インターフェイス部223には、監視装置5を複数用いる場合のインターフェイスも含まれる。」

<記載事項6>
「【0053】ここで、図3を用いて蓄電池管理の流れを説明する。以下の説明において、符号は図1または図2中の符号を意味する。
【0054】まず、監視装置5から通信網9を介してサーバ12に測定データが送信される。サーバ12は測定データを診断装置14に転送する。
【0055】次に、診断装置14は測定データを解析診断し、メンテナンスの要否を判定する。メンテナンス不要(N)であると判定した場合は、診断処理を終了し、次の測定データが転送されるまで待機する。
【0056】診断装置14がメンテナンス要(Y)であると判定した場合は、さらに蓄電池4の交換の要否を判断する。
・・・・・
【0057】診断装置14が蓄電池4の交換が必要(Y)であると判断した場合は、診断装置14からサーバ12に向けて蓄電池の交換に関する情報を自動的に送出して顧客側に蓄電池4の交換の必要があることを報告するとともに、管理センタ13の作業者が、顧客側の建物1内の蓄電池4のうち交換対象となる旧単位蓄電池40と新単位蓄電池41との交換を行い、旧単位蓄電池40を回収する。
・・・・・
【0059】ここで、蓄電池4の交換が必要な場合には、診断装置14から図示しない蓄電池の供給者に測定データの解析診断結果を自動的に報告可能とすることが望ましい。このようにすると、単位蓄電池の交換を迅速に行うことが可能となる。
【0060】上述のように、本実施形態は、蓄電池4の交換を単位蓄電池ごとに行うことが可能となるため、蓄電池4の各単位蓄電池の耐用年数を考慮することなく、蓄電池4の寿命の実質的な管理を正確に行うことが可能となる。また、さらに蓄電池4の交換に伴うコストを低減させることが可能となり、顧客満足度を高めることが可能となる。
【0061】なお、本発明の実施形態は上述したものに限られず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。」

2 引用刊行物に記載された技術事項・引用発明
上記記載事項1ないし6及び図面の記載から、以下の技術事項が読み取れる。

(1)上記記載事項2及び上記記載事項3の記載から、引用刊行物には、「各種設備に用いられる電源装置の停電対策として非常時に電力を供給する蓄電池の使用中の品質を遠隔地から診断して蓄電池の品質を良好な状態に維持し電源装置を高い品質に維持する方法に関し、蓄電池の使用状態を単位蓄電池ごとにオンラインで正確に把握し、データの解析を行って蓄電池の使用環境や単位蓄電池ごとの寿命を判断する蓄電池の最適な保守管理方法」に係る発明が記載されている。

(2)上記記載事項4の「【0037】・・・図1において、蓄電池設置場所1内には、負荷設備2、電源装置3、蓄電池4、監視装置5、無線通信部6、有線通信部7、表示部8がある。・・・【0039】監視装置5は、蓄電池4の各単位蓄電池の内部抵抗をオンラインで測定する機能と、・・・する機能とを有する。」との記載、上記記載事項4の「【0043】・・・図2において、監視装置5は、データ測定部21とデータ処理部22とからなる。【0044】また、データ測定部21は、・・・蓄電池4の各単位蓄電池の内部抵抗を測定する内部抵抗検出手段212と、・・・とからなる。・・・【0046】・・・蓄電池の内部抵抗測定方法としては、蓄電池に一定の交流電流を印加し、その際に各蓄電池端子間に生じる交流電圧を測定し、該電流と電圧から個々の蓄電池の内部抵抗を演算して求めることが出来る。【0047】また、データ処理部22は、演算部221、記憶部222、インターフェイス部223、表示制御部224からなる。【0048】演算部221は、記憶部222に記憶されたプログラムに基づきコンバータ211に、蓄電池4の各単位蓄電池の内部抵抗および蓄電池4の使用環境温度の測定を開始させるための信号を発信する。また、コンバータ211からの測定データを受信し、記憶部222に記憶するとともにインターフェイス部223に発信する。」との記載から、上記「(1)」の「保守管理方法」に係る発明は、「蓄電池設置場所内にある監視装置において、蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗を測定するステップ」を備えている。

(3)上記記載事項5の「【0043】次に、監視装置5のブロック図の一例を図2に示す。図2において、監視装置5は、データ測定部21とデータ処理部22とからなる。
・・・【0047】また、データ処理部22は、演算部221、記憶部222、インターフェイス部223、表示制御部224からなる。【0048】演算部221は、記憶部222に記憶されたプログラムに基づきコンバータ211に、蓄電池4の各単位蓄電池の内部抵抗および蓄電池4の使用環境温度の測定を開始させるための信号を発信する。」との記載から、上記「(1)」の「保守管理方法」に係る発明は、「監視装置において、演算部がコンバータに蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗の測定を開始させるための信号を発信するステップ」を備えている。
そして、上記「測定を開始させるための信号」を受信して、上記「(2)」の「蓄電池設置場所内にある監視装置において、蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗を測定するステップ」が実行されることは明らかである。
したがって、上記「(2)」も勘案すると、「蓄電池設置場所内にある監視装置において、演算部がコンバータに蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗の測定を開始させるための信号を発信するステップと、前記監視装置において、前記測定を開始させるための信号を受信して、蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗を測定するステップとを備える前記保守管理方法」との技術事項が読み取れる。

(4)上記記載事項6の「【0053】ここで、図3を用いて蓄電池管理の流れを説明する。以下の説明において、符号は図1または図2中の符号を意味する。【0054】まず、監視装置5から通信網9を介してサーバ12に測定データが送信される。」との記載における「測定データ」とは、上記記載事項4、5の監視装置5に関する記載からみて、蓄電池の内部抵抗を測定した測定データを含むから、この「監視装置5から通信網9を介してサーバ12に測定データが送信される」ステップは、上記「(3)」の「上記測定を開始させるための信号を受信して監視装置が蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗を測定するステップ」の後に実行されることは明らかである。
したがって、上記「(3)」の技術事項も勘案すると、「蓄電池設置場所内にある監視装置において、演算部がコンバータに蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗の測定を開始させるための信号を発信するステップと、前記監視装置において、前記測定を開始させるための信号を受信して、蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗を測定するステップと、前記監視装置から通信網を介してサーバに前記内部抵抗の測定データが送信されるステップとを備える保守管理方法」との技術事項が読み取れる。

(5)上記記載事項5の「【0054】まず、監視装置5から通信網9を介してサーバ12に測定データが送信される。サーバ12は測定データを診断装置14に転送する。
【0055】次に、診断装置14は測定データを解析診断し、メンテナンスの要否を判定する。・・・【0056】診断装置14がメンテナンス要(Y)であると判定した場合は、さらに蓄電池4の交換の要否を判断する。・・・【0059】ここで、蓄電池4の交換が必要な場合には、診断装置14から図示しない蓄電池の供給者に測定データの解析診断結果を自動的に報告可能とすることが望ましい。」との記載から、上記「(4)」の「前記監視装置から通信網を介してサーバに前記内部抵抗の測定データが送信されるステップ」に引き続いて、「診断装置が、サーバから測定データを受け取り、測定データを解析診断し、蓄電池のメンテナンスの要否、交換の要否を判断し、蓄電池の交換が必要な場合には、解析診断結果を自動的に報告するステップ」が実行されることが読み取れる。

(6)上記記載事項6の「【0061】なお、本発明の実施形態は上述したものに限られず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。」との記載、上記記載事項1の特許請求の範囲に関する「【請求項3】 前記測定データの解析診断結果を用いて、前記電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告することを特徴とする、請求項1記載の蓄電池の保守管理方法。」との記載からみて、上記「(5)」の「診断装置が、サーバから測定データを受け取り、測定データを解析診断し、蓄電池のメンテナンスの要否、交換の要否を判断し、蓄電池の交換が必要な場合には、解析診断結果を自動的に報告するステップ」において、診断装置は、さらに、解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告するものと認められる。
したがって、「診断装置が、サーバから測定データを受け取り、測定データを解析診断し、蓄電池のメンテナンスの要否、交換の要否を判断し、蓄電池の交換が必要な場合には、解析診断結果を自動的に報告するとともに、前記解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告するステップ」との技術事項が読み取れる。

(7)上記記載事項4の「【0041】・・・サーバ12はサービスプロバイダ11内に設置されているが、管理センタ13内に設置されていてもよい。ここで、サーバ12および診断装置14は、通信網9に接続されている。」との記載及び図1の記載から、診断装置は、サーバとともに管理センタ内に設置されている。
したがって、上記「(6)」の技術事項も勘案すると、「サーバとともに管理センタ内に設置されている診断装置が、サーバから測定データを受け取り、測定データを解析診断し、蓄電池のメンテナンスの要否、交換の要否を判断し、蓄電池の交換が必要な場合には、解析診断結果を自動的に報告するとともに、前記解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告するステップ」との技術事項が読み取れる。

(8)以上のことを踏まえると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「各種設備に用いられる電源装置の停電対策として非常時に電力を供給する蓄電池の使用中の品質を遠隔地から診断して蓄電池の品質を良好な状態に維持し電源装置を高い品質に維持する方法に関し、蓄電池の使用状態を単位蓄電池ごとにオンラインで正確に把握し、データの解析を行って蓄電池の使用環境や単位蓄電池ごとの寿命を判断する蓄電池の最適な保守管理方法であって、
蓄電池設置場所内にある監視装置において、演算部がコンバータに蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗の測定を開始させるための信号を発信するステップと、
前記監視装置において、前記測定を開始させるための信号を受信して、蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗を測定するステップと、
前記監視装置から通信網を介してサーバに前記内部抵抗の測定データが送信されるステップと、
前記サーバとともに管理センタ内に設置されている診断装置が、前記サーバから前記測定データを受け取り、前記測定データを解析診断し、蓄電池のメンテナンスの要否、交換の要否を判断し、蓄電池の交換が必要な場合には、解析診断結果を自動的に報告するとともに、前記解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告するステップとを備える、
蓄電池の最適な保守管理方法。」

第4 当審の判断
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「診断装置」は、「サーバとともに管理センタ内に設置されて」おり、サーバについては、「蓄電池設置場所内にある監視装置」「から通信網を介してサーバに前記内部抵抗の測定データが送信される」から、上記診断装置は、サーバとともに、蓄電池設置場所から遠隔地にある。
そして、診断装置は、「解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告する」から、解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を予測しているといえる。
したがって、引用発明の「各種設備に用いられる電源装置の停電対策として非常時に電力を供給する蓄電池の使用中の品質を遠隔地から診断して蓄電池の品質を良好な状態に維持し電源装置を高い品質に維持する方法に関し、蓄電池の使用状態を単位蓄電池ごとにオンラインで正確に把握し、データの解析を行って蓄電池の使用環境や単位蓄電池ごとの寿命を判断する蓄電池の最適な保守管理方法」は、蓄電池設置場所から遠隔地にある診断装置により、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を予測するものである。
一方、本願発明の「電池の寿命を遠隔地で予測する電池寿命予測方法」における「電池の寿命を予測する」とは、本願明細書の「段落【0030】・・・ここでは、電池パック10の寿命は、外部の管理センタ30へ送信して管理センタ30で予測する必要があるため、停電時に作動する機器が安定動作可能な所定の電圧を保持可能な期間として定義する。」との記載からみて、停電時に作動する機器が安定動作可能な所定の電圧を保持可能な期間を予測することであり、このことは、上記引用発明の「電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を予測する」と同義である。
よって、引用発明の上記「各種設備に用いられる電源装置の停電対策として非常時に電力を供給する蓄電池の使用中の品質を遠隔地から診断して蓄電池の品質を良好な状態に維持し電源装置を高い品質に維持する方法に関し、蓄電池の使用状態を単位蓄電池ごとにオンラインで正確に把握し、データの解析を行って蓄電池の使用環境や単位蓄電池ごとの寿命を判断する蓄電池の最適な保守管理方法」は、
本願発明の「電池の寿命を遠隔地で予測する電池寿命予測方法」に相当する。

(2)引用発明の「蓄電池設置場所内にある監視装置において、演算部がコンバータに蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗の測定を開始させるための信号を発信するステップ」と、
本願発明の「所定の管理センタに設けられたサーバから、遠隔地に設けられた電池の内部抵抗の検出を指示するステップ」とは、
「遠隔地に設けられた電池の内部抵抗の検出を指示するステップ」の点で共通する。

(3)引用発明の「前記監視装置において、前記測定を開始させるための信号を受信して、蓄電池の各単位蓄電池の内部抵抗を測定するステップ」は、本願発明の「遠隔地において、指示に応じて、電池の内部抵抗を検出するステップ」に相当する。

(4)引用発明の「前記監視装置から通信網を介してサーバに前記内部抵抗の測定データが送信されるステップ」は、本願発明の「検出した内部抵抗をサーバに送信するステップ」に相当する。

(5)引用発明の「前記サーバとともに管理センタ内に設置されている診断装置が、前記サーバから前記測定データを受け取り、前記測定データを解析診断し、蓄電池のメンテナンスの要否、交換の要否を判断し、蓄電池の交換が必要な場合には、解析診断結果を報告するとともに、前記解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告するステップ」における「前記解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告する」は、上記「(1)」において述べたように、解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を予測することを意味しており、このことは、本願発明の「電池の寿命を予測する」と同義である。
したがって、引用発明の上記「前記サーバとともに管理センタ内に設置されている診断装置が、前記サーバから前記測定データを受け取り、前記測定データを解析診断し、蓄電池のメンテナンスの要否、交換の要否を判断し、蓄電池の交換が必要な場合には、解析診断結果を自動的に報告するとともに、前記解析診断結果を用いて、電源装置への入力電圧が停止した際に、給電可能時間を前記電源装置の使用者に自動的に報告するステップ」と、
本願発明の「送信された電池の内部抵抗に基づいて、サーバで電池の寿命を予測するステップ」とは、ともに、
「送信された電池の内部抵抗に基づいて、電池の寿命を予測するステップ」の点で共通する。

(6)したがって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
「電池の寿命を遠隔地で予測する電池寿命予測方法であって、
遠隔地に設けられた電池の内部抵抗の検出を指示するステップと、
遠隔地において、指示に応じて、電池の内部抵抗を検出するステップと、
検出した内部抵抗をサーバに送信するステップと、
送信された電池の内部抵抗に基づいて、電池の寿命を予測するステップとを含む、
電池寿命予測方法。」

[相違点1]
電池の内部抵抗の検出を指示する主体に関し、本願発明では、「所定の管理センタに設けられたサーバ」から指示するのに対し、引用発明では、蓄電池設置場所内にある監視装置の演算部から指示する点。

[相違点2]
送信された電池の内部抵抗に基づいて、電池の寿命を予測する主体が、本願発明では、「サーバ」であるのに対し、引用発明では、サーバではなく、サーバとともに管理センタ内に設置されている診断装置である点。

2 相違点についての検討
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
引用発明と本願発明とは、ともに、通信路を介してセンタが遠隔地にある被測定対象の測定データを収集する遠隔測定に係るものである。
そして、遠隔測定において、測定の開始を指示する主体を、引用発明のように遠隔地にある監視装置とすることも、例えば、特開2004-259658号公報、特開平9-281203号公報に示されるようにセンタとすることも、ともに周知技術である。
しかも、引用発明において、電池の内部抵抗の測定の開始を指示する主体を、監視装置の演算部に代えて、上記周知技術のようにセンタとすることを妨げる特段の阻害要因も見当たらない。
してみると、引用発明において、電池の内部抵抗の測定を開始させるための信号を、監視装置の演算部から発信することに代えて、上記周知技術のように、管理センタ、例えば、管理センタ内に設置されているサーバから送信するようにすることは、当業者が適宜なし得る設計変更である。
したがって、引用発明に上記周知技術を適用して、上記相違点1に係る本願発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(上記周知技術に関して、
上記特開2004-259658号公報の、特に、
「【0032】
この単電池ユニット22におけるパイロット電池22bに両端に、常設型の組電池容量試験装置30が接続されている。組電池容量試験装置30は、制御部31、放電部32、電圧検知部33、充電部34、記憶部35、操作表示部36、寿命切れ報知ランプ37、送受信部38、電源部39を備えている。
【0033】
放電部32は、制御部31の指令に応じて、パイロット電池22bに対する放電路の形成および遮断を行うとともに、その形成時における放電電流Iaのレベル調整を行う。電圧検知部33は、パイロット電池22bの電圧を検知する。充電部34は、制御部31の指令に応じて、パイロット電池22bを充電する。
【0034】
送受信部38は、通信ネットワーク50を介して管理センタ60のサーバ61に接続され、そのサーバ61との間でデータの送受信を行う。サーバ61には、パーソナルコンピュータ等の端末62が接続されている。電源部39は、商用交流電源10に接続され、当該装置30の動作用電圧を出力する。
【0035】
制御部31は、主要な機能として次の(1)?(10)の手段を有している。
(1)定期的(内部タイマの計時に基づく一定時間ごと)に、かつ必要に応じて(操作表示部36での試験開始操作や管理センタ60からの試験開始指令に応じて)、単電池ユニット22の常閉接点22cを開放する手段。
(2)常閉接点22cの開放時、放電部32において、パイロット電池22bに対する放電路を形成しその放電電流Iaを試験用放電電流の設定値Isに維持する手段。
【0036】
(3)上記放電路の形成後、電圧検知部33の検知電圧(パイロット電池22bの電圧)Epが試験用放電終止電圧の設定値Esに低下するまでの時間t(h)を計測する手段。
(4)上記計測時間t(h)に基づく演算により、パイロット電池22bの現容量Cpxを求める手段。
(5)パイロット電池22bの定格容量Cpに対する上記求めた現容量Cpxの割合X(%)を求める手段。
(6)上記求めた割合X(%)を、操作表示部36で表示して報知するとともに、送受信部39からデータ送信して管理センタ60へ報知する手段。」、
「【0052】
組電池容量試験装置30による試験が定期的かつ自動的に実施されるとともに、試験結果が遠く離れた管理センタ60にも報知されるので、組電池20に対する保守管理が万全となる。管理センタ60から発せられる試験開始指令を通信ネットワーク50を介して組電池容量試験装置30に送ることによっても、試験を開始することが可能である。」との記載及び図1の記載参照、

上記特開平9-281203号公報の、特に、
「【0007】図1は本発明の一実施形態を示すブロック図である。ここで、電源装置3はバッテリ31および充電器32を有し、通常は商用AC電源を受けながら負荷に電源を供給する。商用AC電源が停電したときは、バッテリ31から負荷に電源を供給する。バッテリ遠方監視装置1は、通信回線4を介して保守センタ5から指示を受けて動作開始し、バッテリ31の容量劣化状態を判定して保守センタ5へ通報する。」、
「【0010】次に動作を説明する。
【0011】測定開始する際、保守センタ5からバッテリ遠方監視装置1へ開始信号S1を送出する。
【0012】バッテリ遠方監視装置の制御部16は、開始信号S1を受信して制御信号C1を電源スイッチ11へ送出し、電源装置3への商用AC電源供給を強制的に遮断してバッテリ31の放電を開始させる。同時に、タイマ12へ制御信号C2を送出して、放電時間の計測を開始させる。」、
「【0015】制御部16は、判定結果C4を伝送可能な信号S2に変換し、通信回線4を介して保守センタ5へ送出する。なお、通信回線4を介して数値情報を伝送できる場合には、放電時間Tdを保守センタ5へ送信し、保守センタ側でバッテリの劣化状態を判定するようにしてもよい。」との記載及び図1の記載参照。)

[相違点2について]
一般に、サーバは、コンピュータにより構成されており、クライアントに対する様々なサービスを提供するものであるから、引用発明において、管理センタ内にサーバとともに設置されている診断装置の機能をサーバで代替するようにすることは、当業者が適宜なし得る設計変更である。
したがって、引用発明において、診断装置の機能である、送信された電池の内部抵抗に基づいて電池の寿命を予測するという機能をサーバで代替することは、当業者が適宜なし得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものであって格別のものではない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-30 
結審通知日 2013-08-06 
審決日 2013-08-27 
出願番号 特願2006-257419(P2006-257419)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉岡 一也  
特許庁審判長 下中 義之
特許庁審判官 飯野 茂
中塚 直樹
発明の名称 電池寿命予測方法  
代理人 伊藤 英彦  
代理人 特許業務法人アイミー国際特許事務所  
代理人 吉田 博由  
代理人 森下 八郎  

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