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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1280638
審判番号 不服2012-8796  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-14 
確定日 2013-10-25 
事件の表示 特願2006-184945「自動車リサイクル作業工程管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月 6日出願公開、特開2007-317155〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年7月4日(優先権主張平成18年4月27日)を出願日とする出願であって、平成23年9月14日付けの拒絶理由通知に応答して、平成23年11月28日付けで手続補正がなされたが、平成24年2月2日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成24年5月14日に拒絶査定不服審判が請求され、当審から平成25年4月26日付けで拒絶理由が通知され、平成25年7月16日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項1に係る発明は、平成25年7月16日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。なお、下線は、補正箇所を示す。)
「【請求項1】
自動車リサイクル法に基づく自動車リサイクルシステムの情報管理センターのインターネット上のホームページに接続する手段を有すると共にクリップボードをサポートするオペレーティングシステムを有する管理用コンピュータと、リサイクル作業を行うための処理施設に入庫する車両の車台番号等の登録データを記録する管理用コンピュータ内の車両データベースと、当該車両の登録データに対応したIDを書き込んだ識別ラベルを発行するラベル発行機と、車両に付された識別ラベルを読み取ることにより読み出した車台番号等の登録データにより作業対象車両を特定する機能と、当該作業対象車両及び車両から取り外した物の属性のデータを管理用コンピュータに送信する機能を有する携帯端末と、前記送信されたデータを逐次管理用コンピュータ内の車両データベースに記録し、操作者が前記送信されたデータを管理用コンピュータ内の車両データベースから呼び出して管理用コンピュータのブラウザ画面上に表示することを可能とした手段を有し、前記の車両から取り外した物の属性として車両データベースに記録可能なものには次のものが含まれることを特徴とする自動車リサイクル作業工程管理システム。
フロンのガス種別
エアバッグの有無及び作動方法
回収したフロンを保存したボンベの番号
エアバッグの作動数
回収したエアバッグの数
回収したエアバッグを保存したケースの番号
解体した自動車の破砕の送り先種別」

3.引用例
1)引用例1
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成16年5月20日に頒布された「特開2004-145844号公報」(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0012】
[第1の実施の形態]
本発明の使用済自動車リサイクル支援システムは、自動車リサイクル工程(状況)管理・預託金管理を行うためのシステムであって、関連機関・関連事業者を図1に示す。図1は、本発明の使用済自動車リサイクル支援システムにおける概念図であり、本発明の使用済自動車リサイクル支援システムには、以下の関連機関・関連事業者のシステムを通信ネットワークにより接続して構成される(各システムの機能及び動作の詳細については後述する)。
・情報管理センター100の情報管理センターシステム110
・資金管理法人200の資金管理法人システム210
・自動車製造業者や自動車輸入業者などの自動車製造業者等300の自動車製造業者システム310
・関連事業者400の関連事業者システム410、なお関連事業者400には、例えば、引取業者401、フロン類回収業者402、解体業者403、破砕業者404などが含まれる。
・指定再資源化機関500の指定再資源化機関システム510
【0013】
ここで、自動車所有者10は、購入者(新車購入者)11と所有者12が本発明の使用済自動車リサイクル支援システムに関係する。また、自動車所有者10と自動車製造業者等300との間には、自動車ディーラー600が介在する。
また、図1における使用済自動車リサイクル支援システムの構成を示す概略ブロック図について、図26に示す。この図に示すように、情報管理センターシステム110と、資金管理法人システム210と、指定再資源化機関システム510は、通信ネットワーク20を介し、自動車製造業者システム310と、関連事業者システム410とに接続される。
なお、情報管理センターシステム110と、資金管理法人システム210と、指定再資源化機関システム510とについては、別々のシステムとして構成してもよく、また、1つのシステムとして構成するようにしてもよい。なお、この実施形態においては、別々のシステムとして構成された場合について説明する。
以下、各関連機関・関連事業者のシステムが有する機能について説明する。
【0014】
「情報管理センターの有する機能」
図2は、情報管理センターシステム110の機能構成例を示す図であり、情報管理センターシステム110は以下の機能を有する。なお、本明細書では、データベースを、単に「DB」ともいう。
【0015】
A.事前登録・申込に関する機能121として以下の機能がある。
(1)情報管理センターが設定した書類等交付手数料、報告書手数料をマスタ情報としてDB150に登録する機能
(2)自動車製造業者等及び関連事業者の登録申込情報をDB150に登録する機能
(3)関連事業者400からの申込登録時、申込を行う関連事業者400が都道府県へ登録、または許可を受けている業者であるかチェックし、オンライン移動報告を行うためのログインID及びパスワードを払い出す機能
【0016】
B.移動報告に関する機能122として以下の機能がある。
(4)引取業者から送信された使用済み自動車の引取実施報告により関連事業者が使用済自動車のリサイクル時に使用するマニフェスト情報を作成する機能、また本引取実施報告により自動車登録検査業務電子情報処理システム(以下、MOTAS)もしくは軽自動車検査協会が有するシステムへ自動車リサイクルの開始である解体報告記録(引取実施報告)を通知する機能
(5)関連事業者から送信された使用済自動車のリサイクル状況及び関連事業者・自動車製造業者等から送信された特定再資源化等物品の回収状況に関わる移動報告データを受信し、DBに登録する機能
(6)フロン類回収業者から送信されたフロン類再利用報告データを受信し、DBに登録する機能
(7)引渡および引取の各報告内容がアンマッチでないことをチェックする機能
(8)特定再資源化等物品の引取実施報告の内容がアンマッチでない事を判断し、自動車製造業者等への支払いの元となる引取/引渡証明書のデータを作成する機能
(9)関連事業者と自動車製造業者とが適正なリサイクルを行っているかについて、移動報告が所定期間内に報告されているかチェックする機能、また適正なリサイクルが行われていない場合は関連事業者に対して確認の通知、及び都道府県に対して報告を行う機能
(10)違反事業者一覧作成機能は、登録・許可期限切れ、もしくは取消・停止状態となっている関連事業者からの移動報告が存在しないかチェックする機能、また存在した場合は違反事業者一覧を作成し、都道府県へ報告を行う機能
(11)フロン回収業者が適正なフロン類の再利用を行っているかについてフロン類再利用報告をチェックする機能、またフロン類の再利用報告が行われていない場合は都道府県に対して報告を行う機能
(12)破砕業者からの引取報告書もしくは解体業者からの全部利用報告が送信された事によりMOTASもしくは軽自動車検査協会が有するシステムへ解体報告記録(解体報告)を通知する機能
【0017】
C.ファイル閲覧に関する機能123として以下の機能がある。(13)関連事業者・自動車製造業者等・資金管理法人・指定再資源化機関が必要時に使用済自動車情報を確認することのできる機能」
(2)「【0042】
「関連事業者の関連事業者システムの有する機能」
図5は、関連事業者400の関連事業者システム410の機能構成例を示す図であり、関連事業者のシステム410は以下の機能を有する。
(1)引取・引渡実施報告送信機能421
使用済自動車が自動車所有者から引取業者、フロン回収業者、解体業者、破砕業者へと次の業者へ引渡した際に報告する、引取・引渡実施報告を関連事業者が使用済自動車単位で情報管理センターへ送信する機能
(2)指定再資源化物品回収報告送信機能422
関連事業者が使用済自動車からの特定再資源化物品を自動車製造業者等へ引き渡した際に報告する指定再資源化物品回収報告を使用済自動車単位で情報管理センターへ送信する機能
【0043】
なお、関連事業者システムのデータベース(DB)430には、以下に示すデータが記録される。なお、例示するデータの他に、必要に応じて、その他のデータが記録されることがある。
・引取情報431は、他の関連事業者からの、使用済自動車の引取情報である。 ・引渡情報432は、他の関連事業者または自動車製造業者等300への、使用済自動車または特定再資源化物品の引き渡し情報である。
・回収料金情報433は、自動車製造業者等300に対するフロン(または指定)回収料金の請求情報、及び該フロン回収料金の受け取り情報を記録したものである。 ・移動報告データ情報434は、情報管理センターシステム110への移動報告データを記録した情報である。」
(3)「【0053】
(10)ステップS110:自動車所有者個人が支払う場合は、銀行、コンビニ、郵便局あるいは、インターネットを用いたマルチペイメント等を利用して、資金管理法人へ預託金を支払う、また自動車所有者が特定再資源化等物品を追加搭載している際には当該物品の預託金も追加で支払う。そしてステップS111に移行する。
(11)ステップS111:資金管理法人は追加搭載している特定再資源化等物品情報を更新した後、預託金額の妥当性を確認し自動車所有者へ預託証明書を発行する。ここでは、ステップS112?S115を行わず、ステップS116に移行する。
(12)ステップS112:一方、継続検査時、自動車ディーラーに支払を依頼する場合、自動車所有者が自動車ディーラーへ預託金を支払う、また自動車所有者が特定再資源化等物品を追加搭載している際には当該物品の預託金も追加で支払う。なお、預託金支払いの受け付けは、自動車ディーラーのみではなく、車検取扱業者が行うようにしてもよい。
(13)ステップS113:自動車ディーラーは陸運支局の預託窓口等より資金管理法人へ預託金を支払う。なお、この支払い方法については、インターネットを用いたマルチペイメント等を利用してもよい。
(14)ステップS114:資金管理法人は追加搭載している特定再資源化等物品情報を更新した後、預託金額の妥当性を確認し自動車ディーラーへ預託証明書を発行する。
(15)ステップS115:自動車ディーラーは自動車所有者へ預託証明書を受け渡す。
(16)ステップS116:自動車の最終所有者は、当該自動車を廃車にする場合に、引取業者に自動車を引き渡す。引取業者は当該自動車を引き取る際、資金管理法人に預託証明書番号、または当該車台番号・登録番号を元に預託金の確認を行う。
(17)ステップS117:資金管理法人はMOTAS及び軽自動車検査協会が有するシステムからの既販車情報及び所有者情報を元に、納入状況(納入済/未納入)を確認する。
(18)ステップS118:引取業者は預託金の納入を確認後、自動車を引き取り、情報管理センターに移動報告データを送信する。
(19)ステップS119:情報管理センターは資金管理法人が所有する預託対象車両に関する情報を参照し、マニフェスト情報を引取業者へ通知する。
【0054】
(20)ステップS120:情報管理センターはMOTASもしくは軽自動車検査協会が有するシステムへ解体報告記録(引取実施報告)を送付する。(21)ステップS121: 引取業者は、フロン回収業者へ使用済自動車の引渡し作業完了後、情報管理センター(自らフロン回収を行う場合は、自動車製造業者へのフロン類の引渡しも含む)に移動報告データを送信する。情報センターでは該当する車両の移動報告状態を更新する(以下移動報告を受信するたびに更新)。」
(4)「【0061】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態として、使用済自動車リサイクル支援システムにおける移動報告の監視方法についての具体的な例について説明する。使用済自動車リサイクル支援システムにおいては、各リサイクル工程が適正に実行されることが重要である。このため、情報管理センターにおいて、各リサイクル工程ごとに関連する業者から移動報告を受け、この移動報告を監視してリサイクル活動が円滑に行われるようにしている。
【0062】
この、移動報告監視については、以下に示す要件が必要となる。
・自動車を引き取った業者(工程)が、確実に再資源化に係る業務を実施し、次の業者(工程)に確実に引き渡したことを把握できなくてはいけない。
・使用済自動車の業者間(工程間)の引き渡しや引き取りについて正確に把握しなくてはいけない。
・回収された特定再資源化等物品は、関連事業者と自動車製造業者等との間で確実に引き渡し引き取りされたことを把握できなくてはいけない。
・フロン類の再利用状況について、一定期間毎に確実に把握しなくてはいけない。
・報告漏れや遅延があった場合には、関連事業者への確認通知や都道府県への遅延通知を行わなくてはいけない。
【0063】
しかしながら、この移動報告監視については以下に示すような問題点も存在する。
▲1▼移動報告における報告漏れや遅延が発生しないように進捗状況を把握するためには、ワークフロー的な管理が望ましいが、以下の理由により、業者間でのワークフロー的な管理は困難である。
・使用済自動車に搭載されている特定再資源化等物品によって、実施すべき工程が異なり、どの工程を誰がいつ実施するかは、あらかじめ確定できない。
・業者の移動報告の方法によっては、実際に引き取りや引き渡しを行ってから報告がセンターに登録されるまでの間にタイムラグ等が発生するため、業者間(工程間)の物の流れと情報の流れが一致しない。
・自動車の移動と平行して、回収した特定再資源化等物品の移動管理も平行して行われるため、どの工程が最終工程になるかが不明である。
▲2▼ワークフロー的な管理ができずに、前工程で入力された情報を引き継がずに、全ての情報を個別に入力してもらうことになると、移動報告の際に入力する項目が増えて、入力が煩雑になる。
▲3▼1つの自動車や物品の移動に対して、引き渡した業者(工程)と引き取った業者(工程)の両方から移動報告を受けるため、前工程の情報を引き継がずに双方が個々に報告を行った場合には報告の内容が異なる可能性がある。
【0064】
したがって、本発明では、以下の対策により、移動報告監視を効果的に実現できるようにしている。
▲1▼マニフェスト情報の作成
ワークフロー的な管理を行うのではなく、移動報告の起点となる引取業者の引取実施報告で、自動車およびその搭載物品に係る情報をマニフェスト(産業廃棄物管理票)情報として作成することによって、実施すべき工程の全体を把握することができるため、ワークフロー的な管理を行わなくても、報告漏れや遅延の発生等の進捗状況を把握することができる。
・作成したマニフェスト情報に対する消し込みになるため、あらかじめ誰が、何時行ったかを管理するだけでよい。
・システム的に報告の順序性を規定する必要がないため、報告する業者は前工程での情報
の入力を待たなくても実際に来た物に対する報告を行うことができる。
・マニフェスト情報が全て消し込まれた時点で、最終工程となる。
▲2▼ワークフロー管理の部分適用
同一業者内の報告については、物の流れと情報の流れを一致して管理可能であると考えられるため、各業者の自動車引取⇒自動車引渡、自動車引取⇒物品引渡の順序性はシステムで制限をかけることによって、報告の漏れおよび遅延を管理する。また、順序性を定義できるため、前工程の情報を元にして後工程の入力を行えるため、各業者の入力を簡素化できる。業者間の報告については、物と情報の流れが一致している場合には、前工程の情報を引き継げるものとする。
▲3▼突き合わせによる報告間の整合性の管理
前工程の情報を引き継げない場合には、報告のキーとなる項目を比較することによって、報告の順序が前後した場合にも、前工程の情報を引き継いだ時と同じ条件で管理が可能となる。そのため、引渡と引取の突き合わせを行い、不一致の場合にはリスト等を出力して、報告間違いを容易にチェックできるようになる。
【0065】
以下、本発明の第2の実施の形態の具体的な例について、図を参照して説明する。
図12および図13は、物の流れと報告の流れを示す図であり、移動報告と監視の流れについてまとめたものである。また、図中のステップ番号S1?S15は移動報告の識別番号(移動報告No)にも相当する。以下、図12および図13を参照して、移動報告の流れについて説明する。
(1)ステップS1:引取実施報告
引取業者(A社)401は、自動車の所有者12から使用済自動車を引き取ると、情報管理センター100に対して、「引取実施報告」を行う。(2)ステップS2:引渡実施報告
引取業者(A社)401は、使用済自動車をフロン類回収業者(B社)402に引き渡すと、情報管理センター100に対して、「引渡実施報告」を行う。
(3)ステップS3:引取実施報告
フロン類回収業者(B社)402は、使用済自動車を引取業者(A社)401から引き取ると、情報管理センター100に対して、「引取実施報告」を行う。
(4)ステップS4:フロン類回収業者(B社)402は、使用済自動車から回収したフロン類を、自動車製造業者(N社)300に引き渡すと、情報管理センター100に対して「フロン類引渡実施報告」を行う。
(5)ステップS5:自動車製造業者(N社)300は、情報管理センター100に対して、「フロン類引取実施報告」を行う。
(6)ステップS6:フロン類回収業者(B社)402は、フロン類を回収した使用済自動車を解体業者(C社)に引き渡すと、情報管理センター100に対して、「引渡実施報告」を行う。
以下、図13で示すステップとなる。
(7)ステップS7:解体業者(C社)403は、フロン類回収業者(B社)402からフロン類を回収した自動車を引き取ると、情報管理センター100に対して、「引取実施報告」を行う。
(8)ステップS8:解体業者(C社)403は、使用済自動車から回収したエアバックを、自動車製造業者(N社)300に引き渡すと、情報管理センター100に対して、「エアバック引渡実施報告」を行う。
(9)ステップS9:自動車製造業者(N社)300は、情報管理センター100に対して、「エアバック引取実施報告」を行う。
(10)ステップS10:解体業者(C社)403は、エアバックを回収した使用済自動車を破砕業者(D社)404に引き渡すと、情報管理センター100に対して、「引渡実施報告」を行う。
(11)ステップS11:破砕業者(D社)404は、解体業者(C社)403からエアバックを回収した使用済自動車を引き取ると、情報管理センター100に対して、「引取実施報告」を行う。
(12)ステップS12:破砕業者(D社)404は、ASRを自動車製造業者(N社)300に引き渡すと、情報管理センター100に対して、「ASR引渡実施報告」を行う。
(13)ステップS13:自動車製造業者(N社)300は、情報管理センター100に対して、「ASR引取実施報告」を行う。
(14)ステップS15:フロン類回収業者(B社)402は、フロン類再利用報告を行う(図12)。
【0066】
また、図14は、使用済自動車の搭載物品の有無と関連業者間の報告について説明するための図である。図14に示す例では、使用済自動車に搭載され回収される搭載物品が、「フロン」と「エアバック」の場合であり、搭載物品の有無に応じて、関連業者間での物の流れと報告のパターンが4つに分かれる。
・パターン1は、搭載物品が「フロン」と「エアバック」の場合であり、移動報告は、引取業者、フロン類回収業者、解体業者、破砕業者に関連する。
・パターン2は、搭載物品が「エアバック」の場合であり、移動報告は、引取業者、解体業者、破砕業者に関連する。
・パターン3は、搭載物品が「フロン」の場合であり、移動報告は、引取業者、フロン類回収業者、破砕業者に関連する。
・パターン4は、搭載物品として「フロン」も「エアバック」もない場合であり、移動報告は、引取業者、破砕業者に関連する。
また、この報告のパターンをマトリックスデータで表すことができ、パターン1はマトリックスM1、パターン2はマトリックスM2、パターン3はマトリックスM3、パターン4はマトリックスM4で表される。
【0067】
図15および図16は、マトリックスM1の具体的な例を示す図である。図15および図16に示すマトリックスデータ611において、左端の縦の列に記載された業者(符号(a))が処理が先行業務の業者であり、上端の横の行に記載された業者(符号(b))が後続業務の業者である。そして、図15及び図16内の符号「A、B、C、D」が、移動報告についてチェック内容の種別を示している。」
(5)「【0072】
また、図21は、マニフェスト情報TBLと、移動報告TBLの例を示す図である。
マニフェスト情報TBL631は、マニフェスト情報632を登録し、リサイクルの流れを管理するためのTBLであり、以下の項目が記録される。なお、マニフェスト情報632は1台の車について1つ設けられる。
・マニフェストNo(例えば、1002)
・搭載物品(例えば、フロン/エアバック/ASR)
・車台番号(例えば、123-456)
・リサイクルパターン(例えば、M-1)
・ リサイクル状態(例えば、完了)
【0073】
また、移動報告TBL641は、移動報告データを記録するためのテーブルであり、情報管理センターのシステム110が受信した移動報告データ(図20参照)を、マニフェストNoを指標として記録したテーブルである。この移動報告TBLには、以下の項目が記録される。
・マニフェストNo(例えば、1002)
・工程(例えば、引取業者(A社))
・報告内容(例えば、引渡)
・報告No(例えば、S2)
・From(例えば、引取業者(A社))
・To(例えば、フロン類回収業者(B社))
・報告日付(例えば、12月3日)
・監視完了(例えば、○)
・監視通知発行(例えば、12月15日)
・都道府県報告
【0074】
本発明の移動報告の監視処理では、情報管理センター100のシステム110で受信した移動報告について、マニフェスト情報632(図21)、マニフェストチェックテーブル621(図19)を参照して、以下の2段階の処理で移動報告のチェックを行っている。
・順序性チェック(移動報告の順序性チェック):C-1(図18)
・期間チェック(移動報告の期間チェック):C-2、C-3、またはC-4なお、順序性チェック処理をリアルタイム処理とし、期間チェック処理はバッチ処理で行うようにしてもよい。」
(下線は、当審による。)

これらの記載事項によると、引用例1には、
「MOTASもしくは軽自動車検査協会が有するシステムへ解体報告記録を送付する機能を有する管理センターシステム110と、
管理センターシステム110は、車台番号を記録したマニフェスト情報テーブルを有し、関連事業者システムから送信された使用済自動車のリサイクル状況及び関連事業者・自動車製造業者から送信された特定再資源化等物品の回収状況に関わる移動報告データを受信し、DBに登録する機能、フロン類回収業者が関連業者システムから送信したフロン類再利用報告データを受信し、DBに登録する機能、ファイル閲覧機能を有する使用済自動車リサイクル支援システム」
の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

2)引用例2
当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成5年9月10日に頒布された「特開平5-233641号公報」(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0020】優先処理が指定された製番については、製造管理システム10より、部品の面揃えを優先して行い、製造ラインに投入する。また、個々の製品Pにはバーコードプリンタ31にて、個別にバーコードを書き込んであるので、バーコードリーダ32により、各工程の加工が完了する毎にバーコードを読み取り、製品管理システム20のバーコードファイル21に工程進捗状況を書き込む。」(下線は、当審による。)

3)引用例3
当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成13年12月18日に頒布された「特開2001-348110号公報」(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、携帯端末にGPS受信機能とバーコード入力機能を一体化して組みこみ、さらにインタネットウエブブラウザ機能を有する例えばiモード携帯端末を用いるもので、その目的とするところは、次の点にある。
【0005】請求項1及び9に記載の各発明は、センタと物流ドライバの携帯端末間の通信により、物流の管理を行なう物流管理方法において、携帯端末に、GPS受信機能、バーコードリーダ機能を付加して、センタの指示または、携帯端末に予め設定した条件に基づいて、携帯端末に関するGPS情報やバーコードより入力したバーコード情報を付加して送信するもので、ドライバが集荷、着荷時に伝票からバーコードを読み、センタに送信する際、同時に位置情報を送信でき、かつ、ドライバの操作が容易で利便性の高いシステムを実現することを目的とする。」(下線は、当審による。)

4)引用例4
当審の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である平成18年1月26日に頒布された「特開2006-23901号公報」(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0005】
また、携帯端末を用いたインターネットの利用によれば、外出先における商品情報の取得が可能となるが、特定商品の情報取得の場合、上述したように多くの手順が必要となり時間を要するため、通信費用が多くなるなどあまり実用的ではない。
このような問題を解消するために、バーコードなどのコード情報を利用し、特定した商品のコード情報を用いて商品情報を取得する技術が提案されている(特許文献2,3,4参照)。これらは、得られたコード情報を、携帯端末に入力することで、商品情報を得るようにしている。これらの技術では、バーコードリーダ機能などを用い、携帯端末側にコード情報の入力を行っている。」(下線は、当審による。)

4.対比
引用例1記載の発明の「MOTASもしくは軽自動車検査協会が有するシステムへ解体報告記録を送付する機能を有する管理センターシステム110」で、「管理センターシステム110」は、コンピュータであって、MOTAS等に対して解体報告記録等を送付する際に、インターネット等の回線を使用し、ホームページ等を経由していることは明らかであるから、本願発明の「自動車リサイクル法に基づく自動車リサイクルシステムの情報管理センターのインターネット上のホームページに接続する手段を有する」「管理用コンピュータ」に相当する。
引用例1記載の発明の「車台番号を記録したマニフェスト情報テーブル」は、本願発明の「リサイクル作業を行うための処理施設に入庫する車両の車台番号等の登録データを記録する管理用コンピュータ内の車両データベース」および「車台番号等の登録データにより作業対象車両を特定する機能」に相当する機能を有している。
引用例1記載の発明の「関連事業者から送信された使用済自動車のリサイクル状況及び関連事業者・自動車製造業者から送信された特定再資源化等物品の回収状況に関わる移動報告データ」「フロン類回収業者が関連業者システムから送信したフロン類再利用報告データを受信し」で、関連業者、フロン回収業者が送信に使用している関連業者システムは、コンピュータであるから、本願発明の「当該作業対象車両及び車両から取り外した物の属性のデータを管理用コンピュータに送信する機能を有する端末」に相当する構成を有している。
引用例1記載の発明の「特定再資源化等物品の回収状況に関わる移動報告データを受信し、DBに登録する」「フロン類再利用報告データを受信し、DBに登録する」は、本願発明の「送信されたデータを逐次管理用コンピュータ内の車両データベースに記録し」に相当する。
引用例1記載の発明の「ファイル閲覧機能を有する」は、使用済み自動車情報を情報管理センターシステム110において、閲覧するための機能であり、閲覧するための機能を実現する手段として、ブラウザ等が用いられていることは明らかであるから、本願発明の「操作者が前記送信されたデータを管理用コンピュータ内の車両データベースから呼び出して管理用コンピュータのブラウザ画面上に表示することを可能とした手段」に相当する。
引用例1記載の発明の「使用済自動車リサイクル支援システム」は、リサイクル作業工程を管理する機能を有しているから、本願発明の「自動車リサイクル作業工程管理システム」に相当する。

してみると、両発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「自動車リサイクル法に基づく自動車リサイクルシステムの情報管理センターのインターネット上のホームページに接続する手段を有する管理用コンピュータと、リサイクル作業を行うための処理施設に入庫する車両の車台番号等の登録データを記録する管理用コンピュータ内の車両データベースと、車台番号等の登録データにより作業対象車両を特定する機能と、当該作業対象車両及び車両から取り外した物の属性のデータを管理用コンピュータに送信する機能を有する端末と、前記送信されたデータを逐次管理用コンピュータ内の車両データベースに記録し、操作者が前記送信されたデータを管理用コンピュータ内の車両データベースから呼び出して管理用コンピュータのブラウザ画面上に表示することを可能とした手段を有する自動車リサイクル作業工程管理システム。」

[相違点]
(a)本願発明の「管理用コンピュータ」が、「クリップボードをサポートするオペレーティングシステムを有」しているのに対して、引用例1記載の発明の「情報管理センターシステム110」のオペレーティングシステムがどの様なものであるか特定されていない点。
(b)本願発明が「当該車両の登録データに対応したIDを書き込んだ識別ラベルを発行するラベル発行機」と、「車両に付された識別ラベルを読み取る機能」を有する「携帯端末」で構成されているのに対して、引用例1記載の発明は、特に、この様な構成を有していない点。
(c)本願発明は、取り外した物の属性として、「フロンのガス種別、エアバッグの有無及び作動方法、回収したフロンを保存したボンベの番号、エアバッグの作動数、回収したエアバッグの数、回収したエアバッグを保存したケースの番号、解体した自動車の破砕の送り先種別」を含んでいるのに対して、引用例1記載の発明は、フロン、エアバッグに関しては、回収するとしているが、本願発明のような属性を含んでいるとは記載されていない点。

5. 当審の判断
相違点について
(a)クリップボードをサポートするオペレーティングシステムは、例えば、マイクロソフトウインドウズなど例示するまでもなく周知事項であり、一般的に使用されているオペレーティングシステムそのものであること、本願発明における、クリップボードは、明細書を参酌すれば、検索キー入力欄にペーストすることのみに用いる機能であるところ、クリップボードを入力に用いることは常套手段であることからすれば、クリップボードをサポートするオペレーティングシステムに特定した点に格別の技術的意義は認められない。相違点(a)は、格別なことではない。
(b)工程管理において、製品の個別管理を行うために、バーコードプリンタ31、バーコードリーダ32を利用することが引用例2に記載されている。
ここで、引用例2の構成は、パソコンによって自動管理されるバーコードリーダが製造ラインに配置されたものであるが、手動でバーコードの読み取りを行う携帯端末は、引用例3,4の記載事項から明らかなように周知事項であり、さらに、本願発明のリサイクル作業も一連の工程であって、属性データを書き込むことは、一連の工程における進捗を報告することに他ならないから、引用例3,4に記載された周知事項を考慮して、引用例1記載の発明におけるマニフェスト情報TBLの車台番号のチェックにおいて、引用例2の記載事項を採用し、相違点(b)の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
(c)取り外した物の属性として、周知の項目の中からどの様な事項を採用するかは、当業者が必要に応じて選択できる事項であり、特に、「フロンのガス種別、エアバッグの有無及び作動方法、回収したフロンを保存したボンベの番号、エアバッグの作動数、回収したエアバッグの数、回収したエアバッグを保存したケースの番号、解体した自動車の破砕の送り先種別」を選択したことに格別の技術的意義があるとも、これらの項目を含ませるために、格別な処理行っているものでもないから、相違点(c)に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

以上のとおりであるから、相違点(a)?(c)にかかる発明の構成は、引用例1記載の発明及び引用例2?4の記載事項から当業者が容易に想到することができたものである。
そして本願発明の効果も引用例記載の発明及び引用例2?4の記載事項から当業者が推測できる範囲のものである。

6.むすび
本願発明は引用例1記載の発明および引用例2?4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-09 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-02 
出願番号 特願2006-184945(P2006-184945)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 広一  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 石川 正二
須田 勝巳
発明の名称 自動車リサイクル作業工程管理システム  
代理人 神保 欣正  

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