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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28G
管理番号 1280951
審判番号 不服2013-771  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-16 
確定日 2013-10-31 
事件の表示 特願2008-118782号「空調機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月19日出願公開、特開2009-270726号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年4月30日の出願であって、平成24年10月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年1月16日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成25年1月16日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成25年1月16日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

【理由】
2-1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1に、
「筐体内を前記筐体外の空気が通過するとともに、前記筐体内の洗浄対象を洗浄する空調機であって、
前記筐体に設けられ、水を加熱してスチームを生成するスチーム生成部と、
前記筐体内に設けられているとともに、前記スチーム生成部にスチーム管を介して接続され前記洗浄対象に指向したスチーム吐出口を通じて前記スチームを前記洗浄対象に吐出するスチーム吐出体とを備えたことを特徴とする空調機。」
とあるのを、
「筐体内を前記筐体外の空気が通過するとともに、前記筐体内の洗浄対象を洗浄する空調機であって、
前記筐体に設けられ、水を加熱してスチームを生成するスチーム生成部と、
前記筐体内に設けられているとともに、前記スチーム生成部にスチーム管を介して接続され前記洗浄対象に指向したスチーム吐出口を通じて吐出される前記スチームを途上の空気と混合して100℃未満で前記洗浄対象にあてるスチーム吐出体とを備えたことを特徴とする空調機。」
とする補正を含むものである。

本件補正後の請求項1は、補正前の請求項1の記載において、スチーム吐出口を通じて吐出されるスチームを「途上の空気と混合して100℃未満で洗浄対象にあてる」ことの限定を付加するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

2-3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭59-94266号(実開昭61-10431号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)及び特開2001-21289号公報(以下「引用例2」という。)、並びに新たに引用する本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-276753号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の各事項が記載されている。

[引用例1について]
(1a)「室内ユニット内に設けた熱交換器の上部に前記熱交換器に散水する散水具を設け、前記室内ユニットに洗剤溶液収納容器を設け、この洗剤溶液収納容器と前記散水具とを、ポンプ及びホースを介して連結した空気調和機。」(実用新案登録請求の範囲参照)

(1b)「本考案は、空気調和機に関し、特に室内ユニット内に設けた熱交換器の洗浄が容易に行えるようにしたものである。」(第1頁12?14行参照)

(1c)「図において、1は空気調和機の室内ユニットであり、その前面及び左右側面と上下面の五面を外箱2にて覆っている。」(第3頁6?8行参照)

以上の記載によると、引用例1には、
「外箱にて覆われている室内ユニット内に設けた熱交換器の上部に前記熱交換器に散水する散水具を設け、前記室内ユニットに洗剤溶液収納容器を設け、この洗剤溶液収納容器と前記散水具とを、ポンプ及びホースを介して連結した空気調和機。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用例2について]
(2a)「【請求項2】 130℃?140℃の熱水、100℃?120℃の水蒸気、又は水蒸気と熱水とを混合した100℃?140℃の混合流体を被洗浄箇所に吹き付けて行うエアコンの清掃方法。」

(2b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、清掃により発生する、洗剤や消毒液を含んだ廃液をそのまま捨てると環境問題を引き起こすので廃液の分解処理を行う必要があり、手間がかかり、コスト高を招いていた。本発明の目的は、エアコンの清掃を水(熱水や水蒸気を含む)のみで行い、環境問題を引き起こさない、エアコンの清掃方法およびエアコン清掃装置の提供にある。」

(2c)「【0005】(2)エアコンの清掃方法は、130℃?140℃の熱水、100℃?120℃の水蒸気、又は水蒸気と熱水とを混合した100℃?140℃の混合流体を被洗浄箇所に吹き付けて行う。」

(2d)「【0036】つぎに、エアコン清掃装置Aの利点を述べる。
[ア]汚れが激しくても、室内機6のフィン等を、熱水、水蒸気、又は混合流体の噴射(数十秒間)により綺麗に洗浄することができる。又、室内機6のフィン等に存在する菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌、枯草菌等)を、熱水、水蒸気、又は混合流体の噴射(数秒間)により略ゼロにすることができる。尚、消毒剤や洗剤を使わないので、ミストを吸い込んだり、消毒剤や洗剤が皮膚に付いたりせず、洗浄作業者の健康が損なわれない。
【0037】[イ]洗浄液は、水であり、水質汚染の原因になる洗剤や消毒剤を含まないので、廃液処理に手間やコストがかからない。尚、廃液は、濾過して下水に流すのが好ましいが、そのまま河川に流したり、地面に滲み込ませても、河川や土壌を汚染しない。又、エアコン内部に洗剤や消毒剤が残留しないので、過敏体質の人、乳幼児、病人、又はお年寄りが居る場合でも安全性が確保できる。」

以上の記載より、引用例2には、
「エアコンの清掃において、100℃?120℃の水蒸気を被洗浄箇所に吹き付けて行う」ことが記載されている。

[引用例3について]
(3a)「【請求項1】洗浄する天井設置エアコンの洗液を受ける防水カバーと、該防水カバーより上方に位置する蒸気、温水及び乾燥用エアーを噴出するエアコン洗浄ノズルと、該洗浄ノズルの蒸気供給通路に連結される蒸気発生器とを具備してなり、該蒸気発生器で生成した蒸気と、温水とを、所定の温度以下として、前記ノズルから噴出し得るように構成したことを特徴とするエアコン洗浄装置。」

(3b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、洗浄剤を使用する方法は、公害・環境汚染の危険性を常に内包しているほか、洗浄剤の処理に中和剤や大量のすすぎ水を必要とし、その結果経費が増大したり、大量の排水が出る等の欠点があった。」

(3c)「【0023】スチームや温水は、一般には、高温の方が洗浄効果は高いが、対象となるコイルフイン及びその内部にある冷媒管は、100℃以下の所定の温度範囲に保つ必要がある。コイルフインと冷媒管は、その材質及び製法により差があるが、90℃以下好ましくは80℃以下に保つようにするのが良い。
【0024】そこで、洗浄効果と上記使用温度範囲を両立させるために、センサーと温度調節機構によって、蒸気の温度は70?90℃好ましくは75?85℃に、温水の温度は、40?70℃好ましくは50?65℃に、ノズル出口での温度が設定制御できるようになっている。
【0025】このように温度制御することによって、スチームと温水の高い洗浄効果を生かしながら、コイルフイン及び周囲にダメージを与える恐れを回避している。」

(3d)「【0028】温度を調節する方法としては、高圧スチーム発生器で生成したスチームをノズルに導く通路を、外気で冷却するかまたは直接外気を導入することによって、所望の温度としても良い。外気の取り入れ量をノズル近傍で測定した温度に応じて加減することで、ノズルから噴出する蒸気の温度を一定の温度に保つことが出来る。」

以上の記載より、引用例3には、
「蒸気発生器で生成した蒸気をノズルから噴出し得るようになしたエアコン洗浄において、コイルフイン及び周囲にダメージを与える恐れを回避するために、蒸気の温度は70?90℃にノズル出口での温度が設定制御される」ことが記載されている。

2-4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「外箱」、「熱交換器」及び「空気調和機」は、それぞれ本願補正発明の「筐体」、「洗浄対象」及び「空調機」に相当し、
引用発明の「室内ユニット」において、外箱内を前記外箱外の空気が通過することは明らかであり、
引用発明の「室内ユニット」は、外箱にて覆われていることから、引用発明の「室内ユニット」または「室内ユニット内」に設けることは、本願補正発明の「筐体」または「筐体内」に設けることを意味し、
引用発明の「洗剤溶液収納容器」及び「散水具」と、本願補正発明の「スチーム生成部」及び「スチーム吐出体」とは、何れも「洗浄手段」を構成する限りでは一致していることから、両者は、
「筐体内を前記筐体外の空気が通過するとともに、前記筐体内の洗浄対象を洗浄する空調機であって、
前記筐体または前記筐体内に設けられた洗浄手段を備えた空調機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点;洗浄手段が、本願補正発明では、水を加熱してスチームを生成するスチーム生成部と、前記スチーム生成部にスチーム管を介して接続され洗浄対象に指向したスチーム吐出口を通じて吐出される前記スチームを途上の空気と混合して100℃未満で前記洗浄対象にあてるスチーム吐出体とで構成されているのに対し、引用発明では、ポンプ及びホースを介して連結された洗剤溶液収納容器と散水具とで構成されている点。

2-5.判断
そこで、上記相違点を検討すると(以下「水蒸気」または「蒸気」を「スチーム」ともいう。)、
エアコン等の清掃において、洗剤を用いた洗浄により引き起こされる環境問題は、本願出願前周知の技術課題であり(例えば、記載事項(2b)及び(3b)参照。)、また、引用例2に記載されたエアコンの清掃も、室内機のフィン(熱交換器)を主として洗浄するものであり(記載事項(2d)参照。)、引用発明と同じ洗浄対象が示されていることから、引用発明の洗剤溶液を用いた洗浄に換えて、引用例2に記載されたスチームを用いた洗浄を採用することは、当業者が容易に想到し得る事項である。
また、その際、上記相違点の本願補正発明に係る水を加熱してスチームを生成するスチーム生成部と、前記スチーム生成部にスチーム管を介して接続され洗浄対象に指向したスチーム吐出口を通じて吐出される前記スチームを前記洗浄対象にあてるスチーム吐出体が必要なことは当然の事項であり、また、それらを筐体または筐体内に設けられる程度の大きさとなすことは、当業者が適宜になし得る事項と認められる。
さらに、引用例2に記載されたエアコンの清掃において、100℃?120℃のスチームが被洗浄箇所において何度になっているのかは明らかではないが、一般的に、機器内における各部品の耐熱性を考慮した設計を行うことは、当業者なら当然の事項であり、また、引用例3の「蒸気発生器で生成した蒸気をノズルから噴出し得るようになしたエアコン洗浄において、コイルフイン及び周囲にダメージを与える恐れを回避するために、蒸気の温度は70?90℃にノズル出口での温度が設定制御される」との記載を参酌すれば、スチームを用いた洗浄において、スチームのノズル出口での温度を100℃未満とすることは、当業者が容易になし得たことである。そして、引用例3には、温度を調節する方法として、高圧スチーム発生器で生成したスチームをノズルに導く通路に直接外気を導入することによって行うことが記載されている(記載事項(3d)参照。)ことからすると、ノズルから被洗浄箇所までの途上における空気との混合においてもスチームの温度がさらに低下することは、当業者が容易に想到し得た事項である。
よって、引用発明において、洗剤溶液を用いた洗浄に換えて、引用例2に記載されたスチームを用いた洗浄を採用し、また、スチームの温度を適宜に制御することにより、上記相違点の本願補正発明のようになすことは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用発明並びに、引用例2及び引用例3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成25年1月16日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年4月26日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例2、並びにそれらの記載事項は、前記「2-3.引用例」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、スチーム吐出口を通じて吐出されるスチームを「途上の空気と混合して100℃未満で洗浄対象にあてる」ことの限定を省いたものである。

そうすると、上記補正却下の決定の理由において、本願補正発明は、当業者が容易に発明をすることができた根拠として新たに引用した引用例3を参酌することなく、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-30 
結審通知日 2013-09-03 
審決日 2013-09-17 
出願番号 特願2008-118782(P2008-118782)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F28G)
P 1 8・ 121- Z (F28G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 山崎 勝司
平上 悦司
発明の名称 空調機  
代理人 上田 俊一  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 梶並 順  
代理人 飯野 智史  
代理人 大宅 一宏  
代理人 曾我 道治  

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