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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1280991
審判番号 不服2011-23768  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-04 
確定日 2013-10-28 
事件の表示 特願2001-557216「ダイナミック・ドキュメントを効率的に生成するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 9日国際公開、WO01/58075、平成15年 7月22日国内公表、特表2003-522359〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,2001年2月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年2月3日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成14年8月5日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,図面(図面中の説明に限る),要約書の日本語による翻訳文が提出され,
平成20年2月5日付けで審査請求がなされると共に手続補正がなされ,
平成22年8月16日付けで審査官により拒絶理由が通知(同年同月18日発送)され,
これに対して平成23年2月18日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,
同年6月28日付けで拒絶査定(同年7月4日謄本送達)がなされ,
これに対して同年11月4日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,
平成24年3月13日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,
同年7月23日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年同月24日発送)がなされたが,
回答書の提出がなされなかったものである。


2.平成23年11月4日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年11月4日付けの手続補正を却下する。


[理由]

(1)本件補正

平成23年11月4日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲について,本件補正前に,

「【請求項1】
ダイナミック・ドキュメントと宛先リストとからVIPDL出力ストリームを生成する生成システムであって,該システムは,
前記宛先リストを介して一度に1つのレコードをイテレートし,前記レコードごとに前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクトについての値を計算するデータ・イテレータであって,前記ダイナミック・オブジェクトについての前記値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連するデータベース・クエリを発生することを含み,前記計算される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである,データ・イテレータと,
前記ページ・レイアウトと前記値に関連する前記ダイナミック・オブジェクトとの各集合に基づいて,前記レコードごとにドキュメント・インスタンスを作成するドキュメント・インスタンシエータと,
前記ドキュメント・インスタンシエータと連係して動作する出力ジェネレータであって,前記ドキュメント・インスタンスのレンダリングを指定するコードを生成する出力ジェネレータと,
前記出力ジェネレータの出力から前記VIPDL出力ストリームを生成するマージ・コンポーネントとを含む生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生成システムにおいて,前記VIPDL出力ストリームが,オブジェクト指向(レンダリング)指定言語で定義される,生成システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生成システムにおいて,前記オブジェクト指向指定言語が,VPSである,生成システム。
【請求項4】
請求項2に記載の生成システムにおいて,前記オブジェクト指向指定言語が,PPMLである,生成システム。
【請求項5】
請求項1に記載の生成システムにおいて,前記VIPDL出力ストリームが,HTMLで定義される,生成システム。
【請求項6】
請求項1に記載の生成システムにおいて,該システムはさらに, 前記データ・イテレータと前記ドキュメント・インスタンシエータが生産者・消費者方式で動作できるようにするためのコンテンツ・オブジェクト・バッファを含む生成システム。
【請求項7】
請求項1に記載の生成システムにおいて,
前記マージ・コンポーネントが, 再使用可能オブジェクト名とその定義とを含む定義辞書と,
ダイナミック・ドキュメント・インスタンスのページに関するレイアウト情報を含むブックレット・セクションと,前記定義辞書および前記ブックレット・セクションのコンテンツから前記VIPDL出力ストリームを生成するマージ・プロセッサとを含む,生成システム。
【請求項8】
請求項1に記載の生成システムにおいて,複数の前記発生されるデータベース・クエリが,単一のクエリに凝縮され,該単一クエリが,複数のダイナミック・オブジェクトを結合するのに用いられる,生成システム。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)
とあったものを,

「【請求項1】
ダイナミック・ドキュメントと宛先リストとからVIPDL出力ストリームを生成する生成システムであって,該システムは,
前記宛先リストから複数レコードを一度に1レコードずつ選択し,該選択したレコードに対して,前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクトについての値を,レコード毎に計算するデータ・イテレータであって,複数の前記ダイナミック・オブジェクトについての値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連付けられるデータベース・クエリを発生すること,及び前記データベース・クエリにおける結果にルールを適用して,計算される値を取得することを含み,前記計算される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである,データ・イテレータと,
前記ページ・レイアウトと前記値に関連する前記ダイナミック・オブジェクトとの各集合に基づいて,前記レコードごとにドキュメント・インスタンスを作成するドキュメント・インスタンシエータと,
前記ドキュメント・インスタンシエータと連係して動作する出力ジェネレータであって,前記ドキュメント・インスタンスのレンダリングを指定するコードを生成する出力ジェネレータと,
前記出力ジェネレータの出力から前記VIPDL出力ストリームを生成するマージ・コンポーネントとを含む生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生成システムにおいて,前記VIPDL出力ストリームが,オブジェクト指向(レンダリング)指定言語で定義される,生成システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生成システムにおいて,前記オブジェクト指向指定言語が,VPSである,生成システム。
【請求項4】
請求項2に記載の生成システムにおいて,前記オブジェクト指向指定言語が,PPMLである,生成システム。
【請求項5】
請求項1に記載の生成システムにおいて,前記VIPDL出力ストリームが,HTMLで定義される,生成システム。
【請求項6】
請求項1に記載の生成システムにおいて,該システムはさらに, 前記データ・イテレータと前記ドキュメント・インスタンシエータが生産者・消費者方式で動作できるようにするためのコンテンツ・オブジェクト・バッファを含む生成システム。
【請求項7】
請求項1に記載の生成システムにおいて,
前記マージ・コンポーネントが, 再使用可能オブジェクト名とその定義とを含む定義辞書と,
ダイナミック・ドキュメント・インスタンスのページに関するレイアウト情報を含むブックレット・セクションと,前記定義辞書および前記ブックレット・セクションのコンテンツから前記VIPDL出力ストリームを生成するマージ・プロセッサとを含む,生成システム。
【請求項8】
請求項1に記載の生成システムにおいて,複数の前記発生されるデータベース・クエリが,単一のクエリに凝縮され,該単一クエリが,複数のダイナミック・オブジェクトを結合するのに用いられる,生成システム。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)
と補正しようとするものである。

(2)本件補正における補正の目的についての判断

以下に,本件補正における特許請求の範囲についてする補正の目的について検討する。

ア.補正後の請求項1の補正に係る,補正前の請求項1の「前記宛先リストを介して一度に1つのレコードをイテレートし,前記レコードごとに前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクトについての値を計算するデータ・イテレータ」を,「前記宛先リストから複数レコードを一度に1レコードずつ選択し,該選択したレコードに対して,前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクトについての値を,レコード毎に計算するデータ・イテレータ」とする補正は,
宛先リスト「から複数レコードを」対象として計算を行うものとして,本件補正前の請求項に係る発明を特定するための事項であるところの「データ・イテレータ」を限定するもので,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものあるとともに,
平成23年6月28日付けの拒絶査定における,
「請求項1には「宛先リストを介して一度に1つのレコードをイテレートし」との記載があるが,該記載が何を意味しているのかが不明である(1つのレコードをイテレートするとの技術的意味が不明である。)。」
との指摘を受けて,補正前の「1つのレコードをイテレートし」,「前記レコードごとに」「計算する」を,「1レコードずつ選択し」,「該選択したレコードに対して,」「レコード毎に計算する」と,それぞれ補正するもので,特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

イ.補正後の請求項1の補正に係る,補正前の請求項1の「前記ダイナミック・オブジェクトについての前記値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連するデータベース・クエリを発生することを含み,前記計算される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである,データ・イテレータ」を,「複数の前記ダイナミック・オブジェクトについての値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連付けられるデータベース・クエリを発生すること,及び前記データベース・クエリにおける結果にルールを適用して,計算される値を取得することを含み,前記計算される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである,データ・イテレータ」とする補正は,平成22年8月16日付けの拒絶理由における,
「請求項1には,「レコードに関する前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクト用の値を計算する」と記載されているが,レコードに関するどのような値をどのように計算するのか明確でない。」
との指摘を受けて行うもので,特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

よって,本件補正は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合する。

そこで,本件補正後の請求項に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを,以下に検討する。

(3)請求項の記載(特許法第36条第6項第2号)についての検討

本件補正後の請求項1における「前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクトについての値を,レコード毎に計算する」との記載は,「レコード毎」のどのような値を,どのように計算するのか,依然として明確でない。

上記「計算する」との記載に関連して,同請求項1中に「複数の前記ダイナミック・オブジェクトについての値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連付けられるデータベース・クエリを発生すること,及び前記データベース・クエリにおける結果にルールを適用して,計算される値を取得することを含み,前記計算される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである」との記載があるが,
上記記載は,上記値の計算が複数のダイナミック・オブジェクトについてのものであること,上記値の計算が,データベース・クエリを発生すること,及び,当該クエリの結果にルールを適用して計算される値を得ること,の両方を含むこと,並びに,当該値が各ページ・レイアウトに配置されるためのものであること,を示しているに止まり,そもそも上記「データベース・クエリにおける結果にルールを適用して,計算される値を取得すること」との記載自体が,上記「データベース・クエリにおける結果」としてのどのようなデータに対し,どのように「ルール」を適用することを指しているのか不明であるとともに,当該記載が加えられたことによって,データベース・クエリを発生すること,及び,ルールを適用することと,値を計算することとの関係が明確になったとは言えず,さらに,「計算される値」である「各ページ・レイアウトに配置されるためのものである」値が具体的にどのような値であって,どのように計算されるのかも不明りょうであることから,当該記載によっても,上記請求項における記載は依然として不明確である。また,上記「計算する」との記載に関連する,従属する請求項の記載によっても,「レコード毎」のどのような値を,どのように計算するのか,依然として明確でない。

また,上記「計算する」との記載に関連して,発明の詳細な説明における記載として,

「【0029】
ルールは,ダイナミック・オブジェクトが何であるかと,所与の宛先に関してそのオブジェクトの値を計算する方法と,その値を所与のページ・レイアウトに配置する位置と方法とを指定する1組のルールである。」(当審注:下線は便宜上当審にて付与したもの。)
があるが,上記記載は値を計算する方法がルールに基づくものであることを示すに止まり,これらの記載を参照しても,「レコード毎」のどのような値を,どのように計算するのか,依然として明確でなく,そして,発明の詳細な説明の上記引用以外の記載を参酌しても,「レコード毎」のどのような値を,どのように計算するのか,依然として明確でない。

また,上記「計算する」との記載に関し,審判請求時に提出した審判請求書において請求人は,

「ここで,クエリを発生することと,計算することとの関係について,以下に補足する。
ダイナミック・ドキュメント内の複数のダイナミック・オブジェクトとは,動的に値を有する複数のオブジェクトのことを指す。データ・イテレータが,「ルール」に基づいて当該ダイナミック・ドキュメント内の各オブジェクトについて値を計算し,このルールは,各宛先レコード内のデータに対して適用される。
したがって,ダイナミック・ドキュメントが,例えば,自動車の販売用パンフレットである場合,1つのオブジェクトは乗用車を表す写真オブジェクトとすることができ,この場合は,このオブジェクトの値が,パンフレット内に含まれる選択されるべき写真とすることができる。
例えば,仮に宛先レコードがパンフレットの受取人の年齢データを有している場合には,ここでの「ルール」は,
・もし受取人の年齢データが30歳までであれば,この値をスポーツ・カーの写真とする,
・もし受取人の年齢データが30歳から50歳までであれば,この値をファミリー・カーの写真とする,
・もし受取人の年齢が50歳より上あれば,この値を高級カーの写真とする,
という具合である。
これにより,本願発明1における,クエリを発生することと,計算することとの関係が明確なものとなっており,「イテレータ」に係る技術的内容も明確なものであると思料する。」

と主張しているが,これは,年齢データからパンフレット用に選択すべき写真を判断していることを述べているに過ぎず,オブジェクトの「値」が選択すべき写真の具体的に何に対応しているのか(写真の通番なのか,写真の属性に係る何らかの数値なのか)不明であるとともに,上記一連の判断の中のいずれの処理が,値を「計算」するとの処理に該当するのかも不明であり,よって,当該主張を参照しても,「レコード毎」のどのような値を,どのように計算するのか,依然として明確でない。

以上のとおりであるから,本件補正後の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるとすることができない。

(4)特許法第29条2項についての検討

前記(3)に反し,仮に,本件補正後の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとした場合,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許法第29条2項に規定する要件を満たしているかについて以下に検討する。

(4-1)本願補正発明
本願補正発明は,上記「(1)」において,補正後の請求項1として引用した,次のものである。

「ダイナミック・ドキュメントと宛先リストとからVIPDL出力ストリームを生成する生成システムであって,該システムは,
前記宛先リストから複数レコードを一度に1レコードずつ選択し,該選択したレコードに対して,前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクトについての値を,レコード毎に計算するデータ・イテレータであって,複数の前記ダイナミック・オブジェクトについての値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連付けられるデータベース・クエリを発生すること,及び前記データベース・クエリにおける結果にルールを適用して,計算される値を取得することを含み,前記計算される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである,データ・イテレータと,
前記ページ・レイアウトと前記値に関連する前記ダイナミック・オブジェクトとの各集合に基づいて,前記レコードごとにドキュメント・インスタンスを作成するドキュメント・インスタンシエータと,
前記ドキュメント・インスタンシエータと連係して動作する出力ジェネレータであって,前記ドキュメント・インスタンスのレンダリングを指定するコードを生成する出力ジェネレータと,
前記出力ジェネレータの出力から前記VIPDL出力ストリームを生成するマージ・コンポーネントとを含む生成システム。」

(4-2)引用文献等

1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の第1国出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開平11-272653号公報(平成11年10月8日出願公開,以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A「【請求項1】 印刷媒体にプリントすべき画像情報を記憶する画像情報ファイル,複数の個人に関する可変情報を記憶する可変情報ファイル,前記可変情報ファイルの個々のデータを印刷媒体にプリントするデータに変換する条件を指示するプリント条件情報を記憶するプリント条件ファイルを備えた記憶手段と,
前記可変情報ファイルの個々のデータを前記プリント条件情報に基づいてプリント用に編集するデータ編集処理手段と,
プリント内容のレイアウトを指示するレイアウト指示情報を生成するレイアウト指示手段と,
前記レイアウト指示情報に基づいて,前記データ編集処理手段で編集された個々のデータ及び前記画像情報を流し込み位置に流し込むことにより,印刷可能な状態にする流し込み手段と,を含む可変プリントシステムであって,
前記プリント条件情報が,前記可変情報ファイル中の数値データの出力書式を指示する情報を含むことを特徴とする可変プリントシステム。」

B「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,コンピュータを利用して,ダイレクトメール,請求書等の個々の顧客に適した可変情報を印刷した帳票媒体を提供する可変プリントシステムに関し,更に詳しくは,数値データの出力をプログラムレス化するシステムに関するものである。」

C「【0019】可変情報ファイル15は,郵便番号,住所,氏名,年齢,商品選別フラグ,金額等の属性情報が,各顧客や消費者毎に収録されるファイルである。ただし,管理連番の発番号,老番号のみの指定で印刷する場合は,本ファイルは必要としない。
【0020】プリント条件ファイル16は,各個人毎に,可変情報ファイル中の何を,どういう条件の場合に,どう変換して出力するか等のプリント条件情報が収録されるファイルである。プリント条件情報には,可変情報ファイル中の数値データを出力する書式を定義した情報が含まれる。
・・・(中略)・・・
【0026】データ編集処理部25は,プリント条件ファイル16を参照して,条件に見合ったデータを可変情報ファイル15から抽出し,プリント条件に従ってプリント用に編集する部分である。数値データの出力書式がプリント条件ファイル16に定義されている場合は,出力書式に従って所定の出力書式に変換する。
【0027】流し込み処理部26は,レイアウト指示された箇所に,バリアブルデータファイル17に設定されている情報に基づいて,画像情報ファイル11から適した画像を抽出し,また,テキストの場合は,バリアブルデータファイル17に設定されている情報をもとにしてテキストデータを抽出し,各個人に応じた印刷内容を,レイアウト指示された条件により,印刷できるデータへと変換する部分である。また,面付け条件ファイル13に設定されている面付け数分のデータを1ページ上に配置させ,管理連番を所定の位置に印字するように印刷データを作成し,納品単位情報ファイルのデータより,山番号,ページ連番を所定の位置に印字するように印刷データを作成する。」

D「【0038】図4は,本実施形態に係る流し込み枠の設定画面の一例を示す図である。この設定画面40は,テキスト/画像選択欄41と,流し込み枠番号欄42と,フィールド欄43と,矢印欄44と,連結順序欄45と,矢印欄46と,出力グループ欄47と,フィールド選択欄48と,設定オプション欄49,数値編集メニュー等を備えている。
【0039】仕様書2は,流し込み枠番号と,その流し込み枠番号にどのフィールドをどういう条件の場合に印刷するかを明記してある。本実施形態の仕様書2には,「流し込み枠番号1に郵便番号,枠番号2に住所1と住所2と住所3を空白無しで連結,枠番号3に氏名,枠番号4に男性でポイント数が50点以下の人にはAという画像を,男性でポイント数が51点以上の人にはBという画像を,女性でポイント数が50点以下の人にはCという画像を,女性でポイント数が51点以上の人にはDという画像を,枠番号5に金額をカンマ編集で印刷する」と記載されているものとする。
【0040】つぎに,図5から図9を参照しながら,流し込み枠の設定の仕方について説明する。図4において,テキスト/画像選択画欄41は,テキストが選択された場合には,下矢印ボタンはアクティブ状態となり,画像が選択された場合には,下矢印ボタンは非アクティブ状態となる。フィールド欄43は,エディター入力可能とする。テキストが選択された場合には,レコードフィールド番号の頭に「#」を付けて設定し,フィールド中のバイト位置を指定する場合は,「(相対的なフィールド開始位置:相対的なフィールド終了位置)」として設定する。例えば,フィールド番号30の3バイト?5バイトの場合は,#30(3:5)と設定する。文字列を条件式に設定する場合は,「’(シングルクォーテーション)」で文字列を囲む。
【0041】画像を選択した場合には,そのまま画像ファイル名を入力する。画像を選択し,入力フィールドにレコードフィールドが選択された場合には,インターフェースデータ作成時に,データ値.epsとしてファイル名を記憶する。チェックデジットを入力する場合には,<C>と入力する。まず,流し込み枠番号欄42には,「1」を設定する。テキストが選択された場合に,下矢印ボタンをクリックすると(操作[1]),図5のような画面が表示される。フィールド選択欄43には,先に設定した可変情報データの仕様設定のレコードレイアウトの内容(図3の内容)が表示される(操作[2])ので,郵便番号に相当するものをマウスで選択して(操作[3]),反転表示させる。そして,選択したフィールド番号と,相対バイト位置を表示させる(操作[4])。」

E「【0056】このようにして,プリント条件を指定すると,プリント条件ファイルが生成される。図13は,プリント条件ファイルのファイルフォーマット及び実施例を示す図である。図13のファイルフォーマットにおいて,例えば,var_noは,流し込み枠を指定する識別子である。d_typeは,データタイプを記録する識別子であって,テキストの場合には「T」,画像の場合には「I」を記録する。f_selectは,フィールド選択条件を記録する識別子である。記録内容は,定義画面と同様の方法をとり,横方向にAND条件,縦方向にOR条件を設定する。AND条件が複数存在する場合には,カンマで区切り,OR条件が複数存在する場合には,f_select識別子を複数連続して記録する。o_dataは,出力グループの一つを,連結順に記録する識別子であり,複数のデータを連結する場合には,カンマで区切る。c_optionは,連結オプションを記録する識別子である。有効文字(空白付き)の場合は,「1」を,有効文字(空白無し)の場合には「2」を記録する。フィールドを連結して,連結オプションが設定されていない場合には,「0」を記録する。」

F 図13として,以下の図が示されている。



上記図には,プリント条件ファイルにあるプリント条件情報として,各流し込み枠番号(var_no)に対して,可変情報ファイル中の属性情報(【実施例の場合】左欄の「o_data」が「#1」?「#5」で指定された部分),並びに,個人の性別やポイント数に応じて決定する,データ値.eps(同右欄の「o_data」が「A.eps」?「D.eps」で指定された部分)をファイル名として設定された異なる画像,をそれぞれ印刷するための条件が指定された態様,が示されている。

G「【0059】データ編集処理部25では,可変情報ファイル15とプリント条件ファイル16を利用して,可変情報ファイル15中の先頭から1レコードずつ処理してゆき,プリント条件ファイル16に応じて,必要なデータを抽出/変換して,各個人に応じて印字すべき情報を作成してゆき,バリアブルデータファイル17を作成する。プリント条件ファイル16中に数値編集を指定している場合は,図12に記載の通りに変換し,バリアブルデータファイル17中に記録する。
【0060】図14は,バリアブルデータファイル17のフォーマットと実施例を示す図である。データ編集処理部25で作成するバリアブルデータは,流し込み枠に入る必要最小源のデータで構成されるものとし,各流し込み枠どうしの識別を行うキャラクタはカンマを使用する。このカンマセパレートの第1フィールドは,レコードシーケンス番号となる。カンマセパレートの第2フィールド以降は,印刷するバリアブルデータを意味し,テキストデータか画像データかの識別は,枠の属性設定側で指定する。画像データは画像ファイル名をそのまま使用する。」

H 図14として,以下の図が示されている。



上記図には,バリアブルデータファイルとして,個人毎(【実施例の場合】の一番左端の番号)に,各流し込み枠番号(「V0001」?「V0005」)に対して,可変情報ファイル中の属性情報,及び,データ値.epsをファイル名として設定された画像,が印刷すべき情報として指定された態様が示されている。

J「【0062】次に,図1に戻って流し込み処理に入る。流し込み処理部26は,レイアウト指示ファイル12,画像情報ファイル11,面付け条件ファイル13,納品単位情報ファイル14,及びバリアブルデータファイル17を使用して,各面の論理ページにおけるそれぞれの流し込み位置に,画像もしくはテキストデータを所定の書式で流し込むとともに,面構成に応じて印刷する順番に並び替え,管理連番,ページ連番,山番号を生成して面付け条件ファイルに従って所定の位置に流し込むデータを作成する。」

K「【0073】流し込み処理部26は,流し込み枠の属性を参照して,テキストの場合は,バリアブルデータファイル17中のテキストデータを読み,レイアウト指示ファイル12に設定されている書体,文字サイズ,文字色,貼り込み角度に基づいて流し込む。また,画像の場合は,バリアブルデータファイル17中に指定されている画像ファイル名の画像をレイアウト指示ファイル12に設定されている揃え位置に従って流し込み処理を行う。
【0074】それぞれバリアブルデータファイル17のデータを1レコードずつ処理し,各個人に応じた紙面データを作成してゆく。フルカラープリンタ29に対するインターフェイスがポストスクリプト言語であれば,流し込み処理は,各個人に応じた紙面データをポストスクリプトによって生成する。
【0075】流し込み処理部26からの各個人の紙面データは,印刷用データハンドリング部28に出力され,印刷用データハンドリング部28は,各個人に応じた印刷紙面データをフルカラープリンタ29に送信し,フルカラープリンタ29は,個人属性に応じた印刷媒体を出力することになる。この印刷媒体は,出力後に,加工製本機30を通すことによって,パーソナルカタログやパーソナルメール等の媒体に加工される。」

以下に,上記引用文献1の記載事項について検討する。

ア.引用文献1に記載の発明は,上記Aの請求項1に記載されているごとく「可変プリントシステム」であるところ,上記Bの「本発明は,コンピュータを利用して,ダイレクトメール,請求書等の個々の顧客に適した可変情報を印刷した帳票媒体を提供する可変プリントシステム」との記載から,上記「可変プリントシステム」が「コンピュータを利用して,ダイレクトメール,請求書等の個々の顧客に適した可変情報を印刷した媒体を提供する」ものであることがよみとれる。
したがって,引用文献1には,
“印刷媒体にプリントすべき画像情報を記憶する画像情報ファイル,複数の個人に関する可変情報を記憶する可変情報ファイル,前記可変情報ファイルの個々のデータを印刷媒体にプリントするデータに変換する条件を指示するプリント条件情報を記憶するプリント条件ファイルを備えた記憶手段と,
前記可変情報ファイルの個々のデータを前記プリント条件情報に基づいてプリント用に編集するデータ編集処理手段と,
プリント内容のレイアウトを指示するレイアウト指示情報を生成するレイアウト指示手段と,
前記レイアウト指示情報に基づいて,前記データ編集処理手段で編集された個々のデータ及び前記画像情報を流し込み位置に流し込むことにより,印刷可能な状態にする流し込み手段と,を含む,
コンピュータを利用して,ダイレクトメール,請求書等の個々の顧客に適した可変情報を印刷した媒体を提供する可変プリントシステム”が記載されていると言える。

イ.上記“前記可変情報ファイルの個々のデータを前記プリント条件情報に基づいてプリント用に編集するデータ編集処理手段”に関し,
上記“可変情報ファイル”とは,上記“記憶手段”に関して記載のとおり“複数の個人に関する可変情報を記憶”したものであり,
また,上記Gに「データ編集処理部25では,可変情報ファイル15とプリント条件ファイル16を利用して,可変情報ファイル15中の先頭から1レコードずつ処理してゆき,プリント条件ファイル16に応じて,必要なデータを抽出/変換して,各個人に応じて印字すべき情報を作成してゆき,バリアブルデータファイル17を作成する。」との記載があり,上記「プリント条件ファイル」は“プリント条件情報”を“記憶”したものであることから,
引用文献1には,“可変プリントシステム”が,“可変情報ファイルとプリント条件ファイルに記憶されたプリント条件情報を利用して,複数の個人に関する可変情報を記憶した前記可変情報ファイルの個々のデータを,先頭から1レコードずつ処理してゆき,プリント条件情報に応じて,必要なデータを抽出/変換して,各個人に応じて印字すべき情報であるバリアブルデータファイルを作成するデータ編集処理手段”を含むことがよみとれる。

また,上記Cの「可変情報ファイル15は,郵便番号,住所,氏名,年齢,商品選別フラグ,金額等の属性情報が,各顧客や消費者毎に収録されるファイルである。」との記載から,上記“可変情報ファイルは,郵便番号,住所,氏名,年齢,商品選別フラグ,金額等の属性情報が,各顧客や消費者毎に収録されるファイルであ”ることがよみとれる。

また,上記Cに「各個人毎に,可変情報ファイル中の何を,どういう条件の場合に,どう変換して出力するか等のプリント条件情報」との記載があるとおり,上記“プリント条件情報は,各個人毎”の“出力”に係る条件情報であることがよみとれるが,
当該“プリント条件情報”を指定するための仕様書についての上記Dの【0039】の記載,その際の画像の設定についての上記Dの【0041】「流し込み枠の設定の仕方・・・画像を選択し・・・た場合には,・・・データ値.epsとしてファイル名を記憶する。」との記載,当該仕様書による指定を反映したプリント条件ファイルの実施例についての上記Eの記載,及び,上記Fに示された,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の属性情報,並びに,個人の性別やポイント数に応じて決定される,データ値.epsをファイル名として設定された異なる画像,をそれぞれ印刷するための条件が指定されたプリント条件ファイルの態様から,
上記“プリント条件情報は,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の郵便番号,住所,及び,氏名等の属性情報,並びに,個人の性別やポイント数に応じて決定される,データ値.epsをファイル名として設定された異なる画像,をそれぞれ印刷するための条件が指定されたものであ”ることがよみとれる。

また,上記Gの「各個人に応じて印字すべき情報を作成してゆき,バリアブルデータファイル17を作成する」,「図14は,バリアブルデータファイル17のフォーマットと実施例を示す図・・・カンマセパレートの第2フィールド以降は,印刷するバリアブルデータを意味し,テキストデータか画像データかの識別は,枠の属性設定側で指定する。画像データは画像ファイル名をそのまま使用する。」との記載や,上記Hに示された,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の属性情報,及び,データ値.epsをファイル名として設定された画像,が印刷すべき情報として指定されたバリアブルデータファイルの態様から,上記“バリアブルデータファイルは,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の属性情報,及び,データ値.epsをファイル名として設定された画像,が印刷すべき情報として指定されたものであ”ることがよみとれる。

これらを合わせると,引用文献1には,“可変プリントシステム”が,
“可変情報ファイルとプリント条件ファイルに記憶されたプリント条件情報を利用して,複数の個人に関する可変情報を記憶した前記可変情報ファイルの個々のデータを,先頭から1レコードずつ処理してゆき,プリント条件情報に応じて,必要なデータを抽出/変換して,各個人に応じて印字すべき情報であるバリアブルデータファイルを作成するデータ編集処理手段であり,
前記可変情報ファイルは,郵便番号,住所,氏名,年齢,商品選別フラグ,金額等の属性情報が,各顧客や消費者毎に収録されるファイルであり,
前記プリント条件情報は,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の郵便番号,住所,及び,氏名等の属性情報,並びに,個人の性別やポイント数に応じて決定される,データ値.epsをファイル名として設定された異なる画像,をそれぞれ印刷するための条件が指定されたものであり,
前記バリアブルデータファイルは,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の属性情報,及び,データ値.epsをファイル名として設定された画像,が印刷すべき情報として指定されたものである,データ編集処理手段”を含むことが記載されているといえる。

ウ.上記“前記レイアウト指示情報に基づいて,前記データ編集処理手段で編集された個々のデータ及び前記画像情報を流し込み位置に流し込むことにより,印刷可能な状態にする流し込み手段”に関し,
上記Kの「流し込み処理部26は,・・・画像の場合は,バリアブルデータファイル17中に指定されている画像ファイル名の画像をレイアウト指示ファイル12に設定されている揃え位置に従って流し込み処理を行う」,「それぞれバリアブルデータファイル17のデータを1レコードずつ処理し,各個人に応じた紙面データを作成してゆく・・・インターフェイスがポストスクリプト言語であれば,流し込み処理は,各個人に応じた紙面データをポストスクリプトによって生成する」との記載から,
引用文献1には,“可変プリントシステム”が,“バリアブルデータファイル中に指定されている画像ファイル名の画像をレイアウト指示ファイルに設定されている揃え位置に従って流し込み処理を行うものであり,バリアブルデータファイルのデータを1レコードずつ処理し,各個人に応じた紙面データをポストスクリプトによって生成する,流し込み手段”を含むことが記載されているといえる。

エ.上記Kの「流し込み処理部26からの各個人の紙面データは,印刷用データハンドリング部28に出力され,印刷用データハンドリング部28は,各個人に応じた印刷紙面データをフルカラープリンタ29に送信し,フルカラープリンタ29は,個人属性に応じた印刷媒体を出力することになる。」との記載から,
引用文献1には,“可変プリントシステム”が,“前記流し込み手段からの各個人の紙面データを受け取る印刷用データハンドリング部と,
前記印刷用データハンドリング部からの,各個人に応じた印刷紙面データを受け取り,印刷媒体を出力するフルカラープリンタ”を含むことが記載されているといえる。

以上,ア?エで指摘した事項から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

印刷媒体にプリントすべき画像情報を記憶する画像情報ファイル,複数の個人に関する可変情報を記憶する可変情報ファイル,前記可変情報ファイルの個々のデータを印刷媒体にプリントするデータに変換する条件を指示するプリント条件情報を記憶するプリント条件ファイルを備えた記憶手段と,
前記可変情報ファイルと前記プリント条件ファイルに記憶された前記プリント条件情報を利用して,複数の個人に関する可変情報を記憶した前記可変情報ファイルの個々のデータを,先頭から1レコードずつ処理してゆき,プリント条件情報に応じて,必要なデータを抽出/変換して,各個人に応じて印字すべき情報であるバリアブルデータファイルを作成するデータ編集処理手段であり,
前記可変情報ファイルは,郵便番号,住所,氏名,年齢,商品選別フラグ,金額等の属性情報が,各顧客や消費者毎に収録されるファイルであり,
前記プリント条件情報は,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の郵便番号,住所,及び,氏名等の属性情報,並びに,個人の性別やポイント数に応じて決定される,データ値.epsをファイル名として設定された異なる画像,をそれぞれ印刷するための条件が指定されたものであり,
前記バリアブルデータファイルは,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の属性情報,及び,データ値.epsをファイル名として設定された画像,が印刷すべき情報として指定されたものである,データ編集処理手段と,
プリント内容のレイアウトを指示するレイアウト指示情報を生成するレイアウト指示手段と,
前記バリアブルデータファイル中に指定されている画像ファイル名の画像をレイアウト指示ファイルに設定されている揃え位置に従って流し込み処理を行うものであり,前記バリアブルデータファイルのデータを1レコードずつ処理し,各個人に応じた紙面データをポストスクリプトによって生成する,流し込み手段と,
前記流し込み手段からの各個人の紙面データを受け取る印刷用データハンドリング部と,
前記印刷用データハンドリング部からの,各個人に応じた印刷紙面データを受け取り,印刷媒体を出力するフルカラープリンタと,を含む,
コンピュータを利用して,ダイレクトメール,請求書等の個々の顧客に適した可変情報を印刷した媒体を提供する可変プリントシステム。

2)引用文献2に記載されている事項

本願の第1国出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された,特開平11-134362号公報(平成11年5月21日出願公開,以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

L「【要約】・・・(中略)・・・
【解決手段】HTMLテンプレートファイル15には,ユーザへの表示内容と,データ置換部分とを記したテンプレートを格納する。データベース13は,ユーザ毎のデータを格納する。データ置換ファイル17は,データ置換部分に対応した文字列を格納する。データ表示制御部12aは,特定のユーザへの表示を行う場合は,HTMLテンプレートファイル15より,ユーザに対応したテンプレートを取り出し,これにデータベース13中のユーザのデータを合成する。データ置換部18は,データ表示制御部12aで合成した表示内容中に,データ置換部分の指定があった場合は,その指定に基づきデータ置換ファイル17より対応する文字列を取り出し,置換部分に当てはめる。」

(4-3)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

あ.引用発明である「可変プリントシステム」は,「紙面データをポストスクリプトによって生成する」生成システムであり,本願補正発明である「生成システム」に相当する。

い.本願補正発明の「ダイナミック・ドキュメント」は,発明の詳細な説明における【0005】の記載「・・・本発明の一実施形態によれば,ダイナミック・ドキュメント(動的文書)と宛先リストとからVIPDL出力ストリームを生成する生成システムが提供される。・・・」や,【0030】の記載「デザインとデータとを関連づけ,ルールをも提示する命令の例示的な表現については,・・・適当なものであれば,どのような識別システムも使用可能であり,上記の特許は適当なシステムの一例であることに留意されたい。このため,本発明はこの特定の表現に限定されない。デザイン,データ,ルール情報を適切に提供する表現であれば,どのような表現でも使用することができる。以下の「ダイナミック・ドキュメント」という用語は,このようなコード化を含むものと定義する。」等によれば,「動的文書」であり「デザイン,データ,ルール情報を適切に提供する表現」に対応するものであるといえ,上位概念において,プリントに係る動的情報データであるといえることから,引用発明の「個人毎」の「各流し込み枠番号」,「可変情報ファイル中の郵便番号,住所,及び,氏名等の属性情報」,「画像」「印刷するための条件」等の情報を有する「プリント条件情報」と,プリントに係る動的情報データである点で共通し,
また,引用発明の「可変情報ファイル」に含まれる「郵便番号,住所,氏名」は宛先に係る情報といえることから,引用発明の当該「可変情報ファイル」は,本願補正発明の「宛先リスト」に相当し,
また,引用発明の「印刷紙面データ」と,本願補正発明の「VIPDL出力ストリーム」とは,ともに上位概念において,“出力データ”である点で共通することから,
引用発明の「プリント条件情報」と「可変情報ファイル」とから「印刷紙面データ」を生成する「可変プリントシステム」と,本願補正発明の「ダイナミック・ドキュメントと宛先リストとからVIPDL出力ストリームを生成する生成システム」とは,“プリントに係る動的情報データと宛先リストとから出力データを生成する生成システム”である点で共通すると言える。

う.本願補正発明の「データ・イテレータ」は,発明の詳細な説明の【0005】における記載「・・・宛先リストを介して一度に1つのレコードを繰り返し,そのレコードに関するダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクト用の値を計算するデータ・イテレータと,・・・」等によれば,「繰り返し」値を計算する構成に対応するものといえ,一方,引用発明の「データ編集処理手段」も,「可変情報ファイルの個々のデータを,先頭から1レコードずつ処理して」いることから,繰り返し処理を行う構成であり,両者は対応する構成であるといえる。

そこで,両者の詳細な構成について対比すると,
まず,本願補正発明の「データ・イテレータ」が計算の対象とする「ダイナミック・オブジェクト」は,発明の詳細な説明における【0038】の記載「・・・ ダイナミック・ドキュメント12のルールを使用して,選択したレコードが表す宛先に関する各ダイナミック・オブジェクトの値を計算する・・・」や,【0064】の記載「(和集合の最小化)たとえば,宛先レコードから導出した情報が,書籍の好みを示すことについて検討する。この好みに基づいて,「書籍」ビューのいくつかのレコードが取り出される。このような書籍レコードのそれぞれは,たとえば,書籍名と,表紙の絵と,書籍の解説と,書籍の著者と,書籍との価格を含む,1組のダイナミック・オブジェクトを決定する。このようなダイナミック・オブジェクトの値は,単にこれらの属性に書籍レコードを投影(関係代数で定義した通り)し,属性の値を対応するコンテンツ・オブジェクトに割り当てるだけで導出される。」,及び,【0065】の記載「次に,書籍ビューが,いくつかの書籍関連テーブル上の何らかの和集合の結果であると想定する(たとえば,価格-<id,$>,著者-<id,名前>,解説-<id,テキスト>,表紙-<id,画像>,など)。各ダイナミック・オブジェクトごとにこの和集合を実行することを回避することは,非常に有益なことになるだろう。」等によれば,レコード毎に変化するオブジェクトに対応するものといえる。同様に,本願補正発明の「値の計算」は,「計算される値を取得することを含」むことから,上位概念において,値の“取得”といえるものである。
一方,引用発明の「データ編集処理手段」が利用する「プリント条件情報」において指定された,「個人の性別やポイント数に応じて決定される,データ値.epsをファイル名として設定された異なる画像」を「印刷するための条件」とは,「データ値.epsをファイル名として設定」された「異なる画像」を「個人の性別やポイント数に応じて」「決定」するためのものでもあり,そして,当該「異なる画像」はレコード毎に変化するオブジェクトであって,本願補正発明の「ダイナミック・オブジェクト」に相当すること,及び,当該「画像」を「条件」により「決定」し,「必要なデータ」として「抽出/変換し」,「データ値.epsをファイル名として」特定して「各流し込み枠番号に対」する「印刷すべき情報」である「バリアブルデータファイル」の作成に用いるという一連の処理も,上位概念において,画像がページ・レイアウトに配置されるためのものであるデータ値の“取得”に他ならないこと,を考慮すれば,
引用発明の「前記可変情報ファイルと前記プリント条件ファイルに記憶された前記プリント条件情報を利用して,複数の個人に関する可変情報を記憶した前記可変情報ファイルの個々のデータを,先頭から1レコードずつ処理してゆき,プリント条件情報に応じて,必要なデータを抽出/変換して,各個人に応じて印字すべき情報であるバリアブルデータファイルを作成するデータ編集処理手段であり,
前記可変情報ファイルは,郵便番号,住所,氏名,年齢,商品選別フラグ,金額等の属性情報が,各顧客や消費者毎に収録されるファイルであり,
前記プリント条件情報は,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の郵便番号,住所,及び,氏名等の属性情報,並びに,個人の性別やポイント数に応じて決定される,データ値.epsをファイル名として設定された異なる画像,をそれぞれ印刷するための条件が指定されたものであり,
前記バリアブルデータファイルは,個人毎に,各流し込み枠番号に対して,可変情報ファイル中の属性情報,及び,データ値.epsをファイル名として設定された画像,が印刷すべき情報として指定されたものである,データ編集処理手段」と,
本願補正発明の「前記宛先リストから複数レコードを一度に1レコードずつ選択し,該選択したレコードに対して,前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクトについての値を,レコード毎に計算するデータ・イテレータであって,複数の前記ダイナミック・オブジェクトについての値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連付けられるデータベース・クエリを発生すること,及び前記データベース・クエリにおける結果にルールを適用して,計算される値を取得することを含み,前記計算される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである,データ・イテレータ」とは,
“前記宛先リストから複数レコードを一度に1レコードずつ選択し,該選択したレコードに対して,前記プリントに係る動的情報データ内のダイナミック・オブジェクトについての値を,レコード毎に取得するデータ・イテレータであって,前記取得される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである,データ・イテレータ”である点で共通すると言える。

え.本願補正発明の「ドキュメント・インスタンシエータ」は,「ドキュメント・インスタンスを作成する」構成であるが,当該「ドキュメント・インスタンス」とは,発明の詳細な説明の【0035】における記載「・・・プリント文書の場合のように,VIPDL出力ストリーム18が単一ストリームから構成されるのではなく,このようなページのそれぞれは,その文書の1つのインスタンスを表している。」等によれば,「文書」の「ページ」により表されるもの,が対応しているといえ,上記「ドキュメント・インスタンシエータ」も,「文書」の「ページ」により表されるものである「ドキュメント・インスタンス」を「作成する」構成に対応するものであるといえる。
一方,引用発明の「流し込み手段」は,「バリアブルデータファイル中に指定されている画像ファイル名の画像をレイアウト指示ファイルに設定されている揃え位置に従って流し込み処理を行」うことで「紙面データ」を生成する手段を有するものであり,当該「紙面データ」は「ダイレクトメール,請求書等」に当たるものであって,これらをページを有する文書として構成することは自明な事項であるから,上記「紙面データ」が,「文書」の「ページ」により表されるもの,すなわち,「ドキュメント・インスタンス」に相当する構成を有するとすることも,自明の範囲内であり,よって,引用発明の上記「流し込み手段」は,「ドキュメント・インスタンス」を作成する「ドキュメント・インスタンシエータ」に相当する構成であるといえる。
したがって,引用発明の「流し込み手段」における「前記バリアブルデータファイル中に指定されている画像ファイル名の画像をレイアウト指示ファイルに設定されている揃え位置に従って流し込み処理を行うものであり,前記バリアブルデータファイルのデータを1レコードずつ処理し,各個人に応じた紙面データを」生成するための手段と,本願補正発明の「前記ページ・レイアウトと前記値に関連する前記ダイナミック・オブジェクトとの各集合に基づいて,前記レコードごとにドキュメント・インスタンスを作成するドキュメント・インスタンシエータ」とは,“前記ページ・レイアウトと前記値に関連する前記ダイナミック・オブジェクトとに基づいて,前記レコードごとにドキュメント・インスタンスを作成するドキュメント・インスタンシエータ”である点で共通すると言える。

お.本願補正発明の「出力ジェネレータ」は,「ドキュメント・インスタンスのレンダリングを指定するコードを生成する」構成であるが,当該「コード」とは,発明の詳細な説明の【0038】における記載「・・・ ・このドキュメント・インスタンスのレンダリングを指定するコード(たとえば,PostScript,PPML,HTMLなど)を生成する・・・」等によれば,「ポストスクリプト」がそれに対応したものとして挙げられており,上記「出力ジェネレータ」は「ドキュメント・インスタンス」の「ポストスクリプト」を含む「コード」を「生成する」構成に対応するものといえる。
一方,引用発明の「流し込み手段」も「各個人に応じた紙面データを」「ポストスクリプトによって生成」していることから,「紙面データ」のための「ポストスクリプト」コードを「生成」するための手段を有しているといえ,また,当該手段は,上記え.で述べた「流し込み手段」における「紙面データを」生成するための手段と連携して動作するものといえる。
したがって,引用発明の「流し込み手段」における「紙面データ」のための「ポストスクリプト」コードを「生成」するための手段と,本願補正発明の「前記ドキュメント・インスタンシエータと連係して動作する出力ジェネレータであって,前記ドキュメント・インスタンスのレンダリングを指定するコードを生成する出力ジェネレータ」とは,“前記ドキュメント・インスタンシエータと連係して動作する出力ジェネレータであって,前記ドキュメント・インスタンスのコードを生成する出力ジェネレータ”である点で共通すると言える。

か.本願補正発明の「マージ・コンポーネント」は,「出力ジェネレータの出力から前記VIPDL出力ストリームを生成する」構成であるが,発明の詳細な説明の【0050】における記載「パイプラインの第3のステップは,マージ・プロセス36によって実行されるが,このプロセスもバッファおよび情報の可用性によってパイプライン化される。・・・これは,定義辞書34に含まれる定義をマージし,VIPDL出力ストリーム18の先頭に定義セクションを生成する。次に,これは,マージしたブックレット・セクション32のストリームを付加する。・・・」や,【0055】における記載「・・・マージ・プロセッサ36Aは,単一パイプライン21の一部でなく,むしろ,ブックレット・セクション32と定義辞書34とのすべての対から,1つの整合性のあるVIPDL出力ストリーム18へのマージを処理する。」等によれば,出力データのマージ処理を行う構成に対応したものであり,上位概念において,出力データ生成処理構成,といえるものである。
一方,引用発明の「流し込み手段」によって「ポストスクリプトによって生成」された「紙面データ」から,「印刷用データハンドリング部」によって「フルカラープリンタ」に送信するための「各個人に応じた印刷紙面データ」を生成するための一連の処理は,出力データ生成処理といえるものであり,そして当該処理を実行するための手段を有しているといえる。
したがって,引用発明の「流し込み手段」によって「ポストスクリプトによって生成」された「紙面データ」から,「印刷用データハンドリング部」によって「フルカラープリンタ」に送信するための「各個人に応じた印刷紙面データ」を生成する一連の処理を実行するための手段と,本願補正発明の「前記出力ジェネレータの出力から前記VIPDL出力ストリームを生成するマージ・コンポーネント」とは,“前記出力ジェネレータの出力から前記出力データを生成する出力データ生成処理構成”である点で共通すると言える。

以上から,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)

プリントに係る動的情報データと宛先リストとから出力データを生成する生成システムであって,該システムは,
前記宛先リストから複数レコードを一度に1レコードずつ選択し,該選択したレコードに対して,前記プリントに係る動的情報データ内のダイナミック・オブジェクトについての値を,レコード毎に取得するデータ・イテレータであって,前記取得される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである,データ・イテレータと,
前記ページ・レイアウトと前記値に関連する前記ダイナミック・オブジェクトとに基づいて,前記レコードごとにドキュメント・インスタンスを作成するドキュメント・インスタンシエータと,
前記ドキュメント・インスタンシエータと連係して動作する出力ジェネレータであって,前記ドキュメント・インスタンスのコードを生成する出力ジェネレータと,
前記出力ジェネレータの出力から前記出力データを生成する出力データ生成処理構成とを含む生成システム。

(相違点1)
プリントに係る動的情報データについて,本願補正発明が「ダイナミック・ドキュメント」としているのに対し,
引用発明は,「プリント条件情報」が「ドキュメント」に当たるかは明確でない点。

(相違点2)
システムによって生成される出力データについて,本願補正発明が「VIPDL出力ストリーム」としているのに対し,
引用発明は,そのような構成になっていない点。

(相違点3)
データ・イテレータによる値の取得について,本願補正発明が「計算」によって実行しているのに対し,
引用発明が,「計算」によって行っているかについては言及されていない点。

(相違点4)
値の「計算」を,本願補正発明が「複数」のダイナミック・オブジェクトについて実行しているのに対し,
引用発明は,可変である「画像」オブジェクトについてデータ値の取得を行っているが,それがレコード毎に「複数」であるかは言及されていない点。

(相違点5)
値の「計算」が,本願補正発明が「少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連付けられるデータベース・クエリを発生すること,及び前記データベース・クエリにおける結果にルールを適用して,計算される値を取得することを含」でいるのに対し,
引用発明は,そのような構成になっていない点。

(相違点6)
ドキュメント・インスタンシエータの作成処理について,本願補正発明が,ページ・レイアウトと前記値に関連する前記ダイナミック・オブジェクトとの「各集合」に基づいているのに対し,
引用発明は,「流し込み手段」における「紙面データ」の生成を,「画像ファイル名の画像」と「レイアウト指示ファイル」に基づいて行っているものの,それが「各集合」を成しているかは明かでない点。

(相違点7)
出力ジェネレータのコード生成について,本願補正発明が,「ドキュメント・インスタンスのレンダリングを指定する」コードを生成しているのに対し,
引用発明は,そのような構成であるかは言及されていない点。

(相違点8)
出力データ生成処理構成について,本願補正発明が,「マージ・コンポーネント」であるのに対し,
引用発明は,そのような構成になっていない点。

(4-4)判断

上記相違点1?8について検討する。

(4-4-1)相違点1について
引用文献1における,出力データ生成のもととなる「プリント条件情報」自体が「ドキュメント」と呼べるものであるかは明確でないが,当該「プリント条件情報」を作成するための「仕様書」は,上記Dの記載によれば,「プリント条件情報」として設定する内容が明記されたものであって,ドキュメントと呼べるものであることから,上記「プリント条件情報」が当該「仕様書」をもとに作成されたとの事項に接した当業者であれば,引用発明における「プリント条件情報」自体を「ドキュメント」に相当する構成とすること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当然の如く想到する構成に過ぎない。
よって,相違点1は格別なものではない。

(4-4-2)相違点2及び相違点8について
本願補正発明の「VIPDL出力ストリーム」とは,発明の詳細な説明の【0032】における記載「・・・VIPDL出力ストリーム18は,後述する「可変情報ページ記述言語」(VIPDL)で作成された出力ストリームである。・・・」や,【0033】における記載「本発明の一態様では,出力は,VIPDLで生成される。プリント生成システム用の例示的な言語は,VPS(可変プリント指定)(CreoScitex社から入手可能)とPPML(個人化プリント・マークアップ言語)(米国ニューヨーク州ウェスト・ヘンリエッタのPrint on Demand Initiative社から入手可能)である。ウェブ用の例示的な言語は,HTMLである。したがって,本発明では,レンダリング・システム向けの適切なVIPDLを使用し,どのオリジナル・デザイン・システムからクロスメディア生成も可能にする。・・・」によれば,「可変情報ページ記述言語」であり「VPS」や「HTML」が対応するものであるといえる。
それに対し,電子データに基づく出力データを可変情報ページ記述言語(具体的な例として,VPSやHTML)により生成することは,引用文献2の上記Lの記載や,以下のとおり,国際公開00/02158号(2000年1月13日国際公開。以下,「周知文献1」という。)に記載されているように,周知の技術手段である。

周知文献1(国際公開00/02158号)には,次のとおり記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
M「According to a preferred embodiment of the present invention, pages are specified in terms of pre-defined graphical building blocks - called elements. In the description and claims of the present invention which follow, the term "page" is used both to describe a single page and to describe a flat of pages. These elements are not restricted in the position they occupy in the page's plane, nor must they adhere to any design constraints (e.g., no overlap between elements etc.). Page description languages (PDLs) that explicitly describe pages in terms of some unique data for the specific page and an assembly of pre-defined elements are commercially available. Examples include the Variable Printing Specification (VPS) Language from Scitex Corporation of Herzliya, Israel and PostScript Level 2 from Adobe Systems Incorporated of California, USA.」(10頁5行?15行)
(当審訳:
本発明の好ましい実施形態によれば,ページは,事前に定義されたグラフィカルなビルディングブロック単位-要素と呼ばれる-で指定されている。以下の説明及び本発明の特許請求の範囲において,「ページ」という用語は,単一のページを記述するためとページの平面を記述するための両方に使用される。これらの要素は,それらがページの平面上を占めたり,また,それらがいくつかのデザイン上の制約(例えば,要素間のオーバーラップ等)に準拠している必要がある,というような状況に制限されるものではない。明示的に特定のページおよび事前に定義された要素の組み立てのための,いくつかのユニークなデータの面でページを記述するページ記述言語(PDL)が,商業的に利用可能となっている。例としては,ヘルズリヤの属するイスラエルのサイテックス・コーポレーションからバリアブル印刷仕様(VPS)言語や,米国カリフォルニア州のAdobe Systems Incorporated(アドビシステムズ社)からPostScriptレベル2が,含まれている。)

また,当該周知技術である,可変情報ページ記述言語によってページを指定する際には,必然的に,データに対し,事前に定義された要素を付加する形で行うこととなり,これはマージ処理といえるものであり,
また,出力データを出力ストリームとして生成することも,周知手段といえる。
してみると,引用発明における出力データとして,上記周知の技術手段を採用することで,可変情報ページ記述言語により生成し,よってVIPDL出力ストリームに相当する構成とし,それを「マージ・コンポーネント」によって生成するようにすること,すなわち,相違点2及び相違点8に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことと認められる。
よって,相違点2及び相違点8は格別なものではない。

(4-4-3)相違点3ないし相違点6について
コンピュータを用いたデータ処理において,データ値の取得を何らかの演算処理をもとに行うことは,当業者にとって技術常識であり,また,一般に画像等のオブジェクトを含むドキュメントにおいて,当該オブジェクトを複数とすることは,ドキュメント生成に当たり,必要に応じて決める程度の事項であることを考慮すれば,上記データ値取得のための演算処理や,ページ・レイアウトを伴うドキュメント生成処理を,集合をなす,複数のオブジェクトをもとに行うようにすることに,技術上格別な困難性は認められない。

また,オブジェクトに係るデータ処理のためにデータベース・クエリを発生させ,クエリーの応答結果にもとに判定して,データ値を得ることは,以下のとおり,国際公開99/17539号(1999年4月8日国際公開。以下,「周知文献2」という。),国際公開00/02112号(2000年1月13日国際公開。以下,「周知文献3」という。)に記載されているように,周知の技術手段である。

周知文献2(国際公開99/17539号)には,次のとおり記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
N「Merger 16: Builds the personalization specification file of the job. It uses the templates, page elements, and database queries to build a description of the final print job. The output of the Merger is a personalized job 18. In the above example, the components of the process for building a personalized job are separate. Ideally, there are different people with different areas of expertise building each of the components of the job.」(4頁32行?34行)
(「訳:上記周知文献2の対応ファミリー出願である特表2001-518417号公報の記載。
【0016】
マージャー16:ジョブに関する個人用仕様ファイルを作成する。最終的印刷ジョブの記述を作るために,必要なテンプレート,ページ要素,データベース・クエリを使用する。マージャーの出力は個人用ジョブ18である。
上記例の場合,個人用ジョブを作成するプロセスのコンポーネントは,独立している。ジョブの各コンポーネントを作成するための様々な専門領域の知識を有する,様々な人々がいることが理想である。
ページ要素ライブラリは様々な技術者によって作成されるか,又は様々な要素をスキャンして作成される。各ページ要素に対しては多くの入力ソースがあってもよい。」)

周知文献3(国際公開00/02112号)には,次のとおり記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)
P「B System Overview
Referring now to Fig 1 , there is shown one embodiment of a system in accordance with the present invention The system 100 includes:
A local access device 102 with local memory, computing capability, persistent storage, a display, and a network connection (e.g. a personal computer with a modern connected to an Internet Service Provider or an intelligent television set-top box connected to a cable headend).
One or more TIC enabled data servers 104 on the network which download software and provide generic information (i.e. information not specific to any particular consumer) that can be used to parse transactional or behavioral information in structured documents to construct the personal database, develop the models of the consumer and deliver pointers (or other references) to content alternatives whose selection is based on the consumer models or queries to the personal database.
One or more servers 106a which distribute online transaction reports whose format is known to the system.
One or more servers 106b which distribute content 108 which includes embedded tags and queries. A report server and content server may be one and the same, as illustrated in Fig 1.」(10頁4行?20行)
(「訳:上記周知文献3の対応ファミリー出願である特表2002-520689号公報の記載。
【0021】B.システム概観
次に,図1を参照して,本発明によるシステムの一実施形態を示す。システム100は,
ローカルメモリ,計算能力,永久記憶装置,ディスプレイ,およびネットワーク接続(例えば,インターネットサービスプロバイダに接続されたモデムを備えるパーソナルコンピュータ,またはケーブルヘッドエンドに接続されたインテリジェントテレビセットトップボックス)を有するローカルアクセス装置102と,
ソフトウェアをダウンロードし,構造化文書におけるトランザクション情報または行動情報をオペランド解析するために使用することのできる全般的な情報(すなわち,いずれの特定の消費者に指定しない情報を提供して,個人データベースを構築し,消費者のモデルを作成し,かつポインタ(または他のリファレンス)を,消費者モデルまたは個人データベースへのクエリに基づいて選択されるコンテンツ代替に配信する,ネットワーク上の1つまたは複数のTIC可能なデータサーバ104と,
フォーマットがシステムに既知であるオンライントランザクションリポートを配信する1つまたは複数のサーバ106aと,
埋め込みタグおよびクエリを含むコンテンツ108を配信する1つまたは複数のサーバ106bと,
を備え,図1に示すように,リポートサーバとコンテンツサーバとは,1つの同じものであってもよい。」)

してみると,引用発明における値の取得及び紙面データの生成において,上記周知技術を適用し,ダイナミック・オブジェクトについての値の計算を,複数の前記ダイナミック・オブジェクトについて行うこととし,当該値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連付けられるデータベース・クエリを発生すること,及び前記データベース・クエリにおける結果にルールを適用して,計算される値を取得することを含むこととするとともに,ページ・レイアウトと前記値に関連する前記ダイナミック・オブジェクトとの各集合に基づいて,ドキュメント・インスタンスを作成するものとすること,すなわち,相違点3ないし相違点6に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことと認められる。

よって,相違点3ないし相違点6は格別なものではない。

(4-4-4)相違点7について
ドキュメントデータをプリントまたは表示するために,レンダリングに係る処理を行うことは,文献を挙げるまでもなく画像処理技術の分野における周知の技術であり,引用発明における出力データのためのコードを,レンダリングを指定するよう生成すること,すなわち,相違点7に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

よって,相違点7は格別なものではない。

(4-4-5)小括

上記で検討したごとく,相違点1ないし相違点8は格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

したがって,本願補正発明は,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)本件補正についての結び

上記で検討した通り,本願補正発明は,特許法第36条第6項第2号,及び第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願に係る発明について

平成23年11月14日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願に係る発明は,上記「2.」,「(1)」において,補正前の請求項(以下,これを,「本願の請求項」という)として引用した事項により特定されるものである。


4.原審の拒絶理由
原審による,平成22年8月16日付けの拒絶理由は,概略,以下のとおりである。

『 理 由

1.この出願は,下記の点で特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
・・・<省略>・・・

2.この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1)請求項:1-7
請求項1には,「レコードに関する前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクト用の値を計算する」と記載されているが,レコードに関するどのような値をどのように計算するのか明確でない。

2)・・・<省略>・・・

3)・・・<省略>・・・

3.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項:1-5,7
・引用文献:1,2
・備考
引用文献1には,可変情報ファイルとプリント条件ファイルを利用して,可変情報ファイル中の先頭から1レコードずつ処理してゆき,プリント条件ファイルに応じてデータを抽出/変換して,各個人に応じて印字すべき情報を作成してゆき,バリアブルデータファイルを作成し,さらに,レイアウト指示ファイルと画像情報ファイルを利用して,論理ページにおけるそれぞれの流し込み位置に画像やテキストデータを流し込むデータを作成する技術が記載されている(第0059及び0062段落)。
VIPDL出力ストリームの形式として,どのような形式を採用するかは,当業者が必要に応じて適宜選択し得たことである。
なお,引用文献2には,HTML形式の表示データを生成する技術が記載されている(第0006及び0014段落)。

・・・<省略>・・・

拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

引 用 文 献 等 一 覧

1.特開平11-272653号公報
2.特開平11-134362号公報 』


5.当審の判断
上記,原審の拒絶理由で指摘された点のうち,理由2.1),及び,理由3について,以下に検討する。

(1)理由2.1)(特許法第36条第6項第2号)について

本願の請求項1における「前記レコードごとに前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクトについての値を計算する」との記載は,補正前に「レコードに関する前記ダイナミック・ドキュメント内の各ダイナミック・オブジェクト用の値を計算する」とあったものを補正したものであるが,当該記載では依然として,レコードに関するどのような値を,どのように計算するのか,明確でない。
上記「計算する」との記載に関連して,同請求項1中に「前記ダイナミック・オブジェクトについての前記値の計算が,少なくとも2つの前記ダイナミック・オブジェクトに関連するデータベース・クエリを発生することを含み,前記計算される値が,各ページ・レイアウトに配置されるためのものである」との記載があるが,当該記載によっても,上記請求項における記載は依然として不明確であり,また,上記「計算する」との記載に関連する,従属する請求項の記載によっても,レコードに関するどのような値を,どのように計算するのか,依然として明確でない。
また,上記「計算する」との記載に関連する,発明の詳細な説明における記載を参酌しても,レコードに関するどのような値を,どのように計算するのか,依然として明確でない。

以上のとおりであるから,本願の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえない。


(2)理由3(特許法第29条第2項)について

本願発明は上記(1)で述べたとおり,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとはいえないが,仮に,本願の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとして,本願の請求項1に係る発明が,特許法第29条2項に規定する要件を満たしているかについて以下に検討する。

(2-1)本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「2.」「(1)」において,補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

(2-2)引用文献等

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献およびその記載事項は,前記「2.」「2-2.」の「(4-2)」に記載したとおりである。

(2-3)対比・判断

本願補正発明は,本願発明に対し前記「2.」「(2)」で述べた限定的減縮をしたものであるから,本願発明は,上記本願補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当する。

そうすると,本願発明の構成要件を,全て含み,さらに特定の構成要件に限定要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.」「2-2.」の「(4-4)判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当該引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-4)理由3についてのむすび
以上のとおりであるから,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項に規定する要件を満たしているとはいえない。


6.むすび
以上のとおり,本願の特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,また,本願の請求項1に係る発明は,引用刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は特許法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず,したがって,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-31 
結審通知日 2013-06-03 
審決日 2013-06-18 
出願番号 特願2001-557216(P2001-557216)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 剛萩島 豪辻本 泰隆  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 田中 秀人
長島 孝志
発明の名称 ダイナミック・ドキュメントを効率的に生成するシステムおよび方法  
代理人 末松 亮太  
代理人 富田 博行  
代理人 千葉 昭男  
代理人 上田 忠  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  

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