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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A22C |
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管理番号 | 1281072 |
審判番号 | 不服2012-18391 |
総通号数 | 168 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-09-20 |
確定日 | 2013-11-01 |
事件の表示 | 特願2007- 60854号「手羽中の骨とりハサミ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月28日出願公開、特開2008-194020号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 ・本願発明 本願は、平成19年2月13日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「刃部から柄部を介し握り部とからなる単体を、支点を介して一対形成してハサミとし、支点と握り部の間に手羽中をはさみ、押し下げると2本の骨が露出し、簡単に骨がとれる形状の開口部を設けたことを特徴とする、手羽中の骨とりハサミ。」 2 引用刊行物記載の発明 (1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和59年9月6日に頒布された「実願昭58-10433号(実開昭59-133172号)のマイクロフィルム」(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア)「3 考案の詳細な説明 本考案は、缶をあけたり、栓を抜いたり、木の実を割つたり、ドライバーとしてしようしたりする等いろいろと用途に使用することが出来る便利な調理用鋏において、刃板が汚れて洗う時や研削する時に、刃板を簡単に取り外すことが出来るもので、その構成を添付図面を参照に詳述すると次の通りである。 2枚の刃板(1)を重合し、重合部を軸着し、この刃板(1)や柄部(2)に缶切部(3)、栓抜部(4)、ドライバー部(5)、殻割部(6)等を設けた調理用鋏において、一方の刃板(1)に枢着軸(7)を板面と直角に設け、この枢着軸(7)の先端部に係合杆(8)をT字状に設ける。 図面の係合杆(8)は枢着軸(7)と一体に設けた場合を図示している。 他方の刃板(1)に枢着軸(7)と係合杆(8)が丁度嵌合される嵌合孔(9)と嵌合孔(9)の両側中心部に軸受孔(10)を形成すると共に枢着軸(7)の長さを係合杆(8)を嵌合孔(9)より突出し、係合杆(8)の下面が刃板(1)の外面に係合させる長さに規制する。 図中(11)は被覆コードを剥離する大小の剥離刃である。」(2頁1行?3頁7行、下線は当審にて付加、以下同様) イ)「次に、刃板(1)を組み立てる場合も係合杆(8)を嵌合孔(9)に嵌合突出すると共に一方の刃板(1)を回動させて係合杆(8)の下面で刃板(1)の外面を係合することにより枢着軸(7)が軸受孔(10)に支承されて刃板(1)はスムーズに開閉することが出来る。」(4頁14行?5頁4行) そして、第1図?第3図には、次の事項が示されている。 ウ)「1枚の刃板(1)と1つの柄部(2)が一体に形成され、該柄部(2)は、人が握る握り部分と、刃板と該握り部分をつなぐ柄の部分とからなる。」 エ)「枢着軸(7)と握り部分の間には、殻割部(6)が設けられ、該殻割り部は、開口に対象をはさんで使用するものである。」 上記記載事項ア)及びイ)並びに図示内容ウ)及びエ)を総合すると、引用例1には、 「1枚の刃板(1)と1つの柄部(2)が一体に形成され、 該柄部(2)は、人が握る握り部分と、刃板と該握り部分をつなぐ柄の部分とからなり、一方の刃板(1)の枢着軸が、他方の刃板(1)の軸受け孔(10)に支承され、枢着軸(7)と握り部分の間には、開口に対象をはさんで使用する殻割部(6)が設けられた調理用鋏」 の発明(以下「引用発明1」という。)が示されている。 (2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成5年3月23日に頒布された「実願平3-79452号(実開平5-21682号)のCD-ROM」(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 オ)「【要約】 【目的】 簡単に無傷で手際よく手羽中肉から手羽骨を取り去ることができる。」 カ)「【請求項1】 弾性を有する長方形状の板材の対向辺側に、それぞれ略半円形状の2個の切欠きを設け、この切欠き近傍において上記両短辺が対向するように鈍角状に折り曲げるとともに板材の中央部を弯曲させて上記切欠きを対向させてなり、手羽骨付きの手羽中肉の先端から突出した2本の手羽骨を上記両短辺側の各二つの切欠き間に挾み込み、2本の手羽骨を上記板材の弯曲した方向に押し込みながら上記手羽中肉から2本の手羽骨を分離させ抜き取ることを特徴とする手羽骨除去器具。」 キ)「 【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は、2本の手羽骨付きの手羽中肉から容易かつきれいに手羽骨を分離して抜き取ることができるようにした手羽骨除去器具に関するものである。」 ク)「 【0005】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、刃物により、手羽骨を取り除く場合に、手羽中肉を傷付けることなく、取り除くのは極めて困難であり、しかもその作業に高度な熟練を要するとともに、作業能率も著しく低い。 【0006】 特に、2本の手羽骨を上手に取り除くと、手羽中肉は袋状になることから、例えばこの中に適宜の詰め物を入れ手羽鮫子として加工する場合もあり、このような袋状体を必要とする場合には、より一層の手羽骨取り作業に熟練を要することになる。 【0007】 この考案は、上記の点にかんがみなされたもので、熟練を要することなく、手際よく、しかもきれいに手羽骨を取り除くことができる手羽骨除去器具を得ることを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】 この考案に係る手羽骨除去器具は、弾性を有する長方形状の板材の対向辺側にそれぞれ二つの略半円形状の切欠きを設けるとともに、この切欠きの近傍において短辺側と平行状に鈍角状に折り曲げ、板材の中央部を弯曲させて両短辺側の切欠きを対向させるようにしたものである。 【0009】 【作用】 この考案における手羽骨除去器具は、対向する両短辺側の切欠き間に、手羽中肉から先端が突出した手羽骨を挾んで、手羽骨の反対側から手羽骨を板材の弯曲させた方向に押し込んで、手羽中肉から手羽骨を分離させ抜き取る。 【0010】 【実施例】 以下、この考案の手羽骨除去器具の実施例について図面に基づき説明する。図1はその一実施例の構成を示す外観斜視図である。この図1における1は、たとえばステンレスのような弾性を有する金属製あるいはプラスチック材などのような板材である。 【0011】 この板材1は図2の展開図に示すように、長方形状に形成され、その両方の短辺1A、1B側の中央部の端縁には、それぞれ大小二つの略半円形状の切欠き1aと1b、2aと2bが形成されている。 【0012】 切欠き1aと2aは大きく、切欠き1bと2bは小さく形成されている。これらの切欠き1aと2a、1bと2bの大きさを異ならせたのは、手羽中肉内に内在する手羽骨は太い手羽骨と細い手羽骨の2本が付いているためである。 【0013】 ここで、具体的な数値を挙げると、板材1の重さは50?60g、切欠き1aと2bを合わせて略円形にした場合の径は14mm、切欠き1bと2bを合わせて略円形にした場合の径は10mm程度である。 【0014】 また、板材1の全長は250?350mm、巾は70?100mm、厚さは0.6?1mm位である。これらの寸法は勿論これに限定されるものではなく、手羽骨の大きさによって、適宜寸法を選定すればよいが、手羽骨の寸法に多少、大小があっても、手羽骨を抜き取るときに、手羽骨に加える力を加減することにより、手羽骨に対する挾着力を適宜調整でき、手羽骨取り器具の製造に当っては、同一寸法で量産しても、手羽骨の抜き取り作業に実用上問題はない。」 ケ)「 【0021】 この2本の手羽骨7、8および手羽先9を付けた状態で、手羽骨7、8の先端7a、8aを切欠き1aと2a、1bと2b間に挾み込む。 【0022】 いま、手羽骨8を太い方、手羽骨7を細い方とする。そして、折曲部5を折り曲げることにより、太い方の切欠き1aと2a間に太い方の手羽骨8を挾み込み、切欠き1bと2b間に細い方の手羽骨7を挾み込む。 【0023】 この状態で、折曲部3、4の部分を人指し指と親指とで挾持して圧着すると、切欠き1aと2a、1bと2b間に手羽骨8と7がそれぞれ圧着される。この状態で、手羽骨7、8を手羽先9の方向から折曲部5方向に押せば、手羽中肉6は手羽骨7、8から容易にほぐれるとともに、手羽中肉6は切欠き1aと2a、1bと2b周辺に当接して収縮する。」 上記記載事項オ)?ケ)及び図示内容を総合すると、引用例2には、 「板材の対向辺側にそれぞれ大小二つの略半円形状の切欠きを設け、2本の手羽骨を、該切欠き間に挟み込んで押し込むと、手羽中肉から2本の手羽骨が分離し、簡単に抜き取ることが可能な手羽骨除去器具」 の発明(以下「引用発明2」という。)が示されている。 3 対比 本願発明(前者)と引用発明1(後者)を対比すると、 後者の「刃板(1)」、「柄の部分」、「握り部分」、「鋏」及び「枢着軸(7)」は、その機能に照らして、それぞれ前者の「刃部」、「柄部」、「握り部」、「ハサミ」及び「支点」に相当し、後者の「調理用鋏」と前者の「手羽中の骨とりハサミ」とは、調理用のハサミの点で共通する。 そして、後者の「1枚の刃板(1)と1つの柄部(2)が一体に形成され、該柄部(2)は、人が握る握り部分と、刃板と該握り部分をつなぐ柄の部分とからな」ることは、本願発明の「刃部から柄部を介し握り部とからなる単体」であることに相当し、また、後者の「一方の刃板(1)の枢着軸が、他方の刃板(1)の軸受け孔(10)に支承され」た「調理用鋏」は、「単体を、支点を介して一対形成してハサミと」することに相当する。 さらに、後者の「枢着軸(7)と握り部分の間には、開口に対象物をはさんで使用する殻割部(6)が設けられ」ることと、前者の「支点と握り部の間に手羽中をはさみ、押し下げると2本の骨が露出し、簡単に骨がとれる形状の開口部を設けたこと」とは、支点と握り部の間に機能部分を設けた点で共通する。 したがって両者は、 「刃部から柄部を介し握り部とからなる単体を、支点を介して一対形成してハサミとし、支点と握り部の間に機能部分を設けた調理用のハサミ」 の点で一致し、 (1)支点と握り部の間に設けた機能部分について、前者が「手羽中をはさみ、押し下げると2本の骨が露出し、簡単に骨がとれる形状の開口部」であるのに対し、後者は「開口に対象物をはさんで使用する殻割部(6)」である点、 (2)前者の調理用のハサミが「手羽中の骨とりハサミ」であるのに対し、後者の調理用のハサミが手羽中の骨とりの機能は無い調理用鋏である点、 で相違する。 4 当審の判断 上記相違点(1)及び(2)は、関連しているので、同時に検討することにする。 引用発明2の「板材の対向辺側に」設けた「それぞれ大小二つの略半円形状の切欠き」は、その機能に照らして、本願発明の「簡単に骨がとれる形状の開口部」に相当し、同様に「2本の手羽骨を」「挟み込」むことは「手羽中をはさ」むことに相当し、「2本の手羽骨が分離」することは、「2本の骨が露出」することに相当する。 そして、引用発明2の「2本の手羽骨を」「押し込む」ことと、本願発明の「ハサミ」を「押し下げる」こととは、道具の使用方法の違いということができ、引用発明2の手羽骨除去器具も、手羽中をはさんだ状態で、該器具を押し下げると、2本の骨が露出するよう作用することは明らかである。 したがって、引用発明2は、次のように言い換えることができる。 「手羽中をはさみ、押し下げると2本の骨が露出し、簡単に骨がとれる形状の開口部を設けた手羽中の骨とり器具」 ここで、一般に調理用のハサミは、家庭又は業務用の調理場等において、肉や骨間の筋等の切断を含めた食品の加工又は他の用途で使用されるものであるである。 そして、引用発明2の手羽骨除去器具は、家庭又は業務用の調理場等において、食品である手羽中に対して使用されるものである。 そうすると、引用発明1と引用発明2とは、同じ調理場等において、食品を加工するという同じ目的を持つ点で関連した技術分野に属するということができる。 また、引用発明1の調理用のハサミ(調理用鋏)は、刃部、缶切部、栓抜部、ドライバー部、木の実を割る殻割り部、被覆コードを剥離する剥離刃等、多用途に使用できる機能を備えていること、また、引用発明1に限らず、調理用のハサミにおいて、切断以外の用途に使用できる多種の機能を付加したものは、例示するまでもなく周知であることから、調理用のハサミに、何らかの新しい機能を追加しようと試みることは、当業者にとって通常の発想ということができる。したがって、引用例1又は引用例2に、両者の組合せを明確に示唆する記載がないとしても、両者を組み合わせる動機付けを否定することはできない。 したがって、引用発明1の「開口に対象物をはさんで使用する殻割り部」に代えて、引用発明2の「手羽中をはさみ、押し下げると2本の骨が露出し、簡単に骨がとれる形状のの開口部(切欠き)」を、新しい機能部分とし「手羽中の骨取りハサミ」とすることは、当業者が容易に想到することである。 そして、調理用のハサミに、手羽中の骨とりの機能が追加されたときに、2本の骨をつないでいる筋を切ることは、調理用のハサミに本来備わっている機能であるので、本願発明が、引用発明1及び引用発明2以上の格別な作用・効果を奏するものとは認められない。 5 むすび したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-10 |
結審通知日 | 2013-01-15 |
審決日 | 2013-01-30 |
出願番号 | 特願2007-60854(P2007-60854) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A22C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉山 豊博 |
特許庁審判長 |
竹之内 秀明 |
特許庁審判官 |
長浜 義憲 森川 元嗣 |
発明の名称 | 手羽中の骨とりハサミ |
代理人 | 森本 敏明 |