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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1282510
審判番号 不服2013-3052  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-18 
確定日 2013-12-05 
事件の表示 特願2010-166681「噴射特性データのエラー検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日出願公開、特開2012- 26377〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本件出願は、平成22年7月26日の出願であって、平成24年6月22日付けの拒絶理由通知に対して、同年8月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において同年4月9日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年6月14日付けで回答書が提出されたものである。


【2】平成25年2月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年2月18日付けの手続補正を却下する。


[理 由]
1.本件補正の内容
平成25年2月18日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年8月10日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1を、下記の(a)に示す請求項1へと補正するものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
内燃機関で燃焼させる燃料を噴射するインジェクタに設けられ、前記インジェクタの噴射特性を示す特性データが記憶されたインジェクタ側記憶手段と、
前記インジェクタと離れて配設された前記インジェクタの作動を制御する制御装置に設けられ、前記インジェクタ側記憶手段に記憶された前記特性データと同一の特性データを記憶する制御装置側記憶手段と、を備え、
前記インジェクタ側記憶手段及び前記制御装置側記憶手段の少なくとも一方は、前記特性データと同一の特性データをさらに追加して記憶しており、
前記インジェクタ側記憶手段及び前記制御装置側記憶手段に記憶された3つ以上の前記特性データについて、多数決の原理によりエラーが生じている特性データがいずれであるか特定し、特定された前記エラーが生じている特性データをエラーが生じていない残りの特性データで修復することを特徴とする噴射特性データのエラー検出装置。」(下線部は審判請求人が補正箇所を示したものである。)

(b)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
内燃機関で燃焼させる燃料を噴射するインジェクタに設けられ、前記インジェクタの噴射特性を示す特性データが記憶されたインジェクタ側記憶手段と、
前記インジェクタの作動を制御する制御装置に設けられ、前記インジェクタ側記憶手段に記憶された前記特性データと同一の特性データを記憶する制御装置側記憶手段と、
を備え、
前記インジェクタ側記憶手段及び前記制御装置側記憶手段の少なくとも一方は、前記特性データと同一の特性データをさらに追加して記憶しており、
前記インジェクタ側記憶手段及び前記制御装置側記憶手段に記憶された3つ以上の前記特性データについて、多数決の原理によりエラーが生じている特性データがいずれであるか特定し、特定された前記エラーが生じている特性データをエラーが生じていない残りの特性データで修復することを特徴とする噴射特性データのエラー検出装置。」


2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関し、
本件補正前における「前記インジェクタの作動を制御する制御装置」を「前記インジェクタと離れて配設された前記インジェクタの作動を制御する制御装置」と限定したものであるから、
本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


3.本件補正の適否の判断
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-3433号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 データを書換え不能に記憶する不揮発性の第1記憶手段と、
データを書換え可能に記憶する第2記憶手段と、
上記第1記憶手段に記憶された所定データを読み込み、該読み込んだ所定データを上記第2記憶手段に書き込むデータ更新処理を実行するデータ更新手段と、
上記第2記憶手段に記憶された上記所定データに基づき演算を実行する演算手段と、
を備えたデータ処理装置において、
上記データ更新手段が、上記第2記憶手段に記憶された上記所定データの正誤に関わらず、所定条件が成立する毎に、上記データ更新処理を実行することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】 データを書換え不能に記憶する不揮発性の第1記憶手段と、
データを書換え可能に記憶する第2記憶手段と、
上記第1記憶手段に記憶された所定データを読み込み、該読み込んだ所定データを上記第2記憶手段に書き込むデータ更新処理を実行するデータ更新手段と、
上記第2記憶手段に記憶された上記所定データに基づき演算を実行する演算手段と、
を備えたデータ処理装置において、
上記第2記憶手段に記憶された上記所定データの正誤に関わらず、所定条件が成立する毎に、上記第1記憶手段に記憶された上記所定データと上記第2記憶手段に記憶された上記所定データとを照合し、両者が一致するか否かを判断する照合手段を備えると共に、
該照合手段が上記両データが一致しないと判断したとき、上記データ更新手段が上記データ更新処理を実行することを特徴とするデータ処理装置。
【請求項3】 上記演算が内燃機関の燃料噴射ポンプを制御する処理であり、
上記所定データが上記燃料噴射ポンプの特性データであることを特徴とする請求項1または2記載のデータ処理装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】)

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、記憶手段に記憶されたデータに基づき演算を実行するデータ処理装置に関する。」(段落【0001】)

(ウ)「【0002】
【従来の技術】従来より、この種のデータ処理装置は種々提案されており、一例として、ディーゼル機関の燃料噴射ポンプ制御装置が挙げられる。ディーゼル機関の燃料噴射ポンプでは、個々のポンプ毎にその特性が異なるが、燃料噴射ポンプ制御装置ではそのポンプの特性に応じた制御を実行するのが望ましい。そこで、個々のポンプ毎にその特性データを書換え不能に記憶したROMを固定しておき、燃料噴射ポンプ制御装置のCPUがそのROMに記憶された特性データを読み込んで制御を実行することが考えられている(特公平4-28901号)。
【0003】上記ROMからの特性データの読み込みは、一般にデータ通信等によって行われる。そこで、この種の燃料噴射ポンプ制御装置では、上記ROMから読み込んだデータをCPU近傍に設けられたバックアップRAM等に書き込んでおき、通常はそのバックアップRAMに記憶された特性データに基づき制御を実行することが考えられている。このような構成を採用した場合、制御中にいちいちデータ通信を実行して特性データを読み込む必要がなくなり、制御の能率化を図ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、バックアップRAMに記憶された特性データは、変化(破壊)してしまう可能性がある。そこで、次のような対策が考えられる。すなわち、上記特性データと共に、その特性データ(元データ)の「1」,「0」を反転させたミラーデータをバックアップRAMに記憶しておき、両者が互いに反転の状態を保持しているかをチェックするいわゆるミラーチェックを行ったり、バックアップRAMに記憶された特性データのSUM値を算出し、チェックSUMと一致するか否かを判断したりすることにより、特性データに異常がないか、すなわち特性データが変化してないかをチェックする(SUMチェック)。そして、異常が検出された場合は、上記ROMより再び特性データを読み込んでバックアップRAMに書き込むのである。
【0005】しかしながら、このようなチェックを行っても検出されない異常が特性データに発生することがある。例えば、図6(A)に例示するように、元データとミラーデータとの同じ位置のデータが同時に反転した場合、このような異常はミラーチェックによって検出することができない。また、図6(B)に例示するように、同じ桁の「1」および「0」のデータが同時に反転した場合、このような異常はチェックSUMによって検出することができない。更に、図6(C)に例示するように、上記二つの条件を同時に満たすような異常が発生した場合、このような異常はミラーチェックによってもSUMチェックによっても検出することができない。
【0006】このような場合、CPUはバックアップRAMの特性データを異常と気付かずにそのまま使用して制御を実行することになる。この種のデータは、学習データのように自動更新されて本来の値に近づくことがないので、その後ずっと誤った特性データに基づき制御を実行することになる。また、この種の課題は他のいくつかのデータ処理装置においても同様に発生する。
【0007】そこで、本発明は、記憶手段に記憶された所定データを読み込んで演算を実行するデータ処理装置において、その所定データの本来の値を良好に保持して演算に使用可能にすることを目的としてなされた。」(段落【0002】ないし【0007】)

(エ)「【0016】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された燃料噴射ポンプ制御装置の構成を表すブロック図である。なお、この燃料噴射ポンプ制御装置は、ディーゼル機関用電子制御燃料噴射ポンプ(以下、単に燃料噴射ポンプという)1に搭載された燃料噴射量制御用アクチュエータ2および燃料噴射時期制御用アクチュエータ3を介して、燃料噴射ポンプ1の燃料噴射量および燃料噴射時期を制御する装置である。
【0017】燃料噴射ポンプ1では、構成部品の部品加工精度、組付精度等の機械的な要因、或いは各アクチュエータ2,3の応答性、或いは燃料噴射ポンプ1に搭載された各種センサ(図示せず)の出力特性の電気的,磁気的な要因による個体間のばらつきが存在する。このため、燃料噴射ポンプ1は、そのばらつきに応じた特性データを記憶する記憶装置4を備えている。そして、上記制御を実行する制御本体であるECU5は、この特性データを記憶装置4から読み出し、ディーゼル機関の運転状態に応じて周知の演算を実行して各アクチュエータ2,3を駆動している。
【0018】記憶装置4の内部には、書き込み用電圧供給線L4に所定電圧が印加されたときを除いて特性データを書換え不能に記憶する第1記憶手段としてのOTPROM6(EPROM,EEPROM等他の不揮発性記憶素子を用いてもよい)、ECU5へシリアル通信方式によりデータを送信するためのシリアル通信インタフェース7、ノイズ除去,信号レベルまたはインピーダンス変換のための通信バッファ8、および、電力供給兼クロック信号線L1を介して入力された後述のクロック信号から高周波のノイズを除去する入力フィルタ9を備えている。また、入力フィルタ9を通過したクロック信号は二つに分岐し、一方はシリアル通信インタフェース7にクロック信号として直接入力され、他方は逆流防止用のダイオード10aおよび充電用のコンデンサ10bよりなる回路に入力される。そして、この回路のコンデンサ10bに充電された電力は、OTPROM6およびシリアル通信インタフェース7の駆動用電力として使用される。
【0019】なお、OTPROM6への特性データの書き込みは次のように行われる。すなわち、燃料噴射ポンプ1の工場からの出荷検査工程で実際に燃料を噴射させて噴射特性を調べ、標準的なポンプの噴射特性に対するずれ分に相当するデータ(特性データ)を、書き込み用電圧供給線L4に所定電圧を印加しながらOTPROM6へ記憶するのである。記憶装置4は、このように燃料噴射ポンプ1固有の特性データを記憶するためのものであり、燃料噴射ポンプ1上に搭載されているので非常に管理に好都合である。」(段落【0016】ないし【0019】)

(オ)「【0020】ECU5は、上記制御を含む種々の演算を実行するCPU11、各種センサ信号をCPU11に入力するための入力信号バッファ12、上記センサ信号がアナログ信号であった場合、その信号をデジタル信号に変換してCPU11に入力するADC12a、電源回路13、PNPトランジスタ14、通信バッファ15、CPU11が出力する信号を所定電圧の駆動信号に変換して各アクチュエータ2,3に出力するアクチュエータ駆動回路16、後述のデータ更新処理のプログラム等を書換え不能に記憶したROM17、それらの処理に使用されるデータを書換え可能に記憶するバックアップメモリ(B/Uメモリ)18、および、抵抗器20を備えている。
【0021】なお、電源回路13は、バッテリ19から電力供給を受けてECU5全体に所定の電圧を供給する。また、バックアップメモリ18は、イグニッションキーをオフにしたときもバッテリ19から電力供給を受け、その電力供給によってデータを常時保持する。すなわち、バックアップメモリ18は第2記憶手段に相当する。更に、入力信号バッファ12に信号を入力するセンサとしては、エンジン回転数センサ、吸気圧センサ、エンジン冷却水温センサ等がある。また、ROM17はCPU11の外部ROMとしたが、CPU11の内部ROMとしてもよい。
【0022】ECU5と記憶装置4とは、前述の電力供給兼クロック信号線L1を含む3本の信号線L1?L3にて接続されている。ECU5内のCPU11は、PNPトランジスタ14のオン/オフを周期的に切り換えて、そのPNPトランジスタ14の出力をクロック信号として記憶装置4へ出力する。すると、前述のように、そのクロック信号により記憶装置4のシリアル通信インタフェース7との同期を取ることができると共に、記憶装置4の各素子へ電力を供給することができる。また、シリアル通信インタフェース7は、通信バッファ8,シリアル通信線L2,通信バッファ15を介してCPU11と接続されている。更に、グランド線L3は、ECU5側のグランド電位(アース電位)と記憶装置4のグランド電位とを直接接続し、双方の基準動作電位としているが、グランド電位の変動が問題とならない場合は、燃料噴射ポンプ1の筐体など導電性の構成部材を介して双方のグランド電位を接続してもよい。」(段落【0020】ないし【0022】)

(カ)「【0023】次に、このように構成された燃料噴射ポンプ制御装置の動作を説明する。CPU11は、上記クロック信号に同期してOTPROM6から上記特性データを1ビットずつ読み込み、それをバックアップメモリ18に記憶する。その後、各センサ信号と上記記憶した特性データとに応じて各アクチュエータ2,3を制御し、燃料噴射時期,燃料噴射量を調整するのである。この制御は周知であるので説明を省略する。また、バックアップメモリ18に記憶したデータは、バッテリ19の出力電圧の低下などにより破壊され、内容が変化することがある。そこで、CPU11は、バックアップメモリ18に記憶された特性データを、OTPROM6から再び読み込んだ特性データにより更新する次のデータ更新処理を実行する。続いて、図2のフローチャートを用いてそのデータ更新処理について説明する。なお、CPU11は、この処理を所定周期毎に繰り返し実行する。
【0024】図2に示すように、処理を開始すると、先ずステップ101にてデータ更新条件が成立したか否かを判断する。ここで、データ更新条件としては、次の丸1?丸5(当審注:原文では○の中に数字のある記号をこのように表記。以下、同様。)に示すように種々の条件が考えられ、その内のいずれかを採用する。
丸1.イグニッションキーがオンされたときでありかつ一定回数トリップ毎(但し、1トリップとは、一回のイグニッションキーオンからオフまでを意味する)
丸2.イグニッションキーがオフされたときでありかつ一定回数トリップ毎(但し、この条件を採用できるのは、イグニッションキーがオフされた後所定時間ECU5に電力が供給される装置に限る)
丸3.燃料噴射ポンプ1を搭載した車両の走行距離が所定値に達する毎
丸4.イグニッションキーがオンに保持された時間の積算値が所定値に達する毎
丸5.(丸3または丸4)かつ(エンジンストール時または低回転時)
データ更新条件が成立していないとき(101:NO)は、ステップ103へ移行し、バックアップメモリ18にバッテリ19から供給された電圧(バックアップメモリ保持電圧)が低下した履歴があるか否かを判断する。低下した履歴がないとき(103:NO)は、ステップ105へ移行し、バックアップメモリ18に記憶された特性データに対してミラーチェックおよびSUMチェックにより異常の有無を判断する。そして、特性データが正常であれば、一旦処理を終了して次の処理周期まで待機する。一方、データ更新条件が成立したとき(101:YES)、バックアップメモリ保持電圧が低下した履歴があるとき(103:YES)、或いは、ミラーチェックまたはSUMチェックにより特性データの異常が検出されたときは、ステップ107以下の処理へ移行する。
【0025】ステップ107では、SUM値およびデータカウンタCDATAを0にリセットする。続くステップ111では、OTPROM6から特性データを1データ読み込み、ステップ113で、そのデータに対しオーバーランエラーチェック,パリティチェック,フレーミングエラーチェックにより異常の有無を判断する。データが正常である場合はステップ115へ移行し、そのデータ(1データ)をバックアップメモリ18に書き込むと共に、データカウンタCDATAを一つインクリメントする。続くステップ117では、データカウンタCDATAの値が特性データの全データ数Nと一致したか否かを判断する。一致しない場合(117:NO)は、ステップ119にてSUM値にそのデータの値を加算した後、ステップ111へ移行して次のデータに対して同様の処理を実行する。
【0026】このように、ステップ111?119の処理を繰り返し実行し、全てのデータをバックアップメモリ18に書き込み終るとCDATA=N(117:YES)となる。すると、ステップ121へ移行して、読み込んだデータがSUM値と一致するか否かを判断する。すなわち、最後に読み込んだデータはチェックSUMであるので、データが正常に読み込まれていればSUM値とチェックSUMは一致するはずである。そこで、両者が一致すれば(121:YES)特性データが正確に更新されたと判断して一旦処理を終了する。一方、ステップ111?119の処理によりデータを1データずつ更新する間に、ステップ113で異常が発見された場合、および最後に読み込んだデータとSUM値とが一致しなかった場合(121:NO)は、ステップ107へ移行して特性データの更新を最初からやり直す。また、この処理の実行中にタイムアウトエラーが発生した場合は、周知のエラー処理を実行する。
【0027】このように、本燃料噴射ポンプ制御装置では、バックアップメモリ18に記憶された特性データの正誤に関わらず、運転状態に応じて定まるデータ更新条件が成立したとき、およびバックアップメモリ保持電圧が低下したときには、ステップ107以降のデータ更新処理を実行している。すなわち、OTPROM6から特性データを読み込み(ステップ111)、その読み込んだデータをバックアップメモリ18に書き込んでいる(ステップ115)。
【0028】このため、バックアップメモリ18の特性データに異常が検出されなくても、その特性データをOTPROM6の特性データで更新することができる。OTPROM6は、特性データを通常は書換え不能に記憶しており、そこに記憶されたデータが変化することはきわめて少ない。従って、正確な特性データを用いてアクチュエータ2,3の制御を実行することができる。よって、本装置による燃料噴射ポンプ1の制御の信頼性がきわめて高くなる。また、常に通信によって特性データを得るわけではないので、処理が迅速化される。更に、燃料噴射ポンプ1の特性データは、学習データのように自動更新されて本来の値に近づくことがないので、上記データ更新処理の実行による効果が一層顕著になる。」(段落【0023】ないし【0028】)

(キ)「【0029】また、上記実施の形態では、特性データの更新が指示されたとき(ステップ107以降の処理へ移行したとき)無条件にバックアップメモリ18のデータを更新しているが、特性データの更新が指示されたとき、バックアップメモリ18に記憶された特性データとOTPROM6から読み込んだ特性データとを照合し、その結果に応じて更新するしないを決定してもよい。図3は、このようなデータ更新処理の例を表すフローチャートである。なお、図3には、図2のステップ107?121の部分に相当する処理のみを記載した。
【0030】図3に示すように、特性データの更新条件が成立してステップ201へ移行すると、通信時連続エラーカウンタCRENおよびデータ不一致カウンタCFUITを0にリセットする。続くステップ203では、OTPROM6の特性データの全データを、バックアップメモリ18のデータと照合する全データ受信処理を実行する。この全データ受信処理の詳細を図4に示す。
【0031】図4に示すように、先ず、ステップ231にて、データカウンタCDATA,SUM値,通信時エラーフラグFTUS,および後述するデータ一致チェックビット列の各ビットを「0」にリセットする。なお、ステップ231では、リセットする前のデータ一致チェックビット列のデータを前回データとして記憶した後上記リセットを行う。
【0032】続くステップ233では、特性データを1データ読み込み、エラーチェック(パリティチェック,オーバーランエラーチェック,フレーミングエラーチェック)を実行し、異常があればステップ237で通信時エラーフラグFTUSを1にセットした後、正常であればそのまま、ステップ241へ移行する。ステップ241ではデータカウンタCDATAを一つインクリメントし、ステップ243で読み込みデータを仮ストアする。すなわち、読み込みデータをバックアップメモリ18に直接書き込むのではなく、一旦別の領域に記憶する。
【0033】続くステップ245で、その読み込みデータをバックアップメモリ18の該当データ(B/Uデータ)と照合し、両者が一致した場合(245:YES)はそのままステップ247へ、一致しなかった場合(245:NO)は、ステップ249にて対応するデータ一致チェックビットを「1」としてステップ247へ移行する。続くステップ247?253の処理は、図2のステップ117?121の処理と同様である。すなわち、SUM値を順次加算しながら(ステップ251)ステップ233?251の処理を実行し、CDATA=Nとなると(247:YES)最後に読み込んだデータ(チェックSUM)とSUM値とが一致するか否かを判断する(ステップ253)のである。ステップ253にて肯定判断したときはそのまま図3のルーチンへ復帰し、否定判断したときは通信時エラーフラグFTUSを1にセットした後(ステップ255)図3のルーチンへ復帰する。
【0034】ここで、データ一致チェックビット列の構成を図5の例を用いて説明する。図5の例では、特性データがDATA1?DATA6の6個のデータおよびチェックSUMから構成され、そのうちDATA1,DATA3,DATA4,DATA5,およびチェックSUMが一致し、DATA2,DATA6が不一致である。このような場合、データ一致チェックビット列では、DATA2,DATA6に対応するデータ一致チェックビットが「1」となり、他のデータ一致チェックビットが「0」となる。
【0035】図3に戻って、ステップ203の全データ受信処理が終了すると、ステップ265にて通信時エラーフラグFTUSが0であるか否かを判断する。通信時の異常がなくFTUS=0の場合(YES)はステップ267へ移行し、データ一致チェックビット列の全ビットが「0」となっているか否か、すなわち、バックアップメモリ18に記憶された特性データがOTPROM6から読み込んだ特性データと完全に一致するか否かを判断する。一致している場合(YES)はそのまま処理を終了し、一致していない場合(NO)はステップ269にてデータ不一致カウンタCFUITを一つインクリメントした後ステップ271へ移行する。
【0036】ステップ271では、データ不一致カウンタCFUITが所定値M以上になったか否かを判断する。Mに達していない場合(NO)はステップ273へ移行して、同じデータが連続して不一致であるか否かを判断する。すなわち、前述のステップ231にて前回データとして記憶したデータ一致チェックビット列と、ステップ249で作成したデータ一致チェックビット列とを比較し、連続して「1」となっているビットが存在するか否かを判断する。初めてこのステップへ移行したときは否定判断して、ステップ203の全データ受信処理からやり直す。
【0037】一方、連続して「1」となったデータ一致チェックビットが存在した場合、ステップ275へ移行し、全データ強制更新処理を実行して一旦処理を終了する。連続して不一致となったデータが存在した場合、バックアップメモリ18に記憶されたそのデータが変化(破壊)している可能性がきわめて高い。そこで、この場合、図2のステップ111?119で実行したように、バックアップメモリ18の特性データをOTPROM6から読み込んだデータで更新するのである。
【0038】また、2巡目以降の処理でステップ273で否定判断した場合、OTPROM6から読み込んだデータにノイズ等が重畳し、上記データの不一致(267:NO)を判断した可能性がある。そこで、この場合、ステップ203へ移行して前述の全データ受信処理からやり直す。そして、このステップ203?273のループをM回繰り返すと、すなわち、M回連続してデータの不一致(267:NO)を判断したが、それまでに連続して不一致と判断されたデータが一つもなかった(273:NO)場合、ステップ271にて肯定判断し、ステップ277にて通信処理異常カウンタをインクリメントして一旦処理を終了する。
【0039】この通信処理異常カウンタとは、OTPROM6のデータの破壊、通信機能の故障、通信線の断線などの可能性を示唆するカウンタで、このカウンタが所定値に達した場合、特性データの代わりに予め設定された所定データ(いわゆるデフォルト値)を使用する処理や、警告灯点灯などの処理を別ルーチンにより実行する。なお、この種の処理は周知であるのでここでは詳述しない。
【0040】また、全データ受信処理(ステップ203)中に、ステップ237または255で通信時エラーフラグFTUSがセットされた場合、ステップ265で否定判断してステップ281へ移行する。ステップ281では、通信時連続エラーカウンタCRENを一つインクリメントし、続くステップ283では、CREN≧Kか否かを判断する。CREN<K(283:NO)の場合は再びステップ203へ移行し、前述の処理を繰り返す。そして、CREN≧K(283:YES)となると、すなわち、K回続けて通信時エラーフラグFTUSがセットされると(265:NO)、ステップ285へ移行して通信時連続エラーフラグをセットする。通信時連続エラーフラグとは、外部ノイズが頻繁に重畳している可能性や、通信線またはコネクタの接触不良を示唆するフラグで、このフラグがセットされたときOTPROM6との通信を停止するように制御してもよい。また、ステップ285の次は、前述のステップ277へ移行する。
【0041】このため、本実施の形態では、前述の実施の形態の効果に加えて、次のような効果が生じる。すなわち、本実施の形態では、OTPROM6から読み込んだ特性データとバックアップメモリ18に記憶された特性データとが完全に一致したとき(267:YES)は、特性データの更新を行わない。このような場合に特性データを更新してもその更新の前後で何の変化もなく、そのデータ更新処理が無駄になるからである。従って、無駄なデータ更新処理を省略して、制御を一層能率化することができる。
【0042】また、本実施の形態では、一度データが一致しないと判断(267:NO)しても、複数回に渡って照合を繰り返し、同一データが連続して不一致であると判断したとき(ステップ273:YES)のみ特性データを更新している(ステップ275)。このため、データにノイズが重畳するなどして、両者が一致しないと判断したときも、2回目以降の照合で両者が一致した場合(267:YES)は特性データの更新を行わない。従って、無駄なデータ更新処理を一層良好に省略し、制御を一層能率化することができる。更に、通信系等の異常の可能性がある場合(271:YES,283:YES)も、特性データの更新を行わない。このため、バックアップメモリ18の特性データを誤ったデータで更新してしまうのを良好に防止することができる。従って、制御の信頼性を一層向上させることができる。」(段落【0029】ないし【0042】)

(ク)「【0044】また、本発明は、上記各実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、OTPROM6から読み込んだデータとバックアップメモリ18のデータとが一致しなかった場合、もう一度OTPROM6からデータを読み込んで3者で多数決を取るようにしてもよい。また、データを書換え不能に記憶する第1記憶手段としては、OTPROM6のように特性データをデジタルデータとして記憶するものに限らず、例えば、抵抗器,コンデンサ,誘導器などのように、アナログデータとして記憶するものも適用することができる。更に、本発明は、燃料噴射ポンプ制御装置以外にも種々の装置に適用することができる。」(段落【0044】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(ク)及び図面の記載からみて、次のことが分かる。

(ケ)上記(1)の(ア)、(ウ)ないし(ウ)並びに図1及び6の記載からみて、データ処理装置は、特性データのエラーを検出しており、燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6と、ECU5側のバックアップメモリ18と、を備え、一方の前記燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6は、内燃機関で燃焼させる燃料を噴射する燃料噴射ポンプ1に設けられ、前記燃料噴射ポンプ1の噴射特性を示す特性データを記憶するものであり、他方のECU5側のバックアップメモリ18は、前記燃料噴射ポンプ1と離れて配設された前記燃料噴射ポンプ1の作動を制御するECU5に設けられ、前記燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された前記特性データと同一の特性データを記憶するものであることが分かる。

(コ)上記(1)の(ア)、(カ)、(キ)及び上記(ケ)並びに図1ないし4の記載からみて、燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6及びECU5側のバックアップメモリ18には2つの同一の特性データが記憶されており、特性データのエラーの処理として、エラーが生じているのが燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データの場合、前記エラーが生じている燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データをデフォルト値にし、エラーが生じているのがECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データの場合、前記ECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データをエラーが生じていない燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データで修復していることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「内燃機関で燃焼させる燃料を噴射する燃料噴射ポンプ1に設けられ、前記燃料噴射ポンプ1の噴射特性を示す特性データが記憶された燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6と、
前記燃料噴射ポンプ1と離れて配設された前記燃料噴射ポンプ1の作動を制御するECU5に設けられ、前記燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された前記特性データと同一の特性データを記憶するECU5側のバックアップメモリ18と、を備え、
前記燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6及び前記ECU5側のバックアップメモリ18に記憶された2つの前記特性データについて、エラーが生じているのが燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データの場合、前記エラーが生じている燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データをデフォルト値にし、エラーが生じているのがECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データの場合、前記ECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データをエラーが生じていない燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データで修復する特性データのデータ処理装置。」


3-2.対比
本件補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「ECU5」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「制御装置」に相当し、以下同様に、「ECU5側のバックアップメモリ18」は「制御装置側記憶手段」に、「特性データのデータ処理装置」は「噴射特性データのエラー検出装置」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「燃料噴射ポンプ1」は、「燃料噴射系」という限りにおいて、本件補正発明における「インジェクタ」に相当し、以下同様に、
「燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6」は、「燃料噴射系側記憶手段」という限りにおいて、「インジェクタ側記憶手段」に、
「2つ」は、「複数」という限りにおいて、「3つ以上」に、
「エラーが生じているのが燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データの場合、前記エラーが生じている燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データをデフォルト値にし、エラーが生じているのがECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データの場合、前記ECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データをエラーが生じていない燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データで修復する」は、「エラーが生じている特性データの内制御装置側記憶手段に記憶された特性データをエラーが生じていない残りの特性データで修復する」という限りにおいて、「エラーが生じている特性データをエラーが生じていない残りの特性データで修復する」に、
それぞれ相当する。
したがって、本件補正発明と引用文献記載の発明は、次の一致点で一致し、次の相違点1及び相違点2で相違する。

<一致点>
「内燃機関で燃焼させる燃料を噴射する燃料噴射系に設けられ、前記燃料噴射系の噴射特性を示す特性データが記憶された燃料噴射系側記憶手段と、
前記燃料噴射系と離れて配設された前記燃料噴射系の作動を制御する制御装置に設けられ、前記燃料噴射系側記憶手段に記憶された前記特性データと同一の特性データを記憶する制御装置側記憶手段と、を備え、
前記燃料噴射系側記憶手段及び前記制御装置側記憶手段に記憶された複数の前記特性データについて、エラーが生じている特性データの内制御装置側記憶手段に記憶された特性データをエラーが生じていない残りの特性データで修復する噴射特性データのエラー検出装置。」


<相違点>
(1)相違点1
噴射特性を示す特性データの対象及び特性データを記憶する記憶手段に関し、
本件補正発明においては、噴射特性を示す特性データの対象は「インジェクタ」であり、特性データを記憶する記憶手段は「インジェクタ側記憶手段」であるのに対し、
引用文献記載の発明においては、噴射特性を示す特性データの対象は「燃料噴射ポンプ1」であり、特性データを記憶する記憶手段は「燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6」である点(以下、「相違点1」という。)。

(2)相違点2
特性データのエラー処理に関し、
本件補正発明においては、「インジェクタ側記憶手段及び制御装置側記憶手段の少なくとも一方は、特性データと同一の特性データをさらに追加して記憶しており、」このため、「記憶された3つ以上の前記特性データについて、多数決の原理によりエラーが生じている特性データがいずれであるか特定し、特定された前記エラーが生じている特性データをエラーが生じていない残りの特性データで修復する」のに対し、
引用文献記載の発明においては、燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6及びECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データは「2つ」であり、これらの「2つ」の特性データについて、「エラーが生じているのが燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データの場合、前記エラーが生じている燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データをデフォルト値にし、エラーが生じているのがECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データの場合、前記ECU5側のバックアップメモリ18に記憶された特性データをエラーが生じていない燃料噴射ポンプ1側のOTPROM6に記憶された特性データで修復する」点(以下、「相違点2」という。)。


3-3.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
内燃機関で燃焼させる燃料を噴射する燃料噴射系は、燃料噴射ポンプ、燃料管及びインジェクタから成るものである。このため、インジェクタから噴射される燃料の特性は、インジェクタの特性データでも燃料噴射ポンプの特性データでも調整可能である。
そして、燃料噴射装置において、噴射特性を示す特性データの対象をインジェクタとし、特性データを記憶する記憶手段をインジェクタ側記憶手段とすることは、従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、本件出願の明細書において先行技術文献として記載されている特開2009-57926号公報の特に、段落【0005】ないし【0008】、【0051】、【0054】、【0055】、【0059】ないし【0061】、【0072】並びに図1、3及び4参照。)である。
そうすると、引用文献記載の発明において、上記周知技術1を採用し、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
引用文献には、特性データのエラー処理に関し、「OTPROM6から読み込んだデータとバックアップメモリ18のデータとが一致しなかった場合、もう一度OTPROM6からデータを読み込んで3者で多数決を取るようにしてもよい。」(上記3-1.(1)(ク)参照。)という多数決の原理によるデータのエラー処理とする示唆が記載されている。
また、車両用電子制御装置において、データのエラー処理のために、記憶された複数のデータについて、多数決の原理によりエラーが生じている特性データがいずれであるか特定し、特定された前記エラーが生じているデータをエラーが生じていない残りのデータで修復することは、従来周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、原査定において例示された特開平7-93006号公報の特に、段落【0031】、特開平8-128355号公報の特に、段落【0033】、特開2009-271879号公報の特に、段落【0001】、【0004】及び【0009】並びに図7参照。)である。
そうすると、引用文献記載の発明において、特性データのエラー処理に関し、上記周知技術2を採用し、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

また、本件補正発明は、全体として検討してみても、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


3-4.まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


【3】本件発明について
1.本件発明の内容
平成25年2月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年8月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、単に「本件発明」という。)は、前記【2】の[理 由]の1.(b)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。


2.引用文献記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項及び引用文献記載の発明は、前記【2】の[理 由]3.の3-1.(1)ないし(3)に記載したとおりである。


3.対比・判断
本件発明は、前記【2】で検討した本件補正発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記【2】の[理 由]3.の3-1.ないし3-4.に記載したとおり、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明は、全体として検討してみても、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。


4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-07 
結審通知日 2013-10-08 
審決日 2013-10-22 
出願番号 特願2010-166681(P2010-166681)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02D)
P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 恭司  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 藤原 直欣
柳田 利夫
発明の名称 噴射特性データのエラー検出装置  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  
代理人 井口 亮祉  

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