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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1282712
審判番号 不服2010-21703  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-27 
確定日 2013-12-20 
事件の表示 特願2008-204893「低酸素症を処置するための医薬および方法ならびにその医薬についてスクリーニングするための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月26日出願公開、特開2009- 40785〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年3月20日(パリ条約による優先権主張 2001年3月20日、米国、2001年11月9日、米国、2001年12月20日、米国、2002年3月19日、米国)を国際出願日とする特願2002-572960号の一部を新たな特許出願として、平成20年1月9日に出願された特願2008-2664号の一部を新たな特許出願として、平成20年8月7日に出願されたものであって、平成22年5月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】
本願明細書等に記載される、低酸素症を処置するための方法。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定における拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(1)本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
(2)本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3.特許法第29条第1項柱書について
(1)当審の判断
本願発明は、上記のとおり、「本願明細書等に記載される、低酸素症を処置するための方法。」である。
ここで、本願明細書の「本発明は、1つの局面において、被験体において低酸素または虚血に関連する障害を処置または予防する方法に関し、ここでHIFのプロリルヒドロキシル化を調節する治療化合物が被験体に投与され、その結果、低酸素または虚血に関連する障害が処置される。」(段落【0008】、下線は合議体による。)という記載によれば、本願発明の「処置」は、「治療」を意味するものと解される。
そして、本願明細書には「被験体は、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得る。」(段落【0055】、下線は合議体による。)と記載されているから、上記「被検体」にヒトが含まれることは明らかであるから、本願発明は、「ヒトを治療する方法」を包含するものである。
そして、ヒトの治療方法を特許することは、医師の行う医療行為自体が侵害となることを防ぐための措置を講じていない我が国の特許法のもとでは、医師を、特許侵害を恐れながら医療行為に当たるという状況に追い込むことになりきわめて不当であるから、ヒトの治療方法は産業上利用できない発明に該当すると扱わざるを得ないと判示されている(必要であれば、東京高裁 平成14年4月11日 平成12年(行ケ)第65号判決参照)。
よって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書の「産業上利用することができる発明」に該当せず、特許を受けることができない。

(2)審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書において、「本願発明は、「低酸素症を処置するための方法」であり、必ずしも医師の指示の元でなされねばならないことはなく、産業上利用可能な発明を含むものですので、特許法第29条第1項柱書違反はないものと考えます。」と主張しているが、上述の如く、本願発明が「ヒトを治療する方法」を包含するものであることは明らかであり、また、審判請求人は、本願発明が「必ずしも医師の指示の元でなされねばならないことはな」いことの具体的な根拠を何ら示していないから、審判請求人の上記主張は採用できない。

(3)小括
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

4.特許法第36条第6項第2号について
(1)当審の判断
本願明細書には、本願発明に関して以下の事項が記載されている。

ア.「本発明は、1つの局面において、被験体において低酸素または虚血に関連する障害を処置または予防する方法に関し、ここでHIFのプロリルヒドロキシル化を調節する治療化合物が被験体に投与され、その結果、低酸素または虚血に関連する障害が処置される。これらの化合物は、HIFのプロリルヒドロキシル化を増加または減少させ得る。」(段落【0008】)

イ.「別の実施形態において、本発明は、被験体中の低酸素症関連障害または虚血関連障害(例えば、心筋梗塞、発作、癌、もしくは糖尿病)を処置または予防する方法に関し、ここで、上記の方法によって同定された化合物は、プロリルヒドロキシラーゼの発現または活性を低下させ、その結果、低酸素症関連障害または虚血関連障害が、処置される。このような化合物は、プロリルヒドロキシラーゼ抗体、またはプロリルヒドロキシラーゼポリペプチドをコードする核酸の発現を低下させる核酸(例えば、プロリルヒドロキシラーゼアンチセンス核酸)であり得る。」(段落【0015】)

ウ.「本発明は、低酸素障害または虚血性障害を処置する方法を包含し、この方法は、プロリルヒドロキシラーゼに結合親和性を有するHIFαポリペプチド部分と、自殺ポリペプチド部分とを含む融合タンパク質の有効量を被験体に投与することにより、その結果、その低酸素症障害または虚血性障害が処置される。」(段落【0126】)

上記記載事項ア.?ウ.は、本願発明の「低酸素症を処置するための方法」に関する記載であると認められるが、「HIFのプロリルヒドロキシル化を調節する治療化合物」(記載事項ア.)、「プロリルヒドロキシラーゼ抗体、またはプロリルヒドロキシラーゼポリペプチドをコードする核酸の発現を低下させる核酸(例えば、プロリルヒドロキシラーゼアンチセンス核酸)」(記載事項イ.)、「プロリルヒドロキシラーゼに結合親和性を有するHIFαポリペプチド部分と、自殺ポリペプチド部分とを含む融合タンパク質」(記載事項ウ.)のように、上記記載事項ア.?ウ.にはそれぞれ異なる化合物を使用して「低酸素症を処置するための方法」が記載されている。
しかしながら、本願明細書の記載をみても、本願発明の「本願明細書等に記載される」が、上記記載事項ア.?ウ.のいずれに記載されている方法を示しているのか、あるいは、すべての方法を示しているのか不明であり、また、本願出願時の技術常識を考慮しても、本願発明の「本願明細書等に記載される」が、どのような方法を示すのか明らかであるとはいえない。
よって、本願明細書の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、「本願明細書等に記載される、低酸素症を処置するための方法」がどのような方法を意味しているのか理解できないので、本願発明は明確であるとはいえない。

(2)審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書において、「本願発明は、本願明細書等(明細書、図面)に記載される、低酸素症を処置するための方法ですので、その記載範囲は明確であり、また、低酸素症を処置するための方法も明確ですので、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たします。」と主張しているが、上述の如く、本願明細書の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、「本願明細書等に記載される、低酸素症を処置するための方法」がどのような方法を意味しているのか理解できないので、その記載範囲が明確であるとはいえず、また、審判請求人は、「その記載範囲は明確であ」ることの具体的な根拠を何ら示していないから、審判請求人の上記主張は採用できない。

(3)小括
したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができず、また、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-29 
結審通知日 2013-07-30 
審決日 2013-08-12 
出願番号 特願2008-204893(P2008-204893)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A61K)
P 1 8・ 14- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 みどり  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 高堀 栄二
植原 克典
発明の名称 低酸素症を処置するための医薬および方法ならびにその医薬についてスクリーニングするための方法  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  

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