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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1283046
審判番号 不服2012-9468  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-22 
確定日 2013-12-26 
事件の表示 特願2006-343438「画像関連情報表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月10日出願公開、特開2008-158583〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、平成18年12月20日の出願であって、平成23年5月23日付けの拒絶理由通知に対して平成23年7月29日付けで手続補正がなされたが、平成24年3月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月22日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 本願発明

1 本願発明

本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成23年7月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項2】
現在位置を取得する現在位置検出部と、三次元姿勢と撮影方角とを検出する三次元姿勢方角検出部と、画像を撮影する画像撮影部と、通信部と、を有する移動端末装置であって、
前記画像撮影部により撮影した画像を背景とし、前記現在位置と前記三次元姿勢と撮影方角とに基づいて、画像に対応し地物と関連する地物関連情報を取得し、前記撮影画像と前記地物関連情報とを表示部に重畳表示する表示制御部と、を有することを特徴とする移動端末装置。」

2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-295827号公報(平成18年10月26日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
本発明は、例えば、携帯電話端末に適用して好適な携帯端末装置し、特に撮影機能を備えた携帯端末装置に関する。」

b「【0009】
以下、本発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
本例においては、撮影部を内蔵した携帯電話端末装置を使用したシステム構成としたものである。
【0010】
図1は、本例のシステム構成例を示した図である。まず、携帯電話端末装置の構成について説明すると、携帯電話端末装置100は、通信部109を備えて、無線電話用の通信回線で無線基地局などと無線通信を行うようにしてあり、液晶表示パネルなどで構成される表示部108で、通信に関する表示などを行うようにしてある。無線電話通信の制御は、制御部106の制御で行われ、メモリ107に制御に必要なデータなどが記憶させてある。また、ユーザが操作するキーなどで構成される操作部110を備えて、制御部106が操作状況を判断するようにしてある。無線電話用の通信回線での無線通信としては、端末装置100での通話用の通信の他に、メール用の通信や、インターネットにアクセスするための通信などもある。
【0011】
そして、携帯電話端末装置100は静止画及び動画を撮影する手段として、カメラ部104が内蔵され、制御部106の制御で撮影が行われる。また、携帯電話端末装置100の現状を検出する手段として、各種センサが取り付けてある。即ち、方位センサ101と測位部102と傾斜センサ103とを内蔵させてあり、それぞれで検出されたデータを制御部106が判断するようにしてある。
【0012】
方位センサ101は、カメラ部104が撮影する方位を検出するセンサである。測位部102は、GPS(Global Positioning System)などの測位システムを利用して、端末装置100の絶対的な位置を検出するものである。傾斜センサ103は、端末装置100の傾斜を検出するセンサである。これらのセンサや測位部からの出力は、カメラ部104で撮影を行う際には、視野角検出部105に送られ、カメラ部104で撮影した画像の視野角が算出される。
【0013】
測位部102で測位された現在位置のデータや撮影した画像の視野角のデータは、通信部109による無線通信で、ホストコンピュータ装置200に接続させて送るようにしてある。この接続としては、例えばホストコンピュータ装置200をインターネット上の所定アドレスに用意して、端末装置100を、無線電話回線を経由してインターネットに接続して、データ交換できるように接続されるようにしてある。
【0014】
ホストコンピュータ装置200は、空間情報検索部201と現状情報検索部202と、三次元空間データベース203とを備える。三次元空間データベース203は、三次元の地図データを備えて、その三次元地図データ上の各座標位置での代表となる目標物の名称のデータなどをデータベースとして記憶させてある。そして、端末装置100から送られた現在位置のデータを使用して、その現在位置の周囲に存在する目標物のデータを、空間情報検索部201で検索するようにしてある。また、現状情報検索部202が、位置データと視野角のデータとを使用して、その視野角内に存在する物体などの現状の情報を取得するようにしてある。この現状の情報は、所定のネットワーク網300を介して、リアルタイム情報管理システム400に、撮影位置のデータと視野角のデータなどを送って得るようにしてある。現状情報の例については後述する。リアルタイム情報管理システム400は、1つであるとは限らず、例えば情報の種類ごとにことなる管理システムを使用してもよい。例えば、天気情報を管理するシステム、飛行物体を管理するシステム、天体現象を管理するシステム、詳細情報が得られるホームページアドレスを管理(検索)するシステムなどの、様々なシステムが想定される。
【0015】
図2は、端末装置100が備えるカメラ104が撮影する画角の検出例を示した図である。本例の端末装置100は、既に説明したように、方位センサ101と傾斜センサ103とを備えているために、カメラ104が撮影する画角が向いている方位角を検出できる構成としてある。即ち、端末装置100のカメラ104が撮影する中心の光軸113の方位角ω及び仰角ζを、これらのセンサ101,103の出力から検出する。そして、カメラ104に取り付けられた撮影用レンズの画角から、等仰角線111及び等方位角線112を検出して、仮想撮影面110を得る。ここで、端末装置100には、測位部102が備えられているので、現在位置が判るので、その現在位置での仮想撮影面110を特定することができる。
【0016】
そして、仮想撮影面110を特定することで、ホストコンピュータ装置200の三次元空間データベース203から送られたデータに基づいて、仮想撮影面110に存在する代表物のデータを端末装置100内で得るとともに、時間の経過で変化する物についてのデータをホストコンピュータ装置200から得るようにしてある。」

c「【0021】
端末装置100では、現状情報を受信すると(ステップS21)、計時変化のある現状情報を含んだ代表物を文字や図形などで案内する情報を、撮影画像に重畳させ、その情報が重畳された画像を表示部108に表示させる(ステップS20)。また、その表示された画像のデータを、メモリ107に記憶させる。この記憶時には、案内情報については、文字などが重畳された画像を記憶させる場合と、案内情報をデータとして撮影画像に付属するデータとして記憶させる場合のいずれでもよい。付属するデータとして記憶させた際には、記憶させた画像データを読み出して表示や印刷を行う際に、案内情報を重畳して表示又は印刷させるかを選択できる。」

d「【0024】
これらの情報を用いて、本例においては撮影画像を表示する際に、案内表示を行うようにしたものである。図5は、案内表示を行う画像の例である。この例では、画像中の代表となる被写体について、名称などと現状を表示させるようにしてある。具体的には、山について、その名称と標高を表示させてあり、また、山の高さの等高線を、画像中に入れてある。図5の例では、標高が500mの位置に、ラインを入れるようにしてある。そして、現状情報として、山頂での最新の天気、気温、風速などを表示させるようにしてある。その最新の気象情報を観測した時間についても表示させてある。山の途中にある公園の名称と、現在の花の開花状況(桜5部咲きなど)についても表示させてある。」


ア 上記aの「【0001】本発明は、‥‥‥携帯端末装置に関する。」との記載、上記bの「【0009】以下、本発明の一実施の形態を、‥‥‥説明する。本例においては、撮影部を内蔵した携帯電話端末装置を使用したシステム構成としたものである。」との記載から、引用例には、「携帯電話端末装置」が記載されているということができる。

イ 上記bの「【0010】‥‥‥携帯電話端末装置100は、通信部109を備えて、‥‥‥【0011】‥‥‥携帯電話端末装置100は静止画‥‥‥を撮影する手段として、カメラ部104が内蔵され、‥‥‥撮影が行われる。また、携帯電話端末装置100の現状を検出する手段として、各種センサが取り付けてある。即ち、方位センサ101と測位部102と傾斜センサ103とを内蔵させてあ‥‥‥る。」との記載から、引用例には、「通信部109、静止画を撮影する手段であるカメラ部104、方位センサ101、測位部102、及び傾斜センサ103が内蔵されている携帯電話端末装置100」が記載されているということができる。
ここで、方位センサ101、測位部102及び傾斜センサ103については、上記bの「【0012】方位センサ101は、カメラ部104が撮影する方位を検出するセンサである。測位部102は、GPS(Global Positioning System)などの測位システムを利用して、端末装置100の絶対的な位置を検出するものである。傾斜センサ103は、端末装置100の傾斜を検出するセンサである。‥‥‥」との記載から、それぞれ、「カメラ部104が撮影する方位を検出する方位センサ101」、「端末装置100の絶対的な位置を検出する測位部102」、「端末装置100の傾斜を検出する傾斜センサ103」ということができ、また、「端末装置100」は、「携帯電話端末装置100」ということができる。
したがって、引用例には、「通信部、静止画を撮影する手段であるカメラ部、カメラ部が撮影する方位を検出する方位センサ、携帯電話端末装置の絶対的な位置を検出する測位部、及び携帯電話端末装置の傾斜を検出する傾斜センサが内蔵されている携帯電話端末装置」が記載されているということができる。

ウ 上記cの「【0021】端末装置100では、‥‥‥現状情報を含んだ代表物を文字や図形などで案内する情報を、撮影画像に重畳させ、その情報が重畳された画像を表示部108に表示させる」との記載、及び上記dの「【0024】これらの情報を用いて、本例においては撮影画像を表示する際に、案内表示を行うようにしたものである。図5は、案内表示を行う画像の例である。この例では、画像中の代表となる被写体について、名称などと現状を表示させるようにしてある。‥‥‥」との記載において、代表物を案内する情報(【0021】)は、具体的には代表となる被写体の名称などとしている(【0024】)ことから、端末装置100は、撮影画像に、画像中の被写体についての名称などと現状情報を重畳表示するものである。
したがって、引用例に記載の「端末装置100」、すなわち「携帯電話端末装置100」は、「撮影画像に、画像中の被写体について、名称などと現状情報を重畳表示する」ものであるということができる。

エ 上記bの「【0015】‥‥‥端末装置100は、‥‥‥方位センサ101と傾斜センサ103とを備えているために、カメラ104が撮影する画角が向いている方位角を検出できる構成としてある。即ち、端末装置100のカメラ104が撮影する中心の光軸113の方位角ω及び仰角ζを、これらのセンサ101,103の出力から検出する。そして、カメラ104に取り付けられた撮影用レンズの画角から、‥‥‥仮想撮影面110を得る。ここで、端末装置100には、測位部102が備えられているので、現在位置が判るので、その現在位置での仮想撮影面110を特定することができる。」との記載において、現在位置は測位部102から得るものであるから、引用例に記載の「端末装置100」、すなわち「携帯電話端末装置100」は、「方位センサ101から検出された方位角ωと、傾斜センサ103から検出された仰角ζ、及び測位部102から得られた現在位置とから、その現在位置での仮想撮影面110を特定する」ものということができる。

オ 上記bの「【0016】そして、仮想撮影面110を特定することで、‥‥‥仮想撮影面110に存在する代表物のデータを端末装置100内で得るとともに、時間の経過で変化する物についてのデータをホストコンピュータ装置200から得る」との記載において、上記cの「【0021】端末装置100では、‥‥‥現状情報を含んだ代表物を文字や図形などで案内する情報を、撮影画像に重畳させ、その情報が重畳された画像を表示部108に表示させる」との記載、上記dの「【0024】‥‥‥図5は、案内表示を行う画像の例である。この例では、画像中の代表となる被写体について、名称などと現状を表示させるようにしてある。‥‥‥」との記載から、「代表物のデータ」(【0016】)は、代表物を案内する情報であって(【0021】)、具体的には代表となる被写体の名称などとしている(【0024】)ことから、「名称など」ということができ、また、「時間の経過で変化する物についてのデータ」(【0016】)は、「現状情報」ということができるから、引用例の「端末装置100」、すなわち「携帯電話端末装置100」は、「仮想撮影面を特定することにより、仮想撮影面に存在する被写体の名称などと現状情報を得る」ものということができる。

上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしオを総合すると、引用例には、次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。

「通信部、静止画を撮影する手段であるカメラ部、カメラ部が撮影する方位を検出する方位センサ、携帯電話端末装置の絶対的な位置を検出する測位部、及び携帯電話端末装置の傾斜を検出する傾斜センサが内蔵されている携帯電話端末装置であって、
方位センサから検出された方位角と、傾斜センサから検出された仰角、及び測位部から得られた現在位置とから、その現在位置での仮想撮影面を特定し、
仮想撮影面を特定することにより、仮想撮影面に存在する被写体の名称などと現状情報を得て、
撮影画像に、画像中の被写体について、名称などと現状情報を重畳表示する、
携帯電話端末装置。」


3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(A)引用発明の「携帯電話端末装置」、「通信部」、「静止画を撮影する手段であるカメラ部」は、それぞれ、本願発明の「移動端末装置」、「通信部」、「画像を撮影する画像撮影部」に相当する。

(B)引用発明の「カメラ部が撮影する方位を検出する方位センサ」は、撮影方角を検出するものということができ、引用発明の「携帯電話端末装置の傾斜を検出する傾斜センサ」は、「傾斜センサから」「仰角」を検出するものであるから、三次元姿勢を検出するものと捉えることができる。
したがって、「方位センサ」及び「傾斜センサ」は、本願発明の「三次元姿勢と撮影方角とを検出する三次元姿勢方角検出部」に相当する。

(C)引用発明は、「測位部から得られた現在位置とから、その現在位置での仮想撮影面を特定」するものであるから、「携帯電話端末装置の絶対的な位置を検出する測位部」は現在位置の検出に用いられるものであって、本願発明の「現在位置を取得する現在位置検出部」に相当する。

(D)引用発明は「方位センサから検出された方位角と、傾斜センサから検出された仰角、及び測位部から得られた現在位置とから、その現在位置での仮想撮影面を特定」するものであって、「傾斜センサ」は、三次元姿勢を検出するものと捉えることができるから(上記(B))、引用発明は、現在位置と三次元姿勢と撮影方角とに基づいて、仮想撮影面を特定するものということができる。
そして、現在位置と三次元姿勢と撮影方角とに基づいて、仮想撮影面を特定し、「仮想撮影面を特定することにより、仮想撮影面に存在する被写体の名称などと現状情報を得」ることから、現在位置と三次元姿勢と撮影方角とに基づいて、仮想撮影面に存在する被写体の名称などと現状情報を得るものということができ、ここで、引用発明の「仮想撮影面に存在する被写体の名称などと現状情報を得」ことは、本願発明の「画像に対応し地物と関連する地物関連情報を取得」するものということができる。
したがって、引用発明の「方位センサから検出された方位角と、傾斜センサから検出された仰角、及び測位部から得られた現在位置とから、その現在位置での仮想撮影面を特定し、仮想撮影面を特定することにより、仮想撮影面に存在する被写体の名称などと現状情報を得」ることは、本願発明の「前記現在位置と前記三次元姿勢と撮影方角とに基づいて、画像に対応し地物と関連する地物関連情報を取得」する点で一致する。

(E)引用発明の「撮影画像に、画像中の被写体について、名称などと現状情報を重畳表示する」ことにおいて、重畳表示するために、表示制御部を設けることは常套手段であるから、引用発明と本願発明とは、「前記撮影画像と前記地物関連情報とを表示部に重畳表示する表示制御部と、を有する」点で一致する。


すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「現在位置を取得する現在位置検出部と、三次元姿勢と撮影方角とを検出する三次元姿勢方角検出部と、画像を撮影する画像撮影部と、通信部と、を有する移動端末装置であって、
前記現在位置と前記三次元姿勢と撮影方角とに基づいて、画像に対応し地物と関連する地物関連情報を取得し、前記撮影画像と前記地物関連情報とを表示部に重畳表示する表示制御部と、を有する移動端末装置。」

<相違点>
本願発明が、「前記画像撮影部により撮影した画像を背景と」するものであるのに対し、引用発明は、このような特定がない点。


4 判断

<相違点>について
一般に、重畳表示において、撮影した画像を背景画像とすることは、周知慣用手段であるから(例えば、特開2006-59292号公報(図7には重畳表示において、画像を背景として情報を表示することが示されている。))、引用発明において、重畳表示するにあたり、前記画像撮影部により撮影した画像を背景とすることに格別の困難性を有しない。

よって、本願発明の<相違点>に係る構成のようにすることは格別なことではない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-23 
結審通知日 2013-10-29 
審決日 2013-11-12 
出願番号 特願2006-343438(P2006-343438)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 誠  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 萩原 義則
石井 研一
発明の名称 画像関連情報表示システム  
代理人 今村 健一  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 平木 祐輔  

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