• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41M
管理番号 1283695
審判番号 不服2013-12515  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-01 
確定日 2014-01-15 
事件の表示 特願2008-155338「インク受容層形成用材料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月24日出願公開、特開2009-298030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年6月13日の出願であって、平成24年10月19日に手続補正がなされ、平成25年4月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月1日付けで拒絶査定不服審判請求がなされ、当審において、同年8月2日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知されたものである。
なお、請求人は、平成25年9月4日付けで当審拒絶理由に対する意見書を提出している。

2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成24年10月19日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成24年10月19日付け補正後の明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「遊星型分散機又は3軸遊星型ミキサーを用いて、気相法により製造された酸化アルミニウム粒子(a)、ヒドロキシカルボン酸(b)及び水(c)を混合分散して、酸化アルミニウム粒子(a)の含有量が酸化アルミニウム粒子(a)、ヒドロキシカルボン酸(b)及び水(c)の合計重量に基づいて40?60重量%である水分散体(d)を得る混合分散工程と、
水分散体(d)と5?15重量%のポリビニルアルコール水溶液(e)とを均一混合して、インク受容層形成用材料を得る混合工程とを含むことを特徴とするインク受容層形成用材料の製造方法。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
当審拒絶理由に引用した「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-321078号公報(以下「引用例」という。)」には以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ)。
(1)「【請求項1】 窒素原子を含むモノカルボン酸、及び水系分散媒に分散された微細なアルミナを含有し、弱酸に調整されてなるアルミナ分散液と、バインダとを含有することを特徴とするインクジェット被記録材用処理剤。
【請求項2】 前記アルミナとバインダとの固形分換算でのアルミナ/バインダ比が、5/1?12/1である前記請求項1に記載のインクジェット被記録材用処理剤。
…略…
【請求項4】 前記請求項1又は2におけるモノカルボン酸が、ニコチン酸、ピコリン酸、プロリン及びグリシンよりなる群から選択される少なくとも一種である前記請求項1又は2に記載のインクジェット被記録材用処理剤。
【請求項5】 前記アルミナ分散液のpHがオキシ酸により調整されてなる前記請求項1?4のいずれか1項に記載のインクジェット被記録材用処理剤。
…略…
【請求項10】 前記アルミナが気相法により製造されてなる前記請求項1?9のいずれか1項に記載のインクジェット被記録材用処理剤。」

(2)「【0021】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するためのこの発明は、窒素原子を含むモノカルボン酸、及び水系分散媒に分散された微細なアルミナを含有し、弱酸に調整されてなるアルミナ分散液と、バインダとを含有することを特徴とするインクジェット被記録材用処理剤であり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記アルミナとバインダとの固形分換算でのアルミナ/バインダ比が、5/1?12/1であり、このインクジェット被記録材用処理剤の他の好適な態様においては、前記窒素原子を含むモノカルボン酸が、窒素原子を複素原子とする複素環化合物、及びアミノ酸よりなる群から選択される少なくとも一種であり、このインクジェット被記録材用処理剤の他の好適な態様においては、前記窒素原子を含有するモノカルボン酸が、ニコチン酸、ピコリン酸、プロリン及びグリシンよりなる群から選択される少なくとも一種であり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記アルミナ分散液のpHがオキシ酸により調整されてなり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記アルミナ分散液のpHが3?6に調整されてなり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記バインダが、芳香族アルデヒドでアセタール化度が5?10mol%となるようにアセタール化され、分子量が1.5×10^(4) 以上である水系溶媒に可溶なポリビニルアセタール樹脂であり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記アルミナ分散液中のアルミナの割合が20重量%以上であり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記アルミナの平均一次粒子径が5?100nmであり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記アルミナが気相法により製造されてなり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記アルミナがδ-アルミナであり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、更に、レベリング剤を含有してなり、このインクジェット被記録材用処理剤の好適な態様においては、前記レベリング剤が、水溶性変性シリコーンオイル及び/又は水溶性フッ素系界面活性剤であり、前記課題を解決する他の発明は、前記インクジェット被記録材用処理剤を用いて形成されてなるインク定着層と、このインク定着層を支持する支持体とを有することを特徴とする被記録材である。」

(3)「【0038】この発明において好適な窒素原子含有モノカルボン酸としては、窒素原子を複素原子とする複素環にカルボン酸基を結合する複素環化合物およびアミノ酸よりなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0039】前記複素環化合物としては、ピコリン酸、ニコチン酸、キナルジン酸、及びピラジンモノカルボン酸等の芳香族系複素環化合物、ピロリジンモノカルボン及びプロリン酸等の5員環複素環化合物、並びにアミノ酸等を挙げることができる。
【0040】これら窒素原子含有モノカルボン酸の中でも、窒素原子を複素原子とする複素環化合物およびアミノ酸が好ましく、特にニコチン酸、ピコリン酸、プロリン及びグリシンよりなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0041】場合によって、この発明においては、例えば、所定のバインダ成分、添加剤、及び溶媒等を配合してなるバインダ液と、前記アルミナ分散液とを混合してアルミナ分散処理液を得、このアルミナ分散処理液を被記録基材上に処理することにより、被記録基材上にインク定着層を形成する場合等においては、前記窒素原子含有モノカルボン酸としては、例えば、ニコチン酸、ピコリン酸、プロリン、及び、グリシンからなる群より選択される少なくとも1種を好適に採用することができ、この中でも特に、ニコチン酸、グリシンをより好適に採用することができる。前記ニコチン酸、グリシンは、例えば、生体に対する安全性が高い等の利点も有する。
【0042】前記窒素原子含有モノカルボン酸は、例えば、前記アルミナ100重量部に対して、通常0.5?10重量部、好ましくは1?5重量部添加することができる。
【0043】この発明においては、前記窒素原子含有モノカルボン酸を前記アルミナ100重量部に対して0.5?10重量部添加することにより、前記アルミナをより効果的に分散させることができるので、特に、例えば、前記バインダ液と、前記アルミナ分散液とを混合してアルミナ分散処理液を得、このアルミナ分散処理液を被記録基材上に処理することにより、被記録基材上にインク定着層を形成する場合等において、被記録基材上の塗膜、得られる記録媒体に印字した画像等における不具合をより効果的に防止すること、例えば、黄変、発色不良等をより効果的に抑制することができる。
【0044】この発明のアルミナ分散液には、前記水系分散媒のpHが弱酸性、特に3?6に調整されるように、前記窒素原子含有モノカルボン酸を添加することができる。このとき、脂肪族オキシ酸及び芳香族オキシ酸よりなる群から選択される少なくとも一種のオキシ酸を、pH調整剤として、添加しても良い。
【0045】前記オキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α-オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びクエン酸等の脂肪族オキシ酸、並びにサリチル酸、m-オキシ安息香酸、p-オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、及びトロバ酸等の芳香族オキシ酸を挙げることができる。これらの中でも、脂肪族オキシ酸が好ましく、特にグリコール酸と乳酸とが好ましい。
【0046】この発明においては、この発明の目的を達成することができる範囲内で、前記窒素原子含有モノカルボン酸と、他の酸、例えば、無機酸、有機酸、分子内に少なくとも2個のカルボキシル基を有するカルボン酸、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸等、分子内に少なくとも1個の窒素原子を含み、少なくとも2個のカルボキシル基を有するカルボン酸、例えば、含窒素原子ジカルボン酸、含窒素原子トリカルボン酸等とを併用することができる。
【0047】前記無機酸としては、例えば、一般の無機酸、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等を挙げることができる。
【0048】前記有機酸としては、例えば、水溶性の有機酸、例えば、酢酸、蟻酸、安息香酸、オキシ酸等を挙げることができる。」

(4)「【0061】-バインダ-
前記バインダとしては、例えば、澱粉及びその変性物、ポリビニルアルコール及びその変性物、SBRラテックス、NBRラテックス、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の有機物等を採用することができる。好適なバインダとしては、芳香族アルデヒドでアセタール化度を5?10mol%、分子量が15×10^(4)以上である水系溶媒に可溶なポリビニルアセタール樹脂、ケン化度が80?99.8mol%のポリビニルアルコール、及びアルコール系溶媒に可溶なポリアミドからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を採用することができる。」

(5)「【0063】インクジェット被記録材用処理剤におけるこのバインダの含有量は、インクジェット被記録材用処理剤により形成される必要な膜厚に応じて変化するのであるが、通常、固形分比でアルミナ/バインダ比(重量比)が5/1?12/1となるように、好ましくは5/1?10/1となるように、更に好ましくは5/1?7/1となるように決定される。
【0064】前記アルミナと前記バインダとの重量比が上記上限を上回る場合には、後述する被記録材において、前記インク定着層と被記録材との接着力が実用に耐えられない程度にまで低下してしまうことがある。
【0065】また前記アルミナと前記バインダとの重量比が上記下限を下回る場合には、後述する被記録材において、インクの吸収力が弱くなり、インクの定着性が低下してしまうことがある。」

(6)「【0071】-インクジェット被記録材用処理剤-
この発明に係るインクジェット被記録材用処理剤は、例えば、前記アルミナ分散液と、前記バインダ液とを混合すること、前記アルミナ分散液中に予めバインダ成分を配合すること等により得ることができ、得られたアルミナ分散処理液を、例えば、超音波脱泡法、真空脱泡法等により脱泡処理するのが好ましい。」

(7)「【0083】
【実施例】(実施例1)水35重量部、イソプロピルアルコール20重量部及びエチレングリコール10重量部よりなる水系混合溶媒にニコチン酸2重量部を添加し、δ-アルミナ(デグザ社製、商品名:Al2O3C、平均一次粒径:13nm)35重量部をバタフライミキサーを使用して粗混合した後に、ビーズミルを用いて高速分散させることによりアルミナ分散液を得た。このアルミナ分散液の粘度は、120cps(BL型回転粘度計、測定温度:20℃)であった。このアルミナ分散液のpHをpH測定機で測定し、その値を表1に示した。
【0084】次に、前記アルミナ分散液100重量部に対して、ポリビニルアセタール樹脂(アセタール化度:8mol%、分子量:18×10^(4)、積水化学工業株式会社製、商品名:エスレックKX-1、純分:8重量%)60重量部を添加し、更に変性シリコーンオイル(東レダウコーニング社製、商品名:SF8427)0.1重量部を加え、ミキサーを用いて混合分散することにより、インクジェット被記録材用処理剤を得た。このインクジェット被記録材用処理剤の粘度は、600cps(BL型回転粘度計、測定温度:20℃)であった。また、常温下にこのインクジェット被記録材用処理剤を30日保持し、30日目のこのインクジェット被記録材用処理剤の粘度を前記粘度計により測定した。その測定値を表1に示した。
【0085】このインクジェット被記録材用処理剤を用いて、インクジェット用光沢フィルムを作成した。このとき、フィルムに白PET(ポリエチレンテレフタレート、ICI社製、商品名:D534、厚み:100μm)を使用し、ドクターブレードにより塗工し、初期乾燥に、50℃-3分の恒温槽にて乾燥した後に、120℃-2分で乾燥させ、乾燥膜厚が35μmになるように処理を行い、インクジェット用光沢フィルムを得た。
【0086】このインクジェット用光沢フィルムにエプソン社製のプリンタPM-700Cを用いてカラー印字を行い、以下の評価項目につき印字評価、塗膜の評価及び処理剤の安定性の評価を行った。」

(8)「【0104】(実施例2)実施例1において、ニコチン酸2重量部の代わりに、ニコチン酸1重量部とグリシン0.5重量部とを用い、オキシ酸として乳酸を用いたことの外は、前記実施例1と同様に実施した。評価結果を表1に示した。」

(9)「【0107】
【表1】



(10)「【0123】
【発明の効果】この発明によると、高光沢、高吸収性、優れた耐水性、並びに優れたドットの再現性及び真円性を与える被記録材の製造に有用なインクジェット被記録材用処理剤及びこれを利用して製造されたところの高光沢、高吸収性、優れた耐水性、並びに優れたドットの再現性及び真円性を与える被記録材を提供することができる。」

(11)上記(1)ないし(10)から、引用例には、
実施例2を例とした、
「窒素原子を含むモノカルボン酸、及び水系分散媒に分散された微細なアルミナを含有し、弱酸に調整されてなるアルミナ分散液と、
所定のバインダ成分、添加剤、及び溶媒等を配合してなるバインダ液とを混合することにより、
被記録基材上に処理することにより被記録基材上にインク定着層を形成するアルミナ分散処理液からなる、高光沢、高吸収性、優れた耐水性、並びに優れたドットの再現性及び真円性を与える被記録材の製造に有用なインクジェット被記録材用処理剤を得ることができる、
インクジェット被記録材用処理剤の製造方法において、
前記アルミナをより効果的に分散させることができるようにするために、また、前記バインダ液と前記アルミナ分散液とを混合してアルミナ分散処理液を得、このアルミナ分散処理液を被記録基材上に処理することにより被記録基材上にインク定着層を形成する場合等において、被記録基材上の塗膜、得られる記録媒体に印字した画像等における不具合をより効果的に防止すること、例えば、黄変、発色不良等をより効果的に抑制することができるようにするために、前記窒素原子含有モノカルボン酸の前記アルミナ100重量部に対する添加量を0.5?10重量部とし、
該モノカルボン酸を、生体に対する安全性が高い等の利点も有する、ニコチン酸及びグリシンとし、
前記アルミナ分散液のpHをオキシ酸により調整し、
前記アルミナを気相法により製造し、
前記バインダ成分を、ポリビニルアセタール樹脂又はポリビニルアルコール樹脂とし、
前記アルミナと前記バインダ成分との重量比が12/1を上回る場合には、前記インク定着層と被記録材との接着力が実用に耐えられない程度にまで低下してしまうことがあり、前記アルミナと前記バインダ成分との重量比が5/1を下回る場合には、インクの吸収力が弱くなり、インクの定着性が低下してしまうことがあるので、前記アルミナとバインダとの固形分換算でのアルミナ/バインダ比が、5/1?12/1であるインクジェット被記録材用処理剤の製造方法であって、
前記アルミナとバインダとの固形分換算でのアルミナ/バインダ比を好ましい範囲である5/1?10/1とし、
前記窒素原子含有モノカルボン酸の前記アルミナ100重量部に対する添加量を、好ましい範囲である1?5重量部とし、
前記オキシ酸としては、好ましいとされている乳酸を使用し、
例えば、
水35重量部、イソプロピルアルコール20重量部及びエチレングリコール10重量部よりなる水系混合溶媒にニコチン酸1重量部とグリシン0.5重量部と乳酸0.5重量部とを添加し、δ-アルミナ(デグザ社製、商品名:Al2O3C、平均一次粒径:13nm)35重量部をバタフライミキサーを使用して粗混合した後に、ビーズミルを用いて高速分散させることにより、粘度が120cps(BL型回転粘度計、測定温度:20℃)、pH測定機で測定したpHが4.5のアルミナ分散液を得る第1工程と、
第1工程で得たアルミナ分散液100重量部に対して、前記バインダ液として、ポリビニルアセタール樹脂(アセタール化度:8mol%、分子量:18×10^(4)、積水化学工業株式会社製、商品名:エスレックKX-1、純分:8重量%)を60重量部を添加し、更に変性シリコーンオイル(東レダウコーニング社製、商品名:SF8427)0.1重量部を加え、ミキサーを用いて混合分散することによりアルミナ分散処理液を得る第2工程とからなる、
インクジェット被記録材用処理剤の製造方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「『ミキサー』、『ミル』」、「『気相法により製造』した『アルミナ』、『δ-アルミナ(デグザ社製、商品名:Al2O3C、平均一次粒径:13nm)』」、「乳酸」、「水」、「アルミナ分散液」、「『粗混合』した後に、『高速分散』させる『アルミナ分散液を得る第1工程』」、「ポリビニルアルコール」、「インクジェット被記録材用処理剤」、「ミキサーを用いて混合分散することによりアルミナ分散処理液を得る第2工程」及び「インクジェット被記録材用処理剤の製造方法」は、それぞれ、本願発明の「『分散機』又は『ミキサー』」、「気相法により製造された酸化アルミニウム粒子(a)」、「ヒドロキシカルボン酸(b)」、「水(c)」、「水分散体(d)」、「混合分散工程」、「ポリビニルアルコール」、「インク受容層形成用材料」、「混合工程」及び「インク受容層形成用材料の製造方法」に相当する。

(2)引用発明の「水分散体(d)(アルミナ分散液)」は、「酸化アルミニウム粒子(a)(δ-アルミナ(デグザ社製、商品名:Al2O3C、平均一次粒径:13nm))」の重量は「35重量部」、「ヒドロキシカルボン酸(b)(乳酸)」の重量は「0.5重量部」、「水(c)(水)」の重量は「35重量部」であるから、引用発明の「水分散体(d)」の、酸化アルミニウム粒子(a)、ヒドロキシカルボン酸(b)及び水(c)の合計重量に基づく酸化アルミニウム粒子(a)の含有量は、「49.6(=35÷(35+0.5+35))重量%」になる。
したがって、引用発明の「水分散体(d)」と本願発明の「酸化アルミニウム粒子(a)の含有量が酸化アルミニウム粒子(a)、ヒドロキシカルボン酸(b)及び水(c)の合計重量に基づいて40?60重量%である水分散体(d)」とは「酸化アルミニウム粒子(a)の含有量が酸化アルミニウム粒子(a)、ヒドロキシカルボン酸(b)及び水(c)の合計重量に基づいて49.6重量%である」点で一致する。

(3)引用発明では、バインダ成分の例として、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられており、これの純分すなわち固形分が8重量%のものを60重量部を添加しており、アルミナの量が35重量部であり、バインダの固形分の量が4.8(=0.08×60)重量部であるから、アルミナとバインダとの固形分換算でのアルミナ/バインダ比は7.3/1であることになり、好ましい範囲である5/1?10/1の範囲内にあるところ、引用発明では、バインダ成分の例として、ポリビニルアルコール樹脂も挙げてあるから、引用発明では、バインダ成分として、ポリビニルアルコール樹脂の純分すなわち固形分が8重量%のものを60重量部を添加して、アルミナとバインダとの固形分換算でのアルミナ/バインダ比を7.3/1として、好ましい範囲である5/1?10/1の範囲内としてもよいものであるといえる。そしてポリビニルアルコール樹脂は温水に可溶である。
したがって、引用発明の「『純分すなわち固形分が8重量%』の『ポリビニルアルコール樹脂』60重量部を添加して、『アルミナとバインダとの固形分換算でのアルミナ/バインダ比を7.3/1として、好ましい範囲である5/1?10/1の範囲内』とした『所定のバインダ成分、添加剤、及び溶媒等を配合してなるバインダ液』」は、水溶液であるといえ、本願発明の「5?15重量%のポリビニルアルコール水溶液(e)」と、「8重量%のポリビニルアルコール水溶液」である点で一致するといえる。

(4)上記(1)ないし(3)から、本願発明と引用発明とは、
「分散機又はミキサーを用いて、気相法により製造された酸化アルミニウム粒子(a)、ヒドロキシカルボン酸(b)及び水(c)を混合分散して、酸化アルミニウム粒子(a)の含有量が酸化アルミニウム粒子(a)、ヒドロキシカルボン酸(b)及び水(c)の合計重量に基づいて49.6重量%である水分散体(d)を得る混合分散工程と、
水分散体(d)と8重量%のポリビニルアルコール水溶液とを均一混合して、インク受容層形成用材料を得る混合工程とを含む、インク受容層形成用材料の製造方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願発明では、遊星型分散機又は3軸遊星型ミキサーを用いるのに対して、引用発明では、遊星型分散機も3軸遊星型ミキサーも用いていない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)プラネタリーミキサーを用いてアルミナなどの無機微粒子を分散することは本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.いずれも当審拒絶理由で引用した、特開2002-321440号公報(【0014】、【0015】、【0020】参照。)、特開2003-82248号公報(【0002】、【0036】参照。)、特開2004-75839号公報(【0002】、【0040】参照。)、特開2004-168918号公報(【0030】、【0031】参照。)、特開2004-276419号公報(【0012】、【0051】参照。)、特開2005-59418号公報(【0039】、【0040】参照。))。

(2)プラネタリーミキサーを用いて粒子を水溶液に混合分散することは本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開平5-214053号公報(【0044】参照。)、特開平9-157309号公報(【0062】参照。)、特開2004-185810号公報(【0175】参照。)、特開2007-149440号公報(【0026】参照。))。

(3)上記(1)及び(2)からみて、引用発明において、混合分散工程にプラネタリーミキサーを用いること、すなわち、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1及び周知技術2に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(4)また、上記4(3)において、引用発明のバインダ液が「ポリビニルアルコール樹脂の固形分が8重量%の水溶液」であるとまでは仮にいえないとしても、引用発明では、「ポリビニルアセタール樹脂の純分すなわち固形分を8重量%含み、添加剤、及び溶媒等を配合してなるバインダ液」が例示されており、バインダ成分の例としてポリビニルアルコール樹脂も挙げてあり、ポリビニルアルコール樹脂は温水に可溶であるから、引用発明において、バインダ液を「固形分が8重量%のポリビニルアルコール樹脂水溶液」となすことは、当業者が引用発明に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(5)本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(6)したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-01 
結審通知日 2013-11-12 
審決日 2013-11-25 
出願番号 特願2008-155338(P2008-155338)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 里村 利光  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 西村 仁志
清水 康司
発明の名称 インク受容層形成用材料の製造方法  
代理人 櫻井 健一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ