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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1283865
審判番号 不服2013-8782  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-14 
確定日 2014-02-12 
事件の表示 特願2007-532420「高速なビデオ・フレーム/フィールド符号化を行う方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月30日国際公開、WO2006/033915、平成20年 5月 1日国内公表、特表2008-514120、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2005年(平成17年)9月14日(パリ条約による優先権主張、2004年(平成16年)9月16日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年9月1日付けで手続補正がなされ、平成23年7月1日付けで拒絶理由が通知され、平成23年12月28日付けで手続補正がなされ、さらに、平成24年6月7日付けで拒絶理由が通知され、平成24年12月11日付けで手続補正がなされたが、平成25年1月8日付けで拒絶査定がなされたものであり、これを不服とし、平成25年5月14日に本件審判請求がなされた。

第2.拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない」というものであり、その内容は、平成25年1月8日付けの拒絶査定の備考欄によれば、以下のとおりである。

「(1)請求項1には、「帯域通過/高域フィルタの適応性しきい値を使用して前記複数の画素の少なくとも一部をエッジ画素として分類し」と記載されているが、意見書の主張を参酌しても、該記載は、日本語の文章としても、技術的にも不明確であり、どのような処理を表しているのかが不明確である。詳細は以下の通りである。

(i)上記記載では、「帯域通過/高域フィルタ」は、何に対して、どのように適用されるのかが不明確である。
出願人は、この点について、意見書において、明細書の0034段落に記載がある旨を述べているが、請求項1には、「帯域通過/高域フィルタ」が、何に対して、どのように適用されるのかについては何ら記載がないのであるから、請求項1の記載は不明確と言わざるを得ない。

(ii)上記記載では、「しきい値」は、何と比較されるのかが不明確である。
出願人は、この点について、意見書において、明細書の0061段落に記載がある旨を述べているが、請求項1には、「しきい値」が何と比較されるのかについては何ら記載がないのであるから、請求項1の記載は不明確と言わざるを得ない。

(iii)上記(i)(ii)の点が不明確であり、かつ、「フィルタの……しきい値を使用」という記載は、日本語の文章表現としても不明確であるから、「帯域通過/高域フィルタ」と「しきい値」の間の技術的関係が不明確である。
出願人は、この点について、意見書において、明細書の0061段落に記載がある旨を述べているが、上記記載はそもそも、日本語の文章表現として不明確であり、また、該記載は、「帯域通過/高域フィルタ」と「しきい値」の間の技術的関係を何ら特定するものでもないから、請求項1の記載は不明確と言わざるを得ない。

(iv)「適応性しきい値」とは、何をもって「適応性」と言い得るのかが不明確である。なお、「適応性」という用語からは、「しきい値」が、何らかの要因によって変化し得るものであるということは把握できるが、当該「しきい値」は、一体、何によって変化するものであるのかが不明確である。
出願人は、この点について、意見書において、明細書の0071段落に記載がある旨を述べているが、請求項1には、「しきい値」が何によって変化するものであるのかについては何ら記載がないのであるから、請求項1の記載は不明確と言わざるを得ない。

また、上記(i)?(iv)の点は、請求項2においても明らかにされておらず、同様に不明確であり、上記(ii)?(iv)の点は、請求項3、4においても同様に不明確である。

(2)請求項4には、「前記判定するステップは、前記判定に、前記帯域通過/高域フィルタによって得られた分類結果を利用するステップを含む」と記載されているが、「前記判定するステップは、……するステップを含む」という記載では、「前記判定に、前記帯域通過/高域フィルタによって得られた分類結果を利用するステップ」と「前記判定するステップ」の間の技術的関係が不明確であり、一体、「判定するステップ」の中で、「分類結果」が、どのように利用されることを意味しているのかが不明確である。

よって、請求項1?4に係る発明は明確でない。」

第3.特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は以下のとおりものである。

「【請求項1】
複数のマクロブロックをマクロブロック群として割り当てることができる、複数のマクロブロックに分割可能な画像のビデオ・データをエンコードする装置であって、
モーション・アクティビティ検出器と、
前記モーション・アクティビティ検出器への前記ビデオ・データの入力に応答して、フレーム・モードまたはフィールド・モードの一方でのエンコードに前記マクロブロック群を割り当てるエンコーダと、
を含み、
前記マクロブロック群が、垂直方向に隣接する一対のマクロブロックからなるスーパー・マクロブロックであり、前記モーション・アクティビティ検出器が、帯域通過/高域フィルタであり、
前記スーパー・マクロブロックが、さらに、複数の画素を含み、
前記エンコーダが、帯域通過/高域フィルタの適応性しきい値を使用して前記複数の画素の少なくとも一部をエッジ画素として分類し、エッジ画素を加算してその合計を求め、前記合計を別の事前に指定されたしきい値と比較して、前記スーパー・マクロブロックがフレーム・モードに分類されるかフィールド・モードに分類されるかを判定する、前記装置。
【請求項2】
前記判定が、画像に対する前記帯域通過/高域フィルタの適用に応答して行われる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
画像のビデオ・データをエンコードする方法であって、
前記画像に垂直に適用される帯域通過/高域フィルタを使用して、前記画像内の垂直方向に隣接する一対のマクロブロックからなるスーパー・マクロブロックをフレーム・モードまたはフィールド・モードの一方に分類するステップを含み、
前記スーパー・マクロブロックが、さらに、複数の画素を含み、
前記分類ステップが、
前記帯域通過/高域フィルタの適応性しきい値を使用して、前記複数の画素の少なくとも一部をエッジ画素として分類するステップと、
エッジ画素を加算してその合計を求めるステップと、
前記合計を別の事前に指定されたしきい値と比較して、前記スーパー・マクロブロックがフレーム・モードに分類されるかフィールド・モードに分類されるかを判定するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項4】
前記判定するステップは、前記判定に、前記帯域通過/高域フィルタによって得られた分類結果を利用するステップを含む、請求項3に記載の方法。」

第4.当審の判断
1.請求項1の「帯域通過/高域フィルタの適応性しきい値を使用して前記複数の画素の少なくとも一部をエッジ画素として分類し」との記載について

(1)「帯域通過/高域フィルタ」は、何に対して、どのように適用されるのかが不明確である点について
請求項1に係る発明は、その記載によると、「画素」「をエッジ画素として分類」するのに「帯域通過/高域フィルタの適応性しきい値を使用」するものである。この帯域通過/高域フィルタが、何に対して、どのように適用されるのかについては、請求項1には規定されていないから、確かに、その点は不明である。
しかしながら、請求項1に係る発明は、帯域通過/高域フィルタに関しては、画素をエッジ画素として分類するのに使用するとのみ規定されている発明であって、帯域通過/高域フィルタが、何に対して、どのように適用されるのかが不明であるからといって、そのことから直ちに発明が明確でないとはいうことはできない。
画素をエッジ画素として分類するのに、帯域通過/高域フィルタを使用するということ自体は、当業者にとって技術的に明確であり、帯域通過/高域フィルタが、何に対して、どのように適用されるのかに拘わらず、発明は明確である。

(2)「しきい値」は、何と比較されるのかが不明確である点について
請求項1に係る発明は、その記載によると、「画素」「をエッジ画素として分類」するのに「帯域通過/高域フィルタの適応性しきい値を使用」するものである。このしきい値が、何と比較されるのかについては、請求項1には規定されていないから、確かに、その点は不明である。
しかしながら、請求項1に係る発明は、しきい値に関しては、画素をエッジ画素として分類するのに使用するとのみ規定されている発明であって、しきい値が何と比較されるのかが不明であるからといって、そのことから直ちに発明が明確でないとはいうことはできない。
画素をエッジ画素として分類するのに、しきい値を使用するということ自体は、当業者にとって技術的に明確であり、しきい値が、何と比較されるのかに拘わらず、発明は明確である。

(3)「フィルタの……しきい値を使用」という記載は、日本語の文章表現としても不明確であるから、「帯域通過/高域フィルタ」と「しきい値」の間の技術的関係が不明確である点について
請求項1に係る発明は、その記載によると、「画素」「をエッジ画素として分類」するのに「帯域通過/高域フィルタの適応性しきい値を使用」するものであり、また、ある画素をエッジ画素として分類する処理のために、フィルタやしきい値を使用することは、画像処理技術においては常識といえることであるから、請求項1の「フィルタの・・・しきい値を使用して・・・エッジ画素として分類する」との記載は、フィルタやしきい値を使用してエッジ画素として分類することとして当業者には理解できるものであり、この理解は、明細書の発明の詳細な説明における、「モーション・エッジ(moving edge)の検出中には、適応しきい値が適用される。」(【0031】)、「帯域通過/高域フィルタは、エッジ検出に使用されるフィルタ、エッジ検出器、・・・にすることができる」(【0034】)との記載と整合したものである。
確かに、フィルタのしきい値という表現は、“フィルタが持っているしきい値”との意ともとれ、フィルタがしきい値を持つのは一般的でないから、文言上は適切な表現ではないとも考えられるが、この表現は、上述したように、明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の技術常識を基礎として合理的、整合的に理解できるものであって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。

(4)「適応性しきい値」とは、何をもって「適応性」と言い得るのかが不明確である点について
請求項1に係る発明は、その記載によると、「画素」「をエッジ画素として分類」するのに「帯域通過/高域フィルタの適応性しきい値を使用」するものである。この「適応性しきい値」とは、何をもって「適応性」と言い得るのか、何によって変化するものであるのかについては、請求項1には規定されていないから、確かに、その点は不明である。
しかしながら、請求項1に係る発明は、適応性しきい値を使用するとのみ規定されている発明であり、しきい値は何かに適応して変化するものであれば足りるものであって、何によって変化するものであるのかが不明であるからといって、そのことから直ちに発明が明確でないとはいうことはできない。
画素をエッジ画素として分類するのに使用するしきい値が適応性のものであるということ自体は、当業者にとって技術的に明確であり、しきい値が何によって変化するものであるのかに拘わらず、発明は明確である。

(5)請求項2-4について
上述した(1)-(4)で検討した請求項1の発明特定事項は、請求項2-4にも同じ事項が存在する。これらについても上述の検討と同様であり、請求項2-4に係る発明はこれらの点において明確なものである。

2.請求項4の「前記判定するステップは、前記判定に、前記帯域通過/高域フィルタによって得られた分類結果を利用するステップを含む」との記載について

(1)「前記判定するステップは、……するステップを含む」という記載では、「前記判定に、前記帯域通過/高域フィルタによって得られた分類結果を利用するステップ」と「前記判定するステップ」の間の技術的関係が不明確であり、一体、「判定するステップ」の中で、「分類結果」が、どのように利用されることを意味しているのかが不明確である点について
請求項4は請求項3を引用して次のように記載されている。
「前記判定するステップは、前記判定に、前記帯域通過/高域フィルタによって得られた分類結果を利用するステップを含む、請求項3に記載の方法。」
また、請求項3に係る発明は、「画像のビデオ・データをエンコードする方法であって、・・・帯域通過/高域フィルタ・・を使用して、・・エッジ画素として分類するステップと、エッジ画素を加算してその合計を求めるステップと、前記合計を・・比較して・・判定するステップと、を含む、前記方法。」であり、ここで、判定するステップは、帯域通過/高域フィルタによる分類結果を利用しているといえる。
したがって、請求項4は、請求項3においてすでに記載した事項を換言して「前記判定に、前記帯域通過/高域フィルタによって得られた分類結果を利用するステップ」と記載したものであると理解できる。このことは、発明の詳細な説明における、「帯域通過フィルタを現在のフレームに適用した後で、モーション・エッジが画像中に存在するか否かを判定する。フィルタリング後は、フィルタリング済みの出力はI_(BP)(x,y)であるものと仮定する。」(【0058】)、「しきい値処理済みの画像M(x,y)は、絶対値IBP(x,y)を取り込み、その値をしきい値T_(1)と比較することによって生成される。すなわち、以下のようになる。
M(x,y)=1 if|I_(BP)(x,y)|>T_(1)
0 その他の場合
スーパーMB Eのマスクは、次のように設定される。
MASK(E)=1 ifΣM(x,y)>T_(2)
0 その他の場合」
(【0060】-【0063】)、「MBAFF判定の場合は、MASK(E)=1である場合には、スーパーMB Eをフィールド・モードで符号化し、そうでない場合には、スーパーMBをフレーム・モードで符号化する。」(【0067】)との記載と整合したものである。すなわち、上記M(x,y)が請求項4の「分類結果」に対応するものである。
したがって、「前記判定に、前記帯域通過/高域フィルタによって得られた分類結果を利用するステップ」と「前記判定するステップ」の間の技術的関係は、「判定するステップ」の中で、「分類結果」を、「前記合計を別の事前に指定されたしきい値と比較」するように利用するということを意味していると理解でき明確なものである。

3.まとめ
したがって、原査定の拒絶の理由によっては、請求項1-4に係る発明が明確でないとすることはできない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-01-30 
出願番号 特願2007-532420(P2007-532420)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 渡邊 聡
千葉 輝久
発明の名称 高速なビデオ・フレーム/フィールド符号化を行う方法および装置  
代理人 吹田 礼子  
代理人 木越 力  
代理人 倉持 誠  
代理人 石井 たかし  

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