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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1283951
審判番号 不服2013-15196  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-07 
確定日 2014-01-24 
事件の表示 特願2008-109837「感熱記録体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-255469〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年4月21日の出願であって、平成24年8月16日付け及び平成25年3月18日付けで手続補正がなされ、同年4月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成25年3月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成25年3月18日付け補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「基材上に形成された感熱層の上にバリアー層が設けられ、バリアー層の上に接着剤層を介して合成樹脂フィルムが積層貼着されてなる感熱記録体であって、バリアー層がPVA樹脂を50%以上含有し、接着剤層に紫外線吸収剤として2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールが含有され、接着剤層の塗工量が6.0?10.0g/m^(2)であって、合成樹脂フィルムが耐熱滑性層表面処理をした2.5?6.0μm厚のPETフィルムであり、キセノンロングライフフェードメーター試験機で光照射を100時間行っても変退色しないことを特徴とする感熱記録体。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-95094号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
(1)「2.特許請求の範囲
(1) 支持体上に感熱発色層を有する感熱記録ラベルにおいて、該感熱発色層の上部に水溶性高分子を主体とする中間層を設けさらに該中間層の上部に粘着剤付高分子フィルムをラミネートした保護層を設けるとともに、支持体の裏面に粘着剤層及び剥離台紙を設けたことを特徴とする感熱記録ラベル。」(1頁左下欄3?10行)

(2)「(産業上の利用分野)
本発明はPOSシステム用のバーコードラベルや、価格表示ラベル類、その他配送、出向用ラベル、繰り返し使用する部品等のチェックを必要とする用途に適応する感熱記録ラベルに関するものである。」

(3)「(従来の技術)
近年、感熱記録紙を感熱記録型の各種ラベルとして利用することが種々提案されている。
このような感熱記録型ラベルの場合、その印字方式はサーマルヘッド(ライン型、スタンプヘッド型)によるものであり、従来のインク又はインクリボンによる印字方式のものに比して簡単かつ美しく行い得るという利点を備えている。
しかしながら、商品の取り扱われる環境によっては薬品、油や水等が感熱発色層に浸透すると印字部(発色部)がカブリや消色、という問題が発生するしスキャナー等による印字部の読み取りが難しくなったりする。
又、商品ケース等に添付されたラベルは、流通段階における照合などの商品管理のため繰り返しスキャナー等で読み取り操作されることが多く印字部がこすられ損傷してスキャナー等による読み取りが不可能となることが多い。」

(4)「(発明が解決しようとする問題点)
かかる問題点を解決する方法の1つとして感熱発色層上に特殊な保護層を塗布した感熱記録シート又はラベルとして実開昭56-125354、実開昭57-139972、特開昭48-30437、特開昭48-31958、特開昭48-51644、特開昭54-111837、特開昭54-128347が提案されている。
しかしながらこれらの感熱記録シート又はラベルは、水や薬品、油の少量又は、短時間の接触に対してはなんとか耐性があるものの接触する量が多くなったり、時間が長くなるとほとんど効果示さなくなる。保護層の間を薬品や油が浸透してしまう。
又、耐損傷性という観点でも同じことが言え、少しの圧力、ひっかきに対してはなんとか耐性あるものの、強い圧力、ひっかき、タッチ式スキャナー等による数度の繰り返しによるこすり等では簡単に保護層が傷つけられその役目をはたさない。
本発明者等はこれらの欠点を解決するために鋭意検討した結果、感熱層の上に粘着剤付薄い透明フィルムを低温でラミネートすることにより、熱発色させることなく感熱層の上に耐傷性の良好な高分子フィルム層を設け、表面の汚れの除去が容易で且つ耐水性や耐溶剤性に優れる上、タッチ式のスキャナーの繰り返し読み取り操作等による摩擦によっても印字部の記録画像が全く損なわれることなく感熱発色層の保護がなされ、しかもかかる機能を有する高分子フィルム層が形成された後に感熱記録が行なう初期の目的は達せられた。
しかしここに1つ新しい問題点が発生した。それは高分子フィルムを感熱発色層とはり合わせるのに使用する粘着剤によって、長期間経時しておくと印字部(発色部)が消色してしまうという問題点である。これを解決する手段として感熱発色層と粘着剤層の間に水溶性高分子を主体とする中間層を設けることにより達成できた。
従って、本発明の第1の目的は対表面汚れや耐傷性に優れた感熱記録ラベルを提供することにある。
本発明の第2の目的は強じんな表面保護層を有しているにもかかわらず、支障なく感熱記録を行なうことができる感熱記録ラベルを提供することにある。
本発明の第3の目的は薬品、油、水によるカブリ、消色を完全に防ぐことができる感熱記録ラベルを提供することにある。
本発明の第4の目的はどのような粘着剤が使用されても印字部(発色体)の消色は防ぐことができる感熱記録ラベルを提供することにある。」

(5)「(問題点を解決するための手段)
本発明の上記の諸目的は支持体上に感熱発色層を有する感熱記録ラベルにおいて該感熱発色層の上部に水溶性高分子を主体とする中間層を設け、さらに該中間層の上部に粘着剤付高分子フィルムをラミネートした保護層を設けるとともに支持体の裏面に粘着剤層及び剥離台紙を設けた感熱記録ラベルによって達成された。」

(6)「以下本発明の感熱記録ラベルを添付図面に従って詳細に説明する。
第1図 符号lは高分子フィルム、2は粘着剤層、3は中間層、4は感熱発色層、5は支持体、6は粘着剤層、7は剥離台紙である。
本発明の記録シートは、感熱発色層の上部に高分子量の透明フィルムを有しているので、表面が汚れてもその汚れを容易に拭き取ることができ、又、記録自体が水、溶剤等の化学的原因や引っかき等の機械的原因によって後から損傷されることがない、更に、表面透明フィルムの厚みを十分小さくすることにより、保護層として強靭な効果を維持したまま、保護層の上から通常の方法により、容易に熱記録することができる。
本発明の感熱記録シートに使用する発色成分は、公知の芳香族ジアゾ化合物とカプラーの組み合わせ、又は、公知の塩基性染料前駆体と顕色剤の組み合わせの中から任意に選択して使用することができる。
上記芳香族ジアゾ化合物としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、ジアゾスルホネート化合物、ジアゾアミノ化合物等を挙げることができる。
これらのジアゾ化合物とカプラーの組み合わせを採用する場合には、発色促進の為に必要に応じて、公知の如く塩基性物質を併用しても良い。
本発明の感熱記録シートに使用する塩基性染料前駆体は、エレクトロンを供与するか、又は、酸等のプロトンを受容して発色する性質を有するものの中から任意に選択することができる。これらは通常はぼ無色で、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、顕色剤と接触して部分骨格が開環もしくは開裂する化合物である。具体的には、トリフェニルメタンメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、等があげられる。
…略…
本発明における感熱層は、発色成分及びバインダーに、他の添加剤、例えば増感剤、滑り剤(例えばワックス類)等を必要に応じ加えた塗布液を公知の方法によって塗布することにより容易に得ることができる。
本発明で使用する支持体は紙、合成紙や透明又は不透明高分子フィルム、金属フィルムの中から任意に選択することができる。
本発明における低温ラミネートは、公知の技術であるが、ラミネート後に熱記録できる程度に、ラミネートフィルムには耐熱性が要求される。本発明においては、ラミネートフィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、セルローストリアセテート等の繊維素誘導体等を使用することができるが、特に、透明性、耐熱性、コスト等の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。又、ラミネート後の記録に支障を来さない為には、ラミネートするフィルムの厚さを20μ以下とすることが好ましい。
又、この高分子フィルムに使用する粘着剤としては感熱発色層の上に必要な高分子を主体とした中間層を設けることにより特に限定する必要はなく一般ラベル用に使用されるゴム系アクリル系ビニール系シリコン系等の粘着剤で良い。粘着剤の塗設量としては10?30g/m^(2)が良い。
さらに本発明における中間層は水溶性高分子が主に使用されるが必要に応じて顔料、ワックス、増感剤等-緒に混合しても良い。
この中間層に使用される水溶性高分子として広く公知のものが使用できるが具体的にはポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ポリアクリルアミド、澱粉、スチレン-マレイン酸共重合体、イソブチレン-マレイン酸共重合体があげられる。
なお、これらの水溶性高分子との併用で例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステルのようなラテックス類も使用できる。又この水溶性高分子はこれを耐水化し得る慣用の耐水化剤を用いることができる。
粘着剤の浸透を防止するために必要なこれらの水溶性高分子の厚味としては通常0.5?10.0μ、好ましくは1.0?5.0μである。
この中間層に使用する水溶性高分子は必要に応じてさらに感熱発色層と支持体の間、又支持体の裏面と粘着剤の間にも介在させることができる。」

(7)「(発明の効果)
本発明の感熱記録シートは、表面に高分子量の強靭なフィルムをラミネートしてあるので、水は勿論、その他の油剤や溶剤が付着しても容易に拭き取ることができ、又、長時間溶剤等に接した場合であっても画像が損傷することがない。又、ラミネートフィルムは薄いので、その上から熱記録することができる。従って、従来のように熱記録してからラミネートするという煩雑な作業が不要となり極めて便利であり、特に、裏面に粘着層を有するラベルとした場合には、ラベルの価値を著しく向上させることができる。
又、水溶性高分子を主体とする中間層を設けであるため高分子フィルムに使用する粘着剤はどのような種類のものでも使用が可能となり印字部の消色の心配がなくなった。又、タッチ式スキャナーによる読み取りを従来以上に、多数回行っても画像が損傷されないので、記録内容が同一である限り、十分に長く使用することができ、更新の手間が省けるのみならず、コスト的な利点も大きい。」

(8)上記(1)ないし(7)から、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「感熱発色層の上に粘着剤付薄い透明フィルムを低温でラミネートすることにより、熱発色させることなく感熱発色層の上に耐傷性の良好な高分子フィルム層を設け、表面の汚れの除去が容易で且つ耐水性や耐溶剤性に優れる上、タッチ式のスキャナーの繰り返し読み取り操作等による摩擦によっても印字部の記録画像が全く損なわれることなく感熱発色層の保護がなされるようにしたところ、高分子フィルムを感熱発色層とはり合わせるのに使用する粘着剤によって、長期間経時しておくと印字部(発色部)が消色してしまうという問題点が発生したので、これを解決する手段として前記感熱発色層と粘着剤層の間に水溶性高分子を主体とする中間層を設けることにより、対表面汚れや耐傷性に優れ、強じんな表面保護層を有しているにもかかわらず、支障なく感熱記録を行なうことができ、薬品、油、水によるカブリ、消色を完全に防ぐことができ、どのような粘着剤が使用されても印字部(発色体)の消色は防ぐことができるようにした感熱記録ラベルであって、
支持体上に感熱発色層を有し、該感熱発色層の上部に水溶性高分子を主体とする中間層を設けさらに該中間層の上部に粘着剤付高分子フィルムをラミネートした保護層を設けるとともに、支持体の裏面に粘着剤層及び剥離台紙を設けた感熱記録ラベルにおいて、
前記ラミネートフィルムを、透明性、耐熱性、コスト等の観点から好ましいポリエチレンテレフタレートとし、その厚さを、ラミネート後の記録に支障を来さない為に20μ以下とし、
前記中間層に使用される水溶性高分子を、ポリビニルアルコールとし、
前記高分子フィルムに使用する粘着剤の塗設量を10?30g/m^(2)とした、
感熱記録ラベル。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「支持体」、「感熱発色層」、「中間層」、「高分子フィルムに使用する粘着剤の層」、「高分子フィルム」、「感熱記録ラベル」、「ポリビニルアルコールとした水溶性高分子」、「塗設量」及び「ポリエチレンテレフタレートとしたラミネートフィルム」は、それぞれ、本願発明の「基材」、「感熱層」、「バリアー層」、「接着剤層」、「合成樹脂フィルム」、「感熱記録体」、「PVA樹脂」、「塗工量」及び「PETフィルム」に相当する。

(2)引用発明の「接着剤層の塗工量(高分子フィルムに使用する粘着剤の塗設量)」の範囲「10?30g/m^(2)」と、本願発明の「接着剤層の塗工量」の範囲「6.0?10.0g/m^(2)」とは、「10.0g/m^(2)」の点で一致する。

(3)2.5?6.0μm厚は20μ以下であるから、引用発明の「PETフィルムの厚さ(ポリエチレンテレフタレートの厚さ)」20μ以下と、本願発明の「PETフィルムの厚さ」2.5?6.0μmとは、「20μm以下」である点で一致する。

(4)上記(1)ないし(3)から、本願発明と引用発明とは、
「基材上に形成された感熱層の上にバリアー層が設けられ、バリアー層の上に接着剤層を介して合成樹脂フィルムが積層貼着されてなる感熱記録体であって、バリアー層がPVA樹脂を50%以上含有し、接着剤層の塗工量が10.0g/m^(2)であって、合成樹脂フィルムが20μm以下の厚さのPETフィルムである、感熱記録体。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明では、前記接着剤層に紫外線吸収剤として2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールが含有されているのに対して、
引用発明では、前記接着剤層に紫外線吸収剤が含有されていない点。

相違点2:
前記接着剤層の塗工量の範囲が、本願発明では、「6.0?10.0g/m^(2)」であるのに対して、引用発明では、「10?30g/m^(2)」である点。

相違点3:
前記合成樹脂フィルムが、本願発明では、耐熱滑性層表面処理をした2.5?6.0μm厚のものであるのに対して、引用発明ではそのようなものではない点。

相違点4:
本願発明では、キセノンロングライフフェードメーター試験機で光照射を100時間行っても感熱記録体が変退色しないのに対して、引用発明では、感熱記録体が変退色しないかどうか不明である点。

5 判断
上記相違点1ないし4について検討する。
(1)相違点1及び4について
ア 感熱記録層の上方の接着剤層や中間層に紫外線吸収剤を含有させた感熱記録材料は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術1」という。例.いずれも原査定で引用された、特開平7-323662号公報(【0013】参照。)、特開平8-2102号公報(【0022】参照。)、特開2001-219651号公報(【0004】参照。)、特開2005-219409号公報(【0017】、【0018】、【0072】、実施例5、図1参照。))。また、周知技術1によれば感熱記録材料が長期保存においてもかぶりが生ぜず耐光性の優れたものになることが当業者に自明である(上記特開平7-323662号公報の【0001】、【0008】、【0011】及び【0017】参照。)。

イ 紫外線吸収剤であるTINUVIN571(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術2」という。例.特開2006-239517号公報(【0038】参照。)、特開2005-178331号公報(【0178】参照。)、特開2004-26940号公報(【0028】参照。)、特開平8-311284号公報(【0071】、12頁19行参照。))。

ウ 引用発明の課題は、長期間経時しておくと印字部(発色部)が消色してしまうという問題点を解決することにあるところ、上記ア及びイからみて、引用発明において、長期保存においてもかぶりが生ぜず耐光性の優れたものにするために、前記高分子フィルムに使用する粘着剤にTINUVIN571(2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール)などの紫外線吸収剤を含有させることは、当業者が周知技術1及び2に基づいて容易に想到することができた程度のことである。
そして、長期保存においてもかぶりが生ぜず耐光性の優れたものとなったかどうかを、キセノンロングライフフェードメーター試験機で光照射を100時間行って、変退色しなかったかどうかで判定し、変退色しなかったものを、長期保存においてもかぶりが生ぜず耐光性の優れたものとして採用するようになすこと、すなわち、引用発明において上記相違点4に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。

エ 請求人は、審判請求書において、
a バリアー層がPVA樹脂を50%以上含有すること、
b 接着剤層に紫外線吸収剤として2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールが含有されること、
c 接着剤層の塗工量が6.0?10.0g/m^(2)であること、
d 合成樹脂フィルムが耐熱滑性層表面処理をした2.5?6.0μm厚のPETフィルムであること、
のすべてを満たすものに限って
「キセノンロングライフフェードメーター試験機で光照射を100時間行っても変退色しない」ことに成功し、上記aないしdのいずれか一つでも満たさないものが「キセノンロングライフフェードメーター試験機で光照射を100時間行うと変退色する」のに比較して優れているといった主張をしているが、上記aないしdのすべてを満たすものが必ずしも「キセノンロングライフフェードメーター試験機で光照射を100時間行っても変退色しない」とは限らないことは、本願の試験例11(出願時の実施例11)の結果から明らかである。
したがって、本願の発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明において、紫外線吸収剤として「2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール」を用いた点に、設計上の事項を超える技術上の意義があるとは解せない。

オ 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1及び4に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1及び2に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(2)相違点2について
引用発明において、前記「接着剤層の塗工量」の範囲は「10?30g/m^(2)」とされてるから、その塗工量をその範囲内の「10g/m^(2)」となすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。
したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。

(3)相違点3について
ア 耐熱滑性層表面処理をした3.0?6.0μm厚の合成樹脂フィルムを感熱記録体の上面に設けたものは、本願の出願前に周知である(以下「周知技術3」という。例.上記特開平8-2102号公報(【0028】、図1参照。)、特開平5-318912号公報(【0016】の保護フィルムの厚みの下限「3μm」の記載、【0017】、【0018】、図2参照。))。

イ 引用発明は、タッチ式のスキャナーの繰り返し読み取り操作等による摩擦によっても印字部の記録画像が全く損なわれることなく感熱発色層の保護がなされ、対表面汚れや耐傷性に優れ、強じんな表面保護層を有しているるものであるところ、引用発明において、さらに耐傷性等に優れたものとなすために、前記「PETフィルム(ポリエチレンテレフタレート)」を、耐熱滑性層表面処理をした3.0?6.0μm厚のものとなすこと、すなわち、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術3に基づいて容易になし得た程度のことである。

(4)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1の奏する効果、周知技術2の奏する効果及び周知技術3の奏する効果から当業者が予測することができた程度のものである。

(5)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-11 
結審通知日 2013-11-05 
審決日 2013-11-18 
出願番号 特願2008-109837(P2008-109837)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 里村 利光  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鉄 豊郎
清水 康司
発明の名称 感熱記録体  
代理人 ▲桑▼原 史生  

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