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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1284701 |
審判番号 | 不服2013-3277 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-20 |
確定日 | 2014-02-13 |
事件の表示 | 特願2009- 20100「帯電防止性粘着シート」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月12日出願公開、特開2010-177542〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成21年1月30日の特許出願であって、同24年11月12日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。 これに対し、平成25年2月20日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲について手続補正書が提出され、同25年10月2日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同25年12月9日に意見書とともに特許請求の範囲についてさらに手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成25年12月9日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 「 【請求項1】 基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた粘着剤層とを備えた半導体加工用の粘着シートであって、 前記基材フィルムが、少なくともウレタン系オリゴマーとエネルギー線重合性モノマーと金属塩帯電防止剤とにより形成され、前記基材フィルムにおける前記金属塩帯電防止剤の含有量は4.7質量%以上40質量%以下であり、エネルギー線の照射により硬化されており、 前記金属塩帯電防止剤がイミド系スルホン酸リチウム塩であることを特徴とする粘着シート。」 第3 引用刊行物記載の発明 これに対して、当審での平成25年10月2日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された下記刊行物には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。 刊行物1:再公表特許第2004/065510号公報 刊行物2:特開2008-244377号公報 1 刊行物1 (1)刊行物1に記載された事項 刊行物1には、「粘着シート」に関して、表とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付与したものである。 ア 特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 第1の硬化性樹脂を製膜・硬化して得られた基材と、その上に第2の硬化性樹脂が塗布形成され硬化したトップコート層およびその反対面に形成された粘着剤層とからなることを特徴とする粘着シート。」 イ 明細書第2ページ第39?43行 「【技術分野】 本発明は粘着シートに関し、特に半導体ウエハ等に対する表面保護シート、ダイシングシートあるいはピックアップシートとして使用でき、半導体ウエハに貼付後、加熱処理または発熱を伴う処理を含む加工プロセスの実施に好ましく適用される粘着シートに関する。」 ウ 明細書第4ページ第12?41行 「本発明に係る粘着シートは、基材と、その上に形成されたトップコート層およびその反対面に形成された粘着剤層とからなる。以下、基材、トップコート層および粘着剤層について具体的に説明する。 (基材) 基材としては、後述する第1の硬化性樹脂を製膜・硬化して得られたフィルムよりなり、そのヤング率が50?5000MPa、好ましくは60?4000MPa、特に好ましくは80?3000MPaのものが用いられる。また、基材の厚みは特には限定されないが、好ましくは1?1000μm、さらに好ましくは10?800μm、特に好ましくは20?500μm程度である。 基材の原材料となる第1の硬化性樹脂としては、エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等が用いられ、好ましくはエネルギー線硬化型樹脂が用いられる。基材が硬化性樹脂を使用して硬化がされていれば、基材は加熱溶融など温度による形態変化が起こりにくくなり、耐熱性が向上する。 エネルギー線硬化型樹脂としては、たとえば、エネルギー線重合性のウレタンアクリレート系オリゴマーを主剤とした樹脂組成物が好ましく用いられる。本発明で好ましく用いられるウレタンアクリレート系オリゴマーの分子量は、1000?50000、さらに好ましくは2000?30000の範囲にある。上記のウレタンアクリレート系オリゴマーは一種単独で、または二以上を組み合わせて用いることができる。 上記のようなウレタンアクリレート系オリゴマーのみでは、成膜が困難な場合が多いため、通常は、エネルギー線重合性のモノマーで希釈して成膜した後、これを硬化してフィルムを得る。エネルギー線重合性モノマーは、分子内にエネルギー線重合性の二重結合を有し、特に本発明では、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピルアクリレート等の比較的嵩高い基を有するアクリルエステル系化合物が好ましく用いられる。 上記エネルギー線重合性モノマーは、ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量部に対して、好ましくは5?900重量部、さらに好ましくは10?500重量部、特に好ましくは30?200重量部の割合で用いられる。 基材を、上記のエネルギー線硬化型樹脂から形成する場合には、該樹脂に光重合開始剤を混入することにより、エネルギー線照射による重合硬化時間ならびに照射量を少なくすることができる。」 エ 明細書第6ページ第19?26行 「(粘着剤層) 本発明の粘着シートにおいては、トップコート層が形成された面と反対側の基材面には、粘着剤層が形成されている。 粘着剤層は、汎用の強粘着剤から形成されていてもよく、またウエハ加工に良く用いられているエネルギー線硬化型粘着剤あるいは汎用の再剥離粘着剤から形成されていてもよい。特に本発明では、エネルギー線硬化型粘着剤で粘着剤層を形成することが好ましい。 このようなエネルギー線硬化型粘着剤は、一般的には、アクリル系粘着剤と、エネルギー線硬化性化合物とを主成分としてなる。」 オ 明細書第10ページ第7?25行 「【実施例1】・・・(中略)・・・ 1-1)トップコート層を形成するための紫外線硬化型の塗布剤として以下の配合のものを用いた。・・・(中略)・・・ 1-2)続いて、基材を形成するための塗布剤として以下の配合のものを用いた。 ・ウレタンアクリレートオリゴマー(分子量(Mw)約5000):50重量部 ・イソボルニルアクリレート:50重量部 ・光開始剤(イルガキュア184)2.0重量部 この塗布剤を1-1)で作成した工程フィルム上のトップコート層の上にファウンテンダイコーターを用いて塗布し、紫外線照射(250mJ/cm^(2))により硬化して、トップコート層上に厚み157μmの硬化皮膜よりなる基材を形成した。」 (2)刊行物1記載の発明 刊行物1の上記摘記事項アないしオを、特に摘記事項オの「実施例1」に着目して参照しつつ技術常識を踏まえて本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。) 「基材と、前記基材上に設けられた粘着剤層とを備えた半導体ウエハ加工用の粘着シートであって、 前記基材が、少なくともウレタンアクリレートオリゴマーとエネルギー線重合性モノマーとにより形成され、紫外線照射により硬化されている、粘着シート。」 2 刊行物2 (1)刊行物2に記載された事項 刊行物2には、「シート及び半導体ウエハ加工用粘着テープ」に関して、表とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は理解の便のため、当審で付与したものである。 ア 特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】 半導体ウエハ加工用粘着テープの基材として用いるシートであって、高分子型帯電防止剤が5?30重量%、ポリオレフィン系樹脂が30?85重量%、ゴム状弾性体が10?40重量%、含まれる事を特徴とするシート。」 イ 段落【0008】 「【0008】 本発明に従うと、得られたポリオレフィン系シートを基材として用いることにより、帯電防止性に優れ、ダイシング時の切り屑の発生が少ない、半導体ウエハ加工用粘着テープを提供することができる。」 ウ 段落【0009】 「【0009】 以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、半導体ウエハ加工用粘着テープの基材として用いるポリオレフィン系シートであって、高分子型帯電防止剤が5?30重量%、ポリオレフィン系樹脂が30?85重量%、ゴム状弾性体が10?40重量%、含まれる事を特徴とするシートである。」 エ 段落【0011】 「【0011】 高分子型帯電防止剤の配合量は5?30重量%であり、好ましくは10?20重量%である。高分子型帯電防止剤の配合量が下限値未満になると基材シートの十分な帯電防止性能が得られず、上限値を超えると基材シートの切り屑の増加や、基材シートのシーティング性の低下を引き起こす。」 オ 段落【0018】 「【0018】 本発明のシートを基材層とした半導体ウエハ加工用粘着テープを用いる場合には、基材層の片面に粘着層を付与する必要がある。粘着層についてここでは特に規定しないが、目的に合わせて粘着力等の特性を選ぶ事ができる。」 カ 段落【0022】 「【0022】 <粘着層の作製>・・・(中略)・・・ このベース樹脂100重量部に対して、エネルギー線硬化型樹脂として2官能ウレタンアクリレート100重量部(三菱レイヨン社製、重量平均分子量が11,000)と、・・・(中略)・・・、粘着層を得た。」 (2)刊行物2事項 刊行物2の上記摘記事項アないしカを、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下、「刊行物2事項」という。) 「基材、前記基材の片面に付与された粘着層とを備えた半導体ウエハ加工用の粘着テープにおいて、 前記基材が、帯電防止剤を含んで形成され、前記基材における前記帯電防止剤の含有量は5?30重量%であり、エネルギー線の照射により硬化されていること。」 第4 対比 本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。 刊行物1発明の「基材」が本願発明の「基材フィルム」に相当することは、その機能及び技術常識に照らして明らかであり、以下同様に、「半導体ウエハ加工用」は「半導体加工用」に、「紫外線照射」は「エネルギー線の照射」に相当することも明らかである。 また、刊行物1発明の「ウレタンアクリレートオリゴマー」ついては、本件明細書の段落【0015】に「ウレタン系オリゴマーとしては、例えば、エネルギー線重合性のウレタンアクリレート系オリゴマーを主成分とした樹脂組成、あるいは・・・が好ましく用いられる」と記載されていることを踏まえれば、本願発明の「ウレタン系オリゴマー」に相当するということができる。 したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。 <一致点> 「基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた粘着剤層とを備えた半導体加工用の粘着シートであって、 前記基材フィルムが、少なくともウレタン系オリゴマーとエネルギー線重合性モノマーとにより形成され、エネルギー線の照射により硬化されている、粘着シート。」 そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。 <相違点1> 本願発明の基材フィルムは、さらに金属塩帯電防止剤を含んで形成され、前記基材フィルムにおける前記金属塩帯電防止剤の含有量は4.7質量%以上40質量%以下であり、前記金属塩帯電防止剤がイミド系スルホン酸リチウム塩であるのに対し、刊行物1発明の基材は、帯電防止剤を含んでいるか不明な点。 第5 相違点の検討 1 <相違点1>について 上記第3の2(2)にて指摘したように、刊行物2事項は、 「基材、前記基材の片面に付与された粘着層とを備えた半導体ウエハ加工用の粘着テープにおいて、 前記基材が、帯電防止剤を含んで形成され、前記基材における前記帯電防止剤の含有量は5?30重量%であり、エネルギー線の照射により硬化されていること。」というものであるところ、これを本願発明の用語に倣って表現すれば、刊行物2事項の「基材」は「基材フィルム」と表現でき、以下同様に、「基材の片面に付与された」は「基材フィルム上に設けられた」と、「粘着層」は「粘着剤層」と、「半導体ウエハ加工用」は「半導体加工用」と、「粘着テープ」は「粘着シート」と、「重量%」は「質量%」と表現できる。 また、刊行物2事項の「帯電防止剤」と本願発明の「金属塩帯電防止剤」とは、帯電防止剤、である限りで共通する。 したがって、刊行物2事項は、 「基材フィルム、前記基材フィルム上に設けられた粘着剤層とを備えた半導体加工用の粘着シートにおいて、 前記基材フィルムが、帯電防止剤を含んで形成され、前記基材フィルムにおける前記帯電防止剤の含有量は5?30質量%であり、エネルギー線の照射により硬化されていること。」と言い換えることができる。 次に、刊行物1発明と刊行物2事項は、ともに基材と基材上に設けられた粘着剤層とを備えた半導体ウエハ加工用の粘着シートである点で技術分野が共通しているところ、このような半導体ウエハ加工用の粘着シートにおいて、帯電防止を行うことは、刊行物2のみならず当審の拒絶理由通知にて示した特開2007-128993号公報(段落【0008】等参照、刊行物3)にも示されており、従来周知の課題といえる。そうすると、刊行物2に接した当業者がこれを刊行物1発明に適用しようと試みることに格別困難性はないというべきである。 そして、刊行物2事項を適用した刊行物1発明は、帯電防止剤の含有量は5?30質量%であり、これは、本願発明の4.7質量%以上40質量%以下と相当部分重複しており、また、本願発明の「4.7質量%」という下限値と「40質量%」という上限値には、本件明細書を参酌するに格別臨界的意義は認められない。 そうした上で、本願発明においては、帯電防止剤が金属塩たるイミド系スルホン酸リチウム塩である点で、なお刊行物2事項を適用した刊行物1発明と相違している。 これにつき検討するに、まず、当審の拒絶理由通知においても指摘したように、帯電防止剤として金属塩たるイミド系スルホン酸リチウム塩を用いることは、特開2006-326426号公報(刊行物5)に「【0004】帯電防止性能を付与する方法としては、・・・アルカリ金属塩を活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に添加する技術が知られている。【0005】このような技術としては、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、・・・が知られている」と記載され、また、特開2004-43617号公報(段落【0038】等参照、刊行物4)、特開2007-276354号公報(段落【0022】等参照、刊行物6)にも示されるように、従来より広く行われている周知の事項である。 そして、刊行物2事項を適用した刊行物1発明において、帯電防止剤として、従来周知の金属塩たるイミド系スルホン酸リチウム塩を用いることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 請求人は、平成25年12月9日提出の意見書にて、「本願発明では、ウレタン系オリゴマー、エネルギー線重合性モノマー及びイミド系スルホン酸リチウム塩の3つの組み合わせにより、金属塩帯電防止剤であるイミド系スルホン酸リチウム塩を多量に加えることを可能としています。ウレタン系オリゴマーとエネルギー線重合性モノマーとによって製造されるポリウレタンアクリレート系オリゴマーは、通常、金属塩帯電防止剤との相溶性に劣っており、これと均一に混合することができず、半導体加工用の粘着シートに十分に帯電防止性能をもたせるための量を含有させることができません。本願発明では、金属塩帯電防止剤としてイミド系スルホン酸リチウム塩を用いているため、ウレタン系オリゴマーとエネルギー線重合性モノマーとによって製造されるポリウレタンアクリレート系オリゴマーに、半導体加工用の粘着シートに十分な帯電防止性能をもたせるのに必要な量を含有させることができるものです。」などと主張する(上記意見書第2ページ第20?29行)。しかしながら、たとえ、一般的な(イミド系スルホン酸リチウム塩以外の)金属塩帯電防止剤が、刊行物1発明の「ウレタンアクリレートオリゴマーとエネルギー線重合性モノマー」と相溶性が悪いとしても、上述したように、金属塩帯電防止剤としてイミド系スルホン酸リチウム塩を用いることが従来より広く行われている以上、(例外的に)相溶性が良好な、イミド系スルホン酸リチウム塩を採用することに困難性はない。したがって、請求人の上記主張には理由がない。 以上を総合すると、刊行物1発明に刊行物2事項及び上記従来周知の事項を適用して、相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものと解するのが相当である。 2 本願発明の効果について 本願発明によってもたらされる効果も、刊行物1発明、刊行物2事項及び従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。 3 小括 したがって、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願はその余の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-12-13 |
結審通知日 | 2013-12-17 |
審決日 | 2013-12-24 |
出願番号 | 特願2009-20100(P2009-20100) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 浅野 麻木、金丸 治之 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 栗田 雅弘 |
発明の名称 | 帯電防止性粘着シート |
代理人 | 松浦 孝 |
代理人 | 小倉 洋樹 |