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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1285318
審判番号 不服2012-19510  
総通号数 172 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-04-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-04 
確定日 2014-03-05 
事件の表示 特願2007-503770「EL表示装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月24日国際公開、WO2006/088185〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年2月20日(優先権主張2005年2月21日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月21日付けで手続補正がなされたものの、平成24年5月30日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年10月4日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成25年1月17日付けで審尋を行ったところ、同年7月22日付けで回答書が提出された。

第2 平成24年10月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年10月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1の補正は、特許請求の範囲を限定して減縮することを目的として、本件補正前の特許請求の範囲の請求項12を以下のように補正するものである。
「【請求項1】
EL発光素子を複数配置した発光部を具備する素子基板の額縁領域に第1の封止材を塗布する工程と、
前記素子基板と、該素子基板に対向する封止基板との間を、前記第1の封止材によって接合する工程と、
前記接合工程後に、前記素子基板および前記封止基板を、縦断面視して前記素子基板の端面と前記封止基板の端面が揃うように切断して、前記第1の封止材と該切断された両基板の端面との間の距離が0.5mm?1.0mmとなるようにする工程と、
前記切断された素子基板および封止基板の間の隙間の額縁領域に第2の封止材を充填して硬化させ、硬化した該第2の封止材が前記第1の封止材の外周部に接し、前記素子基板および前記封止基板の端面には被着しないように、該第2の封止材を配置する工程と、
を含み、
前記第2の封止材の硬化前後の体積変化率が10%以下であり、硬化前の粘度が1.0Pa・s以下であり、硬化後の透湿度が100g/m^(2)/24h以下であることを特徴とするEL表示装置の製造方法。」
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

2 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された上記のとおりのものである。

3 引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、本願の優先日前である平成13年7月27日に頒布された「特開2001-203076号公報」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
ア)記載事項ア
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電極間に発光性材料を挟んだ素子(以下、発光素子という)を有する装置(以下、発光装置という)及びその作製方法に関する。特に、EL(Electro Luminescence)が得られる発光性材料(以下、EL材料という)を用いた発光装置に関する。」
イ)記載事項イ
「【0003】
【従来の技術】近年、発光性材料のEL現象を利用した発光素子(以下、EL素子という)を用いた発光装置(EL表示装置)の開発が進んでいる。EL表示装置は発光素子自体に発光能力があるため、液晶ディスプレイのようなバックライトが不要である。さらに視野角が広いため、屋外での用途に適している。
【0004】EL素子に用いる発光性材料は無機材料と有機材料とがあるが、近年では駆動電圧の低い有機材料が注目されている。ところがEL素子に有機材料を用いる際の問題点として劣化の速さが挙げられている。有機材料が酸化することでキャリアの再結合の効率が極端に悪化し、EL現象が得られなくなるのである。」
ウ)記載事項ウ
「【0012】
【発明の実施の形態】本発明を用いて複数のアクティブマトリクス型EL表示装置を大型基板上に作製する場合について説明する。説明には図1?図3に示した上面図を用いる。なお、各上面図には各々の上面図をA-A’及びB-B’で切った断面図も併記する。
【0013】まず、図1(A)に示すように、表面に複数の画素部(画像表示を行うための領域)11の形成された絶縁体(ここでは基板)12上に第1のシール材13を形成する。本実施形態では1枚の基板から四つの発光装置を形成する例を示すため、第1のシール材13は四カ所に設けられている。但し、第1のシール材13を設ける数は、1枚の基板からいくつのEL表示装置を形成するかによって変更すれば良い。
【0014】第1のシール材13は液晶ラインで用いられる公知のディスペンサー方式やスクリーン印刷方式を用いて形成すれば良い。その際、図1(A)に示すように開口部14を形成して後に充填材を注入する入り口を確保しておく。また、第1のシール材13としては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることが可能である。また、第1のシール材13はフィラー(棒状またはファイバー状のスペーサ)を添加したものであっても良い。」
エ)記載事項エ
「【0017】本実施形態の場合、第1のシール材13で囲まれた領域16内にはEL素子及びそのEL素子に電気的に接続されたTFTを含む画素部が含まれる。また、画素部と共にその画素部に電気信号を伝える駆動回路も含まれても良い。勿論、画素部のみ第1のシール材13の内側に設けて駆動回路は第1のシール材13の外側に設ける構造としても良い。
【0018】次に、図1(B)に示すように、第1のシール材13を用いて基板12にカバー材17を接着する。本明細書中では基板12、第1のシール材13及びカバー材17が一体となった基板をセル形成基板と呼ぶ。このカバー材17を接着する工程には公知の液晶セルの形成工程と同様の工程を用いれば良い。具体的には、カバー材17を基板12に合わせて貼り合わせた後、加圧し、紫外線の照射または加熱により第1のシール材13を硬化させる。」
オ)記載事項オ
「【0021】カバー材17を貼り合わせたら、基板12及びカバー材17を分断する。基板12及びカバー材17を分断する際、公知の分断用装置を用いることが可能である。代表的には、スクライバー、ダイサーまたはレーザーを用いることが可能である。なお、スクライバーとは、基板に細い溝(スクライブ溝)を形成した後でスクライブ溝に衝撃を与え、スクライブ溝に沿った亀裂を発生させて基板を分断する装置である。また、ダイサーとは、硬質カッター(ダイシングソーともいう)を高速回転させて基板に当てて分断する装置である。
【0022】本実施形態では分断用装置としてスクライバーを用いた例を示す。基板12及びカバー材17にスクライブ溝を形成する順序としては、まず矢印(a)の方向にスクライブ溝18aを形成し、次に、矢印(b)の方向にスクライブ溝18bを形成する。このとき、開口部14付近を通るスクライブ溝は第1のシール材13を切断するように形成する。こうすることでセルの端面に開口部14が現れるため、後の充填材の注入工程が容易となる。
【0023】こうしてスクライブ溝18a、18bを形成したら、シリコーン樹脂等の弾性のあるバーでスクライブ溝に衝撃を与え、亀裂を発生させて基板12及びカバー材17を分断する。
【0024】図2(A)は1回目の分断後の様子であり、各々二つのセルを含む二つのセル形成基板19、20が形成される。次に、各セル内に真空注入法により充填材21を注入する。真空注入法は液晶注入の技術として良く知られている。具体的には、まずセル形成基板19、20を真空室におき、真空中にて開口部14を充填材21に接触させる。次いで真空室にガスを流して内圧を高め、それにより開口部14からセル内へと充填材21が注入される。」
カ)記載事項カ
「【0031】次に、再び基板12及びカバー材17にスクライブ溝を形成する。順序としては、まず矢印(a)の方向にスクライブ溝22aを形成し、次に、矢印(b)の方向にスクライブ溝22bを形成する。このとき、分断後に基板12に比べてカバー材17の面積が小さくなるようにスクライブ溝を形成しておく。
【0032】こうしてスクライブ溝22a、22bを形成したら、前述のようにスクライブ溝に衝撃を与え、セル形成基板23?26に分断する。図3(A)は2回目の分断後の様子である。さらに、各セル形成基板23?26には接続端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)27を取り付ける。FPC27は画素部に送られる電気信号を外部機器から入力するための端子である。勿論、画素部で表示した画像を外部機器へ出力する端子として用いることもできる。
【0033】最後に、図3(B)に示すように、セル形成基板23?26の基板端面(第1のシール材13及び/又は充填材21の露呈部)及び接続端子であるFPC27の一部に接して第2のシール材28を形成する。第2のシール材28としては第1のシール材13に用いることのできる材料と同一のものを用いることができる。
【0034】以上のプロセスにより図3(B)に示すようなEL表示装置が完成する。以上のように、本発明を実施すると液晶のセル組み工程と同様の装置を用いた製造ラインによって1枚の基板から複数のEL表示装置を作製することができる。例えば、620mm×720mmの基板に対応した液晶製造ラインに多少の改良を加える程度で、1枚の基板から対角13?14インチのEL表示装置を6個作製することが可能である。従って、大幅なスループットの向上と製造コストの削減が達成できる。」
キ)記載事項キ
「【図1】


ク)記載事項ク
「【図2】


ケ)記載事項ケ
「【図3】


コ)記載事項コ
「【図4】



サ)図面の記載の考察
引用例1の図4には、基板300とカバー材404の右端面が揃っていること、第1のシール材405、及び、基板300とカバー材404の右端に距離があること、並びに、第2のシール材406が、第1のシール材405と接するように、基板300とカバー材404の間の隙間の額縁領域、及び、基板300とカバー材404の端面に形成されていることが記載されている。
シ)引用例1記載の発明
上記記載事項ア)乃至コ)、サ)の考察によると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「表面に複数の画素部11の形成された基板12上に第1のシール材13をディスペンサー方式で形成し、
EL素子を含む画素部11が第1のシール材13で囲まれた領域16内に含まれ、
第1のシール材13を用いて基板12にカバー材17を接着し、
カバー材17を貼り合わせたら、基板12及びカバー材17をセル形成基板23?26に分断し、
基板12とカバー材17の右端面が揃っており、
第1のシール材13、及び、基板12とカバー材17の右端に距離があり、
第1のシール材13と接するように、基板12とカバー材17の間の隙間の額縁領域、及び、基板12とカバー材17の端面に第2のシール材28を形成する
有機EL発光装置の作製方法。」

(2)引用刊行物2
また、本願の優先日前である平成15年10月17日に頒布された「特開2003-297548号公報 」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア)記載事項ア
「【0015】ここで、従来構造に於いて封止能力を高め、水分透過量を減らす方法として、図9(c)の如くシール幅を太く(SW2)してEL素子への外気の進入を防ぐ構造も採用される。しかしこの場合、基板10エッジからシール剤76外周までは、信頼性の観点から一定のマージンSEを確保する必要がある。また、陰極66は、シール剤76の内側に配置され、更にその内側にEL層65を配置するので、パネル外形を同一のまま、封止能力を高めるためにシール剤の幅を太くすると、陰極66外周から基板10エッジまでのマージンCE2は、当然ながら広く(CE1<CE2)いわゆる広額縁になり、陰極66の面積(幅CW1>CW2)および配置できるEL層65の面積が低減してしまう。
【0016】つまり、表示装置の広額縁化は、表示パネルが大型になったり、パネル外形を維持すると陰極66面積を縮小する必要から表示領域が小さくなるなどの問題があり、EL表示装置の表示面積の向上や表示装置の小型化を阻んでしまう。」
イ)記載事項イ
「【図9】



(3)引用刊行物3
さらに、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成14年8月16日に頒布された「特開2002-231439号公報 」(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
ア)記載事項ア
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、少なくとも発光層を有する有機層を複数の電極で挟持した積層体を透光性の支持基板上に配設するとともに、前記支持基板上に封止部材を配設することで前記積層体を収納する有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルに関するものである。」
イ)記載事項イ
「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づき説明する。
【0011】図1及び図2において、有機ELパネルは、ガラス基板(支持基板)1と、透明電極(電極)2と、絶縁層3と、有機層4と、背面電極(電極)5と、封止部材6と、吸着部材7と、接着部材8、保護部材9とから主に構成されている。
【0012】ガラス基板1は、長方形形状からなる透光性の支持基板である。
【0013】透明電極2は、ガラス基板1上にITO等の導電性材料を蒸着法やスパッタリング法等の手段によって形成されるもので、日の字型の表示セグメント部2aと、個々のセグメントからそれぞれ引き出し形成されたリード部2bと、リード部2bの終端部に設けられる電極部2cとを備えている。尚、電極部2cは、ガラス基板1の一辺に集中的に配設されている。」
ウ)記載事項ウ
「【0018】封止部材6は、例えばガラス材料からなる平板部材に凹部6aを形成してなるものである。封止部材6は、凹部6aを取り囲むように形成される支持部6bを、接着部材8を介しガラス基板1上に気密的に配設することで、封止部材6とガラス基板1とで有機EL素子10を収納する気密空間11を構成する。封止部材6は、透明電極2の電極部2c及び背面電極5の電極部5bが外部に露出するようにガラス基板1よりも若干小さ目に構成されている。なお、封止部材6には、支持部6bの外周に沿って突出する凸部6cが封止部材6の全周に形成されている。
【0019】吸湿部材7は、封止部材6の有機EL素子10との対向面、即ち封止部材6の凹部6aの底面に膜状に配設される。吸着部材7は、活性アルミナ,モレキュラシーブス,酸化カリウム及び酸化バリウム等の物理的あるいは化学的に水分を吸着する吸着剤を有するもので、吸着剤が流動しない程度の粘性を有するクリーム状あるいはゲル状の部材である。
【0020】接着部材8は、例えば紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤からなる速硬性のものが用いられる。また、接着部材8は、封止部材6の支持部6bに沿って設けられつつ、ガラス基板1と封止部材6とを接着固定するものである。また、接着部材8によって、封止部材6とガラス基板1とが気密的に接着されることにより、気密空間11と外部とを隔離することになる。
【0021】保護部材9は、例えば熱硬化型エポキシ樹脂や常温硬化型樹脂等からなり、接着部材8よりも透湿度の低い材質のものが、ディスペンサ等の手段により、接着部材8の外側面を覆うようにして塗布される。この場合、保護部材9は、透明部材1と封止部材6の支持部6b及び凸部6cと接着部材8とによって構成される溝部Mに沿って、気密空間11の全周に渡って接着部材8を覆うようにして形成される。
【0022】以上の各部によって有機ELパネルが構成される。かかる有機ELパネルは、少なくとも発光層を有する有機層4を透明電極2と背面電極5とで挟持した有機EL素子10と、有機EL素子10を配設するガラス基板1と、ガラス基板1上に接着部材8を介し配設され、有機EL素子10上に位置する封止部材6と、接着部材8を覆うようにして形成される保護部材9と、を備えてなるものである。
【0023】従って、有機ELパネルは、接着部材8を覆うようにして形成される保護部材9により、従来に比べて気密空間11への水分の透過を抑えることができるため、例えば車両用表示装置の表示手段として配設されるような厳しい環境下であっても、確実に気密空間を保持できる耐久性の優れた有機ELパネルとなり、所謂ダークスポットや電極間の短絡の発生を抑制することが可能となる。
【0024】また、保護部材9は、接着部材8よりも透湿度の低い材質にて形成されてなることによって、水分が気密空間11に浸入することを積極的に防ぐことができる。
【0025】また、接着部材8は紫外線硬化型接着剤からなることにより、短時間でガラス基板1と封止部材6とを接着固定することができ、組み付け時における位置ずれや水分の浸入を防ぐことができる。
【0026】ガラス基板1と封止部材6と接着部材8とによって形成される溝部Mに沿って保護部材9が設けられてなることによって。充分な厚みを有する保護部材9を接着部材8上に確実に形成できるとともに、ディスペンス等の手段によって適量を塗布することが可能となる。」
エ)記載事項エ
「【図2】


オ)図面の記載の考察
引用例3の図2には、ガラス基板1と封止部材6との右端面が揃っており、保護部材9が、ガラス基板1及び封止部材6の間の隙間に形成され、ガラス基板1及び封止部材6の端面に被着していないことが記載されている。

(4)引用刊行物4
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成15年4月3日に頒布された「特開2003-96184号公報 」(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
ア)記載事項ア
「【0099】これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
[光カチオン硬化型樹脂組成物の調整]本発明に係る光カチオン硬化型樹脂組成物は、各組成物を均一に混合するように調製する。0.01?300Pa・sの粘度範囲は塗布作業がより効率的に実施でき、各組成の混合安定性が良い。粘度範囲は、0.1?100Pa・sであることがより好ましい。
【0100】粘度は、樹脂の配合比やその他の成分を添加することにより調整すれば良い。また、粘度が高い場合は、3本ロール等を使用する常法により混練すれば良い。
[シール材、シール方法、製造方法、液晶ディスプレイおよびエレクトロルミネッセンスディスプレイ]本発明に係るシール材は、前記光カチオン硬化型樹脂組成物からなっている。
【0101】このようなシール材は、カチオン重合性化合物の重合転化率が高く、生産性に優れ、しかも接着強度、耐透湿性に優れることから、液晶ディスプレイ用シール材あるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材として好適である。このような光カチオン硬化型樹脂組成物からなるシール材を用いるディスプレイのシール方法は下記の通りである。
【0102】まず本発明に係る液晶ディスプレイ用シール材あるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイ用シール材を、それぞれ液晶ディスプレイ基材上、あるいはエレクトロルミネッセンスディスプレイ基材上へ塗布する。塗布の方法は、均一にシール材が塗布できれば制限はない。例えばスクリーン印刷やディスペンサーを用いて塗布する方法等公知の方法により実施すればよい。」

(5)引用刊行物5
さらに、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成16年4月8日に頒布された「特開2004-107450号公報 」(以下「引用例5」という。)には、次の事項が記載されている。
ア)記載事項ア
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シール剤用光硬化性樹脂およびそれを用いた液晶表示素子または有機EL素子(有機エレクトロルミネセンス素子)に関する。」
イ)記載事項イ
「【0037】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【0038】
(実施例1)
ポリチオール化合物として2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン30部、同じくポリチオール化合物としてトリメチロールプロパントリス-β-メルカプトプロピオネート30部、および、ポリエン化合物としてトリアリルイソシアヌレート40部を混合し、加熱反応により、25℃における粘度が30万mPa・sとなるまで増粘させた。次いで、この反応生成物に光重合開始剤(A)としてオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-{4-(1-メチルビニル)フェニル}プロパノン]2部およびシランカップリング剤としてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4部を混合して、光硬化性樹脂を調製した。
【0039】
(実施例2)
ポリチオール化合物として2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン60部およびポリエン化合物としてトリアリルイソシアヌレート40部を混合し、加熱反応により、25℃における粘度が30万mPa・sとなるまで増粘させた。次いで、この反応生成物に光重合開始剤(B)としてベンジルジメチルケタール2部およびシランカップリング剤としてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4部を混合して、光硬化性樹脂を調製した。
【0040】
(比較例1)
ポリチオール化合物としてトリメチロールプロパントリス-β-メルカプトプロピオネート60部およびポリエン化合物としてトリアリルイソシアヌレート40部を混合し、加熱反応により、25℃における粘度が30万mPa・sとなるまで増粘させた。次いで、この反応生成物に光重合開始剤(B)としてベンジルジメチルケタール2部およびシランカップリング剤としてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4部を混合して、光硬化性樹脂を調製した。
【0041】
(比較例2)
ポリチオール化合物およびポリエン化合物を用いることなく、ウレタンアクリレートのオリゴマー50部およびエポキシアクリレートのオリゴマー50部を混合し、25℃における粘度が30万mPa・sとなるまで増粘させた。次いで、この混合生成物に光重合開始剤(A)としてオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-{4-(1-メチルビニル)フェニル}プロパノン]2部およびシランカップリング剤としてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4部を混合して、光硬化性樹脂を調製した。
【0042】
実施例1および実施例2、ならびに、比較例1および比較例2で得られた光硬化性樹脂をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に硬化後の厚みが約0.3mmとなるように塗工し、3000mj/cm^(2)の紫外線を照射して、光硬化性樹脂を硬化させ、厚み約0.3mmの硬化フィルムを作製した。次いで、得られた硬化フィルムをPETフィルムから剥がし、JIS Z-0208に準拠して透湿度を測定した後、前記式1で定義される透湿係数を求めた。なお、透湿度の測定は、30℃-80%RH(水蒸気圧:3395Pa)、40℃-90%RH(水蒸気圧:6639Pa)、50℃-80%RH(水蒸気圧:9871Pa)および70℃-80%RH(水蒸気圧:24933Pa)の4雰囲気下で行った。その結果は表1に示すとおりであった。
【0043】
また、実施例1および実施例2、ならびに、比較例1および比較例2で得られた光硬化性樹脂をシール剤として用い、常法により液晶表示素子および有機EL素子を作製した。次いで、得られた液晶表示素子および有機EL素子を40℃-90%RH(水蒸気圧:6639Pa)および70℃-80%RH(水蒸気圧:24933Pa)の2雰囲気下に各500時間放置した後、取り出して、表示異常の有無を目視で観察し、下記判定基準により信頼性を評価した。その結果は表1に示すとおりであった。なお、上記表示異常とは、液晶表示素子の場合は液晶の配向異常による表示ムラの発生を意味し、また、有機EL素子の場合は発光輝度の減少や非発光領域(ダークスポット)の成長による発光面積の減少を意味する。
〔判定基準〕
○‥‥表示異常は認められなかった。
△‥‥表示異常が周辺部に少し認められた。
×‥‥表示異常が中央部付近まで達した程度に認められた。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、本発明による実施例1および実施例2の光硬化性樹脂を用いて作製した液晶表示素子および有機EL素子は、いずれも40℃-90%RH(水蒸気圧:6639Pa)および70℃-80%RH(水蒸気圧:24933Pa)の雰囲気下に500時間放置した後も優れた信頼性を発現した。
【0046】
これに対し、硬化後(硬化フィルム)の透湿係数が1(mg・mm/m^(2)・24h・Pa)を超えていた比較例1および比較例2の光硬化性樹脂を用いて作製した液晶表示素子および有機EL素子は、いずれも40℃-90%RH(水蒸気圧:6639Pa)および70℃-80%RH(水蒸気圧:24933Pa)の雰囲気下に500時間放置した後の信頼性が悪かった。」

5 対比
ここで、本件補正発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「基板12」、「第1のシール材13」は、本件補正発明の「素子基板」、「第1の封止材」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明1の「第1のシール材13」は、「基板12上に」「形成」されるものであって、「EL素子を含む画素部11」を囲むものであるから、引用発明1の「第1のシール材13」は、「基板12」の「額縁領域」に形成されるものであるといえる。
また、引用発明1は、「EL素子を含む画素部11」が複数の「EL素子」を含むことは明らかである。
そうすると、引用発明1の「表面に複数の画素部11の形成された基板12上に第1のシール材13をディスペンサー方式で形成し、EL素子を含む画素部11が第1のシール材13で囲まれた領域16内に含まれ」る構成は、本件補正発明の「EL発光素子を複数配置した発光部を具備する素子基板の額縁領域に第1の封止材を塗布する工程」に相当する。

(2)引用発明1の「カバー材17」は、本件補正発明の「封止基板」に相当する。
そうすると、引用発明1の「第1のシール材13を用いて基板12にカバー材17を接着」する構成は、本件補正発明の「素子基板と、該素子基板に対向する封止基板との間を、前記第1の封止材によって接合する工程」に相当する。

(3)引用発明1の「カバー材17を貼り合わせたら、基板12及びカバー材17をセル形成基板23?26に分断し、基板12とカバー材17の右端面が揃っており、第1のシール材13、及び、基板12とカバー材17の右端に距離があ」る構成と、本件補正発明の「接合工程後に、前記素子基板および前記封止基板を、縦断面視して前記素子基板の端面と前記封止基板の端面が揃うように切断して、前記第1の封止材と該切断された両基板の端面との間の距離が0.5mm?1.0mmとなるようにする工程」とは、「接合工程後に、前記素子基板および前記封止基板を、縦断面視して前記素子基板の端面と前記封止基板の端面が揃うように切断して、前記第1の封止材と該切断された両基板の端面との間に距離があるようにする工程」で一致する。

(4)引用発明1の「第2のシール材28」は、本件補正発明の「第2の封止材」に相当する。
また、引用例1には、「カバー材17を基板12に合わせて貼り合わせた後、加圧し、紫外線の照射または加熱により第1のシール材13を硬化させる」(【0018】)こと、「紫外線硬化樹脂を第1のシール材13として用いることが望ましい」(【0020】)こと、及び、「第2のシール材28としては第1のシール材13に用いることのできる材料と同一のものを用いることができる」(【0033】)ことが記載されており、これらの記載及び技術常識を考慮すると、引用発明1の「第2のシール材28」は、当然「基板12及びカバー材17の間の隙間の額縁領域、及び、基板12及びカバー材17の端面に」「形成」される際に、「硬化」されていると認められる。
そうすると、引用発明1の「第1のシール材13と接するように、基板12とカバー材17の間の隙間の額縁領域、及び、基板12とカバー材17の端面に第2のシール材28を形成する」構成と本件補正発明の「切断された素子基板および封止基板の間の隙間の額縁領域に第2の封止材を充填して硬化させ、硬化した該第2の封止材が前記第1の封止材の外周部に接し、前記素子基板および前記封止基板の端面には被着しないように、該第2の封止材を配置する工程」とは、「切断された素子基板および封止基板の間の隙間の額縁領域に第2の封止材を充填して硬化させ、硬化した該第2の封止材が前記第1の封止材の外周部に接するように、該第2の封止材を配置する工程」で一致する。

(5)引用発明1の「有機EL発光装置の作製方法」は、本件補正発明の「EL表示装置の製造方法」に相当する。

上記(1)?(5)の点から、本件補正発明と引用発明1は、
「EL発光素子を複数配置した発光部を具備する素子基板の額縁領域に第1の封止材を塗布する工程と、
前記素子基板と、該素子基板に対向する封止基板との間を、前記第1の封止材によって接合する工程と、
前記接合工程後に、前記素子基板および前記封止基板を、縦断面視して前記素子基板の端面と前記封止基板の端面が揃うように切断して、前記第1の封止材と該切断された両基板の端面との間に距離があるようにする工程と、
前記切断された素子基板および封止基板の間の隙間の額縁領域に第2の封止材を充填して硬化させ、硬化した該第2の封止材が前記第1の封止材の外周部に接するように、該第2の封止材を配置する工程と、
を含むEL表示装置の製造方法。」
で一致し、以下(a)乃至(e)の点で相違する。

(相違点)
(a)第1の封止材と切断された素子基板および封止基板の端面との間の距離が、本件補正発明は、0.5mm?1.0mmであるのに対し、引用発明1は、不明である点。
(b)第2の封止材が、本件補正発明は、素子基板および封止基板の端面には被着しないように配置されているのに対し、引用発明1は、基板12及びカバー材17の端面にも形成されている点。
(c)本件補正発明は、第2の封止材の硬化前後の体積変化率が10%以下であるのに対し、引用発明1は、そのような構成を有するか不明である点。
(d)本件補正発明は、第2の封止材の硬化前の粘度が1.0Pa・s以下であるのに対し、引用発明1は、そのような構成を有するか不明である点。
(e)本件補正発明は、第2の封止材の硬化後の透湿度が100g/m^(2)/24h以下であるのに対し、引用発明1は、そのような構成を有するか不明である点。

6 当審の判断
以下、上記相違点(a)乃至(e)について検討する。
(a)の相違点について
有機EL表示装置において、シール剤(本件補正発明の「第1の封止材」に相当。)の外周から基板(本件補正発明の「素子基板」に相当。)エッジまで一定のマージンを確保する必要があるのは、信頼性の観点からであることが、引用例2に記載されている。
また、有機EL表示装置において、基板を切断する際に基板に割れや欠けが生じることは、周知の事項(特開2001-126866号公報の【0008】?【0009】参照、特開2003-195789号公報の【0072】?【0078】参照。)である。
そして、引用発明1においても、同様に基板を切断する際に基板に割れや欠けが生じうることは、当然考慮されることといえる。
さらに、基板切断時に必要なマージンは、切断方法、基板の厚さや強度等により変化することは自明であるから、引用発明1において、第1のシール材と切断された基板及びカバー材の端面との間の距離を0.5mm?1.0mmとすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
してみると、相違点(a)に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。
(b)の相違点について
保護部材(本件補正発明の「第2の封止材」に相当。)を、ガラス基板(本件補正発明の「素子基板」に相当。)および封止部材(本件補正発明の「封止基板」に相当。)の端面に被着しないように配置することが、引用例3に記載されている。
そして、引用発明1において、引用例3記載の事項を採用して、第2のシール材が基板及びカバー材の端面に被着しないように構成することに、格別の困難性も阻害要因もない。
してみると、相違点(b)に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。
(c)の相違点について
有機EL表示装置において、封止材(特開2001-139933号公報の「光硬化型シール剤」、特開2003-243161号公報の「接着剤21」、特開2005-19151号公報の「接着剤層16」がそれぞれこれに相当。)の体積変化率を低減させることは周知の課題(特開2001-139933号公報の【0003】、特開2003-243161号公報の【0084】、特開2005-19151号公報の【0004】参照。)である。
そうすると、引用発明1において、第2のシール材の硬化前後の体積変化率を低くすることは、当業者が容易になし得たことであって、その際に、体積変化率を10%以下とすることは、当業者が適宜設計できたことであって、格別の臨界的意義も認められない。
してみると、相違点(c)に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。
(d)の相違点について
一般に、樹脂を塗布する際には、塗布する箇所の特性等に応じて、粘度を調整することは当業者が当然行う周知の事項である。すなわち、狭い箇所への塗布には粘度を低くしたり、アライメント等の必要があって樹脂の形状を維持したい箇所への塗布は粘度を高くしたりすることは、当業者が当然行う事項である。
そして、引用発明1の第2のシール材の形成箇所である、基板12及びカバー材17の間が非常に狭い箇所であることは明らかである。
したがって、引用発明1において、第2のシール材の硬化前の粘度を低くすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、その際に、上記粘度を1.0Pa・s以下とすることは、引用例1の充填剤21の粘度が5?100cp(0.005?0.1Pa・s)であること、引用例4のシール材に用いられる光カチオン硬化型樹脂組成物の粘度が0.01?300Pa・sであることを考慮すると、当業者が適宜設計できたことであって、格別の臨界的意義も認められない。
してみると、相違点(d)に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。
(e)の相違点について
有機EL素子を収納する気密空間への水分の侵入を防ぐために、保護部材9(本件補正発明の「第2の封止材」に相当。)の透湿度を低くすることが、引用例3に記載されている。
そして、引用発明1は、「有機EL発光装置の作製方法」であるから、技術常識からみて、その有機EL発光装置が水分の侵入を防ぐという課題を有することは明らかである。
したがって、引用発明1において、第2のシール材の硬化後の透湿度を低くすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、その際に、上記硬化後の透湿度が100g/m^(2)/24h以下とすることは、引用例5のシール材用硬化性樹脂の硬化後の透湿度が1.6?34.9g/m^(2)/24hであることを考慮すると、当業者が適宜設計できたことであって、格別の臨界的意義も認められない。
してみると、相違点(e)に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。

相違点については上記のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明1、引用例2?5に記載された事項、及び、周知の事項から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本件補正発明は、引用発明1、引用例2?5に記載された事項、及び、周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

7 本件補正についての補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成24年10月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年10月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
EL発光素子を複数配置した発光部を具備する素子基板と、
前記素子基板に対向するとともに、縦断面視して前記素子基板の端面と揃った端面を有する封止基板と、
前記素子基板と前記封止基板との間を接合する第1の封止材と、
前記素子基板および前記封止基板の間の隙間で前記第1の封止材の外周部に接するように配置されるとともに、前記素子基板および前記封止基板の端面には被着しない第2の封止材と、を備えたことを特徴とするEL表示装置。」

2 引用刊行物
(1)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された引用例3の記載事項及びその考察は、上記第2[理由]3(3)に記載したとおりである。

(2)引用例3記載の発明
上記第2[理由]3(3)の記載事項及びその考察によると、引用例3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「有機EL素子10を配設するガラス基板1と、
ガラス基板1上に接着部材8を介し配設され、有機EL素子10上に位置する封止部材6と、を備え、
ガラス基板1と封止部材6との右端面が揃っており、
水分が有機EL素子10を収納する気密空間11に浸入することを積極的に防ぐ保護部材9が、接着部材8を覆うようにして、ガラス基板1及び封止部材6の間の隙間に形成され、ガラス基板1及び封止部材6の端面に被着していない
有機EL表示パネル。」

3 対比
ここで、本願発明と引用発明3とを対比する。
(1)引用発明3の「有機EL素子10」、「ガラス基板1」は、本願発明の「EL発光素子」、「素子基板」にそれぞれ相当する。
また、引用発明3は、「有機EL表示パネル」であるから、有機EL素子10が複数配設されたものであることは明らかである。
そうすると、引用発明3の「有機EL素子10を配設するガラス基板1」「を備え」た構成は、本願発明の「EL発光素子を複数配置した発光部を具備する素子基板」「を備えた」構成に相当する。

(2)引用発明3の「接着部材8」、「封止部材6」は、本願発明の「第1の封止材」、「封止基板」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明3の「ガラス基板1上に接着部材8を介し配設され、有機EL素子10上に位置する封止部材6」「を備え、ガラス基板1と封止部材6との右端面が揃って」いる構成は、本願発明の「素子基板に対向するとともに、縦断面視して前記素子基板の端面と揃った端面を有する封止基板」「を備えた」構成に相当する。

(3)引用発明3の「保護部材9」は、「水分が有機EL素子10を収納する気密空間11に浸入することを積極的に防ぐ」ものであるから、本願発明の「第2の封止材」に相当するといえる。
そうすると、引用発明3の「水分が有機EL素子10を収納する気密空間11に浸入することを積極的に防ぐ保護部材9が、接着部材8を覆うようにして、ガラス基板1及び封止部材6の間の隙間に形成され、ガラス基板1及び封止部材6の端面に被着していない」構成は、本願発明の「素子基板および前記封止基板の間の隙間で前記第1の封止材の外周部に接するように配置されるとともに、前記素子基板および前記封止基板の端面には被着しない第2の封止材」「を備えた」構成に相当する。

(4)引用発明3の「有機EL表示パネル」は、本願発明の「EL表示装置」に相当する。

上記(1)?(4)の点から、本願発明と引用発明3は、
「EL発光素子を複数配置した発光部を具備する素子基板と、
前記素子基板に対向するとともに、縦断面視して前記素子基板の端面と揃った端面を有する封止基板と、
前記素子基板と前記封止基板との間を接合する第1の封止材と、
前記素子基板および前記封止基板の間の隙間で前記第1の封止材の外周部に接するように配置されるとともに、前記素子基板および前記封止基板の端面には被着しない第2の封止材と、を備えたことを特徴とするEL表示装置。」
で一致し、相違点はない。
したがって、本願発明は引用発明3である。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明3であるから特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-08 
結審通知日 2013-10-10 
審決日 2013-10-22 
出願番号 特願2007-503770(P2007-503770)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 大輔里村 利光  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
土屋 知久
発明の名称 EL表示装置およびその製造方法  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
代理人 臼井 伸一  

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