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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F
管理番号 1286106
審判番号 不服2013-2273  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-06 
確定日 2014-04-08 
事件の表示 特願2008-157951「電気光学装置及びその製造方法並びに電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月14日出願公開、特開2010- 8437、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成20年6月17日(優先権主張平成20年5月26日)の出願であって、平成24年10月16日付けで手続補正がなされたところ、同年11月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月6日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、同年6月4日付けで審尋がなされ、同年8月5日付けで回答書が提出されたものである。

そして、本願の請求項に係る発明は、平成25年2月6日付け手続補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項によって特定されるものと認められる。

「【請求項1】
一対の基板と、
前記一対の基板の間に挟持された電気光学物質と、
前記一対の基板の一方に、互いに交差するように配線された複数の走査線及び複数のデータ線と、
前記一対の基板の一方における前記電気光学物質に面する側に、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線の交差に対応する画素毎に配列された複数の画素電極と、
前記一対の基板の他方に、前記複数の画素電極に前記電気光学物質を介して対向するように配置された対向電極と、
前記一対の基板の少なくとも一方に設けられ、前記一対の基板の上から見て、前記画素の開口領域を少なくとも部分的に規定する遮光膜と、
を備え、
前記複数の画素電極の各々及び前記遮光膜は、前記一対の基板の上から見て、前記複数の画素電極の各々と前記遮光膜が部分的に重畳するように、配置されており、
前記一対の基板の間の距離である基板間ギャップ距離X、並びに前記複数の画素電極の各々と前記遮光膜が部分的に重畳する領域の幅である重畳幅Yは、不等式
Y≧0.625X-y
但し
y=-0.0208Δε^(2)+0.5625Δε-3.0417
Δε=前記電気光学物質の誘電率異方性
を満たし、
前記遮光膜は第1遮光膜、第2遮光膜、及び第3遮光膜を含み、
前記第1遮光膜は、前記一対の基板の一方に配置され、前記一対の基板の一方からの光が薄膜トランジスタに入射するのを防ぎ、
前記第2遮光膜は、前記一対の基板の他方に配置されるブラックマトリクスであり、
前記第3遮光膜は、前記一対の基板の一方に配置されるデータ線を含み、
前記第1遮光膜は第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に延びるように配置されることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記開口領域は、前記走査線に沿った前記第1方向及び前記データ線に沿った前記第2方向のうち一方の方向に、長辺方向が一致する平面形状を有し、
前記基板間ギャップ距離X及び前記重畳幅Yは、前記複数の画素電極の各々と前記遮光膜が前記一方の方向に沿って部分的に重畳する部分について、前記不等式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記基板間ギャップ距離X及び前記重畳幅Yは、前記走査線に沿った第1方向及び前記データ線に沿った第2方向の両方について、前記不等式を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記データ線及び前記走査線の少なくとも一方は、遮光性の材料から構成されており、前記遮光膜に加えて、前記開口領域を少なくとも部分的に規定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記複数の画素電極は、前記画素毎として、R(赤色)、G(緑色)及びB(青色)のいずれか一つに対応するサブ画素毎に、配列されており、
前記遮光膜は、前記サブ画素の開口領域を少なくとも部分的に規定し、
前記サブ画素は、前記第1方向及び前記第2方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記複数の画素電極のうちの1つと、前記複数の画素電極のうちの他の1つは、前記第1遮光膜に対し、略対称に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。」(以下、請求項1?7に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明7」という。)


2 引用刊行物の記載事項
(1)引用刊行物1
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-179077号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、マトリクス状に配列された複数の画素電極及びこれらを夫々スイッチング駆動するための複数の薄膜トランジスタ(以下適宜、TFTと称す)を備えたTFTアクティブマトリクス駆動形式の電気光学装置の技術分野に属する。」
イ 「【0003】
…一般にこの種の電気光学装置では、直流電圧印加による電気光学物質の劣化防止、表示画像におけるクロストークやフリッカの防止などのために、各画素電極に印加される電位極性を所定規則で反転させる反転駆動方式が採用されている。同一行の画素電極を同一極性の電位により駆動しつつ、係る電位極性を行毎にフレーム又はフィールド周期で反転させる1H反転駆動方式が、制御が比較的容易であり高品位の画像表示を可能ならしめる反転駆動方式として用いられている。

【0005】
…1H反転駆動方式のように、TFTアレイ基板上において相隣接する画素電極に印加される画像信号の電位が逆極性にある場合には、相隣接する画素電極間に生じる横電界が生じる。従って、本来、基板に垂直な方向の縦電界で駆動されることが想定されている液晶等の電気光学物質は、横電界の影響でリバースチルトが生じ光抜けを引き起こす。この結果、コントラスト比の低下を招いてしまう。これに対し、横電界が生じる領域を遮光膜により覆い隠すことは可能であるが、これでは横電界が生じる領域の広さに応じて画素の開口領域が狭くなってしまう。…」
ウ 「【0042】
…図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図であり、図3は、図2のA-A'断面図であり、図4は、図2のB-B'断面図である。

【0044】
図2において、電気光学装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a'により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6、走査線3a及び容量線3bが設けられている。データ線6は、コンタクトホール5を介してポリシリコン膜等からなる半導体層1aのうち後述のソース領域に電気的に接続されており、画素電極9aは、コンタクトホール8を介して半導体層1aのうち後述のドレイン領域に電気的に接続されている。また、半導体層1aのうちチャネル領域1a'(図中右下りの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する。このように、走査線3aとデータ線6との交差する個所には夫々、チャネル領域1a'に走査線3aがゲート電極として対向配置されたTFT30が設けられている。

【0046】
また、図中太線で示した走査線3a及び容量線3bにほぼ重なる領域には夫々、走査線3a及びTFT30の下側を通るように、第1遮光膜11aが設けられている。より具体的には図2において、第1遮光膜11aは夫々、走査線3a及び容量線3bに沿って縞状に形成されていると共に、データ線6と交差する箇所が下方に突出して形成されており、この突出部を含む幅広の部分により各TFT30のチャネル領域1a'及びその隣接領域をTFTアレイ基板側から見て夫々覆う位置に設けられている。尚、第1遮光膜11aは、走査線3a及びデータ線6に沿って延設して格子状に形成してもよい。このような構成を採れば、更に電気光学装置の遮光性が高まり有利である。
【0047】
本実施形態では特に、図2中、左下がりの斜線で示すデータ線6は、走査線3aと直交する方向に伸びる主配線部6aと、主配線部6aから走査線3aに沿って突出する突出部6bとを備えている。即ち、図2中、チャネル領域1a'及びその隣接領域は、突出部6bを有しており幅広に形成されたデータ線6の部分により、基板面に対して垂直入射される入射光のみならず、図2で上下左右から斜めに入射する入射光に対して遮光されている。このように主配線部6a及び突出部6bを有するデータ線6は、例えば、Al(アルミニウム)等の遮光性、伸延性及び導電性に優れた既存の金属薄膜から構成されている。…
【0048】
次に図3及び図4に夫々、図2のA-A'断面図及びB-B'断面図として示すように、電気光学装置は、第1基板の一例を構成するTFTアレイ基板10と、これに対向配置される第2基板の一例を構成する対向基板20とを備えている。…TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。…
【0049】
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。…
【0050】
TFTアレイ基板10には、各画素電極9aに隣接する位置に、各画素電極9aをスイッチング制御する画素スイッチング用TFT30が設けられている。
【0051】
対向基板20には、各画素の開口領域の少なくとも一部を規定するための、第2遮光膜23が設けられている。このため、対向基板20の側から入射光が画素スイッチング用TFT30の半導体層1aのチャネル領域1a'及びその隣接領域に侵入することを、前述の如く遮光機能を有するデータ線6と共に未然防止し得る。更に、第2遮光膜23は、コントラストの向上、カラーフィルタを用いる際の色材の混色防止などの機能を有する。…
【0052】
このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、後述のシール材により囲まれた空間に液晶が封入され、液晶層50が形成される。…
【0053】
更に図3に示すように、画素スイッチング用TFT30に各々対向する位置においてTFTアレイ基板10と各画素スイッチング用TFT30との間には、第1遮光膜11aが設けられている。…第1遮光膜11aが形成されているので、TFTアレイ基板10の側からの戻り光等が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域1a'及びその隣接領域に入射する事態を未然に防ぐことができ、これに起因した光電流の発生により画素スイッチング用TFT30の特性が変化することはない。

【0059】
…本発明では、遮光性のAl等の金属を含有した遮光性の導電膜からなるデータ線6から延設された突出部6bの存在により、このように斜めに入射する入射光を確実に遮光できる。更に、第1遮光膜11aは、TFT30のチャネル領域1a'及びその隣接領域をTFT30の下側から見て覆う位置に設けられるので、チャネル領域1a'及びその隣接領域は、TFTアレイ基板10の側から入射される、例えば、裏面反射光や、複数の電気光学装置を組み合わせて用いる場合に合成光学系を突き抜けてくる他の電気光学装置からの投射光などの戻り光に対しては、第1遮光膜11aにより遮光されており、TFT30の戻り光等による特性変化を防止できる。従って、TFT30のチャネル領域1a'及びその隣接領域に対する遮光は、図3中、上側については遮光性のデータ線6の主配線部6a及び突出部6b並びに対向基板20上の第2遮光膜23によりなされており、図3中、下側については第1遮光膜11aによりなされており、言わば、チャネル領域1a'及びその隣接領域を上下から包み込むことにより遮光が確実に行われる。加えて、電気光学装置内で発生する多重反射光が、チャネル領域1a'及びその隣接領域に入射する事態をも、係る構成により効果的に未然防止できる。」
エ 上記ウに照らして図2及び図3を見ると、「第1遮光膜11a」、「第2遮光膜23」及び「(主配線部6a及び突出部6bを備える)データ線6」は、それぞれ、「画素電極9a」の縁部の一部と重なっていることが見て取れる。

上記摘記事項を総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「TFTアレイ基板10と、これに対向配置される対向基板20とを備えている電気光学装置であって、
TFTアレイ基板10には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6、走査線3a及び容量線3bが設けられており、走査線3aとデータ線6との交差する個所には夫々、チャネル領域1a'に走査線3aがゲート電極として対向配置されたTFT30が設けられており、走査線3a及び容量線3bにほぼ重なる領域には夫々、走査線3a及びTFT30の下側を通るように、第1遮光膜11aが設けられており、第1遮光膜11aは夫々、走査線3a及び容量線3bに沿って縞状に形成されていると共に、データ線6と交差する箇所が下方に突出して形成されており、この突出部を含む幅広の部分により各TFT30のチャネル領域1a'及びその隣接領域をTFTアレイ基板側から見て夫々覆う位置に設けられており、第1遮光膜11aは、走査線3a及びデータ線6に沿って延設して格子状に形成してもよく、データ線6は、走査線3aと直交する方向に伸びる主配線部6aと、主配線部6aから走査線3aに沿って突出する突出部6bとを備えており、チャネル領域1a'及びその隣接領域は、突出部6bを有しており幅広に形成されたデータ線6の部分により、基板面に対して垂直入射される入射光のみならず、上下左右から斜めに入射する入射光に対して遮光されており、第1遮光膜11aが形成されているので、TFTアレイ基板10の側からの戻り光等が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域1a'及びその隣接領域に入射する事態を未然に防ぐことができ、これに起因した光電流の発生により画素スイッチング用TFT30の特性が変化することはなく、
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられており、対向基板20には、各画素の開口領域の少なくとも一部を規定するための、第2遮光膜23が設けられており、対向基板20の側から入射光が画素スイッチング用TFT30の半導体層1aのチャネル領域1a'及びその隣接領域に侵入することを、遮光機能を有するデータ線6と共に未然防止し、
第1遮光膜11a、第2遮光膜23及び主配線部6a及び突出部6bを備えるデータ線6は、それぞれ、画素電極9aの縁部の一部と重なっており、
画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、シール材により囲まれた空間に液晶が封入され、液晶層50が形成される電気光学装置。」

(2)引用刊行物2
同じく、特開2001-337346号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に互いに交差するようにマトリクス状に配列された複数の映像信号線及び走査線と、
この映像信号線及び走査線の交点部分に接続されたスイッチング動作をする薄膜トランジスタと、
この薄膜トランジスタに接続され、絶縁膜を介して前記基板上にマトリクス状に配列された透明な複数の表示画素電極と、
を備えたアレイ基板と、
このアレイ基板と対向して配置される対向基板と、
この対向基板とアレイ基板の間隙部分に封入された液晶と、
を具備し、
前記映像信号線を隣り合う表示画素電極同志の中間部分に、その一部が前記表示画素電極に夫々重なるように配置し、その重ね幅が大きい方の全表示画素面内の平均重ね幅をaとし、そのバラツキを△aとした場合に、△a/a<0.16に設定することを特徴とする液晶表示装置。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置に関し、特に表示画素電極間に配置される映像信号線を、遮光部として利用する液晶表示装置に関する。」
ウ 「【0018】以下、図面を参照しながら詳細に説明する。即ち図1において、アレイ基板11側の絶縁基板12上に複数本の映像信号線13と複数本の走査線14が、互いに交差してマトリクス状に配置され、その交点部分にスイッチング素子としてのnチャンネルTFT15が接続されている。このTFT15には、夫々透明な表示画素電極16が接続されており、この表示画素電極16は、全体がマトリクス状に配列されている。
【0019】更にこの走査線14と並行して補助容量線17が配置され、この補助容量線17の一部を映像信号線13の一側に沿って延在させることで、静電遮蔽性を有するシールド電極18を形成している。このシールド電極18は、一画素ピッチ内で映像信号線13と交差し、且つ隣接する表示画素電極16の周辺部の一部とも重なるように配置している。このために、映像信号線13とシールド電極18は、表示画素電極16の左右辺の光漏れを防ぐ遮光対を形成している。
【0020】この映像信号線13と表示画素電極16との配置関係は、図2に示すように配置される。後述する配向膜のラビングは、アレイ基板11側では、図1の矢印A方向に右上方斜め方向から左下側斜め方向に向けてラビング処理され、また対向基板側の配向膜は、これと直交する図1中に破線の矢印で示すB方向に、左上斜め方向から右下斜め方向にラビング処理される。
【0021】この際、矢印Aで示すラビング方向の下流側にあたる映像信号線13端部に位置する表示画素電極16の図中左辺側は、前述の原因によって配向不良が発生する領域となる。このため表示画素電極16と映像信号線13の重畳する図中右側の幅aが、液晶の配向不良領域を隠せるように大きく設定されるように配置されている。」

上記摘記事項を総合すると、引用刊行物2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「基板上に互いに交差するようにマトリクス状に配列された複数の映像信号線及び走査線と、この映像信号線及び走査線の交点部分に接続されたスイッチング動作をする薄膜トランジスタと、この薄膜トランジスタに接続され、絶縁膜を介して前記基板上にマトリクス状に配列された透明な複数の表示画素電極と、を備えたアレイ基板と、このアレイ基板と対向して配置される対向基板と、この対向基板とアレイ基板の間隙部分に封入された液晶と、を具備する液晶表示装置であって、
映像信号線は、表示画素電極の左右辺の光漏れを防ぎ、表示画素電極と映像信号線の重畳する側の幅が、液晶の配向不良領域を隠せるように大きく設定されるように配置した液晶表示装置。」

(3)引用刊行物3
同じく、特開2000-305114号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1透明基板上に形成されたゲートラインと、前記ゲートラインと絶縁されて交差するように配列されたデータラインと、前記ゲートライン及びデータラインが交差する部分に形成され、前記ゲートラインから分技して突出したゲート電極と、前記データラインに連結されたソース電極と、前記ソース電極から離隔して対向するように形成されたドレイン電極を有する薄膜トランジスタTFTと、前記薄膜トランジスタTFTを覆い、前記ドレイン電極の一部を露出させるためのコンタクトホールが形成された保護膜と、前記保護膜上に形成され、前記コンタクトホールを介してドレイン電極に連結されるとともに前記データラインと一部重なるように形成された画素電極と、を含む薄膜トランジスタアレイ基板と、
第2透明基板上にブラックマトリックス、カラーフィルタ及び共通電極を含むカラーフィルタ基板と、
前記薄膜トランジスタアレイ基板と前記カラーフィルタ基板との間に注入されてシーリングされる液晶と、を含む液晶表示装置において、
前記カラーフィルタ基板のブラックマトリックスが前記薄膜トランジスタアレイ基板のデータラインと非対称的にオーバーラップするように設計されたことを特徴とする液晶表示装置。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は液晶表示装置及びその製造方法に係り、特に配向膜のラビング(rubbing)方向に応じてデータラインの近傍に発生する光漏れを防止することのできる液晶表示装置及びその製造方法に関する。」
ウ 「【0029】図9乃至図11に示すように、TFTと画素電極が配列される薄膜トランジスタアレイ基板としての透明基板1’上にはゲートライン100が水平方向に延在して形成されており、このゲートライン100と絶縁されながら交差するデータライン200が垂直方向に延在している。…
【0030】データライン200の延在方向にはゲートライン100から分技したゲート電極140が突出している。ゲート電極140の下にはゲート絶縁膜220(図11に示される)を介した活性層120が形成されており、この活性層120にはチャネル領域(図示せず)及びチャネル領域の両側にソース/ドレイン領域(図示せず)が定められている。
【0031】ゲートライン100の延在方向にはデータライン200から分技され、活性相120のソース領域に連結されるソース電極160、及び活性層のドレイン領域に連結されるドレイン電極180が離隔して対向してある。
【0032】前記構造の全面には図10及び図11に示すように有機保護膜240が被覆されており、この有機保護膜240にはドレイン電極180を露出させるコンタクトホールが形成されている。…有機保護膜240上にはコンタクトホールを覆ってドレイン電極180に連結される画素電極300が形成されている。
【0033】この画素電極300は開口率を増大させるために、低い誘電率を有する絶縁膜としての有機保護膜240を介在させてデータライン200の一方端側とA’(通常1.5μm以下)だけオーバーラップした構造をもつ。斜線の引いた部分(領域)290はブラックマトリックスを示す。

【0040】…本発明ではデータラインが画素電極及びブラックマトリックス290と非対称的にオーバーラップした構造、すなわち、データライン200に対してブラックマトリクス290が遮光すべき側に偏倚して対向するように配置された構造をもつことにより、図12に示すように、データライン200とブラックマトリックス290間のオーバーラップ部分が実際的に前記光の透過度が急増する領域(B’を含む)を遮断させ、光が透過しない。したがって、この光漏れ領域B’が遮られるようになって画質に何の影響も与えなくなる。」

上記摘記事項を総合すると、引用刊行物3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「第1透明基板上に形成されたゲートラインと、前記ゲートラインと絶縁されて交差するように配列されたデータラインと、前記ゲートライン及びデータラインが交差する部分に形成され、前記ゲートラインから分技して突出したゲート電極と、前記データラインに連結されたソース電極と、前記ソース電極から離隔して対向するように形成されたドレイン電極を有する薄膜トランジスタTFTと、前記薄膜トランジスタTFTを覆い、前記ドレイン電極の一部を露出させるためのコンタクトホールが形成された保護膜と、前記保護膜上に形成され、前記コンタクトホールを介してドレイン電極に連結されるとともに前記データラインと一部重なるように形成された画素電極と、を含む薄膜トランジスタアレイ基板と、第2透明基板上にブラックマトリックス、カラーフィルタ及び共通電極を含むカラーフィルタ基板と、前記薄膜トランジスタアレイ基板と前記カラーフィルタ基板との間に注入されてシーリングされる液晶と、を含む液晶表示装置において、
前記カラーフィルタ基板のブラックマトリックスが前記薄膜トランジスタアレイ基板のデータラインと非対称的にオーバーラップするように設計された液晶表示装置。」

(4)引用刊行物4
同じく、特開平8-160454号公報(以下「引用刊行物4」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)に関するもので、特に、多結晶シリコン(p-Si)の薄膜電界効果トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置に関するものである。」
イ 「【0004】近年、TFTとして、チャンネル層にp-Siを用いたものがあり、高移動度が達成され、TFTサイズの小型化、駆動回路部の一体搭載などが実現されている。…更に明るさを高める目的で、ブラックマトリクス(BM)となる遮光層をTFTのアレイ基板側に内蔵形成したものがある。…
【0005】このような構成に関して、特に、走査線や信号線との重畳部を工夫してBMとして機能させることにより、対向基板側のBMを不要あるいは縮小して、開口率を向上したものがある。…
【0006】図15と図16は、画素電極(57)とドレインライン(55)との重畳部の断面構造であ…る。図15に示す如く、隣接する画素電極(57)間は、ソース・ソース間の横方向電界によるクロストークを防ぐため、最低離間距離(L)が必要であるとともに、画素電極(57)の周縁部では電界の乱れのために液晶の配向が不安定で、この部分でも遮光が必要とされ、幅(L_(1))をもってドレインライン(55)との重畳部が要されている。…」
ウ 「【0020】
【実施例】…図1は本発明の第1の実施例に係る液晶表示装置の画素部の平面図であり、図2は図1のA-A線に沿った断面図、図3は図1のB-B線に沿った断面図、図4は図1のC-C線に沿った断面図である。まず、高耐熱性の石英ガラスなどの透明基板(10)上に、…TFTの活性層(11)及び第1の補助容量電極(11C)が形成されている。活性層(11)及び第1の補助容量電極(11C)を覆う全面には…SiO_(2)が被覆され、ゲート絶縁層(12)とされている。…
【0021】ゲート絶縁層(12)上には、…ゲートライン(13)、ゲート電極(13G)及び第2の補助容量電極(13C)のパターンに形成され…る。…
【0022】…活性層(11)には、ゲート電極(13G)をマスクとして燐などのN型不純物のイオン注入を行うことにより、ソース・ドレイン領域(11s,11d)が形成されるとともに、ノンドープのチャンネル領域(11n)が形成されている。
【0023】ゲートライン(13)、ゲート電極(13G)及び第2の補助容量電極(13C)を覆う全面には…SiO_(2)が積層され、第1の層間絶縁層(14)とされている。ドレイン領域(11d)上のゲート絶縁層(12)及び第1の層間絶縁層(14)にコンタクトホール(CT1)を開口したあと、…Alを…積層し、フォトエッチによりドレインライン(15)のメインライン(15M)が形成され、コンタクトホール(CT1)を介してドレイン領域(11d)に接続されている。更に、…Mo、Ti、Crなどを…積層し、フォトエッチによりメインライン(15M)よりも大きなパターンでメインライン(15M)を覆い、BMを兼ねたサブライン(15S)が形成されている。

【0025】ドレインライン(15)が形成された基板(10)上には、…SiO_(2)膜(1)を…積層した後、…SiO_(2)を主成分とした膜、即ち、SOG膜(2)を形成している。…SOG膜(2)上には更にCVDによりSiN_(x)膜(3)を形成し、これらSiO_(2)膜(1)、SOG膜(2)及びSiN_(x)膜(3)をもって第2の層間絶縁層(16)としている。

【0027】ソース領域(11s)上のゲート絶縁層(12)、第1の層間絶縁層(14)及び第2の層間絶縁層(16)にコンタクトホール(CT2)を開口したあと、ITOのスパッタリングとフォトエッチを行うことにより画素電極(17)が形成され、コンタクトホール(CT2)を介して、ソース領域(11s)にも接続されている。画素電極(17)は、平坦化された第2の層間絶縁層(16)上に形成されている…。
【0028】図1及び図3に示す如く、画素電極(17)は、ゲートライン(13)に重畳する部分にまで形成されており、隣接する画素電極(17)間でのクロストークを防ぐための最低離間距離(L)を確保しながら、限界まで拡げられ、表示領域がゲートライン(13)のエッジにまで拡大されている。また、ポリサイドからなるゲートライン(13)の遮光性を利用して、画素電極(17)を周縁遮光幅(L_(1))をもってゲートライン(13)に重畳することにより、ゲートライン(13)がBMとして機能され、周縁遮光が実現される。

【0031】一方、ドレインライン(15)の側では、図4に示す如く、画素電極(17)はサブライン(15S)上に重畳されるとともに、メインライン(15M)に近接されている。即ち、ドレインライン(15)は、膜厚の厚いメインライン(15M)部と、膜厚の薄いサブライン(15S)部からなり、メインライン(15M)は従来よりも線幅が狭く、かつ、画素電極(17)は従来よりも大きく、隣接する画素電極(17)とのクロストークを防ぐための最低離間距離(L)をもって最近接され、表示領域がサブライン(15S)のエッジにまで拡大されているとともに、サブライン(15S)はコントラスト比向上のために必要な周縁遮光領域の幅(L_(1))をもって画素電極(17)に重畳され、BMとして機能している。…」

上記摘記事項を総合すると、引用刊行物4には、以下の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「透明基板(10)上に、TFTの活性層(11)及び第1の補助容量電極(11C)が形成され、活性層(11)及び第1の補助容量電極(11C)を覆う全面にはSiO_(2)が被覆され、ゲート絶縁層(12)とされ、ゲート絶縁層(12)上には、ゲートライン(13)、ゲート電極(13G)及び第2の補助容量電極(13C)のパターンに形成され、活性層(11)には、ゲート電極(13G)をマスクとして燐などのN型不純物のイオン注入を行うことにより、ソース・ドレイン領域(11s,11d)が形成されるとともに、ノンドープのチャンネル領域(11n)が形成され、ゲートライン(13)、ゲート電極(13G)及び第2の補助容量電極(13C)を覆う全面にはSiO_(2)が積層され、第1の層間絶縁層(14)とされ、ドレイン領域(11d)上のゲート絶縁層(12)及び第1の層間絶縁層(14)にコンタクトホール(CT1)を開口したあと、Alを積層し、フォトエッチによりドレインライン(15)のメインライン(15M)が形成され、コンタクトホール(CT1)を介してドレイン領域(11d)に接続され、更に、Mo、Ti、Crなどを積層し、フォトエッチによりメインライン(15M)よりも大きなパターンでメインライン(15M)を覆い、BMを兼ねたサブライン(15S)が形成され、レインライン(15)が形成された基板(10)上には、SiO_(2)膜(1)を積層した後、SiO_(2)を主成分とした膜、即ち、SOG膜(2)を形成し、SOG膜(2)上には更にSiN_(x)膜(3)を形成し、これらSiO_(2)膜(1)、SOG膜(2)及びSiN_(x)膜(3)をもって第2の層間絶縁層(16)とし、ソース領域(11s)上のゲート絶縁層(12)、第1の層間絶縁層(14)及び第2の層間絶縁層(16)にコンタクトホール(CT2)を開口したあと、ITOのスパッタリングとフォトエッチを行うことにより画素電極(17)が形成され、コンタクトホール(CT2)を介して、ソース領域(11s)にも接続されている。画素電極(17)は、平坦化された第2の層間絶縁層(16)上に形成されている液晶表示装置であって、
画素電極(17)は、ゲートライン(13)に重畳する部分にまで形成されており、表示領域がゲートライン(13)のエッジにまで拡大されており、ポリサイドからなるゲートライン(13)の遮光性を利用して、画素電極(17)を周縁遮光幅(L_(1))をもってゲートライン(13)に重畳することにより、ゲートライン(13)がBMとして機能され、周縁遮光が実現され、
一方、ドレインライン(15)の側では、画素電極(17)はサブライン(15S)上に重畳されるとともに、メインライン(15M)に近接されており、即ち、ドレインライン(15)は、膜厚の厚いメインライン(15M)部と、膜厚の薄いサブライン(15S)部からなり、メインライン(15M)は従来よりも線幅が狭く、かつ、画素電極(17)は従来よりも大きく、表示領域がサブライン(15S)のエッジにまで拡大されているとともに、サブライン(15S)はコントラスト比向上のために必要な周縁遮光領域の幅(L_(1))をもって画素電極(17)に重畳され、BMとして機能している、液晶表示装置。」

(5)引用刊行物5
同じく、特開2001-166337号公報(以下「引用刊行物5」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マトリクス状に画素電極を設けた構造を有する液晶装置の技術分野に属し、特に、画素電極の下層に平坦化処理された層間絶縁膜が配置された構造を有する液晶装置の技術分野に属する。」
イ 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】図11に示すように、例えば隣り合う画素電極9a間にそれぞれ異なる大きさの電圧が印加されると、隣り合う画素電極9a間の領域付近では、横電界Cが生じる。すると、隣り合う画素電極9a間の領域付近では、液晶分子50aの向きがこの横電界C方向に影響される。このため、隣り合う画素電極間領域付近の液晶分子は所望の配向が行われず配向不良となる。この液晶配向不良領域では、横電界に影響されず正常に液晶分子が配向される領域と液晶分子の配向方向が異なるため、ディスリネーションラインと呼ばれる輝線が生じ、液晶装置の表示品位を著しく低下させるという問題点がある。…」
ウ 「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の液晶装置は、第1の基板と第2の基板との基板間に液晶層が挟持されてなり、銭第1の基板上には対向電極を備え、前記第2の基板には、マトリクス状に配置された画素電極と、前記画素電極に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子上に配置された平坦化膜からなる下側層間絶縁膜と、前記下側層間絶縁膜上に配置されたデータ線と、前記データ線上であって、且つ前記画素電極の下層に配置された第2層間絶縁膜とを具備し、前記画素電極の下層であって、前記下側層間絶縁膜上には、前記データ線または前記走査線に沿って、隣り合う画素電極間領域に配置されたパターン膜とを具備することを特徴とする。
【0011】本発明のかかる構成によれば、平坦化された基板表面上にパターン膜を配置することにより、走査線もしくはデータ線に沿って配置される隣り合う画素電極間領域付近において、画素電極の端部と対向電極との間で液晶層の厚み方向に生じる縦方向の電界の大きさが、隣り合う画素電極間に生じる横方向に電界(以下、横電界)の大きさよりも大きくなる。すなわち、画素電極間領域付近において平坦化された基板表面上に任意にパターン膜を配置することにより、画素電極間領域付近における画素電極と対向電極との距離の制御を容易に行うことができ、パターン膜の膜厚を任意に設定することによって、画素電極と対向電極との距離を所望の値として縦方向の電界の大きさを制御することが可能となる。これにより、横電界による配向不良の発生を防止し、表示品位の高い液晶装置を得るという効果を有する。」
エ 「【0040】図2と3に示すように、液晶装置400は、対向基板300とTFTアレイ基板200との間に、後述のシール材(図7及び図8参照)により囲まれた空間に液晶が封入され液晶層50が形成されて構成されている。

【0042】TFTアレイ基板200は、図1に示すように、石英等の基板10上に複数の走査線3及び複数のデータ線6が交差して配置され、その交差部毎に薄膜トランジスタ及びこれに電気的に接続された画素電極9a、走査線と平行に配置された容量線3bが配置されて構成される。
【0043】図1及び図3に示すように、画素電極9aのスイッチングを制御するスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(以下、TFT)30は、点線にて示される半導体層1とゲート絶縁膜2と走査線3の一部をなすゲート電極3aから構成される。画素電極9aは半導体層1とコンタクトホール8を介して電気的に接続され、データ線6の一部はソース電極6aとして半導体層1とコンタクトホール5を介して電気的に接続される。…
【0044】…TFTアレイ基板200では、石英等の基板10上に、所定の形状にパターニングされた第1遮光膜11a…が配置される。第1遮光膜11aは、好ましくは不透明な高融点金属であるTi、Cr、W、Ta、Mo及びPbのうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド等から構成される。…第1遮光膜11aが形成されているので、基板10の側からの戻り光等が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域1aやLDD領域に入射する事態を未然に防ぐことができ、光電流の発生により画素スイッチング用TFT30の特性が劣化することはない。
【0045】第1の遮光膜11a上にはこれを覆うように下地用絶縁膜12が配置される。…
【0046】下地用絶縁膜12上には、データ線6及び走査線3に沿った形状に形成された半導体層1…が配置され、この半導体層を覆ってゲート絶縁膜2が配置される。…
【0047】ゲート絶縁膜2上には半導体層1の一部と重なるように複数のポリシリコン膜からなる走査線3が配置され、この重なった領域の半導体層1はチャネル領域1aとして、走査線3はゲート電極3aとして機能する。更に、ゲート絶縁膜2上には、走査線3と同層からなる容量線3bが配置されている。…
【0048】走査線3及び容量線3bを覆って、平坦化処理を行った層間絶縁膜(下側層間絶縁膜)4が配置される。更に、層間絶縁膜4上には走査線3と交差するように形成された複数のデータ線6、データ線6と同層からなる島状のパターン膜6bが配置されている。パターン膜6bは、例えばデータ線6方向に沿って配置される隣り合う画素電極9a間領域に配置され、かつその端部が画素電極9aの端部と重なり合うように配置されている。…
【0049】そして、データ線6を覆うように層間絶縁膜(上側層間絶縁膜)7が配置され、層間絶縁膜7上には走査線3とデータ線6との交差部毎にマトリクス状に複数のITO膜からなる画素電極9aが配置され、更に基板全面にポリイミドからなる配向膜16が配置されている。
【0050】次に、対向基板の構造について説明する。
【0051】対向基板300は、ガラス基板20上にマトリクス状に形成された第2の遮光膜23と、基板全面に形成された対向電極21と、配向膜22とが配置されて構成されている。…第2遮光膜23は、各画素部の開口領域以外の領域に設けられ、対向基板300の側から入射光が画素スイッチング用TFT30の半導体層1のチャネル領域1aやLDD(Lightly Doped Drain)領域に侵入することはない。…
【0052】本実施形態では、図2に示すように、パターン膜6bを設けることにより、データ線方向に沿って配置される隣り合う画素電極9a間の距離d1が、隣り合う画素電極間領域付近の画素電極9aの端部と対向電極21との距離d2よりも長くなっている。ここで、d1は1.5から3.5μm、望ましくは2.0から3.0μm、d2は1.0から3.0μm、望ましくは1.5から2.5μm、パターン膜6bの幅d3は5μmである。…このような構成とすることにより、液晶装置としたときに、画素電極9a間で生じる液晶層50の厚み方向と垂直な方向の横の電界(以下横電界)よりも、隣り合う画素電極間領域付近の画素電極9aと対向電極21との間で生じる液晶層50の厚み方向の電界が大きくなる。これにより、隣り合う画素電極間領域における液晶分子は液晶層50の厚み方向の電界に影響されることとなり、横電界による液晶分子の配向不良の発生を防止することができる。また、図2に示すように、パターン膜6bと画素電極9aの端部とは重なりあうように配置されており、画素領域の開口率を向上することができる。」

上記摘記事項を総合すると、引用刊行物5には、以下の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。

「第1の基板と第2の基板との基板間に液晶層が挟持されてなり、銭第1の基板上には対向電極を備え、前記第2の基板には、マトリクス状に配置された画素電極と、前記画素電極に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子上に配置された平坦化膜からなる下側層間絶縁膜と、前記下側層間絶縁膜上に配置されたデータ線と、前記データ線上であって、且つ前記画素電極の下層に配置された第2層間絶縁膜とを具備し、前記画素電極の下層であって、前記下側層間絶縁膜上には、前記データ線または前記走査線に沿って、隣り合う画素電極間領域に配置されたパターン膜とを具備する液晶装置であって、
平坦化された基板表面上にパターン膜を配置することにより、走査線もしくはデータ線に沿って配置される隣り合う画素電極間領域付近において、画素電極の端部と対向電極との間で液晶層の厚み方向に生じる縦方向の電界の大きさが、隣り合う画素電極間に生じる横方向に電界(以下、横電界)の大きさよりも大きくなり、画素電極間領域付近において平坦化された基板表面上に任意にパターン膜を配置することにより、画素電極間領域付近における画素電極と対向電極との距離の制御を容易に行うことができ、パターン膜の膜厚を任意に設定することによって、画素電極と対向電極との距離を所望の値として縦方向の電界の大きさを制御することが可能となり、これにより、横電界による配向不良の発生を防止し、表示品位の高いという効果を有する液晶装置。」


3 対比
本願発明1と引用発明1を対比する。
(1)引用発明1の「TFTアレイ基板10」及び「対向基板20」は、それぞれ、本願発明1の「一対の基板の一方」及び「一対の基板の他方」に相当する。
(2)引用発明1の「液晶層50」は、本願発明1の「(前記一対の基板の間に挟持された)電気光学物質」に相当する。
(3)引用発明1の「『走査線3a』及び『データ線6』」は、本願発明1の「(前記一対の基板の一方に、互いに交差するように配線された)『(複数の)走査線』及び『(複数の)データ線』」に相当する。
(4)引用発明1の「(TFTアレイ基板10にマトリクス状に設けられた)複数の透明な画素電極9a」は、本願発明1の「(前記一対の基板の一方における前記電気光学物質に面する側に、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線の交差に対応する画素毎に配列された)複数の画素電極」に相当する。
(5)引用発明1の「(対向基板20の全面に渡って設けられている)対向電極21」は、本願発明1の「(前記一対の基板の他方に、前記複数の画素電極に前記電気光学物質を介して対向するように配置された)対向電極」に相当する。
(6)引用発明1は、「第1遮光膜11a、第2遮光膜23及び…データ線6」が、それぞれ「画素電極9aの縁部の一部と重なって」いるものであって、前記「第1遮光膜11a」は、「TFTアレイ基板10」に設けられ、「TFTアレイ基板10の側からの戻り光等が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域1a'及びその隣接領域に入射する事態を未然に防ぐことができ」、「走査線3a及びデータ線6に沿って延設して格子状に形成してもよ」いものであり、また、前記「第2遮光膜23」は「対向基板20」に設けられるものであり、さらに、前記「データ線6」は「TFTアレイ基板10」に設けられるものであるから、
ア 引用発明1の「『第1遮光膜11a』、『第2遮光膜23』及び『データ線6』」は、本願発明1の「(前記一対の基板の少なくとも一方に設けられ、前記一対の基板の上から見て、前記画素の開口領域を少なくとも部分的に規定する)遮光膜」に相当し、
イ 引用発明1は、本願発明1の「前記複数の画素電極の各々及び前記遮光膜は、前記一対の基板の上から見て、前記複数の画素電極の各々と前記遮光膜が部分的に重畳するように、配置されており」との事項、「前記遮光膜は第1遮光膜、第2遮光膜、及び第3遮光膜を含み、前記第1遮光膜は、前記一対の基板の一方に配置され、前記一対の基板の一方からの光が薄膜トランジスタに入射するのを防ぎ」との事項、「前記第2遮光膜は、前記一対の基板の他方に配置され」との事項及び「前記第3遮光膜は、前記一対の基板の一方に配置されるデータ線を含み、前記第1遮光膜は第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に延びるように配置され」との事項を備える。
(7)引用発明1の「電気光学装置」は、本願発明1の「電気光学装置」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明1とは、
「一対の基板と、
前記一対の基板の間に挟持された電気光学物質と、
前記一対の基板の一方に、互いに交差するように配線された複数の走査線及び複数のデータ線と、
前記一対の基板の一方における前記電気光学物質に面する側に、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線の交差に対応する画素毎に配列された複数の画素電極と、
前記一対の基板の他方に、前記複数の画素電極に前記電気光学物質を介して対向するように配置された対向電極と、
前記一対の基板の少なくとも一方に設けられ、前記一対の基板の上から見て、前記画素の開口領域を少なくとも部分的に規定する遮光膜と、
を備え、
前記複数の画素電極の各々及び前記遮光膜は、前記一対の基板の上から見て、前記複数の画素電極の各々と前記遮光膜が部分的に重畳するように、配置されており、
前記遮光膜は第1遮光膜、第2遮光膜、及び第3遮光膜を含み、
前記第1遮光膜は、前記一対の基板の一方に配置され、前記一対の基板の一方からの光が薄膜トランジスタに入射するのを防ぎ、
前記第2遮光膜は、前記一対の基板の他方に配置され、
前記第3遮光膜は、前記一対の基板の一方に配置されるデータ線を含み、
前記第1遮光膜は第1方向及び前記第1方向に交差する第2方向に延びるように配置される電気光学装置。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

a 第2遮光膜が、本願発明1では、ブラックマトリクスであるのに対し、引用発明1では、ブラックマトリクスであるのか否か明らかでない点(以下「相違点1」という。)
b 一対の基板の間の距離である基板間ギャップ距離X、並びに前記複数の画素電極の各々と前記遮光膜が部分的に重畳する領域の幅である重畳幅Yが、本願発明1では、不等式
Y≧0.625X-y
但し
y=-0.0208Δε^(2)+0.5625Δε-3.0417
Δε=前記電気光学物質の誘電率異方性
を満たすのに対し、引用発明1では、そのような不等式を満たすのか否か明らかでない点(以下「相違点2」という。)。


4 判断
上記相違点につき検討する。
(1)相違点1について
TFTアレイ基板と、これに対向配置される対向基板とを備えてなる電気光学装置において、該対向基板に設けられる遮光膜をブラックマトリクスで構成するものは本願の優先日時点で周知であるから、引用発明1の「第2遮光膜23」をブラックマトリクスとなして本願発明1の上記相違点1の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。
(2)相違点2について
引用発明1は、「第1遮光膜11a、第2遮光膜23及び…データ線6」が、それぞれ「画素電極9aの縁部の一部と重な」る「重畳部分」を有するものであるといえるところ、引用刊行物1あるいは引用刊行物2?5を見ても、引用発明1の上記「重畳部分」の幅の下限値(すなわち、隣り合う画素電極間で発生する横電界による光漏れを防止し得る「重畳部分」の幅の下限値)が「(液晶層の)誘電率異方性Δε」に依存すること、あるいは、当該「重畳部分」の幅の下限値を「(液晶層の)誘電率異方性Δε」を考慮して定めることについて記載したものは見当たらない。したがって、引用発明1の前記「重畳部分」の幅の下限値を、「(液晶層の)誘電率異方性Δε」と関連づけ、定めることを、当業者が容易に想到することができた、ということはできない。
すなわち、引用発明1において、上記相違点2に係る本願発明1の構成となすことを当業者は容易になし得た、ということはできない。

以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

また、本願発明2?7は、いずれも本願発明1を引用するものであるから、上記と同様の理由で、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるということはできない。


5 むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-24 
出願番号 特願2008-157951(P2008-157951)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 廣田 かおり  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 藤本 義仁
黒瀬 雅一
発明の名称 電気光学装置及びその製造方法並びに電子機器  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 宮坂 一彦  

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