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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する H02M
管理番号 1286719
審判番号 訂正2013-390228  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2013-12-20 
確定日 2014-02-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3694292号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3694292号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
平成25年12月20日付けでなされた本件訂正審判の請求は、特許第3694292号(特許出願:平成14年12月26日、設定登録:平成17年7月1日)の願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書等」という。)における明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり請求項1ないし4からなる一群の請求項について訂正すること、すなわち、一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであって、具体的には、次の訂正事項1及び訂正事項2のとおりに訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものである。

(1)訂正事項1
特許明細書等における特許請求の範囲の請求項1に「前記トランスの三次コイルと出力電圧検出回路との間に直列に接続したスイッチ素子を設け、前記スイッチ素子に対し」とあるのを、
「前記出力電圧検出回路には、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子が設けられ、
前記スイッチ素子に対し」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2乃至4も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許明細書等の段落【0031】に「前記トランスの三次コイルと出力電圧検出回路との間に直列に接続したスイッチ素子を設け、前記スイッチ素子に対し」とあるのを、
「前記出力電圧検出回路には、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子が設けられ、前記スイッチ素子に対し」に訂正する。


2.本件訂正の適否についての判断
訂正事項1は請求項1の記載を訂正し、訂正事項2は訂正事項1に対応して発明の詳細な説明の段落【0031】の記載を訂正するものであるから、両者についてまとめて判断する。

(1)訂正の目的について
特許明細書等には、次の事項が記載されている。
・「【0048】
(1) :回路の特徴(図1参照)
本回路の最大の特徴は、トランス30の三次コイル33に接続された出力電圧検出回路19にスイッチ素子50を設けた点である。このスイッチ素子50は、メインスイッチ素子1を駆動する駆動信号(パルス)が、メインスイッチ素子1がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動される。そして、三次コイル33から出力された電圧を整流平滑し、その電圧を検出電圧とし、メインスイッチ素子1のオン/オフの時間を制御する。」
・図1において、トランス30の三次コイル33と直列に接続したスイッチ素子50が、出力電圧回路19の範囲を示す破線内に含まれている。

これら記載事項によれば、特許明細書等において、出力電圧検出回路19には、トランスの三次コイル33と直列に接続したスイッチ素子50が設けられていることが記載されていること、すなわち、訂正明細書の請求項1及び段落【0031】における「前記出力電圧検出回路には、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子が設けられ」という事項が記載されていることが理解できる。

一方、特許明細書等の請求項1及び段落【0031】に記載された「前記トランスの三次コイルと出力電圧検出回路との間に直列に接続したスイッチ素子を設け」という事項(以下、「訂正前の記載事項」という。)については、特許明細書等において、請求項1及び当該請求項1に対応する段落【0031】以外に記載されておらず、発明の詳細な説明及び図面には実質的に記載されていない。
そして、訂正前の記載事項は、そもそも特許第3694292号の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)にも記載されておらず、審査過程における平成17年5月11日付け手続補正書による補正により導入された補正に係る事項なのであって、かかる補正に係る事項が錯誤に基づくものであることは明らかである。

そうすると、訂正事項1及び訂正事項2は、錯誤に基づく訂正前の記載事項を特許明細書等の他の記載に基づいて本来のものに訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第二号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」のうちの「誤記の訂正」を目的としたものである。

(2)新規事項の追加の有無について
当初明細書等における段落【0048】及び図1の記載内容は、上記「(1)訂正の目的について」において示した特許明細書等における段落【0048】及び図1の記載内容と同じである。
また、当初明細書等には次の事項が記載されている。
・「【請求項1】トランスの一次コイルと直列にメインスイッチ素子を接続し、該メインスイッチ素子のオン/オフ駆動により、負荷に供給するトランスの二次コイルの出力電圧を一定電圧に制御する同期整流型DC-DCコンバータにおいて、
前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子を含み、前記三次コイルの誘起電圧から出力電圧を検出するための出力電圧検出回路を接続すると共に、
前記スイッチ素子に対し、前記出力電圧検出回路の検出電圧を基にメインスイッチ素子がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御するスイッチ素子駆動回路を備えていることを特徴とする同期整流型DC-DCコンバータ。」
・「【0031】
すなわち、第1の同期整流型DC-DCコンバータでは、トランスの一次コイルと直列にメインスイッチ素子を接続し、該メインスイッチ素子のオン/オフ駆動により、負荷に供給するトランスの二次コイルの出力電圧を一定電圧に制御する同期整流型DC-DCコンバータにおいて、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子を含み、前記三次コイルの誘起電圧から出力電圧を検出するための出力電圧検出回路を接続すると共に、前記スイッチ素子に対し、前記出力電圧検出回路の検出電圧を基にメインスイッチ素子がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御するスイッチ素子駆動回路を備えていることを特徴とする。」

そうすると、当初明細書等には、その請求項1、段落【0031】、段落【0048】及び図1に記載された事項によれば、訂正明細書の請求項1及び段落【0031】における「前記出力電圧検出回路には、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子が設けられ」という事項が記載されていたというべきである。
そして、本件訂正後における請求項1ないし4に記載された事項により特定される各発明は、当初明細書等に記載されていたものということができる。
よって、訂正事項1及び訂正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものであり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否かについて
訂正事項1及び訂正事項2は、明らかな誤記を訂正するものであり、しかも、本件訂正前における請求項1ないし4に記載された事項により特定される各発明と、本件訂正後における請求項1ないし4に記載された事項により特定される各発明との間で、スイッチ素子が出力電圧検出回路の外部に設けられるか、内部に設けられるか構成上の違いがあるものの、発明の目的、作用及び効果についての差異は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件について
本件訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし4には、訂正明細書によれば次の事項が記載されている。
「【請求項1】トランスの一次コイルと直列にメインスイッチ素子を接続し、該メインスイッチ素子のオン/オフ駆動により、負荷に供給するトランスの二次コイルの出力電圧を一定電圧に制御するための出力電圧検出回路を、前記トランスの三次コイルに設けた同期整流型DC-DCコンバータであって、
前記出力電圧検出回路には、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子が設けられ、
前記スイッチ素子に対し、前記出力電圧検出回路の検出電圧を基にメインスイッチ素子がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御するスイッチ素子駆動回路を備えていることを特徴とする同期整流型DC-DCコンバータ。
【請求項2】前記スイッチ素子に抵抗を並列接続したことを特徴とする請求項1記載の同期整流型DC-DCコンバータ。
【請求項3】前記スイッチ素子駆動回路はダイオードとコンデンサからなり、前記メインスイッチ素子をオフにする時、前記ダイオードを介して前記コンデンサを充電し、前記メインスイッチ素子をオンさせる時、前記コンデンサの充電電圧を前記スイッチ素子に印加して、該スイッチ素子をオンさせる機能を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の同期整流型DC-DCコンバータ。
【請求項4】前記スイッチ素子駆動回路は第2のスイッチ素子を有し、前記メインスイッチ素子のオン、オフ信号により、前記スイッチ素子のオン、オフを制御する機能を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の同期整流型DC-DCコンバータ。」

そして、本件訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される各発明に対し、請求人により甲第1号証として提出された特開2000-139074号公報(以下、「刊行物1」という。)、同じく甲第2号証として提出された特開2001-169545号公報(以下、「刊行物2」という。)、及び特許第3694292号公報に参考文献として掲載された特開2004-201436号公報(以下、「刊行物3」という。)には、同期整流型DC-DCコンバータが開示されている。
しかしながら、刊行物1には、出力電圧を検出するための三次コイルが記載されておらず、また、刊行物2には、出力電圧を検出するための三次コイル18が記載されているものの、出力電圧検出回路41には、前記三次コイル18と直列に接続したスイッチ素子が設けられておらず、さらに、刊行物3には、その図9ないし図10において、3次巻線n3と、この3次巻線n3に接続されたnMOSトランジスタTr7が記載されているものの、nMOSトランジスタTr7は、3次巻線n3に直列に接続されるものではなく、しかも、1次巻線n1に接続されたMOSトランジスタQ1がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御されるものでもない。
そうすると、本件訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される各発明における「前記出力電圧検出回路には、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子が設けられ、前記スイッチ素子に対し、前記出力電圧検出回路の検出電圧を基にメインスイッチ素子がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御するスイッチ素子駆動回路を備えている」という特定事項については、刊行物1ないし3に記載されたものに基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
よって、本件訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される各発明は、刊行物1ないし3に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。
また、他に本件訂正後における特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される各発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見できない。

したがって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。


3.むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第二号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するので、適法な訂正と認める。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
同期整流型DC-DCコンバータ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】トランスの一次コイルと直列にメインスイッチ素子を接続し、該メインスイッチ素子のオン/オフ駆動により、負荷に供給するトランスの二次コイルの出力電圧を一定電圧に制御するための出力電圧検出回路を、前記トランスの三次コイルに設けた同期整流型DC-DCコンバータであって、
前記出力電圧検出回路には、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子が設けられ、
前記スイッチ素子に対し、前記出力電圧検出回路の検出電圧を基にメインスイッチ素子がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御するスイッチ素子駆動回路を備えていることを特徴とする同期整流型DC-DCコンバータ。
【請求項2】前記スイッチ素子に抵抗を並列接続したことを特徴とする請求項1記載の同期整流型DC-DCコンバータ。
【請求項3】前記スイッチ素子駆動回路はダイオードとコンデンサからなり、前記メインスイッチ素子をオフにする時、前記ダイオードを介して前記コンデンサを充電し、前記メインスイッチ素子をオンさせる時、前記コンデンサの充電電圧を前記スイッチ素子に印加して、該スイッチ素子をオンさせる機能を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の同期整流型DC-DCコンバータ。
【請求項4】前記スイッチ素子駆動回路は第2のスイッチ素子を有し、前記メインスイッチ素子のオン、オフ信号により、前記スイッチ素子のオン、オフを制御する機能を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の同期整流型DC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は同期整流型DC-DCコンバータに関し、特に同期整流型のフォワードコンバータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のDC-DCコンバータを並列接続して並列運転する場合に発生する逆電流の流入を減少させる技術が開発されていた(特許文献1、2参照)以下、これらの特許文献1、2を従来例1、2として具体的に説明する。
【0003】
(1):従来例1(特許文献1)の説明
図10は従来例1の説明図(その1)、図11は従来例1の説明図(その2)である。図10の(a)図では、一次巻線221と二次巻線222とは、一次巻線221の一次側電圧供給回路211側の一端と、二次巻線222の出力端子223側の一端とが同極性になるように磁気結合されており、主スイッチ素子210が導通し、トランス220内の一次巻線221に、一次側電圧供給回路211から供給される電流I_(1)が流れると、二次巻線222の出力端子223側に正電圧、グラウンド端子224側に負電圧が誘起される。
【0004】
二次巻線222に誘起された電圧により、第1の二次側整流素子206のドレイン端子の電位がソース端子の電位より低くなる。このとき、第1の二次側整流素子206内の寄生ダイオードが順バイアスされるが、ゲート端子には、二次巻線222に誘起された電圧により、正電圧が印加されるので、第1の二次側整流素子206は、通常動作とは逆方向に導通し、ソース端子側からドレイン端子側に向け、電流I_(2)を流す。
【0005】
電流I_(2)による電圧降下は、第1の二次側整流素子206の寄生ダイオードを導通させない程度に小さくなっており、この電流I_(2)が流れると、出力端子223とグラウンド端子224の間に接続された出力コンデンサ209及び負荷212に、低損失で電力が供給される。
【0006】
この間(第1の二次側整流素子206が逆方向に導通している間)、二次巻線222に誘起された電圧により、第2の二次側整流素子207のドレイン端子には、ソース端子よりも高い電圧が印加されており、また、ゲート端子には負電圧が印加されているから、第2の二次側整流素子207には電流は流れない。
【0007】
次に、主スイッチ素子210が導通から遮断に転じると、二次巻線222の出力端子223側の一端に負電圧、グラウンド端子224側の一端に正電圧が誘起される。その電圧により、電流I_(2)を流していた第1の二次側整流素子206のドレイン端子の電位がソース端子の電位より高くなり、また、ゲート端子には負電圧が印加されるので、第1の二次側整流素子206は遮断する。
【0008】
このとき、第2の二次側整流素子207では、二次巻線222に誘起された電圧により、ゲート端子に正電圧が印加されるから、導通可能な状態になる。また、第2の二次側整流素子207は、インダクタンス素子208に生じた起電力により、ドレイン端子の電位がソース端子の電位よりも低くなるから、逆方向に導通し、インダクタンス素子208に蓄積された磁気エネルギーにより、図10の(b)図に示すように、負荷212に電力を供給する方向の電流I_(3)を流す。
【0009】
また、制御装置203内には発振器と基準電圧発生回路が設けられており、PWM方式で主スイッチ素子210を駆動しており、スイッチングの周期が一定になっている。また、電源装置202はフォワード型であるため、出力端子223の出力電圧は、主スイッチ素子210の導通時間と、一次側電圧供給回路211が出力する電圧、一次巻線221と二次巻線222の巻線比によって決まる。制御装置203は、出力端子223とグラウンド端子224間の出力電圧を検出しており、主スイッチング素子210の導通時間を制御しているので、一次側電圧供給回路211の電圧変動等により、一次側電圧供給回路211の電圧が変動しても、出力電圧は一定に維持されている。
【0010】
電源装置202は複数台を並列接続し、出力電流を増やすことができる。しかしながら、複数台の電源装置202を並列接続する場合には、出力電圧が完全に一致せず、そのため、各電源202のうち、出力電圧が高く設定されているものから、負荷212が消費するよりも大きな出力電流が出力され、余分な電流は、出力電圧が低く設定されている電源装置に流入してしまう。
【0011】
図10の(c)図では、2台の電源装置202_(1)、202_(2)を並列接続して運転する場合を示しており、一方の電源装置202_(1)側から、他方の電源装置202_(2)に向けて電流I_(5)が流入している。この電流I_(5)が二次巻線222_(2)に流れると、一次巻線221_(2)に電圧が誘起され、その電圧によって主スイッチ素子210_(2)のドレイン端子に負電圧が印加される。そのとき、主スイッチ素子210のゲート端子に正電圧が印加されていると、主スイッチ素子210_(2)のソース端子からドレイン端子に向けて逆電流I_(6)が流れてしまい、その結果、並列接続された電源装置全体の効率を悪化させ、また、各電源装置202_(1)、202_(2)の劣化を早めてしまうという問題がある。
【0012】
そこで、従来例1では、図11に示したように、並列接続しても逆電流が流れない電源装置を提供するものである。このため、主スイッチ素子10に流れる電流を検出する電流検出回路30の出力から、主スイッチ素子10に流れた電流の向きを検出し、導通期間中に逆電流I10が流れた場合、主スイッチ素子10の導通期間を長くする。このため、主スイッチ素子10に流れる電流量が増えるので逆電流が消滅し、並列接続された各電源装置3の電流負担が均等化される、というものである。
【0013】
(2):従来例2(特許文献2)の説明
図12は従来例2の説明図(その1)、図13は従来例2の説明図(その2)である。従来、複数のDC-DCコンバータを負荷に並列に接続する並列運転の使用形態を取る場合がある。このような並列運転を行う際に、並列接続されている複数のDC-DCコンバータ間に出力電圧V_(OUT)のばらつきが生じることがある。このような場合には、出力電圧V_(OUT)の高いDC-DCコンバータから出力電圧V_(OUT)の低いDC-DCコンバータに向かって逆電流が流れる。
【0014】
このように、並列接続しているDC-DCコンバータ間に出力電圧V_(OUT)のばらつきが生じると、出力電圧V_(OUT)の高いDC-DCコンバータと出力電圧V_(OUT)の低いDC-DCコンバータとの双方の損失が増加して、回路効率が悪化してしまうという問題が生じる。
【0015】
そこで、従来例2では、前記逆電流の通電量を抑制して逆電流通電に起因した部品の破損や、並列運転時に逆電流に起因した損失問題を防止することができる同期整流器を備えたDC-DCコンバータを提供する。
【0016】
図12において、制御回路42は、コンパレータ27の出力側からスイッチ素子5の制御端子部であるゲートに制御電圧であるパルス波形信号を加え、そのパルス波形信号のパルス幅tを出力電圧V_(OUT)の安定化方向に可変制御してスイッチ素子5のオン期間を可変制御する。換言すれば、スイッチ素子5のデューティ比を出力電圧V_(OUT)の安定化方向に可変制御する。これにより、出力電圧V_(OUT)が可変制御されて出力電圧V_(OUT)の安定化が図られる、というものである。
【0017】
ところで、逆電流が通電しているときには、スイッチ素子5がオフしてもスイッチ素子5のドレイン電圧は逆電流によって低電圧状態から変動しない期間が生じる。この現象は、逆電流通電によって整流平滑回路40のチョークコイル13に蓄積されたエネルギーがスイッチ素子5のオフによってトランス2の二次側から一次側に伝達されることにより生じるものであり、逆電流通電時に特有な現象である。
【0018】
そこで、前記逆電流時に特有な現象に着目し、スイッチ素子5のゲート電圧が設定のオン駆動のスレッショルド電圧未満であり、かつ、スイッチ素子5のドレイン電圧(両端電圧)が逆電流によって生じる低電圧状態であるときに逆電流を検知する逆電流検知手段43を形成した。
【0019】
PNPトランジスタ31は上記逆電流検知信号を受けてオンする。これにより、抵抗体23、24の接続部からオペアンプ25の反転入力端子に向かう電流の一部が前記接続部XからPNPトランジスタ31と抵抗体32を通って分流する。このために、逆電流通電時にはオーバーシュート電圧印加に起因して抵抗体23、24の接続部から出力される電圧は定常時よりも増加しているにも拘わらず、オペアンプ25の反転入力端子に入力する電圧は定常時よりも低下することとなる。
【0020】
この電圧低下によって、制御回路42からスイッチ素子5のゲートに加えられるパルス波形信号のパルス幅tが広がってスイッチ素子5のオン期間が長くなり、入出力変換比が増加する結果、出力電圧V_(OUT)が増加する。
【0021】
この例によれば、逆電流検知手段43と逆電流抑制手段44を設けて逆電流通電時には入出力変換比を増加させる構成とし、図13の(a)図の実線αに示すような特有なレギュレーション特性をDC-DCコンバータに持たせたので、逆電流が発生した際に、その逆電流の通電量を従来に比べて大幅に抑制することができる。このように、逆電流の通電量を抑制することができるので、大きな逆電流が通電することによる前述したような部品の破損問題を防止することができるというものである。
【0022】
また、前記DC-DCコンバータを用いて並列運転を行う際に、並列接続されている複数のDC-DCコンバータ間に出力電圧V_(OUT)のばらつきが生じても、その出力電圧V_(OUT)のばらつきに起因した逆電流通電による損失増加を緩和することができ、回路効率の悪化を防止することができる。
【0023】
つまり、並列運転を行うDC-DCコンバータのうち、出力電圧V_(OUT)の高いDC-DCコンバータAが持つレギュレーション特性が、例えば、図13の(b)図における実線Aに示すような特性を有し、また、出力電圧V_(OUT)の低いDC-DCコンバータBが持つレギュレーション特性が、例えば、図13の(b)図の実線Bに示すような特性を示すこととなる。
【0024】
これにより、DC-DCコンバータAからDC-DCコンバータBへの逆電流の通電量はIb′となり、従来例に比べて格段に小さくなる。このため、逆通電に起因したDC-DCコンバータBの損失を抑制することができる。
【0025】
【特許文献1】
特開2000-139074
【特許文献2】
特開2001-169545
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような従来のものにおいては、次のような課題があった。
【0027】
(1):前記従来例1では、主スイッチ素子を流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路の出力から、前記主スイッチ素子に流れる電流の向きを検出する逆電流抑制回路が設けられている。また、電流検出回路にカレントトランスを用いている。また、前記従来例2では、逆電流検出手段(43)と逆電流抑制手段(44)を設けている。
【0028】
このように、従来例1、2とも、逆電流検出手段を設けているが、このような手段は回路構成が複雑で、コスト的にも高価なものである。特に、従来例1では、高価なカレントトランスを使用し電流を検出しており、従来例2では、逆電流を抑制するため出力電圧を上昇させるが、それと同時に検出電圧(出力電圧を間接的に検出し制御している電圧)も比例して上昇する。そのため、検出電圧を上昇させるように制御をし、結果出力電圧が上昇し、逆電流の流入を抑制しており、回路構成が複雑で、高価なものである。
【0029】
本発明は、このような従来の課題を解決し、従来例のような逆電流検出手段を設けることなく、安価で簡単な回路構成の同期整流型DC-DCコンバータを得ることを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記の目的を達成するため、次のように構成した。
【0031】
すなわち、第1の同期整流型DC-DCコンバータでは、トランスの一次コイルと直列にメインスイッチ素子を接続し、該メインスイッチ素子のオン/オフ駆動により、負荷に供給するトランスの二次コイルの出力電圧を一定電圧に制御するための出力電圧検出回路を、前記トランスの三次コイルに設けた同期整流型DC-DCコンバータであって、前記出力電圧検出回路には、前記トランスの三次コイルと直列に接続したスイッチ素子が設けられ、前記スイッチ素子に対し、前記出力電圧検出回路の検出電圧を基にメインスイッチ素子がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御するスイッチ素子駆動回路を備えていることを特徴とする。
【0032】
また、第2の同期整流型DC-DCコンバータでは、前記第1の同期整流型DC-DCコンバータにおいて、前記スイッチ素子に抵抗を並列接続したことを特徴とする。
【0033】
また、第3の同期整流型DC-DCコンバータでは、前記スイッチ素子駆動回路はダイオードとコンデンサからなり、前記メインスイッチ素子をオフにする時、前記ダイオードを介して前記コンデンサを充電し、前記メインスイッチ素子をオンさせる時、前記コンデンサの充電電圧を前記スイッチ素子に印加して、該スイッチ素子をオンさせる機能を備えていることを特徴とする。
また、第4の同期整流型DC-DCコンバータでは、前記第1又は2の同期整流型DC-DCコンバータにおいて、前記スイッチ素子駆動回路は第2のスイッチ素子を有し、前記メインスイッチ素子のオン、オフ信号により、前記スイッチ素子のオン、オフを制御する機能を備えていることを特徴とする。
【0034】
また、第5の同期整流型DC-DCコンバータでは、前記第1又は第2又は第3の同期整流型DC-DCコンバータにおいて、前記DC-DCコンバータに出力電圧の高いDC-DCコンバータを並列接続して並列運転を行い、出力電圧が高い方から低い方に逆電流が流入し、前記出力電圧検出回路の検出電圧が上昇し、前記メインスイッチ素子をオンさせる駆動信号の時間が短くなった場合、前記スイッチ素子駆動回路は、前記スイッチ素子のオン時間が短くなるように駆動制御して出力電圧検出回路の検出電圧を低下させることで、前記メインスイッチ素子をオンさせる時間を長くして出力電圧を上昇させ、前記逆電流の流入を抑制する機能を備えていることを特徴とする。
【0035】
(作用)
前記構成に基づく本発明の作用を図1に基づいて説明する。
【0036】
(a):第1の同期整流型DC-DCコンバータでは、複数のDC-DCコンバータの出力を並列接続し並列運転すると、一方の出力電圧がばらつき等により大きい値の場合、出力電圧が低いDC-DCコンバータの方に逆電流が流入する。この逆電流の流入と同時に出力電圧が上昇し、出力電圧検出回路19の検出電圧も上昇する。
【0037】
この時、スイッチ素子駆動回路(ダイオード51、コンデンサ52)は、スイッチ素子50に対し、メインスイッチ素子1がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御する。この駆動制御では、スイッチ素子50のオン時間が短くなるように駆動制御して出力電圧検出回路19の検出電圧を低下させる。そして、前記検出電圧の低下に応じてドライバ18ではメインスイッチ素子1をオンさせる時間を長くして出力電圧を上昇させ、前記逆電流の流入を抑制する。このようにすれば、従来例のような複雑で高価な逆電流検出手段を設けることなく、安価で簡単な回路構成の同期整流型DC-DCコンバータを得ることができる。
【0038】
(b):前記第2の同期整流型DC-DCコンバータでは、スイッチ素子50に抵抗59を並列接続している。従って、出力電圧検出回路19の検出電圧が上昇すると、ドライバ18から出力されるメインスイッチ素子1をオンさせる信号の時間が短くなる。これに伴い、スイッチ素子50のオン時間も短くなり、スイッチ素子50がオフした後は、抵抗53を通して整流することとなる。
【0039】
このように、抵抗53を通して整流すると、出力検出電圧は下降する方向となるので、ドライバ18の信号は前より少しオン時間が短くなるだけで、従来例のように極端にオン時間が短くならない。また、出力検出電圧とトランス30の三次コイル33の電圧の間で電圧降下が発生するので、その結果、出力電圧を上昇させることとなり、逆電流を抑制することができる。
【0040】
このようにすれば、従来例のような逆電流検出手段を設けることなく、安価で簡単な回路構成の同期整流型DC-DCコンバータを得ることができる。
【0041】
(c):前記第3の同期整流型DC-DCコンバータでは、スイッチ素子駆動回路は、メインスイッチ素子1をオフにする時、ダイオード51を介してコンデンサ52を充電し、メインスイッチ素子1をオンさせる時、コンデンサ52の充電電圧をスイッチ素子50に印加して該スイッチ素子50をオンさせる。このようにすれば、スイッチ素子駆動回路を簡単な回路構成にできる。
(d):前記第4の同期整流型DC-DCコンバータでは、前記スイッチ素子駆動回路は第2のスイッチ素子を有し、前記メインスイッチ素子のオン、オフ信号により、前記スイッチ素子のオン、オフを制御する。このようにすれば、スイッチ素子駆動回路を簡単な回路構成にできる。
【0042】
(e):前記第4の同期整流型DC-DCコンバータでは、DC-DCコンバータの出力を並列接続し並列運転すると、一方の出力電圧がばらつき等により大きい値の場合、出力電圧が低いDC-DCコンバータの方に逆電流が流入する。前記逆電流の流入と同時に出力電圧が上昇し、出力電圧検出回路19の検出電圧も上昇する。
【0043】
そして、出力電圧検出回路19の検出電圧が上昇すると、スイッチ素子駆動回路(ダイオード51、コンデンサ52)は、スイッチ素子50に対し、メインスイッチ素子1がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御する。
【0044】
このように、逆電流が流入し、出力電圧検出回路の検出電圧が上昇した場合、スイッチ素子駆動回路は、メインスイッチ素子1をオンさせる駆動信号の時間が短くなった時、スイッチ素子50のオン時間が短くなるように駆動制御して出力電圧検出回路19の検出電圧を低下させる。その結果、ドライバ18はメインスイッチ素子をオンさせる時間を長くして出力電圧を上昇させ、前記逆電流の流入を抑制する。
【0045】
このようにすれば、従来例のような逆電流検出手段を設けることなく、安価で簡単な回路構成の同期整流型DC-DCコンバータを得ることができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0047】
§1:DC-DCコンバータの回路例の説明
図1はDC-DCコンバータの回路例を示した図であり、同期整流型のフォワードコンバータ(又は、フォワード方式の同期整流型DC-DCコンバータ)の回路例である。以下、図1に示したDC-DCコンバータを説明する。
【0048】
(1):回路の特徴(図1参照)
本回路の最大の特徴は、トランス30の三次コイル33に接続された出力電圧検出回路19にスイッチ素子50を設けた点である。このスイッチ素子50は、メインスイッチ素子1を駆動する駆動信号(パルス)が、メインスイッチ素子1がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動される。そして、三次コイル33から出力された電圧を整流平滑し、その電圧を検出電圧とし、メインスイッチ素子1のオン/オフの時間を制御する。
【0049】
ところで、負荷に対し複数のDC-DCコンバータが接続された場合、特に、出力電圧の高いDC-DCコンバータが接続されていた場合には、DC-DCコンバータの出力側から逆電流が流入することがある(前記従来例参照)。このように出力側から逆電流が流入すると、三次コイル33の検出電圧が上昇し、メインスイッチ素子1をオンさせる駆動信号の時間は短くなる。
【0050】
これにともない、スイッチ素子50のオン時間も短くなり、検出電圧が低下し、メインスイッチ素子1をオンさせる駆動信号の時間を長くするように制御される。その結果、出力電圧が上昇し、逆電流の流入を抑制する。更に具体的には次の通りである。
【0051】
すなわち、ドライバ18の出力がメインスイッチ素子1をオンさせる信号の時オンし、オフさせる信号の時オフするスイッチ素子50を出力電圧検出回路19に設け、トランス30の三次コイル33と直列に接続する。
【0052】
そして、DC-DCコンバータの出力を並列接続し並列運転すると、一方の出力電圧がばらつき等により大きい値の場合、出力電圧が低いDC-DCコンバータの方に電流が流入する(この電流を「逆電流」という)。前記逆電流の流入と同時に出力電圧が上昇し、出力電圧検出回路19の検出電圧も上昇する。
【0053】
このように、出力電圧検出回路19の検出電圧が上昇すると、ドライバ18から出力されるメインスイッチ素子1をオンさせる信号の時間が短くなる。これに伴い、スイッチ素子50のオン時間も短くなり、スイッチ素子50がオフした後は抵抗53を通して整流することとなる。
【0054】
このように、抵抗53を通して整流すると、出力検出電圧は下降する方向となるので、ドライバ18から出力される信号は、前より少しオン時間が短くなるだけで、従来例のように極端にオン時間が短くならない。また、出力検出電圧とトランス30の三次コイル33の電圧33aの間で電圧降下が発生するので、その結果、出力電圧を上昇させることとなり前記逆電流を抑制することができる。
【0055】
(2):回路構成の詳細な説明(図1、図2参照)
図1において、1はメインスイッチ素子(主スイッチング素子)、2は整流用同期整流素子、3は転流用同期整流素子、50はスイッチ素子であり、これら各素子は、NチャンネルMOSFET(MOS型電界効果トランジスタ)で構成する。
【0056】
また、4は出力チョークコイル、5は入力コンデンサ、6は出力平滑コンデンサ、7はインバータ、8は整流用ダイオード、9は転流用ダイオード、10はチョークコイル、11は平滑コンデンサ、12、13、53は抵抗(又は抵抗体)である。
【0057】
また、14は基準電圧、15はエラーアンプ(エラー増幅器)、16は三角波発生器、17はエラーアンプ16の出力と三角波発生器16の出力とを比較するためのコンパレータ(比較器)、18はメインスイッチ素子1を駆動するためのドライバである。
【0058】
また、19は出力電圧検出回路、20は二次側整流平滑回路、30はトランスであり、31は一次コイル(一次巻線)、32は二次コイル(二次巻線)、33は三次コイル(三次巻線)を示す。また、40は入力電源、41は入力端子、42は出力端子、43は負荷、51はダイオード、52はコンデンサを示す。また、d1、d2、d3はそれぞれ前記素子1、2、3の内蔵ダイオードを示す。
【0059】
図1に示したDC-DCコンバータの入力側には、トランス30が設けられ、該トランス30の一次コイル31には、メインスイッチ素子1が接続され、ドライバ18により駆動制御されるように構成されている。そして、メインスイッチ素子1のオン/オフ(導通/不導通)により一次コイル31に発生する励磁エネルギー(電磁エネルギー)を、断続的にトランス30の二次側及び三次側に供給するようになっている。
【0060】
入力側は、入力電源40が供給される入力端子41a、41b間に入力コンデンサ5が接続され、入力電圧を平滑化している。トランス30の二次コイル32には、出力チョークコイル4、出力平滑コンデンサ8、整流用同期整流素子2(MOSFET)、転流用同期整流素子3(MOSFET)を含む平滑整流回路が接続されている。この場合、出力平滑コンデンサ8と出力チョークコイル4の直列回路に対して、転流用同期整流素子3が接続されている。
【0061】
また、トランス30の三次コイル33には、スイッチ素子50と抵抗53の並列回路と、平滑コンデンサ11と、チョークコイル10と、整流用ダイオード8の直列回路を接続し、前記平滑コンデンサ11と、チョークコイル10の直列回路に並列に、整流用ダイオード9を接続している。
【0062】
また、前記平滑コンデンサ11と並列に、抵抗12、13の直列回路を接続して平滑コンデンサ11の充電電圧(直流電圧)を分圧し、その分圧した電圧(抵抗12の電圧)をエラーアンプ15に入力している。また、エラーアンプ15には、前記分圧した電圧(抵抗12の電圧)を入力すると共に、基準電圧14を入力し、前記基準電圧14と前記分圧した電圧(抵抗12の電圧)との差分の電圧(エラー電圧値)をコンパレータ17に出力する。
【0063】
コンパレータ17では、エラーアンプ15の出力電圧と三角波発生器16の出力電圧を比較し、両者の差の電圧をドライバ18へ出力する。ドライバ18では、前記コンパレータ17からの出力電圧を入力し、パルス電圧を発生させてメインスイッチ素子1のゲートへ印加することで、メインスイッチ素子1をオン/オフ駆動するように構成されている。
【0064】
また、前記ドライバ18は、図2のように構成されている。すなわち、前記ドライバ18は、詳細には、バイポーラ型トランジスタ(以下、単に「トランジスタ」と記す)Q1とQ2が図示のように接続されている。この場合、トランジスタQ1がNPN型トランジスタで、トランジスタQ2がPNP型トランジスタで構成され、互いのベース電極(入力IN側)とエミッタ電極(出力OUT側)が共通接続されている。
【0065】
このように接続されていると、入力IN側が所定電圧以上の時、トランジスタQ1:オン、Q2:オフとなり、出力OUT側がハイレベルの電圧Vddとなる。また、逆に、入力IN側が所定電圧以下の時、トランジスタQ1:オフ、Q2:オンとなり、出力OUT側がローレベルの電圧Vssとなる(Vdd>Vss)。
【0066】
なお、31a、31bはトランス30の一次コイル31の両端子、32a、32bはトランス30の二次コイル32の両端子、33a、33bはトランス30の三次コイル33の両端子である。
【0067】
(3):無負荷時の詳細な動作の説明
以下、図1、図2に基づいて、図1に示した回路例の動作を説明する。
【0068】
A:今、入力端子41a、41bに入力電源40を印加した状態で、ドライバ18からメインスイッチ素子1を駆動するための駆動パルスを発生させ、この駆動パルスをメインスイッチ素子1のゲートに供給すると、メインスイッチ素子1がオン(導通)/オフ(不導通)動作を繰り返す。そして、該メインスイッチ素子1がオンになった時、該メインスイッチ素子1を介してトランス30の一次コイル31に励磁電流が流れる。
【0069】
この時、トランス30の二次コイル32には、整流用同期整流素子2がオンする方向に電圧(誘起電圧)が発生し、該整流用同期整流素子2がオンする。この場合、トランス30の二次コイル32に発生した電圧により、二次コイル32→出力平滑コンデンサ8→出力チョークコイル4→整流用同期整流素子2→二次コイル32の経路で電流が流れ、出力平滑コンデンサ8が充電される。
【0070】
この時、二次コイル32の電圧はインバータ7により反転し、この反転した電圧が転流用同期整流素子3のゲートに印加するので、該転流用同期整流素子3がオフとなる。
【0071】
また、この時、トランス30の三次コイル33には、二次コイル32の電圧に応じた電圧が誘起される。この電圧により、スイッチ素子50がオンならば、三次コイル33→スイッチ素子50→平滑コンデンサ11→チョークコイル10→整流用ダイオード8→三次コイル33の経路で電流が流れ、平滑コンデンサ11が充電される。
【0072】
また、スイッチ素子50がオフの場合は、抵抗53を介して前記と同様の電流が流れ、平滑コンデンサ11は充電される。この時、転流用ダイオード9はオフのままである。なお、この時トランス30には励磁エネルギーが蓄えられる。
【0073】
B:次に、ドライバ18からの駆動パルスによりメインスイッチ素子1がオフになると、トランス30の一次コイル31に前記と逆方向の電圧が誘起される(端子32側が+となる)ので、整流型同期整流素子2はオフとなる。この時、二次コイル32の電圧(前記と逆向き極性の電圧)はインバータ7により反転し、この反転した電圧が転流用同期整流素子3のゲートに印加するので、該転流用同期整流素子3がオンとなる。
【0074】
そのため、出力チョークコイル4に蓄えられた電磁エネルギーにより、出力チョークコイル4→転流用同期整流素子3→出力平滑コンデンサ8→出力チョークコイル4の経路でフライホイール電流が流れ、出力平滑コンデンサ6が充電される(常に同じ極性で充電される。)。
【0075】
この時、トランス30の三次コイル33には、前記と逆極性の電圧(端子33b側が+)が発生するが、整流用ダイオード8が逆バイアスされてオフとなり、三次コイル33の誘起電圧によっては電流は流れない。しかし、この時、チョークコイル10に蓄えられた電磁エネルギーにより、チョークコイル10→転流用ダイオード9→平滑コンデンサ11→チョークコイル10の経路でフライホイール電流が流れ、平滑コンデンサ11が充電される(常に同じ極性で充電される。)。
【0076】
以降、同様にして動作が繰り返されるが、前記平滑コンデンサ11の充電電圧により抵抗12、13には一定の直流電圧が発生する。この電圧は、二次側の出力電圧に対応した電圧となっている。この場合、前記抵抗12、13の電圧(平滑コンデンサ11の電圧と同じ)は、ドライバ18とダイオード51に印加する。また、前記2つの抵抗で分圧した電圧(抵抗12の端子電圧)はエラーアンプ15に入力し、基準電圧14との差分が取り出される。
【0077】
そして、コンパレータ17では、前記エラーアンプの出力を三角波発生器16の出力電圧と比較されて矩形波信号を出力し、ドライバ18から駆動信号(パルス信号)がメインスイッチ素子1のゲートに印加する。これによりメインスイッチ素子1は前記と同様のオン/オフ動作を繰り返す。
【0078】
また、前記ダイオード51に印加した電圧は、該ダイオード51で整流され、コンデンサ52を充電する。そして、ドライバ18からハイレベルの電圧が出力された時は、そのハイレベルの電圧(パルスのオン波形)に、更に、コンデンサ52の充電電圧(平滑コンデンサ11の電圧と略同じ電圧)が上乗せされ、大きな出力電圧(平滑コンデンサ11の電圧の約2倍の電圧)が発生し、スイッチ素子50のゲートに印加する。そのため、スイッチ素子50がオンになる。
【0079】
しかし、ドライバ18からローレベルの電圧(例えば、GNDレベル)が出力された時は、そのローレベルの電圧(パルスのオフ波形)に、更に、コンデンサ52の充電電圧(平滑コンデンサ11の電圧と略同じ電圧)が上乗せされても小さい出力電圧なので、この出力電圧がスイッチ素子50のゲートに印加しても、スイッチ素子50がオフとなる。
【0080】
(4):負荷に対し、複数のDC-DCコンバータが並列接続されて運転された場合の概要の説明(図1、図3参照)
図1に示したDC-DCコンバータの負荷43に対し、別のDC-DCコンバータを並列接続し、この別のDC-DCコンバータの出力電圧が何らかの理由で高くなったとする。この時、前記別のDC-DCコンバータから図1に示したDC-DCコンバータに逆電流が流れる。
【0081】
この場合、出力端子42a、42b間の電圧が通常時より高くなり、出力端子42aからトランス30の二次コイル32方向に向けて逆電流が流れる。この時の出力電圧-出力電流特性は、図3のようになる。図3では、横軸が出力電流(I_(out))、縦軸が出力電圧(V_(out))を示す。
【0082】
また、図3において、点線で示した特性は従来例の特性(特に従来例2の特性)であり、実線が本発明の特性である。また、縦軸の右側が流出する電流、左側が流入する電流である。
【0083】
(5):出力電圧が大きいDC-DCコンバータと並列運転した時の特性図(無負荷時)の詳細な説明(図4、図6参照)
図4は出力電圧が大きいDC-DCコンバータと並列運転した時の特性図(無負荷)、図6は図4、5の説明図である。なお、参考のため、図6では従来例についても図示してある。
【0084】
(5)-1:従来例の特性
図6のC図のように、従来例のDC-DCコンバータを並列接続した場合であって、無負荷時について説明する。
【0085】
DC-DCコンバータには、部品等の特性ばらつきの影響で出力電圧にばらつきが生じる。出力電圧が小さい従来例のDC-DCコンバータ▲3▼と大きいDC-DCコンバータ▲4▼を並列接続すると、DC-DCコンバータ▲4▼からの出力電流がDC-DCコンバータ▲3▼に流入する。
【0086】
DC-DCコンバータ▲3▼の動作点は図4のポイントCとなり、電流値I_(02)が流入する。一方、DC-DCコンバータ▲4▼の動作点は図4のポイントDとなり、電流値I_(02)を出力し平衡する。その際の出力電圧は、各々+V_(02)となる。
【0087】
(5)-2:本発明の特性
図6のA図のように、本発明のDC-DCコンバータを並列接続した場合(無負荷時)について説明する。前記従来例と同じでDC-DCコンバータには、部品等のばらつきの影響で出力電圧にばらつきが生じる。
【0088】
出力電圧が小さい本発明のDC-DCコンバータ▲1▼と、大きい従来例のDC-DCコンバータ▲2▼を並列接続すると、従来例のDC-DCコンバータ▲2▼からの出力電流が本発明のDC-DCコンバータ▲1▼に流入する。本発明のDC-DCコンバータ▲1▼の動作点は、図4のポイントAとなり電流値I_(01)が流入する。一方、従来例のDC-DCコンバータ▲2▼の動作点は、図4のポイントBとなり電流値I_(01)を出力し平衡する。その際の出力電圧は、各々+V_(01)となる。このように、本発明では、流入電流を小さく抑制することが可能になる。
【0089】
(6):出力電圧が大きいDC-DCコンバータと並列運転した時の特性図(負荷電流I_(O)の時)の詳細な説明(図5、6参照)
(6)-1:従来例の特性
前記と同様に、図6のD図のように、負荷電流がI_(0)の時の並列運転動作について説明する。従来例のDC-DCコンバータ▲3▼の動作点は、図5のポイントCとなり電流値I_(04)が流入する。一方、従来例のDC-DCコンバータ▲4▼の動作点は、ポイントDとなり電流値I_(06)を出力し平衡する。すなわち、I_(06)-I_(04)は、負荷電流I_(0)となる。その際の出力電圧は、各々+V_(04)となる。
【0090】
(6)-2:本発明の特性
前記と同様に、図6のB図のように、負荷電流がI_(0)の時の並列動作について説明する。本発明のDC-DCコンバータ▲1▼の動作点は、図5のポイントAとなり、電流値I_(03)が流入する。一方、従来例のDC-DCコンバータ▲2▼の動作点は、図5のポイントBとなり、電流値I_(05)を出力し平衡する。この場合、I_(05)-I_(03)は、負荷電流I_(0)となる。その際の出力電圧は、各々+V_(03)となる。このように、本発明では、流入電流を小さく抑制することが可能になる。
【0091】
(7):無負荷時の各部の波形
図7は無負荷時の各部の波形図である。図7において、波形▲1▼はドライバ18の出力電圧波形、波形▲2▼はメインスイッチ素子1のドレイン・ソース間電圧波形、波形▲3▼はメインスイッチ素子1のドレイン・ソース間電流波形、波形▲4▼は出力チョークコイル4の電流波形、波形▲5▼はトランス30の三次コイル33の両端の電圧波形、波形▲6▼はスイッチ素子50のゲート・ソース間電圧波形、波形▲7▼はスイッチ素子50のドレイン・ソース間電流波形を示す。なお、図7に示したtはタイミング(又は時刻)、t0?t5は各タイミングを示す。
【0092】
図1に示したDC-DCコンバータの無負荷時には、各部は図7に示した波形となる。先ず、ドライバ18からは、波形▲1▼のような矩形波の駆動パルスが出力され、このパルスによりメインスイッチ素子1がオン/オフ駆動される。
【0093】
すなわち、タイミングt0?t1までは駆動パルスがローレベルで、タイミングt1?t2までは駆動パルスがハイレベル、タイミングt2?t3までは駆動パルスがローレベルで、タイミングt3?t4までは駆動パルスがハイレベルとなり、駆動パルスがハイレベルの時、メインスイッチ素子1がオンとなり、駆動パルスがローレベル(例えば、GNDレベル)の時、メインスイッチ素子1がオフとなるように駆動される。
【0094】
この時のメインスイッチ素子1のドレイン・ソース間電圧の波形は波形▲2▼のようになり、メインスイッチ素子1のドレイン・ソース間電流波形は波形▲3▼のようになる。また、出力チョークコイル4は、電磁エネルギーの蓄積と放出動作が繰り返され、波形▲4▼のような波形になる。
【0095】
トランス30の三次コイル33には、その両端に波形▲5▼のような波形の電圧が誘起される。この時、スイッチ素子50のゲート・ソース間電圧は波形▲6▼のような波形になる。この場合、スッチ素子50は、タイミングt0?t1の間はオフ、タイミングt1?t2の間はオン、タイミングt2?t3の間はオフ、タイミングt3?t4の間はオンとなる。
【0096】
従って、スイッチ素子50のドレイン・ソース間電流は、波形▲7▼のように、タイミングt0?t1の間は電流が流れず、タイミングt1?t2の間は電流が流れ、タイミングt2?t3の間は電流が流れず、タイミングt3?t4の間は電流が流れる。
【0097】
(8):出力が大きいDC-DCコンバータを並列接続した時の各部の波形
図8は出力が大きいDC-DCコンバータを並列接続した時の各部の波形図である。図8において、波形▲1▼はドライバ18の出力電圧波形、波形▲2▼はメインスイッチ素子1のドレイン・ソース間電圧波形、波形▲3▼はメインスイッチ素子1のドレイン・ソース間電流波形、波形▲4▼は出力チョークコイル4の電流波形、波形▲5▼はトランス30の三次コイルの両端の電圧波形である。
【0098】
また、波形▲6▼はスイッチ素子50のゲート・ソース間電圧波形、波形▲7▼はスイッチ素子50のドレイン・ソース間電流波形を示す。なお、図8に示したtはタイミング(又は時刻)、t0、t1、t2a、t2b、t3、t4a、t4b、t5は各タイミングを示す。また、点線は図7に示した無負荷時の波形、実線は本発明の逆電流流入時の波形である。
【0099】
図1に示したDC-DCコンバータに、出力が大きいDC-DCコンバータを並列接続した時の各部の波形は図8の実線で示した波形となる。具体的には、次の通りである。
【0100】
前記のような逆電流が流入している時には、図8の波形▲1▼、▲2▼に示すように、メインスイッチ素子1がオフしてもドレイン電圧は逆電流流入によって低電圧状態(約ゼロボルト:GNDレベル)から変動しない期間T1が生じる。この現象は、逆電流流入によって、出力チョークコイル4に蓄積されたエネルギーが二次側から一次側へ伝達されることにより生じ、メインスイッチ素子1がオフしてもメインスイッチ素子1の内蔵ダイオード(ボディダイオード)d1が導通しているので、低電圧状態となる。
【0101】
この期間T1の間は、本発明では、スイッチ素子50がオフとなり、平滑コンデンサ11への整流電流が無くなる。これにより、平滑コンデンサ11の両端電圧は低下し、メインスイッチ素子1の駆動制御回路(エラーアンプ16、コンパレータ17、ドライバ8を含む回路)はメインスイッチ素子1のオン時間が長くなるように制御を行う。その結果、出力電圧は上昇し、逆電流の流入を抑制する。以下、更に、詳細に説明する。
【0102】
前記のように、DC-DCコンバータの出力を並列接続し並列運転すると、一方の出力電圧がばらつき等により大きい値の場合、出力電圧が低いDC-DCコンバータの方に電流が流入する(逆電流の流入発生)。この逆電流の流入と同時に、出力の低い方のDC-DCコンバータの出力電圧が上昇し、出力電圧検出回路19の検出電圧も上昇する。
【0103】
このように、DC-DCコンバータの出力電圧が上昇し、逆電流が流入することにより、出力電圧検出回路19の検出電圧が上昇すると、図8の点線位置(無負荷時)から実線位置(逆電流流入時)のように、ドライバ18から出力されるメインスイッチ素子1をオンさせる信号の時間が短くなる(タイミングt2a?t2b間=期間T1、t4a?t4b間=期間T1だけ短くなる)。
【0104】
これに伴い、図8の波形▲6▼、波形▲7▼のように、スイッチ素子50のオン時間も短くなる(タイミングt2a?t2b間=期間T1、t4a?t4b間=期間T1だけ短くなる)。すると、出力電圧検出回路19の検出電圧も低くなり、その結果、エラーアンプ16の出力は大きくなり、コンパレータ17の出力も大きくなる。
【0105】
その結果、ドライバ18からの出力パルスが長くなるように制御が行なわれ、トランス1の一次コイル30に流れる電流を大きくすることで、二次コイル32に発生する電圧を大きくする。そして、トランス30の二次側電圧、すなわち、出力電圧を大きくし、逆電圧の流入を抑制する。
【0106】
なお、前記動作において、スイッチ素子50がオンからオフした後は、抵抗53を通して整流することとなる。この場合、スイッチ素子50のドレイン・ソース間電流が流れる時間が短くなる(タイミングt2a?t2b間、タイミングt4a?t4b間において、期間T1だけ短くなる)。
【0107】
このように、抵抗53を通して整流すると、出力電圧検出回路19の出力検出電圧は下降する方向となるので、ドライバ18の信号は前より少しオン時間が短くなるだけで、従来例のように極端にオン時間が短くならない。また、出力検出電圧とトランス30の三次コイル33の電圧33aの間で電圧降下が発生するので、その結果、DC-DCコンバータの出力電圧(負荷への供給電圧)を上昇させることとなり、前記逆電流を抑制することができる。
【0108】
§2:DC-DCコンバータの他の回路例
図9はDC-DCコンバータの他の回路例を示した図である。本発明は、図9に示した他の回路例でも図1に示した回路と同様に実施可能である。この回路例では、出力電圧検出回路19とスイッチ素子50の駆動回路の構成を変更した回路例である。
【0109】
すなわち、この例では、図1に示した回路のスイッチ素子50を、PチャンネルMOSFET(PチャンネルMOS電界効果型トランジスタ)で構成し、このPチャンネルMOSFETで構成したスイッチ素子50のゲートに、NチャンネルMOSFET(NチャンネルMOS電界効果型トランジスタ)で構成したトランジスタ54(このトランジスタはスイッチ素子駆動回路を構成する)を接続すると共に、前記トランジスタ54のゲートをドライバ18の出力に接続し、該ドライバ18の出力信号でドライブするように構成する。
【0110】
また、図1に示した整流用ダイオード8をトランス30の三次コイル33の端子33aとスイッチ素子50との間に接続し、チョークコイル10をスイッチ素子50と平滑コンデンサ11との間に接続している。また、図1において、スイッチ素子50と並列に接続していた抵抗53を削除してある。なお、その他の構成は図1と同じである。
【0111】
図9に示した回路例の動作の概要は次の通りである。スイッチ素子50は、メインスイッチ素子1を駆動する駆動信号(パルス)が、メインスイッチ素子1がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動される。この場合、ドライバ18からハイレベルの信号が出力されると、トランジスタ54がオンとなり、スイッチ素子50のゲート電圧はローレベルとなりオンとなる。また、ドライバ18からローレベルの信号が出力されると、トランジスタ54がオフとなり、スイッチ素子50のゲート電圧はローレベルの電圧から開放されたオフとなる。このようにドライバ18の出力に応じて前記の動作を繰り返す。
【0112】
そして、出力電圧検出回路19では、トランス30の三次コイル33から出力された電圧を整流平滑し、その電圧を検出電圧とし、メインスイッチ素子駆動制御回路により、メインスイッチ素子1のオン/オフの時間を制御する。
【0113】
ところで、負荷に対し複数のDC-DCコンバータが接続された場合、特に、出力電圧の高いDC-DCコンバータが接続されていた場合には、DC-DCコンバータの出力側から逆電流が流入することがある。このように出力側から逆電流が流入すると、三次コイル33の検出電圧が上昇し、メインスイッチ素子1をオンさせる駆動信号の時間は短くなる。
【0114】
これにともない、スイッチ素子50のオン時間も短くなり、検出電圧が低下し、メインスイッチ素子1をオンさせる駆動信号の時間を長くするように制御される。その結果、出力電圧が上昇し、逆電流の流入を抑制する。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば次のような効果がある。
(1):請求項1では、複数のDC-DCコンバータの出力を並列接続し並列運転すると、一方の出力電圧がばらつき等により大きい値の場合、出力電圧が低いDC-DCコンバータの方に逆電流が流入する。この逆電流の流入と同時に出力電圧が上昇し、出力電圧検出回路の検出電圧も上昇する。
【0116】
この時、スイッチ素子駆動回路は、スイッチ素子に対し、メインスイッチ素子がオンする信号の時オンし、オフする信号の時オフするように駆動制御する。 この駆動制御では、スイッチ素子のオン時間が短くなるように駆動制御して出力電圧検出回路の検出電圧を低下させる。その結果、メインスイッチ素子1をオンさせる時間を長くして出力電圧を上昇させ、前記逆電流の流入を抑制する。このようにすれば、従来例のような逆電流検出手段を設けることなく、安価で簡単な回路構成の同期整流型DC-DCコンバータを得ることができる。
【0117】
(2):請求項2では、スイッチ素子に抵抗を並列接続している。従って、出力電圧検出回路の検出電圧が上昇すると、ドライバから出力されるメインスイッチ素子をオンさせる信号の時間が短くなる。これに伴い、スイッチ素子のオン時間も短くなり、スイッチ素子がオフした後は抵抗を通して整流することとなる。
【0118】
このように、抵抗を通して整流すると、出力検出電圧は下降する方向となるので、ドライバの信号は前より少しオン時間が短くなるだけで、従来例のように極端にオン時間が短くならない。また、出力検出電圧とトランスの三次コイルの電圧の間で電圧降下が発生するので、その結果、出力電圧を上昇させることとなり、逆電流を抑制することができる。
【0119】
このようにすれば、従来例のような逆電流検出手段を設けることなく、安価で簡単な回路構成の同期整流型DC-DCコンバータを得ることができる。
【0120】
(3):請求項3では、スイッチ素子駆動回路は、メインスイッチ素子をオフにする時、ダイオードを介してコンデンサを充電し、メインスイッチ素子をオンさせる時、コンデンサの充電電圧をスイッチ素子に印加して該スイッチ素子をオンさせる。このようにすれば、スイッチ素子駆動回路を簡単な回路構成にできる。
(4):請求項4では、スイッチ素子駆動回路は第2のスイッチ素子を有し、メインスイッチ素子のオン、オフ信号により、スイッチ素子のオン、オフを制御する。このようにすれば、スイッチ素子駆動回路を簡単な回路構成にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態におけるDC-DCコンバータの回路例である。
【図2】本発明の実施の形態におけるドライバの詳細図である。
【図3】本発明の実施の形態における出力電圧-出力電流特性図である。
【図4】本発明の実施の形態における出力電圧が大きいDC-DCコンバータと並列運転した時の特性図(無負荷)である。
【図5】本発明の実施の形態における出力電圧が大きいDC-DCコンバータと並列運転した時の特性図(負荷電流I_(O)の時)である。
【図6】本発明の実施の形態における図4、5の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態における無負荷時の各部の波形図である。
【図8】本発明の実施の形態における出力が大きいDC-DCコンバータを並列接続した時の各部の波形図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるDC-DCコンバータの他の回路例である。
【図10】従来例1の説明図(その1)である。
【図11】従来例1の説明図(その2)である。
【図12】従来例2の説明図(その1)である。
【図13】従来例2の説明図(その2)である。
【符号の説明】
1 メインスイッチ素子
2 整流用同期整流素子
3 転流用同期整流素子
4 出力チョークコイル
5 入力コンデンサ
6 出力平滑コンデンサ
7 インバータ
8 整流用ダイオード
9 転流用ダイオード
10 チョークコイル
11 平滑コンデンサ
12、13、53 抵抗(抵抗体)
14 基準電圧
15 エラーアンプ
16 三角波発生器
17 コンパレータ
18 ドライバ
19 出力電圧検出回路
20 二次側整流平滑回路
30 トランス
31 一次コイル
32 二次コイル
33 三次コイル
40 入力電源
41 入力端子
42 出力端子
43 負荷
50 スイッチ素子
51 ダイオード
52 コンデンサ
54 トランジスタ
d1、d2、d3 FETの内蔵ダイオード
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2014-02-04 
出願番号 特願2002-376248(P2002-376248)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (H02M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 平城 俊雅
槙原 進
登録日 2005-07-01 
登録番号 特許第3694292号(P3694292)
発明の名称 同期整流型DC-DCコンバータ  
代理人 近藤 直樹  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 近藤 直樹  

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