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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23Q |
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管理番号 | 1286784 |
審判番号 | 不服2013-8810 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-05-14 |
確定日 | 2014-04-30 |
事件の表示 | 特願2007-302166「金属シート用マニピュレータ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 6月 5日出願公開、特開2008-126404、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年11月21日(パリ条約による優先権主張2006年11月23日、イタリア共和国)の出願であって、平成24年8月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月20日付け手続補正書が提出されたが、平成25年1月9日付けで拒絶の査定がされた。これに対し、当該査定を不服として、同年5月14日付けで本件審判が請求され、同日付けで手続補正書が提出がされた。同年9月17日付けの当審よりの審尋に対して、同年12月19日付け回答書が提出された。 第2 平成25年5月14日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1. 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、以下の、特許請求の範囲の請求項1についての補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。補正事項1による補正前後の請求項1の記載は、当審で補正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 [補正前] 「【請求項1】 金属シート(4)を拾い上げるためのピックアップ手段(8)を含み、前記ピックアップ手段(8)が第1ピニオン(1)および動作ヘッド(9)と連結可能なラック(3)と結合している金属シート用マニピュレータおよび作業用マシンが動作ヘッド(9)を含んでいる金属シート用マニピュレータおよび作業用マシンの組み合わせであって、少なくとも1つの第2ピニオン(2)を含み、前記第1ピニオン(1)および第2ピニオン(2)が金属シート(4)の移動路に沿って配置され、かつ前記第1ピニオン(1)および第2ピニオン(2)の少なくとも一つが常に前記ラック(3)と嵌合してラック(3)を動作ヘッド(9)のある部分から別の部分に動かし、前記第1ピニオン(1)および第2ピニオン(2)が個別に制御されることを特徴とする金属シート用マニピュレータおよび作業用マシンの組み合わせ。」 [補正後] 「【請求項1】 金属シート(4)を拾い上げるためのピックアップ手段(8)を含み、前記ピックアップ手段(8)が第1ピニオン(1)および動作ヘッド(9)と連結可能なラック(3)と結合している金属シート用マニピュレータおよび作業用マシンが動作ヘッド(9)を含んでいる金属シート用マニピュレータおよび作業用マシンの組み合わせであって、少なくとも1つの第2ピニオン(2)を含み、前記第1ピニオン(1)および第2ピニオン(2)が金属シート(4)の移動路に沿って配置され、かつ前記第1ピニオン(1)および第2ピニオン(2)の少なくとも一つが常に前記ラック(3)と嵌合してラック(3)を動作ヘッド(9)のある部分から別の部分に動かし、前記第1ピニオン(1)および第2ピニオン(2)が個別に制御され、金属シート(4)の移動路中、前記第1ピニオン(1)および第2ピニオン(2)の間に前記動作ヘッド(9)が配置され、また、金属シート(4)の移動路中に、動作ヘッド(9)に対して対称的な様式で前記第1ピニオン(1)および第2ピニオン(2)が配置されることを特徴とする金属シート用マニピュレータおよび作業用マシンの組み合わせ。」 2. 本件補正の適否 本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明の特定事項である「第1ピニオン(1)」、「第2ピニオン(2)」及び「動作ヘッド(9)」の配置について、「金属シート(4)の移動路中、・・・第1ピニオン(1)および第2ピニオンの間に・・・動作ヘッド(9)が配置」されると限定を付加し、そして、「金属シート(4)の移動路中に、動作ヘッド(9)に対して対照的な様式で・・・第1ピニオン(1)および第2ピニオンが配置」されるとの限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。 (1) 補正発明 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記1.[補正後]の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認める。 (2) 引用文献記載の発明 ア. 引用文献記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-86028号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、回転体の回転力を直線方向の力に変換する駆動バーを使用してトランスファーバーを移動させ、第一の工程に位置する第一のワークと第二の工程に位置する第二のワークとをそれぞれ第二の工程、第三の工程まで一斉搬送するワーク搬送装置に関する。」 (イ) 「【0009】 【発明の実施の形態】以下、図1?図9に基づいて本発明の一の実施の形態に係るワーク搬送装置の説明を行う。ここで、図1は本実施の形態に係るワーク搬送装置の動作原理を表す模式図であり、図2はそのワーク搬送装置の平面図及び側面図である。・・・さらに、図9は前記ワーク搬送装置を使用した組付けラインを表す平面図である。なお、ワーク搬送装置の搬送方向をX軸方向、幅方向をY軸方向、高さ方向をZ軸方向として以下の説明を行う。 【0010】前記ワーク搬送装置20は、トランスファーバー22を使用して、第一工程に位置するNo.1ワークと、第二工程に位置するNo.2ワークとをそれぞれ第二工程、第三工程まで一斉搬送するための装置であり、図2に示されるように、第一工程のNo.1ターンテーブル10と第三工程のNo.3ターンテーブル30との間に設置されている。ここで、前述のNo.1ワーク及びNo.2ワークは、台車状のパレットwpとそのパレットwp上に載置されたワークwとから構成されている。なお、前記パレットwpには搬送方向の両側に支持棒wbが突出しており、その支持棒wbの先端がトランスファーバー22に連結されるようになっている。 【0011】前記ワーク搬送装置20は装置架台21を備えており、その装置架台21上に台車状のパレットwpを移動させるための一対のレール23がX軸方向に配設されている。また、前記レール23の下方にはトランスファーバー22がそのレール23と平行に移動できるように設置されている。ここで、前記第一工程?第二工程間の距離と前記第二工程?第三工程間の距離とは等しく設定されており、前記トランスファーバー22は工程間の距離の半分の長さに製作されている。・・・」 (ウ) 「【0014】前記トランスファーバー22に固定されたラック24にはNo.1ピニオン26aあるいはNo.2ピニオン26bが噛合するようになっている。No.1ピニオン26aは、No.2ピニオン26bと等しいサイズに成形されており、図2(B)に示されるように、第一工程と第二工程との間の第二工程寄りに配置されている。そして、前記ラック24が後退限位置(原位置であり図中実線の位置)にあるときでもそのラック24と噛合できるようになっている。また、No.2ピニオン26bは第二工程と第三工程との間の第二工程寄りに配置されており、前記ラック24が前進限位置(図中二点鎖線の位置)にあるときでもそのラック24と噛合できるようになっている。さらに、No.1ピニオン26aとNo.2ピニオン26bとの間の距離はラック24の長さに等しく設定されている。したがって、前記ラック24がトランスファーバー22とともにX軸方向に移動する際に、そのラック24は少なくとも一方のピニオン26a,26bと噛合するようになる。このため、前記ラック24は常にピニオン26a,26bの回転力を受けられるようになっている。 【0015】No.1ピニオン26a及びNo.2ピニオン26bは等速回転機構27により正転方向あるいは逆転方向に回転させられようになっている。・・・」 (エ) 「【0017】前記トランスファーバー22の前端部と後端部とには、それぞれのトランスファーバー22と前記パレットwpとを連結するためのフック28が装着されている。・・・」 (オ) 「【0020】次に、図1、図2に基づいて本実施の形態に係るワーク搬送装置20の動作を説明する。ここで、図1(A)に示されるように、No.1ワーク及びNo.2ワークはそれぞれ第一工程及び第二工程に位置決めされているものとする。また、トランスファーバー22及びラック24も後退限位置(原位置)に位置決めされているものとする。また、前述のように、トランスファーバー22及びラック24の長さは工程間の距離の半分の長さに設定されているため、原位置に位置決めされている状態でもトランスファーバー22及びラック24の端部が第一工程側に突出することはない。」 (カ) 「【0022】次に、第一工程に設置された後記するクランプ機構10sが動作してNo.1ワークのパレットwpのクランプを解除する。また、ワーク搬送装置20のクランプ機構20sが動作してNo.2ワークのパレットwpのクランプを解除する。この状態で、サーボモータ27mが起動されて等速回転機構27が正転方向に動作することにより、No.1ピニオン26a及びNo.2ピニオン26bが図1、図2において右回りに等速回転し、トランスファーバー22はラック24&ピニオン26a,26bの働きにより前進する。また、前記トランスファーバー22とフック28を介して連結されているNo.1ワーク、No.2ワークもレール23に倣って前進する。 【0023】ここで、No.1ピニオン26aとNo.2ピニオン26bとの間の距離はラック24の長さに等しく設定されているため、前記ラック24がトランスファーバー22と共に前進する際に、そのラック24は少なくても一方のピニオン26a,26bと噛合するようになる。さらに、No.1ピニオン26a及びNo.2ピニオン26bは等しいサイズに成形されて等速回転するため、トランスファーバー22及びラック24はスムーズに移動できるようになる。 【0024】そして、前記トランスファーバー22が前進限位置に到達した段階でサーボモータ27mが停止し、トランスファーバー22がその位置に保持されるとともに、No.1ワーク、No.2ワークがそれぞれ第二工程、第三工程に位置決めされる(図1(B)参照)。前述のように、トランスファーバー22及びラック24の長さは工程間の距離の半分の長さに設定されているため、前進限位置に保持されている状態でもトランスファーバー22及びラック24の先端部が第三工程側に突出することはない。」 (キ) 「【0026】このようにして、No.1ワーク及びNo.2ワークとトランスファーバー22との連結が解除されると、再びサーボモータ27mが起動されて等速回転機構27が逆転方向に動作し、トランスファーバー22はラック24&ピニオン26a,26bの働きにより原位置まで後退する。このように、トランスファーバー22はラック24&ピニオン26a,26bの働きにより前進後退する構造であるためにピニオン26a,26bの回転角度からトランスファーバー22の移動距離を正確に把握することができるようになる。」 (ク) 「【0037】・・・また、本実施の形態においては、一台のサーボモータと等速回転機構27により二台のピニオンを等速回転させる方法を示したが、これに限定されるわけではなく、例えば、ピニオン毎に個別にサーボモータを設けて電気的に等速回転させる方法でも可能である。」 (ケ) 「【0027】次に、図9に基づいて、本実施の形態に係るワーク搬送装置20を利用した組付けライン100の説明を行う。前記組付けライン100は第一工程?第五工程間でワークwに部品を組付けるためのラインであり、第一工程にNo.1ターンテーブル10が設置されている。前記No.1ターンテーブル10は水平に90°回動可能な構造であり、その上面にはパレットwpを載置するためのレール13が取付けられている。さらに、前記No.1ターンテーブル10にはパレットwpを第一工程に位置決めしてクランプするためのクランプ機構10sが設置されている。 【0028】第一工程と第三工程との間には本実施の形態に係るワーク搬送装置20が設置されている。・・・」 (コ) 「【0031】次に、組付けライン100の動作を説明する。なお、No.2ワークが既に第二工程に位置決めされているものとして説明を行う。空のパレットwpが第五工程からワーク送り装置55によって第一工程のNo.1ターンテーブル10まで搬送されてくると、そのパレットwpはクランプ機構10sによって位置決めクランプされる。 【0032】このようにしてパレットwpが第一工程に位置決めされるとNo.1ワークがパレットwpにセットされ、No.1ターンテーブル10は図の状態から右回りに90°回動する。これによって、No.1ターンテーブル10のレール13はワーク搬送装置20のレール23と連続するようになる。そして、第一工程、第二工程においてそれぞれNo.1ワーク、No.2ワークに関する作業が終了すると、前述のように、ワーク搬送装置20のトランスファーバー22がフック28によってNo.1ワーク、No.2ワークに連結される。そして、第一工程のクランプ機構10sと第二工程のクランプ機構20sのクランプが解除されると、等速回転機構27が駆動してトランスファーバー22はラック24&ピニオン26a,26bの働きにより前進限位置まで前進する。 【0033】これによって、No.1ワーク、No.2ワークがトランスファーバー22とともにそれぞれ第二工程、第三工程(No.3ターンテーブル30)まで搬送される。次に、第二工程のクランプ機構20sがNo.1ワークをこの位置でクランプし、第三工程のクランプ機構30sがNo.2ワークをこの位置でクランプすると、トランスファーバー22のフック28がNo.1ワーク及びNo.2ワークから外され、前記トランスファーバー22はラック24&ピニオン26a,26bの働きにより原位置まで戻される。」 (サ) 【図2】 「No.1ピニオン(26a)」及び「No.2ピニオン(26b)」は、「第二工程」に位置する「パレット(wp)」から前後にそれぞれ突出する「支持棒(wb)」の端部の直下に位置する点、及び、「第二工程」が、「No.1ピニオン(26a)」及び「No.2ピニオン(26b)」の間に配置される点、看取できる。 イ. 引用文献記載の発明 上記摘記事項(ア)ないし(コ)及び認定事項(サ)から、引用文献記載の事項を技術常識を考慮して整理すると、引用文献には以下の発明(以下、「引用文献記載発明」という。)が記載されていると認める。 「ワークのパレット(wp)から前後にそれぞれ突出する支持棒(wb)に係合するためのフック(28)を含み、前記フック(28)がNo.1ピニオン(26a)と連結可能なトランスファーバー(22)に固定されたラック(24)と結合しているワーク搬送装置およびワークに作業を施す手段の組み合わせであって、No.2ピニオン(26b)を含み、前記No.1ピニオン(26a)およびNo.2ピニオン(26b)がワークのパレット(wp)のレール(23)に沿って配置され、かつ前記No.1ピニオン(26a)およびNo.2ピニオン(26b)の少なくとも一つが常に前記ラック(24)と嵌合してトランスファーバー(22)及びラック(24)を第二工程にあるワークに作業を施す手段のある部分から別の部分に動かし、前記No.1ピニオンおよびNo.2ピニオンが個別に制御され、ワークのパレット(wp)のレール(23)中、前記No.1ピニオン(26a)およびNo.2ピニオン(26b)の間に前記第二工程にあるワークに作業を施す手段が配置されるワーク搬送装置およびワークに作業を施す手段の組み合わせ。」 (3) 対比 補正発明と引用文献記載発明とを対比する。 引用文献記載発明の「No.1ピニオン(26a)」、「No.2ピニオン(26b)」、「トランスファーバー(22)及びラック(24)」及び「レール(23)」は、補正発明の「第1ピニオン(1)」、「第2ピニオン(2)」、「ラック(3)」及び「移動路」にそれぞれ相当する。 引用文献記載発明の「ワーク」は、(作業が施される)「作業対象物」である点で、補正発明の「金属シート(4)」と共通する。 引用文献記載発明の「前後にそれぞれ突出する支持棒(wb)」を備えた「パレット(wp)」と「フック(28)」は、ピニオンとラックとの嵌合によって作業対象物を移動可能とするために、作業対象物とラックとを結合するための手段である点で、補正発明の「ピックアップ手段(8)」と共通する。 引用文献記載発明の「作業を施す手段」は、作業対象物に対して作業を施すものである点で、補正発明の「動作ヘッド(9)」と共通する。 引用文献記載発明の「ワーク搬送装置およびワークに作業を施す手段の組み合わせ」は、作業対象物を移動する手段及び作業を施す手段の組み合わせである点で、補正発明の「金属シート用マニピュレータおよび作業用マシンの組み合わせ」と共通する。 補正発明と引用文献記載発明は、以下の点で一致し、かつ相違する。 ア. 一致点 「作業対象物と結合する手段を含み、前記結合する手段が第1ピニオンおよび作業手段と連結可能なラックと結合している作業対象物を移動する手段及び作業を施す手段の組み合わせであって、少なくとも1つの第2ピニオンを含み、前記第1ピニオンおよび第2ピニオンが作業対象物の移動路に沿って配置され、かつ前記第1ピニオンおよび第2ピニオンの少なくとも一つが常に前記ラックと嵌合してラックを作業を施す手段のある部分から別の部分に動かし、前記第1ピニオンおよび第2ピニオンが個別に制御され、作業対象物の移動路中、前記第1ピニオンおよび第2ピニオンの間に前記作業手段が配置され、また、作業対象物の移動路中に配置される作業対象物を移動する手段及び作業を施す手段の組み合わせ。」 イ. 相違点 (ア) 相違点1 補正発明は、「作業対象物」が「金属シート」であり、「作業対象物と結合する手段」として、「ピックアップ手段」を用い、「作業対象物を移動する手段」として「金属シート用マニピュレータ」とし、「ラック(3)」が「動作ヘッド(9)」と連結可能であるのに対し、引用文献記載発明の「ワーク」の材質や形状は不明であり、「作業対象物と結合する手段」を「ワークのパレット(wp)から前後にそれぞれ突出する支持棒(wb)」に係合するための「フック(28)」を用い、「作業対象物を移動する手段」が「金属シート用マニピュレータ」ではなく、そして「ラック(24)」と「作業を施す手段」との連結の可否は不明である点。 (イ) 相違点2 補正発明の「第1ピニオン(1)」及び「第2ピニオン(2)」が「動作ヘッド(9)」に対して対称的な様式で配置されるのに対し、引用文献記載発明の「No.1ピニオン(26a)」及び「No.2ピニオン(26b)」の「第二工程」の「作業を施す手段」に対する配置は不明である点。 (4) 判断 上記相違点1及び2について以下に検討する。 相違点1、2について。 「金属シート」を作業対象物とする作業対象物を移動する手段及び作業を施す手段の組み合わせにおいて、「金属シート」を拾い上げるための「ピックアップ手段」を含み、前記「ピックアップ手段」が「第1ピニオン」及び「動作ヘッド」と連結可能な「ラック」を有するものとし、「作業対象物を移動する手段」として「金属シート用マニピュレータ」としさらに、「第2ピニオン」を含み、前記「第1ピニオン」および「第2ピニオン」が「金属シート」の移動路に沿って配置され、かつ前記「第1ピニオン」および「第2ピニオン」の少なくとも一つが常に前記「ラック」と嵌合して「ラック」を「動作ヘッド」のある部分から別の部分に動かすものにおいて、「第1ピニオン」及び「第2ピニオン」の配置を、「第1ピニオン」および「第2ピニオン」の間に「動作ヘッド」を配置すること、及び「第1ピニオン」及び「第2ピニオン」が「動作ヘッド」に対して対称的な様式で配置することは、原審で通知された拒絶の理由で引用された刊行物である引用文献1ないし3のいずれの刊行物にも記載されていないし、当業者が容易に想到し得るものではない。 補正発明は、上記相違点1及び2に係る構成を全て備えることで、「金属シート(4)を拾い上げるためのピックアップ手段(8)」と結合する「ラック(3)」につき、「好適なトルクが得られる場合には、ラックのストロークを伸ばすことができる」(本願出願当初の明細書の段落【0014】)との格別な作用効果を奏する。 したがって、補正発明は、引用文献記載発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 本件補正のその余の補正事項は、上記特許請求の範囲の請求項1についてする補正事項1に対応して、本願明細書の段落【0005】を補正するものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当する。そうすると、その余の補正事項には、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 3. むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-04-17 |
出願番号 | 特願2007-302166(P2007-302166) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B23Q)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 五十嵐 康弘 |
特許庁審判長 |
石川 好文 |
特許庁審判官 |
久保 克彦 長屋 陽二郎 |
発明の名称 | 金属シート用マニピュレータ |
代理人 | 野口 賢照 |
代理人 | 昼間 孝良 |
代理人 | 境澤 正夫 |
代理人 | 佐藤 謙二 |
代理人 | 清流国際特許業務法人 |
代理人 | 小川 信一 |
代理人 | 平井 功 |