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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1286930
審判番号 不服2012-21027  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-25 
確定日 2014-04-16 
事件の表示 特願2006-161947「タービンバケット先端キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月28日出願公開、特開2006-348938〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、特許法第36条の2第1項の規定による平成18年6月12日(パリ条約による優先権主張2005年6月16日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成18年8月10日付けで明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、平成21年6月11日付けで手続補正書が提出され、平成23年1月18日付けで拒絶理由が通知され、平成23年7月22日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成23年8月30日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成24年3月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年6月18日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成24年10月25日付けで拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に、同日付けで手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。
そして、平成25年3月1日付けで当審において書面による審尋がなされ、平成25年9月5日付けで審尋に対する回答書が提出されたものである。

2.本願発明
特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、平成21年6月11日付けの手続補正によって補正された明細書、平成24年10月25日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲、及び図面の翻訳文の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

なお、平成24年10月25日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1は、補正前の(すなわち、平成24年3月6日付けの手続補正書により補正された)請求項1を引用する請求項2が、補正前の請求項1の削除により繰り上がって、補正後の請求項1となったものであるから、平成24年10月25日付けの手続補正は、請求項の削除を目的とするものである。

「 【請求項1】
内部冷却通路(40)を有するタービンバケット(10)の先端キャップ(34)で使用するための先端キャップピース(100)であって、前記先端キャップピース(100)が、
低温側面(60)と、
前記低温側面(60)上に配置されたニッケル基又はコバルト基合金からなる複数のピン(110)のアレイと
を含んでおり、前記複数のピン(110)の各々が基部フィレット(120)と細長い頂部(130)とを含んでいる、先端キャップピース(100)。」

3.引用文献記載の発明
3-1.引用文献1記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-107701号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
ア.「【請求項1】 内部に冷却通路が形成されたガスタービン動翼において、同ガスタービン動翼の先端部における冷却通路の反転部の冷却面に伝熱促進用の突起を形成したことを特徴とするガスタービン動翼。
【請求項2】 前記ガスタービン動翼の鋳造時にコアの支持に使用されたガスタービン動翼先端部の孔を塞ぐプラグの内面に前記突起を形成したことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン動翼。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷却媒体を流すための冷却通路が内部に形成されたガスタービン動翼に関する。」(段落【0001】)

ウ.「【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、本発明は、内部に冷却通路が形成されたガスタービン動翼において、同ガスタービン動翼の先端部における冷却通路の反転部の冷却面に伝熱促進用の突起を形成したガスタービン動翼を提供する。
【0011】本発明のガスタービン動翼において、その冷却通路の反転部の冷却面に形成する伝熱促進用の突起としては、直交フィン、ピン状突起、ディンプル形状など適宜の形状のものを採用することができる。
【0012】本発明のガスタービン動翼によれば、タービン動翼先端部における冷却通路の反転部の冷却面は、そこに設けられた伝熱促進用の突起が放熱フィンとして働いて吸熱量を増加し、動翼先端部にガス側から入って来る熱に対し十分な冷却を行うことができる。
【0013】本発明のガスタービン動翼において、動翼先端部における冷却通路の反転部の冷却面に対し前記した伝熱促進用の突起を形成するには、ガスタービン動翼の鋳造時にコアの支持に使用されたガスタービン動翼先端部の孔を塞ぐのに用いるプラグの内面に対しその突起を形成することで容易に製造することができる。このようにプラグの内面に突起を形成すると、プラグ自体のメタル温度を低下させるので、そのロー付けや溶接による接合部を高温から良好に保護することになる。」(段落【0010】ないし【0013】)

エ.「【0021】(第1実施形態)まず、図1に示す第1実施形態によるガスタービン動翼について説明する。図1において、17は、冷却通路の反転部11における冷却面に故意に形成された伝熱促進用の突起である。この突起17は、高温ガスの流れと面が直交するように並列して設けられた直交フィン、多数個の断面円形のピン状突起やディンプル形状の突起など適宜の形状のものであってよいが、冷却通路を流れる冷却媒体に対する乱流を促進させる形状のものとするのが好ましい。
【0022】以上のように、タービン動翼先端部9における冷却通路8の反転部11の冷却面に伝熱促進用の突起17を形成した本第1実施形態のガスタービン動翼においては、反転部11の冷却面が冷却媒体7と強制対流熱伝達を行い反転部11はガス側からの入熱に対して冷却されるのであるが、反転部11の冷却面に前述の突起17を形成されているので、突起17は放熱フィンとして作用し、吸熱量を増加させる。」(段落【0021】及び【0022】)

オ.「【0023】(第2実施形態)次に、図2及び図3に示す第2実施形態によるガスタービン動翼について説明する。図2,図3において、14は、動翼鋳造時にコアをサポートするのに使用した孔である。実際のタービン動翼2の冷却通路は精密鋳造などの手法で成型されることが多く、成型後には鋳造時にコアをサポートする孔14が図2に示すように冷却通路反転部11近傍に存在することが多い。
【0024】このサポート孔14は、動翼を加工してゆく過程でタービン動翼2にプラグ15を溶接や、ロー付けなどの手段で接合して閉塞することが多い。この第2実施形態によるガスタービン動翼では、このプラグ15の冷却面16に突起17を設け伝熱促進を図り、動翼先端部9の冷却強化を図るようにしている。
【0025】図3には、プラグ15の冷却面16側に形成する突起17の例を示してある。図3の(a)は、冷却媒体の流れに直交する方向に多数のフィンを並置した直交フィン17-1を設けたもの、(b)は断面円形のピン状突起17-2を多数形成したもの、(c)は多数のディンプル形状の突起17-3を形成したものをそれぞれ示し、(a)?(c)各図において、上方が側面図、下方が平面図である。
【0026】図3には、(a)?(c)の3種の突起を示してあるが、突起17の形状に関しては、放熱効率を向上可能な単純なフィン群から乱流の促進が期待できる形状など、種々のものを適宜採用してよい。
【0027】この第2実施形態のガスタービン動翼においては、鋳造時にコア支持に使用されたタービン動翼先端部の孔14を塞ぐプラグ15の冷却面に突起17を取り付けることで、突起17を放熱フィンとして作用させて吸熱量を増加させ、これによってプラグ15自体のメタル温度を低減することが可能となるほか、プラグ15を取り付けるロー付けや溶接接合部など、その近傍も熱伝導効果による冷却が期待できる。」(段落【0023】ないし【0027】)

(2)上記(1)ア.ないしオ.及び図面から次のことが分かる。
カ.上記(1)ア.ないしオ.並びに図2及び図7から、プラグ15は、冷却通路8を有するタービン動翼2のタービン動翼先端部9で使用されることが分かる。

キ.上記(1)ア.ないしオ.並びに図3及び図7から、プラグ15は、冷却面16と、前記冷却面16上に配置された複数のピン状突起17-2を有し、複数のピン状突起17-2はアレイを構成し、ピン状突起17-2の各々が基部と細長い頂部とを含んでいることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)並びに図面によると、引用文献1には、次の発明が記載されている。
「冷却通路8を有するタービン動翼2のタービン動翼先端部9で使用するためのプラグ15であって、前記プラグ15が、
冷却面16と、
前記冷却面16上に配置された複数のピン状突起17-2のアレイと
を含んでおり、前記複数のピン状突起17-2の各々が基部と細長い頂部とを含んでいる、プラグ15。」 (以下、「引用文献1記載の発明」という。)

3-2.引用文献2記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された米国特許3800864号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている(和文は当審において仮訳したものである。)。
サ.「The present invention relates to cooling systems and more particularly for cooling systems for use in gas turbine engines. 」(明細書第1欄第5ないし7行)
(仮訳:本発明は冷却系統に関し、特にガスタービンエンジン用の冷却系統に関するものである。)

シ.「In one form thereof, this invention provides an air-cooled nozzle ring or other walltype structure partially defining a hot gas flow path with its first face bounding the hot gas passage and its second face partially defining a plenum for cooling fluid (air, in the case, but other fluids are equally useable). A plurality of protuberances or pin-fins are associated with the second face and extend into the plenum which is further defined by a liner spaced from the second face. 」(明細書第2欄第16ないし25行)
(仮訳:本発明の一態様において、本発明は高温ガス流路を部分的に画成する空気冷却ノズルリング又はその他の壁形構造体を提供する。このノズルリング又は類似の構造体の第1面は高温ガス流路の境界をなし、その第2面は冷却流体(この場合空気であるが、他の流体も同様に使用し得る)用の高圧室を部分的に画成する。上記の第2面には複数の突起又はピン形フィンが付設され、上記高圧室内に延びている。)

ス.「The plurality of protuberances serve the dual purpose of enhancing turbulence and increasing the convective heat flow area of the second face of the wall. 」(明細書第2欄第30ないし33行)
(仮訳:上記の突起群は乱流の増加と壁体第2面の対流熱流面積の増加という二重の目的に役立つものである。)

セ.「According to a major object of the present invention, the second face 62 cooperates with and carries a plurality of protuberances or pin-fins 74 which extend from the second face into the plenum 64. These protuberances serve the function of increasing the effective convertive heat flow area of the second face 62. 」(明細書第4欄第28ないし33行)
(仮訳:本発明の主目的によれば、第2面62はその第2面から高圧室64内に突出する複数の突起又はピン形フィン74と協働し且つそれらを支持する。これらの突起は第2面62の有効対流熱流面積を増加させる機能を果たす。)

(2)上記(1)サ.ないしセ.及び図面から次のことが分かる。
タ.上記(1)サ.及びセ.並びに図3ないし5から、複数のピン形フィン74は、ガスタービンエンジンの冷却に用いられることが分かる。

チ.上記(1)シ.ないしセ.並びに図3ないし5から、アレイを構成する複数のピン形フィン74は乱流増加に寄与するものであることが分かり、特に、図3ないし5から、ピン形フィン74の各々は、頂部が細長く、また、第2面62と接続される基部において、第2面62とピン形フィン74との交差する面に凹形面が形成されていることが看て取れる。

(3)上記(1)及び(2)並びに図面によると、引用文献2には、次の発明が記載されている。
「冷却に用いられる複数のピン形フィン74であって、
第2面62とピン形フィン74との交差する面に凹形面が形成されている基部と細長い頂部とを含んでいるピン形フィン74。」 (以下、「引用文献2記載の発明」という。)

4.対比
本願発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明における「冷却通路8」、「タービン動翼2」、「タービン動翼先端部9」、「プラグ15」、「冷却面16」及び「ピン状突起17-2」は、それらの技術的意義及び機能からみて、本願発明における「内部冷却通路」、「タービンバケット」、「先端キャップ」、「先端キャップピース」、「低温側面」及び「ピン」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用文献1記載の発明は、
「内部冷却通路を有するタービンバケットの先端キャップで使用するための先端キャップピースであって、前記先端キャップピースが、
低温側面と、
前記低温側面上に配置された複数のピンのアレイと
を含んでおり、前記複数のピンの各々が基部と細長い頂部とを含んでいる、先端キャップピース。」
の点で一致し、以下の(1)及び(2)点で相違している。

(1)本願発明においては、「ピン」の材料が、「ニッケル基又はコバルト基合金」であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、「ピン状突起17-2」(本願発明の「ピン」に相当。)の材料が明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては、「ピン」の「基部」が「基部フィレット」、すなわち、「基部」の形状が「フィレット」であるのに対して、引用文献1記載の発明においては、「ピン状突起17-2」の「基部」の形状が「フィレット」であるかどうかが明らかでない点(以下、「相違点2」という。)。

5.当審の判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
タービンバケットの先端キャップにおいて、その材料を「ニッケル基やコバルト基合金」とすることは周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開昭54-101013号公報の第2ページ左下欄第17行ないし第3ページ右上欄第3行及び特開2004-225701号公報の段落【0009】等参照。)である。
引用文献1記載の発明及び上記周知技術はいずれもタービンバケットの先端キャップに関するものであって、タービンバケットの先端キャップやそこに設けられるピン状突起の材料として同種の材料を用いることは当業者の通常の設計上の選択的事項にすぎないから、引用文献1記載の発明において、「ピン状突起17-2」の材料として、上記周知技術を適用して、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
引用文献2記載の発明における「ピン形フィン74」は、その技術的意義及び機能からみて、本願発明における「ピン」に相当する。
ここで、本願発明における発明特定事項である「フィレット」について、その意味するところを検討すると、マグロ-ヒル科学技術用語大辞典(日刊工業新聞社、改訂第3版2刷2001年5月31日発行、第917ページ)には、「すみ(隅)肉 fillet 〔設計〕二つの互いに交差する面の間にできる凹形面」と記載されており、これを参酌すると、「フィレット」とは、二つの互いに交差する面の間にできる凹形面を意味するものと解せる。
そうすると、引用文献2記載の発明における「第2面62とピン形フィン74との交差する面に凹形面が形成されている」は、本願発明における「フィレット」に相当するから、引用文献2記載の発明における「第2面62とピン形フィン74との交差する面に凹形面が形成されている基部」は、本願発明における「基部フィレット」に相当する。
したがって、引用文献2記載の発明を本願発明の用語を用いて表現すると
「冷却に用いられる複数のピンであって、
基部フィレットと細長い頂部とを含んでいるピン。」
ということができる。
してみると、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明は、いずれもガスタービンの冷却に関するものであって、引用文献1記載の発明において、「ピン状突起17-2」(本願発明の「ピン」に相当。)の基部として、引用文献2記載の発明の基部フィレットを採用して相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明は全体としてみても、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明並びに上記周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明並びに上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-30 
結審通知日 2013-11-12 
審決日 2013-12-02 
出願番号 特願2006-161947(P2006-161947)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 泰輔  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 中川 隆司
藤原 直欣
発明の名称 タービンバケット先端キャップ  
代理人 荒川 聡志  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  

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