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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F23C
管理番号 1286941
審判番号 不服2013-4783  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-12 
確定日 2014-04-17 
事件の表示 特願2007-262487「液体加熱調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月30日出願公開、特開2009- 92302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本件は、平成19年10月5日の出願であって、平成24年6月8日付けで拒絶理由が通知され、平成24年8月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年12月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年3月12日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、当審において平成25年5月1日付けで書面による審尋がされ、平成25年7月5日に回答書が提出され、当審において平成25年10月25日付けで拒絶理由が通知され、平成25年12月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
ハウジング内の上方に、液体が満たされる液体槽と、その液体槽内の液体を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段を、前記液体槽内の前方側に設置される燃焼室と、その燃焼室に接続され、前記液体槽内の後方側で所定形状に屈曲形成される熱交換部を有するテールパイプと、前記燃焼室に連通し、燃料ガスと燃焼用空気とが供給される混合室とを備え、前記燃焼室内での前記燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスの爆発燃焼に伴い、燃焼排気を前記テールパイプを通して排出して前記液体との熱交換を行うと共に、前記混合室から前記燃焼室内に混合ガスを吸入する動作を行うパルス燃焼器とした液体加熱調理器であって、
前記テールパイプの前記熱交換部を、前記燃焼室の上面と同じ高さの水平な平面上で渦巻き状に巻回させる一方、前記液体槽の底部の後方部を、前記燃焼室の上下方向の中央よりも高い位置で略水平に形成したことを特徴とする液体加熱調理器。」

2 刊行物に記載された発明
(1)刊行物の記載
本件出願前に頒布され、当審の拒絶理由に引用された刊行物である実願昭57-138663号(実開昭59-44937号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
なお、○囲みの1については[1]と、「フライヤ-」等の「-」は長音符号の「ー」と、「よつて」及び「ヘツド」等については、「よって」及び「ヘッド」と記載する。

ア 「実用新案登録請求の範囲
[1] パルス燃焼装置(1)の燃焼室(2)の全部又は一部及び高温燃焼ガス通路(3A)を形成する細い加熱管(3)を液槽(4)内に浸漬設置してある事を特徴とする液体加熱用厨房機器。
[2] 前記加熱管(3)が前記液槽(4)の底面に密着又はほぼ密着する状態に設置されている実用新案登録請求の範囲第1項に記載の液体加熱用厨房機器。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2)

イ 「本考案は、例えばフライヤーやゆで麺器など槽内に収容された油、水等の液体を加熱することにより調理を行なう厨房機器に関する。

本考案は、かかる実情に鑑み、既記の従来機器に比べて熱効率を飛躍的に増大でき、しかも全体のコンパクト化が図れる液体加熱用厨房機器を提供する点に目的を有する。

本考案による液体加熱用厨房機器の作用及び効果は次の通りである。
[1] 伝熱面となる加熱管が被加熱液体中に浸漬されて、その管全面が伝熱面として作用するものであることと、加熱管サイズも浸管の場合に比して十分に小さくして高温燃焼ガスの流動に伴なう大気への熱放出を極力抑制できることとの相乗により、熱効率を既記従来機器のものに比較して飛躍的に増大することができる。
[2] 燃焼装置全体がコンパクトである上に、装置構成要素の大半を占める機械室及び加熱管が液槽内に設置されることと、加熱管が細管で良いこととによって、機器全体をコンパクトなものに構成できる。
[3] 燃焼室の全部又は一部及び加熱管が被加熱液中に存在するので、機器外壁の昇温が殆んどなく、使用者ならびに付近他物への熱的影響が少なく安全である。
[4] 細い加熱管を液層底面に密着又はほぼ密着状態に設置できるため、従来の浸管の場合に比べて同一有効深度を得るにあたっての必要液量を減少でき、これによっても液体の急速加熱が行なえる。
[5] 細い加熱管故に、手を入れ易くて槽内の清掃が容易である。」(明細書2ページ2行ないし4ページ11行)

ウ 「第1図乃至第3図で示すように短い支持脚(5)を備えた箱状機器ケーシング(6)にステンレスなど耐熱、耐蝕、耐油性材料からなる油槽(液槽)(4)を内嵌固定保持させた卓上型フライヤーにおいて、前記油槽(4)内に、パルス燃焼装置(1)の燃焼室(2)の全部及びこの燃焼室(2)での燃焼に伴なって発生される高温燃焼ガスの排出通路(3A)を形成するところの、耐熱性、耐蝕性、熱伝導性に勝れた材料製の細い加熱管(テイルパイプ)(3)を、そのテイルパイプ(3)が平面視においてジグザグ状でかつ周部が油槽(4)底面に密着又はほぼ密着する状態に浸漬設置する … (10)は温度調節用ダイヤル、(11)はパルス燃焼装置(1)に対する起動スイッチである。」(明細書4ページ13行ないし5ページ18行)

エ 「前記パルス燃焼装置(1)は、概略次のように構成されている。第4図で明示の如くマルチポート式のミキシングヘッド(12)を内装固着の円筒状ケーシング(2A)をもってその内部に形成された燃焼室(2)の一端側に … 燃焼用空気供給管(8)を接続するとともに、前記ミキシングヘッド(12)におけるガスポート(12a)に … 燃料ガス供給管(7)を接続し、かつ前記燃焼室(2)の他端側に前記テイルパイプ(3)を接続し、もって、前記燃焼室(2)での爆発燃焼に伴なう燃焼ガスの動慣性により前記逆流防止用弁機構(13)及び(15)を開いて燃焼用空気及び燃料ガスをミキシングヘッド(12)を経て燃焼室(2)内に流入させ、その混合ガスを燃焼室(2)で爆発燃焼させることの繰返しにより燃焼ガスをテイルパイプ(3)に高速パルス流として流動させるべく構成されている。」(明細書5ページ19行ないし6ページ19行)

オ 「第5図乃至第7図はテーブル型のフライヤーに適用した別の実施例を示し、基本的には前記実施例で示したものと同様であるが、脚(5)が長尺で床面に設置した際、油槽(4)が立姿勢の作業者の手の高さに相当する高さ位置になるように構成されている点、吸気側の消音器(5)と排気側の消音器(5')とが機器ケーシング(6)の両側に振分け配置されるように構成されている点、及び油槽(4)の底部中央位置に弁付き排油口(4A)が設けられている点が卓上型のものと相違する。」(明細書6ページ20行ないし7ページ9行)

カ 「図面の簡単な説明
第1図乃至第3図は卓上型フライヤーへの適用例を示す平面図、一部切欠き正面図、一部切欠き側面図、第4図はパルス燃焼装置の拡大縦断面図、第5図乃至第7図はテーブル型フライヤーへの適用例を示す平面図、一部切欠き正面図、一部切欠き側面図」(明細書7ページ17行ないし8ページ3行)

(2)引用文献1に記載された事項
上記(1)アないしエ並びに第1図ないし第4図の記載における卓上型フライヤーの実施例から理解できる細部構成に加え、該実施例と同様の細部構成を備える上記(1)オ及びカ並びに第5図ないし第7図のテーブル側フライヤーの別実施例から、次のことが分かる。

a 第6図(正面図)の特に温度調節用ダイヤル(10)及び起動スイッチ(11)の配置態様に加え、第5図(平面図)及び第7図(側面図)の記載によれば、パルス燃焼装置(1)の燃焼室(2)が、機器ケーシング(6)の前方側に配置されることが分かる。

b 上記aに加え、上記(1)アないしカ並びに第5図ないし第7図から、機器ケーシング(6)内の上方に、液体が満たされる油槽(4)と、その油槽(4)内の前方側に設置される燃焼室(2)と、その燃焼室(2)に接続され、油槽(4)内の後方側でジグザグ状に屈曲形成される熱交換部を有するテイルパイプ(3)とが、液体を加熱する加熱手段であることが分かる。

c 上記bに加え、上記(1)の特にエ及び第4図から、燃焼室(2)に連通し、燃料ガスと燃焼用空気とが供給されるミキシングヘッド(12)とを備え、燃焼室(2)内での燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスの爆発燃焼に伴い、燃焼ガスをテイルパイプ(3)を通して排出して液体との熱交換を行うと共に、ミキシングヘッド(12)から燃焼室(2)内に混合ガスを吸入する動作を行うパルス燃焼装置(1)であることが分かる。

d 上記a及びbに加え、上記(1)アないしカ並びに第5図ないし第7図から、テイルパイプ(3)の熱交換部を、燃焼室(2)と略同じ高さの略水平な平面上でジグザグ状に屈曲形成させる一方、油槽(4)の底面を、テイルパイプ(3)の熱交換部の下面に密着、又は、ほぼ密着させることが分かる。

(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「機器ケーシング(6)内の上方に、液体が満たされる油槽(4)と、その油槽(4)内の液体を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段を、前記油槽(4)内の前方側に設置される燃焼室(2)と、その燃焼室(2)に接続され、前記油槽(4)内の後方側でジグザグ状に屈曲形成される熱交換部を有するテイルパイプ(3)と、前記燃焼室(2)に連通し、燃料ガスと燃焼用空気とが供給されるミキシングヘッド(12)とを備え、前記燃焼室(2)内での前記燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスの爆発燃焼に伴い、燃焼ガスを前記テイルパイプ(3)を通して排出して前記液体との熱交換を行うと共に、前記ミキシングヘッド(12)から前記燃焼室(2)内に混合ガスを吸入する動作を行うパルス燃焼装置(1)とした液体加熱用厨房機器であって、
テイルパイプ(3)の熱交換部を、前記燃焼室(2)と略同じ高さの略水平な平面上でジグザグ状に屈曲形成させる一方、油槽(4)の底面を、前記テイルパイプ(3)の熱交換部の下面に密着、又は、ほぼ密着させる液体加熱用厨房機器。」

3 対比、判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「機器ケーシング(6)」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本願発明の「ハウジング」に相当し、以下同様に、「油槽(4)」は「液体槽」に、「加熱手段」は「加熱手段」に、「燃焼室(2)」は「燃焼室」に、「ジグザグ状」は「所定形状」に、「熱交換部」は「熱交換部」に、「テイルパイプ(3)」は「テールパイプ」に、「ミキシングヘッド(12)」は「混合室」に、「燃焼ガス」は「燃焼排気」に、「パルス燃焼装置(1)」は「パルス燃焼器」に、「液体加熱用厨房機器」は「液体加熱調理器」にそれぞれ相当する。
そして、本願発明の「テールパイプの熱交換部を、燃焼室の上面と同じ高さの水平な平面上で渦巻き状に巻回させる」ことは、引用発明の「テイルパイプ(3)の熱交換部を、燃焼室(2)と略同じ高さの略水平な平面上でジグザグ状に屈曲形成させる」ことと、「テールパイプの熱交換部を平面上で曲げた態様とする」ことで技術が共通することから、両者は、「テールパイプの熱交換部を平面上で曲げた態様とする」という限りで相当するといえる。
したがって、本願発明と引用発明は、
「ハウジング内の上方に、液体が満たされる液体槽と、その液体槽内の液体を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段を、前記液体槽内の前方側に設置される燃焼室と、その燃焼室に接続され、前記液体槽内の後方側で所定形状に屈曲形成される熱交換部を有するテールパイプと、前記燃焼室に連通し、燃料ガスと燃焼用空気とが供給される混合室とを備え、前記燃焼室内での前記燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスの爆発燃焼に伴い、燃焼排気を前記テールパイプを通して排出して前記液体との熱交換を行うと共に、前記混合室から前記燃焼室内に混合ガスを吸入する動作を行うパルス燃焼器とした液体加熱調理器であって、
テールパイプの熱交換部を平面上で曲げた態様とする液体加熱調理器」の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
テールパイプの熱交換部を平面上で曲げた態様とすることに関して、
本願発明においては、平面上で渦巻き状に巻回させるのに対し、引用発明においては、平面上でジグザグ状に屈曲形成させる点(以下、「相違点1」という。)。
(相違点2)
本願発明においては、テールパイプの熱交換部を、燃焼室の上面と同じ高さの水平な平面上で曲げた態様とする一方、液体槽の底部の後方部を、燃焼室の上下方向の中央よりも高い位置で略水平に形成したのに対し、引用発明においては、テイルパイプ(3)の熱交換部を、燃焼室(2)と略同じ高さの略水平な平面上で曲げた態様とする一方、油槽(4)の底面を、テイルパイプ(3)の熱交換部の下面に密着、又は、ほぼ密着させる点(以下、「相違点2」という。)。

最初に、相違点1について検討する。
熱交換パイプを平面上で渦巻き状に巻回させることは周知技術(以下、「周知技術」という。例として、実公昭9-14283号公報[特に、第三図及び第四図]又は特開2002-360449号公報[特に、段落【0020】並びに図1及び2]参照。)である。そして、引用発明における平面上でジグザグ状に屈曲形成させるテイルパイプ(3)の熱交換部と上記周知技術とは、槽内にパイプを略水平な平面上で曲げた態様で設置することで技術が共通するものであるから、引用発明のテイルパイプ(3)を上記周知技術の曲げ態様とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。

次に、相違点2について検討する。
本願発明は、「油等の液体の使用量やガス消費量の節約に繋がり、省エネルギーが期待できる液体加熱調理器を提供すること」(平成24年8月9日付け手続補正書の段落【0005】)を技術課題としている。
これに対し、引用文献1には、例えば「[4] 細い加熱管を液層底面に密着又はほぼ密着状態に設置できるため、従来の浸管の場合に比べて同一有効深度を得るにあたっての必要液量を減少でき、これによっても液体の急速加熱が行なえる。」(上記2(1)イ、明細書4ページ5ないし9行)と記載されており、引用発明においても、液体の使用量やガス消費量の節約に繋がり、省エネルギーが期待できるものであることは明らかであるから、引用発明は、本願発明と同様の技術課題を備えるものである。
一方、当審の拒絶理由において設計変更例として提示した特開平2-195105号公報には、(異なる寸法形状の加熱槽に共通的に使用できるパルス燃焼装置本体ユニットにおいて、)テールパイプ31の熱交換部を、燃焼室30の上面と略同じ高さの略水平な平面上で曲げた態様とすることに加え、燃焼室30の上下方向の中央よりも高い位置にテールパイプ31の熱交換部の下面を配置する態様が記載されており(以下、「設計変更例1」という。特に、1ページ右下欄19行ないし2ページ左上欄4行、2ページ左下欄12行ないし右下欄7行、2ページ右下欄末行ないし3ページ左上欄6行、及び、第1ないし3図参照。)、同設計変更例として提示した実願昭63-119573号(実開平2-40343号)のマイクロフィルムには、油槽20の底部21を、低い前半部21aとこれよりも高い後半部21bとする態様が記載されている(以下、「設計変更例2」という。特に、明細書6ページ15ないし20行及び第1図参照。)。
そして、引用発明並びに設計変更例1及び2は、パルス燃焼装置の燃焼ガスによる液体加熱機器として同一技術分野に属することに加え、液槽内の前方側に燃焼室並びに後方側にテールパイプを配することで技術が共通するものであるから、引用発明における技術の具体化又は製品化に係る細部構成の設計に際し、引用発明の課題を解決する手段である「油槽(4)の底面を、テイルパイプ(1)の熱交換部の下面に密着、又は、ほぼ密着させる」ことを前提に、燃焼室(2)及びテイルパイプ(3)については設計変更例1を、油槽(4)については設計変更例2を採用することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
したがって、引用発明並びに設計変更例1及び2に基づき、相違点2に係る本願発明の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明を全体として検討しても、その奏する効果は、引用発明、周知技術、設計変更例1及び2から当業者が予測できる範囲のものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術、設計変更例1及び2に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-07 
結審通知日 2014-02-18 
審決日 2014-03-03 
出願番号 特願2007-262487(P2007-262487)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石黒 雄一  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 藤原 直欣
久島 弘太郎
発明の名称 液体加熱調理器  
代理人 石田 喜樹  
代理人 上田 恭一  

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