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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1287214
審判番号 不服2013-12600  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-02 
確定日 2014-05-01 
事件の表示 特願2010-162936「警報器」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月14日出願公開、特開2010-231822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成16年3月31日に出願した特願2004-103938号(以下、「原出願」という。)の一部を平成22年7月20日に新たな特許出願としたものであって、平成23年2月10日に手続補正書が提出され、平成24年2月16日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月23日に意見書及び手続補正書が提出され、平成24年12月20日付けで再び拒絶理由が通知され、平成25年3月11日に意見書が提出されるとともに同日に明細書及び特許請求の範囲についてする手続補正書が提出されたが、平成25年3月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年7月2日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年3月11日提出の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
監視領域における異常発生を検出して警報を行う警報器であって、
前記警報の履歴に関する情報であって、前記警報が所定の警報停止操作により停止されたか否かを特定するための情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記警報が所定の警報停止操作により停止されたか否かを特定するための情報に基づいて、前記警報が所定の警報停止操作により停止されたか否かを特定するための情報を所定の出力手段に出力させる制御手段と、
を備える警報器。」

2.引用文献
(1)引用文献の記載
原出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-42268号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次の記載がある。

ア.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような、火災ガス漏れ警報器において、センサの故障や、周辺回路の故障が発生することも考えられ、万一このような故障が発生した場合には故障発生の事実を火災ガス漏れ警報器で通知する必要がある。従来、このようなセンサの故障、周辺回路の故障が発生した場合、故障の告知は電源灯として使用されているLEDの点滅により一括で表示されることが一般的である。また、電源回路故障の検出は、停電やヒューズ切れを検出するのみで、それらを電源灯の消灯で判別するだけであった。
【0005】このため、どのセンサに故障が発生しているのか、電源回路のどの部分に故障が発生しているかは不明であった。
【0006】また、故障が発生した場合、その故障の履歴は特別残されているわけではない。このため、後日故障の発生した製品を調査する必要があるとき、いつどのセンサでどのような種類の故障が発生したのか分からず、故障原因を想定して一つ一つ、いわばしらみつぶしにその原因を調査する必要がある。このため、原因の解析をするために非常に時間と費用とがかかることとなるという問題がある。
【0007】また、原因を解析するに際して、異常発生品に異常が再現せず、発生原因が特定できない場合もあった。また、火災ガス漏れ警報器は天井面に近い場所に配置されることが一般的であるため、センサ等の故障時に電源灯であるLEDが点滅しても、一般の使用者は故障に気づかず故障が放置される恐れがある。
【0008】本発明は故障や誤警報の解析を容易且つ確実に行うことができる火災ガス漏れ警報器を提供することを目的とする。」(段落【0004】ないし【0008】)

イ.「【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図4は本発明に発明を実施する形態の一例である。図1は本例に係る火災ガス漏れ警報器の構成を示すブロック図、図2は本例に係る火災ガス漏れ警報器の外観を示す、図3及び図4は本例に係る火災ガス漏れ警報器の作動を示すフローチャートである。
【0024】火災ガス漏れ警報器10は、図1及び図2に示すように、1つの筐体中に火災センサ11、ガスセンサ12、電源回路部13、表示部14、音声出力部15、故障記録手段並びに状態記録手段である外部記録部16及び制御部20を備える。
【0025】火災センサ11は例えば熱センサや煙センサであり、必要に応じて適切な種類のものが用いられる。また、ガスセンサは例えば半導体ガスセンサでCH_(4)(メタン)やCOを検出するものである。電源回路部13は制御部20及び各センサ11,12、表示部14、音声出力部15、外部記録部16にそれぞれ必要な電圧の電力を供給する。
【0026】また各センサ11,12には各センサ11,12の故障を検知する故障検知手段(図示していない)が設けられている。さらに電源回路部13には各部に供給される電力の電圧が適正であるかを監視する電圧監視手段(図示していない)が設けられている。
【0027】さらに、表示部14は例えば4つのLEDを配置したものであり、それぞれ電源灯31、火災警告灯32、CH_(4)警告灯33、CO警告灯34として作動する。
【0028】音声出力部15は、ブザー、ベル、スピーカ等からなり、警告音、合成音声が出力される。
【0029】外部記録部16は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)で構成され、必要に応じてセンサの故障、電源故障、警報の状態が記録される。
【0030】制御部(CPU)20は、各センサ11,12からの出力及び故障検知手段、電圧監視手段からの故障出力を所定の閾値と比較して、火災警報信号、ガス漏れ警報、センサの故障警報、電圧異常警報を出力する故障出力判断部21と、各センサ11,12及び電源回路部13の電圧値を測定し、外部記録部16に上記各値の生データを記録する出力測定部22を備える。
【0031】また,制御部20は、上記故障出力判断部21の出力信号に基づいて上記表示部14のLEDを点灯、点滅させる警報表示制御部23と、上記音声出力部15に所定の音声、例えば警告音や合成音声を出力させる音声警報制御部24を備えている。なお、図中符号25は外部記録部16に時刻を出力し、何時何分何秒にデータが記録されたかを記録させる時間管理部である。」(段落【0023】ないし【0031】)

ウ.「【0037】次に図4に基づいて火災検出及びガス検出の処理を説明する。正常監視を行っているとき(SB1)、火災センサの出力値が閾値を越えると(SB2)火災警報表示及び火災警報音を出力して、同時に外部記録部16に2つのセンサ11,12の出力値、電源回路部の電圧の状態及び時刻を格納する(SB3)。
【0038】火災センサの出力値が閾値を越えないときは火災警報表示及び火災警報音を出力することなく、外部記録部16には何のデータも格納しない(SB4)でガスセンサの出力値を検出する。
【0039】そして、ガスセンサの出力値が閾値を越える(SB5)とガス警報表示及びガス警報音を出力して、同時に外部記録部16に2つのセンサ11,12の出力値、電源回路部の電圧の状態及び時刻を格納する(SB6)。
【0040】ガスセンサの出力値が閾値を越えないときはガス警報表示及びガス警報音を出力することなく、外部記録部16には何のデータも格納しない(SB7)で再度火災センサ11の出力値を検出してこの処理を繰り返す。
【0041】即ち、制御部20は、時間管理部25を参照することにより稼動時間を算出し、外部記録部16内に各センサの出力が閾値を越えた時刻と火災センサ、ガスセンサ(CO、CH_(4))、電源回路部の電圧値の生のアナログ値を記録する。火災またはガスの警報のうち、1種類でも警報が発生された時には、その時刻の他の2種類(他のセンサ及び電源回路部の電圧)がたとえ異常レベルまで到達していなくても)の生アナログ値を必ず記録するようにしている。これにより、各センサ11、12及び電源回路部の出力電圧に対して対比解析を行え、このような解析を行うことで、誤警報発生の原因の探索を迅速且つ正しく行えるのである。」(段落【0037】ないし【0041】)

エ.「【0057】このように本例によれば、故障警報及び表示により、故障の種類が判別することができるため、故障の解析を確実に且つ短時間で行うことができる。
【0058】また、外部記録部に記録されているデータにより故障の解析をおこなうことができ、故障の解析を確実に且つ短時間で行うことができる。
【0059】更に、実火災や実際のガス漏れ以外の理由で警報が発せられたような場合であっても、外部記録部に記録されているデータに基づいて警報発生の理由の解析を、確実に且つ短時間で行うことができる。」(段落【0057】ないし【0059】)

(2)引用文献の記載から分かること
上記(1)及び図面の記載から、下記の事項が分かる。

オ.上記ア.、ウ.及びエ.から、引用文献に記載された火災ガス漏れ警報器10は、誤警報発生の原因の解析を確実に行えるようにすることを課題としていることが分かる。

カ.上記ウ.及び図4から、正常監視中に、火災センサ11ないしガスセンサ12の出力値が閾値を超えると、火災ないしガス警報音を出力するとともに、火災センサ11及びガスセンサ12両方の出力値、電源回路部13の電圧の状態及び時刻を外部記録部16に格納し、誤警報発生の原因を解析することが記載されていることが分かる。また、外部記録部16に格納された情報を解析対象としていることから、火災ガス漏れ警報器10は、外部記録部16に格納された情報を、何らかの所定の出力手段に出力させる制御手段を備えていると考えるのが自然である。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)及び(2)並びに図1、2、4から、引用文献には以下の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているといえる。

「監視領域における火災及びガス漏れを検出して警報を行う火災ガス漏れ警報器10であって、
前記警報が発生されたときの、火災センサ11及びガスセンサ12両方の出力値、電源回路部13の電圧の状態及び時刻を記憶する外部記録部16と、
前記外部記録部16に記憶された前記火災センサ11及びガスセンサ12両方の出力値、電源回路部13の電圧の状態及び時刻に基づいて、前記火災センサ11及びガスセンサ12両方の出力値、電源回路部13の電圧の状態及び時刻を所定の出力手段に出力させる制御手段と、
を備える火災ガス漏れ警報器10。」

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「火災及びガス漏れ」は、その技術的意味からみて、本願発明における「異常発生」に相当し、以下同様に、「火災ガス漏れ警報器10」は「警報器」に、「外部記録部16」は「記憶手段」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「前記警報が発生されたときの、火災センサ11及びガスセンサ12両方の出力値、電源回路部13の電圧の状態及び時刻」は、本願発明における「前記警報の履歴に関する情報であって、前記警報が所定の警報停止操作により停止されたか否かを特定するための情報」に、「警報器の履歴情報」という限りにおいて相当する。

したがって、本願発明と引用文献記載の発明とは、
「監視領域における異常発生を検出して警報を行う警報器であって、
警報器の履歴情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記警報器の履歴情報に基づいて、前記警報器の履歴情報を所定の出力手段に出力させる制御手段と、
を備える警報器。」
である点で一致し、次の点において相違する。

<相違点>
本願発明においては、「警報器の履歴情報」が、「前記警報が発生されたときの、警報が所定の警報停止操作により停止されたか否かを特定するための情報」であるのに対し、引用文献記載の発明においては、「前記警報の履歴に関する情報であって、火災センサ11及びガスセンサ12両方の出力値、電源回路部13の電圧の状態及び時刻」である点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
上記相違点について検討する。
例えば、特開平11-283149号公報には、特に段落【0002】ないし【0006】、【0021】及び【0022】、【0034】及び【0035】並びに図面の記載からみて、防災端末器から受信した信号に加え、主音響停止スイッチなどのスイッチ操作がなされたことを示す情報も記憶しておき、後に画面に表示して確認することが記載されており、また、特開2001-143179号公報には、特に段落【0011】及び【0012】、【0029】及び【0030】、【0051】、【0084】、【0095】並びに図面の記載からみて、火災受信機と各端末機器との間の応答信号等の情報のほか、作業者等による各種スイッチ操作の情報を含め、火災受信機20の全ての動作に関する情報を履歴情報として記録し、後に解析できるようにすることが記載されている。
このように、警報器の技術分野においては、警報器が感知した情報の履歴に加えて、主音響停止スイッチによる警報停止操作といった、人が警報器に対して行った操作の履歴も記憶しておき、後に、解析ないし確認するために、適当な手段を用いて当該履歴を出力することは周知の技術である。当該周知の技術は、平成24年12月20日付けの拒絶理由通知書及び平成25年3月27日付け拒絶査定において、周知技術として示した「記憶手段は、警報の履歴に関する情報として、警報が所定の警報停止操作により停止されたか否かを特定するための情報を記憶し、制御手段は、警報が所定の警報停止操作により停止されたか否かを特定するための情報を出力手段に出力させる」技術(以下、「周知技術」という。)にほかならない。
そして、2.(2)オ.において指摘したとおり、引用文献記載の発明は、誤警報発生の原因の解析を確実に行えるようにすることを課題としており、当該課題は上記周知技術が解決する課題と共通している。したがって、引用文献記載の発明に、技術分野及び課題の共通する上記周知技術を適用することによって、相違点に係る本願発明の発明特定事項のように特定することは、当業者が容易になし得たことである。
さらに、本願発明の全体構成でみても、引用文献記載の発明及び上記周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものでもない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-27 
結審通知日 2014-03-04 
審決日 2014-03-17 
出願番号 特願2010-162936(P2010-162936)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷治 和文  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 加藤 友也
久島 弘太郎
発明の名称 警報器  
代理人 斉藤 達也  

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