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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02N
管理番号 1287406
審判番号 不服2013-13969  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-19 
確定日 2014-05-09 
事件の表示 特願2009-176374「エンジンのスタート・ストップスイッチ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月10日出願公開、特開2011- 27085〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本件出願は、平成21年7月29日の出願であって、平成24年10月3日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において同年9月10日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年11月8日に回答書が提出されたものである。


【2】平成25年7月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成25年7月19日付けの手続補正を却下する。


[理 由]
1.本件補正の内容
平成25年7月19日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年12月5日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1を、下記の(a)に示す請求項1へと補正するものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
スイッチケース(16,61)及びそのスイッチケース(16,61)に収容される可動部材(17,62)を有し該可動部材(17,62)の直線的な移動に応じてスイッチング態様を切換えるスイッチユニット(13,58)と、前端が閉じられた有底円筒状に形成されるとともに押圧操作に応じて前記可動部材(17,62)を駆動することを可能として該可動部材(17,62)に連結される押しボタン(14,59)と、携帯機(11)に内蔵されるトランスポンダ(12)に起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するコイルアンテナ(15,60)とを備え、前記携帯機(11)に内蔵される電池の電圧低下時には前記押しボタン(14,59)の近傍に前記携帯機(11)をかざすことで前記トランスポンダ(12)および車両間でのID信号の照合を行うことを可能としたエンジンのスタート・ストップスイッチ装置において、
前記スイッチケース(16,61)に結合したアンテナケース(22,66)に保持される前記コイルアンテナ(15,60)が、そのコイルアンテナ(15,60)の少なくとも一部を前記押しボタン(14,59)内に挿入するようにして、該押しボタン(14,59)と同軸に配置され、
前記可動部材(17,62)と前記押しボタン(14,59)との前記連結のために、前記押しボタン(14,59)には、前記可動部材(17,62)を相互間に挟むように並列配置されて該可動部材(17,62)にそれぞれ弾発、係合する一対の連結腕部(14f,59d)が一体に形成され、 前記一対の連結腕部(14f,59d)は、前記アンテナケース(22,66)に形成した一対の挿通孔(41)をそれぞれ通して該アンテナケース(22,66)内に挿入されて前記可動部材(17,62)にそれぞれ弾発、係合されることを特徴とするエンジンのスタート・ストップスイッチ装置。」(下線部は審判請求人が補正箇所を示したものである。)

(b)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
スイッチケース(16,61)及びそのスイッチケース(16,61)に収容される可動部材(17,62)を有し該可動部材(17,62)の直線的な移動に応じてスイッチング態様を切換えるスイッチユニット(13,58)と、前端が閉じられた有底円筒状に形成されるとともに押圧操作に応じて前記可動部材(17,62)を駆動することを可能として該可動部材(17,62)に連結される押しボタン(14,59)と、携帯機(11)に内蔵されるトランスポンダ(12)に起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するコイルアンテナ(15,60)とを備え、前記携帯機(11)に内蔵される電池の電圧低下時には前記押しボタン(14,59)の近傍に前記携帯機(11)をかざすことで前記トランスポンダ(12)および車両間でのID信号の照合を行うことを可能としたエンジンのスタート・ストップスイッチ装置において、
前記コイルアンテナ(15,60)が、その少なくとも一部を前記押しボタン(14,59)内に挿入するようにして、該押しボタン(14,59)と同軸に配置され、
前記可動部材(17,62)と前記押しボタン(14,59)との前記連結のために、前記押しボタン(14,59)には、前記可動部材(17,62)を相互間に挟むように並列配置されて該可動部材(17,62)にそれぞれ弾発、係合する一対の連結腕部(14f,59d)が一体に形成されることを特徴とするエンジンのスタート・ストップスイッチ装置。」


2.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関して、
本件補正前の「前記コイルアンテナ(15,60)が、その少なくとも一部を」を「前記スイッチケース(16,61)に結合したアンテナケース(22,66)に保持される前記コイルアンテナ(15,60)が、そのコイルアンテナ(15,60)の少なくとも一部を」と補正して、「コイルアンテナ(15,60)」の位置関係を限定し、
また、「一対の連結腕部(14f,59d)」における他部材との関連について「前記一対の連結腕部(14f,59d)は、前記アンテナケース(22,66)に形成した一対の挿通孔(41)をそれぞれ通して該アンテナケース(22,66)内に挿入されて前記可動部材(17,62)にそれぞれ弾発、係合される」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、
請求項1に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


3.本件補正の適否の判断(独立特許要件)
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

3-1.引用文献記載の発明及び技術
3-1-1.引用文献1記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-314806号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
対象物に設けられた作動部を駆動させる操作スイッチを備え、前記対象物とは別体なる携帯機に設けられたトランスポンダから送信されるトランスポンダ信号に含まれるIDコードが、予め設定されているIDコードと一致したことを条件として、前記操作スイッチによる操作が有効化されるスイッチ装置において、
前記トランスポンダに起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するコイルアンテナを、前記操作スイッチの外縁に沿って配置したことを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
対象物に設けられた作動部を駆動させる操作スイッチと、
前記対象物の周辺の所定領域にリクエスト信号を出力するリクエスト信号出力手段と、
前記リクエスト信号出力手段からのリクエスト信号を受信することに応答してIDコードを含むIDコード信号を出力する携帯機と、
前記携帯機からのIDコード信号に含まれるIDコードと予め設定されたIDコードとを照合し、それらIDコード同士が一致しているか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段によってIDコード同士が一致していると判定されたとき前記操作スイッチによる操作を有効化する第1制御手段と、
前記携帯機に設けられたトランスポンダから送信されるトランスポンダ信号に含まれるIDコードが予め設定されたIDコードと一致しているか否かを判定する第2判定手段と、
前記第2判定手段によってIDコード同士が一致していると判定されたとき前記操作スイッチによる操作を有効化する第2制御手段とを備えたセキュリティシステムにおいて、
前記トランスポンダに起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するコイルアンテナを、前記操作スイッチの外縁に沿って配置したことを特徴とするセキュリティシステム。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対象物に設けられた作動部を駆動させる操作スイッチを備えるスイッチ装置、セキュリティシステム及びスイッチ操作方法に関するものである。」(段落【0001】)

(ウ)「【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両への搭載スペースを小さくすることができるとともに、製造コストを低減することができるスイッチ装置を提供することにある。」(段落【0007】)

(エ)「【0015】
図1に示すように、セキュリティシステム1は、車両2に搭載された車両側制御装置10と、車両2とは別体の携帯機20とから構成されている。前記携帯機20は、車両2の所有者に所持されるものである。
【0016】
車両側制御装置10は、車両側送信回路13、車両側受信回路14、トランスポンダ信号送受信回路15を備え、それらは車両側マイコン12に接続されている。車両側送信回路13には送信アンテナ13aが接続され、トランスポンダ信号送受信回路15には、送受信アンテナとしてのコイルアンテナ17が接続されている。車両側受信回路14には、携帯機20からのIDコード信号を受信する受信アンテナ14aが接続されている。
【0017】
車両側制御装置10は、リクエスト信号出力手段としての車両側マイクロコンピュータ(以下、単に車両側マイコンと言う)12を備え、車両側マイコン12は携帯機20に対してリクエスト信号を送信する。車両側マイコン12に設けられたメモリには、所有者の車両ごとに割り当てられた固有のIDコードが記憶されている。
【0018】
車両側送信回路13は、車両側マイコン12から間欠的に出力されるリクエスト信号を所定周波数の電波に変換し、送信アンテナ13aを介して車両2内部の所定領域に送信する。また、トランスポンダ信号送受信回路15は、車両側マイコン12から出力されるトランスポンダ駆動信号を所定周波数の電波に変換してトランスポンダ駆動電波を生成し、コイルアンテナ17を介して車室内の所定領域に送信する。
【0019】
車両側受信回路14は、携帯機20からのIDコード信号をパルス信号に復調して受信信号を生成し、その受信信号を車両側マイコン12へ出力する。トランスポンダ信号送受信回路15は、携帯機20からのトランスポンダ信号をパルス信号に復調して受信信号を生成して車両側マイコン12へ出力する。
【0020】
車両側マイコン12の入力側には、車室内に設けられた操作スイッチとしてのイグニッションスイッチ30が電気的に接続されている。車両側マイコン12の出力側には、エンジン始動装置18が電気的に接続されている。エンジン始動装置18は、始動信号が入力されたとき作動部としてのエンジンを自動的に始動させる装置である。
【0021】
第1判定手段としての車両側マイコン12は、予めメモリに記憶されたIDコードと、携帯機20から送信されるデータ信号としてのIDコード信号に含まれるIDコードとを照合し、それらIDコード同士が一致しているか否かを判定する。IDコード同士が一致していると判定されたとき、第1制御手段としての車両側マイコン12は、イグニッションスイッチ30からオン信号又はオフ信号が入力されると、エンジン始動装置18に始動信号又は停止信号を出力し、イグニッションスイッチ30による操作が有効化する。ここで、イグニッションスイッチ30による操作を有効化するとは、同イグニッションスイッチ30をプッシュ操作することにより、停止中である車両2のエンジンの駆動、或いは駆動中であるエンジンの停止が可能となることをいう。」(段落【0015】ないし【0021】)

(オ)「【0027】
携帯機20は、トランスポンダ25を備えている。このトランスポンダ25は、携帯機側マイコン22の電源である電池が消耗した場合の非常手段として使用されるものである。トランスポンダ25は、所有者の車両2とそれ以外の車両とを識別可能な固有のトランスポンダコードを含むトランスポンダ信号を車両側制御装置10に送信可能となっている。車両側制御装置10は、所定の条件により電磁界としてのトランスポンダ駆動電波を発生させ、この電磁界が生じている通信エリア内にトランスポンダ25が配置されると、トランスポンダ25に設けられたコイルに起電力が発生する。そして、トランスポンダ25からトランスポンダコードを含むトランスポンダ信号が送信される。」(段落【0027】)

(カ)「【0028】
図2に示すように、車室内の運転席前方には、前記イグニッションスイッチ30の操作ボタン36が、インストルメントパネル3に配設されている。イグニッションスイッチ30は、操作ボタン36をプッシュ操作することにより交互にオン・オフされる。
【0029】
図3、図4に示すように、スイッチ装置35は、イグニッションスイッチ30とベゼル33とスイッチホルダ34とから構成されており、ベゼル33の外端面とイグニッションスイッチ30の操作ボタン36とが露出するようにインストルメントパネル3の内側に配設されている。
【0030】
イグニッションスイッチ30は、略円筒状に形成されたベゼル33の内側に収容配置されている。このベゼル33は樹脂から形成されており、ベゼル33の表面には装飾めっきが施されている。ベゼル33の外端部33aは外側に折曲されており、その折曲部分がスイッチホルダ34の外端面34aに係止されている。
【0031】
スイッチホルダ34は、イグニッションスイッチ30の操作ボタン36が嵌め込まれる円環状の嵌込み部40を備え、この嵌込み部40にはコイルアンテナ17が埋設されている。コイルアンテナ17は、イグニッションスイッチ30の操作ボタン36の外縁に沿って配置されるとともに、その中心線C2がイグニッションスイッチ30の軸線C1とほぼ同一線上になるように配置されている。このコイルアンテナ17からはトランスポンダ駆動電波が、イグニッションスイッチ30の操作ボタン36付近に形成される通信可能領域に出力されている。この通信可能領域に携帯機20のトランスポンダ25を配置することで、トランスポンダ25に設けられたコイルに起電力が発生する。」(段落【0028】ないし【0031】)

(キ)「【0034】
続いて、エンジンを始動させるための一連の動作を、図1、図4に従って説明する。
通常時、携帯機20を所持する所有者が、車両2内部の所定領域内に侵入すると、車両側制御装置10から出力されるリクエスト信号に応答して、携帯機20からIDコード信号が自動送信される。車両2側では、車両側制御装置10が携帯機20から送信されたIDコード信号を受信し、車両側マイコン12がID照合を行い、そのID照合の結果に基づいて、エンジン始動装置18に始動信号又は停止信号を出力するか否かを判定する。そして、IDコード同士が一致していると判定されたとき、イグニッションスイッチ30による操作が有効化される。この場合、イグニッションスイッチ30からオン信号が入力されると、エンジン始動装置18に始動信号が出力され、停止中である車両2のエンジンが駆動される。或いは、イグニッションスイッチ30からオフ信号が入力されると、駆動中である車両2のエンジンが停止する。
【0035】
しかし、携帯機20の電池の電圧低下等が生じ、携帯機20からIDコード信号が自動送信されなくなった場合に、所有者は、イグニッションスイッチ30の操作ボタン36に携帯機20を突き当て、その状態で操作ボタン36をプッシュ操作する。このとき、携帯機20に設けられたトランスポンダ25が、コイルアンテナ17から出力されたトランスポンダ駆動電波の通信エリア内に配置されている。このため、トランスポンダ駆動電波によって、トランスポンダ25内のコイルに起電力が発生し、携帯機20からトランスポンダコードを含むトランスポンダ信号が車両側制御装置10に送信される。
【0036】
携帯機20から送信されたトランスポンダ信号が車両側制御装置10に入力されると、車両側マイコン12はトランスポンダコードの照合を行い、そのID照合の結果に基づいて、エンジン始動装置18に始動信号又は停止信号を出力するか否かを判定する。そして、トランスポンダコード同士が一致していると判定されたとき、イグニッションスイッチ30による操作が有効化され、停止中である車両2のエンジンが駆動、或いは駆動中である車両2のエンジンが停止する。」(段落【0034】ないし【0036】)

(ク)「【0037】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)コイルアンテナ17の内縁に沿って、イグニッションスイッチ30の操作ボタン36が配置されている。このため、コイルアンテナ17の内部のスペースを有効に利用して、イグニッションスイッチ30を効率良く配置することができる。よって、イグニッションスイッチ30とコイルアンテナ17とが占有するスペースを小さくすることができる。従って、スイッチ装置35の車両2への搭載スペースを小さくすることができ、また、運転席から見た場合に、スイッチ装置35の見栄えを良くすることもできる。しかも、所有者は、イグニッションスイッチ30の操作ボタン36の付近に携帯機20を突き当てるだけで、携帯機20に設けられたトランスポンダ25に起電力を発生させることができる。このため、トランスポンダ信号による車両側制御装置10との相互通信が可能となり、イグニッションスイッチ30による操作を有効化させることができる。よって、従来のように、携帯機20を保持する保持機構が必要なくなり、その分、部品点数を大幅に減らすことができる。従って、製造コストを低減することができる。
【0038】
(2)スイッチ装置35は、イグニッションスイッチ30とベゼル33とスイッチホルダ34とが組み付けられることにより一体化した状態で、インストルメントパネル3の内側に配設されている。このため、スイッチ装置35の小型化を達成することができ、車両2への搭載スペースをより一層小さくすることができる。」(段落【0037】及び【0038】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(ク)及び図面の記載からみて、次のことが分かる。

(ケ)上記(1)の(ア)、(イ)及び(エ)ないし(カ)並びに図1ないし4の記載からみて、スイッチ装置35は、イグニッションスイッチ30、ベゼル33、操作ボタン36、コイルアンテナ17及びスイッチホルダ34等を備えているもので、エンジンに用いられるものであることが分かる。
そして、前記イグニッションスイッチ30には、前記操作ボタン36の押圧操作に応じて可動する部材(以下、「イグニッションスイッチ30の可動部材」という。)があることは明らかであり、前記「イグニッションスイッチ30及びベゼル33」は、ベゼル33及びそのベゼル33に収容されるイグニッションスイッチ30の可動部材を有し該イグニッションスイッチ30の可動部材の直線的な移動に応じてスイッチング態様を切換えるものといえる。
また、前記操作ボタン36は、前端が閉じられた有底円筒状に形成されるとともに押圧操作に応じて前記イグニッションスイッチ30の可動部材を駆動することを可能として該イグニッションスイッチ30の可動部材に連結されるものといえる。
さらに、コイルアンテナ17は、携帯機20に内蔵されるトランスポンダ25に起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するものといえる。

(コ)上記(1)の(ア)、(エ)、(オ)、(キ)及び上記(ケ)並びに図1及び4の記載からみて、スイッチ装置35は、携帯機20に内蔵される電池の電圧低下時には操作ボタン36の近傍に前記携帯機20をかざすことでトランスポンダ25及び車両2間でのIDコード信号の照合を行うことを可能としているといえる。

(サ)上記(1)の(ア)、(カ)、(ク)及び上記(ケ)並びに図4の記載からみて、コイルアンテナ17は、ベゼル33に結合したスイッチホルダ34に保持されており、また、操作ボタン36と同軸に配置されるものであることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ベゼル33及びそのベゼル33に収容されるイグニッションスイッチ30の可動部材を有し該イグニッションスイッチ30の可動部材の直線的な移動に応じてスイッチング態様を切換えるイグニッションスイッチ30及びベゼル33と、前端が閉じられた有底円筒状に形成されるとともに押圧操作に応じて前記イグニッションスイッチ30の可動部材を駆動することを可能として該イグニッションスイッチ30の可動部材に連結される操作ボタン36と、携帯機20に内蔵されるトランスポンダ25に起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するコイルアンテナ17とを備え、前記携帯機20に内蔵される電池の電圧低下時には前記操作ボタン36の近傍に前記携帯機20をかざすことで前記トランスポンダ25および車両2間でのIDコード信号の照合を行うことを可能としたエンジンのスイッチ装置35において、
前記ベゼル33に結合したスイッチホルダ34に保持される前記コイルアンテナ17が、該操作ボタン36と同軸に配置されるエンジンのスイッチ装置35。」

3-1-2.引用文献2記載の技術
(1)本件出願の出願前に頒布された刊行物である国際公開第2007/120635号(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、翻訳にあたっては、引用文献2のパテントファミリーである特表2009-533277号公報を参照した。

(ア)「[0002] Some embodiments of the invention …(中略)… to start the powersports vehicle.

[0003] Embodiments of the invention …(中略)…to start the powersports vehicle. 」(本文段落[0002]及び[0003])

〈当審仮翻訳〉
「[0002] 本発明のいくつかの実施形態は、モータスポーツ車両の点火システムとともに使用するための、トランスポンダ認証システムを提供する。トランスポンダ認証システムは、トランスポンダを有する操作者用装置と、モータスポーツ車両に結合されたアンテナとを備えることができる。アンテナは、電界を発生することができる。トランスポンダ認証システムはまた、アンテナおよび点火スイッチに電気的に接続された、認証システムを備えることができる。トランスポンダ認証システムはまた、点火スイッチに結合されたボタンを備えることができる。トランスポンダは、電界が存在するとき、信号を受信および送信することができる。操作者がボタンを押すと、認証システムは、モータスポーツ車両を始動させるために信号を認証することができる。

[0003] 本発明の実施形態は、モータスポーツ車両を始動させる方法を提供する。この方法は、トランスポンダを備える操作者用装置を、モータスポーツ車両に結合されたアンテナにより発生される電界内に位置決めするステップを含むことができる。この方法はまた、モータスポーツ車両を始動させるために、ボタンを押すステップと、点火スイッチを作動させるステップと、電界が存在するときに、信号をトランスポンダへと、かつトランスポンダから送信するステップと、信号を認証するステップとを含むことができる。」

(イ)「[0020] FIGS. 2-7 illustrate a transponder authorization system 100 …(中略)… to the switch assembly 142.」(本文段落[0020])

〈当審仮翻訳〉
「[0020] 図2?図7は、本発明の一実施形態による、トランスポンダ認証システム100を示す。図2?図4に示すように、トランスポンダ認証システム100は、フォブ114(トランスポンダ120を備える)、ボタン136、取付けブラケット138、取付けリング139、シリンダ140、およびスイッチアセンブリ142を備えることができる。ボタン136は、可撓性カバー144(たとえばウレタンで構築される)を備えることができる。しかし、別の実施形態では、カバー144は、剛性材料で構築することができる。取付けブラケット138およびカバー144が除かれた図6に示すように、アンテナ128は、シリンダ140の一部の周りに巻き付けることができる。同様に図6に示すように、スイッチアセンブリ142は、シリンダ140の凹部148内に位置決めすることができるスイッチ146を備えることができる。操作者が可撓性カバー144に接触するときに、スイッチ146を作動させることができるように、スイッチ146を、可撓性カバー144の下に位置決めすることができる。スイッチ146は、弾性的および/または機械的に、スイッチアセンブリ142に結合させることができる。」

(ウ)「[0022] As shown in FIG. 3 A and 3B, an operator …(中略)… the button 136 with his finger.」(本文段落[0022])

〈当審仮翻訳〉
「[0022] 図3Aおよび図3Bに示すように、操作者は、フォブ114を、ボタン136のカバー144に押しつけることができる。この位置でフォブ114は、アンテナ128により発生される電界内にあり、フォブ114のトランスポンダ120は、信号を受信および送信することができる。操作者がフォブ114をボタン136に押しつけるとき、カバー144は撓んで、(フォブ114からの信号が認証された場合)車両を始動させるためにスイッチ146を作動させることができる。あるいは操作者は、(トランスポンダ120を電界内にするために)フォブ114をアンテナ128付近で保持することができ、次いでボタン136を指で押すことができる。」

(エ)「[0031] In one embodiment, the control circuit 170 …(中略)…the switch 146 is released.

[0032] Once the wake-up signal …(中略)… to the main processor 172. 」(本文段落[0031]及び[0032])

〈当審仮翻訳〉
「[0031] 一実施形態では、制御回路170は、一般に、以下のように動作することができる。操作者がボタン136を押す前は、制御回路170は、モータスポーツ車両の電池から基本的に電力を受け取らないことができる。操作者は、スイッチ146を作動させるために、(フォブ114を用いて、指を用いて、またはトランスポンダを備える手袋の指を用いて)ボタン136を押すことができる。スイッチ146からの起動信号は、電源ラッチング回路190を作動させることができる。これは、電圧源回路200を介して、主プロセッサ172およびトランシーバ回路182への電源をオンにすることができる。起動信号は、結線189、ダイオードD4、および結線194を介して、主プロセッサ172に送信することができる。主プロセッサ172は、起動信号が有効であるかどうかを判定し電源ラッチング回路190をオン状態にラッチするために、起動信号をデバウンスすることができる。このプロセスは、スイッチ146が解除されるときに、制御回路170の電源をオンに維持することができる。

[0032] 起動信号が受信されると、主プロセッサ172は、RFID信号を、結線181を介してトランシーバ回路182に、かつ結線186およびワイヤハーネスを介してアンテナ128に、送信することができる。アンテナ128は、RF電界を発生することができる。トランスポンダ120がアンテナの電界の距離範囲内にある場合(たとえばフォブ114がボタン136に押しつけられる場合、フォブ114が取付けブラケット139内に保管される場合、または別のやり方でトランスポンダがアンテナ128の距離範囲内にある場合)に、RF電界は、フォブ114または別の操作者用装置の、トランスポンダ120を励起することができる。励起されたトランスポンダ120は、アンテナ128が受信することができる識別コードを伴う、RFID信号を送信することができる。識別コードを伴うRFID信号は、結線188、トランシーバ回路182、および結線183を介して、主プロセッサ172に送信し返すことができる。主プロセッサ172は、識別コードが、主プロセッサ172のメモリに記憶されたような、または主プロセッサ172に接続されたメモリに記憶されたような、車両の認証コードと一致するかどうかを判定することができる。」

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(エ)及び図面の記載からみて、次のことが分かる。

(オ)上記(1)の(ア)ないし(ウ)並びに図2、3A及び3Bの記載からみて、トランスポンダ認証システム100は、フォブ114(トランスポンダ120を備える)、ボタン136、取付けブラケット138、取付けリング139、シリンダ140、スイッチアセンブリ142及びアンテナ128等を備えているスイッチの装置(以下、「スイッチ装置」という。)といえる。当該スイッチ装置は、モータスポーツ車両の点火システムとともに使用するためのものであるから、エンジンのスイッチ装置といえる。
そして、前記ボタン136は、前端が閉じられた有底円筒状に形成されるものであることが分かる。
また、アンテナ128は、フォブ114に内蔵されるトランスポンダ120に起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するものといえる。

(カ)上記(1)の(イ)ないし(エ)並びに図2、3A、3B及び8の記載からみて、前記スイッチ装置は、フォブ114に内蔵される電池の電圧低下時にはボタン136の近傍に前記フォブ114をかざすことでトランスポンダ120及び車両間での識別コードを伴うRFID信号の照合を行うことを可能としたものといえる。

(キ)上記(1)の(イ)及び(ウ)並びに図2及び3Bの記載からみて、アンテナ128は、そのアンテナ128をボタン136内に挿入するようにして、該ボタン136と同軸に配置されるものといえる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。

「前端が閉じられた有底円筒状に形成されるボタン136と、フォブ114に内蔵されるトランスポンダ120に起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するアンテナ128とを備え、前記フォブ114に内蔵される電池の電圧低下時には前記ボタン136の近傍に前記フォブ114をかざすことで前記トランスポンダ120および車両間での識別コードを伴うRFID信号の照合を行うことを可能としたエンジンのスイッチ装置において、
前記アンテナ128が、そのアンテナ128を前記ボタン136内に挿入するようにして、該ボタン136と同軸に配置される技術。」

3-2.対比
本件補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「ベゼル33」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「スイッチケース」に相当し、以下同様に、「イグニッションスイッチ30の可動部材」は「可動部材」に、「イグニッションスイッチ30及びベゼル33」は「スイッチユニット」に、「操作ボタン36」は「押しボタン」に、「携帯機20」は「携帯機」に、「トランスポンダ25」は「トランスポンダ」に、「コイルアンテナ17」は「コイルアンテナ」に、「車両2」は「車両」に、「IDコード信号」は「ID信号」に、「エンジンのスイッチ装置35」は「エンジンのスタート・ストップスイッチ装置」に、「スイッチホルダ34」は「アンテナケース」に、それぞれ相当する。

したがって、本件補正発明と引用文献1記載の発明は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>及び<相違点2>で相違する。

<一致点>
「スイッチケース及びそのスイッチケースに収容される可動部材を有し該可動部材の直線的な移動に応じてスイッチング態様を切換えるスイッチユニットと、前端が閉じられた有底円筒状に形成されるとともに押圧操作に応じて前記可動部材を駆動することを可能として該可動部材に連結される押しボタンと、携帯機に内蔵されるトランスポンダに起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するコイルアンテナとを備え、前記携帯機に内蔵される電池の電圧低下時には前記押しボタンの近傍に前記携帯機をかざすことで前記トランスポンダおよび車両間でのID信号の照合を行うことを可能としたエンジンのスタート・ストップスイッチ装置において、
前記スイッチケースに結合したアンテナケースに保持される前記コイルアンテナが、該押しボタンと同軸に配置されるエンジンのスタート・ストップスイッチ装置。」

<相違点1>
コイルアンテナが押しボタンと同軸に配置される位置関係に関し、
本件補正発明においては、「そのコイルアンテナの少なくとも一部を押しボタン内に挿入するようにして」いるのに対し、
引用文献1記載の発明においては、そのような位置関係ではない点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
可動部材と押しボタンとの連結のための構造に関し、
本件補正発明においては、「押しボタンには、可動部材を相互間に挟むように並列配置されて該可動部材にそれぞれ弾発、係合する一対の連結腕部が一体に形成され、前記一対の連結腕部は、アンテナケースに形成した一対の挿通孔をそれぞれ通して該アンテナケース内に挿入されて前記可動部材にそれぞれ弾発、係合される」のに対し、
引用文献1記載の発明においては、「イグニッションスイッチ30の可動部材〈可動部材〉」と「操作ボタン36〈押しボタン〉」との連結のための構造が不明である点(以下、「相違点2」という。なお、〈 〉内に本件補正発明における発明特定事項を示す。)。

3-3.判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
(ア)本件補正発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、引用文献2記載の技術における「ボタン136」は、その機能、形状、構造又は技術的意義からみて、本件補正発明における「押しボタン」に相当し、以下同様に、「フォブ114」は「携帯機」に、「トランスポンダ120」は「トランスポンダ」に、「アンテナ128」は「コイルアンテナ」に、「識別コードを伴うRFID信号」は「ID信号」に、「エンジンのスイッチ装置」は「エンジンのスタート・ストップスイッチ装置」に、それぞれ相当する。
また、引用文献2記載の技術における「アンテナ128をボタン136内に挿入する」は、その技術的意義からみて、本件補正発明における「コイルアンテナの少なくとも一部を押しボタン内に挿入する」に包含される。

(イ)したがって、引用文献2記載の技術を本件補正発明における用語を用いて記載すると、
「前端が閉じられた有底円筒状に形成される押しボタンと、携帯機に内蔵されるトランスポンダに起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するコイルアンテナとを備え、前記携帯機に内蔵される電池の電圧低下時には前記押しボタンの近傍に前記携帯機をかざすことで前記トランスポンダおよび車両間でのID信号の照合を行うことを可能としたエンジンのスタート・ストップスイッチ装置において、
前記コイルアンテナが、そのコイルアンテナを前記押しボタン内に挿入するようにして、該押しボタンと同軸に配置される技術。」
となる。

(ウ)また、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の技術とは、両者とも「エンジンのスタート・ストップスイッチ装置」の技術分野に属するものであり、しかも、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の技術とを本件補正発明における用語を用いて記載したときに、
「前端が閉じられた有底円筒状に形成される押しボタンと、携帯機に内蔵されるトランスポンダに起電力を発生させるためのトランスポンダ駆動電波を出力するコイルアンテナとを備え、前記携帯機に内蔵される電池の電圧低下時には前記押しボタンの近傍に前記携帯機をかざすことで前記トランスポンダおよび車両間でのID信号の照合を行うことを可能としたエンジンのスタート・ストップスイッチ装置において、
前記コイルアンテナが、該押しボタンと同軸に配置される」
という点でも共通するものである。

(エ)さらに、引用文献1には、スイッチ装置の車両への搭載スペースを小さくするという課題が記載されており(上記3-1-1.(1)(ウ)参照。)、また、エンジンのスイッチ装置において、車両への搭載時の省スペース化を図ることは、従来からの普遍的課題でもある。

(オ)そうすると、引用文献1記載の発明において、省スペース化のために、引用文献2記載の技術を適用し、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
前端が閉じられた有底円筒状に形成されるとともに押圧操作に応じて可動部材を駆動することを可能として該可動部材に連結される押しボタンを備えたスイッチ装置において、前記可動部材と前記押しボタンとの連結のために、前記押しボタンには、前記可動部材を相互間に挟むように並列配置されて該可動部材にそれぞれ弾発、係合する一対の連結腕部が一体に形成されるようにすることは、従来周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、原査定において例示された特開2003-51225号公報の特に、段落【0002】ないし【0011】及び図5、同様に、原査定において例示された実願昭62-126322号(実開昭64-31634号)のマイクロフィルムの特に、明細書第3ページ第8ないし11行及び第5ページ第2ないし19行並びに第1図、同様に、原査定において例示された特開昭63-143714号公報の特に、第2ページ右下欄第6行ないし第3ページ右上欄第11行並びに第1及び2図参照。)である。
また、一対の連結腕部が一体に形成された押しボタンを備えたスイッチ装置において、前記一対の連結腕部は、所定の部材に形成した一対の挿通孔をそれぞれ通して該所定の部材内に挿入されるようにすることは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得る設計上の事項(以下、「設計事項」という。必要があれば、例えば、実願昭63-68930号(実開平2-123号)のマイクロフィルムの特に、明細書第5ページ第19行ないし第6ページ第12行並びに第一ないし三図参照。)にすぎない。
そうすると、引用文献1記載の発明において、「イグニッションスイッチ30の可動部材〈可動部材〉」と「操作ボタン36〈押しボタン〉」との連結のために、上記周知技術を採用し、その際、上記設計事項を考慮することにより「イグニッションスイッチ30の可動部材〈可動部材〉」と「操作ボタン36〈押しボタン〉」との間のスイッチホルダ34〈アンテナケース〉に一対の挿通孔を形成して、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである(なお、〈 〉内に本件補正発明における発明特定事項を示す。)。

(3)また、本件補正発明は、全体として検討してみても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

3-4.まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


【3】本件発明について
1.本件発明の内容
平成25年7月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし3に係る発明は、平成24年12月5日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、単に「本件発明」という。)は、前記【2】の[理 由]の1.(b)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。


2.引用文献記載の発明及び技術
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2004-314806号公報)の記載事項及び引用文献1記載の発明並びに原査定の拒絶理由に引用された引用文献2(国際公開第2007/120635号)の記載事項及び引用文献2記載の技術は、前記【2】の[理 由]3-1-1.(1)ないし(3)及び3-1-2.(1)ないし(3)のそれぞれに記載したとおりである。


3.対比・判断
本件発明は、実質的に、前記【2】で検討した本件補正発明における発明特定事項の一部を省いたものに相当する。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記【2】の[理 由]3.の3-1.ないし3-4.に記載したとおり、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明は、全体として検討してみても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-28 
結審通知日 2014-03-05 
審決日 2014-03-25 
出願番号 特願2009-176374(P2009-176374)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02N)
P 1 8・ 121- Z (F02N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 一雄  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 柳田 利夫
金澤 俊郎
発明の名称 エンジンのスタート・ストップスイッチ装置  
代理人 落合 健  
代理人 仁木 一明  
代理人 ▲ぬで▼島 愼二  

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