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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1288024
審判番号 不服2011-21850  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-07 
確定日 2014-06-09 
事件の表示 特願2001-550631「ウェブ上の情報源およびサービスにアクセスする方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月12日国際公開、WO01/50341、平成15年11月25日国内公表、特表2003-535388〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,1999年12月30日(以下「優先日」という。)のフランス国への出願を基礎とするパリ条約による優先権主張をともない,
2000年12月29日を国際出願日とする出願(国際出願番号:PCT/FR00/03759)であって,
平成14年7月1日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出されるとともに,特許法第184条の4第1項の規定による明細書,図面,要約書の翻訳文,及び特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され,
平成19年12月28日付けで審査請求がなされ,
平成22年9月13日付けで拒絶理由通知(同年同月21日発送)がなされ,
平成23年3月18日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,
同年5月31日付けで拒絶査定(同年6月7日謄本送達)がなされ,
同年10月7日付けで審判請求がされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,
平成24年1月4日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ,
同年5月23日付けで当該報告に対する意見を求める旨の審尋(同年同月29日発送)がなされ,
同年8月29日付けで回答書の提出があったものである。


2.本願発明

本願の請求項1に係る発明は,平成23年10月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである。(以下「本願発明」という。)

「通信ネットワークを介してインターネットに接続された通信装置からウェブ上の情報源およびサービスにアクセスする方法であって:
-ツリー状メニュー構造の中に構築され前記通信装置の中にローカル的に予め記憶された複数の選択ページ(各選択ページは1組のアイコンを有する)のうちの一の選択ページを表示する一以上の段階と,
-表示中の選択ページ内の一のアイコンの選択に応じて,選択された当該アイコンに対応する情報源のアドレスを通信ネットワークに発信する段階,
とを包含し,
その特徴は,各選択ページ毎に,前記1組のアイコンは遠隔情報源に直接アクセスするための一以上のアイコン,および,前記ツリー状メニュー構造の中の他の選択ページにローカル的にアクセスするための一以上の選択用アイコンを有し,
前記遠隔情報源は表示段階および選択段階の際にローカル的に生成されたアドレスを有することからなる方法。」

3.先行技術

3.1 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布され,原審の拒絶の査定の理由である平成22年9月13日付けの拒絶理由通知で引用された,特開平11-259496号公報(平成11年9月24日公開,以下,「引用文献」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A「【0003】それぞれのブラウザにおいて,頻繁に使用するホームページについては,URL(Uniform Resource Locator)を「ブックマーク」(Netscape)や「お気に入り」(IE)として登録することにより,以後容易に呼び出してアクセスが可能となる。また,IEにはブックマークのインポート機能があり,インストール時にはNetscapeのブックマークを取り込むこともできる。」

B「【0012】図1は,本発明の一実施形態であるWWWブラウザ間のブックマーク統一管理方法を実施するインターネット・イントラネットシステムの構成を示した例である。図1に示すように,本実施形態のインターネット・イントラネットシステムは,複数のユーザ端末1,2と,各ユーザ端末と接続するLAN回線14と,インターネット15と,それらLAN回線14とインターネット15の接続を行うためのルータ16とから構成される。
【0013】ユーザ端末1にはブラウザA11,ブラウザB12の複数のブラウザと,各ブラウザのブックマークの統一管理を行うブックマーク統一管理プログラム13とが格納され,ユーザ端末2ではブラウザA11とブックマーク統一管理プログラム13とが格納されている。また,ユーザ端末1には共有ブックマークファイル17をハードディスク上に設定し,ブラウザA11とブラウザB12の共有ファイルとしている。
【0014】そして,各ユーザ端末1,2にセットアップされているブラウザA11あるいはブラウザB12から,LAN回線14およびルータ16を経由しインターネット15上のホームページにアクセスする接続形態となっている。」

C「【0015】ユーザは複数のブラウザで頻繁に使いそうなホームページが見つかった時には,各ブラウザA11,B12の操作方法によってそのURLをブックマークに登録する操作を行うが,その情報はブラウザ起動時にPlug-Inとして読み込まれるブックマーク統一管理プログラム13により,共有ブックマークファイル17に登録される。そのブックマークファイル17に登録された情報は,ブラウザA11,B12からは勿論,ユーザ端末1,2のどちらからも参照・更新ができ,統一されたブックマーク管理が可能となる。
【0016】次に,上述したブックマーク統一管理プログラム13と共有ブックマークファイル17とについて図2を用いて説明する。なお,本実施形態では,上述した二つのブラウザA11,B12を用いたものを取り挙げ,それぞれブラウザA11のURL登録ファイルであるブックマークファイルは,HTMLリンク形式で示したBookmark.htmファイルを用い,ブラウザB12ではインターネットのショートカット形式で示したFavoritesファイルを用いるとして説明する。
【0017】ブックマーク統一管理プログラム13は,図2に示すように,ブラウザを起動している間にバックグラウンドで起動され,ブラウザの独自のURL登録ファイル22,23内における,共有利用ブックマーク登録部21a,21bにURLが登録されるという指示を受けると,ブラウザ独自のブックマークへの登録されたアクセスデータを,テキスト形式など(このデータ形式は,テキスト形式に限らず,システム設計時に最適な形式に決定する)へのデータ変換を行い,共有ブックマークファイル17として登録する。」

D「【0019】各ブラウザA11,B12が共有利用ブックマーク登録部21a,21bにアクセスする場合には,ブックマーク統一管理プログラム13によりブラウザは独自のURL登録ファイル22,23にはアクセスされず,共有ブックマークファイル17へアクセスすることとなる。
【0020】共有ブックマークファイル17からURLを取得するときは,ブックマーク統一管理プログラム13により,各ブラウザA11,B12の登録形式に変換し,各ブラウザA11,B12に表示する。例えば,ブラウザA11の場合は,テキスト形式からHTMLリンク形式に変換される。この変換は,例えば図3に示すように,ブラウザ種別31と登録形式32とから構成される変換テーブル30を設け,それを用いて行う。」

E「【0021】次に,上述したブックマーク統一管理プログラム13の処理について図4を用いて説明する。
【0022】ブックマーク統一管理プログラム13は,図4に示すように,まず,ユーザが使用しているブラウザ種別を取得する(ステップ401)。
【0023】ブラウザA11,またはB12から共有利用ブックマーク登録部21a,または21bにURL登録指示がなされた場合(ステップ402),取得したブラウザ種別と図3に示す変換テーブル30を基に登録するURLをテキスト形式に変換し(ステップ403),共有ブックマークファイル17に格納する(ステップ404)。例えば,ブラウザA11が使用されている場合はHTMLリンク形式からテキスト形式に,ブラウザB12の場合はインターネットショートカット形式からテキスト形式にデータ変換して,共有ブックマークファイル17に格納する。
【0024】共有利用ブックマーク登録部21a,または21bの表示指示がなされた場合(ステップ405),共有ブックマークファイル17の登録URLの一覧を表示し(ステップ406),ユーザが指定したURLを取得したブラウザ種別と図3に示す変換テーブル30を基に,使用ブラウザに対応した形式に変換し(ステップ407),ブラウザ上にそのURLに対する情報を表示する(ステップ408)。」

F 図面第2図には,ユーザ端末2中にある,ブラウザB12のためのURL登録ファイル23であるブックマークファイルの構成が示されており,ブックマークファイルであるFavoritesファイル中に,共用フォルダ21b,「フォルダ3」フォルダや「G社」に係るインターネットのショートカットが存在し,共用フォルダ21b中にはさらに,「フォルダ1」,「フォルダ2」や「E社」「F社」に係るインターネットのショートカットが存在する態様が読み取れる。

以下に,上記引用文献の記載事項について検討する。

(ア)引用文献には,上記Bに記載の通り「各ユーザ端末1,2にセットアップされているブラウザA11あるいはブラウザB12から,LAN回線14およびルータ16を経由しインターネット15上のホームページにアクセスする接続形態」である発明が記載されているところ,上記Aに記載されているように,上記「アクセスする接続形態」において「容易に」「アクセスする方法」である発明が記載されていると言える。
従って,引用文献には
“各ユーザ端末にセットアップされているブラウザから,LAN回線およびルータを経由しインターネット上のホームページに容易にアクセスする方法”が記載されていると言える。

(イ)当該「ホームページにアクセスする方法」は,
上記Aに「それぞれのブラウザにおいて,頻繁に使用するホームページについては,URL(Uniform Resource Locator)を「ブックマーク」(Netscape)や「お気に入り」(IE)として登録することにより,以後容易に呼び出してアクセスが可能となる。」との記載があるように,“ホームページのURLを登録したブックマークから,URLを呼び出してホームページにアクセスする”ものであるところ,
該「ブックマーク」とは,上記Cに記載の「ブラウザ」のURL登録ファイルである「ブックマークファイル」であり,
また,上記Dに「共有ブックマークファイル17からURLを取得するときは,・・・各ブラウザA11,B12に表示する。」との記載,上記Eに「共有利用ブックマーク登録部21a,または21bの表示指示がなされた場合・・・ブラウザ上にそのURLに対する情報を表示する」との記載があるように,URLを呼び出すために,「ブックマークファイル」を「ブラウザ」に表示させることは明かである。
従って,引用文献には,
“ホームページのURLを登録したブックマークファイルをブラウザに表示し,前記URLを呼び出してホームページにアクセスする”ことが記載されていると言える。

以上,(ア)及び(イ)を踏まえると,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

各ユーザ端末にセットアップされているブラウザから,LAN回線およびルータを経由しインターネット上のホームページに容易にアクセスする方法であって,
ホームページのURLを登録したブックマークファイルをブラウザに表示し,前記URLを呼び出してホームページにアクセスすることを含む,方法。

3.2 参考文献1に記載されている技術的事項

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布された,再公表特許第99/17229号(平成11年4月8日公開,以下,「参考文献1」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

G「「ブックマーク機能」とは,インターネットのWWWブラウザで,気に入ったサイトや頻繁にアクセスするページを登録しておく機能であり,表示させたいページのURLを予めブックマークデータの1情報として登録しておき,「ブックマークの表示」で,ブックマークとして登録されているページを一覧表示してから該当するページをマウスのクリック操作などで選択することによって,わずらわしいURLのタイプをすることなく,またタイプミスによる時間の浪費を生じさせることなく所望のページを表示させることができるというものである。
図1には代表的なブックマーク表示画面10が示されている。同図に示すように,ブックマークは階層的に管理することができ,ブックマーク12の集合を1つのフォルダ11に収めて管理することができる。これによってユーザは,ブックマーク12をカテゴリで分類して整理することができ,多くのブックマーク12がある場合にも効率的に所望のブックマーク12にアクセスできる。例えば,図1のブックマーク表示画面10を参照すると,「Lookup」というフォルダ11の中に,「People」と「YellowPages」というブックマーク12がブックマークとして登録されており,これらのブックマーク12は,前記フォルダ11「Lookup」をマウスなどでクリックすることによって同図のように一覧的に表示される。
・・・(中略)・・・WWWブラウザのユーザは,図1のブックマーク表示画面10で「People」などのブックマーク12を示す行(オブジェクト)をマウスでダブルクリックしたり,こうしたブックマーク表示画面10以外の,ブックマーク12を簡易表示するポップアップウインドウ(不図示)で所望のブックマーク12を示す行をクリックすることなどによって,容易に所望のページを選択し,表示させることができる。」(10頁24行?11頁20行)
(当審注:図1には,上記「Lookup」フォルダが「Personal Toolbar Folder」フォルダの下にあり,当該「Personal Toolbar Folder」フォルダの下には上記「Lookup」フォルダ以外に「New & Cool」フォルダや「FTHホームページ」等の複数のブックマークが存在し,また,上記のように「Lookup」フォルダをクリックすることで,「People」や「YellowPages」等のブックマークが一覧表示された態様が示されている。)

H「図2は,本発明の一実施形態の画像表示ブックマークシステム100のシステム構成を示すブロック図である。画像表示ブックマークシステム100は,処理装置110内のブックマーク処理部111およびデータ記憶装置120から構成される。前記処理部110は通常,パーソナルコンピュータまたはUNIXワークステーション等のCPUであり,前記データ記憶部120は通常,前記パーソナルコンピュータまたはUNIXワークステーション等のハードディスク装置またはその他の記憶装置である。前記処理装置110と前記データ記憶装置120は,不図示のインタフェース回路を介してバス140に接続され,前記処理装置110は,前記バス140を介して前記データ記憶装置120内のデータを参照または更新することができる。
・・・(中略)・・・
また,前記データ記憶装置120は,動作制御パラメータファイル121,ユーザ管理ファイル122,ブックマークデータファイル123,および縮小画像データファイル124の各ファイルを含んでいる。
・・・(中略)・・・前記ブックマーク表示制御部111eは,前記動作制御パラメータファイル121,および前記ユーザ管理ファイル122の設定内容に従い,登録されたブックマークをブックマーク表示画面内に画像(アイコン)により表示させる。・・・(中略)・・・前記WWWページ表示制御部111hは,WWWブラウザ113のユーザのブックマーク(アイコン)の指定に従い,前記ブックマークデータファイル123内の該指定されたブックマークに登録されているURLにインターネット130を経由してアクセスして,該ブックマークに登録されているページのHTML文書を取得し,該HTML文書をWWWブラウザ113に渡し,前記WWWブラウザ113に該ページの画像を前記表示装置160に表示させる。」(20頁28行?22頁28行目)

3.3 参考文献2に記載されている技術的事項

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布された,欧州特許出願公開第847019号明細書(1998年10月6日公開,以下,「参考文献2」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

J「Figure 2 schematically shows a transfer from the first to the second menu-structure. A first hierarchical multi-level menu-structure 100, as shown in Figure 1, provides access to a first subset 202 of the information items and a second multi-level menu-structure 204 provides access to a second subset 206 of the information items. The second menu-structure 204 is based on the first menu-structure in that it comprises at least sub-menus that correspond to the respective sub-menus of the first menu-structure. The second menu-structure may comprise additional levels in the hierarchy and may comprise additional options per sub-menu. The only requirement is that a sub-menu in the first menu-structure has a corresponding sub-menu in the second menu-structure.」(第8欄19行?33行)
(訳:上記参考文献2に対応する特表2000-504456号公報の記載を引用。以下,同じ。
「図2は,第1メニュー構造から第2メニュー構造への移動を図式的に示す。図1に示すような第1階層多レベルメニュー構造100は,情報項目の第1部分集合202へのアクセスを与え,第2階層多レベルメニュー構造204は,情報項目の第1部分集合206へのアクセスを与える。第2メニュー構造204は前記第1メニュー構造を基礎とし,少なくとも前記第1メニュー構造の個々のサブメニューに対応するサブメニューを具える。前記第2メニュー構造は,前記階層において追加のレベルを具えてもよく,サブメニューごとに追加の選択項目を具えてもよい。必要なのは,前記第1メニュー構造におけるサブメニューが,前記第2メニュー構造において対応するサブメニューを有することだけである。」)

K「The first and the second menu-structure may be implemented and/or presented in mutually different ways. In an embodiment of the invention, the first menu-structure is implemented in a way dedicated to the local station on which it resides in this case a CD-i player with a dedicated program running on it. The second menu-structure in this embodiment is implemented in HTML pages on a central station, which can be accessed from the local station via a suitable browser. The usage of HTML, which stands for Hyper Text Markup Language, is well known and widely used on the Internet. An HTML page comprises fields through which other HTML pages can be reached. Such a field is a link to another HTML page, the field having an associated address of that other HTML page, and upon selection of that field the browser will retrieve that other page. In this embodiment of the invention, when a user selects a connection option in a particular sub-menu on the local station, a connection will be made with the central station and the browser will retrieve the HTML page based on the identification of the particular sub-menu.」(第10欄8行?28行)
(訳:「前記第1および第2メニュー構造を,互いに異なるように実装および/または表示してもよい。本発明の一実施形態において,前記第1メニュー構造を,これが存在するローカル局,この場合においてはそこで動作する専用プログラムを有するCD-iプレイヤに専用に実装する。この実施形態における第2メニュー構造を中央局におけるHTMLページにおいて実装し,これに前記ローカル局から適切なブラウザを経てアクセスできる。ハイパーテキストマークアップランゲージの略語であるHTMLの語法は,既知であり,インターネットにおいて広く使用されている。HTMLページは,他のHTMLページを通じて到達できる領域を具える。このような領域は他のHTMLページに対するリンクであり,前記領域は他のHTMLページの関連アドレスを有し,この領域を選択すると,前記ブラウザは前記他のページを検索する。本発明のこの実施形態において,ユーザが前記ローカル局における特定のサブメニューにおける接続選択を選択すると,前記中央局に接続し,前記ブラウザは,前記特定のサブメニューの識別に基づいてHTMLページを検索する。」)

3.4 参考文献3に記載されている技術的事項

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布された,山田 祥平,山田祥平のWebブラウザ活用術 第5回,インターネットASCII,日本,株式会社アスキー ASCII Corporation,1999年10月1日,第4巻,第10号,p.132(以下,「参考文献3」という。)には,画面について,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

L 画面12には,登録されたブックマークファイルがフォルダにて表示され,さらにフォルダ表示の中に,「data」等のフォルダや,ホームページのデータが表示された態様が示されており,また,画面12の説明として,
「ホームページのデータが登録されている場合,このように通常のフォルダのように表示される。もちろん,コピーもできる。」と記載されている。
また,画面13には,登録したブックマークをブラウザ画面で表示した態様が示されており,また,画面13の説明として,
「登録したブックマークを表示すると,このような感じになる。これで,どこにいても自分のお気に入りを参照できるわけだ。」と記載されている。

3.5 参考文献4に記載されている技術的事項

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布された,特開平11-212998号公報(平成11年8月6日公開,以下,「参考文献4」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

M「【0029】図4は,本発明のデータ表示装置1を利用した表示画面の第1の例である。表示画面20には,ユーザが新規に訪問したいWebページのURLを入力するURL入力欄21が用意されている。また,図1に示した画像データ表示手段1eにより,表示画面20には,過去に訪問したWebページのタイトルとそのタイトルに対応するアイコンとが表示される。ここでは図3に示した情報テーブル10に基づいて,タイトル22aとアイコン22b,タイトル23aとアイコン23b,タイトル24aとアイコン24bが表示されている。
・・・(中略)・・・
【0031】また,ユーザが過去に訪問したWebページを再訪問したい場合には,表示されているタイトル名もしくはアイコンを選択すればよい。この場合,選択されたタイトル名もしくはアイコンに応じて,図1に示したハイパーテキストデータ表示手段1fが,インデックス情報保持手段1dに保持された情報テーブルを検索し,該当するURLを抽出する。そしてハイパーテキストデータ表示手段1fは,抽出したURLに応じてネットワーク2とアクセスし,該当するWebページのデータを取得する。」

3.6 参考文献5に記載されている技術的事項

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布された,CRAIG STINSON,CARL SIECHERT,Windows NT Workstation Version4.0 オフィシャルマニュアル,株式会社アスキー,1999年7月11日,第1版第9刷発行,pp.107-113(以下,「参考文献5」という。)には,図とともに,以下の技術的事項が記載されている。

N 109頁の図5-1には,Windows NTの名前空間として,ユーザーアクセスできる構成が示されており,その中で,「マイコンピュータ」-「ハードディスク」内に「フォルダ」があり,その下にさらに2つの「フォルダ」があり,すなわち「フォルダ」がツリー状構造で構成されている態様が示されている。

P「既定の設定では,フォルダウィンドウ内のフォルダアイコンをダブルクリックすると,新しくオープンしたフォルダが別のウィンドウに表示され,親フォルダ(この新しくオープンしたフォルダが置かれているフォルダ)のウィンドウはオープンしたままになります。このようなフォルダウィンドウの例が図5-2です。
この“フォルダを開くたびに新しいウィンドウを作る”モードの利点は,親フォルダと新しくオープンしたフォルダを同時に見ることができることです。その一方で,数レベルにわたってサブフォルダを操作するときに,フォルダウィンドウによって画面上がいっぱいになってしまうという欠点もあります。これらのフォルダウィンドウが不要であれば“別のフォルダを開くときに新しいウィンドウを作らない”モードに切り替えることができます。このモードでは,新しくオープンするフォルダウィンドウが,その親ウィンドウに置き換わって表示されます。」(111頁7行?17行)

4.対比・判断

4.1 本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「LAN回線およびルータ」及び「ユーザ端末」は,本願発明の「通信ネットワーク」及び「通信装置」にそれぞれ相当する。
引用発明の「ホームページ」が,ウェブ上で所定の情報やサービスを提供するものであることは,当業者にとって自明な事項であるから,当該「ホームページ」は,本願発明の「ウェブ上の情報源およびサービス」に相当する。

(イ)引用発明の「各ユーザ端末にセットアップされているブラウザから,LAN回線およびルータを経由しインターネット上のホームページにアクセスする方法」は,本願発明の「通信ネットワークを介してインターネットに接続された通信装置からウェブ上の情報源およびサービスにアクセスする方法」に相当する。

(ウ)引用発明の「ブックマークファイル」が,「ブラウザ」に対応して「ユーザ端末」側に,「URL」の「呼び出し」する前に保存されていることは自明であることから,ローカル的に予め記憶されているものと言える。また,同「ブックマークファイル」は,「ブラウザに表示」され,そこから「URLを呼び出してアクセスする」ためのものであるところ,上記Fにあるように,上記「ブックマークファイル」は複数のショートカットに対応する「URL」を含み,当該複数の「URL」から,アクセスしたい「URL」を「呼び出」すこととは,複数の「URL」から選択することであると言え,「ブラウザに表示」される「ブックマークファイル」は選択のために表示されるものであるから,選択用表示情報であると言える。一方,本願発明の「選択ページ」も,上位概念において,選択用表示情報であると言える。
また,引用発明の「ブックマークファイル」中に登録された「URL」は,「表示」された「ブックマークファイル」から「呼び出」されるものであるところ,当該「呼び出」しのために「ブックマークファイル」の表示に合わせて「URL」も表示されることは自明の事項であるから,当該「URL」の表示は,情報アクセスのための表示と言えるものである。一方,本願発明の「アイコン」も,「選択ページ」に含まれ表示されるものであり,また「情報源」に「アクセス」するためのものであるから,上位概念において,情報アクセスのための表示であると言える。
従って,引用発明の「ブックマークファイル」を,「URLを呼び出してホームページにアクセス」可能なように「表示」することと,本願発明の「ツリー状メニュー構造の中に構築され前記通信装置の中にローカル的に予め記憶された複数の選択ページ(各選択ページは1組のアイコンを有する)のうちの一の選択ページを表示する一以上の段階」とは,ともに,“前記通信装置の中にローカル的に予め記憶された選択用表示情報(選択用表示情報は1組の情報アクセスのための表示を有する)を表示する一以上の段階”である点で共通すると言える。

(エ)引用発明の「URLを呼び出してホームページにアクセスする」ために,「URL」の表示を選択し,それに応じて当該「URL」情報をインターネットに発信することは,当業者にとって技術常識であり,また,当該「URL」は情報源のアドレスであると言えることから,
引用発明の「URL」の表示から「URLを呼び出してホームページにアクセスする」ことと,本願発明の「表示中の選択ページ内の一のアイコンの選択に応じて,選択された当該アイコンに対応する情報源のアドレスを通信ネットワークに発信する段階」とは,ともに,“表示中の選択用表示情報内の一の情報アクセスのための表示の選択に応じて,選択された当該情報アクセスのための表示に対応する情報源のアドレスを通信ネットワークに発信する段階”である点で共通すると言える。

以上の対比から,本願補明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)
通信ネットワークを介してインターネットに接続された通信装置からウェブ上の情報源およびサービスにアクセスする方法であって:
-前記通信装置の中にローカル的に予め記憶された選択用表示情報(選択用表示情報は1組の情報アクセスのための表示を有する)を表示する一以上の段階と,
-表示中の選択用表示情報内の一の情報アクセスのための表示の選択に応じて,選択された当該情報アクセスのための表示に対応する情報源のアドレスを通信ネットワークに発信する段階,
とを包含することからなる方法。

(相違点1)
選択用表示情報について,本願発明が,「ツリー状メニュー構造の中に構築」された「複数」の「選択ページ」としているのに対し,引用発明は,「ブックマークファイル」に関し,そのような構成となっていない点。

(相違点2)
選択用表示情報の表示方法について,本願発明が,ツリー状メニュー構造の中に構築された複数の選択ページの「うちの一」の選択ページを表示することとしているのに対し,引用発明は,表示方法について明りょうでない点。

(相違点3)
選択用表示情報中の情報アクセスのための表示について,本願発明が,「アイコン」であるのに対し,引用発明は,具体的に言及されていない点。

(相違点4)
選択用表示情報の特徴について,本願発明が,各選択ページ毎に,「前記1組のアイコンは遠隔情報源に直接アクセスするための一以上のアイコン,および,前記ツリー状メニュー構造の中の他の選択ページにローカル的にアクセスするための一以上の選択用アイコンを有」することとしているのに対し,引用発明は,そのような構成となっていない点。

(相違点5)
本願発明が「遠隔情報源は表示段階および選択段階の際にローカル的に生成されたアドレスを有する」としているのに対し,引用発明は,そのような構成になっていない点。


4.2 当審判断

(相違点1)ないし(相違点4)について
インターネットにアクセスするブラウザのブックマークを,URLを格納する複数のフォルダで構成するとともに,あるフォルダから別の複数のフォルダに分岐してアクセス可能なように相互にリンクさせた,いわゆるツリー状構造とすることは,周知慣用技術であり(例えば,引用文献1の上記Fの記載,参考文献1のG及び図1の記載,を参照。),
そして,当該ツリー状構造であるブックマークの,各フォルダのリンク情報の表示において,(1)ホームページへの複数のリンクを選択可能に一覧表示する画面すなわちページとして構成すること,(2)上記リンク情報表示画面を,ホームページへのリンク表示に加えて,ツリー構造上の他のリンク情報表示画面へアクセスするリンク表示も有するよう構成すること,及び(3)上記リンクをアイコンとして表示すること,は,いずれも本願の優先日前に周知構成と言えるものであり(例えば,(1)については参考文献1の上記Hの記載,参考文献2の上記Kの記載,参考文献3の上記Lの記載,(2)については参考文献2の上記J及びKの記載,参考文献3の上記Lの記載,(3)については参考文献1の上記Hの記載,参考文献4の上記Mの記載,をそれぞれ参照。),
また,一般に,コンピュータ装置上で情報にアクセスするための,ツリー状構造にある複数の画面表示のうち,一の画面のみを表示するようにすることは,普通に行われる事項(必要であれば,参考文献5の上記N及びP参照)であるから,上記ブックマークの表示において同様に構成することに格別困難性は認められない。
してみると,引用発明における,ユーザ端末側に保存された,ブックマークファイルの表示のための構成に,上記周知技術等を適用し,「ツリー状メニュー構造の中に構築」された「1組のアイコン」を有する「複数」の「選択ページ」であり,「各選択ページ毎に,前記1組のアイコンは遠隔情報源に直接アクセスするための一以上のアイコン,および,前記ツリー状メニュー構造の中の他の選択ページにローカル的にアクセスするための一以上の選択用アイコンを有」する「選択ページ」とするとともに,当該「複数の選択ページ」の「うちの一」の「選択ページ」を表示するようにすること,すなわち,相違点1ないし相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点1ないし相違点4は格別なものではない。

(相違点5)について
本願発明の「表示段階および選択段階の際にローカル的に生成された」における「ローカル的」の意味について,本願発明の詳細な説明の記載を参酌すると,
「【0009】
本発明によれば,各選択ページ毎に,前記1組のアイコンは遠隔情報源に直接アクセスするための一以上のアイコン,および/又は,前記ツリー状メニュー構造の中の他の選択ページにローカル的にアクセスするための一以上の選択用アイコンを有し,
直接アクセス用アイコンに対応する情報源の前記アドレスは,テーブル若しくはアドレスベース内にローカル的に予め記憶されているか,又は,表示段階と選択段階の進行に伴いローカル的に生成される。」,
「【0016】
この装置の特徴は,各選択ページ毎に,前記1組のアイコンは遠隔情報源に直接アクセスするための一以上のアイコン,および/又は,前記ツリー状メニュー構造の中の他の選択ページにローカル的にアクセスするための一以上の選択用アイコンを有し,
前記制御処理手段は:
-前記ツリー状メニュー構造の中の他の選択ページにローカル的にアクセスするために設けた選択用アイコンをアクティブにするに応じて,前記選択ページ表示手段による表示を制御するべく,かつ,
-表示中の選択ページ内の一のアイコンの選択に応じて,当該選択された直接アクセス用アイコンに対応する情報源のアドレスを通信ネットワークに発信するべくプログラムされており,
直接アクセス用アイコンに対応する情報源の前記アドレスは,テーブル若しくはアドレスベース内にローカル的に予め記憶されているか,又は,表示段階と選択段階の進行に伴いローカル的に生成されることからなる。」
との記載があるのみである。
一方,「ローカル(local)」とは,通常の英和辞典によれば「地方の」,「局所的な」,「局地的な」を意味するものであり,また,本願発明の詳細な説明の「【0021】この第1ページPoは,図2に概略的に示した,この方法を実施する装置の例えばハードディスク装置やCD-ROMのような記憶装置内にローカル(局地)的に記憶されたページ-画面全体のツリー構造の幹を構成する。」との記載も加味して検討するば,本願発明の方法を実施する「装置」において「局地的に」実施されることを意味するように理解されるべきものといえる。
その上で相違点について検討すると,引用発明のブックマークファイルにおける,ホームページのURL(情報源のアドレスに相当)は,登録時に,ユーザ端末側のファイル中に生成されており,これは局地的に生成されていると言えるものであり,また,当該アドレスをいずれの時点で生成するかにおいて,技術上格別なる困難性が生じるものとは認められず,よって,必要により適宜行う程度の事項である。
よって,相違点5は格別なものではない。

そして,本願発明により奏する効果も,引用発明及び周知技術から当然予想される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものとは認められない。


5.むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,他の請求項についての検討をするまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-19 
結審通知日 2013-03-26 
審決日 2013-04-09 
出願番号 特願2001-550631(P2001-550631)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩島 豪辻本 泰隆  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 原 秀人
石井 茂和
発明の名称 ウェブ上の情報源およびサービスにアクセスする方法および装置  
代理人 太田 恵一  

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