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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E01C
管理番号 1288060
審判番号 不服2011-17666  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-15 
確定日 2014-05-21 
事件の表示 特願2007- 90903号「道路表面の品質評価のための仮想プロフィログラフ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月18日出願公開、特開2007-270613号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年3月30日(パリ条約による優先権主張2006年3月31日、米国)の出願であって、平成23年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年8月15日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされ、平成24年3月2日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年9月5日に回答書が提出され、当審において平成24年12月18日付けで拒絶理由を通知したところ、平成25年6月20日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本件出願の請求項1?8に係る発明は、平成23年8月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
道路を含む表面を動き回るようになされた第1の車両で使用するための方法であって、該第1の車両が全地球的航法衛星システム(GNSS)アンテナ受信機を備え、該方法が、
該GNSSアンテナの複数の場所を対応する複数の異なる時刻において計算するステップと、
該複数の場所を記憶するステップと、
該第1の車両を使用して該表面を建設している間に、該複数の場所及び該対応する複数の異なる時刻に基づいて該表面の乗り心地を示す描写を生成するステップと、
該表面の該生成された描写に基づいて該表面の建設を修正して、該表面の乗り心地を改善するステップと、
該描写の関数として該表面にわたる第2の車両の乗り心地を決定するステップとを備える方法。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)当審における平成24年12月18日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特許3585237号公報(以下「刊行物1」という。)には、ワークサイトで使用される圧縮成形用機械の操作のための方法と装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与。)
(ア)「技術分野
本発明は、ワークサイトの表面を圧縮成形する(compacting)ための機械の操作に係わり、特に、その機械により目標値に向かって変更されるようなワークサイトの圧縮成形の程度をまとめて表すデジタルデータの生成と使用に関する。この明細書において使用されている“圧縮成形用機械”及び他の類似した語は、ゴミ処理地、地面及びアルファルト用の圧縮成形機のような車輪を備えた自走式移動機械を意味している。」(第6頁第10?19行)
(イ)「背景技術
優れた且つ強力な圧縮成形用機械が開発されているが、ゴミ処理地、建設現場道路のようなワークサイトでゴミ、地面又はアスファルトのような材料を適当に圧縮成形する場合には、依然として時間がかかり大きな労力が必要であった。例えば、ゴミ処理地のゴミや廃棄物のような圧縮成形されるべき材料は、典型的には、非圧縮状態でサイト上に広がっているため、圧縮成形の程度が所定の目標値となるまで、圧縮成形機により繰り返し横切られなくてはならない。」(第6頁第20?26行)
(ウ)「本発明は、圧縮成形用機械即ちその圧縮形成用の車輪やローラーの3次元空間における正確な位置を、例えば、機械がサイト上を移動し圧縮成形する際に、そのデジタルモデルを機械がサイトを横切るときに1地点毎にまたリアルタイムで更新するために、リアルタイムで正確に判定することができる機構を更に有する。後述するように、本発明の好適な実施形態は、目標物を3次元の空間においてセンチメートルの精度で正確に見つけ出すことができる位相差GPS(世界的位置検出用システム)(global positioning system)受信システムを使用している。
本発明は、目標サイトモデルを連続的に更新される実サイトモデルと比較し且つ実サイトモデルを目標サイトモデルち一致させるためにサイト上の多数の座標の各々で必要な圧縮形成の程度を表す信号を生成する手段を更に有する。これらの信号は、その瞬間において、圧縮成形用機械上で又は機械から離れた位置で、サイト全体の少なくともその実体的部分に関する情報を伝達する座標軸内且つリアルタイムで、機械の実際の進展状況に関してオペレータに知らせるためにリアルタイム表示を提供する。後述する他の実施形態において、目標サイトモデルと実サイトモデルとの差異を表す信号が、機械自身のリアルタイム自動制御装置即ちその一部分又はその両者に対して適用される。
好適な実施形態において、位置判定用機構であるシステムの少なくとも一部分は、圧縮形成用機械がサイトを横切るときにその圧縮成形用機械上で搬送される。
本発明の他の観点によれば、本発明は、移動式サイト圧縮成形機械の作業を指示する方法であって、この方法が、サイトの圧縮成形の程度の目標値を表す第1サイトモデルとサイトの圧縮成形の程度の実際の値を表す第2サイトモデルとを生成してデジタルデータ格納及び検索手段に格納する工程と、その後、圧縮成形機械がサイトを横切って圧縮成形するときにこの機械の3次元空間内の瞬間の位置をリアルタイムで表すデジタル信号を生成する工程と、第1モデルと更新された第2モデルとの差異を判定する工程と、更新された第2モデル第1モデルと一致するようにこの差異により機械の操作を指示する工程と、を含む。」(第7頁第13?37行)
(エ)「更新/制御用モジュール60は、図示された実施形態において同様に圧縮成形用機械に搭載されており、位置検出用モジュール50からの入力を受信する追加のコンピュータ62、コンピュータメモリーにデジタルで格納されロードされる1以上のサイトモジュール64、同様にコンピュータメモリーに格納されロードされるダイナミック・データベース・更新モジュール66、コンピュータ62に接続されるカラー・オペレータ・表示スクリーン22を備えている。・・・
オペレータがサイト上で機械を移動させているとき、ダイナミックなデータベース66は、モジュール50から入って来る位置情報を連続して読み取り且つ操作して、サイトに関する機械の位置、サイト上の機械の経路、及び機械の経路により影響を受ける圧縮成形の程度におけるあらゆる変化を、ダイナミックに更新する。この更新された情報は、サイトの表示を生成するために使用され、さらに、圧縮成形用機械のオペレータに実際の更新されたサイトモデルを目標サイトモデルと一致させるように指示する。」(「第10頁第48行?第11頁第42行)
(オ)「産業上の利用の可能性
図4には、建設サイト12にある圧縮成形用機械10が示されている。この図4に示された実施形態において、機械は、車輪付きゴミ処理地用圧縮成形機である。しかしながら、本発明は、サイト上を移動して原材料を圧縮成形することができる全ての圧縮成形用機械に適用される。・・・
圧縮成形機10は、機械の位置及び/又はその圧縮成形用の車輪の位置を高精度で判定することができる位置決めシステムを備えている。この位置決めシステムは、図4の実施形態において、位相差GPS受信機18であり、これは、サイトとの接触部分である車輪の踏み跡に関して固定された既知の座標で、機械上に配置されている。機械に搭載された受信機18は、図3に示すように、GPS18から位置信号を受信し、無線リンク48,58を介してベース基準16から誤差/補正信号を受信する。機械に搭載された受信機18は、人工衛星からの信号とベース基準16からの誤差/補正信号の両方を用いて、3次元空間でその位置を正確に判定する。・・・
ダイナミックGPSや他の外部基準からの適した3次元位置信号を用いて、受信機18及び圧縮成形機10の位置が、圧縮成形機10がサイト12上を移動する際、数センチメートル以内で1点毎のベースで正確に判定される。図示の位置検出用システムを用いる座標点のサンプリング速度は、ほぼ1秒毎に1点である。」(第11頁第43行?第12頁第21行)
(カ)「図6Aは、本発明による圧縮成形作業用のサンプルのオペレータ・ディスプレイ22を示している。・・・図6Aの実施形態においては、グリッドは、色を変化させて、何回通過したかという点に関して実際の圧縮成形の程度を表示する。・・・
図6Bは、ディスプレイの他の例であり、図6Aにおいて2次元面で示されていたサイトと圧縮成形機がウインドウ70内で3次元で示されている。・・・
本発明の実施形態に示された好適な方法は、良く知られたBresenhamのアルゴリズムを用いて、座標サンプリング間のグリッド要素上の各車輪の経路を近似する連続的な線を生成する。・・・
この線に沿う全てのグリッド要素は、それらの状態が更新され、オペレータディスプレイ上で視覚的に変化する。」(第14頁第27行?第15頁第49行)

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。
「ゴミ処理地、建設現場道路のようなワークサイトで、ゴミ、地面又はアスファルトのような材料を適当に圧縮成形するための、ゴミ処理地、地面及びアルファルト用の圧縮成形機のような車輪を備えた自走式移動機械の操作に係わり、その機械により目標値に向かって変更されるようなワークサイトの圧縮成形の程度をまとめて表すデジタルデータの生成と使用に関する、移動式のサイト圧縮成形機械の作業を指示する方法であって、
圧縮成形機10は、機械の位置及び/又はその圧縮成形用の車輪の位置を高精度で判定することができる、人工衛星からの信号とベース基準16からの誤差/補正信号の両方を用いて、3次元空間でその位置を正確に判定する位相差GPS受信機18である位置決めシステムを備え、
ダイナミックGPSや他の外部基準からの適した3次元位置信号を用いて、受信機18及び圧縮成形機10の位置が、圧縮成形機10がサイト12上を移動する際、座標点のサンプリング速度は、ほぼ1秒毎に1点で、数センチメートル以内で1点毎のベースで正確に判定され、
目標サイトモデルを連続的に更新される実サイトモデルと比較し且つ実サイトモデルを目標サイトモデルと一致させるためにサイト上の多数の座標の各々で必要な圧縮形成の程度を表す信号を生成し、
圧縮成形用機械上で、cを提供する、移動式のサイト圧縮成形機械の作業を指示する方法。」

(2)当審における平成24年12月18日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-138569号公報(以下「刊行物2」という。)には、盛土の締固め層厚管理システムに関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、道路・・・等において盛土を振動ローラにより締固める場合における盛土の締固め層厚管理システムの技術分野に属する。」
(イ)「【0010】盛土ヤード2内もしくは周辺にGPS固定局9を設置するとともに、ブルドーザー6と盛土締固め機7にはそれぞれGPS移動局10、11が設置されている。GPS固定局9およびGPS移動局10、11においては、GPS衛星12の測位情報を受信し、さらに、GPS固定局9で受信した測位情報は、GPS移動局10、11に無線(例えば無線LAN)で送信され、ブルドーザー6側と盛土締固め機7側び三次元位置座標算出手段13、14において、敷均し面および転圧面の三次元位置座標が算出されされる。」
(ウ)「【0012】・・・ブルドーザー6の運転席にはモニターが設置されており、図4に示す敷均し面における管理ブロック毎の標高とブルドーザーの位置がリアルタイムで表示され、管理ブロック毎の取得標高値が規定した敷均し標高の管理値を満足しているか否かの判定を随時行う。
【0013】図5は、敷均し判定画面の例を示している。画面にはブルドーザー6の位置が表示されると共に、管理値を満足している管理ブロック、管理値より低いブロック、管理値より高いブロックと3段階で色分けして表示することにより、視覚的にどの部位を敷均せば良いかを直ちに判別することができる。なお、色の表示段階は、施工精度によってより細かい段階を設けることができる。」

(3)当審における平成24年12月18日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-239328号公報(以下「刊行物3」という。)には、土工施工面の測定装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0008】・・整地面の施工精度をリアルタイムで精密かつ容易に測定することができ、必要な土砂量などの情報が整地作業中に得られるようにした・・」
(イ)「【0010】すなわち、整地すべき区画内において行われる切盛土の平面精度を測定するための装置であって、切盛土の整地を行う重機1に設けられたGPSアンテナ2と、重機1のロール姿勢を検出するためのロール傾斜センサ4と、これらGPSアンテナ2a、2b及びロール傾斜センサ4からの信号が入力される車載制御部5と、入力された前記信号に基づく情報を表示する表示部7a、7bと、を備え、前記車載制御部5は、GPSアンテナ2a、2b及びロール傾斜センサ4からの信号から、重機1の傾斜成分を相殺した重機1の絶対高を演算し、実際の整地面高と計画整地面高との高低差を算出して、この高低差を前記表示部7a、7bに表示することを特徴とする。」
(ウ)「【0012】本発明では、施工中における重機1の傾斜を考慮して実際の整地面高と計画整地面高との高低差を算出するので、きわめて正確な整地面の施工度合いが表示される。」
(エ)「【0048】重機1に搭乗したオペレータは、表示部7aに表示される実際の整地面高と計画整地面高との高低差に基づいて切盛土の作業を実施する。・・・
【0053】重機位置平面図では升目が表示され、現在盛土量が計画盛土量に対してどの程度の過不足があるかが升目の色で表示されている。例えば、計画盛土量と同一高さを白と設定し、これより低い場合には赤で、これより高い場合には緑で表示させるなどの色分けをしている。」


3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「移動式のサイト圧縮成形機械の作業を指示する方法」は、「・・建設現場道路のようなワークサイトで・・地面又はアスファルトのような材料を適当に圧縮成形する・・・圧縮成形機のような・・自走式移動機械の操作に係わ」る方法であるので、本願発明の「道路を含む表面を動き回るようになされた第1の車両で使用するための方法」に相当する。
(b)引用発明の「圧縮成形機10は、」「人工衛星からの信号とベース基準16からの誤差/補正信号の両方を用いて、3次元空間でその位置を正確に判定する位相差GPS受信機18である位置決めシステムを備え」ることは、本願発明の「該第1の車両が全地球的航法衛星システム(GNSS)アンテナ受信機を備え」ることに相当する。
(c)引用発明の「ダイナミックGPS」「の適した3次元位置信号を用いて、受信機18及び圧縮成形機10の位置が、圧縮成形機10がサイト12上を移動する際、座標点のサンプリング速度は、ほぼ1秒毎に1点で、数センチメートル以内で1点毎のベースで正確に判定され」ることは、「GNSSアンテナの複数の場所を対応する複数の異なる時刻において計算する」ステップに相当する。
(d)引用発明の「圧縮成形用機械上で、機械の実際の進展状況に関してオペレータに知らせるためにリアルタイム表示を提供する」は、そのリアルタイム表示が刊行物1記載事項(エ)の「更新/制御用モジュール60は・・・コンピュータメモリーに格納されロードされるダイナミック・データベース・更新モジュール66・・カラー・オペレータ・表示スクリーン22を備えている。・・・
ダイナミックなデータベース66がサイトの圧縮成形の実際の値(程度)と目標値(程度)との誤差を表す信号を生成し、サイト地形に関してオペレータ表示スクリーン22上にこの差異を図示的に表示する。・・・
オペレータがサイト上で機械を移動させているとき、ダイナミックなデータベース66は・・・サイトに関する機械の位置、サイト上の機械の経路・・を、ダイナミックに更新する。この更新された情報は、サイトの表示を生成するために使用され、・・オペレータに・・指示する。」ことにより実現されるものであって、機械の位置がコンピュータメモリーに格納されたデータベース66に記憶する行程を含んで事項されるものであることが明らかであり、そのデータベース66に記憶する行程は、本願発明の「該複数の場所を記憶するステップ」に相当する。
また、引用発明の「リアルタイム表示」は、「圧縮成形機10の位置が、圧縮成形機10がサイト12上を移動する際、・・1秒毎に1点で・・判定され、
・・サイト上の多数の座標の各々で・・信号を生成し」てなされるリアルタイムの表示であるので、実質的に本願発明の「第1の車両を使用して該表面を建設している間」に処理され、「複数の場所及び該対応する複数の異なる時刻」に基づいて、「表面」の状態を示す図示的表示、すなわち「描写」を生成するものといえる。
そうすると、引用発明の「圧縮成形用機械上で、機械の実際の進展状況に関してオペレータに知らせるためにリアルタイム表示を提供する」ことと、本願発明の「第1の車両を使用して該表面を建設している間に、該複数の場所及び該対応する複数の異なる時刻に基づいて該表面の乗り心地を示す描写を生成するステップ」とは、「第1の車両を使用して該表面を建設している間に、該複数の場所及び該対応する複数の異なる時刻に基づいて該表面の状態を示す描写を生成するステップ」である点で共通する。
(e)引用発明の「移動式のサイト圧縮成形機械の作業を指示」と、本願発明の「該表面の該生成された描写に基づいて該表面の建設を修正して、該表面の乗り心地を改善するステップ」とは、前者の「作業を指示」が、「・・建設現場道路のようなワークサイトで・・地面又はアスファルトのような材料を適当に圧縮成形するための・・自走式移動機械の操作」に係わる指示であって、「機械の実際の進展状況に関してオペレータに知らせるため」の「リアルタイム表示」である図示的表示、すなわち「描写」により指示されるものであるので、両者は、「表面の該生成された描写に基づいて該表面の建設を修正して、該表面の状態を変更するステップ」である点で共通する。

(2)両発明の一致点
「道路を含む表面を動き回るようになされた第1の車両で使用するための方法であって、該第1の車両が全地球的航法衛星システム(GNSS)アンテナ受信機を備え、該方法が、
該GNSSアンテナの複数の場所を対応する複数の異なる時刻において計算するステップと、
該複数の場所を記憶するステップと、
該第1の車両を使用して該表面を建設している間に、該複数の場所及び該対応する複数の異なる時刻に基づいて該表面の状態を示す描写を生成するステップと、
該表面の該生成された描写に基づいて該表面の建設を修正して、該表面の状態を変更するステップとを備える方法。」

(3)両発明の相違点
本願発明は、表面の状態を示す描写が、「表面の乗り心地を示す」ものであり、表面の状態を変更するステップが、「表面の乗り心地を改善するステップ」であるのに対して、引用発明はそのように特定されず、
また、本願発明は、「該描写の関数として該表面にわたる第2の車両の乗り心地を決定するステップ」を備えるのに対して、引用発明はそうでない点。

4.本願発明の容易推考性の検討
(a)まず、建設現場道路のようなワークサイトで、地面又はアスファルトのような材料を圧縮成形する、圧縮成形機の操作内容として、道路を走行する車両の乗り心地を善くするための平坦化は、作業内容の代表的な一態様として周知のものであって、引用発明の圧縮成形機械の作業内容を、上記周知の作業内容とすることは、当業者が容易になし得ることである。
(b)さらに、圧縮成形用機械上で、進展状況をオペレータに知らせる表示として、場所毎の表面の高さに係る情報で表示することも、刊行物2,3に記載されている様に周知であり、引用発明の機械の実際の進展状況に関してオペレータに知らせるリアルタイム表示を、該表面の高さに係る情報で表示するものとすることも、当業者が適宜選択し得ることである。
(c)そして、上記(a)(b)にともなって、描写が、表面の高さに係る情報を表すもの、すなわち「表面の乗り心地を示す」ものとなり、表面の状態を変更するステップが、「表面の乗り心地を改善するステップ」となり、さらに、上記周知の作業内容が道路を通行する他の車両、すなわち「第2の車両」の乗り心地を決定するステップとなることも自明であるので、引用発明の圧縮成形機械の作業内容を上記周知の道路を走行する車両の乗り心地を善くするための平坦化とし、表示を表面の高さに係る情報で表示するものとして、本願発明の相違点に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことといえる。
なお、刊行物2,3の実施例において表面の高さに係る情報は、実測値と計画値との差として表示されており、上記(a)の平坦化作業にあっては、計画が平坦となり、計画値との差が、乗り心地に影響を及ぼす凹凸の量となることは自明である。
(d)本願発明の作用効果は、引用発明、及び、周知技術から当業者であれば予測できた範囲のものである。
すると、本願発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということができる。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-20 
結審通知日 2013-12-24 
審決日 2014-01-09 
出願番号 特願2007-90903(P2007-90903)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 信也  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 高橋 三成
杉浦 淳
発明の名称 道路表面の品質評価のための仮想プロフィログラフ  
代理人 岡部 正夫  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
代理人 三山 勝巳  

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