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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D
管理番号 1288289
審判番号 不服2013-15256  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-07 
確定日 2014-06-06 
事件の表示 特願2009-74887号「紙葉取扱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月14日出願公開、特開2010-231262号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成21年3月25日の出願であって、平成25年1月25日付けで拒絶理由を通知したところ、同年3月29日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年5月1日付けで拒絶査定がなされたところ、同査定を不服として同年8月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

II.平成25年8月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)
1.本件補正の内容
本件補正は、平成25年3月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲、すなわち、
「 【請求項1】
紙葉を投入又は放出する投出部と、
該紙葉を搬送する複数の搬送経路から成る搬送路と、
該搬送路の下方に配置された紙幣収納体収容部と、
該紙幣収納体収容部に着脱自在に装着され、複数種類の紙葉を種類毎に収納する収納部と共に不良紙葉を回収する不良回収部を内蔵する複数の紙幣収納体と、
該投出部に前記複数の紙幣収納体のうち、所望の前記紙幣収納体から前記紙葉を繰り出す紙葉繰出手段と、
該紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する紙幣収納体記憶手段と、
前記搬送路に沿った所定の1箇所に設けられ、繰り出された前記紙葉が不良で有るか否かを判別する良否判別手段と、
該良否判別手段により不良があると判別されたとき、該不良があると判別された不良紙葉を、前記紙幣収納体記憶手段の記憶に基づいて前記不良紙葉が繰り出された前記紙幣収納体の前記不良回収部に回収する不良紙葉回収手段と、
前記紙葉繰出手段、前記紙幣収納体記憶手段、前記良否判別手段、及び前記不良紙葉回収手段による一連の処理を所望の各紙幣収納体ごとに個別に順次行なう制御手段と、
を有することを特徴とする紙葉取扱装置。
【請求項2】
複数の前記紙幣収納体ごとに、前記紙葉の初期収容枚数、追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計、前記不良紙葉の回収枚数合計を記憶する各紙葉枚数記憶手段と、
該各紙葉枚数記憶手段の記憶に基づいて、前記複数の紙幣収納体ごとの現有総紙葉枚数を算出する現有総紙葉枚数算出手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1記載の紙葉取扱装置。
【請求項3】
前記不良紙葉は、重送、斜行、折れ曲がり、破れ、及び汚れ付着のうち少なくとも一つを含む紙葉であることを特徴とする請求項1又は2記載の紙葉取扱装置。」
を、本件補正後の特許請求の範囲、すなわち、
「 【請求項1】
紙葉を投入又は放出する投出部と、
該紙葉を搬送する複数の搬送経路から成る搬送路と、
該搬送路の下方に配置された紙幣収納体収容部と、
該紙幣収納体収容部に着脱自在に装着され、複数種類の紙葉を種類毎に収納する収納部と共に不良紙葉を回収する不良回収部を内蔵する複数の紙幣収納体と、
該投出部に前記複数の紙幣収納体のうち、所望の前記紙幣収納体から前記紙葉を繰り出す紙葉繰出手段と、
複数の前記紙幣収納体ごとに、前記紙葉の初期収容枚数、追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計、前記不良紙葉の回収枚数合計を記憶すると共に、前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する各紙葉枚数記憶手段と、
前記搬送路に沿った所定の1箇所に設けられ、繰り出された前記紙葉が不良で有るか否かを判別する良否判別手段と、
該良否判別手段により不良があると判別されたとき、該不良があると判別された不良紙葉を、前記各紙葉枚数記憶手段の記憶に基づいて前記不良紙葉が繰り出された前記紙幣収納体の前記不良回収部に回収する不良紙葉回収手段と、
前記紙葉繰出手段、前記紙葉枚数記憶手段、前記良否判別手段、及び前記不良紙葉回収手段による一連の処理を所望の各紙幣収納体ごとに個別に順次行なう制御手段と、
前記各紙葉枚数記憶手段の記憶に基づいて、前記複数の紙幣収納体ごとの現有総紙葉枚数を算出する現有総紙葉枚数算出手段と、
を有することを特徴とする紙葉取扱装置。
【請求項2】
前記不良紙葉は、重送、斜行、折れ曲がり、破れ、及び汚れ付着のうち少なくとも一つを含む紙葉であることを特徴とする請求項1記載の紙葉取扱装置。」(下線部は補正箇所を示す。)
に補正するものである。

2.本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項1を引用する請求項2における「紙幣収納体記憶手段」を「各紙葉枚数記憶手段」に補正してその記載を明確にするとともに、補正前の請求項2を独立請求項に書き直して補正後の請求項1とし、さらに、補正前の請求項1又は2を引用する請求項3を補正後の請求項1を引用する請求項2とするものであるから、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除及び第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものである。
よって、本件補正は、適法になされたものであるから、本件補正を認める。

III.本願発明
上記のとおり、本件補正は認められるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記II.1.に示した、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

IV.引用例の記載事項
(1)特開2000-82161号公報
本願の出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-82161号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア:「【0016】上述の入出金ユニット12の制御を図4を用いて説明する。入出金ユニット12の万円庫16,千円庫17,入金庫18および装填庫19のそれぞれに各金庫に収納されている紙幣の券種および枚数を記憶する後述するEEPROM95a?95c(メモリ)が設置されている。万円庫16等に設置されているEEPROM95a?95cに接続されている金庫メモリ制御部91は、万円庫16,千円庫17,入金庫18および装填庫19に収納されている紙幣の券種および枚数を検知するものである。この金庫メモリ制御部91に接続されている制御部92は、鑑査部36等から入力される紙幣の損券の検知信号および金庫メモリ制御部91から入力される万円庫16等に収納されている紙幣の枚数等を示す信号によりドライブ回路93に駆動信号を出力するものである。ドライブ回路93は、制御部92から入力される駆動信号により万円庫16等からの紙幣の取り出し及び搬送路の駆動を制御するものである。」

イ:「【0028】上述した万円庫16等の各金庫の制御を図8, 図9に示すブロック図を用いて説明する。図8は記憶素子に電気的に消去可能な不揮発性メモリであるEEPROM95を備えたものであり、図9は電源としてバッテリ94を備えたものである。
【0029】まず、図8に示すタイプの金庫カセット72にはEEPROM95の他に制御部97aおよびインタフェイス部98aを有するものである。EEPROM95は、金庫に収納されている紙幣の券種および枚数を所定のアドレスに記憶しているものである。また、EEPROM95は電源が切れてもアドレスに記憶しているデータが消去することもない。更にEEPROM95には金庫カセット72が取引可能ならば零であり、金庫カセット72が取引不可能ならば「1」を示すフラグを有している。制御部97aは、EEPROM95とのアドレス線からアドレスを指定してデータ線から指定したアドレスにリード線またはライト線を指定してデータの読取り又は書込みをするものである。インタフェイス部98aは、制御部97aと制御部92等とのデータ伝送を制御するものであり、調歩同期によるシリアルーパラレル変換によりデータ伝送するものである。
【0030】図9に示すタイプの金庫カセット72は、金庫本体に制御部97b 等に電源を供給する電源部94を備えている。この電源部94を備えていることにより制御部97bは、金庫16?19の蓋74の開閉を検知する光センサー88からの検知信号をEEPROM95a ,95b のアドレスに記憶する。記憶した検知信号の回数が許容値を超えると制御部97bは、金庫16?19の蓋74が不良と判断して後述する紙幣整理機100から紙幣を装填するときに蓋74の不良を、例えば警告灯により表示する。
【0031】上記蓋74の開閉の検知および入出金の取引用の貨幣等の情報を記憶するEEPROMは、バックアップ用としてEEPROM95a と同じ情報を記憶するEEPROM95b を備えている。これにより、例えば電源断が発生してもEEPROM95a ,95b に記憶されている情報を確実に保持することができ、更に、バックアップ用のEEPROM95b の情報と照合することにより情報の信頼性を向上できる。本金庫カセット72の送信に発光ダイオード(LED99a )を、受信にはホトダイオード99b をインタフェイス部98b を介して行う。また、本金庫カセット72には太陽電池99c を備えて電源を外部に頼らずに補充できるため、維持費等の節約になる。」

ウ:「【0036】前述した入出金ユニット12の変形例として下部ユニット14bの万円庫16,千円庫17に2枚取りのリジェクト券を収納するリジェクト収納部20a,20bを備えた構成を図12に示す。例えば出金取引きのとき、万円庫16から取り出された万円券は、搬送路により紙幣の券種の判別および紙幣の枚数をカウントする鑑査部36に搬送される。鑑査部36に搬送された万円券がリジェクト券ならば鑑査部36は、リジェクト券を搬送路により万円庫16に搬送する。搬送された万円券は、取出ローラ304aにより万円庫16の下端に設けられているリジェクト券収納部20bに収納される。また、千円庫17から取り出された千円券がリジェクト券のときも同様にして千円券リジェクト部21bに収納する。
【0037】これにより、万円庫16等から取り出されたリジェクト券の枚数をEEPROM95に記憶することにより金庫の取出し性能等を管理できる。」

エ:「【0041】次に図14?図16を用いてユニットを後方に引き出して操作する場合について説明する。後方操作では、上下連結ギアGは、上部ユニット14aに取付けられているので、上部ユニット14aと下部ユニット14bを同時に引き出す場合と(図14)下部ユニット14bのみ引き出す場合(図15)とが可能である。前面操作の場合と同様、装填庫19は、上部ユニット14aと、下部ユニット14bを引き出した状態で、装填搬送部R8aを上方に開き、装填庫19を上方に引き出すことができる。
【0042】図15は、下部ユニット14bのみ後方に引き出したもので、下部搬送路48が回動して開き、万円庫16,千円庫17および入金庫18をそれぞれ上方向に引き出すことができる。」

オ:「【0067】ステップ480に進むと制御部92は、金庫カセット72のEEPROM95から入出金取引終了後の万円庫16に保有する枚数を読取る。読取った万円券の枚数と万円庫16および装填庫19の算当結果との差分を演算して当該演算した差分がリジェクト枚数である。主制御部51は、万円券およびリジェクト枚数をRAM53に記憶した後に伝送制御部65を介してホストコンピュータに伝送する。(480?490)。
【0068】金庫交換に進むと制御部92は、装填動作を停止した後にリードスイッチ78からの検知信号により金庫が抜かれて、かつ、金庫がセットされたならばセット金庫のEEPROM95から収納している紙幣の種類及び枚数を読取る(ステップ500?530)。
【0069】読取りが終了すると制御部97a は、EEPROM95a のフラグが零ならば処理を終了して、フラグが零でなければエラー表示して警告する(540?550)。
【0070】金庫抜取りに進むと制御部92は、主制御部51から抜取り指示の信号が入力されると動作を停止させる。動作の停止後、制御部92は、セットされている金庫に対して前述した残留チェック(ステップ300?370)および算当処理(ステップ400?490)を行う。処理の終了後、制御部92は、セットされている金庫のメモリ(EEPROM95)に情報を記憶した後に金庫カセット72が抜取られる(ステップ600?650)。
【0071】金庫装着に進むと制御部92は、主制御部51から装填指示の信号が入力されると動作を停止させる。金庫カセット72が装着されると装着された金庫のメモリ(EEPROM95)から金庫に収納している紙幣の枚数等の情報を読取る。読取りが終了すると制御部92a は、EEPROM95a のフラグが零ならば処理が終了して、フラグが零でなければエラー表示して警告する(740?750)。
【0072】以上説明した如く、万円庫16等の紙幣の有無を調べる残留チェックおよび各金庫カセット72のリジェクト枚数を検出できるので、金庫カセット72に収納されている紙幣の管理が厳格にできる。」

a:図1?15の図示内容からして、引用例に記載された自動取引装置は、紙幣を投入又は放出する入出金口7と、該紙幣を搬送する複数の搬送経路から成る搬送路と、該搬送路の下方に配置された万円庫16及び千円庫17を収容する下部ユニット14bとを有するものである。

b:aから下部ユニット14bが自動取引装置を構成するといえること、エの「図15は、下部ユニット14bのみ後方に引き出したもので、下部搬送路48が回動して開き、万円庫16,千円庫17および入金庫18をそれぞれ上方向に引き出すことができる。」との記載、オの「金庫交換に進む・・・金庫抜取りに進む・・・金庫装着に進む」との記載及び該記載の「金庫」が万円庫16、千円庫17を含むことが明らかなことからして、万円庫16及び千円庫17は自動取引装置に着脱自在に装着されているものである。
さらに、ウの「前述した入出金ユニット12の変形例として下部ユニット14bの万円庫16,千円庫17に2枚取りのリジェクト券を収納するリジェクト収納部20a,20b(当審注:「20a,20b」は「20b,21b」の明らかな誤記であるので、「20b,21b」と読み替える。)を備えた構成を図12に示す。」との記載及び図12の図示内容からして、万円庫16は、万円券を収納する収納部20a及びリジェクト券を収納するリジェクト券収納部20bを備えるものであり、千円庫17は、千円券を収納する収納部21a及びリジェクト券を収納するリジェクト券収納部21bを備えるものである。
そうすると、引用例に記載された自動取引装置は、下部ユニット14bに着脱自在に装着され、万円券を収納する収納部20a及びリジェクト券を収納するリジェクト券収納部20bを備える万円庫16並びに千円券を収納する収納部21a及びリジェクト券を収納するリジェクト券収納部21bを備える千円庫17を有するものである。
【図12】

c:アの「金庫メモリ制御部91に接続されている制御部92は、鑑査部36等から入力される紙幣の損券の検知信号および金庫メモリ制御部91から入力される万円庫16等に収納されている紙幣の枚数等を示す信号によりドライブ回路93に駆動信号を出力するものである。ドライブ回路93は、制御部92から入力される駆動信号により万円庫16等からの紙幣の取り出し及び搬送路の駆動を制御するものである。」との記載、ウの「例えば出金取引きのとき、万円庫16から取り出された万円券は、搬送路により紙幣の券種の判別および紙幣の枚数をカウントする鑑査部36に搬送される。」との記載及び万円庫16、千円庫17からの紙幣の繰り出しは出金される金種に応じたものであることが明らかなことからして、引用例に記載された自動取引装置は、入出金口7に万円庫16、千円庫17のうち、出金の金種に応じた金庫から紙幣を繰り出す紙幣繰出手段を有するものである。

d:c及びウの「例えば出金取引きのとき、万円庫16から取り出された万円券は、搬送路により鑑査部36に搬送される。鑑査部36に搬送された万円券がリジェクト券ならば鑑査部36は、リジェクト券を搬送路により万円庫16に搬送する。搬送された万円券は、取出ローラ304aにより万円庫16の下端に設けられているリジェクト券収納部20bに収納される。また、千円庫17から取り出された千円券がリジェクト券のときも同様にして千円券リジェクト部21bに収納する。」との記載からして、引用例に記載された自動取引装置は、紙幣繰出手段により紙幣が繰り出されたとき、該紙幣が繰り出された金庫が万円庫16及び千円庫17のうち、いずれの金庫であるかを記憶する記憶手段を有するものである。
また、リジェクト券が不良紙幣であることは明らかであるから、図12の図示内容からして、鑑査部36は、紙幣を搬送する搬送路に沿った一箇所に設けられ、繰り出された紙幣が不良であるか否かを判別するものである。
さらに、繰り出された紙幣がリジェクト券ならば紙幣が繰り出された金庫の紙幣収納部に搬送されるから、引用例に記載された自動取引装置は、リジェクト券を、前記記憶手段の記憶に基づいて前記リジェクト券が繰り出された前記万円庫16、千円庫17の前記リジェクト券収納部20b、21bに搬送するリジェクト券回収手段を有するものである。
そうすると、引用例に記載された自動取引装置は、紙幣繰出手段により紙幣が繰り出されたとき、該紙幣が繰り出された金庫が万円庫16及び千円庫17のうち、いずれの金庫であるかを記憶する記憶手段と、
紙幣を搬送する搬送路に沿った一箇所に設けられ、繰り出された紙幣が不良であるか否かを判別する鑑査部36と、
鑑査部36により不良があると判別されたとき、該不良があると判別されたリジェクト券を、前記記憶手段の記憶に基づいて前記リジェクト券が繰り出された前記万円庫16、千円庫17の前記リジェクト券収納部20b、21bに搬送するリジェクト券回収手段を有するものである。

e:アの「万円庫16,千円庫17・・・のそれぞれに各金庫に収納されている紙幣の券種および枚数を記憶する後述するEEPROM95a?95c(メモリ)が設置されている。」との記載、イの「図8に示すタイプの金庫カセット72にはEEPROM95の他に制御部97aおよびインタフェイス部98aを有するものである。EEPROM95は、金庫に収納されている紙幣の券種および枚数を所定のアドレスに記憶しているものである。」との記載における「金庫に収納されている紙幣の・・・枚数」が金庫に収納されている総紙幣枚数を意味することは明らかだから、該記載からして、万円庫16、千円庫17は、それぞれ各金庫に収納されている総紙幣枚数を記憶するEEPROM95を有するものである。
そして、オの「金庫がセットされたならばセット金庫のEEPROM95から収納している紙幣の種類及び枚数を読取る・・・金庫カセット72が装着されると装着された金庫のメモリ(EEPROM95)から金庫に収納している紙幣の枚数等の情報を読取る。」との記載からして、万円庫16、千円庫17のEEPROM95は、万円庫16、千円庫17が入出金ユニット12に装着される時にそれぞれに収納されている総紙幣枚数を記憶しているものである。
さらに、オの「ステップ480に進むと制御部92は、金庫カセット72のEEPROM95から入出金取引終了後の万円庫16に保有する枚数を読取る。」との記載からして、万円庫16、千円庫17のEEPROM95は、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17ごとの現有総紙幣枚数を記憶するものである。
加えて、ウの「万円庫16等から取り出されたリジェクト券の枚数をEEPROM95に記憶することにより金庫の取出し性能等を管理できる。」との記載における「リジェクト券の枚数」がリジェクト券の枚数の合計を意味することは明らかだから、該記載からして、万円庫16、千円庫17のEEPROM95は、万円庫16、千円庫17から取り出されそれぞれのリジェクト券収納部20b、21bに収納されたリジェクト券の枚数の合計を記憶するものである。
以上によれば、引用例に記載された自動取引装置において、万円庫16、千円庫17は、万円庫16、千円庫17が入出金ユニット12に装着される時にそれぞれに収納されている総紙幣枚数を記憶しており、万円庫16、千円庫17から取り出されリジェクト券収納部20b、21bに収納されたリジェクト券の枚数の合計を記憶し、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17ごとの現有総紙幣枚数を記憶するEEPROM95を有している。

f:a?e、ウの「例えば出金取引きのとき、万円庫16から取り出された万円券は、搬送路により紙幣の券種の判別および紙幣の枚数をカウントする鑑査部36に搬送される。鑑査部36に搬送された万円券がリジェクト券ならば鑑査部36は、リジェクト券を搬送路により万円庫16に搬送する。搬送された万円券は、取出ローラ304aにより万円庫16の下端に設けられているリジェクト券収納部20bに収納される。また、千円庫17から取り出された千円券がリジェクト券のときも同様にして千円券リジェクト部21bに収納する。」との記載及び技術常識からして、引用例に記載された自動取引装置は、前記紙幣繰出手段、前記記憶手段、前記鑑査部36、及び前記リジェクト券回収手段による一連の処理を万円庫16、千円庫17のうち、出金の金種に応じた金庫ごとに個別に順次行なう制御手段を有するものである。

これら記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「紙幣を投入又は放出する入出金口7と、
該紙幣を搬送する複数の搬送経路から成る搬送路と、
該搬送路の下方に配置された万円庫16及び千円庫17を収容する下部ユニット14bと、
該下部ユニット14bに着脱自在に装着され、万円券を収納する収納部20a及びリジェクト券を収納するリジェクト券収納部20bを備える万円庫16並びに千円券を収納する収納部21a及びリジェクト券を収納するリジェクト券収納部21bを備える千円庫17と、
該入出金口7に万円庫16、千円庫17のうち、出金の金種に応じた金庫から紙幣を繰り出す紙幣繰出手段と、
万円庫16、千円庫17が入出金ユニット12に装着される時にそれぞれに収納されている総紙幣枚数を記憶しており、万円庫16、千円庫17から取り出されリジェクト券収納部20b、21bに収納されたリジェクト券の枚数の合計を記憶する、万円庫16、千円庫17のEEPROM95と、
前記紙幣繰出手段により前記紙幣が繰り出されたとき、該紙幣が繰り出された金庫が万円庫16及び千円庫17のうち、いずれの金庫であるかを記憶する記憶手段と、
前記搬送路に沿った1箇所に設けられ、繰り出された前記紙幣が不良で有るか否かを判別する鑑査部36と、
該鑑査部36により不良があると判別されたとき、該不良があると判別されたリジェクト券を、前記記憶手段の記憶に基づいて前記リジェクト券が繰り出された前記万円庫16、千円庫17の前記リジェクト券収納部20b、21bに搬送するリジェクト券回収手段と、
前記紙幣繰出手段、前記記憶手段、前記鑑査部36、及び前記リジェクト券回収手段による一連の処理を万円庫16、千円庫17のうち、出金の金種に応じた金庫ごとに個別に順次行なう制御手段とを有し、
万円庫16、千円庫17のEEPROM95は、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17ごとの現有総紙幣枚数を記憶する自動取引装置。」

V.対比
引用発明の「紙幣」は本願発明の「紙葉」に相当し、以下同様に、「自動取引装置」は「紙葉取扱装置」に、「紙幣を投入又は放出する入出金口7」は「紙葉を投入又は放出する投出部」に、「万円庫16」及び「千円庫17」は「紙幣収納体」に、「該搬送路の下方に配置された万円庫16及び千円庫17を収容する下部ユニット14b」は「該搬送路の下方に配置された紙幣収納体収容部」に、「万円券」及び「千円券」は「複数種類の紙葉」に、「万円券を収納する収納部20a」及び「千円券を収納する収納部21a」は「複数種類の紙葉を種類毎に収納する収納部」に、「紙幣繰出手段」は「紙葉繰出手段」に、「リジェクト券」は「不良紙葉」に、「収納する」は「回収する」に、「リジェクト券収納部20b」及び「リジェクト券収納部21b」は「不良回収部」に、それぞれ相当する。

引用発明の「万円庫16」、「千円庫17」は、それぞれ、「リジェクト券を収納するリジェクト券収納部20b」、「リジェクト券を収納するリジェクト券収納部21b」を備えているから、金庫の構成としてみればその内部にリジェクト券収納部(不良回収部)を内蔵するものといえる。
そうすると、引用発明の「万円券を収納する収納部20a及びリジェクト券を収納するリジェクト券収納部20bを備える万円庫16並びに千円券を収納する収納部21a及び搬送されるリジェクト券を収納するリジェクト券収納部21bを備える千円庫17」は本願発明の「複数種類の紙葉を種類毎に収納する収納部と共に不良紙葉を回収する不良回収部を内蔵する複数の紙幣収納体」に相当する。

引用発明の「万円庫16、千円庫17のうち、出金の金種に応じた金庫」は本願発明の「前記複数の紙幣収納体のうち、所望の前記紙幣収納体」に相当するから、引用発明の「該入出金口7に万円庫16、千円庫17のうち、出金の金種に応じた金庫から紙幣を繰り出す紙幣繰出手段」は本願発明の「該投出部に前記複数の紙幣収納体のうち、所望の前記紙幣収納体から前記紙葉を繰り出す紙葉繰出手段」に相当する。

引用発明の「万円庫16、千円庫17が入出金ユニット12に装着される時」は本願発明の「初期」に相当するから、引用発明の「万円庫16、千円庫17が入出金ユニット12に装着される時」に「それぞれに収納されている総紙幣枚数」は本願発明の「前記紙葉の初期収容枚数」に相当する。
また、引用発明の「万円庫16、千円庫17から取り出されリジェクト券収納部20b、21bに収納されたリジェクト券の枚数の合計」は本願発明の「不良紙葉の回収枚数合計」に相当する。
そうすると、引用発明の「万円庫16、千円庫17が入出金ユニット12に装着される時にそれぞれに収納されている総紙幣枚数を記憶しており、万円庫16、千円庫17から取り出されリジェクト券収納部20b、21bに収納されたリジェクト券の枚数の合計を記憶する、万円庫16、千円庫17のEEPROM95」と本願発明の「複数の前記紙幣収納体ごとに、前記紙葉の初期収容枚数、追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計、前記不良紙葉の回収枚数合計を記憶する・・・各紙葉枚数記憶手段」とは、「複数の前記紙幣収納体ごとに、初期に前記紙葉の初期収容枚数を記憶しており、前記不良紙葉の回収枚数合計を記憶する・・・記憶手段」である点で一致する。

引用発明の「前記紙幣繰出手段により前記紙幣が繰り出されたとき、該紙幣が繰り出された金庫が万円庫16及び千円庫17のうち、いずれの金庫であるかを記憶する記憶手段」と本願発明の「前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する各紙葉枚数記憶手段」とは、「前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する記憶手段」である点で一致する。

引用発明の「前記搬送路に沿った1箇所に設けられ、繰り出された前記紙幣が不良で有るか否かを判別する鑑査部36」は本願発明の「前記搬送路に沿った所定の1箇所に設けられ、繰り出された前記紙葉が不良で有るか否かを判別する良否判別手段」に相当する。

引用発明の「該鑑査部36により不良があると判別されたとき、該不良があると判別されたリジェクト券を、前記記憶手段の記憶に基づいて前記リジェクト券が繰り出された前記万円庫16、千円庫17の前記リジェクト券収納部20b、21bに搬送するリジェクト券回収手段」と本願発明の「該良否判別手段により不良があると判別されたとき、該不良があると判別された不良紙葉を、前記各紙葉枚数記憶手段の記憶に基づいて前記不良紙葉が繰り出された前記紙幣収納体の前記不良回収部に回収する不良紙葉回収手段」とは、「該良否判別手段により不良があると判別されたとき、該不良があると判別された不良紙葉を、前記記憶手段の記憶に基づいて前記不良紙葉が繰り出された前記紙幣収納体の前記不良回収部に回収する不良紙葉回収手段」である点で一致する。

本件補正は、RAM24又はHD装置25が補正前の請求項1の「紙幣収納体記憶手段」と補正前の請求項2の「各紙葉枚数記憶手段」の両記憶手段として用いられていることを根拠に、補正前の請求項1の「紙幣収納体記憶手段」の名称を「各紙葉枚数記憶手段」としたものである。
そうすると、本件補正により補正前の請求項1の「紙幣収納体記憶手段」を「各紙葉枚数記憶手段」に書き換えた、補正後の請求項1の「前記紙葉繰出手段、前記紙葉枚数記憶手段、前記良否判別手段、及び前記不良紙葉回収手段による一連の処理を所望の各紙幣収納体ごとに個別に順次行なう制御手段」は、「前記紙葉繰出手段、前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する記憶手段、前記良否判別手段、及び前記不良紙葉回収手段による一連の処理を所望の各紙幣収納体ごとに個別に順次行なう制御手段」を意味するといえる。
このことを踏まえれば、引用発明の「前記紙幣繰出手段、(紙幣繰出手段により紙幣が繰り出されたとき、該紙幣が繰り出された金庫が万円庫16及び千円庫17のうち、いずれの金庫であるかを記憶する)前記記憶手段、前記鑑査部36、及び前記リジェクト券回収手段による一連の処理を万円庫16、千円庫17のうち、出金の金種に応じた金庫ごとに個別に順次行なう制御手段」と本願発明の「前記紙葉繰出手段、前記紙葉枚数記憶手段、前記良否判別手段、及び前記不良紙葉回収手段による一連の処理を所望の各紙幣収納体ごとに個別に順次行なう制御手段」とは、「前記紙葉繰出手段、前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する前記記憶手段、前記良否判別手段、及び前記不良紙葉回収手段による一連の処理を所望の各紙幣収納体ごとに個別に順次行なう制御手段」である点で一致する。

引用発明の「万円庫16、千円庫17のEEPROM95は、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17ごとの現有総紙幣枚数を記憶する」ことと本願発明の「前記各紙葉枚数記憶手段の記憶に基づいて、前記複数の紙幣収納体ごとの現有総紙葉枚数を算出する現有総紙葉枚数算出手段」を有することとは、「前記複数の紙幣収納体ごとの現有総紙葉枚数を得る」点で一致する。

以上によれば、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
(一致点)
「紙葉を投入又は放出する投出部と、
該紙葉を搬送する複数の搬送経路から成る搬送路と、
該搬送路の下方に配置された紙幣収納体収容部と、
該紙幣収納体収容部に着脱自在に装着され、複数種類の紙葉を種類毎に収納する収納部と共に不良紙葉を回収する不良回収部を内蔵する複数の紙幣収納体と、
該投出部に前記複数の紙幣収納体のうち、所望の前記紙幣収納体から前記紙葉を繰り出す紙葉繰出手段と、
複数の前記紙幣収納体ごとに、初期に前記紙葉の初期収容枚数を記憶しており、前記不良紙葉の回収枚数合計を記憶する記憶手段と、
前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する記憶手段と、
前記搬送路に沿った所定の1箇所に設けられ、繰り出された前記紙葉が不良で有るか否かを判別する良否判別手段と、
該良否判別手段により不良があると判別されたとき、該不良があると判別された不良紙葉を、前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する前記記憶手段の記憶に基づいて前記不良紙葉が繰り出された前記紙幣収納体の前記不良回収部に回収する不良紙葉回収手段と、
前記紙葉繰出手段、前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する前記記憶手段、前記良否判別手段、及び前記不良紙葉回収手段による一連の処理を所望の各紙幣収納体ごとに個別に順次行なう制御手段と、
を有し、
前記複数の紙幣収納体ごとの現有総紙葉枚数を得る紙葉取扱装置。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
「複数の前記紙幣収納体ごとに、初期に前記紙葉の初期収容枚数を記憶しており、前記不良紙葉の回収枚数合計を記憶する記憶手段」を有し、「前記複数の紙幣収納体ごとの現有総紙葉枚数を得る」ことにつき、
本願発明では、「複数の前記紙幣収納体ごとに、前記紙葉の初期収容枚数、追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計、前記不良紙葉の回収枚数合計を記憶する各紙葉枚数記憶手段」と「前記各紙葉枚数記憶手段の記憶に基づいて、前記複数の紙幣収納体ごとの現有総紙葉枚数を算出する現有総紙葉枚数算出手段」とを有しているのに対して
引用発明では、万円庫16、千円庫17(複数の前記紙幣収納体)が入出金ユニット12に装着される時(初期)にそれぞれに収納されている総紙幣枚数(初期収容枚数)を記憶しており、リジェクト券(不良紙葉)の回収枚数合計を記憶する万円庫16及び千円庫17のEEPROM95を有し、該EEPROM95は、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17ごとの現有総紙幣枚数を記憶するものの、該EEPROM95が、紙幣の初期収容枚数、追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計を記憶するか否か不明であり、該EEPROM95の記憶に基づいて、万円庫16、千円庫17ごとの現有総紙幣枚数を算出する現有総紙葉枚数算出手段を有しているか否か不明である点。

(相違点2)
「前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する記憶手段」につき、
本願発明では、「各紙葉枚数記憶手段」が、「前記紙葉繰出手段により前記紙葉が繰り出されたとき、該紙葉が繰出された前記紙幣収納体が前記複数の紙幣収納体のうち、いずれの前記紙幣収納体であるかを記憶する」記憶手段でもあるのに対して
引用発明では、万円庫16及び千円庫17のEEPROM95が、紙幣繰出手段(紙葉繰出手段)により紙幣が繰り出されたとき、該紙幣が繰出された金庫(紙幣収納体)が万円庫16及び千円庫17(複数の紙幣収納体)のうち、いずれの金庫(紙幣収納体)であるかを記憶する記憶手段であるか否か不明である点。

VI.判断
(相違点1)
引用発明は、万円庫16、千円庫17が入出金ユニット12に装着される時にそれぞれに収納されている総紙幣枚数を記憶しており、リジェクト券の回収枚数合計を記憶し、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17ごとの現有総紙幣枚数を記憶する万円庫16及び千円庫17のEEPROM95を有しているものであるところ、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17の現有総紙幣枚数は、万円庫16、千円庫17の装着時に収納されている総紙幣枚数、万円庫16、千円庫17への追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計、リジェクト券の回収枚数合計に基づいて算出されるものであることが技術常識からして明らかであるとともに、引用例には「入出金の取引用の貨幣等の情報を記憶するEEPROM」(記載イ)と記載されているように、EEPROM95に万円庫16、千円庫17への紙幣の追加収容枚数、繰り出し枚数を記憶することが示唆されていることからして、引用例に接した当業者であれば、引用発明は、万円庫16、千円庫17のEEPROM95に、万円庫16、千円庫17の装着時(初期)に収納されている総紙幣枚数(紙幣の初期収容枚数)、万円庫16、千円庫17への追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計、リジェクト券(不良紙葉)の回収枚数合計を記憶し、前記EEPROM95の記憶に基づいて、万円庫16、千円庫17(複数の紙幣収納体ごと)の現有総紙幣枚数を算出する現有総紙葉枚数算出手段を有していることを理解するといえる。(平成25年11月22日付けの回答書の(2)の項において、請求人も『引用刊行物1(当審注:引用例)には、本願発明の「複数の前記紙幣収納体ごとに、前記紙葉の初期収容枚数、追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計前記不良紙葉の回収枚数合計を記憶する」こと及び「前記紙葉操出手段、前記紙葉枚数記憶手段、前記良否判別手段及び前記不良紙葉回収手段による一連の処理を所望の各紙幣収納体ごとに個別に順次行なう制御手段」が記載されています。』としている。)
そうすると、相違点1は引用例に記載されているに等しく、実質的な相違点ではない。
なお、仮に相違点1が引用例に記載されているに等しいとまではいえないとしても、引用発明において、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17の現有総紙幣枚数は、万円庫16、千円庫17の装着時に収納されている総紙幣枚数、万円庫16、千円庫17への追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計、リジェクト券の回収枚数合計に基づいて算出されるものであることが技術常識からして明らかであるとともに、引用例には「入出金の取引用の貨幣等の情報を記憶するEEPROM」(記載イ)と記載されているように、EEPROM95に万円庫16、千円庫17への紙幣の追加収容枚数、繰り出し枚数を記憶することが示唆されていることからして、引用発明において、入出金取引終了後の万円庫16、千円庫17ごとの現有総紙幣枚数を得るに当たり、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到し得る程度の事項である。

(相違点2)
特定の情報をどの記憶手段に記憶させるかは適宜決定される程度の事項であるから、引用発明において、「万円庫16、千円庫17の装着時(初期)に収納されている総紙幣枚数(紙幣の初期収容枚数)、万円庫16、千円庫17への追加収容枚数合計、繰り出し枚数合計、リジェクト券(不良紙葉)の回収枚数合計」と「紙幣繰出手段(紙葉繰出手段)により紙幣が繰り出されたとき、該紙幣が繰出された金庫(紙幣収納体)が万円庫16及び千円庫17(複数の紙幣収納体)のうち、いずれの金庫(紙幣収納体)であるか」とを同一の記憶手段に記憶させて、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。

本願発明の効果は、当業者が引用発明から予測し得る範囲内のものである。

以上によれば、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VII.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-01 
結審通知日 2014-04-08 
審決日 2014-04-23 
出願番号 特願2009-74887(P2009-74887)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 横林 秀治郎
関谷 一夫
発明の名称 紙葉取扱装置  
代理人 大菅 義之  

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