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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1288313
審判番号 不服2012-20797  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-22 
確定日 2014-06-04 
事件の表示 特願2009-502684「マルチメディアコンテンツを消費する装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日国際公開、WO2007/114595、平成21年 9月10日国内公表、特表2009-532929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)3月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年3月30日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成21年1月27日付けで手続補正がなされ、平成23年11月10日付けで拒絶理由が通知され、平成24年2月15日付けで意見書が提出され、同日付で手続補正がなされたが、平成24年6月15日付け(発送日同年6月22日)で拒絶査定がなされたものである。
本件は、本願についてなされた上記拒絶査定を不服として平成24年10月22日付けで請求された拒絶査定不服審判請求であって、同時に手続補正がなされたものである。
そして、前置審査において、平成25年1月11日付けで最後の拒絶理由が通知されが、意見書は提出されず、平成25年6月14日付けで前置報告され、平成25年8月6日付けで審判長から審尋されたが、回答書は提出されなかった。

2 拒絶査定の概要
この出願の請求項1-17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1 特開2005-160041号公報
刊行物2 国際公開第2003/81449号

3 平成25年1月11日付け最後の拒絶理由の概要
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1,2号に規定する要件を満たしていない。

平成24年10月22日付け手続補正された請求項1,6,10,15における「(ライセンス条件を解析して生成され、制御機能を設定する)制御信号」が不明である。

第2 本願発明
本願の請求項1?17に係る発明は、平成21年1月27日付け手続補正、平成24年2月15日付け手続補正及び平成24年10月22日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項10に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものと認められる。

「マルチメディアコンテンツを消費する方法であって、
a)マルチメディアコンテンツと、前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するライセンスデータとを、有線または無線通信ネットワークを介して受信するステップと、
b)前記マルチメディアコンテンツに対するライセンス条件を解析し、部分回避を制御するための制御信号を生成するステップと、
c)生成された前記制御信号に従って前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定し、前記設定によって前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御するステップと
を含むことを特徴とする方法。」

第3 刊行物の記載
原査定における拒絶の理由に引用された特開2005-160041号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

〈技術分野〉
「【0001】
本発明は、放送網やIP網の伝送路を用いてコンテンツを配信するコンテンツ配信サーバおよびコンテンツ配信サーバから配信されたコンテンツの再生を制御するコンテンツ再生制御端末に関する。」

〈背景技術〉
「【0002】
従来のデジタルコンテンツ配信システムとしては、DRM(Digital Rights Management)技術を利用したものがある(特許文献1参照)。DRM技術は、配信コンテンツに対して、再生回数、移動、複製などの利用制限を設定することができる。
【0003】
また、従来のデジタルコンテンツ配信システムとしては、TV-Anytime forumで規定されたメタデータを用いたものがある。TV-Anytime forumで規定されている方法は、セグメンテーションメタデータにより、コンテンツの特定区間の内容(例えば、CM、野球の一回表、サッカーの前半戦など)を記述するものである。
【0004】
近年、PVR(Personal Video Recorder)に搭載されているHDDの大容量化と自動録画機能により、見たい番組を自動的に録画して視聴することが可能となった。しかし、録画視聴では、30秒スキップや早送り、指定時間へのジャンプなどの特殊再生が自由に行えるため、CMを飛ばして視聴される場合が多く、現状のリアルタイム放送におけるCMビジネスモデルが成り立たなくなりつつある。
【0005】
また、IP網を経由してダウンロードするコンテンツに放送のようなCMビジネスモデルを適用したくとも、再生プレーヤーで自由に特殊再生が行われてしまうため、実現が難しい。しかしながら、これらの課題を解決するにあたって、従来のDRM技術ではコンテンツの再生回数を制限することはできても、特殊再生等の再生方法を制限する仕組みがない。また、セグメンテーションメタデータによって番組の特定区間をCM区間であると記述することは可能であったが、その区間に対してだけ特殊再生等を制限する仕組みがない。
【特許文献1】特開2002-342518号公報」

〈発明が解決しようとする課題〉
「【0006】
しかし、上記の従来の技術では、放送事業者側の意図とした再生制御が番組の特定区間毎に制限する仕組みがないという課題を有していた。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、コンテンツの特定区間毎の再生形態を制限することを可能にすることを目的とする。」

〈発明の効果〉
「【0009】
本発明によれば、再生制御情報に基づいて、コンテンツの特定区間の再生を制限することができる。」

〈実施の形態〉
「【0054】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1にかかるコンテンツ再生制御システムの構成を示すブロック図である。図1において、コンテンツ再生制御システムは、暗号化コンテンツとライセンス情報、再生制御情報の送出装置としてのコンテンツ配信サーバ(以下、サーバ)100と、コンテンツ再生制御端末(以下、端末)110とが、放送網やIP網などの伝送路120を介して接続された構成を採る。」

《サーバ》
「【0055】
サーバ100は、暗号化コンテンツ、ライセンス情報、再生制御情報を生成し、放送網やIP網等の伝送路120を通じて端末110に送出する装置である。
【0056】
サーバ100には、コンテンツ暗号化部101、ライセンス情報生成部102、再生制御情報生成部103、通信部104、入力部105、コンテンツ蓄積部106、およびコンテンツ鍵蓄積部107を有している。
【0057】
ただし、実施の形態1におけるサーバ100は構成の一例であり、ライセンス情報生成部102、再生制御情報生成部103、コンテンツ蓄積部106、コンテンツ鍵蓄積部107は各々別のサーバであってもよい。実際には、再生制御情報を、コンテンツ制作業者が制作する場合や、コンテンツ配信業者が制作する場合や、再生制御情報のみを制作する業者が存在する場合などのパターンが考えられる。このため、それぞれの場合に合わせて再生制御情報生成部103が存在するサーバも異なってくる。
【0058】
再生制御情報生成部103は、コンテンツ蓄積部106に蓄積されたコンテンツの制御情報、つまりコンテンツの再生形態を制限する情報を入力部105から入力する。また、再生制御情報生成部103は、コンテンツ蓄積部106に蓄積されたコンテンツを入力し、コンテンツの区間情報を解析する。そして、再生制御情報生成部103は、解析した区間情報と、入力部105から入力された制御情報を対応付けて、コンテンツの再生方法を制御するための再生制御情報を生成する。」

「【0060】
ライセンス情報生成部102は、コンテンツ鍵蓄積部107に蓄積された、コンテンツを暗号化するためのコンテンツ鍵と、再生制御情報に基づく再生のみを許可するためのコンテンツ鍵の利用条件と、を含むライセンス情報を生成する。
【0061】
コンテンツ暗号化部101は、ライセンス情報生成部102にて生成されたライセンス情報に含まれるコンテンツ鍵を用いてコンテンツを暗号化し、通信部104に送る。
【0062】
通信部104は、端末110とデータの送受信を行う手段であり、放送網やIP網などの伝送路120を通じて暗号化コンテンツを端末110に送信する。」

《端末》
「【0064】
端末110は、放送網やIP網の伝送路120を通じて、サーバ100から、暗号化コンテンツ、ライセンス情報、再生制御情報を受信し、ライセンス情報の利用条件にて再生制御情報による再生が許可されている場合、再生制御情報に基づいてコンテンツを再生する装置である。
【0065】
端末110は、通信部111、コンテンツ記録部112、ライセンス情報記録部113、再生制御情報記録部114、コンテンツ復号部115、ライセンス情報処理部116、再生制御情報処理部117、および操作部118を有している。
【0066】
通信部111は、放送網やIP網の伝送路120を通じて、サーバ100からデータの受信を行う。
【0067】
コンテンツ記録部112は、通信部111が受信、もしくは他の記録媒体から取得した暗号化コンテンツを記録するための記録媒体であり、具体的には、HDDやDVD-RAM、SDメモリカード、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ICカード等である。これにより、暗号化コンテンツ利用前に予めサーバ100から暗号化コンテンツを取得しておくことができる他、他の蓄積メディアを経由して暗号化コンテンツを取得することができる。
【0068】
ライセンス情報記録部113は、通信部111が受信、もしくは他の記録媒体から取得したライセンス情報を記録するための記録媒体であり、具体的には、HDDやDVD-RAM、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ICカード、メモリカード等である。これによれば、ライセンス情報利用前に予めサーバ100からライセンス情報を取得しておくことができる他、他の蓄積メディアを経由してライセンス情報を取得することができる。
【0069】
再生制御情報記録部114は、通信部111が受信、もしくは他の記録媒体から取得した再生制御情報を記録するための記録媒体であり、具体的には、HDDやDVD-RAM、SDメモリカード、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ICカード等である。これによれば、再生制御情報利用前に予めサーバ100から再生制御情報を取得しておくことができる他、他の蓄積メディアを経由して再生制御情報を取得することができる。
【0070】
コンテンツ復号部115は、コンテンツ記録部112に記録されている暗号化コンテンツを、ライセンス情報処理部116から渡されるコンテンツ鍵で復号し、出力端末130に送出する。
【0071】
出力端末130は、コンテンツを出力する端末であり、画像を表示するモニタや音声を出力するスピーカなどからなる。
【0072】
また、コンテンツ復号部115は、ライセンス情報の利用条件を遵守しなければならない。従って、コンテンツ復号部115は、利用条件にて「再生制御情報に基づく再生のみを許可する」ことのみが指定された場合、通常の再生は認められず、再生制御情報に従って再生処理を行う。
【0073】
ライセンス情報処理部116は、ライセンス情報記録部113からコンテンツ鍵と利用条件を含むライセンス情報を取得し、利用条件を満たす場合のみコンテンツ復号部115にコンテンツ鍵を渡し、暗号化されたコンテンツの復号化を許可する。
【0074】
ここで、利用条件には、ライセンス情報生成部102での説明の通り、従来のDRMで設定可能な条件の他に、「再生制御情報に基づく再生のみを許可する」ことが追記される。また、ライセンス情報は、DRM技術によって不正な複製・改竄から保護されている。
【0075】
再生制御情報処理部117は、再生制御情報に基づいて、コンテンツ復号部115におけるコンテンツの再生を制御する。具体的には、再生制御情報処理部117は、再生制御情報に特定区間のひとつである例えばCM区間のスキップ禁止が設定されている場合、CMコンテンツ再生中に操作部118からのスキップ操作が行われても、再生制御情報処理部117はこれを拒否するようコンテンツ復号部115に指示する。
【0076】
操作部118は、ユーザからのコンテンツ再生操作を受け付ける。具体的には、操作部118は、再生、停止、一時停止、巻き戻し、早送り、スキップ、ジャンプ、録画等の操作である。」

《ライセンス情報》
「【0078】
次に、ライセンス情報について、図2を用いて説明する。図2は、ライセンス情報と再生制御情報、暗号化コンテンツの関係を示すイメージ図である。
【0079】
図2に示すように、ライセンス情報200は、コンテンツ暗号化部101が暗号化コンテンツ203を生成する際に用いたコンテンツ鍵201と、利用条件202から構成される。
【0080】
利用条件202には、従来のDRMで設定可能な再生回数、移動、複製などの利用制限条件などの他に、再生制御情報生成部103が生成した再生制御情報204に基づく再生のみを許可する旨の情報が追加されている。
【0081】
これにより、端末110において、利用条件202を用いて、再生制御情報204に基づく再生が可能となる。また、ライセンス情報は、DRM技術によって不正な複製・改竄から保護されている。」

《再生制御情報》
「【0090】
次に、再生制御情報生成部103が生成する再生制御情報について、詳細に説明する。
【0091】
再生制御情報は、XML(eXtensible Markup Language)等で記述されている。再生制御情報には、セグメンテーションメタデータによって分割された特定区間に対して、スキップ禁止、早送り禁止、ジャンプなどの特殊再生に対して禁止等の制限情報が設定される。
【0092】
次に、XMLで記述された再生制御情報について、説明する。まず、再生制御情報のスキーマについて図5を用いて説明する。図5は上記のような再生制御情報のスキーマ例を示す図である。
【0093】
再生制御情報のスキーマは、従来のTV-Anytime Forumで規定されているSegmentGroupInformationを、再生制御を記述するPlayControlスキーマ500にて拡張し、セグメント(特定区間)毎に再生制御情報を付与できるようにするものである。
【0094】
PlayControlスキーマ500は、図中501に示すように、再生方法として、play(再生)、stop(停止)、pause(一時停止)、forward(早送り)、rewind(巻き戻し)、skip(時間スキップ)、jump(指定時間へジャンプ)、record(録画)、copy(コピー)を設定している。さらに、PlayControlスキーマ500は、図中502に示すように、501で示される再生方法それぞれに、true(許可)/false(不許可)を設定している。
【0095】
ただし、このスキーマは一例であり、さらに、再生時刻による制限や特殊再生回数による制限、セグメントの再生順序による制限など様々な設定が考えられる。なお、特殊再生とは、通常の再生(play)以外、つまりユーザがセグメントを詳細に見ないような再生方法を言う。
【0096】
これらの事例としては、禁止されている特殊再生がコンテンツ復号部115にて実行されていた場合は、許可されている特殊再生に変更させるといった設定がある。
【0097】
その他にも、複数のコンテンツもしくは区間の再生順序を設定し、設定された再生順序以外の再生を禁止するとか、特定のコンテンツもしくは区間の再生可能時間帯を設定し、設定された時間帯以外の再生を禁止するといった設定がある。」

「【0098】
次に、再生制御情報の具体的な記述について、図6および図7を用いて説明する。図6、図7は、本実施の形態のコンテンツ再生制御システムにおける再生制御情報を記述したメタデータの一例を示す図である。
【0099】
本実施の形態にかかる再生制御情報60は、XMLを用いた階層化された構造化記述により記述されている。これにより、再生制御情報60に汎用性を持たせることができる。
【0100】
具体的には、再生制御情報60には、複数の、コンテンツの区分を示すセグメント600a?600cが記述されている。
【0101】
それぞれのセグメント(特定区間)600a?600cには、タイトル601a?601cと、説明602a?602cと、セグメントの識別番号であるセグメントID603a?603cと、用いる映像の識別子である映像ID604a?604cと、セグメントの開始時間605a?605cと、セグメントの長さ606a?606cが記述されている。
【0102】
また、再生制御情報60には、607に示すように、セグメント600a?600cのまとめ方や再生形態の制限などからなる再生方法が記述されている。
【0103】
具体的には、再生方法607には、再生方法607のタイトル608と、再生方法607の説明609と、再生方法607の識別番号610と、使う映像の識別子615と、使用するセグメントのセグメントリスト611と、特定のセグメントに対する制限情報612と、が記述されている。
【0104】
セグメントリスト611には、使用するセグメントのIDが再生順に記述されている。これにより、端末110に、再生制御情報60の発行者の意図した再生順でコンテンツの再生をさせることができる。
【0105】
また、制限情報612には、制御する対象セグメントのID613と、そのセグメントに対する制限(制御)方法614a?614cが記述されている。
【0106】
具体的には、614aで示される部分には<Forward>(早送り)の禁止が記述され、614bで示される部分には<Skip>(時間スキップ)の禁止が記述され、614cで示される部分には<Jump>(指定時間へジャンプ)、つまりこのセグメントを再生せずに飛ばす再生方法の禁止が記述されている。これにより、コンテンツの特定区間(セグメント)を跨ぐ時間スキップ、指定時間へのジャンプが禁止される。具体的には、セグメント600b(CM区間)の早送りとスキップ、セグメント600b(CM区間)前からセグメント600b(CM区間)後へのジャンプが禁止される。
【0107】
このように、再生制御情報60には、複数のセグメント600a?600cと、これらのセグメント600a?600cの再生に関する順序や再生の制限情報が記述されている。」

《暗号化コンテンツとそのライセンス情報、再生制御情報の取得》
「【0110】
次に、図1に示したコンテンツ再生制御システムにおいて、端末110がサーバ100から暗号化コンテンツとそのライセンス情報、再生制御情報を取得するまでの動作について図8に示す処理フローを参照して説明する。
【0111】
まず、サーバ100のライセンス情報生成部102が、コンテンツ鍵蓄積部107から、再生制御を行いたいコンテンツを暗号化するためのコンテンツ鍵Kc(以下、Kc)を抽出する。そして、ライセンス情報生成部102は、KcおよびKcの利用条件を含むライセンス情報を生成する(ステップS101(以下、ステップSを単にSという))。ここで、ライセンス情報生成部102は、利用条件に「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」ことを記載する。
【0112】
次に、ライセンス情報生成部102は、通信部104を通じて、S101で生成したライセンス情報を端末110の通信部111に送信する(S102)。ここで、サーバ100から端末110への通信方法としては、放送網を介して送出する方法、IP網を介してIPマルチキャストにて送信する方法、端末110からの要求に対してIP網を介して送信する方法などがある。
【0113】
これに対して、端末110は、通信部111において、ライセンス情報を受信し、ライセンス情報記録部113に送る。次に、ライセンス情報記録部113は、通信部111を通じて取得したライセンス情報を記録媒体に記録する(S103)。
【0114】
次に、サーバ100のライセンス情報生成部102が、S101にて生成したKcをコンテンツ暗号化部101に渡す(S104)。次に、コンテンツ暗号化部101は、コンテンツ蓄積部106からコンテンツを取得し、取得したコンテンツを、S104にて取得したKcで暗号化する(S105)。
【0115】
次に、コンテンツ暗号化部101は、S105にて暗号化したコンテンツ(暗号化コンテンツ)を、通信部104を通じて端末110の通信部111に送信する。ここで、サーバ100から端末110への通信方法としては、放送網を介して送出する方法、IP網を介してIPマルチキャストにて送信する方法、端末110からの要求に対してIP網を介して送信する方法などがある(S106)。
【0116】
これに対して、端末110は、通信部111において、暗号化コンテンツを受信し、コンテンツ記録部112に送る。次に、コンテンツ記録部112は、通信部111を通じて取得した暗号化コンテンツを暗号化したまま記録媒体に記録する(S107)。
【0117】
次に、サーバ100の再生制御情報生成部103が、S105にて暗号化した暗号化コンテンツに対応する再生制御情報を生成する(S108)。
【0118】
そして、再生制御情報生成部103は、通信部104を通じて端末110の通信部111に再生制御情報を送信する(S109)。ここで、サーバ100から端末110への通信方法としては、放送網を介して送出する方法、IP網を介してIPマルチキャストにて送信する方法、端末110からの要求に対してIP網を介して送信する方法がある。
【0119】
これに対して、端末110は、通信部111において、再生制御情報を受信し、再生制御情報記録部114に送る。次に、再生制御情報記録部114は、通信部111を通じて取得した再生制御情報を記録媒体に記録する(S110)。
【0120】
以上の処理フローにより、端末110は、コンテンツ記録部112に暗号化コンテンツを、ライセンス情報記録部113に暗号化コンテンツを復号するためのKcとその利用条件を記載したコンテンツ情報を、再生制御情報記録部114に再生制御情報を記録する。」

《ライセンス情報に従った暗号化コンテンツの復号化》
「【0123】
次に、端末110がするまでの動作について、図9に示す処理フローを参照して説明する。
【0124】
ユーザが操作部118にコンテンツの再生を要求すると、これに対して、操作部118が再生要求を入力する(S201)。次に、操作部118は、コンテンツ復号部115に、コンテンツ再生を要求する(S202)。
【0125】
次に、コンテンツ復号部115は、ライセンス情報処理部116にコンテンツに対応するライセンス情報(Kcと利用条件)を要求する(S203)。
【0126】
これに対して、ライセンス情報処理部116は、ライセンス情報記録部113からコンテンツに対応するライセンス情報を取得する(S204)。
【0127】
次に、ライセンス情報処理部116は、コンテンツ復号部115にライセンス情報を返す(S205)。ここでライセンス情報処理部116が出力するライセンス情報に含まれる利用条件には、「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」ことが記載されている。このように、利用条件にライセンス情報には、暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可すると記述することにより、端末110は、必ず再生制御情報を用いて暗号化コンテンツを再生するようになる。
【0128】
これに対して、コンテンツ復号部115は、ライセンス情報を取得する。次に、コンテンツ復号部115は、取得したライセンス情報の利用条件に、「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」が記載されているので、再生制御情報処理部117に再生制御情報処理を要求する(S206)。
【0129】
これに対して、再生制御情報処理部117は、再生制御情報記録部114からコンテンツに対応する再生制御情報を取得する(S207)。
【0130】
ここで、例えば、図3に示すように、利用条件301および再生制御情報303のそれぞれに発行者識別情報302、304が付与されている場合には、再生制御情報処理部117は、利用条件に付与されている発行者識別情報302と同じ発行者識別情報304を持つ再生制御情報303を取得する。
【0131】
このように、再生制御情報の発行者を示す発行者識別情報302、304を用いることで、再生制御情報の発行者が発行した再生制御情報のみを用いるようになり、再生制御情報の発行者が意図した通りにコンテンツの再生を制御できる。
【0132】
また、例えば、図4に示すように、利用条件401および再生制御情報403にそれずれ、発行者識別情報302、304およびID402、404が付与されている場合には、再生制御情報処理部117は、利用条件に付与されている発行者識別情報302およびID402と同じ発行者識別情報304およびID404を持つ再生制御情報403を取得する。
【0133】
これにより、再生制御情報の発行者が複数の再生制御情報を発行したとしても、ID402、404を用いることにより、発行者が発行した再生制御情報のどれを使用すればよいか判断することができる。
【0134】
そして、再生制御情報処理部117は、コンテンツ復号部115に再生制御情報によるコンテンツ再生の制御準備の完了通知を返す(S208)。
【0135】
次に、コンテンツ復号部115は、再生制御情報に対応する暗号化コンテンツをコンテンツ記録部112から取得する(S209)。そして、コンテンツ復号部115は、Kcにて暗号化コンテンツを復号化し再生する(S210)。
【0136】
以上の処理のフローにより、端末110は、再生制御情報に基づくコンテンツの再生を開始する。」

《CM区間中にスキップ操作が行われた場合についての処理》
「【0137】
次に、図1のコンテンツ再生制御システムにおいて、端末110が、図6、図7に示す再生制御情報に基づいた再生を行っている状態で、CM区間中にスキップ操作が行われた場合についての処理フローを図10に示す処理フローを参照して説明する。
【0138】
CM区間再生中に、操作部118は、ユーザからスキップ要求を受けると(S301)、コンテンツ復号部115にスキップ要求を渡す(S302)。
【0139】
これに対して、コンテンツ復号部115は、再生制御情報処理部117にスキップの可否チェックを要求する(S303)。
【0140】
これに対して、再生制御情報処理部117は、再生制御情報を参照して、再生中のセグメントはスキップ禁止であることを認識し、スキップ不可であることをコンテンツ復号部115に返す(S304)。
【0141】
具体的には、再生制御情報処理部117は、図7に示す再生制御情報60の制限情報612を参照する。次に、再生制御情報処理部117は、制限情報612のID613を参照し、制限対象のセグメントを認識する。この場合は、ID613には、CMに関するセグメント600bのID603bが記述されているので、再生制御情報処理部117は、CMに関するセグメント600bが再生の制限対象であると認識する。
【0142】
次に、再生制御情報処理部117は、制限(制御)方法614a?614cを参照し、具体的に、CMに関するセグメント600bにどのような制限が設定されているか認識する。この場合、制限方法614a?614cには、「早送り」、「スキップ」、「ジャンプ」が不可になっているので、再生制御情報処理部117は、CMに関するセグメント600bが「スキップ」不可であることを認識する。そして、再生制御情報処理部117は、スキップ不可である旨をコンテンツ復号部115に返す。
【0143】
これに対して、コンテンツ復号部115は、S304にてスキップ不可であることを取得したため、S302のスキップ要求には応じずそのまま現在行っている再生方法でコンテンツの再生を続行する(S305)。
【0144】
また、この際、既に再生制御情報において禁止されている再生方法、例えばスキップ、早送り中である場合は、コンテンツ復号部115は、再生制御情報において許可されている再生方法に戻す処理をする。なお、再生制御情報において、制御の対象となっているセグメントを飛ばすジャンプ処理、スキップ処理がなされたときにも、コンテンツ復号部115は、この処理を中止する。
【0145】
なお、コンテンツ復号部115は、S304でスキップ不可を取得した場合、「スキップ不可」である旨を出力端末130に送り、ユーザにその操作が禁止であることを通知しても良い。
【0146】
なお、コンテンツ復号部115は、スキップ要求を受けた際に、スキップの可否を再生制御情報処理部117に操作要求がある毎に問い合わせることなく、再生要求時に再生制御情報処理部から再生制御情報を取得し、コンテンツ復号部115内で判断するようにしても良い。
【0147】
以上のように、端末110は、再生制御情報を用いてコンテンツの再生を行うことにより、再生制御情報に記載された制限方法において禁止された再生方法を受け付けないようにできる。つまり、再生制御情報の発行者(放送事業者)の意図した再生を端末110に遵守させることができる。
【0148】
なお、本処理フローでは、スキップのみを例としているが、図6、図7の再生制御情報60に記載されている他の操作(早送り、ジャンプ)についても同様の処理となる。本処理フローにより、再生制御情報に基づいた再生を端末に遵守させることができる。
【0149】
以上説明したように、実施の形態1によれば、コンテンツの特定区間の再生方法(形態)に関する制限方法を記載した再生制御情報に基づいてコンテンツの再生を行うので、コンテンツの特定区間の再生方法に関する制御を可能にすることができる。」








第4 対比
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1に記載されている技術は、
「従来のデジタルコンテンツ配信システムとしては、DRM(Digital Rights Management)技術を利用したものがあ」り、「配信コンテンツに対して、再生回数、移動、複製などの利用制限を設定することができ」(段落【0002】)、
「また、従来のデジタルコンテンツ配信システムとしては、TV-Anytime forumで規定されたメタデータを用いたものがあ」り、「セグメンテーションメタデータにより、コンテンツの特定区間の内容(例えば、CM、野球の一回表、サッカーの前半戦など)を記述するものであ」り(段落【0003】)、
「近年、PVR(Personal Video Recorder)に搭載されているHDDの大容量化と自動録画機能により、見たい番組を自動的に録画して視聴することが可能とな」り、「CMを飛ばして視聴される場合が多く、現状のリアルタイム放送におけるCMビジネスモデルが成り立たなくなりつつあ」り(段落【0004】)、
「また、IP網を経由してダウンロードするコンテンツに放送のようなCMビジネスモデルを適用したくとも、再生プレーヤーで自由に特殊再生が行われてしまうため、実現が難し」く、CM「区間に対してだけ特殊再生等を制限する仕組みがない」(段落【0005】)という背景のもと、
「コンテンツの特定区間毎の再生形態を制限することを可能にすることを目的とする」(段落【0007】)ものである。

刊行物1に記載されている技術においては、
「端末110は、放送網やIP網の伝送路120を通じて、サーバ100から、暗号化コンテンツ、ライセンス情報、再生制御情報を受信し、ライセンス情報の利用条件にて再生制御情報による再生が許可されている場合、再生制御情報に基づいてコンテンツを再生する装置であ」って(段落【0064】)、
「端末110は、通信部111において、ライセンス情報を受信し、ライセンス情報記録部113に送」り、「ライセンス情報記録部113は、通信部111を通じて取得したライセンス情報を記録媒体に記録」し(段落【0113】)、
「端末110は、通信部111において、暗号化コンテンツを受信し、コンテンツ記録部112に送」り、「コンテンツ記録部112は、通信部111を通じて取得した暗号化コンテンツを暗号化したまま記録媒体に記録」し(段落【0116】)、
「端末110は、通信部111において、再生制御情報を受信し、再生制御情報記録部114に送」り、「再生制御情報記録部114は、通信部111を通じて取得した再生制御情報を記録媒体に記録」し(段落【0119】)、
ここで、「ライセンス情報200は、コンテンツ暗号化部101が暗号化コンテンツ203を生成する際に用いたコンテンツ鍵201と、利用条件202から構成され」(段落【0079】)、
「利用条件202には、従来のDRMで設定可能な再生回数、移動、複製などの利用制限条件などの他に、再生制御情報生成部103が生成した再生制御情報204に基づく再生のみを許可する旨の情報が追加され」(段落【0080】)、
「これにより、端末110において、利用条件202を用いて、再生制御情報204に基づく再生が可能とな」り(段落【0081】)、
「再生制御情報60には、複数のセグメント600a?600cと、これらのセグメント600a?600cの再生に関する順序や再生の制限情報が記述され」(段落【0107】)、
「ユーザが操作部118にコンテンツの再生を要求すると、」「操作部118は、コンテンツ復号部115に、コンテンツ再生を要求」し(段落【0124】)、
「コンテンツ復号部115は、ライセンス情報処理部116にコンテンツに対応するライセンス情報(Kcと利用条件)を要求」し(段落【0125】、「Kc」は、「コンテンツ鍵」(段落【0111】))、
「ライセンス情報処理部116は、ライセンス情報記録部113からコンテンツに対応するライセンス情報を取得」し(段落【0126】)、
「ライセンス情報処理部116は、コンテンツ復号部115にライセンス情報を返」し、『ここでライセンス情報処理部116が出力するライセンス情報に含まれる利用条件には、「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」ことが記載されて』おり(段落【0127】)、
「コンテンツ復号部115は、ライセンス情報を取得」し、「コンテンツ復号部115は、取得したライセンス情報の利用条件に、「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」が記載されているので、再生制御情報処理部117に再生制御情報処理を要求」し(段落【0128】)、
「再生制御情報処理部117は、再生制御情報記録部114からコンテンツに対応する再生制御情報を取得」し(段落【0129】)、
「再生制御情報処理部117は、コンテンツ復号部115に再生制御情報によるコンテンツ再生の制御準備の完了通知を返」し(段落【0134】)、
「コンテンツ復号部115は、再生制御情報に対応する暗号化コンテンツをコンテンツ記録部112から取得」し、「コンテンツ復号部115は、Kcにて暗号化コンテンツを復号化し再生」(段落【0135】)し、
「CM区間再生中に、操作部118は、ユーザからスキップ要求を受けると」、「コンテンツ復号部115にスキップ要求を渡」し(段落【0138】)、
「コンテンツ復号部115は、再生制御情報処理部117にスキップの可否チェックを要求」し(段落【0139】)、
「再生制御情報処理部117は、再生制御情報を参照して、再生中のセグメントはスキップ禁止であることを認識し、スキップ不可であることをコンテンツ復号部115に返」し(段落【0140】)、
「コンテンツ復号部115は、・・・スキップ不可であることを取得したため、・・・スキップ要求には応じずそのまま現在行っている再生方法でコンテンツの再生を続行する」(段落【0143】)。

刊行物1に記載された技術は、「コンテンツ復号部115は、スキップ要求を受けた際に、スキップの可否を再生制御情報処理部117に操作要求がある毎に問い合わせることなく、再生要求時に再生制御情報処理部から再生制御情報を取得し、コンテンツ復号部115内で判断するようにしても良い」(段落【0146】)ものであるから、「コンテンツ復号部115は、スキップ要求を受けた際に、」「再生要求時に再生制御情報処理部から再生制御情報を取得し、コンテンツ復号部115内で判断する」技術が記載されている。ここで、「スキップ要求」は、「再生要求時」より後でなされるから、「コンテンツ復号部115は、再生要求時に再生制御情報処理部から再生制御情報を取得し、スキップ要求を受けた際に、コンテンツ復号部115内で判断する」技術が記載されている。
「再生要求時に再生制御情報処理部から再生制御情報を取得し、コンテンツ復号部115内で判断する」ものは、コンテンツ復号部に再生制御情報があるから、「CM区間再生中に、操作部118は、ユーザからスキップ要求を受けると」、「コンテンツ復号部115にスキップ要求を渡」し、コンテンツ復号部は、コンテンツ復号部内に取得した再生制御情報を参照して、再生中のセグメントはスキップ禁止であることを認識し、スキップ要求には応じずそのまま現在行っている再生方法でコンテンツの再生を続行するものである。

以上より、刊行物1に記載されている技術は、方法の発明として認定でき、その方法(以下「刊行物1発明」という。)は、次のとおりである。

「端末は、放送網やIP網の伝送路を通じて、サーバから、暗号化コンテンツ、ライセンス情報、再生制御情報を受信し、ライセンス情報の利用条件にて再生制御情報による再生が許可されている場合、再生制御情報に基づいてコンテンツを再生する装置であって、
端末は、通信部において、ライセンス情報を受信し、ライセンス情報記録部に送り、ライセンス情報記録部は、通信部を通じて取得したライセンス情報を記録媒体に記録し、
端末は、通信部において、暗号化コンテンツを受信し、コンテンツ記録部に送り、コンテンツ記録部は、通信部を通じて取得した暗号化コンテンツを暗号化したまま記録媒体に記録し、
端末は、通信部において、再生制御情報を受信し、再生制御情報記録部に送り、再生制御情報記録部は、通信部を通じて取得した再生制御情報を記録媒体に記録し、
ここで、ライセンス情報は、コンテンツ暗号化部が暗号化コンテンツを生成する際に用いたコンテンツ鍵と、利用条件から構成され、
利用条件には、従来のDRMで設定可能な再生回数、移動、複製などの利用制限条件などの他に、再生制御情報生成部が生成した再生制御情報に基づく再生のみを許可する旨の情報が追加され、
これにより、端末において、利用条件を用いて、再生制御情報に基づく再生が可能となり、
再生制御情報には、複数のセグメントと、これらのセグメントの再生に関する順序や再生の制限情報が記述され、
ユーザが操作部にコンテンツの再生を要求すると、操作部は、コンテンツ復号部に、コンテンツ再生を要求し、
コンテンツ復号部は、ライセンス情報処理部にコンテンツに対応するライセンス情報(コンテンツ鍵と利用条件)を要求し、
ライセンス情報処理部は、ライセンス情報記録部からコンテンツに対応するライセンス情報を取得し、
ライセンス情報処理部は、コンテンツ復号部にライセンス情報を返し、ここでライセンス情報処理部が出力するライセンス情報に含まれる利用条件には、「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」ことが記載されており、
コンテンツ復号部は、ライセンス情報を取得し、コンテンツ復号部は、取得したライセンス情報の利用条件に、「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」が記載されているので、再生制御情報処理部に再生制御情報処理を要求し、
再生制御情報処理部は、再生制御情報記録部からコンテンツに対応する再生制御情報を取得し、
コンテンツ復号部は、再生制御情報処理部から再生制御情報を取得し、
コンテンツ復号部は、再生制御情報に対応する暗号化コンテンツをコンテンツ記録部から取得し、コンテンツ復号部は、コンテンツ鍵にて暗号化コンテンツを復号化し再生し、
CM区間再生中に、操作部は、ユーザからスキップ要求を受けると、コンテンツ復号部は、コンテンツ復号部内に取得した再生制御情報を参照して、再生中のセグメントはスキップ禁止であることを認識し、スキップ要求には応じずそのまま現在行っている再生方法でコンテンツの再生を続行する
コンテンツの再生方法。」

2 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

(1)「マルチメディアコンテンツを消費する方法」

本願発明における「マルチメディアコンテンツ」は、本願明細書の「背景技術」に
『【0002】
放送及びストリーミング環境におけるマルチメディアデータは、衛星、地上波、ケーブル、インターネットなどを介して伝送される。ユーザは、伝送されたリソースを、自身のデバイスで再生し、またはコピーすることができる。保存されたリソースを変更すること、あるいは、他のデバイスにエクスポートし、またはコピーすることができる。本明細書では、このようにマルチメディアコンテンツが利用される様々な形態を「消費(Consumption)」と表現する。
【0003】
一方、かかる環境において、マルチメディアコンテンツに対する回避およびアクセスは、制約される必要がある。第1に、マルチメディアコンテンツが広告を含む場合、収益率は、広告を回避する可能性に従って異なることがある。したがって、ユーザが広告部分をスキップできないようにする必要がある。第2に、現在オンエア中のリソースに対する許容可能な同時アクセスの範囲を制限する必要がある。
【0004】
しかし、従来のマルチメディアコンテンツの消費装置(consuming apparatus)は、マルチメディアコンテンツを再生または保存するときに、ユーザが、部分回避を介して広告部分をスキップすることがある問題がある。また、従来のコンテンツ消費装置は、マルチメディアコンテンツに対する同時アクセスの回数を制御する手段を有していない。』
と記載されているように、「放送及びストリーミング環境におけるマルチメディアデータは、衛星、地上波、ケーブル、インターネットなどを介して伝送される」ものであって、このように伝送された「コンテンツ」を意味すると認められる。
一方、刊行物1発明は、「放送網やIP網の伝送路を通じて、サーバから、暗号化コンテンツ、ライセンス情報、再生制御情報を受信」するから、刊行物1発明における「コンテンツ」は、「放送網やIP網の伝送路を通じて」「受信」されるものであり、「マルチメディアコンテンツ」といえる。
そして、本願発明においては、「本明細書では、このようにマルチメディアコンテンツが利用される様々な形態を「消費(Consumption)」と表現する」(段落【0002】)のであるから、コンテンツを再生することは、「消費する」といえる。
以上より、「コンテンツの再生法」である刊行物1発明は、「マルチメディアコンテンツを消費する方法」といえる。

(2)「a)マルチメディアコンテンツと、前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するライセンスデータとを、有線または無線通信ネットワークを介して受信するステップ」

刊行物1発明は、「放送網やIP網の伝送路を通じて、サーバから、暗号化コンテンツ、ライセンス情報、再生制御情報を受信」するものである。
刊行物1発明における「コンテンツ」が「マルチメディアコンテンツ」といえることは、上記(1)のとおりである。
刊行物1発明における「ライセンス情報」は、
「ライセンス情報は、コンテンツ暗号化部が暗号化コンテンツを生成する際に用いたコンテンツ鍵と、利用条件から構成され」るから、「前記マルチメディアコンテンツに対する」ものであり、
「利用条件には、従来のDRMで設定可能な再生回数、移動、複製などの利用制限条件などの他に、再生制御情報生成部が生成した再生制御情報に基づく再生のみを許可する旨の情報が追加され、
これにより、端末において、利用条件を用いて、再生制御情報に基づく再生が可能となり、
再生制御情報には、複数のセグメントと、これらのセグメントの再生に関する順序や再生の制限情報が記述され」るものであり、
刊行物1発明は、「CM区間再生中に、操作部は、ユーザからスキップ要求を受けると、コンテンツ復号部は、再生制御情報を参照して、再生中のセグメントはスキップ禁止であることを認識」するから、「再生制御情報」には、「CM区間」の「スキップ禁止」であることが認識できるデータがあると理解できる。「CM区間」は、「コンテンツに対する部分」であり、『「CM区間」の「スキップ禁止」であることが認識できるデータ』は、「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を」表すデータといえる。
本願発明の「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するライセンスデータ」における「表示する」の文言は、技術的にみて、実際に「表示する」ものとは理解できず、「表す」という意味とすることが自然であり、本願明細書の段落【0005】には、「マルチメディアコンテンツに対するアクセスまたは回避に関する条件を表すライセンスデータ」と記載され、段落【0008】には、「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表すライセンスデータ」と記載されていることからみても、「表す」ことを意味しているものと認められる。
そうすると、刊行物1発明の上記『「CM区間」の「スキップ禁止」であることが認識できるデータ』は、「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータ」といえる。
また、刊行物1発明は、「放送網やIP網の伝送路を通じて、サーバから、暗号化コンテンツ、ライセンス情報、再生制御情報を受信」するものであるから、 「有線または無線通信ネットワークを介して受信する」ものといえる。
以上より、刊行物1発明は、「マルチメディアコンテンツと、前記マルチメディアコンテンツに対するライセンスデータと、前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータとを、有線または無線通信ネットワークを介して受信するステップ」を含むといえる。
しかしながら、
「前記マルチメディアコンテンツに対するライセンスデータと、前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータと」が、
本願発明においては、「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するライセンスデータ」であるのに対し、
刊行物1発明は、「前記マルチメディアコンテンツに対するライセンスデータ」と「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータ」とが別々のデータである点で相違する。

(3)「b)前記マルチメディアコンテンツに対するライセンス条件を解析し、部分回避を制御するための制御信号を生成するステップ」
「c)生成された前記制御信号に従って前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定し、前記設定によって前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御するステップ」

刊行物1発明は、『コンテンツ復号部は、ライセンス情報を取得し、コンテンツ復号部は、取得したライセンス情報の利用条件に、「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」が記載されているので、再生制御情報処理部に再生制御情報処理を要求』するものであり、コンテンツ復号部は、『取得したライセンス情報の利用条件に、「暗号化コンテンツは、再生制御情報に基づく再生のみを許可する」が記載されている』ことを「ライセンス情報の利用条件」から得ていることが理解でき、このことは、「ライセンス情報の利用条件」を解析しているといえ、「ライセンス情報の利用条件」は、コンテンツに対するものであるから、刊行物1発明は、「前記マルチメディアコンテンツに対するライセンス条件を解析」するものといえる。
刊行物1発明は、さらに「再生制御情報処理部に再生制御情報処理を要求」し、この要求により、
「再生制御情報処理部は、再生制御情報記録部からコンテンツに対応する再生制御情報を取得し、
コンテンツ復号部は、再生制御情報処理部から再生制御情報を取得し、
コンテンツ復号部は、再生制御情報に対応する暗号化コンテンツをコンテンツ記録部から取得し、コンテンツ復号部は、コンテンツ鍵にて暗号化コンテンツを復号化し再生し、
CM区間再生中に、操作部は、ユーザからスキップ要求を受けると、コンテンツ復号部は、コンテンツ復号部内に取得した再生制御情報を参照して、再生中のセグメントはスキップ禁止であることを認識し、スキップ要求には応じずそのまま現在行っている再生方法でコンテンツの再生を続行する」
という動作をするから、この要求は、「制御信号」といえ、刊行物1発明は、「前記マルチメディアコンテンツに対するライセンス条件を解析し、制御信号を生成するステップ」を含むといえる。
また、上記「要求」、すなわち「制御信号」により、
「再生制御情報処理部は、再生制御情報記録部からコンテンツに対応する再生制御情報を取得し、
コンテンツ復号部は、再生制御情報処理部から再生制御情報を取得し、
コンテンツ復号部は、再生制御情報に対応する暗号化コンテンツをコンテンツ記録部から取得し、コンテンツ復号部は、コンテンツ鍵にて暗号化コンテンツを復号化し再生し、
CM区間再生中に、操作部は、ユーザからスキップ要求を受けると、コンテンツ復号部は、コンテンツ復号部内に取得した再生制御情報を参照して、再生中のセグメントはスキップ禁止であることを認識し、スキップ要求には応じずそのまま現在行っている再生方法でコンテンツの再生を続行する」
という動作をするのであるから、このような動作をするように制御機能が再生制御情報を取得することで設定され、この設定によって制御されているといえる。
CM区間再生中にスキップ禁止とする制御は、「マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する」ことといえ、このように制御機能を設定することは、「マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定」することといえる。
この設定は、「制御信号」により行われるから、「制御信号」に従っているといえる。

以上より、刊行物1発明は、
「b)前記マルチメディアコンテンツに対する情報を解析し、制御信号を生成するステップ、
c)生成された前記制御信号に従って前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定し、前記設定によって前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御するステップ」
を含むといえる。

本願発明の「制御信号」は、「部分回避を制御するための」ものであり、この「制御信号」に従って「前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定」するものであり、制御機能を設定するための「制御信号」といえる。この設定によって「前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する」ものであるから、本願発明の「制御信号」は、「部分回避を制御する」ものである。このことは、本願明細書の段落【0022】の「マルチメディアコンテンツ102に対するライセンス条件をライセンスデータ104から解析し、部分回避・・・を制御する制御信号を生成する。」の記載からも理解できる。そうすると、「部分回避を制御するための制御信号」は、「前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定」するものであり、「前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する」ものである。

一方、刊行物1発明は、上記のとおり、
「b)前記マルチメディアコンテンツに対する情報を解析し、制御信号を生成するステップ、
c)生成された前記制御信号に従って前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定し、前記設定によって前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御するステップ」
を含むといえるものであり、「制御信号」は、「前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定」するものであり、「前記設定によって前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する」ものであるから、「部分回避を制御するための制御信号」といえる。

したがって、刊行物1発明は、
「b)前記マルチメディアコンテンツに対する情報を解析し、部分回避を制御するための制御信号を生成するステップ、
c)生成された前記制御信号に従って前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定し、前記設定によって前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御するステップ」
を含む点で、本願発明と一致する。

3 一致点、相違点
以上より、本願発明と刊行物1発明との一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
マルチメディアコンテンツを消費する方法であって、
a)マルチメディアコンテンツと、前記マルチメディアコンテンツに対するライセンスデータと、前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータとを、有線または無線通信ネットワークを介して受信するステップと、
b)前記マルチメディアコンテンツに対する情報を解析し、部分回避を制御するための制御信号を生成するステップと、
c)生成された前記制御信号に従って前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御する制御機能を設定し、前記設定によって前記マルチメディアコンテンツの所定の部分に対する回避を制御するステップと
を含むことを特徴とする方法。

(相違点)
「マルチメディアコンテンツと、前記マルチメディアコンテンツに対するライセンスデータと、前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータとを、有線または無線通信ネットワークを介して受信するステップ」における「前記マルチメディアコンテンツに対するライセンスデータと、前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータと」が、
本願発明においては、「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するライセンスデータ」であるのに対し、
刊行物1発明は、「前記マルチメディアコンテンツに対するライセンスデータ」と「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータ」とが別々のデータである点

第5 判断
刊行物1発明は、「暗号化コンテンツ、ライセンス情報、再生制御情報を受信し、ライセンス情報の利用条件にて再生制御情報による再生が許可されている場合、再生制御情報に基づいてコンテンツを再生する」ものであって、再生制御情報は、利用条件によってライセンス情報と関連づけられているものである。関連づけられている情報を別々に送信し、受信することや、1つの情報として送信して、受信するようにすることは、情報の送受信の仕方として、普通のことであるから、引用発明においてライセンス情報と再生制御情報を1つの情報とすることは、当業者が容易に着想することである。
ライセンス情報と再生制御情報を1つの情報としたものは、ライセンス情報を含むから、「ライセンスデータ」といえ、この「ライセンスデータ」には、「再生制御情報」が含まれ、この「再生制御情報」に「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するデータ」があることになるから、ライセンス情報と再生制御情報を1つの情報としたものは、「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示するライセンスデータ」となる。
刊行物1発明は、ライセンス情報と再生制御情報とを別々に受信するものであり、コンテンツ復号部が再生制御情報処理部から再生制御情報を取得するものであるが、上記のとおり、ライセンス情報と再生制御情報を1つの情報とすることは、当業者が容易に着想することであり、このことにより、コンテンツ復号部はライセンス情報と再生制御情報を1つの情報として取得することになり、コンテンツ復号部には、ライセンス情報と再生制御情報が存在することになる。
このようにライセンス情報と再生制御情報を1つの情報にした場合においても、コンテンツ復号部は、1つの情報のうちのライセンス情報から、「再生制御情報に基づく再生のみを許可する」が記載されていることを解析して得て、1つの情報から「再生制御情報」を取得するための要求がされることになる。この要求は、上記のとおり「制御信号」といえ、この制御信号に従って制御機能が再生制御情報を取得することで設定され、前記設定によって制御することになる。
以上より、刊行物1発明において、「ライセンスデータ」を 「前記マルチメディアコンテンツに対する部分回避を禁止する条件を表示する」ライセンスデータとし、「前記マルチメディアコンテンツに対するライセンス条件を解析」するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項10に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-26 
結審通知日 2014-01-07 
審決日 2014-01-20 
出願番号 特願2009-502684(P2009-502684)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川崎 優  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 千葉 輝久
小池 正彦
発明の名称 マルチメディアコンテンツを消費する装置および方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 藤田 英治  
復代理人 濱中 淳宏  

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