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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F03G
管理番号 1289987
審判番号 不服2013-18456  
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-25 
確定日 2014-07-17 
事件の表示 特願2012-239202「太陽熱発電プラント及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日出願公開、特開2014- 88821〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月30日の出願であって、平成25年2月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成25年4月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年6月19日付けで拒絶査定がされ、平成25年9月25日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成25年4月25日付け提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面からその特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。) は以下のとおりである。

「 【請求項1】
太陽光を反射する複数のヘリオスタットと、前記ヘリオスタットで反射された太陽光を受光する受熱部と、前記受熱部から発電装置に熱媒を循環させる熱媒回路を有する太陽熱発電プラントにおいて、
前記太陽熱発電プラントが、それぞれ独立した発電用熱媒回路と蓄熱用熱媒回路を有しており、
前記発電用熱媒回路が、発電用熱媒が循環するように構成された発電用受熱部と、前記発電用熱媒の熱エネルギを電気に変換する発電装置と、を有しており、
前記蓄熱用熱媒回路が、蓄熱用熱媒が循環するように構成された蓄熱用受熱部と、前記蓄熱用熱媒を供給して充填された蓄熱材と熱の授受を行うように構成された少なくとも1つの蓄熱槽と、を有しており、
それぞれ独立した受熱部として構成された前記発電用受熱部及び前記蓄熱用受熱部が、それぞれが独立して太陽光を受光する構成を有していることを特徴とする太陽熱発電プラント。」


第3 引用文献に記載された発明
(1)本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特公昭61-53524号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の記載がある。

ア.「第1図において1は圧力消火を行う圧力コンテナ、2はコークス冷却時発生する発塵を除去するためのサイクロン、3は後述する水性ガス分離回収装置14より供給された水性ガスを燃料とするボイラ、4は第1の熱交換器、5はアキユムレータ、6は循環ポンプ、7はアキユムレータ5に内蔵された熱交換器である。8は第2の熱交換器、9はアキユムレータ、10は有機媒体タービン、11は発電機、12はコンデンサ、13は循環ポンプで有機媒体ランキンサイクルシステムRはこれら第2の熱交換器8、アキユムレータ9、タービン10、発電機11、コンデンサ12、循環ポンプ13より構成されている。14は水性ガス分離回収装置、熱回収された蒸気から水性ガスを分離回収する装置で、例えば特開昭51?73002号公報記載の装置が利用される。15は水処理装置で蒸気又は温水中の不純物を除去する装置である。16は消火コンテナより蒸気が発生していない場合、系内へ蒸気をバイパスしてもどす三方バルブである。さらにV?1,V?2,V?3は流量調節バルブである。」(明細書第2ページ第3欄第3ないし23行)

イ.「以上においてまず赤熱コークスは消火コンテナ1に投入密封され、該コンテナ1内に散布される温水により圧力消火される。その際、水性ガスを多量に含有せる高温の過熱蒸気が発生する。この過熱蒸気中には多量のダストを含有しているので、ダストをサイクロン2で除去した後、第1の熱交換器4へと送給される。そして該熱交換器4によつてアキユムレータに高温の熱エネルギーが蓄熱される。なお、アキユムレータ5に使用される蓄熱材として溶融塩・水等が使用される。また熱交換器4は第2図の実施例の如くアキユムレータ5内に内蔵させることも可能である。第1の熱交換器4で熱回収されて低温となつた蒸気は第2の熱交換器8においてその熱エネルギーは有機媒体ランキンサイクルシステムRのエネルギーとして回収される。即ち、有機媒体として例えばフレオンのような低沸点媒体を使用し、該媒体が第2の熱交換器8で低温蒸気の熱エネルギーを回収し、アキユムレータ9に蓄熱するとともにタービン10を駆動し、更に発電機11を回転して電力としてエネルギー回収が行われる。かくして第2の熱交換器8で熱エネルギーを放出した蒸気は水性ガス分離回収装置14に送られ、該装置において蒸気中に含有せる水性ガスが分離回収される。一方蒸気は一部ドレンとなり水処理装置15が除去され再び消火用に使用されることは勿論であるがコークス消火休止期はバルブ16を切換えてボイラー3に給水し、高温蒸気となし、第1の熱交換器4へと送給され系内にリサイクルされる。」(明細書第2ページ第3欄第24行ないし第4欄第8行)

ウ.「したがつて、本発明によるときは蒸気発生源からの蒸気が送給されている間は高温蒸気の熱エネルギーが第1の熱交換器4によつてアキユムレータ5に蓄熱され、低温蒸気の熱エネルギーが直接的に有機媒体ランキンサイクルシステムRでタービンを回し而して蒸気発生源からの蒸気の送給が休止期においてはアキユムレータ5に蓄熱された熱エネルギーが有機媒体ランキンサイクルシステムRのエネルギー源となるので、蒸気の送給が休止されてもタービンを回すことが可能となり、連続的に動力を取り出すことが可能である。
さらに赤熱コークス消火時の如く、蒸気中に大量の水性ガスが含有されている場合は、蒸気発生源からの蒸気の送給が休止期においては水性ガス分離回収装置からの水性ガスを燃料としてボイラ3を運転し、高温蒸気を発生させ系内にリサイクルさせて有機媒体ランキンサイクルシステムRを連続運転させることができる。
本発明は以上の通り、間けつ的に送給される蒸気の熱エネルギーから連続的かつ安定に動力回収ができるものである。
更に本発明では2段の熱交換器を用いたから有機媒体ランキンサイクルへの媒体側へ一定温度以上の熱が加わらないため、作動有機媒体への熱分解を防止できる等の効果を奏する。」(明細書第2ページ第4欄第9ないし33行)

(2)ここで、上記(1)ア.ないしウ.及び図面から、次のことが分かる。

カ.上記ア.ないしウ.並びに第1図の記載から、発電プラントは、熱交換器と、熱交換器から有機媒体タービン10及び発電機11に熱媒を循環させる熱媒回路を有しており、発電プラントが、それぞれ独立した有機媒体ランキンサイクルシステムRと第1の熱交換器4、アキユムレータ5、循環ポンプ6から構成される系を有しているものであることが分かる。

キ.上記ア.ないしウ.並びに第1図の記載から、有機媒体ランキンサイクルシステムRが、有機媒体が循環するように構成された第2の熱交換器8と、有機媒体の熱エネルギを電気に変換する有機媒体タービン10及び発電機11とから構成され、第1の熱交換器4、アキユムレータ5、循環ポンプ6から構成される系が、溶融塩・水等が循環するように構成された第1の熱交換器4と、少なくとも1つのアキユムレータ5とを有していることが分かる。

ク.上記ア.ないしウ.並びに第1図の記載から、それぞれ独立した熱交換器として構成された第2の熱交換器8及び第1の熱交換器4が、それぞれが独立して熱交換する構成を有していることがわかる。

ケ.上記ア.ないしウ.の記載から、発電プラントは、間けつ的に送給される蒸気の熱エネルギーから連続的かつ安定的に電力としてエネルギーを回収することができるものであることがわかる。

(3)上記(1)及び(2)より、引用文献には、次の発明が記載されている。

「熱交換器と、熱交換器から有機媒体タービン10及び発電機11に熱媒を循環させる熱媒回路を有する発電プラントにおいて、
発電プラントが、それぞれ独立した有機媒体ランキンサイクルシステムRと第1の熱交換器4、アキユムレータ5、循環ポンプ6から構成される系を有しており、
有機媒体ランキンサイクルシステムRが、有機媒体が循環するように構成された第2の熱交換器8と、有機媒体の熱エネルギを電気に変換する有機媒体タービン10及び発電機11と、を有しており、
第1の熱交換器4、アキユムレータ5、循環ポンプ6から構成される系が、溶融塩・水等が循環するように構成された第1の熱交換器4と、少なくとも1つのアキユムレータ5と、を有しており、
それぞれ独立した熱交換器として構成された第2の熱交換器8及び第1の熱交換器4が、それぞれが独立して熱交換する構成を有している発電プラント。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)


第4 対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比する。
引用文献記載の発明における「有機媒体タービン10及び発電機11」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願発明における「発電装置」に相当し、以下同様に、「有機媒体ランキンサイクルシステムR」は「発電用熱媒回路」に、「第1の熱交換器4、アキユムレータ5、循環ポンプ6から構成される系」は「蓄熱用熱媒回路」に、「有機媒体」は「発電用熱媒」に、「溶融塩・水等」は「蓄熱用熱媒」に、「アキユムレータ5」は「蓄熱槽」に、それぞれ相当する。
さらに、本願発明の受熱部は太陽光を受光して太陽エネルギを熱エネルギに変換する熱交換器といえるし、引用文献記載の発明における「熱交換器」も受熱するものであることは自明であるから、引用文献記載の発明における「熱交換器」は「受熱部」という限りにおいて、本願発明における「受熱部」と一致し、以下同様に、「第2の熱交換器8」は「発電用受熱部」という限りにおいて、「発電用受熱部」に、「第1の熱交換器4」は「蓄熱用受熱部」という限りにおいて、「蓄熱用受熱部」に、それぞれ一致する。
また、引用文献記載の発明における「発電プラント」は、「発電プラント」という限りにおいて、本願発明における「太陽熱発電プラント」と一致し、引用文献記載の発明における「熱交換する」は、「熱交換する」という限りにおいて、本願発明における「太陽光を受光する」と一致する。

1 一致点について
したがって、両者は、
「受熱部と、前記受熱部から発電装置に熱媒を循環させる熱媒回路を有する発電プラントにおいて、
発電プラントが、それぞれ独立した発電用熱媒回路と蓄熱用熱媒回路を有しており、
発電用熱媒回路が、発電用熱媒が循環するように構成された発電用受熱部と、発電用熱媒の熱エネルギを電気に変換する発電装置と、を有しており、
蓄熱用熱媒回路が、蓄熱用熱媒が循環するように構成された蓄熱用受熱部と、少なくとも1つの蓄熱槽と、を有しており、
それぞれ独立した受熱部として構成された発電用受熱部及び蓄熱用受熱部が、それぞれが独立して熱交換する構成を有している発電プラント。」である点で一致し、以下の点で相違する。

2 相違点について
(1)「発電プラント」に関して、本願発明においては、「太陽熱発電プラント」であるのに対し、引用文献記載の発明においては、発電プラントではあるが太陽熱発電プラントでない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)「受熱部、発電用受熱部及び蓄熱用受熱部」に関して、本願発明においては、「太陽光を反射する複数のヘリオスタットと、ヘリオスタットで反射された太陽光を受光する」もので、さらに「それぞれ独立して太陽光を受光する」ものであるのに対し、引用文献記載の発明においては、それぞれ独立して熱交換するが太陽光を受光するものでない点(以下、「相違点2」という。)。

(3)「蓄熱槽」に関して、本願発明においては、「蓄熱用熱媒を供給して充填された蓄熱材と熱の授受を行うように構成された」ものであるのに対し、引用文献記載の発明においては、そのようなものでない点(以下、「相違点3」という。)。


第5 相違点の検討
そこで、上記相違点について、以下に検討する。

1 相違点1、2について
太陽光を反射する複数のヘリオスタットと、ヘリオスタットで反射された太陽光を受光するそれぞれ独立した複数の受熱部を有する太陽熱発電プラントは、周知技術(例えば、特開2012-202390号公報(平成24年10月22日出願公開)の段落【0025】ないし【0027】並びに図1ないし図3等、特に「第一受熱器40」及び「第二受熱器50」参照、米国特許第8001960号明細書(米国特許出願公開第2009/0217921号明細書)の「a primary receiver 106 」及び「a secondary receiver 104」並びにFIG.1A等参照、特開2009-198120号公報の段落【0012】、【0013】、【0037】及び【0038】並びに図1及び図2等、特に「レシーバー1a,1b,1c」参照。以下、「周知技術1」という。)である。
ここで、受熱部から発電装置に熱媒を循環させる熱媒回路を有する発電プラントにおいて、受熱部の熱源として何を用いるかは種々知られており、何れを用いるかは選択事項に過ぎないから、引用文献記載の発明に周知技術1を適用して、上記相違点1、2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点3について
蓄熱用熱媒を供給して充填された蓄熱材と熱の授受を行う蓄熱槽は、周知技術(例えば、特開昭61-138018号公報の第3ページ右上欄第3行ないし左下欄第8行及び第1図等、特に、「部分不融化潜熱蓄熱器」及び「高密度ポリエチレン蓄熱材」参照、実願昭59-113389号(実開昭61-34301号)のマイクロフィルムの「貯槽10」及び「固体ペレツト20」参照。以下、「周知技術2」という。)であるので、引用文献記載の発明に周知技術2を適用して、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 本願発明の効果について
そして、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明、並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

4 したがって、本願発明は、引用文献記載の発明、並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明、並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-05-16 
結審通知日 2014-05-20 
審決日 2014-06-02 
出願番号 特願2012-239202(P2012-239202)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 林 茂樹
藤原 直欣
発明の名称 太陽熱発電プラント及びその制御方法  
代理人 小川 信一  
代理人 清流国際特許業務法人  
代理人 昼間 孝良  
代理人 平井 功  
代理人 境澤 正夫  
代理人 野口 賢照  
代理人 佐藤 謙二  

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