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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1291339
審判番号 不服2013-13085  
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-08 
確定日 2014-08-28 
事件の表示 特願2007-544546「人を起こす方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日国際公開、WO2006/060679、平成20年 6月26日国内公表、特表2008-522330〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2005年12月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年12月3日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成19年6月1日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成19年8月1日付けで特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、平成23年2月17日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成23年8月29日に意見書及び手続補正書が提出され、平成24年2月27日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し平成24年9月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年2月21日付けで、上記平成24年9月3日付け手続補正書でした補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がされ、平成25年7月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、当審において平成25年10月24日付けで書面による審尋がなされ、平成26年1月27日に回答書が提出されたものである。

第2.平成25年7月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年7月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
(1)本件補正の内容
平成25年7月8日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年8月29日提出の手続補正書により補正された)請求項1の記載の下記(ア)を、下記(イ)へと補正するものである。

(ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
アラームシグナルに反応して反復中断パターンを有するドライバーシグナル(driver signal)を発生する回路と、
前記回路からドライバーシグナルを受信することができるように接続された制御入力、電源ソースに接続可能な電源入力および電源出力を有する電気制御スイッチデバイスと、
前記制御されたスイッチデバイスの電源出力に接続し、人を起こす触覚刺激を生成するように設定される触覚刺激デバイスとからなる人を起こすデバイスであって、
前記各々の反復中断パターンが奇数回等間隔の「オン」と「オフ」とを含むことと、少なくとも1つの「オフ」期間の持続期間が少なくとも1つの「オン」期間の持続期間と異なることとを特徴とする人を起こすデバイス。」

(イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
アラームシグナルに反応してドライバーシグナル(driver signal)を発生する回路と、
前記回路からドライバーシグナルを受信することができるように接続された制御入力、電源ソースに接続可能な電源入力および電源出力を有する電気制御スイッチデバイスと、
前記ドライバーシグナルに対応し、感知すると人を起こす触覚刺激を提供し、前記電気制御スイッチデバイスの電源出力に接続したベッドシェーカーとを含む、聴覚障害者を起こすデバイスであって、
前記ドライバーシグナルが、複数のオン期間および複数のオフ期間を含む反復中断パターンを有し、当該1つのオン期間の持続期間が、少なくとも1つのオフ期間の持続期間と、および、少なくとも他の1つのオン期間の持続時間と異なることを特徴とする、聴覚障害者を起こすデバイス。」
(なお、下線は、審判請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)

2.本件補正の目的及び本件補正の適否についての判断
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記制御されたスイッチデバイスの電源出力に接続し、人を起こす触覚刺激を生成するように設定される触覚刺激デバイスとからなる人を起こすデバイス」という発明特定事項については、「前記ドライバーシグナルに対応し、感知すると人を起こす触覚刺激を提供し、前記電気制御スイッチデバイスの電源出力に接続したベッドシェーカーとを含む、聴覚障害者を起こすデバイス」と限定しているが、本件補正前の「前記各々の反復中断パターンが奇数回等間隔の「オン」と「オフ」とを含むことと、少なくとも1つの「オフ」期間の持続期間が少なくとも1つの「オン」期間の持続期間と異なること」という発明特定事項については、「奇数回等間隔の「オン」と「オフ」とを含む」という発明特定事項を削除し、「前記ドライバーシグナルが、複数のオン期間および複数のオフ期間を含む反復中断パターンを有し、当該1つのオン期間の持続期間が、少なくとも1つのオフ期間の持続期間と、および、少なくとも他の1つのオン期間の持続時間と異なる」という発明特定事項に変更するものである。
そうすると、請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「奇数回等間隔の「オン」と「オフ」とを含む」という発明特定事項を削除する内容を含むものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、同条同項第3号の誤記の訂正、同条同項第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)のいずれにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件についての検討
特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、前述したように、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるが、仮に、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

3.-1 引用文献
(1)引用文献の記載
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平2-129793号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。なお、下線は理解の一助のため、当審で付したものである。

(ア)「(産業上の利用分野)
本発明は、聾唖学校の宿舎に装備して好適な、聾唖学校宿舎用信号伝達システムに関するものである。」(第1ページ左下欄下から第3行ないし右下欄第1行)

(イ)「(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、このようにランプ等により聾唖学生に合図する方式にあっては、その信号があったときに、学生がたまたま睡眠中であったり、睡眠中ではないにしてもランプに注意を払っていないときには、その合図が学生に伝達されないことになる。本発明はこの点に鑑みて成されたものであり、学生が室に居るときに座り、あるいは横になっているときに使用するベッドパッド(ベッドのマットレスの上に敷くものであり、実開昭61-140692号公報、実開昭63-5788号公報等に記載されたもの)あるいは椅子等の人体載置物に振動ユニットを装備し、この振動ユニットに加える信号の波形を種々変えて、視覚によらず体感により信号を伝達するようにするシステムを得ることを解決課題としたものである。」(第1ページ右下欄第11行ないし第2ページ左上欄第6行)

(ウ)「(課題を解決するための手段)
本発明は、上記課題を解決するための手段として、各種内容の伝達に適した複数種の波形からなる信号を発生させる信号発生手段(信号発生器l)と、該信号発生手段の発する複数種の波形からそのうちの任意の波形を選択する選択手段(切換スイッチ14)と、該選択を時間経過に係らしめて行なうタイマー手段(タイマー装置15)と、火災時において該タイマー手段の作動に関わりなく非常用波形の信号を発生させる火災報知回路16と、前記信号発生手段の発する信号を増幅する増幅器2,3と、該増幅器2,3の出力信号を受けてベッドパッド4,5等の人体載置物を振動させる振動ユニットとを設けた構成としたものである。」(第2ページ左上欄第7行ないし右上欄第1行)

(エ)「(作用)
本発明はこのように構成したものであるから、起床、就寝(ほかに食事、学習、点呼、入浴等)の各信号と火災等の非常時の信号を、視覚には全く頼ることなしに、体感によって確実に伝達できることになる。」(第2ページ右上欄第2ないし7行)

(オ)「(実施例)
以下、本発明の一実施例を第1図について説明すると、1は信号発生手段となる信号発生器であり、起床、就寝(ほかに食事、学習、点呼、入浴等)の各信号と、火災等の非常時の信号とを、それぞれに適した波形(詳細は後述するが、基本的に周波数の異なる二つの信号を用意し、これをそれぞれ単独に、あるいは交互に発生させるようにして、多数の信号を得る)にしてこれを増幅器2,3に出力するものである。増幅器2,3は、出力値が相違するものであり、負荷として接続される振動ユニット(図示せず)を各複数個収容したベッドパッド4,5(椅子でもよい)の台数が異なることになる。
信号発生器1には、振動ユニットを収容したベッドパッド4,5のほかに、増幅器6,7を介して発光ダイオード8,9が接続され、さらに増幅器10,11を介して表示ランプ12,13が接続されている。発光ダイオード8,9はlベッドに1個ずつ取付けられており、表示ランプ12,13は複数台のベッドを収容する室の一部屋ごとに1個取付けられているものである。発光ダイオード8,9と表示ランプ12,13とは従来同様に、聾唖学生に視覚をもって信号を伝達することになる。」(第2ページ右上欄第8行ないし左下欄第11行)

(カ)「信号発生器1の制御側には、波形選択手段としての切換スイッチ14が接続されており、信号発生器1の発生する各種波形のうちから、適当なものを任意に選定できるようにしである。信号発生器1の制御側には更に、波形選択を時間の経過に係らしめて自動的に行なうタイマー手段であるタイマー装置15と、火災時においてこのタイマー装置15の作動に関わりなく非常用波形の信号を発生させる火災報知回路16とが接続されている。」(第2ページ左下欄第12ないし20行)

(キ)「以上の回路において振動ユニットとしては、ソレノイド式や動電変換式、あるいはモーター駆動式等、種々のものを考えることができるが、音楽を含む各種の変化する信号に対応し、変化信号の音域および強弱に合った振動を得るものとして、いわゆる動電変換式の機構が採用される。これは、マグネットと、このマグネットの近傍に巻回されたコイルへ通電したときの磁気干渉作用によって振動を得るものである。この構造の振動ユニットによれば、他の方式の振動ユニットと異なり、応答性、波形再現性を著しく良くすることができる。」(第2ページ右下欄第9ないし20行)

(ク)「次に各種波形の説明をする。前述のように信号の種類としては、起床、就寝(ほかに食事、学習、点呼、入浴等)および火災等の非常時の信号がある。このうち起床の信号波形は、第2図に(a)(当審注;原文では丸囲みのa。以下、同じ。)で示すように、47Hzの信号(以下、A信号という)を2拍した後わずかに時間をおいて35Hzの信号(以下、B信号という)を2拍させ、さらに時間をおいてB信号を2拍ずつ2回(全部で3回)出力させ、これを4回繰返して次の(b)(当審注;原文では丸囲みのb。以下、同じ。)に移行し、(b)ではA信号を3拍した後わずかに時間をおいてB信号を3拍ずつ3回出力するものを4回繰返し、ざらに(c)(当審注;原文では丸囲みのa。以下、同じ。)に移行してA信号を4拍し、続けてB信号を4拍ずつ6回出力した後、休止し、休止後以上の過程を繰返す方法が、実験の結果起床信号として好結果を得た。」(第3ページ左上欄第6行第1ないし15行)

(ケ)「第2図に(f)(当審注;原文では丸囲みのf。以下、同じ。)で示すものは、火災等の非常時に避難をさせるために用いる非常信号である。この非常信号は、聾唖学生が深い眠りに就いているときにも非常事態を確実に告知しなければならないので、かなり強烈な振動を必要とする。しかしながら単に強烈であればよいというものでもなく、刺激を与える能力に優れていなければならない、このために、A信号とB信号とを交互に、連続して出力するのが良く、図示するような波形が採用される。」(第3ページ右上欄第5ないし14行)

(コ)「次に、上記各種波形のAB両信号を得るための回路の一例を説明する。第3図に示すものは信号発生器1の具体的回路であって、21は電圧制御発振器であり、22はこの電圧制御発振器21の出力信号を受けて増幅する電圧制御増幅器である。電圧制御発振器21は周波数制御出力を受けて作動し、電圧制御増幅器22はエンベロープ制御出力を受けて作動する。これら周波数制御出力とエンベロープ制御出力とは、起床、就寝(2種)、非常信号の種類によって、第4図ないし第7図に示す回路によって得ることができる。第4図は起床信号を得るための回路であって、符号23で示すものはクロック発振器である。
このクロック発振器23の出力側にはエンベロープ出力を得るANDゲート24の一つの入力端と、デコーダ付きの5進カウンタ25のクロック入力端が接続されている。この回路において周波数制御出力はNORゲート26から出力されるが、エンベロープ制御出力と周波数制御出力を得るための回路は、前述のクロック発振器23と5進カウンタ25のほか、バイナリ-カウンタ27とアナログスイッチ28が、ORゲート29,30およびNANDゲート31を介して、図示のように接続されて形成される。第2図中の(a),(b),(c)で示す波形の選択は、アナログスイッチ28を切換えることによって行なうことになる。」(第3ページ右上欄第15行ないし左下欄第20行)

(サ)「第5図に示すものは、第2図中に(d)(当審注;原文では丸囲みのd。以下、同じ。)で示す就寝波形を得るための回路の一例である。この回路は、オペアンプ32とフリップフロップ回路33を図示するように接続したものであり、オペアンプ32による自走マルチバイブレータの負帰還抵抗器34をダイオード35でショートし、立上がり時間を短くした鋸歯状波発振器と、フリップフロップ回路33による分周回路で1/2分周した波形を得、これによって図示するようなエンベロープ制御出力と周波数制御出力とを得るようにしたものである。第6図のものは、第5図のものを簡略化したものであり、図示するような出力波形を得、これから第2図の(e)(当審注;原文では丸囲みのe。以下、同じ。)のような就寝(誘眠)信号を得ることができる。
第7図に示すものは、第2図に(f)で示す非常用信号を得るためのものである。この回路においては、クロック発振器36の出力をそのまま周波数制御出力とし、デコーダ付の10進カウンタ37の出力をNORゲート38を通してエンベロープ制御出力を得るようにしている。
以上の第4図ないし第7図に示す回路は、第1図の信号発生器lの内部に並列的に接続され、第4図ないし第6図の回路は切換スイッチ14あるいはタイマー装置15による切換えによって、選択されて作動する。第7図の非常用回路は上記選択には関わりなく、非常時には他に優先して作動する。」(第3ページ右下欄第1行ないし第4ページ左上欄第7行)

(シ)「第8図に示すものは、第1図中の増幅器6,7と発光ダイオード8,9の具体的の具体的回路である。これを便宜上異なった符号によって説明すると、39はパワーアンプであり、エンベロープ制御出力を受けて赤色の発光ダイオード40と緑色の発光ダイオード41を点灯させるものである。赤色の発光ダイオード40は周波数が高いA信号が発せられたときに点灯し、緑色の発光ダイオード41は周波数が低いB信号を受けたときに発光する。これら発光ダイオード40,41には周波数制御出力を受けて通電制御をするトランジスタ42,43が接続され、インバータ44によって同時には点灯しないようにしてある。」(第4ページ左上欄第11行ないし右上欄第3行)

(ス)「火災等の緊急事態が発生したときには、火災報知回路16から信号発生器1に信号が発せられる。これにより、信号発生器1は、タイマー装置15および切換スイッチ14がどのモード位置になっていても、これに優先して第2図に(f)で示す非常信号の波形を出力し、聾唖学生に緊急事態を告知することになる。これにより安全確実な避難ができることになる。」(第4ページ右上欄第19行ないし左下欄第6行)

(2)引用文献記載の事項
上記(1)(ア)ないし(ス)及び図面の記載から、引用文献には次の事項が記載されていることが分かる。

(セ)上記(1)(ア)ないし(ス)及び図面の記載から、引用文献には、ベッドパッド4,5に収容された振動ユニットを振動させて聴覚障害者である聾唖学生を起床又は避難させるシステム、すなわち聴覚障害者を起こすシステムが記載されていることが分かる。

(ソ)上記(1)(オ)、(カ)、(ケ)、(サ)及び(ス)並びに図面の記載から、引用文献に記載された聴覚障害者を起こすシステムは、火災報知回路16から発せられる信号を受けて、信号発生器1から、第2図に(f)で示す非常信号の波形を増幅器2,3に出力し、増幅器2,3は波形(f)の信号をベッドパッド4,5に収容された振動ユニットに出力し、聴覚障害者である聾唖学生に緊急事態を告知することができるものであることが分かる。

(タ)上記(1)(オ)、(キ)及び図面の記載から、引用文献に記載された聴覚障害者を起こすシステムにおいて、ベッドパッド4,5に収容される振動ユニットとしては、ソレノイド式や動電変換式、あるいはモーター駆動式等、電力を用いるものが使用されることが分かる。このような振動ユニットは、電源に接続されスイッチをオンすることにより通電して振動するものであることが技術常識である。

(チ)上記(1)(オ)、(カ)、(ケ)、(サ)及び(ス)並びに図面の記載から、引用文献に記載された聴覚障害者を起こすシステムは、聴覚障害者である聾唖学生を起床させるときには、第2図に(a)、(b)、(c)で示される信号を出力し、火災等の緊急事態が発生したときには、第2図に(f)で示される信号を出力するものであることが分かる。そして、これらの信号は、複数のオン期間および複数のオフ期間を含む反復中断パターンを有し、当該1つのオン期間の持続時間が、少なくとも1つのオフ期間の持続時間と異なるものであることが分かる。

(ツ)上記(1)(ウ)、(エ)及び(シ)並びに図面(特に第1図及び第8図)の記載から、信号発生手段の発する信号を増幅する増幅器2,3は、第8図の増幅器6,7と同様に、制御入力を受けて、トランジスタを含む回路により信号を増幅するものであるといえる。トランジスタを含む回路は、制御入力を受けて通電制御をする「スイッチデバイス」でもあることが技術常識である。よって、制御入力を受けて通電制御をする増幅器2,3は、制御入力、電源ソースに接続可能な電源入力及び電源出力を有する電気制御スイッチデバイスであるといえる。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)、(2)及び図面の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているといえる。

「火災報知回路16からの信号を受けて非常信号を出力する信号発生器1と、
前記信号発生器から非常信号を受信することができるように接続された制御入力を受けて通電制御をする増幅器2,3と、
前記非常信号に対応し、感知すると振動し、前記増幅器2,3の出力に接続したベッドパッド4,5の振動ユニットとを含む、聴覚障害者を起こすシステムであって、
前記非常信号が、複数のオン期間および複数のオフ期間を含む反復中断パターンを有し、当該1つのオン期間の持続時間が、少なくとも1つのオフ期間の持続時間と異なる、聴覚障害者を起こすシステム。」

3.-2 対比
本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「火災報知回路16からの信号を受けて」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願補正発明における「アラームシグナルに反応して」に相当し、以下同様に、「非常信号を出力する信号発生器1」は「ドライバーシグナルを発生する回路」に、「非常信号に対応し、感知すると振動し、増幅器2,3の出力に接続したベッドパッド4,5の振動ユニット」は「ドライバーシグナルに対応し、感知すると人を起こす触覚刺激を提供し、電気制御スイッチデバイスの電源出力に接続したベッドシェーカー」に、「聴覚障害者を起こすシステム」は「聴覚障害者を起こすデバイス」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「制御入力を受けて通電制御をする増幅器2,3」は、上記(2)(ツ)のように、本願補正発明における「制御入力、電源ソースに接続可能な電源入力および電源出力を有する電気制御スイッチデバイス」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用文献記載の発明は、
「アラームシグナルに反応してドライバーシグナルを発生する回路と、
前記回路からドライバーシグナルを受信することができるように接続された制御入力、電源ソースに接続可能な電源入力および電源出力を有する電気制御スイッチデバイスと、
前記ドライバーシグナルに対応し、感知すると人を起こす触覚刺激を提供し、前記電気制御スイッチデバイスの電源出力に接続したベッドシェーカーとを含む、聴覚障害者を起こすデバイスであって、
前記ドライバーシグナルが、複数のオン期間および複数のオフ期間を含む反復中断パターンを有し、当該1つのオン期間の持続期間が、少なくとも1つのオフ期間の持続期間と異なる、聴覚障害者を起こすデバイス。」
である点で一致し、次の点において相違する。

〈相違点〉
本願補正発明においては、「ドライバーシグナルが、複数のオン期間および複数のオフ期間を含む反復中断パターンを有し、当該1つのオン期間の持続期間が、少なくとも1つのオフ期間の持続期間と、および、少なくとも他の1つのオン期間の持続時間と異なる」のに対し、引用文献記載の発明においては、「前記増幅器への信号が、複数のオン期間および複数のオフ期間を含む反復中断パターンを有し、当該1つのオン期間の持続時間が、少なくとも1つのオフ期間の持続時間と異なる」ものではあるが、「当該1つのオン期間の持続期間が、少なくとも他の1つのオン期間の持続時間と異なる」かどうか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。

3.-3 判断
上記相違点について検討する。
本願補正発明において、「当該1つのオン期間の持続期間が、少なくとも他の1つのオン期間の持続時間と異なる」とした技術的意義を知るために、本願の明細書を参照すると、「さらに、別の非継続もしくは反復中断パターンはT-3パターンの代わりに用いられうる。たとえば、「オフ」期間より多くの「オン」期間を含んでなる反復時間パターン(もしくは、短い「オン」と長い「オン」との間に短い「オフ」を挟むパターン)は用いられうる。」(段落【0033】。下線は当審で付した。)というものであって、実施例において示された「T-3パターン」の代わりに「用いられうる」実施態様の一例にすぎず、しかも、「当該1つのオン期間の持続期間が、少なくとも他の1つのオン期間の持続時間と異なる」としたことによって格別効果があるというものではない。
一方、引用文献記載の発明は、例えば上記3.-1(1)(オ)、(サ)及び第2図の(a)ないし(f)に記載されているように、オン期間とオフ期間の長さを変更することができるものであるから、1つのオン期間の持続期間の長さを、少なくとも他の1つのオン期間の持続時間と異なるようにすることは、当業者が必要に応じて適宜行うことができるものである。
したがって、引用文献記載の発明において、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。

以上により、本願補正発明は、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
上記2.において検討したように、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に、本件補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであったとしても、上記3.において検討したとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
前記のとおり、平成25年7月8日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成23年8月29日提出の手続補正書によって補正された明細書及び特許請求の範囲及び願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記(第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】)のとおりのものである。

2.引用文献
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開平2-129793号公報)には、前記第2.の[理由]2.-1(1)及び(2)の事項が記載されている。したがって、引用文献2には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明A」という。」)も記載されているといえる。

「火災報知回路16からの信号を受けて非常信号を出力する信号発生器1と、
前記信号発生器から非常信号を受信することができるように接続された制御入力を受けて通電制御をする増幅器2,3と、
前記制御された増幅器2,3の出力に接続し、人を起こす振動を生成するように設定されるベッドパッド4,5の振動ユニットとからなる聴覚障害者を起こすシステムであって、
前記非常信号の反復中断パターンが、「オン」と「オフ」を含む、少なくとも1つの「オフ」期間の持続時間が少なくとも1つの「オン」期間の持続時間と異なる、聴覚障害者を起こすデバイス。」

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明Aとを対比すると、引用文献記載の発明Aにおける「火災報知回路16からの信号を受けて」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「アラームシグナルに反応して」に相当し、以下同様に、「非常信号を出力する信号発生器1」は「ドライバーシグナルを発生する回路」に、「制御入力を受けて通電制御をする増幅器2,3」は「制御入力、電源ソースに接続可能な電源入力および電源出力を有する電気制御スイッチデバイス」に、「制御された増幅器2,3の出力に接続し、人を起こす振動を生成するように設定されるベッドパッド4,5の振動ユニット」は「制御されたスイッチデバイスの電源出力に接続し、人を起こす触覚刺激を生成するように設定される触覚刺激デバイス」に、「聴覚障害者を起こすシステム」は「人を起こすデバイス」に、それぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用文献記載の発明Aは、
「アラームシグナルに反応してドライバーシグナルを発生する回路と、
前記回路からドライバーシグナルを受信することができるように接続された制御入力、電源ソースに接続可能な電源入力および電源出力を有する電気制御スイッチデバイスと、
前記制御されたスイッチデバイスの電源出力に接続し、人を起こす触覚刺激を生成するように設定される触覚刺激デバイスとからなる人を起こすデバイスであって、
前記各々の反復中断パターンが、「オン」と「オフ」とを含む、少なくとも1つの「オフ」期間の持続期間が少なくとも1つの「オン」期間の持続期間と異なる、人を起こすデバイス。」
である点で一致し、次の点において相違する。

〈相違点A〉
本願発明においては、「各々の反復中断パターンが、奇数回等間隔の「オン」と「オフ」とを含む」ものであるのに対し、引用文献記載の発明Aにおいては、「非常信号の反復中断パターンが、「オン」と「オフ」を含む」ものではあるが、「奇数回」「等間隔」であるか否か、明らかでない点(以下、「相違点A」という。)。

4.判断
上記相違点Aについて検討する。
本願発明において、「各々の反復中断パターンが、奇数回等間隔の「オン」と「オフ」とを含む」ことの技術的意義を知るために、本願の明細書を参照すると、
「・・・本発明は、絶えずに振動する触覚刺激デバイスが人特に難聴もしくは聴覚障害者を睡眠から起こすために最適ではないことを発見した。その結果として、非連続的な触覚刺激デバイスの使用は人を起こすのに最適であることがわかった。全国防火協会のスタンダードNFPA72は、煙検出器が図1(図1には、2つ繰り返しの時間パターンを示している)に示されている繰り返しの時間パターンに伴う音声アラームシグナルを発することと規定している。以下ではT-3パターンをするこのパターンは、長い「オフ」期間の後に交互する3つ短い「オン」と「オフ」期間を有する。その短い「オン」と「オフ」との期間の長さは、0.5秒(+/-10%)の「オフ」の後に0.5秒(+/-10%)の「オン」が来るようになっている。長い「オフ」期間は1.5秒(+/-10%)になるように設定されている。上記T-3パターンは、等しく0.5秒(+/-10%)継続期間を有する奇数の「オン」および「オフ」期間を含むとして別な記載で表現することができ、すなわち、第一の「オン」期間、第一の「オフ」期間、第二の「オン」期間、第二の「オフ」期間、第三の「オン」期間、および3つ連続の「オフ」期間からなる。」(段落【0019】。下線は当審で付した。)
と記載され、本願発明における「各々の反復中断パターンが、奇数回等間隔の「オン」と「オフ」とを含む」という発明特定事項は、本願の実施例として記載された「T-3パターン」の上位概念であることが分かる。そして、「非連続的な触覚刺激デバイスの使用は人を起こすのに最適である」という作用効果があることが分かる。
一方、引用文献の第2図を参照すると、(a)、(b)、(c)及び(f)の信号波形は、「非連続的な信号波形」であり、引用文献の明細書(上記3.-1(1)(ク)及び(ケ)を参照。)には、このような「非連続的な信号波形」が起床信号として好結果を得た旨が記載されている。
また、引用文献記載の発明Aは、信号波形を選択できるものであり(上記3.-1(1)(オ)、(サ)及び第2図の(a)ないし(f)を参照。)、第2図の(a)、(b)、(c)及び(f)を参照すれば、「各々の反復中断パターンが、奇数回等間隔の「オン」と「オフ」とを含む」ようにすることは、当業者が適宜設定する設計事項であるといえる。
したがって、引用文献記載の発明Aにおいて、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明Aから予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。

以上により、本願発明は、引用文献記載の発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

[付言]
請求人は、平成26年1月27日提出の回答書において、「面接の上更なる補正案を提示させていただきたい」旨を述べているが、審判合議体は本願発明の内容については充分理解できたので、面接を要しない。また、手続補正書を提出する期間はすでに過ぎており、他の請求人との公平性の問題もあるため、更なる補正案の提示も要しない。
 
審理終結日 2014-03-11 
結審通知日 2014-03-24 
審決日 2014-04-07 
出願番号 特願2007-544546(P2007-544546)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 575- Z (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩谷 一臣八木 誠  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 金澤 俊郎
久島 弘太郎
発明の名称 人を起こす方法および装置  
代理人 白洲 一新  

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