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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1291879
審判番号 不服2013-12794  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-04 
確定日 2014-09-10 
事件の表示 特願2009- 28479号「平板表示装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月13日出願公開、特開2010-107935号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年2月10日(パリ条約による優先権主張 2008年10月28日 韓国)の出願であって、平成23年7月14日付けで拒絶理由が通知され、同年10月11日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、平成24年6月29日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年9月28日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが、平成25年4月30日付けで平成24年9月28日付けの手続補正の補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、請求と同時に同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成25年11月8日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成26年1月31日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成25年7月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年7月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「下部基板、上部基板及び前記下部基板と上部基板との間に位置する1つまたは複数の発光素子を含む表示パネルと、
前記表示パネル上に位置する保護基板と、
前記表示パネルと前記保護基板との間に位置する粘着層と、を含み、
前記粘着層の屈折率は、前記上部基板の屈折率と前記保護基板の屈折率との間の値であり、
前記表示パネルは、前記発光素子が形成されている表示領域及び前記発光素子が形成されない非表示領域を含んでいて、前記表示パネルの非表示領域上側に位置し、前記粘着層と等しいか、または前記粘着層よりも薄い厚さを有するブラックマトリックスをさらに含み、
前記ブラックマトリックスは、前記粘着層と前記表示パネルの上部基板との間に配置される
ことを特徴とする平板表示装置。」
と補正された。

本件補正は、平成23年10月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ブラックマトリックス」について「前記ブラックマトリックスは、前記粘着層と前記表示パネルの上部基板との間に配置される」と限定するものであり、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(2)引用例
(ア)引用例1
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2008/123611号(以下「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

記載事項ア
「[0023]
図1に示すように、本実施形態では、図示しない駆動回路に接続され所定の画像表示を行う画像表示部を有する基部2と、保護部3とを樹脂硬化物層14により貼り合わせる。
[0024]
ここで、画像表示装置としては、特に限定されるものではなく、種々のものに適用することができ、例えば、携帯電話、携帯ゲーム機器等の液晶表示装置があげられる。以下、液晶表示装置に適用する場合を例にとって本発明を説明する。
[0025]
保護部3は、基部2と同程度の大きさの例えば矩形平板状の透光性部材4から形成されている。この透光性部材4としては、例えば、光学ガラスやプラスチック(アクリル樹脂等)を好適に用いることができる。
[0026]
透光性部材4の一面側(基部2側)の液晶表示パネルの周縁に対応する領域には、例えば黒色枠状の遮光部5が設けられている。この遮光部5は、例えば印刷法によって形成することができる。
[0027]
一方、基部2は、例えば枠状のフレーム6を有し、このフレーム6の内側の領域に液晶表示パネル(画像表示部)8が取り付けられ、さらに、この液晶表示パネル8の装置背面側の部位にバックライト7が取り付けられている。
[0028]
また、図2に示すように、基部2のフレーム6の液晶表示パネル8側の面の周縁部には、複数のスペーサ9が所定の間隔をおいて断続的に設けられている。このスペーサ9の厚さは0.05?1.5mm程度であり、これにより液晶表示パネル8と保護部3との表面間距離が1mm程度に保持される。
[0029]
また、本実施の形態では、特に基部2のフレーム6の貼り合わせ面6aと保護部3の遮光部5の貼り合わせ面5aとが平行になっている。
[0030]
このような構成において、本実施の形態では、まず、図1(a)に示すように、保護部3の遮光部5側に光硬化型樹脂組成物11を所定量滴下して、次いで保護部3を反転させて、保護部3と画像表示部8とを対向させる。次に、保護部3を基部2のスペーサ9上に配置し、図1(b)に示すように、樹脂組成物充填部12を形成する。」

記載事項イ
「[0039]
その後、図1(b)に示すように、透光性部材4を介して紫外線33を照射する。紫外線33の照射方向は、特に限定されることはないが、画像表示領域にある光硬化型樹脂組成物11のより均一な硬化を達成する観点からは、透光性部材4の表面に対して直交する方向とすることが好ましい。
[0040]
また、本発明では上述の紫外線33の照射に加えて、例えば光ファイバー等からなる微細な照射部30を有するUV光照射装置31を用い、遮光部5の形成領域にある光硬化型樹脂組成物11、より具体的には遮光部5と基部2との間の光硬化型樹脂組成物11に対し、遮光部5の貼り合わせ面5a(即ち、遮光部の形成面)の外方側面側から、スペーサ9の間を通して紫外線32を直接照射する。
[0041]
紫外線32の照射方向は、特に限定されることはなく、水平方向に対して0°以上90°未満とすることができるが、遮光部5の形成領域にある光硬化型樹脂組成物11のより均一な硬化を達成する観点からは、基部2のフレーム6の貼り合わせ面6aと保護部3の遮光部5の貼り合わせ面5aに対し、ほぼ平行に紫外線32を照射することが好ましい。
[0042]
このような紫外線の照射を行うことにより、図1(c)に示すように、樹脂組成物充填部12を硬化させて樹脂硬化物層14とし、目的とする画像表示装置1を得る。
[0043]
こうして得られる画像表示装置1は、特定の光硬化型樹脂組成物11を使用することにより、画像表示部8および保護部3に対し、樹脂硬化収縮時の応力の影響を最小限に抑えることができるので、画像表示部8及び保護部3において歪みがほとんど発生せず、その結果、画像表示部8に変形が発生しないので、表示不良のない高輝度及び高コントラストの画像表示が可能になる。
[0044]
さらに、光硬化型樹脂組成物11を硬化させた樹脂硬化物層14により、衝撃に強く、また、画像表示部と保護部との間に空隙を設けていた従来例に比して薄型の画像表示装置1を得ることができる。
[0045]
加えて、基部2のフレーム6と遮光部5との間に配置した光硬化型樹脂組成物11に対して遮光部5の貼り合わせ面5aの外方側面側からも光を照射するようにしたことから、遮光部5の形成領域の光硬化型樹脂組成物11も確実に光が照射され、十分に硬化する。
[0046]
本発明は種々の態様をとることができる。例えば、図3に示すように、スペーサ9を省略して画像表示装置1を製造してもよい。この場合には、基部2上に、上述の光硬化型樹脂組成物11を塗布し、その上に保護部3を重ね、前述と同様に光硬化を行う。
[0047]
また、本発明は、上述した液晶表示装置のみならず、例えば、有機EL、プラズマディスプレイ装置等の種々のパネルディスプレイに適用することができる。」

記載事項ウ
「[図1]


[図3]




上記記載事項ウの図3(c)の記載から、遮光部5は樹脂硬化物層14よりも薄い厚さを有することが読み取れる。
そうすると、記載事項アないしウの記載内容からして、引用例1には、
「枠状のフレーム6を有し、このフレーム6の内側の領域に液晶表示パネル8が取り付けられ、さらに、この液晶表示パネル8の装置背面側の部位にバックライト7が取り付けられている基部2と、
基部2と同程度の大きさで液晶表示パネル8の周縁に対応する領域に黒色枠状の遮光部5が設けられた透光性部材4から形成されている保護部3と、
保護部3の遮光部5側に光硬化型樹脂組成物11を所定量滴下して、次いで保護部3を反転させて、保護部3と液晶表示パネル8とを対向させ、次に、保護部3を基部2上に配置することにより形成された樹脂組成物充填部12に紫外線の照射を行い硬化させた樹脂硬化物層14と、を含み、
遮光部5は樹脂硬化物層14よりも薄い厚さを有する画像表示装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(イ)引用例2
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-156150号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
記載事項エ
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記接着剤や前記保護部材としては、主として樹脂材料が用いられるが、かかる樹脂材料は多少なりとも透湿性を有するため、透湿性を下げるために前記樹脂材料に低透湿性のフィラーを多量に混合させる、または、樹脂成分を緻密で堅いものとする必要があった。しかしながら、上述の方法で低透湿とされた樹脂材料は可塑性や接着力が不十分となり、外力や熱による応力によって前記支持基板あるいは前記封止部材との界面の剥離や微細な亀裂が生じやすく、振動,高湿度あるいは急激な温度変化等の厳しい環境化での使用、例えば、スピードメータやタコメータ等の車両用表示装置として用いた場合にはさらなる防湿性の向上が望まれていた。」

記載事項オ
「【0013】
図1に示すように、有機ELパネル1は、支持基板2と、第一電極3と、絶縁層4と、有機層5と、第二電極6と、封止部材7と、第一の接着部材8と、第二の接着部材9と、吸着部材10とから構成されている。」

記載事項カ
「【図1】




(ウ)引用例3
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-259053号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
記載事項キ
「【0023】前記液晶表示素子10の表面には、透明接着シート16を介して透明な保護板17が設けられている。接着シート16は、保護板17と液晶表示素子10との間の面間反射を低減するために、両者の屈折率の中間の屈折率を有するものが使用されている。また、液晶表示素子10と座標入力デバイス20との間には緩衝材18が配置され、両者の応力による変形を軽減するようになっている。」

記載事項ク
「【図1】




(エ)引用例4
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2008/093704号(以下「引用例4」という。)には、以下の技術事項が記載されている。
記載事項ケ
「[0020](実施例2)
図2に、本実施例2の表示装置の断面構成を模式的に示す。実施例1の表示装置の表示面側の強化ガラス5上に更に0.3mm厚みのサファイヤ9を光学接着剤10で貼り付けた構造である。サファイヤの屈折率は1.76であるため、ガラスの1.54と比べると大きい。そのため、サファイヤの表面には屈折率を下げた材質をスパッタしたAR膜を形成するか、光学接着剤10の屈折率をサファイヤとガラスの中間にすることが透過率の面から好ましい。」

記載事項コ
「[図2]




(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(a)引用発明の「枠状のフレーム6を有し、このフレーム6の内側の領域に液晶表示パネル8が取り付けられ、さらに、この液晶表示パネル8の装置背面側の部位にバックライト7が取り付けられている基部2」と本願補正発明の「下部基板、上部基板及び前記下部基板と上部基板との間に位置する1つまたは複数の発光素子を含む表示パネル」は、「表示パネル」である点で共通している。

(b)引用発明の「基部2と同程度の大きさ」の「基部2上に配置」された「透光性部材4から形成されている保護部3」及び「保護部3の遮光部5側に光硬化型樹脂組成物11を所定量滴下して、次いで保護部3を反転させて、保護部3と液晶表示パネル8とを対向させ、次に、保護部3を基部2上に配置することにより形成された樹脂組成物充填部12に紫外線の照射を行い硬化させた樹脂硬化物層14」は、それぞれ本願補正発明の「前記表示パネル上に位置する保護基板」及び「前記表示パネルと前記保護基板との間に位置する粘着層」に相当する。

(c)本願の発明の詳細な説明の【0030】、【0031】、図4、図5等を参酌すると、本願補正発明のブラックマトリックスは、表示パネルの周縁に対応する領域に設けられた態様を含んでいるといえるから、引用発明の「液晶表示パネル8の周縁に対応する領域に黒色枠状の遮光部5が設けられ」、「遮光部5は樹脂硬化物層14よりも薄い厚さを有する」構成と、本願補正発明の「前記表示パネルは、前記発光素子が形成されている表示領域及び前記発光素子が形成されない非表示領域を含んでいて、前記表示パネルの非表示領域上側に位置し、前記粘着層と等しいか、または前記粘着層よりも薄い厚さを有するブラックマトリックスをさらに含」む構成とは、「前記表示パネルの周縁に対応した領域に設けられ、前記粘着層と等しいか、または前記粘着層よりも薄い厚さを有するブラックマトリックスをさらに含」む構成である点で共通しているといえる。

(d)引用発明の「画像表示装置」は、本願補正発明の「平板表示装置」に相当する。

上記(a)?(d)に記載したことからして、本願補正発明と引用発明は、
「表示パネルと、
前記表示パネル上に位置する保護基板と、
前記表示パネルと前記保護基板との間に位置する粘着層と、を含み、
前記表示パネルの周縁に対応した領域に設けられ、前記粘着層と等しいか、または前記粘着層よりも薄い厚さを有するブラックマトリックスをさらに含む平板表示装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明の表示パネルは、下部基板、上部基板及び前記下部基板と上部基板との間に位置する1つまたは複数の発光素子を含み、さらに表示パネルは、前記発光素子が形成されている表示領域及び前記発光素子が形成されない非表示領域を含んでいるのに対し、引用発明の基部2は、そのような構成とはなっていない点。

相違点2
本願補正発明の粘着層の屈折率は、上部基板の屈折率と保護基板の屈折率との間の値であるのに対し、引用発明は、樹脂硬化物層14の屈折率と液晶表示パネル8の上部及び保護部3の屈折率との関係が不明である点。

相違点3
本願補正発明のブラックマトリックスは、表示パネルの非表示領域上側に位置し、粘着層と表示パネルの上部基板との間に配置されるのに対し、引用発明の遮光部5は、保護部3の液晶表示パネル8と対向する側で、液晶表示パネル8の周縁に対応する領域に設けられている点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
下部基板、上部基板及び前記下部基板と上部基板との間に位置する1つまたは複数の発光素子を含む有機ELパネルは、引用例2にも記載されているように周知技術であり、有機ELパネルにおいて発光素子が形成されている領域が表示領域となり、発光素子が形成されていない領域が非表示領域となることは自明なことである。そして、引用例1には、液晶表示装置のみならず、有機EL等のパネルディスプレイにも適用できることが記載(上記記載事項イの[0047]参照)されているのであるから、引用発明の基部2に代えて該周知技術の有機ELパネルを採用し上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

(イ)相違点2について
2つの部材の間での面反射を低減し透過率を高めるために、両者の屈折率の間の値となる屈折率の層を2つの部材の間に設けることは引用例3、4にも記載されているように周知技術(引用例3の【0023】、引用例4の[0020]等参照)であるから、上記相違点1で検討したように引用発明の基部2に代えて周知技術の有機ELパネルを採用した際に、面反射を低減するために引用発明の樹脂硬化物層14の屈折率を上部基板の屈折率と保護部3の屈折率との間の値となるようにする程度は当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。

(ウ)相違点3について
ブラックマトリックスを表示パネルの非表示領域上側に設けることや、ブラックマトリックスを表示パネルの最外層に設けることは周知技術(例えば、特開2001-166322号公報の図3、特開2007-227275号公報の図5等参照)であるから、上記相違点1で検討したように引用発明の基部2に代えて周知技術の有機ELパネルを採用した際に、遮光部5を有機ELパネルの非表示領域上側に位置するようにすることや、遮光部5を有機ELパネルの上部基板に設けて樹脂硬化物層14と有機ELパネルの上部基板の間に遮光部5が配置されるようにする程度は当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。

また、本願補正発明の効果は、引用発明及び周知技術から予測し得る範囲内のものであり、格別のものとは認め難い。

なお、請求人は、審判請求書の請求の理由において、「すなわち、本願発明は、『前記ブラックマトリックスは、前記粘着層と前記表示パネルの上部基板との間に配置される』との本願特有の特徴的な構成を備えるものです。このような本願特有の特徴的な構成により、本願発明は、『表示パネルと保護基板との間のすべての面に粘着層が位置するようにし、表示パネルと保護基板との間の空間を除去し、表示パネルと保護基板とが完全に接着できるようにする効果があり、粘着層の屈折率を表示パネルの上部基板の屈折率と保護基板の屈折率との間の値とし、粘着層を用いた表示パネルと保護基板との接着固定時に表示パネルと保護基板に所定圧力を加えて、粘着層内部に気泡の発生がないようにすることで、表示パネルによりディスプレイされる映像が粘着層により歪みが発生することを防止する効果があり、表示パネルと保護基板との間に位置する粘着層の厚さをブラックマトリックスの厚さに同様にするか、それ以上に厚くして、表示パネル及び保護基板の表面段差を最小化することで、表示パネルと保護基板との接着時に、表示パネルと保護基板との間に気泡が発生することを防止し、表示パネルと保護基板との接着を容易にする』(本願段落[0010]?段落[0012]等)等との、引用文献1には記載されていない本願特有の異質かつ顕著な作用効果を奏することができるものです。」(審判請求書第5頁参照)と主張しているが、表示パネルと保護基板との間のすべての面に粘着層が位置するようにし、表示パネルと保護基板との間の空間を除去できるのは、ブラックマトリックスの厚さが粘着層よりも薄い厚さを有することによるものと認められ、ブラックマトリックスが表示パネル側に配置されるか、保護基板側に配置されるかによって格別効果上の差異があるとは認められない。このことは、本願の発明の詳細な説明の【0032】に「図5では、前記ブラックマトリックス550が前記表示パネル500周りの上側と接触するように示したが、前記ブラックマトリックス550は前記保護基板600周りの下側と接触することもできる。」と、ブラックマトリックスを表示パネル側と保護基板側のどちら側に設けてもよいことが記載されていることからみても明らかである。したがって、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は、平成25年7月18日付けの回答書において、「すなわち、本願発明は、「・・・前記粘着層と等しい厚さを有するブラックマトリックスをさらに含み、・・・」との特徴的な技術思想を開示しています。本願発明のように、「粘着層とブラックマトリックスの厚さを等しくする」との技術思想については、いずれの引用文献においても一切言及されておらず、開示も示唆もされていないものと請求人は思料致します。」(回答書第6頁参照)と主張しているが、そもそも本願補正発明は「粘着層とブラックマトリックスの厚さを等しくする」ものに限定されているわけではないし、しかも本願補正発明は「前記ブラックマトリックスは、前記粘着層と前記表示パネルの上部基板との間に配置される」という発明特定事項を有しており、ブラックマトリックスと粘着層の厚さが等しい場合にはブラックマトリックスは粘着層と表示パネルの上部基板との間に配置されることとならないことは自明であるから「粘着層とブラックマトリックスの厚さを等しくする」ものは本願補正発明から実質的に除外されているといえる。したがって、請求人の上記主張も採用することができない。

よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年10月11日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「下部基板、上部基板及び前記下部基板と上部基板との間に位置する1つまたは複数の発光素子を含む表示パネルと、
前記表示パネル上に位置する保護基板と、
前記表示パネルと前記保護基板との間に位置する粘着層と、を含み、
前記粘着層の屈折率は、前記上部基板の屈折率と前記保護基板の屈折率との間の値であり、
前記表示パネルは、前記発光素子が形成されている表示領域及び前記発光素子が形成されない非表示領域を含んでいて、前記表示パネルの非表示領域上側に位置し、前記粘着層と等しいか、または前記粘着層よりも薄い厚さを有するブラックマトリックスをさらに含む
ことを特徴とする平板表示装置。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記「2.」「(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明の「ブラックマトリックス」についての限定事項である「前記ブラックマトリックスは、前記粘着層と前記表示パネルの上部基板との間に配置される」ことを省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.」「(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-04-09 
結審通知日 2014-04-15 
審決日 2014-04-28 
出願番号 特願2009-28479(P2009-28479)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田辺 正樹  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 北川 清伸
土屋 知久
発明の名称 平板表示装置及びその製造方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 佐伯 義文  

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