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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F42D
管理番号 1292298
審判番号 不服2013-18630  
総通号数 179 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-26 
確定日 2014-09-22 
事件の表示 特願2008-267380号「トンネル工事における発破粉塵の抑制方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月30日出願公開、特開2010- 96419号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成20年10月16日の出願であって、平成25年1月30日付けで拒絶理由が通知されたが、応答期間内に意見書等の提出がなされなかったため、平成25年6月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年9月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
本願の請求項1?2に係る発明は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項2】
帯電防止処理されたポリエチレン樹脂製の袋体に水又はゲル水を充満し、同袋体を静電気が除去された紙管に挿入し、同紙管の片方の開口を閉塞した、発破孔詰込み部材。」

2.刊行物記載の発明
(1)刊行物1
原査定の拒絶理由で引用した本願の出願日前に国内で頒布された刊行物である特開昭63-194200号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)
「(産業上の利用分野)
本発明はトンネルに掘削工事、特にナトム工法によるトンネル掘削で行う長孔発破方法の改良に関する。」(第1頁左欄第13?16行)
(イ)
「(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいて説明する
本実施例はトンネル掘削のナトム工法における長孔発破に適用した例である。第1図は本実施例における長孔の発破詰め状態を示す説明図、第2図は同実施例の水筒を封入した硬質筒体を示す斜視図、第3図は水筒を示す斜視図、第4図はトンネル掘削の長孔の穿孔位置を示す説明図である。
この実施例の水筒(1)は薄手のポリエチレン製の長さ185mm、直径30mmの袋中に約130ccの水を封入したものであり、この水筒(1)を3個厚み2mmで長さ570mmの厚紙製硬質筒体(2)に封入したものを使用している。封入後硬質筒体(2)の前後開口周縁を内側に折曲させて水筒(1)の抜止用ストッパ(7)を形成させている。
この実施例ではトンネル掘削する岩面に第4図に示す様に1500?4000mmの深さの長孔(3)を多数穿孔し、この長孔にまず親ダイ(4)を次1に増ダイ(5)を奥深く挿入する。
その後に上記水筒(1)に3個挿入した硬質筒体(2)を装填し、最後に砂、粘土の発破詰物(6)を填塞する。その後、爆薬を詰めた親ダイ(4)、増ダイ(5)を点火させて爆発させればその後方の硬質筒体(2)は小片に爆裂すると共にその内部の水筒(1)の水は瞬時水蒸気となって膨散して爆発力の均等化と粉塵の飛散を防止する様に作用する。この水蒸気の働きによってめがね、中ぶくれ等の余堀の発生が抑えられ、又爆発衝撃の直接の地山の影響を緩げることができ地肌の大きな損傷も防いでいる。加えて発破音もかなり減少させることができた。
更に本工法では水筒(1)は硬質筒体(2)に挿入して保護された状態で長孔(3)に挿入されるので水筒(1)が挿入作業の際、長孔の孔壁の凹凸、岩肌によって破裂して水漏れして使えなくなる事故がほとんどない。
又、水筒(1)のままでは柔らすぎて保管、運搬に支障になるが硬質筒体(2)に封入したまで行えば保管、運搬上の取扱いも簡便にできる。」(第2頁左上欄第9行?同頁左下欄第10行)

上記の記載事項(ア)、(イ)及び第1図?第4図の開示内容からみて、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「ポリエチレン製の袋中に水を封入した水筒1を、厚紙製硬質筒体2に封入し、同厚紙製硬質筒体2の前後開口周縁を内側に折曲させて水筒1の抜止用ストッパ7を形成した、長孔発破方法の長孔に増ダイ(5)の後に挿入する水筒を封入した厚紙製硬質筒体。」

3.対比、判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「水筒1」はポリエチレン製の袋であるから前者の「ポリエチレン樹脂製の袋体」に相当し、後者の袋中に「水を封入」することは前者の袋体に「水又はゲル水を充満」するとの選択的事項のうちの「水を充満」することに相当する。
後者の「厚紙製硬質筒体2」は前者の「紙管」に相当する。
後者の「水筒を封入した厚紙製硬質筒体」は前者の「発破孔詰込み部材」を構成する。
してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「ポリエチレン樹脂製の袋体に水を充満し、同袋体を紙管に挿入した、発破孔詰込み部材。」

〔相違点1〕
本願発明の「袋体」は「帯電防止処理された」ものであり、「紙管」は「静電気が除去された」ものであるのに対して、引用発明の「水筒1」、「厚紙製硬質筒体2」のそれぞれは、そのように構成されているのか明らかでない点。
〔相違点2〕
本願発明の「紙管」は「片方の開口を閉塞した」ものであるのに対して、引用発明の「厚紙製硬質筒体2」は「前後開口周縁を内側に折曲させて水筒1の抜止用ストッパ7を形成した」ものであり、閉塞しているのか明らかでない点。

上記各相違点について以下検討する。
〔相違点1について〕
発破孔内に挿入する爆薬の容器に静電気が発生しないよう帯電防止処理を行うことは、周知慣用の事項であり(例えば、登録実用新案第3028127号公報の段落【0008】、特許第2832500号公報の段落【0010】を参照)、爆薬とともに発破孔内に挿入する部材についても同様に静電気の発生を防止するようにすることは、当業者が当然に考慮すべき事項といえる。
してみれば、引用発明の水筒及び厚紙製硬質筒体のそれぞれに、帯電防止処理を行うまたは静電気を除去する等の処理を施し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
〔相違点2について〕
本願発明の紙管の片方の開口を閉塞する構造は、紙管と同様に、その内部に挿入された袋体が地山に接触して破れることなく長孔に詰め込まれるようにするためのものである(本願明細書の段落【0012】参照)。また、引用発明の厚紙製硬質筒体も、その内部の水筒を保護した状態で長孔内に挿入するためのものであり、当該筒体の一部である前後開口縁を折曲させて形成された抜止用ストッパも水筒を保護する機能を有しており、開口が小さくなる分、開口面における保護機能を有していることは明らかである。
そして、引用発明において、水筒はポリエチレン製であるので、該水筒が厚紙製硬質筒体から抜け出したり、または開口部において岩肌に接触して破れないようにすることは、自明な課題であることから、引用発明の抜止用ストッパを内部の水筒の抜け止めまたは保護を完全にするために、筒体を閉塞する程度に折曲して形成することは、当業者が適宜になし得ることといえる。
したがって、引用発明を、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。

そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び周知の事項から予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明(本願発明)は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-07-24 
結審通知日 2014-07-28 
審決日 2014-08-08 
出願番号 特願2008-267380(P2008-267380)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 大熊 雄治
特許庁審判官 鳥居 稔
平田 信勝
発明の名称 トンネル工事における発破粉塵の抑制方法  
代理人 戸島 省四郎  

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