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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1293626
審判番号 不服2013-15466  
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-09 
確定日 2014-11-05 
事件の表示 特願2010-524160「複合材料、該複合材料を含む放熱材料、ならびにそれらの調製方法および使用」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月19日国際公開、WO2009/035906、平成22年12月16日国内公表、特表2010-539683〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成20年9月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2007年9月11日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

手続補正 :平成22年 3月16日
拒絶理由通知 :平成24年 9月13日(起案日)
意見書 :平成25年 1月18日
手続補正 :平成25年 1月18日
拒絶査定 :平成25年 4月 4日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成25年 8月 9日
手続補正 :平成25年 8月 9日
審尋 :平成25年11月21日(起案日)
回答書 :平成26年 4月25日

2.本願発明

本願の請求項1ないし31に係る発明は、平成25年8月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし31に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
(a)融点を有する熱伝導性金属と、
(b)前記熱伝導性金属中に分散されたシリコーン粒子と
を有する複合材料を含む放熱材料であって、
前記熱伝導性金属は、電子デバイスの正常動作温度よりも高い融点を有する、放熱材料。」

3.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-305213号公報(平成14年10月18日公開、以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【請求項1】第一の電子部品と、第二の電子部品と、第三の電子部品を有する電子装置であって、該第一の電子部品と該第二の電子部品は、金属の粒子とはんだの粒子を含む材料を圧延して形成したはんだ箔である第一のはんだを用いて接続され、該第二の電子部品と該第三の電子部品は該第一のはんだと異なる融点を有する第二のはんだを用いて接続されていることを特徴とする電子装置。」

(2)「【請求項12】請求項1から5のいずれか1項に記載の電子装置であって、さらに前記第一のはんだはプラスチック粒子を有することを特徴とする電子装置。」

(3)「【0001】
【発明の属する技術分野】はんだおよびはんだの製造方法、またははんだ接続を用いる電子機器、電子装置および電子機器、電子装置の製造方法に関する。特に、Sn-Ag-Cu系Pbフリーはんだ等に対する高温側の温度階層接続を必要とするはんだ接続に適用して有効な技術に関する。」

(4)「【0006】本発明の目的は、全く新規なはんだ接続による電子機器(電子装置)および電子機器の製造方法を提供することにある。また、電子機器の製造法において必要となる温度階層接続におけるはんだ接続、特に高温側のはんだ接続を提供することにある。また、本発明の他の目的は、全く新規なはんだおよびその製造方法を提供することにある。」

(5)「【0018】図1は複合ボール(金属ボール、はんだボール)で作る複合体金属の製作工程の概略を示し、(a)は真空ホットプレスのカーボン治具1中に金属ボールであるCuボール2と、はんだボールであるSnボール3を入れた状態で、(b)は真空ホットプレス後のはんだが塑性流動した後の複合ボール塊の断面形状モデルで、SnとCuは「海島構造」に変形している。(c)はその複合ボール塊を更にロール5で圧延し、はんだ箔を作製しているモデルである。」

(6)「【0021】作りやすさ、配合時に均一分散し易いこと、扱い易さ等の点ではCuボール及びはんだボールは球状であることが好ましいが、必ずしも球状である必要はない。Cuボール表面の凹凸が激しいもの、棒状、針状、繊維状、角状であるもの、樹枝状で合っても良く、また、これらを組合せたものでも良く、接合後にCu同志が絡み合えば良い。ただし、上記の圧縮によりCu同志で拘束されすぎて自由度がきかなくなると、はんだ付け時にクッション性なくなり、接続不良が生じ易くなるのであれば、ボール状よりもCuボールは表面に凹凸が激しいもの、棒状、針状、繊維状、角状であるもの、樹枝状のもの、またはこれらを組合せたものが好ましい。そして、図2に示すように、Cu2、Sn3ボール以外に、耐熱性の軟らかい弾性体であるメタライズした(無電解Niめっき-Auめっき、もしくは無電解Niめっき-はんだめっき)プラスチックボール(ゴム)6を分散させ低ヤング率化してクッション性を確保することも出来る。図2(a)は圧延前、(b)は圧延後を示す。樹脂ボール径は理想的には10μm以下、望ましくは1μmレベルが良い。例えば0.5?5μmが望ましい。配合量としては体積で数%でも効果がある。本明細書において「金属」「はんだ」について「粒子」「ボール」と2つの用語を用いているが、両者は、上記説明からわかるようにほぼ同意義で用いている。強いて区別をつけるとすれば、「粒子」は「ボール」を包括したやや広い意味で用いている。」

(7)「【0042】図3は前述のはんだ箔11を用いてAl2O3基板13上のW-Cuめっきメタライズ(Niめっきでも良い)14にSiチップ8をダイボンドする一例を示す。はんだ箔11の代表例として、金属ボールがCuで、はんだがSnの組合せがある。Cuは比較的に軟らかく、Snとの反応が活発で、金属間化合物(Cu6Sn5)の機械的性質は優れているので、厚く成長しても脆さは出にくい。万一、化合物成長が顕著でその弊害が現れる場合、Sn中にCu等を微量添加して合金層成長速度を抑えることは可能である。またはCu上にNi、Ni-Au等の薄いNiめっきを施すことで合金層成長を抑えることは可能である。ここでは、短時間のはんだ付け時にCuボール間を金属間化合物で確実に連結することが重要であり、反応を活発にすることが望まれるので、成長過剰が問題になることはない。それよりも、Snとチップ及びSnと基板との接続において、Snのぬれ性、ぬれ拡がり性の向上が重要である。このため、Sn中に微量のCu、Bi添加による流動性の向上、表面張力の低減によるぬれ性改良の効果が期待できる。他方、界面との強度向上のため、Ni、Ag、Zn等の微量添加の効果も期待できる。なお、Snの融点向上にはSnの代わりにSn-Sb(5?10%)にすることで、Cu-Sn化合物、Ni-Sn化合物形成ではんだ中のSb濃度が増して、246℃にはんだの融点を向上させることができる。」

(8)「【0052】また、はんだ箔11の温度はその融点に達すると、瞬時にはんだ箔のSnなどが溶け、金属ボール間接合に圧力が加わり溶け始める。そこで、金属ボール間接合のつぶれ防止のため、設定温度に達すると抵抗加熱体ツール7をはんだ箔11を加圧した時の位置を起点とし、その位置からはんだ箔厚さに対して約10%(max20%)以下にし、チップからのはんだのはみ出し量を制御している。はんだ箔の厚さは熱疲労寿命に影響するので、80?150μm位にするのが一般的である。この、はんだ厚さと、チップ寸法に対するはんだ箔の寸法で、つぶれ量を制御することになる。しかし、本方式はCuが半分入って、しかもネットワーク状に連結されているので熱伝導に優れるので、200?250μmでも熱的には従来より優れる。」

(9)「【0093】(略)また、上記実施例において開示した観点の代表的なものは次の通りである。金属の粒子とはんだの粒子を含むはんだ材料を圧延して形成したはんだ箔である。(略)また、前記記載のはんだ箔であって、複合はんだの剛性低減のため、表面にはんだがぬれるメタライズを施したプラスチックボールを分散させたものである。(略)また、前記記載のはんだ箔であって、該プラスチックボール素材として、ポリイミド系樹脂、耐熱エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、各種ポリマービーズもしくはこれらを変成したもの、もしくはこれらを混合したものである。(略)」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(a)引用例には「はんだ」が記載されている(摘示事項(3))。

(b)「はんだ」は、金属の粒子とはんだの粒子を含む材料を圧延して形成したはんだ箔である(摘示事項(1))。

(c)はんだ箔は、金属の粒子、はんだの粒子以外に分散されたメタライズしたプラスチック粒子を有する(摘示事項(2)、(5)、(6))。

(d)はんだ箔は、熱伝導に優れ、Siチップの基板へのダイボンドに用いられる(摘示事項(7)、(8))。

(e)はんだ箔は、プラスチック粒子として、シリコーン系樹脂を混合したものである(摘示事項(9))。

以上をを総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「金属の粒子とはんだの粒子を含む材料を圧延して形成したはんだ箔であって、
金属の粒子、はんだの粒子以外に分散されたメタライズしたプラスチック粒子を有し、
熱伝導に優れ、Siチップの基板へのダイボンドに用いられ、
プラスチック粒子として、シリコーン系樹脂を混合したはんだ箔。」

4.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)複合材料
引用発明のはんだ箔は、熱伝導に優れたものであり、これを構成する金属の粒子、はんだの粒子は、摘示事項(5)の引用例【0018】の記載によれば、Cu(銅)、Sn(錫)の粒子(ボール)であるから、金属であり、金属として程度の差こそあれ、熱伝導性を有するので、「熱伝導性金属」といえる。また、金属は「融点」を有するのも技術常識である。そして、引用発明のはんだ箔は、金属の粒子、はんだの粒子以外に分散されたメタライズしたプラスチック粒子を有し、プラスチック粒子として、シリコーン系樹脂を混合したものであるから、メタライズしたシリコーン系樹脂は、「熱伝導性金属中に分散されたシリコーン粒子」といえ、はんだ箔は、「複合材料」といえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「(a)融点を有する熱伝導性金属と、(b)前記熱伝導性金属中に分散されたシリコーン粒子とを有する複合材料を含む」点で一致する。

(2)放熱材料
引用発明のはんだ箔は、熱伝導に優れ、Siチップの基板へのダイボンドに用いられるものであるから、「放熱材料」といえる。

(3)熱伝導性金属の融点
本願発明と引用発明とは、「熱伝導性金属の融点」について、本願発明は、「電子デバイスの正常動作温度よりも高い」との特定があるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>

「(a)融点を有する熱伝導性金属と、
(b)前記熱伝導性金属中に分散されたシリコーン粒子と
を有する複合材料を含む放熱材料。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

「熱伝導性金属の融点」について、本願発明は、「電子デバイスの正常動作温度よりも高い」との特定があるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

5.判断

そこで、上記相違点について検討する。

引用発明のはんだ箔は、Siチップの基板へのダイボンドに用いられるものであるから、Siチップの動作中に融解しては不都合なことは自明であって、金属の粒子、はんだの粒子として、Siチップの正常動作温度よりも高い融点を有するものを選択することは、当然のことである。

なお、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-126532号公報には、シリコーン樹脂微粒子表面に無電解メッキ層を形成する具体的な方法(メッキ時に弱アルカリでエッチングを施すか、または、エッチングは施さず、メッキ反応の触媒としてアルカリ触媒を使用する、【0009】)が記載されており、シリコーン系樹脂をメタライズすることは十分可能である。

6.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-06-04 
結審通知日 2014-06-10 
審決日 2014-06-24 
出願番号 特願2010-524160(P2010-524160)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日比野 隆治  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 関谷 隆一
萩原 義則
発明の名称 複合材料、該複合材料を含む放熱材料、ならびにそれらの調製方法および使用  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  

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