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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D |
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管理番号 | 1294485 |
審判番号 | 不服2014-3585 |
総通号数 | 181 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-02-26 |
確定日 | 2014-12-16 |
事件の表示 | 特願2010- 11965「内燃機関の気筒休止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月 4日出願公開、特開2011-149352、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年1月22日の出願であって、平成25年6月27日付けで拒絶理由が通知され、平成25年8月26日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年12月2日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成26年2月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。 第2 平成26年2月26日付けの手続補正の適否 1 本件補正の内容 平成26年2月26日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成25年8月26日に提出された手続補正書により補正された)請求項1を、下記(2)に示す請求項1とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。 (1)「【請求項1】 複数の気筒を備え、前記複数の気筒の中の一部又は全部の気筒を休止させる気筒休止運転も行う内燃機関の気筒休止装置であって、 搭乗者の不快感の大きさを推定する搭乗者感覚推定手段と、 気筒休止運転時に前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の不快感の大きさが閾値以下となるように休止させる気筒の組み合わせを選択する選択手段 を備え、 前記搭乗者感覚推定手段は、搭乗者から検出した情報に基づいて搭乗者の感情レベルを搭乗者の不快感の大きさとして推定し、 前記選択手段は、前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるように休止させる気筒の組み合わせを選択することを特徴とする内燃機関の気筒休止装置。」 (2)「【請求項1】 複数の気筒を備え、前記複数の気筒の中の一部又は全部の気筒を休止させる気筒休止運転も行う内燃機関の気筒休止装置であって、 搭乗者の不快感の大きさを推定する搭乗者感覚推定手段と、 気筒休止運転時に前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の不快感の大きさが閾値以下となるように休止させる気筒の組み合わせを選択する選択手段と、 を備え、 前記搭乗者感覚推定手段は、搭乗者から検出した情報に基づいて搭乗者の感情レベルを搭乗者の不快感の大きさとして推定し、 前記選択手段は、前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるまで、休止させる気筒の組み合わせを任意に選択することで、前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるように休止させる気筒の組み合わせを選択することを特徴とする内燃機関の気筒休止装置。」(下線は、本件補正箇所を示すために、請求人が付したものである。) 2 補正の適否 本件補正の補正事項1は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記選択手段は、前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるように休止させる気筒の組み合わせを選択する」について、「前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるまで、休止させる気筒の組み合わせを任意に選択することで、」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)引用文献 原査定の拒絶理由に引用され本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-281384号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 自動車の気筒休止を制御するための方法であって、 気筒休止モードを利用できるか決定するステップ、 前記自動車の運転状態に対応するパラメータに関する情報を受信するステップ、 前記パラメータを下限値と上限値を有する所定の禁止範囲と比較するステップ、および 前記パラメータが前記所定の禁止範囲内にあるとき、気筒休止を禁止するステップ を備える気筒休止を制御するための方法。 【請求項2】 請求項1記載の気筒休止を制御するための方法において、 前記パラメータは、エンジン回転数である 気筒休止を制御するための方法。 【請求項3】 請求項1記載の気筒休止を制御するための方法において、 前記パラメータは、車速である 気筒休止を制御するための方法。 【請求項4】 請求項1記載の気筒休止を制御するための方法において、 前記パラメータは、トランスミッション状態である 気筒休止を制御するための方法。 【請求項5】 請求項1記載の気筒休止を制御するための方法において、 前記パラメータは、エンジン負荷である 気筒休止を制御するための方法。 【請求項6】 自動車の気筒休止を制御するための方法であって、 前記自動車の運転状態に対応するパラメータに関する情報を受信するステップ、 前記パラメータを下限値と前記下限値よりも大きい上限値を有する所定の禁止範囲と比較するステップ、 前記パラメータの値が前記所定の禁止範囲の前記下限値より小さいときは、気筒休止を許可するステップ、 前記パラメータが前記所定の禁止範囲内にあるときは、気筒休止を禁止するステップ、 前記パラメータの値が前記所定の禁止範囲の前記上限値より大きいときは、気筒休止を許可するステップを備える 自動車の気筒休止を制御するための方法。 ・・・ 【請求項12】 複数の気筒を有するエンジンを含む自動車の気筒休止を制御するための方法であって、 複数の気筒全てが稼動される最大気筒モードを設定するステップ、 前記最大気筒数より小さい最小気筒数の気筒が稼動される最小気筒モードを設定するステップ、 前記最大気筒数より小さく前記最小気筒数より大きい中間気筒数の気筒が稼動される中間気筒モードを設定するステップ、 前記自動車の運転状態に対応するパラメータに関する情報を受信するステップ、 前記パラメータを所定の禁止範囲と比較するステップ、 前記パラメータが前記所定の禁止範囲内にあるときは、前記最小気筒数にする気筒休止を禁止する一方、前記中間気筒数にする気筒休止を許可するステップ を備える気筒休止を制御するための方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項12】) イ 「【0044】 図1は、気筒休止システム100の好適な実施形態の略図である。望ましくは、気筒休止システム100はエンジン102、コントロールユニット104、およびセンサシステム106を備える。幾つかの実施形態では、気筒休止システム100は、複数のエンジンおよび/または複数のセンサシステムのような付加的な構成要素を含む。好適な実施形態においては、気筒休止システム100は、ある種の自動車の一部である。 【0045】 本実施形態では、エンジン102は、第1気筒111、第2気筒112、第3気筒113、第4気筒114、第5気筒115、および第6気筒116を含む。より明確には、エンジン102は、図1に6気筒エンジンとして示される。他の実施形態では、エンジン102の気筒数は、6気筒より多くても少なくてもよい。例えば、エンジン102の他の好適な実施形態は、3気筒、4気筒、8気筒、9気筒、10気筒、または12気筒を含むことができる。一般に、エンジン102は、所望数の気筒を含むことができる。 ・・・ 【0049】 望ましくは、コントロールユニット104は、エンジン総排気量を変更し、それによって、全ての気筒の運転を必要としない負荷要求の状況において燃料効率を増加するために、気筒休止させる構成を有している。気筒休止は、エンジン102内の一つまたはそれより多い気筒が使用されないときはいつでも発生する。幾つかの実施形態において、一つより多い気筒休止モードがある。 図2を参照して、エンジン102は、最大気筒モード202、中間気筒モード204、または最小気筒モード206で運転される。望ましくは、最大気筒モード202は最大数の気筒を使用して運転する、最小気筒モード206は前記最大数より少ないある数の気筒を使用して運転する、中間気筒モード204は前記最大数および前記最小数の間のある数の気筒を使用して運転する。最大数より少ない気筒を使用するどんな気筒モードも、“気筒休止モード”と称される。 【0050】 好適な実施形態において、最大気筒モード202の間、望ましくは、気筒111-116が全て運転される。中間気筒モード204の間、第1気筒111、第3気筒113、第4気筒114、および第6気筒116が運転され続ける一方、第2気筒112および第5気筒115は休止される。最終的に、最小気筒モード206の間、第1気筒111、第3気筒113、および第5気筒115は運転され続ける一方、第2気筒112、第4気筒114、および第6気筒116は休止される。言い換えれば、好適な実施形態において、最大気筒モード202は6気筒モードであり、中間気筒モード204は4気筒モードであり、最小気筒モード206は3気筒モードである。しかしながら、他の実施形態において、各気筒モードは、運転中、異なる数の気筒を使用できる。 【0051】 異なる実施形態において、各気筒休止モードは、異なる気筒を休止させることによって達成され得る。一般に、一つの気筒休止モードを達成するために、如何なる組み合わせの気筒も、休止させる。中間、すなわち4気筒モードを含む実施形態において、2つの気筒のどんな組み合わせも、中間モードを達成するために、休止させることができる。例えば、別の実施形態において、中間気筒モード204は、第1気筒111および第6気筒116を休止させるとともに他の気筒の稼働を許可することによって達成できる。さらに、別の実施形態において、中間気筒モード204は、第5気筒115および第6気筒116を休止することによって達成できる。さらに、他の実施形態において、何れか他の2つの気筒が休止され得る。同様に、最小、すなわち低気筒モードを含む実施形態において、如何なる3つの気筒の組み合わせでも、最小モードを達成するために、休止され得る。 例えば、別の実施形態においては、第1気筒111、第3気筒113、および第5気筒115は休止され、かつ、第2気筒112、第4気筒114、および第6気筒116は稼動状態を維持され、最小気筒モード206を達成できる。 【0052】 一般に、エンジン102は、現在の出力要求に従って、最大、中間、および最小(この場合、6、4および3)気筒モードの間を切り換える。高出力要求のためには、エンジン102は、最大気筒モード202で運転される。低出力要求のためには、エンジン102は、最小気筒モード206で運転される。中間出力要求のためには、エンジン102は、中間気筒モード204で運転される。幾つかの場合、コントロールユニット104または別の装置は、現在の出力要求を監視し、エンジン102を、最小気筒モード206、中間気筒モード204、および最大気筒モード202の間で、これらの出力要求に従って、円滑に切り換える。 【0053】 気筒休止のためのここで述べられる構成は、好適な構成である。特に、中間気筒モード204と最小気筒モード206の両モードは、対称的な気筒の構成を含む。これらの対称的な構成は、運転中、アンバランスとなるエンジン102の傾向を減ずる。6つより多い気筒を有するエンジン102が使用されるとき、様々の他の気筒休止の場合がある。 【0054】 気筒休止の間に、問題が発生する場合がある。ある運転状態下で、エンジンが気筒休止モードとなっているとき、エンジンマウントおよび排気系システムは、増加した振動および排気ガス流の脈動の下で動作しなければならない。加えて、駆動伝達系の構成要素は、また、付加的な振動を持ち込む。幾つかの場合、受け入れ不可のレベルのノイズ振動と不快さ(NVH)が発生し、自動車内の運転者および/または乗客の心地よさに反する影響を与える。 【0055】 気筒休止システム100は、気筒休止による自動車内の受け入れ不可のNVHの発生を減じるか、または排除するための構成を有するのが好ましい。幾つかの実施形態では、気筒休止は、自動車のある運転状態下、例えば、現在のエンジン負荷が6つの気筒111乃至116の全ての使用を必要としないときにおいても、気筒休止が禁止される場合がある。好適な実施形態においては、センサシステム106を使用して測定される種々の運転パラメータが分離した個別禁止範囲内にあるとき、コントロールユニット104は、気筒休止を禁止するか、停止する。 【0056】 図3を参照すると、エンジン102が気筒休止モードであるときは何時でも、エンジン回転数の分離した個別範囲が、受け入れ不可のノイズレベルに対応していることが分る。関係302は、ノイズと種々のエンジン排気量モードのためのエンジン回転数との好適な実施形態である。ここで使用されるノイズは、特に、自動車の車内のドライバまたは乗客によって経験されるようなNVHである。特に、最小気筒ライン304、中間気筒ライン306、および、最大気筒ライン308が図示され、エンジン102の最小気筒モード206、中間気筒モード204、および最大気筒モード202(図2参照)のそれぞれのためのエンジン回転数の機能のときのノイズ値を表現する。ノイズ限界310は、受け入れ可能なノイズの上限値を表す。 【0057】 図3に見られるように、最小気筒ライン304は、ノイズ限界310の上に配置される第1ピーク312を含む。また、中間気筒ライン306は、ノイズ限界310の上に配置される第2ピーク314を含む。最終的に、最大気筒ライン308は、全てのエンジン回転数に対してノイズ限界310の下に配置されることが明らかである。これは、予期されることである、何故なら、おそらく、エンジン102(図1参照)は、全てのエンジン回転数について、最大気筒モード202(図2参照)に対しての限界ノイズに調整されるからである。 【0058】 この好適な実施形態において、最小気筒ライン304の第1ピーク312は、第1エンジン回転数範囲322内の一つのエンジン回転数の範囲に該当する。第1エンジン回転数範囲322は、エンジン102が最小気筒モードであるのための可能なエンジン回転数の全ての範囲を含むことが望ましい。特に、最小気筒ライン304の第1ピーク312は、第1禁止範囲320に該当する。第1禁止範囲320は、第1下限値L1が最小値であり、第1上限値L2が最大値である。この実施形態において、もし、現在のエンジン回転数が第1禁止範囲320内にある値を有するならば、エンジン102が最小気筒モード206で運転されるとき、望ましくないノイズが発生する。 【0059】 また、中間気筒ライン306の第2ピーク314は、望ましくは、第2エンジン回転数範囲324内の一つのエンジン回転数の範囲に該当する。第2エンジン回転数範囲324は、望ましくは、エンジン102が中間気筒モードにおいて可能なエンジン回転数の全ての範囲を含む第1エンジン回転数範囲322と同一である。この実施形態においては、中間気筒ライン306の第2ピーク314は、第2禁止範囲326に該当する。第2禁止範囲326は、第2下限値L3が最小値であり、第2上限値L4が最大値である。この実施形態において、もし、現在のエンジン回転数が第2禁止範囲326内の値を有するならば、エンジンが中間気筒モード204で運転しているとき、望ましくないノイズが発生するだろう。 【0060】 禁止範囲320および326は、望ましくないノイズが発生するエンジン回転数の可能な範囲を例示しているにすぎない。他の実施形態において、禁止範囲320および326は、様々な実験を基礎とするまたは理論的な考察によって決定されるような範囲である。望ましい実施形態においては、コントロールユニット104は、シリンンダ休止において使用されるこれらの所定の禁止範囲を含むように構成される。その上、この詳細な説明を通して述べられた全ての禁止範囲は、ノイズレベルを変えるのに対応する種々の型のパラメータの禁止範囲を含む可能な禁止範囲が図示されていることだけを意味している。他の実施形態においては、各禁止範囲は変えることが可能である。 【0061】 他の実施形態において、各気筒モード204および206は、エンジン回転数に対して複数の禁止範囲を含んでいる。図4は、第3エンジン回転数範囲402および第4エンジン回転数範囲404の禁止範囲400に関する望ましい実施形態であり、第3エンジン回転数範囲402および第4エンジン回転数範囲404は、最小気筒モード206および中間気筒モード204のそれぞれが可能なエンジン回転数範囲に該当する。この実施形態において、第3エンジン回転数範囲402は、第3禁止範囲406および第4禁止範囲408を含む。第3禁止範囲406は、望ましくは、第3下限値L5が最小値であり、第3上限値L6が最大値である。第4禁止範囲408は、好ましくは、第4下限値L7が最小値であり、第4上限値L8が最大値である。この実施形態において、もし、現在のエンジン回転数の値が第3禁止範囲406内または第4禁止範囲408内であるとき、エンジンが最小気筒モード206で運転されると、望ましくないノイズが発生する。 【0062】 加えて、第4エンジン回転数範囲404は、望ましくは、第5禁止範囲410および第6禁止範囲412を含む。第5禁止範囲410は、望ましくは、第5下限値L9が最小値であり、第5上限値L10が最大値である。第6禁止範囲412は、望ましくは、第6下限値L11が最小値であり、第6上限値L12が最大値である。この実施形態において、もし、現在のエンジン回転数の値が、第5禁止範囲410内または第6禁止範囲412内にあるとき、エンジンが中間気筒モード204で運転されていると、望ましくないノイズが発生する。 【0063】 望ましくは、気筒休止システム100は、望ましくないノイズレベルを減じるか、排除するために現在のエンジン回転数がこれらの禁止範囲の一つにあるとき、気筒休止を禁止するための構成を有している。幾つかの実施形態において、コントロールユニット104は、センサが受ける情報に応じて気筒休止を禁じるか、停止する。好適な実施形態において、コントロールユニット104は、エンジン回転数センサ121が受ける情報に応じて気筒休止を禁止するか、停止する。 【0064】 図5は、最大気筒モード202と最小気筒モード206との間の気筒休止を制御するための工程の方法500の好適な実施形態である。明確にする目的のため、中間気筒モード204は、本実施形態では、エンジン102に利用できない。言い換えれば、本実施形態 では、唯一利用できる気筒休止モードは、最小気筒モード206である。他の実施形態においては、同様な工程が、また、最大気筒モード202と中間気筒モード204との間で気筒休止を制御するために使用され得る。 【0065】 次のステップは、望ましくは、コントロールユニット104によって行われる。しかし、幾つかの実施形態においては、ステップの幾つかは、コントロールユニット104以外で行われる。 【0066】 第1ステップ502において、コントロールユニット104は、望ましくは、気筒休止が利用できるか決定する。言い換えれば、コントロールユニット104は、エンジン102が現在、気筒休止モードにあるか、または、エンジン102が直ぐに気筒休止モードに切り替わることを許可してもよいか決定する。望ましくは、気筒休止を利用できるかは、前記したように、エンジンに関しての現在の出力要求によって決定される。特に、エンジン102の最小気筒モード206への切り替えまたはエンジン102の最小気筒モード206の稼動の継続は、望ましくは、現在の出力要求に従って決定される。 【0067】 エンジン102が現在の出力要求に従って最大気筒モードで運転されることが要求されるならば、気筒休止は利用できず、コントロールユニット104はステップ504に進む。ステップ504において、コントロールユニット104は、気筒休止が利用できる状態になるのを待つ。もし、ステップ502において、気筒休止が利用できるならば、言い換えれば、エンジン102が、直ちに最小気筒モード206に移行してもよい状態または最小気筒モード206で現在運転しているならば、コントロールユニット104はステップ506に進む。 【0068】 コントロールユニット104がステップ506に進むと、コントロールユニット104は、望ましくは、一つまたはそれより多いセンサから情報を受信する。本実施形態においては、コントロールユニット104は、望ましくは、エンジン回転数センサ121からの情報を受信する。他の実施形態においては、コントロールユニット104は、さらに、別のセンサからの情報を受信できる。 【0069】 次に、ステップ508において、コントロールユニット104は、前のステップ506で決定されるような現在のエンジン回転数が最小気筒モード206に対応する禁止範囲内にあるか決定する。本実施形態において、第1禁止範囲302(図3参照)は、最小気筒モード206に対応する禁止範囲である。しかしながら、他の実施形態において、どんな禁止範囲も用いることができる。もし、ステップ508において、現在のエンジン回転数が、最小気筒モード206に対応する第1禁止範囲320内にあると決定されるならば、コントロールユニット104は、望ましくは、ステップ510に進む。ステップ510において、コントロールユニット104は、気筒休止を停止するか、禁止する。 【0070】 他方、もし、ステップ508において、現在のエンジン回転数が、最小気筒モード206に対応する第1禁止範囲302外にあると決定されるならば、コントロールユニット104は、望ましくは、ステップ512に進む。この実施形態において、現在のエンジン回転数が、第1下限値L1より小さくまたは第1上限値L2より大きいならば、現在のエンジン回転数は第1禁止範囲302外にある。ステップ512において、コントロールユニット104は、望ましくは、気筒休止を続けるか、または許可する。 【0071】 明確にする目的で、単一の禁止範囲が、前の実施形態(図3参照)において、各気筒モードのために検討された。しかしながら、他の実施形態においては、また、複数の禁止領域を用いることができる。例えば、前の実施形態のステップ508に戻れば、コントロールユニット104は、現在のエンジン回転数を、最小気筒モード206に対応する禁止範囲406および408(図4参照)と比較する。現在のエンジン回転数が第3禁止範囲406の下限値L5より小さいかまたは第4禁止範囲408の上限値L8より大きいときは何時でも、コントロールユニット104は、ステップ512に進み、気筒休止を許可するか、継続させる。同様に、現在のエンジン回転数が上限値L6と下限値L7との間にあるときは何時でも、コントロールユニット104は、ステップ512に進み、気筒休止を許可するか、継続させる。代わりに、現在のエンジン回転数が第3禁止範囲406の上限値L5と下限値L6との間または第4禁止範囲408の下限値L7と上限値L8との間にあるときは何時でも、コントロールユニット104は、ステップ510に進み、気筒休止を停止させるか、禁止する。同様な工程は、また、禁止範囲410と412を用いることによって、中間気筒モード204を禁止するのに適用できる。 【0072】 単一または複数の禁止範囲を有する構成を用いることによって、気筒休止が禁止されるエンジン回転数の範囲は、受け入れ不可のノイズに対応する全ての回転数を含む単一の大きな範囲よりは、むしろより小さな分離した複数の個別範囲に制限され得る。 従来の設計においては、エンジン回転数のようなパラメータのための単一の閾値は、気筒休止が禁止されるか、または、停止されるべきかを決定するのに使用された。このような設計を用いる場合、(例えば)たとえ、禁止された領域が受け不可のノイズに対応するエンジン回転数の小さな範囲を含んでいるだけでも、その閾値より上の回転数での気筒休止の使用を制限する。気筒休止を許可するエンジン回転数の範囲を増大することによって、単一の閾値を使用する他のシステムよりも、より大きな燃料使用効率が、達成される。 【0073】 前の実施形態において、エンジンの気筒モードは、出力要求によって予め決定されると仮定した。特に、一つの休止モード(最小休止モード206または中間休止モード204)の何れかは、出力要求に従ってエンジン102で利用できた、または、エンジン102は、最大気筒モード202で運転された。幾つかの場合、出力要求によって決定されるような利用可能な気筒モードは、エンジン回転数の禁止された値には許可されないが、別の休止されたモードは同じエンジン回転数で許可される。例えば、現在のエンジン回転数が、最小気筒モード206に対応する禁止範囲内にあると、エンジン102が最小気筒モード206に切り替わること、または、エンジン102が最小気筒モード206で運転し続けることを妨げる。しかしながら、もし、現在のエンジン回転数が中間気筒モード204でエンジン102を運転させるための禁止領域にないならば、コントロールユニット104は、完全に気筒休止を停止するか、禁止するよりは、エンジン102を中間気筒モード204に切り替える。」(段落【0044】ないし【0073】) 上記ア及びイ並びに図1ないし5の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「複数の気筒を備え、複数の気筒の中の一部の気筒を休止させる気筒休止モードを行うエンジンの気筒休止システムであって、 出力要求に従って、複数の気筒全てが稼働される最大気筒モード、中間気筒モード及び最小気筒モードを切り換え、 エンジン回転数、車速、トランスミッション状態及びエンジン負荷などのパラメータが所定の禁止範囲内にあるとき、気筒休止を禁止する、 気筒休止システム。」 (2)対比 引用発明における「複数の気筒を備え、複数の気筒の中の一部の気筒を休止させる気筒休止モードを行うエンジンの気筒休止システム」は、その作用及び技術的意義からみて、本願発明における「複数の気筒を備え、前記複数の気筒の中の一部又は全部の気筒を休止させる気筒休止運転も行う内燃機関の気筒休止装置」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「複数の気筒を備え、前記複数の気筒の中の一部又は全部の気筒を休止させる気筒休止運転も行う内燃機関の気筒休止装置。」の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本願発明においては、搭乗者の不快感の大きさを推定する搭乗者感覚推定手段と、 気筒休止運転時に前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の不快感の大きさが閾値以下となるように休止させる気筒の組み合わせを選択する選択手段と、 を備え、 前記搭乗者感覚推定手段は、搭乗者から検出した情報に基づいて搭乗者の感情レベルを搭乗者の不快感の大きさとして推定し、 前記選択手段は、前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるまで、休止させる気筒の組み合わせを任意に選択することで、前記搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるように休止させる気筒の組み合わせを選択する」のに対し、 引用発明においては、「出力要求に従って、複数の気筒全てが稼働される最大気筒モード、中間気筒モード及び最小気筒モードを切り換え、 エンジン回転数、車速、トランスミッション状態及びエンジン負荷などのパラメータが所定の禁止範囲内にあるとき、気筒休止を禁止する」点(以下、「相違点」という。)。 (3)判断 上記相違点について検討する。 引用文献には、「ある運転状態下で、エンジンが気筒休止モードとなっているとき、エンジンマウントおよび排気系システムは、増加した振動および排気ガス流の脈動の下で動作しなければならない。加えて、駆動伝達系の構成要素は、また、付加的な振動を持ち込む。幾つかの場合、受け入れ不可のレベルのノイズ振動と不快さ(NVH)が発生し、自動車内の運転者および/または乗客の心地よさに反する影響を与える。」(上記2(1)イの段落【0054】)と記載されており、引用発明の「中間気筒モード」及び「最小気筒モード」といった気筒休止モードでは、搭乗者(運転者、乗客)にとって、受け入れ不可のレベルのノイズ振動と不快さ(NVH)が発生する可能性があることが分かる。 また、引用文献の段落【0056】ないし【0060】(上記2(1)イ)並びに図3の記載によれば、気筒休止モードにおける「中間気筒モード」及び「最小気筒モード」には、受け入れ可能な上限値であるノイズ限界を超える所定のエンジン回転数の範囲が存在し、該エンジン回転数の範囲を気筒休止の禁止範囲とすることが理解できる。 そうすると、引用発明は、受け入れ可能な上限値であるノイズ限界を超えることになる予め設定された「エンジン回転数」範囲において、「気筒休止を禁止」して、搭乗者の不快感を抑制するものであるし、引用文献の段落【0073】(上記2(1)イ)からも理解できるように、「中間気筒モード」及び「最小気筒モード」のいずれかの気筒モードが禁止され、禁止されないで残った気筒モードによりエンジンを運転する状態は、気筒運転の組合せが選択された状態に類似するものである。 これに対し、本願発明も「搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるように休止させる気筒の組み合わせを選択する」ものであり、この限りにおいては、本願発明と引用発明とは技術が類似するものである。 しかしながら、本願発明は、「休止させる気筒の組み合わせを任意に選択」し、その選択される「休止させる気筒の組み合せ」において、「搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるまで、休止させる気筒の組み合わせを任意に選択」するものであり、実際の搭乗者が快適であると推定されるまで「休止させる気筒の組み合わせ」を選択し続け、実際の搭乗者が現在快適であると推定された気筒の組合せにより、その後の気筒休止運転を行うものであるから、引用発明のように予め設定したエンジン回転数などのパラメータにおける禁止範囲において一つの休止気筒モードを禁止し、禁止されていない休止気筒モードがある場合にその休止気筒モードとする制御、更には全ての休止気筒モードが禁止されている場合に全筒運転とする制御を含む得る引用発明と本願発明とが、技術的に異なるものであることは明らかである。 技術的相違について付言すると、本願の図2のステップ9(S9)において、音信号レベルが閾値レベル以下か否かについて判断し、閾値以下すなわち騒音の程度がある程度低くなった場合に、ステップ11(S11)において、感情レベルが閾値以下か否かを判断しており、本願発明は、騒音が大小変化するのにつれて不快さも大小変化するといった従来からの関連付けに基づく制御ではなく、(閾値以下のある程度の低い騒音の中で、)騒音の大小変化に必ずしも関係しない感情のレベルの変化、すなわち実際の搭乗者が快適であるか否かに関して、「休止させる気筒の組み合わせ」を選択するものであるから、この点でも本願発明と引用発明とは技術的に異なるものである。 なお、特開2004-338496号公報及び特開2005-258820号公報等から、車両の技術分野において、運転者から検出した情報に基づいて不快の度合いを推定することは周知技術であると認められるが、該周知技術を引用発明に適用するとしても、上記したとおり引用発明は、本願発明とは技術的に異なる休止気筒モードの禁止制御であるから、本願発明における「搭乗者感覚推定手段で推定した搭乗者の感情レベルが人が不快と感じない感情レベル以下となるまで、休止させる気筒の組み合わせを任意に選択する」との発明特定事項まで、当業者が想到できるとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また、他に、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由はない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 本件補正のその余の補正事項については、明細書におけるものであるが、特許法第17条の2第3項に違反するところはない。 3 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-12-02 |
出願番号 | 特願2010-11965(P2010-11965) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F02D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 星名 真幸 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 藤原 直欣 |
発明の名称 | 内燃機関の気筒休止装置 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 黒木 義樹 |
代理人 | 大森 鉄平 |
代理人 | 小飛山 悟史 |