• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  A47B
管理番号 1295657
審判番号 無効2012-800069  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-05-01 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第4473095号発明「金属製棚及び金属製ワゴン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4473095号(請求項の数[5]、以下、「本件特許」という。)は、平成16年10月27日に特許出願された特願2004-312259号に係るものであって、その請求項1?5に係る発明について、平成22年3月12日に特許の設定登録がなされた。

これに対して、平成24年5月1日差出で、本件特許の請求項1、2に係る発明の特許に対して、本件無効審判請求人(以下「請求人」という。)により本件無効審判〔無効2012-800069号〕が請求されたものであり、本件無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)により指定期間内の同年7月18日付けで審判事件答弁書が提出されたものである。

また、同年11月1日付けで請求人より口頭審理陳述要領書、及び手続補正書が提出され、同年11月2日付けで被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人より同年11月15日付けで口頭審理陳述要領書(差し替え)、及び手続補正書が提出され、同年11月15日に口頭審理が行われたものである。


第2 当事者の主張

1.請求人の主張、及び提出した証拠の概要
請求人は、特許第4473095号の特許請求の範囲における請求項1及び2についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、平成24年11月1日付け口頭審理陳述要領書及び手続補正書、同年11月15日の口頭審理において、甲第1?12の3の4号証を提示し、以下の無効理由を主張した。
なお、平成24年11月15日の口頭審理において、甲第4,5号証、及び、審判請求書「(3).無効審判請求の根拠」に記載した「甲第4号証」、「甲第5号証」に係る主張は撤回された。

[無効理由1]
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第3号証の金属製棚に、甲第8号証又は甲第9号証若しくは甲第2号証を単独で又は組み合わせて適用することで容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができなかったものであり、よって、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

[無効理由2]
本件特許の請求項2に係る発明は、本件の請求項1に係る発明と同じ理由で容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができなかったものであり、よって、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

[証拠方法]
甲第1号証:実公平7-53542号公報
甲第2号証:特開2000-60656号公報
甲第3号証:実公平3-30024号公報
甲第4号証:実公昭41-2774号公報
甲第5号証:実願昭57-115534号(実開昭59-20014号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開平5-119818号公報
甲第7号証:特開平7-51751号公報
甲第8号証:実公昭56-27793号公報
甲第9号証:米国特許明細書4351246号
甲第10号証:特開平9-117327号公報
甲第11号証:登録実用新案第3049590号公報(CD-ROM)
甲第12号証の1:’97サカエ 工場器具・工場機器・事務所器具 総合カタログNo.2 表紙、「141?222」と表示された頁、第144?145頁
甲第12号証の2:’97サカエ 工場器具・工場機器・事務所器具 総合カタログNo.2 第144頁左上
甲第12号証の3の1?4:スーパーワゴンSR-600を撮影した写真の写し

2.被請求人の主張
これに対して、被請求人は、平成24年7月18日付けで審判事件答弁書、同年11月2日付け口頭審理陳述要領書、同年11月15日付け口頭審理陳述要領書(差し替え)、及び同日付け手続補正書を提出し、同年11月15日の口頭審理において、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の無効理由に対して以下のように反論した。

[無効理由に対する反論]
本件審判の請求には理由がない、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。


第3 本件に係る発明

請求人が無効とする審決を求める請求項1?2に係る発明は、本件特許における特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(A:?J:の文字は当審で付与。)

「【請求項1】
A:複数枚の直角四辺形の金属製棚板と、山形鋼で作られた4本の支柱とからなり、各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し、ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において、
B:上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて、
C:各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、
D:内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたものであって、
E:側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し、
F:切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み、
G:内接片を支柱にボルトにより固定する
H:ことを特徴とする、金属製棚。」(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項2】
A:複数枚の直角四辺形の金属製棚板と、山形鋼で作られた4本の支柱とからなり、各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し、ボルトにより固定して組み立てることとした金属製棚において、
B:上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて、
C:各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、
D:内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたものであって、
E:側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し、
F:切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み、
G2:内接片を支柱にボルトにより固定し、
I:各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚を移動可能とした
J:ことを特徴とする、金属製ワゴン。」(以下、「本件発明2」という。)


第4 無効理由についての当審の判断

1.無効理由1について

(1)甲第1?甲12の3の4号証の記載事項
ア.甲第1号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、棚のコーナー補強金具に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】従来、アングルを用いた支柱に棚の各コーナーを取付けるには、支柱の両片に等間隔を存して設けてある所定位置の透孔と棚板の各辺縁から連なって下向きに折れ曲がる各周側板の両端に設けてある透孔とを一致させ、そして、一致した透孔にボルトを挿通すると共に、ボルトにナットをねじ込む。
【0003】このような取付け方法によると、支柱に対して周側板の端を一点で支持するため、強度の点で問題があると共に、棚板の重量の大きいものをのせると、支柱が揺れ動く問題があった。」

イ.甲第2号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、金属板製棚及び金属板製ワゴンに関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 金属板を折曲して直角四辺形の浅い箱状に成形した複数枚の棚板と、金属板をアングル状に折曲して作られた4本の支柱とからなり、各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し、ボルトにより固定して組み立てた金属板製棚において、各棚板の厚み方向に延びる各縁片の外側に金属板の小片を付設し、支柱の側面を金属板小片の厚み方向の側面に密接させ、支柱の両側面を金属板小片の上記側面により挟むようにしたことを特徴とする、金属板製棚。
・・・
【請求項3】 金属板小片が棚板の厚み方向に延びる各縁片の先端部分を外側へ折り返して付設され、棚板の四隅に位置する折り返し片の端を支柱の幅に等しい矩形部分を切り取ることによって、支柱の側面に密接する金属板小片の厚み方向の側面が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属板製棚又は金属板製ワゴン。」
(イ)「【0005】そのため、これまでの金属板製棚は、図1に示したようにして組み立てられて来た。図1において、金属板製棚は、4本の支柱Aと3枚の棚板BとをボルトCで結合して組み立てられている。支柱Aは、金属板をアングル状に折曲したものであり、棚板Bは金属板を直角四辺形の浅い箱状に折曲したものである。棚板Bの四隅に支柱Aを立て、棚板Bの四隅のかどを支柱のアングル内面に密接させ、密接面をボルトCで固定して、棚とするのである。
【0006】この種の棚では、組み立て作業を簡単にするために、図2に示したように、ボルトCは1つの隅について2個ずつ使用するものとされた。すなわち、支柱Aの各面に1つの棚板に対してボルトCをただ1個使用して、これをナットで止めるものとされた。これは、支柱Aの各面には複数個のボルトCを使用するだけの広さもなかったことにも基因している。
【0007】棚板Bは浅い箱状にされているので、側壁に該当する部分の先端が手を傷つけるおそれがあった。その場合には、その先端を丸めるために先端を折り返すことも行われた。しかし、その場合の折り返しは、箱状体の内側へ折り返されるだけであって、外側へ折り返されることはなかった。また、その折り返しは極めて幅の狭いものであった。
【0008】図1に示したようにして組み立てられた金属板製棚は、棚上に物を載せるとき、横方向からの力が加えられると、支柱が傾き易いという欠点があった。この欠点は支柱の下方にキャスターを付設して、金属板製棚をワゴンとして使用するときに一層顕著に現れた。すなわち、金属板製ワゴンに物品を載せて移動させようとすると、僅かな力で押しただけで支柱が傾いて、ワゴンの形が歪むという欠点があった。」
(ウ)「【0011】
【課題を解決するための手段】この発明者は、上述の欠点を棚板の改良によって解消しようと企てた。この発明者は、棚板が浅い箱状を呈しているので、箱の側壁にあたる先端部分を外側へ折り返し、折り返し部分を四隅のかどで切欠して、折り返し部分の切欠端が丁度支柱の側面に当たるようにしておくと、この棚板を従来通りボルトで止めるだけで、支柱の傾きを完全に防止できることを見出した。この発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。」
(エ)「【0017】こうして作られた浅い箱状体は、その後四隅のかど部の側壁にあたる部分に、支柱との結合用ボルト孔があけられて、この発明で用いることのできる棚板1となる。この棚板1は、四隅のかど部の構造に特徴を持つので、そのかど部を拡大して示すと図5に示したようになる。
【0018】図5に示された棚板1は平板11を底とし、縁片12、13を側壁とする浅い箱状を呈している。折り返し片16、17の幅yは縁片12、13の幅xよりも僅かに小さくされているから、縁片12、13に沿って外側へ折り返された折り返し片16、17は、縁片12、13の少なくとも上半分を覆っており、折り返し片16、17の下端は縁片12、13の下端より僅か上方に位置している。折り返し片16、17は、棚の隅のところで長さzの矩形部分だけ切欠されているから、一辺がzの矩形部分だけ縁片12、13が露出している。各露出部分の中央に、前述のボルト孔41、42が設けられている。
【0019】他方、支柱6は、アングル状を呈し、直交する2片61、62からなり、各片61、62は等しい幅を持っている。この幅は長さzとされているから、支柱6を棚板1のかど部に当接すると、図6に示したように支柱6の側面63、64は、折り返し片16、17の切断によって生じた側面161、171にそれぞれ密接することとなる。こうして、支柱6はその両側面63と64とにおいて折り返し片16、17の間に挟まれることになる。この状態でボルト孔を合わせ、そこにボルトを通しナットを嵌めて、支柱6と棚板1とを接続する。
【0020】こうして棚板1と支柱6とをボルトで固定すると、図6に示したように、支柱6は折り返し片16、17の間に密接して挟まれることとなる。このとき、折り返し片16、17の幅が縁片12と13の幅の半分以上を覆うようにすれば、支柱6の両側面63、64は相当の長さにわたって折り返し片16、17の側面161、171に密接することとなり、従って支柱6は棚板1に対して傾く余地が全くなくなる。
【0021】図3ないし図6では、折り返し片16、17、18、19がそれぞれ縁片12、13、14、15と一体に付設されていて、折り返しによって支柱6に密接すべき側面161、171等が形成される例を示した。しかし、上記側面161、171等に相当するものは、折り返しによらなくても設けることができる。例えば、図7に示したように、金属板の小片31、32を予め準備しておいて、従来の浅い箱状の棚板の厚み方向に延びる外面上に、切断して作った金属板の小片31、32を溶接等により取り付けて、支柱に密接すべき側面311と321とを形成して、棚板1とすることもできる。
【0022】こうして、この発明は、各棚板の厚み方向に延びる面に沿い、その外側に、複数個の金属板の小片を付設し、各金属板の小片の上記厚み方向に延びる側面を支柱の側面に密接させることを必要とし、これによって支柱の両側面を金属板の小片の側面間に挟むことを必要としている。
【0023】なお、棚板1は、平板11を下にして箱状体として支柱6に固定すると、周囲にこぼれ止めのある皿状のものとして使用することができる。また、上に述べた箱状体を逆にして、平板11を上にして棚板1を支柱6に固定すると、こぼれ止めのない平坦な板として使用することができる。」
(オ)「【0024】・・・また、図9は、同じように最上段を皿状にし、下2段を平坦な板として合計3枚の棚板1を4本の支柱6に固定し、各支柱の下方に自在キャスターを付設して作った、この発明に係るワゴンを示している。」
(カ)「【0025】
【発明の効果】この発明によれば、棚板を従来通りの浅い箱状にし、各棚板の厚み方向に延びる面の外側に金属板の小片を付設し、棚板の厚み方向に延びる金属板小片の側面が支柱の側面に密接するように棚板が作られているので、従来通り棚板と支柱との間をボルトで固定するだけで、支柱の両側面を金属板小片の側面間に挟んで、支柱を棚板に対して傾かないようにすることができる。従って、棚板の改善だけであとは従来通りの組み立て操作により、容易に傾かない金属板製棚及び金属板製ワゴンを得ることができる。この点で、この発明の効果は大きい。」
(キ)記載事項(エ)を参酌して、【図3】?【図9】には、アングル状の4本の支柱6と直角四辺形の複数枚の棚板1とを有する棚及びワゴンが、棚板1の4つの縁片12?15に、その外面に重なった折り返し片16?19を連接し、折り返し片16?19の端部を支柱の幅に等しい矩形部分を切り取ることで、折り返し片16?19の側面と支柱の側面とを密接し、縁片12?15と支柱とをボルトで固定した構成で記載されている。
また、平板11に連設された縁片12?15に、その外面に重なる折り返し片16?19を設けてこの折り返し片16?19を切欠いた構成で記載されている。

上記記載事項及び図面の記載から、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「金属板を折曲して直角四辺形の浅い箱状に成形した複数枚の棚板と、金属板をアングル状に折曲して作られた4本の支柱とからなり、各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し、ボルトにより固定して組み立てた金属板製棚において、
各棚板の厚み方向に延びる各縁片の外側に金属板の小片を付設し、支柱の側面を金属板小片の厚み方向の側面に密接させ、支柱の両側面を金属板小片の上記側面により挟むようにした金属板製棚又は金属板製ワゴンであって、
金属板小片が、各棚板の厚み方向に延びる各縁片の外側に棚板の厚み方向に延びる各縁片の先端部分を外側へ折り返して付設され、
棚板の四隅に位置する折り返し片の端を支柱の幅に等しい矩形部分を切り取ることによって、支柱の側面に密接する金属板小片の厚み方向の側面が形成され、
支柱の側面を金属板小片の厚み方向の側面に密接させ、支柱の両側面を上記側面により挟むようにされている金属板製棚又は金属板製ワゴン。」(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)

ウ.甲第3号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、支柱に棚板が着脱自在に取付けられる組立式棚の改良に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「(従来技術)
従来、山形鋼等からなる支柱に薄板鋼板材等からなる棚板をボルト等によつて取付けるように構成された組立式棚で、通常棚板によつて支柱同士が連結されており、棚板の取付力が不足すると支柱が傾斜したり、横揺れし易くなつたりするという問題が生じるため、上記支柱と棚板とをコーナプレートを介して連結するとともに多数のボルトを用いて強固に取付けることが行なわれていた。」(第1欄第17行?第2欄第2行)
(イ)「(実施例)
第1図において、1は山形鋼からなる支柱、2は薄板鋼板からなる棚板、3は上記支柱1の内面に配設されるコーナプレートである。上記支柱1は互いに直交する一対の壁面4,4を有し、各壁面にはそれぞれ長さ方向に伸びる多数の長孔5が所定間隔置きに形成されている。また、上記支柱1にはコーナ部を外面からプレス加工する等の手段で内向きに膨出する取付座6が形成され、この取付座6には上記コーナプレート3を取付けるための取付ボルト7の挿通孔8が形成されている。
上記棚板2は、天板9とその周縁部に連成されて下向きに突出する四周の側板10とからなり、各側板10の側端部にはピン11aを介して上記コーナプレート3を係合するための係合孔12と、この棚板2を後述するように中間部の棚板として使用する場合に支柱1に直接係合するための取付孔13が形成されている。」(第3欄第17?34行)
(ウ)「上記各部材を用いて棚を組立てるには、棚板2の側板10の係合孔12を貫通してピン11aの先端部をコーナプレート3の取付孔20内に嵌入して棚板2とコーナプレート3とを連結するとともに、支柱1の長孔5を貫通してピン11bの先端部をコーナプレート3の係合孔21内に嵌入することにより、このコーナプレート3を介して棚板2を支柱1の上端部に仮止めする。次いで、取付ボルト7の軸部を支柱1の挿通孔8およびコーナプレート3の挿通孔25内に嵌入した後、その先端部にナツト26を螺着する。
上記のようにして棚板2の四隅をそれぞれ支柱1に仮止めした後、上記取付ボルト7を締込むことにより、棚板2を支柱1に固定する。」(第4欄第28?41行)
(エ)「なお、上記実施例では、支柱1の上端部に位置する棚板2の取付例について説明したが、支柱1の下端部および中間部についても上記各部材を用いて棚板2を取付けるように構成できる。また、上下両端部に設けた棚板2によつて支柱1の立設状態を確保できる場合には中間部に位置する棚板2の取付部をより簡略化することができる。例えば、第5図に示すように、棚板2の側板10の側端部に設けた取付孔13を用いて支柱1に直接取付けるようにしてもよい。すなわち、上記取付孔13はピン11の膨出部18よりも大きい孔径を有する大径孔部27と、この大径孔部27の上辺部に連成されたテーパ溝部28とからなり、支柱1の長孔5を貫通したピン11の先端部を上記大径孔部27内に嵌入した後、棚板2を押下げることによつて上記ピン11の軸部17がテーパ溝部28内に嵌入されて係合され、このピン11を介して棚板2が支柱1に係止されるようにしている。」(第5欄第44行?第6欄第18行)
(オ)第1,2,5図には、側板10が、その外側を構成する板と内側を構成する板とからなっていて、外側を構成する板は棚板2に上端が一体に連接され、内側を構成する板は外側を構成する板の下端に一体に連接されていることが記載されている。
第2図には、棚板2のコーナ部で、側板10の外側を構成する板が、支柱1の内側面に当接して組み立てられた態様が記載されている。
(カ)記載事項(エ)の「支柱1の上端部に位置する棚板2」及び「中間部に位置する棚板2」は、記載事項(イ)の「棚板2は、天板9とその周縁部に連成されて下向きに突出する四周の側板10とからな」るものであるので、実質的に直角四辺形といえる。
また、それらは、第1,5図を参酌すると、枚数が複数枚のといえる。
そして、支柱1は、棚板2のコーナ部を取付けるものであるので、4本の支柱といえる。
(キ)記載事項(エ)の中間部に位置する棚板2は、「第5図に示すように、棚板2の側板10の側端部に設けた取付孔13を用いて支柱1に直接取付けるようにしてもよい。」ものであり、中間部に位置する棚板2と支柱1とは、実質的に記載事項(オ)の第2図と同様に、側板10の外側を構成する板が、支柱1の内側面に当接して組み立てられたものといえる。

上記記載事項及び図面の記載から、甲第3号証には、特に第5図記載の態様に着目して、次の発明が記載されているものと認められる。(a:?h:の文字は当審で付与。)
「a:複数枚の直角四辺形の薄板鋼板からなる棚板と、山形鋼からなる4本の支柱1とからなり、
支柱1の上端部に位置する棚板2とコーナプレート3とを連結するとともに、支柱1の長孔5を貫通してピン11bの先端部をコーナプレート3の係合孔21内に嵌入することにより、棚板2の四隅をそれぞれ支柱1に仮止めした後、取付ボルト7を締込むことにより、棚板2を支柱1の内側面に当接固定し、
中間部に位置する棚板2のコーナ部をそれぞれ支柱1の内側面に当接し、ピン11を介して棚板2が支柱1に係止されることとした組立式棚において、
b:棚板2は、天板9とその周縁部に連成されて下向きに突出する四周の側板10とからなり、側板10が、その外側を構成する板と内側を構成する板とからなっていて、
d:外側を構成する板は棚板2に上端が一体に連接され、内側を構成する板は外側を構成する板の下端に一体に連接されているものであって、
e:側板10の外側を構成する板が、支柱1の内側面に当接して、
g:棚板2の側板10の側端部に設けた取付孔13を用いてピン11を介して棚板2が支柱1に係止される
h:組立式棚。」(以下、「甲第3号証記載の発明」という。)

エ.甲第6号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、板材折曲機の誤差調整方法に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】従来、板材折曲機において、図5に示すように板材送り装置51により板材Wを挟持型52に送り込み、板材Wの挟持型52から突出した部分Waを曲型53の上昇によって端曲げするものがある。このような板材折曲機を用いて図6に示すように板材Wを多段に折り曲げる場合、図7(A)?(E)に示すように、板材Wの曲げと送りとを繰り返し、先端側の曲げ部分から順次加工する。」
(イ)図7は、折曲動作手順の説明図であって、折曲動作手順が開示されている。

オ.甲第7号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、折曲機における板材折曲方法に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0004】図4(A)は、メインクランプ41で板材W′の中央部を挟持して、その板材W′の前縁に複数回にわたり曲げ加工を行う場合の開始前の状態を示す。この状態から前縁の曲げ加工のためにメインクランプ41を前進させる(同図(B))。このとき、初回の曲げ加工を行うのに必要な加工位置までメインクランプ41によって板材W′を送り込めても、同じ板材W′の辺の2回目および3回目の曲げ加工ではメインクランプ41が1点鎖線および2点鎖線で示すように前進し、金型部42の入口部の機構(例えば型幅変更機構(図示せず))等と干渉することがある。このように、その辺の加工で1箇所でもメインクランプ41が干渉する箇所が生じると判断されると、予めサブクランプ44に持ち替えて、その辺の加工を全てサブクランプ44で行うようにする。
【0005】この持ち替え動作は次のように行われる。すなわち、同図(B)のようにメインクランプ41を移動させた後、サブクランプ44を同図(B)の鎖線で示す待機位置から板材W′の後端部に対応する実線で示す位置まで前進させる。ついで、板材W′の後端部をサブクランプ44で挟持した後、メインクランプ41による挟持を解除し、板材W′をメインクランプ41からサブクランプ44に持ち替える(同図(C))。この状態で、板材W′の前縁の初回の曲げ加工を行い(同図(D))、さらにサブクランプ44で板材W′を順次進出させて以後の曲げ加工を行う(同図(E))。」
(イ)図1は、この発明の一実施例を示す動作説明図であって、材料板の端から順に曲げ加工を施す工程が開示されている。
(ウ)図7は、従来の板材折曲方法を示す動作説明図であって、板材折曲動作が開示されている。

カ.甲第8号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第8号証には、組立用整理棚に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「この種の組立用整理棚としては従来から各種構造のものが案出されているけれども、この種の整理棚は特に捩れや横振れが生じやすく、これを簡易な方法で阻止することが困難とされている。そこで従来での一般的な方法として捩れ、横振れは阻止できないとしながらも棚板と支柱とを固定するに際し棚板の1つのコーナー部分に対して二組のビスおよびナツトを使用し一枚の棚板を支柱に取り付ける」(第1欄第36行?第2欄第7行)
(イ)「まず、天板9の長手方向に折目17を介して第1前側片10aおよび第1後側片11aを連設し、これら各側片10a、11aに折目18を介して第2前側片10bおよび第2前側片11bを連設し、かつ、これら各側片10b、11bに折目19を介して折曲片20、21を連設すると共に、天板9の幅方向に折目22を介して第1左側片12aおよび第1右側片13aを連設し、これら各側片12a、13aに折目23aを介して第2左側片12bおよび第2右側片13bを連設し、かつ、これら各側片12b、13bに折目24を介して折目片25、26を連設する一方、前記各側片12a、12b、13a、13bの両側に折目27を介して第1および第2の各コーナー片14a、14bを連設し、さらに、これら各コーナー片14a、14bに折目28を介して連結片29、30を連設し、これらの各片を各折目に沿つて折り曲げ第6図に示す如く構成したものである。
すなわち、第1前側片10a と第2前働片10bとで前側壁10を、また、第1後側片11aと第2後側片11bとで後側壁11を、さらに第1左側片12aと第2左側片12b とで左側壁12を、さらにまた、第1右側片13aと第2右側片13b とで右側壁13をそれぞれ構成すると共に、第1コーナー片14a と第2コーナー片14bとでコーナー壁14を構成し、かつ連結片29、30の外側に各側壁10、11を連結することによつて段部15を形成したものである。なお、上記の実施例によつて棚板6を形成すると通常の厚みの約半分程度の厚みの薄鉄板で充分な強度を有する棚板6を形成することができるものである。」(第3欄第12?41行)
(ウ)「上記構成の棚板6における左右両側部に第4図に示す如く支柱1,1を当接させ、該支柱1の折曲片2と棚板6のコーナー壁14とをビス7およびナツト8によつて固定すると、各支柱1の端面3aが棚板6の各段部15に当接するため、整理棚の捩れや横振れを防止することができるものである。」(第3欄第42行?第4欄第4行)
(エ)「第7図乃至第9図は上記実施例の変形構造を示すもので、この変形例においてはコーナー壁14近傍における各側壁10,11,12,13に段部15,15’を形成した棚板6’を用い、この棚板6’を4本の支柱1’によつて支持するようにすると共に支柱1’の両側端面3aおよび3a'が棚板6’の段部15,15’と当接するように構成したもので、以下、この変形例においても先の実施例とほぼ同様の作用効果を奏するので、第7図乃至第9図において第1図乃至第4図と同一の部分には同一番号を付じてその詳しい説明を省略する。」(第4欄第9?19行)
(オ)「支柱1,1の端面3aの棚板6,6’に設けた段部15とが当接して捩れや左右の横振れが阻止できて緊牢な組立棚となり・・・」(第4欄第33?36行)
(カ)第2図には、棚板6の平面図が記載されており、棚板6のコーナー部にはコーナー壁14、段部15が記載されている。
(キ)第4図には、取付構造を示す平面図が記載されており、第2図の棚板6の段部15が支柱1の端面と当接し、コーナー壁14と左側壁12(または右側壁13)が、支柱1の内面と当接して配されたものが記載されている。
(ク)第5図には、棚板6の展開図が記載されており、略直角四辺形の天板9の対抗する2辺に左右側壁12,13とコーナー壁14と連結片29、30とがこの順序に連設され、他の対抗する2辺に前後側壁10,11が連設されていている。
また、天板9と前側壁10(または後側壁11)とコーナー壁14と連結片29とに隣接する部分が、切り欠かれた空間として記載されている。
(ケ)第7?9図には、第1図の変形構造を示す斜視図、棚板6’の平面図、その取付構造を示す平面図が記載されている。
(コ)第7?9図記載の変形構造の細部は、記載事項(エ)の「第1図乃至第4図と同一の部分には同一番号を付じその詳しい説明を省略する。」ものであるので、同一番号の部分は上記(イ)(ウ)(オ)?(ク)と同様の構成といえる。
一方、段部15’の詳細構成、及び、左側壁12(または右側壁13)と支柱1’の相互関係に関しては展開図が無く、製造工程の詳細説明もないため詳細構成を特定する事は出来ない。

上記記載事項及び図面の記載から、甲第8号証には、第1?6図記載の実施例に着目して、次の発明が記載されているものと認められる。
「棚板6は、略直角四辺形の天板9の長手方向に折目17を介して第1前側片10aおよび第1後側片11aを連設し、これら各側片10a、11aに折目18を介して第2前側片10bおよび第2前側片11bを連設し、かつ、これら各側片10b、11bに折目19を介して折曲片20、21を連設すると共に、天板9の幅方向に折目22を介して第1左側片12aおよび第1右側片13aを連設し、これら各側片12a、13aに折目23aを介して第2左側片12bおよび第2右側片13bを連設し、かつ、これら各側片12b、13bに折目24を介して折目片25、26を連設する一方、前記各側片12a、12b、13a、13bの両側に折目27を介して第1および第2の各コーナー片14a、14bを連設し、さらに、これら各コーナー片14a、14bに折目28を介して連結片29、30を連設し、
天板9と前側壁10(または後側壁11)とコーナー壁14と連結片29とに隣接する部分は、切り欠かれた空間とし、
これらの各片を各折目に沿つて折り曲げ構成し、
棚板6の段部15が支柱1の端面と当接し、コーナー壁14と左側壁12(または右側壁13)が、支柱1の内面と当接した
組立用整理棚。」(以下、「甲第8号証記載の発明1」という。)

また、第7?9図記載の変形構造に着目して、次の発明が記載されているものと認められる。
「棚板6は、略直角四辺形の天板9の長手方向に折目17を介して第1前側片10aおよび第1後側片11aを連設し、これら各側片10a、11aに折目18を介して第2前側片10bおよび第2前側片11bを連設し、かつ、これら各側片10b、11bに折目19を介して折曲片20、21を連設すると共に、天板9の幅方向に折目22を介して第1左側片12aおよび第1右側片13aを連設し、これら各側片12a、13aに折目23aを介して第2左側片12bおよび第2右側片13bを連設し、
これらの各片を各折目に沿つて折り曲げ構成し、
棚板6には、コーナー壁14、段部15,15’も設け、
棚板6の段部15,15’が支柱1’の端面と当接し、コーナー壁14が、支柱1’の内面と当接した
組立用整理棚。」(以下、「甲第8号証記載の発明2」という。)

キ.甲第9号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第9号証には、商品陳列用臨時スタンドに関して、次の事項が記載されている。
なお、文末の( )は、請求人が翻訳文として提出した対応箇所の翻訳である。(以下「対応記載」という。)
(ア)「Referring to the drawings, FIG. 1 shows the inner surfaces of a corner post assembly 1 formed from a relatively stiff but foldable material such as pressed laminated paperboard. The corner post1 is formed from a single sheet of such material which is folded to provide a pair of integral elongate limbs2,3 disposed approximately at right angles to one another thereby forming a corner of an "L" shaped post. The limbs 2,3 each comprise a double ply thickness of material formed by folding inner limb sections2a,3a inwardly to overlap the inward facing surfaces of outer limb sections2b,3b,respectively as shown in phantom with respect to limb3.
The inner limb sections are retained in their overlapped relationship by means of mating tab and slot connectors4 integral with inner limb sections2a,3a and spaced along the abutting longitudinal edges thereof. Preferably, those tabs and slots are alternated along the length of the inner limb sections2a,3a to provide a more secure fastening arrangement.
The inner limb sections2a,3a are each formed with cut out areas longitudinally spaced along the assembly1 thereby exposing portions of the inner surfaces of outer limb sections2b,3b. Each of the cut out areas is in register with the adjacent cut out area of the other inner limb section thus providing a series of recesses5 for accommodating the corner portion of a shelf assembly8 described later in more detail. In order to facilitate connection of the shelf assembly each of the limbs2,3 is provided with an integral arm6,7, respectively, outstanding from the free longitudinal edge of the limb. Each arm is formed from material removed from the inner limb sections thereby forming the recesses5.
Referring now to FIGS.2,2a and3 of the drawings, there is shown a corner portion of a rectangular shelf assembly8 formed also from a relatively stiff but foldable material such as pressed laminated paperboard. The shelf assembly8 is formed from a single sheet of such material and comprises a support surface9 having an integral peripheral skirt 10 depending therefrom to provide a shelf having an inverted tray like structure. The peripheral skirt 10 is formed from a double ply thickness of material produced by folding inner skirt section 10b inwardly and upwardly (see FIG.3) into overlapping relationship with the inner surface of outer skirt section 10a. The skirt sections are retained in their overlapped relationship by a series of mating tab and slot connectors 11 spaced around the assembly8. The tabs 11a are integral with the free edge of inner skirt section 10b and spaced therealong. The slots 11b are formed in the support surface9 at locations spaced apart by an amount corresponding to the spacing between adjacent tabs 11a(see FIG.3).
At each corner of the shelf assembly8a length of the outer skirt section 10a is removed thereby providing a recessed corner portion and exposing a pair of tongues12and 14 provided by the inner skirt section 10b. In a presently preferred embodiment illustrated in FIG.2a, these tongues12and 14are provided with extensions 12a and 14a which project downwardly below the skirt of the shelf assembly8a. In addition, tongue12 may have a horizontal extension12b adapted to be folded around the corner and dimensioned so that its end portion is positioned between the inner and outer skirt sections 10a and 10b when the shelf unit is assembled.
In order to assemble the shelf assembly8 and the corner post assembly1 it is necessary to bring those components together so that they are connected into a unit whilst at the same time forming at least one of the individual assemblies into its completed condition to provide a structural member of the display stand. It will be appreciated that a shelf assembly such as assembly8 is united with four separate corner post assemblies, one post being provided at each corner of the shelf assembly8 and moreover it is necessary to effect the various folding operations so that at least two adjacent corner posts are united to a shelf at the same time. However, for the sake of simplicity only one shelf and post corner construction is described, it being understood that the other corner constructions are achieved in a similar manner. Moreover, a plurality of shelf assemblies normally are provided to form a multishelf display structure13as shown in FIG.5.
Each corner post assembly1 is formed into the structural component as shown in FIG.1 by folding over and locking together the inner limb sections2a,3a,the shelf assembly8, on the other hand, will be formed into a structural component while being attached to the corner post assembly. To unite a shelf assembly8 with each corner post assembly1 the recessed corner portion of the shelf assembly is mated with abutment with the recess5 of the corner post assembly such that the pointed corner of support surface9 is received in the corner of one of recesses5 with arms6,7 lying along the inner faces of adjacent outer skirt sections10a. Thereafter, the inner wall sections10b are folded upwardly and inwardly so that the tongues 12and14are overlapped with the arms6,7 and received in the cut out areas of the recess5. Thus, the arms6,7 are received in retaining sleeves provided by the double ply thickness of the skirt sections. To secure the overlapped inner skirt section 10b in position the tabs and slots 11are interconnected as previously described. When all the corners of a shelf assembly8 have been thus connected, the shelf assembly comprises a structural member of the display unit 13. As shown in FIGS.2 and4 the tabs 11a protrude through the slots 11b in the support surface9 thereby providing retaining lips to restrain movement of articles placed on the support surface.
In certain other embodiments, however, the shelf assemblies will be pre-formed into completed structural members whereas the corner post assemblies would be completed only at the time when being united with the pre-formed shelf assemblies. A suitable shelf assembly for this purpose is the arrangement shown in FIG. 2a and previously described in more detail. It will be understood that the tongue extensions 12a, 14a will be positioned between the outer and inner limb sections2a,3b and 3a, 3b, respectively, of the corner post assembly1. Of course, the arms 6, 7 will be received between the inner and outer skirt sections 10a and 10b. It is envisaged that the arms6 and7 may be omitted in some instances.
It will be appreciated from inspection of FIG.5 that the display structure13 is symetrical and, if desired, can be inverted so that the peripheral skirt of each shelf unit extends upwardly thereby allowing the shelf units to be utilized as fixed trays.
It is envisaged that end caps, for example, of a plastics material could be fitted at the extremities of each corner post to provide greater wear resistance and to prevent ingress or absorption of water into the paperboard material. It is further envisaged that either one of the corner post units or the shelf units could be formed from a material other than pressed laminated paperboard or indeed any other foldable material. For example, the corner posts could be formed from a metal or plastics material.
In order to prevent undue deflection of a shelf unit a metal "hat" section (not shown) may be provided which snap-fits beneath the shelf unit within the confines of its peripheral skirt.」
(図面を参照すると、図1が、プレス成形積層ボール紙(pressed1aminated paperboard)などの比較的堅いが折り曲げることが可能である材料から形成された隅柱アセンブリ1の内面を示している。隅柱1は、そのような1枚の材料を、お互いに対してほぼ直角に配置されて「L」字形の柱の角を形成する1対の一体の細長いリム2、3をもたらすように折り曲げて形成されている。リム2、3の各々は、リム3に関して想像線で図示されているように、リム内側部分2a、3aをリム外側部分2b、3bの内向きの表面にそれぞれ重なるように内側へと折り曲げることによって形成された2層分の厚さの材料を備えている。
リム内側部分は、リム内側部分2a、3aと一体であって、リム内側部分2a、3aの互いに当接する長手方向の縁に沿って間隔を空けつつ位置している対をなすタブとスロットとからなるコネクタ4によって、重なり合った関係に保持されている。好ましくは、これらのタブおよびスロットは、より確実な固定の構成をもたらすために、リム内側部分2a、3aの全長に沿って交互に配置されている。
リム内側部分2a、3aの各々に、アセンブリ1の長手方向に沿って間隔を空けて位置する切り欠き領域が形成され、結果としてリム外側部分2b、3bの内面の一部分が露出されている。各々の切り欠き領域の位置は、隣接する他方のリム内側部分の切り欠き領域に合わせられており、さらに詳しく後述される棚アセンブリ8の角部分を収容するための一連の凹部5をもたらしている。棚アセンブリの接続を容易にするために、リム2、3の各々に、リムの長手自由縁から突き出す一体のアーム6、7がそれぞれ設けられている。各々のアームは、リム内側部分から取り除かれて凹部5を形成する材料から形成されている。
次に、図面の図2、2a、および3を参照すると、やはりプレス成形積層ボール紙などの比較的堅いが折り曲げることが可能である材料から形成された矩形の棚アセンブリ8の角部分が示されている。棚アセンブリ8は、1枚のそのような材料から形成され、支持面9および支持面9からぶら下がる支持面9と一体の外周のスカート10を備えており、トレイを逆さにしたような構造を有する棚をもたらしている。外周のスカート10は、スカート内側部分10bをスカート外側部分10aの内面に重なるように内側へと上方に折り返すことによって生み出される2層分の厚さの材料から形成される(図3を参照)。スカート部は、アセンブリ8周りに間隔を空けて位置する対をなすタブとスロットとからなるコネクタ11によって、重なり合った関係に保持される。タブ1laが、スカート内側部分10bの自由縁と一体であって、スカート内側部分10bの自由縁に沿って間隔を空けて位置している。スロット11bが、支持面9において、隣り合うタブ11aの間の間隔に一致する量だけ離れた位置に形成されている(図3を参照)。
棚アセンブリ8の各々の角において、スカート外側部分10aが或る長さだけ除去されることで、凹んだ角部分がもたらされ、スカート内側部分10bによってもたらされる1対の舌12および14が露出している。図2aに示されている現時点の好ましい実施の形態においては、これらの舌12および14が、棚アセンブリ8aのスカートよりも下方へと突き出す延長部12aおよび14bを備えている。さらに、舌12が、角を巡って折り曲げられるように構成され、棚ユニットが組み立てられたときに端部がスカート内側部分10bとスカート外側部分10aとの間に配置されるように寸法付けられた水平方向の延長部12bを有してもよい。
棚アセンブリ8および隅柱アセンブリ1を組み立てるために、これらの構成部品を、これらの構成部品がユニットヘと接続されると同時に、個々のアセンブリのうちの少なくとも1つが完成した状態へと形成されて陳列スタンドの構造部材をもたらすように、一体にすることが必要である。アセンブリ8などの棚アセンブリが、棚アセンブリ8の各々の角に1つずつ設けられる4つの別々の隅柱アセンブリに結合させられること、および少なくとも2つの隣接する隅柱が同時に棚へと結合させられるように、種々の折り曲げ作業を達成する必要があることを、理解できるであろう。しかしながら、簡単にするために、棚および柱のただ1つの角の構成だけを説明するが、他の角の構成も、同様のやり方で実現されることを理解すべきである。さらに、通常は、図5に示されているような複数の棚を有する陳列構造13を形成するように、複数の棚アセンブリが設けられる。
各々の隅柱アセンブリ1が、リム内側部分2a、3aを折り返して互いに留めることによって、図1に示されるとおりの構造部品へと形成される一方で、棚アセンブリ8は、隅柱アセンブリヘと取り付けられるときに構造部品へと形成される。棚アセンブリ8を各々の隅柱アセンブリ1に結合させるために、支持面9の尖った角が隅柱アセンブリの或る1つの凹部5の角に受け入れられ、アーム6、7が隣接するスカート外側部分10aの内面に沿って位置するように、棚アセンブリの凹んだ角部分が隅柱アセンブリの凹部5に当接させられる。その後に、内壁部分10bが、舌12および14がアーム6、7に重なり、凹部5の切り欠き領域に受け入れられるように、上方へと内側に折り曲げられる。このようにして、アーム6、7が、スカート部分の2層からなる厚さによってもたらされる保持スリーブに収容される。重なったスカート内側部分10bを動かぬように固定するために、タブおよびスロット11が、上述のように互いに接続される。棚アセンブリ8のすべての角がこのように接続されたとき、棚アセンブリは、陳列ユニット13の構造部材を構成する。図2および4に示されるように、タブ11aが、支持面9のスロット11bを貫いて突き出し、支持面上に配置される物品の移動を制止する保持リップをもたらしている。
しかしながら、他の特定の実施の形態においては、棚アセンブリが完成した構造部材へとあらかじめ形成される一方で、隅柱アセンブリが、あらかじめ形成された棚アセンブリに結合させられるときに初めて完成される。この目的に適した棚アセンブリは、図2aに示され、すでに詳しく説明された構成である。舌の延長部12a、14aが、隅柱アセンブリ1のリム外側部分2bおよびリム内側部分2aの間ならびにリム外側部分3bおよびリム内側部分3aの間にそれぞれ位置することを、理解できるであろう。当然ながら、アーム6、7は、スカート内側部分10bおよびスカート外側部分10aの間に収容される。いくつかの場合においては、アーム6および7を省略してもよいと考えられる。
陳列構造13が対称であり、所望であれば、各々の棚ユニットの外周のスカートが、上方へと延びることで、結合した棚を固定のトレイとして利用できるよう、逆さにされてもよいことを、図5を観察することによって理解できるであろう。
耐摩耗性を高め、ボール紙材料への水の進入または吸収を防止するために、例えばプラスチック材料からなる端部キャップを、各々の隅柱の端部に取り付けることができると考えられる。さらには、隅柱ユニットまたは棚ユニットのいずれか一方を、プレス成形積層ボール紙以外の材料から形成でき、実際に任意の他の折り曲げ可能な材料で形成できると考えられる。例えば、隅柱を、金属またはプラスチック材料から形成することができる。
棚ユニットが過度に撓むことがないように、棚ユニットの外周のスカートの境界の内側で棚ユニットの下方にはめ込まれる金属製の「帽子」部(図示されていない)を設けてもよい。)

(イ)記載事項(ア)を参酌してFIG.1.?5.を見るとそこには、
棚アセンブリ8は支持面9の少なくとも2辺にスカート外側部分10aとスカート内側部分10bとがこの順序に連設され、
スカート外側部分10aが、支持面9の尖った角から、スカート外側部分10aが少なくとも組立に支障が生じないだけは切欠された形状にされ、
スカート内側部分10bによってもたらされる1対の舌12および14が露出した状態で、スカート内側部分10bが内側へくるようにスカート外側部分10a起立させたものであって、
支持面9の尖った角が隅柱アセンブリの或る1つの凹部5の角に受け入れられ、アーム6、7が、スカート部分の2層からなる厚さによってもたらされる保持スリーブに収容されることで、棚アセンブリ8を隅柱アセンブリ1に固定した商品陳列用臨時スタンドが記載されている。

ク.甲第10号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第10号証には、組み立て棚用の支柱および組み立て棚に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0007】・・・なお図示を省略しているがこの調節ねじ8に代えてキャスターを設けてもよい。」

ケ.甲第11号証の記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第11号証には、伸縮整理棚に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0015】・・・各支持部材8の下端にはアジャストストッパー10が設けてある。勿論、各支持部材8の下端にキャスターを設けてもよい。」

コ.甲第12号証の1、及び甲第12号証の2記載事項
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第12号証の1、及び甲第12号証の2には、サカエのスーパーワゴンに関して、次の事項が記載されている。
(ア)「’97サカエ 工場器具・工場機器・事務所器具 総合カタログNo2 新商品掲載板」(表紙)
(イ)「スーパーワゴン・・・・・144?149」(「141?222」と表示された頁)
(ウ)「サカエ型」として、支柱、そのの裏側に当接する部品、支柱の両側面に突き合わせられた2つの部品からなる棚板コーナー部が図示されている。(第144頁左上)
(エ)「棚板コーナー部は、サカエ独特の支柱側面突き合わせ型のため、ぐらつきが無く、非常に堅牢です。」(第144頁左上)
(オ)ワゴンの写真、及び「品番・・・020033 SR-600」(第145頁右下)
(カ)「’97サカエ 工場器具・工場機器・事務所器具 総合カタログNo2 1997年発行」(奥付)

サ.甲第12号証の3の1?4記載事項
スーパーワゴンSR-600のを撮影した写真の写しである甲第12号証の3の1?4記載には、次の事項が撮影されている。
(ア)SR-600の全体写真と、方向を示す矢印BとC(甲第12号証の3の1)
(イ)支柱、支柱の裏側に当接する金具と付記された部品、支柱の両側面に突き合わせられた外側の部分と付記された2つの部分、金具後方の箱底と付記された部分、支柱-外側の部分と付記された2つの部品間に存在する切欠と付記された線からなる、甲第12号証の3の1のワゴンをB方向から見た写真(甲第12号証の3の2)
(ウ)支柱、金具と付記された部品、金具と付記された部品の両側に設けられた外側の部分と付記された2つの部分、金具後方の箱底と付記された部分、金具と付記された部品-外側の部分と付記された2つの部分との間に存在する切欠と付記された線からなる、甲第12号証の3の1のワゴンをB方向から見た、支柱が分離している写真(甲第12号証の3の3)
(エ)支柱と付記された部分、その表側に当接する金具と付記された部品、金具と付記された部品の両側に設けられた内側の部分と付記された2つの部分、下面を構成する箱底と付記された部分、金具と付記された部品-内側の部分と付記された2つの部分間に存在する切欠と付記された線、金具と付記された部品の表面に設けられたボルト・ナツトとからなる甲第12号証の3の1のワゴンをC方向から見た写真(甲第12号証の3の4)


(2)甲第3号証記載の発明との対比
本件発明1と甲第3号証記載の発明を対比する。
(a)甲第3号証記載の発明の「直角四辺形の薄板鋼板からなる棚板」は、本件発明1の「直角四辺形の金属製棚板」に相当し、以下同様に、
「山形鋼からなる4本の支柱1」は、「山形鋼で作られた4本の支柱」に、
「支柱1の上端部に位置する棚板2」の「四隅」及び「中間部に位置する棚板2のコーナ部」は、「各棚板の四隅のかど部」に、
「組立式棚」は、棚板が「薄板鋼板からなる」ものであるので、「金属製棚」に相当する。
(b)甲第3号証記載の発明の「ピン11を介して棚板2が支柱1に係止されること」と、本件発明1の「ボルトにより固定して組み立てること」とは、「固定して組み立てること」で共通する。
(c)甲第3号証記載の発明の「中間部に位置する棚板2のコーナ部をそれぞれ支柱1の内側面に当接し」と、本件発明1の「各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し」とは、「棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し」で共通する。
(d)甲第3号証記載の発明の側板10の「外側を構成する板」は、本件発明1の「側壁」に相当する。
また、甲第3号証記載の発明の側板10の「内側を構成する板」と、本件発明1の「内接片」とは、側壁の「内側の板」で共通する。
そして、甲第3号証記載の発明の「棚板2は、天板9とその周縁部に連成されて下向きに突出する四周の側板10とからなり、側板10が、その外側を構成する板と内側を構成する板とからなっていて、外側を構成する板は棚板2に上端が一体に連接され、内側を構成する板は外側を構成する板の下端に一体に連接されている」ことと、本件発明1の「棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内接片とがこの順序に連設されていて、各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体としたものであ」ることとは、前者の「内側を構成する板」が、「内側を構成する板は外側を構成する板の下端に一体に連接されている」ものであって、内側を構成する板を折り返して外側を構成する板に重ね合わせた構成といえるものであるので、「棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内側の板とがこの順序に連設されていて、内側の板を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内側の板が箱の内側へくるようにして浅い箱状体としたものであ」る点で共通する。
(e)甲第3号証記載の発明の「側板10の外側を構成する板が、支柱1の内側面に当接」していることと、本件発明1の「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接」していることとは、「棚板の外側面を支柱の内側に当接」した点で共通する。
(f)甲第3号証記載の発明の「棚板2の側板10の側端部に設けた取付孔13を用いてピン11を介して棚板2が支柱1に係止される」ことと、本件発明1の「内接片を支柱にボルトにより固定する」こととは、「棚板の外側面を支柱に固定する」点で共通する。

一致点:
そうすると、両者は、
「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と、山形鋼で作られた4本の支柱とからなり、棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し、固定して組み立てることとした金属製棚において、上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内側の板とがこの順序に連設されていて、内側の板を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内側の板が箱の内側へくるようにして浅い箱状体としたものであって、棚板の外側面を支柱の内側に当接し、棚板の外側面を支柱に固定する金属製棚。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件発明1は、棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接する固定が「各棚板」に対する「ボルト」による固定であるのに対し、甲第3号証記載の発明は、「支柱1の上端部に位置する棚板2の・・・当接固定」が「棚板2とコーナプレート3とを連結するとともに、支柱1の長孔5を貫通してピン11bの先端部をコーナプレート3の係合孔21内に嵌入することにより、棚板2の四隅をそれぞれ支柱1に仮止めした後、取付ボルト7を締込むことにより、棚板2を支柱1の内側面に当接固定」するものであり、中間部に位置する棚板2の固定が「ピン11を介して棚板2が支柱1に係止される」ものである点。

相違点2:本件発明1は、側壁の内側の板が「内接片」であり、
棚板は「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体とした」ものであり、
棚板と支柱との固定は「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し、切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み、内接片を支柱にボルトにより固定」するのに対し、甲第3号証記載の発明はそうでない点。


(3)相違点についての判断
ア.上記相違点1について検討する。
まず、固着手法として「ボルト」による固定は、甲第2号証や甲第8号証にも記載されている様に周知慣用手段といえるものである。
さらに、甲第2号証や甲第8号証記載のものが、上端部に位置する棚板もボルトによる固定がなされている様に、ボルトによる固定が、中間部に位置する棚板にしか適用出来ない様なものでもない。
そうすると、甲第3号証記載の発明の中間部に位置する棚板2の固定手法の「ピン11」を、周知慣用の「ボルト」に変更するとともに、他の棚板も同様にボルトによる固定に変更して、本件発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

イ.上記相違点2について検討する。
(ア)「内接片」の意味
本件発明1の「内接片」は、何らかの部材の「内」に「接」する「片」であり、請求項1の「各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し、・・した金属製棚」や「内接片を支柱の内側に当接し・・」等の記載からみて、支柱に接するものである。
それに対して、甲第3号証記載の発明の側板10内側を構成する板は、支柱1に当接するものではないので、本件発明1の「内接片」とはいえない。

請求人は、平成24年11月1日付け口頭審理陳述要領書の「6 (3)[1]」(なお、[]は、丸数字を表す。以下同様。)で「本件特許の内接片は側壁の内側に位置している部分と定義すべき」旨主張しているが、「内接片」なる言葉が本来有している「内接」の意味を無視して、単に側壁の内側に位置している部分と定義すべき合理的な理由は発見出来ず、上記請求人の主張は採用出来るものではない。

(イ)甲第2,8,9号証記載の発明について
まず、相違点2の前提となる、「棚板は『各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体とした』もの」であることに関連する、「箱底」の四辺に「側壁」と「内接片」が、この順序で連接されていて、四辺に近い方の「側壁」が、「支柱の幅の長さ分だけ切欠」かれていることについては、甲第2,8,9号証のいずれにも記載されていないので、甲第3号証の金属製棚に、甲第8号証又は甲第9号証若しくは甲第2号証を単独で又は組み合わせて適用して、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たとはいえない。

(ウ)請求人の甲第2号証に係る主張について
(a)請求人は、
(a1)審判請求書の「7.(4).(4-8).」で「本件第1発明及び本件第2発明は、甲第3?5号証の周知技術に甲第2号証を組み合わせるか、或いは、甲第3?5号証の周知技術に甲第2号証及び甲第8号証を組み合わせることでも、容易に想到できたものである。」(なお、甲第4,5号証、及び、審判請求書「(3).無効審判請求の根拠」に記載した「甲第4号証」、「甲第5号証」に係る主張は、平成24年11月15日の口頭審理において撤回された。以下同様。)と主張し、
(a2)また、平成24年11月1日付け口頭審理陳述要領書の「6 (3)[6]」で「平板(箱底)11に連設された縁片12?15に、その外面に重なる折り返し片16?19を設けてこの折り返し片16?19を切欠いたものであり、棚板の周壁の基本構成が本件特許とは逆の関係にある。
そこで問題は、甲第3?5号証に甲第2号証を適用することができるか否かであるが、請求人は、甲第2号証は、『2枚重ね構造のうちの外側の部分を切欠く』という思想を包含していると思料するものであり、してみると、甲第2号証の教示に従って甲第3?5号証の外側の部分を切欠くことは容易であると思料する。」と主張したので、その主張について検討する。

(b)まず、甲第2号証には、前記「1.(1)イ.」の記載事項(ア)?(キ)が記載されており、そのうち「切欠」に関しては記載事項(ウ)に「折り返し部分を四隅のかどで切欠して、折り返し部分の切欠端が丁度支柱の側面に当たるようにしておく」と記載され、記載事項(キ)に縁片12?15の外面に重なる折り返し片16?19を切欠いた構成が記載されている。
しかし、いずれも、外面に重なる「折り返し部分」を切欠くもの、すなわち、四辺から見て外側を切欠いた構成であり、甲第3号証記載の発明や本件発明1の様な折り返し部分は内方に位置し、外面は「折り返し部分」で無い形式のものも包含する一般的概念として「2枚重ね構造のうちの外側の部分を切欠く」という思想が記載されていたといえるものではない。
そうすると、前記請求人の主張は採用出来るものではない。

(c)そして、甲第2号証記載の発明が、相違点2に係る「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体とした」棚板を前提とする「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し、切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み、内接片を支柱にボルトにより固定する」構成を有するものではなく、さらに、下記(ウ)記載の様に、甲第8号証記載の発明1及び2においても同様である以上、甲第3号証の金属製棚に、甲第2号証記載の発明を適用して本件発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たということはできない。
なお、「本件第1発明及び本件第2発明は、・・甲第3・・号証の周知技術に甲第2号証及び甲第8号証を組み合わせることでも、容易に想到できたものである。」については、下記(カ)参照。

(エ)請求人の甲第8号証に係る主張について
(a)請求人は、
(a1)審判請求書の「7.(4).(4-6).」で「本件第1発明及び本件第2発明は、甲第3?5号証に例示されている周知の棚に甲第8号証を適用することで容易に相当できたものである。」と主張し、
(a2)また、平成24年11月1日付け口頭審理陳述要領書の「6 (3)[4]」で「甲第8号証のうち第7?9図の実施例には本件特許の構成Eに相当する構成は図面にも明細書にも明記されておらず、この点は御庁の認定のとおりであるが、周壁のうち内側に位置した部分が支柱に固定されていないと棚として成立しないので、詳細な構造は不明であるが、本件特許の内接片に相当する部分が切欠部内に延出して支柱の内面に当接していること自体は容易に推測できると思料する。
また、そもそも甲第8号証において重要なことは、本件特許の側壁に相当する部分を切欠いて、その側面を支柱の側面に当接することで傾きを防止しているという思想であり、かかる思想を甲第3?5号証に適用することに特段の困難性はないと思料する。」と主張したので、その主張について検討する。

(b)まず、甲第8号証には、前記「1.(1)カ.」の記載事項(ア)?(コ)が記載されているが、それらに記載されている「コーナー壁14」は、その第1コーナー片14a(第1左側片12a及び第1右側片13aに連接して外側の面となる片であって、本件発明1の「側壁」に対応するものであって、「内接片」に対応するものではない。)が、「金属製支柱1」と当接する構成であり、相違点2の側壁の内側の板が「内接片」であり、棚板と支柱との固定は「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し・・・固定する」構成を備えるものではない。
そして、甲第8号証記載の発明1及び2の組立用整理棚は、第1コーナー片14aが支柱1及び1’の内側に当接した状態で、棚板と支柱とが固定されるものであり、第2コーナー片14b(第2左側片12b及び第2右側片13bに連接して内側の面となる片であって、本件発明1の「内接片」と、側壁の「内側の板」である点で共通するもの)が、支柱1及び1’の内側に当接しているといえるようなものではなく、甲第8号証に「本件特許の側壁に相当する部分を切欠いて、その側面を支柱の側面に当接することで傾きを防止しているという思想」が記載されているといえるようなものでもない。

(c)そして、甲第8号証記載の発明1及び2が、相違点2に係る「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体とした」棚板を前提とする「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し、切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み、内接片を支柱にボルトにより固定する」構成を有するものではない以上、甲第3号証の金属製棚に、甲第8号証記載の発明を適用して、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たということはできない。

(オ)請求人の甲第9号証に係る主張について
(a)請求人は、
(a1)審判請求書の「7.(4).(4-7).」で「本件両発明は、甲第3?5号証の周知例に甲第9号証を単独で適用することにより、又は、甲第3?5号証の周知例に甲第9号証と甲第8号証とを適用することにより、容易に想到できたものでもある。」と主張し、
(a2)また、平成24年11月1日付け口頭審理陳述要領書の「6 (3)[5]」で「甲第9号証も棚である点で甲第3?5号証と共通しており、スカート10を構成する外側の部分を切欠いて外側の部分で支柱を挟むという構成を甲第3?5号証に適用することに阻害要因があるとは考えられない。すなわち、甲第9号証にボルト締結が記載されていないことは、甲第9号証を甲第3?5号証に適用することの障害にはならないと思料する。」と主張したので、その主張について検討する。

(b)上記主張について検討する。
(b1)まず、甲第9号証には、前記「1.(1)キ.」の記載事項(ア)?(イ)が記載されているが、甲第9号証記載事項(イ)の棚アセンブリ8(本件発明1の「金属製棚板」と「棚板」の点で共通するもの)と隅柱アセンブリ1(本件発明1の「支柱」に相当するもの)との「固定」は、「アーム6、7が、スカート部分の2層からなる厚さによってもたらされる保持スリーブに収容される」ことでなされるものであり、相違点2の棚板と支柱との固定は「・・・内接片を支柱にボルトにより固定する」構成を備えるものではない。
なお、甲第9号証記載事項(ア)の「アーム6および7を省略してもよい。」とされた構成は、各図を参酌しても、隅柱アセンブリを棚アセンブリに結合する具体的構成が特定できない。
そうすると、甲第3号証記載の発明の棚板2を支柱1に固定する手法である「棚板2の側板10の側端部に設けた取付孔13を用いてピン11を介して棚板2が支柱1に係止される」構成を、甲第9号証記載事項(イ)の「アーム6、7が、スカート部分の2層からなる厚さによってもたらされる保持スリーブに収容されることで棚アセンブリ8を隅柱アセンブリ1により固定した」に置換したとすると、置換により甲第3号証記載の発明の「ピン11」(本件発明1の「ボルト」と、「固定手段」である点で共通するもの)は、必要なくなるものであって、結局、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項が導き出されるものとはならない。
(b2)また、甲第9号証記載事項(イ)の「スカート外側部分10a」(本件発明11の「側壁」に相当するもの)は、「支持面9の尖った角から、スカート外側部分10aが少なくとも組立に支障が生じないだけは切欠された形状にされ」(結果的に本件発明1の金属板が「箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状」に打ち抜かれたことと、箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状」となる点で共通するもの)たものであるものの、甲第9号証の記載事項から上記「少なくとも組立に支障が生じないだけ」の「切欠」が、「スカート10を構成する外側の部分を切欠いて外側の部分で支柱を挟む」という意図のものであるといえるものではない。
そうすると、請求人の主張は、甲第9号証の記載事項から前記(b1)の「アーム6、7が、スカート部分の2層からなる厚さによってもたらされる保持スリーブに収容されることで棚アセンブリ8を隅柱アセンブリ1により固定した」基本構成を切り捨てるとともに、他方、上記甲第9号証の記載事項からいえない「スカート10を構成する外側の部分を切欠いて外側の部分で支柱を挟む」ということを根拠として、当該事項のみを都合良く甲第3号証記載の発明に置換、または付加して、本件発明1の構成にするのが容易と言うものとなり、そのような論理で、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項が容易に導き出されたとすることは出来ない。
(b3)さらに、前記「1.(1)カ.」の甲第8号証の記載事項(ア)?(コ)を参酌しても、甲第3号証記載の発明に甲第9号証と甲第8号証とを適用することにより、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得るという、客観性のある論理は発見できない。

(c)そして、甲第9号証記載の事項が、相違点2に係る「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体とした」棚板を前提とする「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し、切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み、内接片を支柱にボルトにより固定する」構成を有するものではなく、さらに、上記(エ)記載の様に、甲第8号証記載の発明1及び2においても同様である以上、甲第3号証の金属製棚に、第9号証を単独で適用することにより、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たということはできない。
なお、「本件両発明は、・・甲第3・・号証の周知例に甲第9号証と甲第8号証とを適用することにより、容易に想到できたものでもある。」については、下記(カ)参照。

(カ)甲第1,6,7,10?12号証の3の1?3の4、及び「甲第3・・号証の周知技術に甲第2号証及び甲第8号証を組み合わせることでも、容易」、「甲第3・・号証の周知例に甲第9号証と甲第8号証とを適用することにより、容易」に関して
(a)甲第1号証には、従来の技術に、強度の点で問題があったことが開示され、
甲第6,7号証には、素材板の端から順に曲げ加工していく周知技術が開示され、
甲第10,11号証には、キャスタは単なるオプション品に過ぎないことが開示され、
甲第12号証の1?2には、支柱側面突き合わせ型の構成が、ぐらつきが無く、非常に堅牢ある事が開示され、
甲第12号証の3の1?3の4には、甲第12号証には、ワゴンの全体、及び、支柱、そのの裏側に当接する金具と付記された部品、支柱の両側面に突き合わせられた外側の部分と付記された2つの部分、箱底と付記された部分、支柱-外側の部分と付記された2つの部品間に存在する切欠と付記された線からなる棚板コーナー部が写されている。

(b)しかし、相違点2に係る「各側壁が箱底のかどから支柱の幅の長さ分だけ切欠された形状に金属板を打ち抜き、内接片を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内接片が箱の内側へくるように側壁を起立させて浅い箱状体とした」棚板を前提とする「側壁の切欠部内に延出している内接片を支柱の内側に当接し、切欠によって作られた側壁の側面で支柱の両側面を挟み、内接片を支柱にボルトにより固定する」構成は、甲第1?12号証の3の3の4のいずれにも記載も示唆もされていない。
そうすると、第1?12号証の3の4すべてを参酌しても、甲第3号証の周知技術に甲第2号証を組み合わせて、または、甲第3号証の周知技術に甲第2号証及び甲第8号証を組み合わせて、または、甲第3号証の金属製棚に甲第8号証を単独で適用して、または、甲第3号証の金属製棚に甲第9号証単独で適用して、または、甲第3号証の金属製棚に甲第2号証を単独で適用して、または、甲第3号証の金属製棚に甲第8号証又は甲第9号証若しくは甲第2号証を組み合わせて適用して、本件発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たということもできない。

ウ.まとめ
したがって、本件発明1は、甲第3号証の金属製棚に、甲第8号証又は甲第9号証若しくは甲第2号証を単独で又は組み合わせて適用することで容易に発明できたものであるとはいえない。


2.無効理由2について
(1)甲第1?12号証の3の4の記載事項
甲第1?12号証の3の4には、図面とともに上記1.(1)の記載事項が記載されている。
そして、甲第3号証には、少なくとも前記甲第3号証記載の発明が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
本件発明2は、本件発明1の「固定することを特徴とする、金属製棚」の部分を、「固定し、各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚を移動可能としたことを特徴とする、金属製ワゴン」に変更した発明であり、本件発明2と甲第3号証記載の発明とを対比すると、

一致点:
両者は「複数枚の直角四辺形の金属製棚板と、山形鋼で作られた4本の支柱とからなり、各棚板の四隅のかど部を支柱の内側面に当接し、固定して組み立てることとした金属製棚において、上記棚板は直角四辺形の箱底の四辺に側壁と内側の板とがこの順序に連設されていて、内側の板を折り返して側壁に重ね合わせるとともに、内側の板が箱の内側へくるようにして浅い箱状体としたものであって、棚板の外側面を支柱の内側に当接し、棚板の外側面を支柱にした金属製棚。」
で一致し、

相違点:
両者は、上記1.(2)の「相違点1」、「相違点2」及び、
相違点3:本件発明2は、金属製棚が「各支柱の下方にキャスターを付設して金属製棚を移動可能とした金属製ワゴン」であるのに対し、甲第3号証記載の発明はそうでない点で相違する。

そして、上記1-1.(3)に記載したのと同様に、第1?12号証の3の4すべてを参酌しても、「本件特許の請求項2に係る発明は、本件の請求項1に係る発明と同じ理由で容易に発明できたもの」とはいえないから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第3号証の金属製棚に、甲第8号証又は甲第9号証若しくは甲第2号証を単独で又は組み合わせて適用することで容易に発明できたものであるとはいえない。

第4 むすび
以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1,2の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-18 
結審通知日 2012-12-20 
審決日 2013-01-09 
出願番号 特願2004-312259(P2004-312259)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 真理子  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 中川 真一
鈴野 幹夫
登録日 2010-03-12 
登録番号 特許第4473095号(P4473095)
発明の名称 金属製棚及び金属製ワゴン  
代理人 西 博幸  
代理人 酒井 正美  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 白木 裕一  
代理人 安田 昌秀  
代理人 今川 忠  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ