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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1295667 |
審判番号 | 不服2012-630 |
総通号数 | 182 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2015-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-01-13 |
確定日 | 2014-12-24 |
事件の表示 | 特願2006-529642「HRT製剤」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日国際公開、WO2005/030175、平成19年 3月22日国内公表、特表2007-506796〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2004年9月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年9月29日 (DK) デンマーク王国)を国際出願日とする出願であって、平成23年7月11日付けで手続補正がなされ、平成23年9月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成24年1月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年1月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)本件補正の適否 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 補正前の 「任意でその水和物として、0.5mgのエストラジオールと0.1mgのNETAを含む医薬製剤。」 から、 補正後の 「0.5mgのエストラジオールまたはその水和物と0.1mgのNETAを含む医薬製剤。」 へ補正された。 そこで、本件補正前後の特許請求の範囲の請求項1を対比すると、本件補正は、本件補正前の請求項1について、「任意でその水和物として・・エストラジオール」を含むとしていたものを「エストラジオールまたはその水和物」を含むものに変更するものである。そうすると、両者は「エストラジオール」あるいは「エストラジオール水和物」のいずれかを含むもの、という同一のことを意味している。よって、この補正は、特許請求の範囲を限定的に減縮するものではない。また、「任意でその水和物として、0.5mgのエストラジオール」という表現は不明瞭な表現ではないし、記載不備の拒絶理由も通知されていないため、この補正は「不明りょうな記載の釈明」を目的とするものであるとはいえない。また、誤記の訂正を目的とするものであるともいえない。 したがって、上記補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、改正前の同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成23年7月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 任意でその水和物として、0.5mgのエストラジオールと0.1mgのNETAを含む医薬製剤。」 4.引用例に記載された事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭60-100520号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「プロゲストゲン約0.025mg乃至約500mg、エストロゲン約0.005mg乃至約100mgの投与量単位でプロゲストゲンとエストロゲンを薬剤学的に受容できる担体と共に含む、女性の周閉経期、閉経期および閉経期後の障害をホルモン的に治療するための医薬品組成物。」(請求項17) (イ)「それぞれの最高および最低投与量単位に関し、エストロゲンが下記の群; 投与量単位(mg) 最低 最高 エストラジオール 約0.500 約2 ・・・ から選ばれる特許請求の範囲第17項または第22項記載の組成物。」(請求項23) (ウ)「それぞれの最高および最低投与量単位に関し、プロゲストゲンが下記の群; 投与量単位(mg) 最低 最高 ・・・ ノルエチンドロン(ノルエチステロン) アセテート 約0.10 約1.0 ・・・ から選ばれる特許請求の範囲第17項から第23項のいずれか1項に記載の組成物。」(請求項24) (エ)「実際の単位投与量は最少量のホルモンで望ましい結果が得られる最終目標に沿うよう、公知の方法、例えば患者の体重やホルモンの生物学的活性等に沿って選択する。」(第10頁右上欄下から5行?下から2行) (オ)「したがって特に望ましい組合せは下記のものである。 ・・・ エストラジオール/ノルエチンドロン(ノルエチステロン)アセテート ・・・」(12頁左下欄最終行?13頁左上欄17行) (2)記載事項(ア)によれば、引用例1には、プロゲストゲン0.025?500mg、エストロゲン0.005?100mgを含む、女性の周閉経期、閉経期、閉経期後の障害を治療するための医薬品組成物が記載されており、記載事項(イ)によれば、エストロゲンとしてエストラジオールを選択した場合、その含有量は0.500?2mgであることが、記載事項(ウ)によれば、プロゲストゲンとしてノルエチンドロンアセテートを選択した場合、その含有量は0.10?1.0mgであることが、記載事項(オ)によればエストラジオール及びノルエチンドロンアセテートの組み合わせが好ましい組み合わせの一つであることが記載されている。 そうすると記載事項(ア)?(ウ)、(オ)によれば、引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「0.5?2mgのエストラジオールと0.1?1mgのノルエチンドロンアセテートを含む医薬品組成物。」 4.対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明における「ノルエチンドロンアセテート」は本願発明の「NETA」のことであるし、引用発明における「医薬品組成物」は本願発明の「医薬製剤」に相当する。 してみると、両者は 「エストラジオールとNETAを含む医薬製剤。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・本願発明ではエストラジオールの含有量が0.5mgであり、NETAの含有量が0.1mgであるのに対し、引用発明ではエストラジオールが0.5?2mgであり、NETAが0.1?1mgである点(以下、「相違点」という) 5.判断 上記相違点について検討する。 引用例の記載事項(エ)によれば、投与量は、望ましい結果が得られる最少量を選択することが記載されている。そうすると、引用発明におけるエストラジオールの投与量である「0.5?2mg」のうち最少投与量として記載されている「0.5mg」、NETA投与量である「0.1?1mg」のうち最少投与量として記載されている「0.1mg」を選択することに格別の困難性は認められない。 また、効果について検討するに、意見書において、本願発明の製剤により、プラセボと比較して顔面潮紅が押さえられたことが記載されているが、引用例においても「本発明の方法は、長期の投与期間中にわたって、顔面潮紅を抑制し・・投与を行う治療法で」(10頁左上欄最終行?右上欄5行)と記載されているとおり、顔面潮紅を押さえることが記載されており、顔面潮紅が抑制されることも引用例の記載から予測される効果に過ぎない。 よって、引用発明において、エストラジオールの含有量を0.5mg、NETAの含有量を0.1mgとすることは、当業者が容易に想到しうることである。 なお、請求人は、意見書において、引用例にはエストラジオールとNETAを用いた実施例がないことから、引用例にはエストラジオールとNETAの組み合わせが記載されていない旨主張している。しかし、記載事項(オ)には、「好ましい組み合わせ」としてエストラジオールとNETAの組み合わせが記載されている。また、本願明細書の記載を検討しても、この組み合わせを採用することによって、他の組み合わせを採用した場合に比べて格別の効果があったと認められる記載も存在しない。 また、請求人は、審判請求書において、エストラジオール0.5mg、NETA0.1mgという投与量は最低投与量であって、通常はある好ましい数値範囲の最低量は好ましい数値ではなく、エストラジオール1mgとノルエチンドロンアセテート0.3mgが好ましい投与量として記載されている旨主張している。しかし、記載事項(エ)には、最少量のホルモンで望ましい結果が得られるよう投与量を選択することが記載されているのであるから、0.5?2mgから0.5mgを選択すること、0.1?1mgの中から0.1mgを選択してみることは当業者が適宜行い得ることに過ぎない。 さらに、請求人は、審判請求書において、エストラジオールを1mg、NETAを0.5mg含有するアクティビルを投与した場合と比較して、本願発明の製剤を投与した場合には、無月経の女性の割合が高まるという効果が得られた旨主張している。しかし、月経はホルモン療法による副作用であるところ、エストラジオール及びNETAというホルモン療法における有効成分含量が少ない製剤を用いれば、副作用である月経の起こる率が減り、無月経率が高まることは、当然に予測される効果に過ぎない。 そして、請求人は、審判請求書において、乳房密度について、アクティビルでは12.2%の女性で乳房密度の増加が見られたところ、本願発明の製剤では乳房密度の変化が存在しなかったという効果もあった旨主張し、回答書において、「出願人は本願のホルモン補充療法の副作用の低減と抑制について本件明細書で触れています」、「本件出願当初明細書でも言及する「閉経後症候群」は、乳房密度の増加を含む症状の集まりであります」と主張している。しかし、本願明細書中に「閉経後症候群」という記載は存在しないため、明細書のどの部分に基づく主張であるのか不明である。また、乳房密度の増加は、閉経後のホルモン補充療法の副作用として出現するものであり、閉経後に閉経に起因しておこるものではない。仮に、[0037]の「閉経後症状」が「閉経後症候群」の意味であるとしても、「乳房密度の増加」は「閉経後症状」に含まれないため、本願明細書中に、乳房密度の増加に関する効果が記載されていたとは認められない。更に、技術常識を参酌すれば乳房密度の増加についての効果が当初明細書から読み取れると仮定しても、ホルモン療法の有効成分としてエストラジオール、NETAを本願発明の製剤より多く含有するアクティビルを投与した場合と比較して、それら有効成分含量の少ない本願発明の製剤を投与した場合に、副作用である「乳房密度の変化」が減少することは、当業者が予測可能な効果に過ぎない。 よってこれらの請求人の主張は採用することはできない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-07-18 |
結審通知日 | 2014-07-22 |
審決日 | 2014-08-11 |
出願番号 | 特願2006-529642(P2006-529642) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小堀 麻子 |
特許庁審判長 |
村上 騎見高 |
特許庁審判官 |
増山 淳子 渕野 留香 |
発明の名称 | HRT製剤 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 竹内 将訓 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 砂川 克 |