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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1296052
審判番号 不服2013-23195  
総通号数 182 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-27 
確定日 2015-01-05 
事件の表示 特願2008-306475号「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日出願公開、特開2010-151851号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年12月1日(優先権主張 平成20年11月28日)の出願であって、平成24年8月27日付けで拒絶理由が通知され、同年11月5日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、平成25年3月5日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年5月1日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年8月22日付けで平成25年5月1日付けの手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、請求と同時に手続補正がなされたものである。

2.平成25年11月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年11月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「波長365nm以上420nm以下の近紫外レーザー光を発生する近紫外レーザー光発生源と、青色蛍光体層と緑色蛍光体層と赤色蛍光体層とがストライプ状に形成されるとともに、所定の順に配列された蛍光体スクリーンとを備えた表示装置において、
前記青色、緑色、赤色の各蛍光体はそれぞれ3μm以上15μm以下の平均粒径を有し、
前記青色蛍光体は、
一般式:(Sr_(1-x-y-z),Ba_(x),Ca_(y),Eu_(z))_(5)(PO_(4))_(3)Cl
(式中、x、yおよびzは0≦x<0.3、0≦y<0.3、0.001<z<0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体であり、
前記緑色蛍光体は、
一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))(Mg_(1-y),Mn_(y))Al_(10)O_(17)(式中、xおよびyは0.04<x<0.5、0.1<y<0.6を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体と、
一般式:(Sr_(1-x-y),Ca_(x),Eu_(y))Ga_(2)S_(4)
(式中、xおよびyは0≦x<0.2、0.005<y<0.3を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活硫化ストロンチウムガリウム蛍光体とから選ばれる少なくとも1種であり、
前記赤色蛍光体は、
一般式:(La_(1-x-y),Eu_(x),Sm_(y))_(2)O_(2)S
(式中、xおよびyは0.01<x<0.2、0≦y≦0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体であり、
かつ前記表示装置で得られる色再現域が対NTSC比76%以上であることを特徴とする表示装置。」
と補正された。

本件補正は、平成24年11月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「青色、緑色、赤色の各蛍光体」について「前記青色、緑色、赤色の各蛍光体はそれぞれ3μm以上15μm以下の平均粒径を有し」、「前記青色蛍光体は、一般式:(Sr_(1-x-y-z),Ba_(x),Ca_(y),Eu_(z))_(5)(PO_(4))_(3)Cl(式中、x、yおよびzは0≦x<0.3、0≦y<0.3、0.001<z<0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体であり、前記緑色蛍光体は、一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))(Mg_(1-y),Mn_(y))Al_(10)O_(17)(式中、xおよびyは0.04<x<0.5、0.1<y<0.6を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体と、一般式:(Sr_(1-x-y),Ca_(x),Eu_(y))Ga_(2)S_(4)(式中、xおよびyは0≦x<0.2、0.005<y<0.3を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活硫化ストロンチウムガリウム蛍光体とから選ばれる少なくとも1種であり、前記赤色蛍光体は、一般式:(La_(1-x-y),Eu_(x),Sm_(y))_(2)O_(2)S(式中、xおよびyは0.01<x<0.2、0≦y≦0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体であり」と限定し、「表示装置」について「前記表示装置で得られる色再現域が対NTSC比76%以上である」と限定するものであり、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(2)引用例
(a)原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-170674号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

記載事項ア
「【請求項1】
光源から入射した入射光を映像データに基づいて映像光に変換する光弁素子と、前記映像光が入射されるスクリーンを備える画像表示装置において、前記スクリーンは、蛍光体層を備えるとともに、前記入射した映像光の波長とは異なる波長の光を散乱する画像表示装置。」

記載事項イ
「【0021】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
(実施例1)図1は、本実施例の画像表示装置10を表すブロック図である。図示するように、光源2から光を入射して映像光に変換する光弁素子であるDM素子1と、DM素子1から出射された映像光を入射して散乱させるスクリーン4を備えている。駆動回路3はDM素子1に対して映像データを出力する。観察者12はスクリーン4の背面から投影された映像を見ることができる。即ち、本実施例はリアプロジェクションタイプの画像表示装置10である。通常は、DM素子1と光源2との間には集光用レンズが、DM素子1とスクリーン4との間には投影用レンズが設けられているが、図1では省略している。
【0022】
光源2には、紫外光を発光するLEDを使用することができる。紫外光としては、ピーク波長が380nm?410nmの近紫外光を使用するのが望ましい。紫外光のピーク波長が360nm前後又はこれ以下の場合には高分子系材料が劣化する場合があるからである。また、光源2には、青色LED、水銀ランプを使用することができる。
【0023】
スクリーン4は、ベース基材であるベースフィルム6に蛍光体層5が形成された構成である。蛍光体層5は、紫外光を入射して赤色の光を発光する赤蛍光体層5R、緑色の光を発光する緑蛍光体層5G、青色の光を発光する青蛍光体層5Bが行又は列状に配列されている。例えば、特定位置の赤蛍光体層5Rに映像光として紫外光が照射されると、当該位置の赤蛍光体層5Rが発光し、観察者12はこの赤蛍光体層5Rの発光色を観察することになる。緑蛍光体層5G及び青蛍光体層5Bも同様である。この時、蛍光体層から発光する光は実質的に散乱された光である。そのために、観察者は正面からスクリーン4を見る場合の他に、斜めから見る場合でも当該位置の蛍光体層の発光を観察することができる。そのために、視野角が大きくなる。
【0024】
紫外光で励起する蛍光体材料として、赤蛍光体層5Rには、Y_(2)O_(2)S:Eu、La_(2)O_(2)S:Eu、LiW_(2)O8:Eu,Sm、(Sr,Ca,Ba,Mg)_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Eu,Mn、Ba_(3)MgSi_(2)O_(8):Eu,Mn等を使用することができる。また、緑蛍光体層5Gには、ZnS:Cu,Al、BaMgAl_(10)O_(17):Eu,Mn、SrAl_(2)O_(4):Eu等を使用することができる。また、青蛍光体層5Bには、(Sr,Ca,Ba,Mg)_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Eu、(Ba,Sr)MgAl_(10)O_(17):Eu、(Sr,Ba)_(3)MgSi_(2)O_(8):Eu等を使用することができる。また、好ましくは、赤蛍光体層5RとしてBa_(3)MgSi_(2)O_(8):Eu,Mnを、緑蛍光体層5GとしてSrAl_(2)O_(4):Euを、青蛍光体層5Bとして(Sr,Ba)_(3)MgSi_(2)O_(8):Euを使用する。また、これらの蛍光体層は、マスクを使用したスクリーン印刷法やインクジェット方式により、透明なベースフィルム6の上にドット状に形成することができる。また、ノズルプリンティング法、グラビア印刷法、ダイレクト凸版印刷法、フォトリソ法、フォトエッチング法、レーザー転写法、レーザードライエッチング法等のプロセスも有効である。
【0025】
なお、本実施例では、蛍光体層として赤色、緑色及び青色の3色の蛍光体を使用する場合について説明しているが、これらの色に限定されない。また、2色の2種類の蛍光体を使用してもよいし、3色以上の3種類以上の蛍光体を使用することもできる。
【0026】
図2は、図1に示した画像表示装置10について、DM素子1の画素とスクリーン4上の蛍光体層との位置を説明するための説明図である。DM素子1として6行6列の36画素を有する場合である。DM素子1は、ベース基板7にマイクロミラー8が形成されている。マイクロミラー8の表面には入射光9を反射するための反射膜が形成されている。マイクロミラー8は印加される電圧により実線と破線で示す2つの安定な状態を有する。例えば±10°の2つの安定な角度を有する。オン電圧が印加されるとマイクロミラー8は+10°傾いて、入射光9は特定方向の反射光11として反射される。オフ電圧が印加されるとマイクロミラー8’は-10°傾いて、入射光9’はオン電圧が印加されたときの方向とは異なる方向の反射光11’として反射される。反射光11の方向にスクリーン4を設置することにより、入射光を映像光に変換することができる。マイクロミラー8は高速で動作する。諧調表示はマイクロミラー8、8’のオフ時間に対するオン時間の比率を変化させることにより行うことができる。
【0027】
スクリーン4には赤蛍光体層5R、緑蛍光体層5G、青蛍光体層5Bが6列形成されており、各列は更に6個のドットに分離されている。従って、6行6列から成る蛍光体ドットが形成されている。そして、DM素子1の各画素がスクリーン4の各蛍光体ドットに対応する。例えば画素P11、P16、P61、P66が、蛍光体ドットF11、F16、F61、F66にそれぞれ対応するように配置されている。画素P11、P61は赤色の画像データに基づいて駆動される。画素P16、P66は青色の画像データに基づいて駆動される。例えば、画素P11のマイクロミラー8がオン動作して入射した紫外光を反射させると、その反射光は蛍光体ドットF11に照射される。その結果、蛍光体ドットF11において赤色の光が発光する。同様に、画素P66のマイクロミラー8がオン動作すると入射した紫外光は蛍光体ドットF66に向けて反射される。その結果、蛍光体ドットF66において青色の光が発光する。総てのマイクロミラー8から成る画素を制御して映像を表示することにより、スクリーン4上の蛍光体ドットを発光させて映像を表示させることができる。
【0028】
なお、ここではDM素子の画素の位置とこれに対応するスクリーン4上の蛍光体ドットの位置とを同じ配置としたが、これに限定されない。DM素子1とスクリーン4との間に配置されるレンズにより画像が反転する場合には、DM素子の画素の位置とスクリーン4上の対応する蛍光体ドットの位置とは光軸を中心として点対称の位置となる。例えば、画素P11は蛍光体ドットF66に対応し、P16がF61に、P61がF16に、P66がF11にそれぞれ対応する。
【0029】
また、蛍光体ドットが物理的に分離している例を説明したが、蛍光体層5は必ずしも物理的に分離する必要はない。例えば、赤蛍光体層5Rを、6個の分離したドットに変えて1本のストライプ状ラインとすることができる。他の緑蛍光体層5G、青蛍光体層5Bも同様である。また、同一の色を発光する蛍光体ドットを行や列に沿って連続させる必要はなく、モザイク状に配置することも可能である。この場合は、DM素子の画素の色配置もこれに対応してモザイク状配置とする。また、DM素子1及びスクリーン4の画素数及びドット数は更に増加させることができる。
【0030】
以上説明したように、スクリーン4上において発光するので、表示される画像は視野角が広い。また、カラーフィルター等を用いて入射光線の一部の波長域を組み合わせて混色するのではなく、光源が発する紫外光等の波長の短い光全てを入射光として用いて蛍光体層で可視光に変換してカラーを得る方法なので、入射光のエネルギー効率を向上させることができる。」

記載事項ウ
「【0034】
(実施例3)図4は、本実施例による反射型のスクリーン4の断面図である。前述の各実施例と同一の部分又は同一の機能を有する部分は同一の符号を付している。図示するように、ベース基材としてのベースフィルム6に反射層30を形成し、その上に蛍光体層5を形成し、その上に透光性の保護層32を形成している。ここで、保護層32は必ずしも必要とは限らない。反射層30として、アルミニュウムや銀を蒸着法等により堆積した金属薄膜を使用している。金属薄膜の他に、金属フィルムをベースフィルム6上に粘着剤や接着剤を介して貼り付けてもよい。蛍光体層5は、赤蛍光体層5R、緑蛍光体層5G、青蛍光体層5Bが互いに分離され、各蛍光体の間隙には遮光層31が形成されている。遮光層31は紫外光を吸収する材料が用いられている。入射した紫外光を吸収して反射しないようにするためである。
【0035】
このスクリーン4に紫外光からなる映像光33が入射すると、赤蛍光体層5R、緑蛍光体層5G、青蛍光体層5Bのそれぞれが、映像光33の強度に応じて赤色光35R、緑色光35G、青色光35Bを発光する。これにより、入射側の観察者はカラー映像を見ることができる。なお、ベースフィルム6は、PET(Poly-Ethylene-Terephthalate)や透明アクリル樹脂等を使用することができる。また、図4のような反射型の場合には、ベースフィルム6を除去して反射層30をベース基材とすることができる。蛍光体層5は50μm?500μmの厚さであり、この層中に分散させる蛍光体粒子は粒径を5μm?50μmとしている。保護層32はシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の無機材料や、透明なウレタン樹脂やフッソ系樹脂等の高分子材料を使用することができる。また、遮光層31を除去して蛍光体を連続的に形成してもよい。また、蛍光体層の反射面積を稼ぐために、有機ELやプラズマディスプレイで使用している、バンクもしくはリブと呼ばれる隔壁を形成し、バンク内で囲まれたスペースに蛍光体を混合した樹脂を流し込むとよい。
【0036】
(実施例4)図5は、本実施例の透過型のスクリーン4を示す断面図である。前述の各実施例と同一の部分又は同一の機能を有する部分は同一の符号を付している。図示するように、透光性のベースフィルム6の上に蛍光体層5を形成し、その上にUVカットフィルター34を形成し、その上に透光性の保護層32を形成している。UVカットフィルター34は、紫外光からなる映像光33がスクリーン4を透過して観察者に直接照射されないようにすることの他に、紫外光を含む外光が入射して蛍光体が発光しないようにするために設けている。UVカットフィルターとあわせて、外光カットフィルターを設けると、黒色系の色再現性があがり、コントラストの上昇につながる。ただし、輝度低下のディメリットもあるため、輝度重視の用途の場合等、設けないほうがよい時もある。
【0037】
スクリーン4の背面から入射した映像光は、映像データの各色に対応して赤蛍光体層5R、緑蛍光体層5G、青蛍光体層5Bにそれぞれ入射し、画像光の強度に応じて赤色光35R、緑色光35G、青色光35Bをそれぞれ発光する。観察者は映像光が入射する入射側と反対の方向から画像を見ることができる。」

上記記載事項アないしウの記載内容からして、引用例1には、
「ピーク波長が380nm?410nmの近紫外光を使用する光源2から入射した入射光を映像データに基づいて映像光に変換する光弁素子と、前記映像光が入射されるスクリーンを備える画像表示装置において、前記スクリーンは、赤色の光を発光する赤蛍光体層5R、緑色の光を発光する緑蛍光体層5G、青色の光を発光する青蛍光体層5Bがストライプ状ラインに形成された蛍光体層5を備え、赤蛍光体層5Rには、La_(2)O_(2)S:Euを使用することができ、緑蛍光体層5Gには、BaMgAl_(10)O_(17):Eu,Mnを使用することができ、青蛍光体層5Bには、(Sr,Ca,Ba,Mg)_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Euを使用することができる、前記入射した映像光の波長とは異なる波長の光を散乱する画像表示装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(b)原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-96133号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

記載事項エ
「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に本発明の白色LEDの一例を示す断面図を示した。図1aは発光ダイオード、bは樹脂に埋め込まれた蛍光体層を、cは発光ダイオード及び蛍光体の発光を外部へ導く反射層を、dは発光部を支える樹脂枠を示している。LEDランプに印加された電気エネルギーは発光ダイオードにより紫外光あるいは紫色光に変換され、それらの光が発光ダイオード上部の蛍光体層によりより長波長の光に変換され、総計として白色光がLEDランプ外へ放出される仕組みになっている。
紫外線発光ダイオードまたは紫色発光ダイオードはInGaN系、GaN系、AlGaN系のダイオードなど様々なものが適用可能である。特に発光波長のピーク値が360?420nmの発光ダイオードであると、後述の蛍光体との組合せにより、高輝度かつ色再現性のより優れた白色LEDを為し得ることができる。
【0012】
蛍光体層bに用いる蛍光体としては可視光発光蛍光体を3種以上用い、予め結合剤で結合されていることが重要である。具体的には、その発光スペクトルが440nm以上460nm以下の青色部、510nm以上530nm以下の緑色部、620nm以上640nm以下の赤色部にそれぞれピーク値を有する蛍光体を用い、結合剤で結合する。つまり、ピーク波長440nm以上460nm以下の青色蛍光体、ピーク波長510nm以上530nm以下の緑色蛍光体、ピーク波長620nm以上640nm以下の赤色蛍光体をそれぞれ用いることにより可視光発光蛍光体が3種となり、これらを結合剤で結合する。また、同じ色の蛍光体を2種以上用いれば、可視光発光蛍光体が3種以上となる。
例えば図1のような白色LEDの場合、発光ダイオードaに印加された電気エネルギーは発光ダイオードにより紫外光(あるいは紫色光)に変換され、それらの光が発光ダイオード上部の蛍光体層によりより長波長の光に変換され、総計として白色光がLED外へ放出される仕組みになっている。
なお、本発明では発光ダイオードaに用いられる紫外線発光ダイオードまたは紫色発光ダイオードは発光ダイオードと表記し、完成した白色発光ダイオードに関しては白色LEDと表記する。
【0013】
図2に、図1のような構成の本発明の白色LEDの発光スペクトルの一例を示した。電流値20mAでピーク値400nm紫外線発光ダイオードを発光させ蛍光体により色度(0.253,0.238)の白色光に変換した時のものである。447nmの青色部、518nmの緑色部、623nmの赤色部にピーク値を有し、さらに各ピークの半値幅がそれぞれ50nm以下であることを特徴としている。
図3には本発明の白色LEDの発光を液晶ディスプレイ(液晶表示装置)で使われる一般的な青色、緑色、赤色のカラーフィルターを通しその発光色をCIE色度図にプロットしたものである。その色度図において青色、緑色、赤色の発光点を結んで得られる三角形の内部の色度の光をその液晶ディスプレイは表現できることを意味している。
三角形の面積が広いほうが多くの色度の光を表現でき、その液晶ディスプレイは色再現域が広い(色再現性が良い)ことになる。図3には従来の冷陰極管を用いた液晶ディスプレイの色再現域も示されているが、明らかに本発明の色再現域の方が広く優れたものであることが分かる。
【0014】
図3には同時に理想的な色再現域を示す国際標準(NTSC)も示した。色再現域の広さはこのNTSCの三角形の面積を100としたときの相対値で示され、本発明の液晶ディスプレイの色再現域は98であるのに対し従来の冷陰極管液晶ディスプレイのそれは65であった。
上記のように青色部、緑色部、赤色部のピーク値の半値幅が50nm以下であることが好ましい。例えば、図4に、本発明の蛍光体を組合せて得られる白色LEDにおいて、青色・緑色・赤色のピーク値の半値幅が50nm以下のもの(製品1)と一部の半値幅が50nmを超えたもの(製品2)を用意し、その発光スペクトルを比較した。また、製品1および製品2を用いた液晶ディスプレイの色再現域を図5に示した。これらの色再現域は対NTSCで製品1が98であり、製品2が87であった。
製品2の色再現域は冷陰極管のそれよりは優れているものの、製品1の色再現域よりは劣っている。その理由は製品2のスペクトルが本発明と同様447nmの青色部、518nmの緑色部、623nmの赤色部にピーク値を有しているものの、青色ピークの半値幅が60nmと広く青色成分の純度が悪いためである。なお、各ピークの半値幅はすべてが50nm以下であることが最も好ましいが、半値幅の最大値は80nm以下であれば実用に値する。特に青色・緑色・赤色のうち1種のみが半値幅80nmで、残り2種が50nm以下であれば色再現域は対NTSCで80以上とすることができる。従って、各ピーク値の半値幅は、好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下となる。
上記のように、440nm以上460nm以下の青色部、510nm以上530nm以下の緑色部、620nm以上640nm以下の赤色部の各ピーク値を具備し、その半値幅が70nm以下、さらには50nm以下の特性を具備する蛍光体を用いることにより、高輝度を具備し、かつ色再現性の優れた白色LEDを為し得ることができる。
【0015】
次に、蛍光体について説明する。蛍光体の組成については、上記特性を具備するものであれば特に限定されるものではないが、好ましい一例として次のものが挙げられる。
青色発光蛍光体としては
一般式1:(Sr_(1-x-y)Ba_(x)Ca_(y)Eu_(z))_(10)(PO_(4))_(6)・Cl_(2)
(式中x、y、zはx<0.2、y<0.1、0.005<z<0.1)で表されるユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体が挙げられる。一般式1においてx値およびy値は0(ゼロ)を含むものとする。
また、緑色発光蛍光体としては
一般式2:(Ba_(1-x-y-z)Sr_(x)Ca_(y)Eu_(z))(Mg_(1-u)Mn_(u))Al_(10)O_(17)
(式中x、y、z、uはx<0.5、y<0.1、0.15<z<0.4、0.3<u<0.6)で表されるユーロピウム、マンガン付活アルミン酸塩蛍光体が挙げられる。なお、一般式2においてx値およびy値は0(ゼロ)を含むものとする。
また、赤色発光蛍光体として一般式3:(La_(1-x-y)Eu_(x)M_(y))_(2)O_(2)S
(式中Mは元素Sb,Snの少なくとも1種、x及びyは0.01<x<0.15,y<0.03)で表わされるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体が挙げられる。なお、一般式3においてy値は0(ゼロ)を含むものとする。
【0016】
蛍光体の平均粒径は特に限定されるものではないが平均粒径3μm以上が好ましい。平均粒径が3μm以上、つまりは粒径が大きい方が高輝度を得やすい。平均粒径の上限については特に限定は無く、白色LEDの構造に合わせて適宜決めるものとするが、あまり大きすぎると均一に混ざり難いことから上限は平均粒径50μm以下が好ましい。また、各蛍光体の混合比率については目的とする色度になるような比率であれば任意であるが、白色LEDを得るためには青色蛍光体を15?25wt%、緑色蛍光体を15?25wt%、赤色蛍光体が残部(青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体の合計が100wt%)が好ましい。
【0017】
これらの可視光発光蛍光体を予め結合剤で結合してから樹脂と混ぜ合わせて混合蛍光体を作製し、出来上がった混合蛍光体を、発光ダイオード上に塗布し、樹脂を固めることにより、白色LEDを形成することができる。予め蛍光体を結合してから用いることで、色度のばらつきを低減することができる。例えば、白色LEDランプを構成する青色、緑色、および赤色発光蛍光体のうち、赤色発光蛍光体が青色および緑色発光蛍光体に比べて比重が大きい場合、これら3色の蛍光体を単に混合しただけでは、樹脂の硬化処理前に赤色発光蛍光体だけが早く沈降してしまう。このような沈降速度の差に起因する蛍光体の分散状態の不均一性が、発光色度のばらつきを生じさせていたものと考えられる。そこで、青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体を予め一体化した状態で、透明樹脂に分散させることによって、各蛍光体の透明樹脂中での分散状態を均一化させることができる。
上述した青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体を予め結合した蛍光体は、例えば以下のようにして得ることができる。まず、青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体を水に投入して懸濁液とする。この懸濁液を撹拌しながら、無機結合剤として微粉化したアルカリ土類ホウ酸塩等を加え、この状態で一定時間撹拌する。無機結合剤は青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体の合計量に対して0.01?0.3質量%の割合で添加することが好ましい。この後、撹拌を停止して蛍光体を沈降させ、ろ過、乾燥、さらに300℃以上の温度で数時間ベーキングしたものに篩分け等の処理を施すことによって、複数の蛍光体を結合した蛍光体を得ることができる。また、青色、緑色、赤色の各色発光蛍光体にアクリル樹脂等の有機結合剤を各色発光蛍光体の合計量に対して、例えば0.01?0.3質量%の割合で添加、混合し、乾燥後篩分け等の処理を施すことによっても得ることができる。
なお、白色LEDに用いる基板や金属枠等の構成は任意である。
以上のような本発明の白色LEDの製造方法は高輝度を維持しつつ色再現性も優れており、発光色度のばらつきを低減することから、携帯電話やモバイル等の携帯通信機器、パーソナルコンピュータ周辺機器、OA機器、家庭用電気機器、オーディオ機器、各種スイッチ、バックライト用光源表示板等の各種表示装置に用いられる液晶表示装置のバックライトの製造方法に有効であり、それを用いた液晶表示装置の製造方法は高輝度かつ色再現性が優れ、発光色度のばらつきを低減した、高品質な製品が提供できる。特に、色度ばらつきが小さいことから白色LEDランプを複数個用いるバックライトの製造方法に用いたとしても均一な白色を有する面光源を得ることができる。従って、それを用いた液晶表示装置の特性も向上する。また、本発明のバックライトの製造方法は、サイドライト方式、直下型方式どちらでも適用できる。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(a)引用発明の「ピーク波長が380nm?410nmの近紫外光を使用する光源2」と、本願補正発明の「波長365nm以上420nm以下の近紫外レーザー光を発生する近紫外レーザー光発生源」は、「波長365nm以上420nm以下の近紫外光を発生する光源」である点で共通している。

(b)引用発明の「赤色の光を発光する赤蛍光体層5R、緑色の光を発光する緑蛍光体層5G、青色の光を発光する青蛍光体層5Bがストライプ状ラインに形成された蛍光体層5を備え」た「スクリーン」は、本願補正発明の「青色蛍光体層と緑色蛍光体層と赤色蛍光体層とがストライプ状に形成されるとともに、所定の順に配列された蛍光体スクリーン」に相当し、引用発明の「画像表示装置」は、本願補正発明の「表示装置」に相当する。

(c)引用発明の「赤蛍光体層5Rには、La_(2)O_(2)S:Euを使用することができ、緑蛍光体層5Gには、BaMgAl_(10)O_(17):Eu,Mnを使用することができ、青蛍光体層5Bには、(Sr,Ca,Ba,Mg)_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2):Euを使用することができる」ことと、本願補正発明の「前記青色蛍光体は、一般式:(Sr_(1-x-y-z),Ba_(x),Ca_(y),Eu_(z))_(5)(PO_(4))_(3)Cl(式中、x、yおよびzは0≦x<0.3、0≦y<0.3、0.001<z<0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体であり、前記緑色蛍光体は、一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))(Mg_(1-y),Mn_(y))Al_(10)O_(17)(式中、xおよびyは0.04<x<0.5、0.1<y<0.6を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体と、一般式:(Sr_(1-x-y),Ca_(x),Eu_(y))Ga_(2)S_(4)(式中、xおよびyは0≦x<0.2、0.005<y<0.3を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活硫化ストロンチウムガリウム蛍光体とから選ばれる少なくとも1種であり、前記赤色蛍光体は、一般式:(La_(1-x-y),Eu_(x),Sm_(y))_(2)O_(2)S(式中、xおよびyは0.01<x<0.2、0≦y≦0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体であ」ることは、「前記青色蛍光体は、ユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体であり、前記緑色蛍光体は、一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))(Mg_(1-y),Mn_(y))Al_(10)O_(17)で表される組成を有するユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体であり、前記赤色蛍光体は、一般式:(La_(1-x-y),Eu_(x),Sm_(y))_(2)O_(2)S(式中、y=0である)で表される組成を有するユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体であ」る点で共通している。

上記(a)ないし(c)に記載したことからして、本願補正発明と引用発明は、
「波長365nm以上420nm以下の近紫外光を発生する光源と、青色蛍光体層と緑色蛍光体層と赤色蛍光体層とがストライプ状に形成されるとともに、所定の順に配列された蛍光体スクリーンとを備えた表示装置において、
前記青色蛍光体は、ユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体であり、
前記緑色蛍光体は、
一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))(Mg_(1-y),Mn_(y))Al_(10)O_(17)で表される組成を有するユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体であり、
前記赤色蛍光体は、
一般式:(La_(1-x-y),Eu_(x),Sm_(y))_(2)O_(2)S
(式中、y=0である)で表される組成を有するユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体である表示装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1
本願補正発明では、近紫外光を発生する光源が、レーザー光を発生するレーザー光発生源であるのに対し、引用発明では、近紫外光を発生する光源が、レーザー光を発生するレーザー光発生源ではない点。

相違点2
本願補正発明では、青色、緑色、赤色の各蛍光体の平均粒径が3μm以上15μm以下であるのに対し、引用発明では、青色、緑色、赤色の各蛍光体の平均粒径が不明である点。

相違点3
本願補正発明では、青色蛍光体は、一般式:(Sr_(1-x-y-z),Ba_(x),Ca_(y),Eu_(z))_(5)(PO_(4))_(3)Cl(式中、x、yおよびzは0≦x<0.3、0≦y<0.3、0.001<z<0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体であり、緑色蛍光体は、一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))(Mg_(1-y),Mn_(y))Al_(10)O_(17)(式中、xおよびyは0.04<x<0.5、0.1<y<0.6を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体と、一般式:(Sr_(1-x-y),Ca_(x),Eu_(y))Ga_(2)S_(4)(式中、xおよびyは0≦x<0.2、0.005<y<0.3を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活硫化ストロンチウムガリウム蛍光体とから選ばれる少なくとも1種であり、赤色蛍光体は、一般式:(La_(1-x-y),Eu_(x),Sm_(y))_(2)O_(2)S(式中、xおよびyは0.01<x<0.2、0≦y≦0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体であるのに対し、引用発明では、青色蛍光体は、ユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体ではあるものの一般式:(Sr_(1-x-y-z),Ba_(x),Ca_(y),Eu_(z))_(5)(PO_(4))_(3)Clで表される組成を有するものではなく、また、緑色蛍光体と赤色蛍光体は、それぞれ一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))(Mg_(1-y),Mn_(y))Al_(10)O_(17)、一般式:(La_(1-x-y),Eu_(x),Sm_(y))_(2)O_(2)Sを満たすものの式中のx,yの数値範囲が不明である点。

相違点4
本願補正発明では、表示装置で得られる色再現域が対NTSC比76%以上であるのに対し、引用発明では、対NTSC比が不明である点。

(4)当審の判断
上記各相違点について検討する。
相違点1について
蛍光体スクリーンに画像を形成するための光源として、UVレーザー光を発生するレーザー光発生源を用いることは特表2008-538145号公報(【0031】?【0035】等参照)、特開2000-180960号公報(【0020】、【0021】等参照)にも記載されているように周知技術であり、引用発明の光源に代えて周知のUVレーザー光を発生するレーザー光発生源を用いて、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。

相違点2について
引用例2にも記載されているように、高輝度を得やすくするために蛍光体の平均粒径は3μm以上とした方が好ましいことは周知技術(上記記載事項エの【0016】参照)である。また、蛍光体の平均粒径には何らかの上限値があることも自明であり、しかも引用例1には平均粒径ではないが蛍光体粒子の粒径を5μm?50μmとすることが記載されているのであるから、引用発明の蛍光体の平均粒径を5μm?50μmの範囲内の適当な大きさの粒径となるようにする程度は当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。
そして、本願補正発明の「3μm」、「15μm」に格別臨界的意味がないことも考慮すれば、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。

相違点3、4について
引用例2には、白色発光LEDの蛍光体ではあるが、青色発光蛍光体として、一般式1:(Sr_(1-x-y)Ba_(x)Ca_(y)Eu_(z))_(10)(PO_(4))_(6)・Cl_(2)(式中x、y、zはx<0.2、y<0.1、0.005<z<0.1)で表されるユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体、緑色発光蛍光体として、一般式2:(Ba_(1-x-y-z)Sr_(x)Ca_(y)Eu_(z))(Mg_(1-u)Mn_(u))Al_(10)O_(17)(式中x、y、z、uはx<0.5、y<0.1、0.15<z<0.4、0.3<u<0.6)で表されるユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体(x値およびy値は0(ゼロ)を含む)、赤色発光蛍光体として、一般式3:(La_(1-x-y)Eu_(x)M_(y))_(2)O_(2)S(式中Mは元素Sb,Snの少なくとも1種、x及びyは0.01<x<0.15,y<0.03)で表わされるユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体(y値は0(ゼロ)を含む)と、本願補正発明の蛍光体の一般式及び式中のx、y、zの数値範囲を満たす蛍光体の組み合わせが記載されており、この蛍光体を用いた白色LEDをバックライトに用いた液晶ディスプレイのNTSC比が、製品1は98、製品2は87と色再現性の優れた白色LEDを得ることができることが記載されている。(上記記載事項エ参照)
そして、引用発明においても色再現性をより高くしたいことは自明な課題であるし、引用例2に記載された一般式1?3の蛍光体は、引用発明の蛍光体と同じユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体、ユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体、ユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体の組み合わせからなるものであるから、色再現性をより高くするために引用発明の蛍光体として引用例2に記載された一般式1?3の蛍光体を採用することは当業者であれば容易になし得ることである。また、採用する際に引用例2に記載された一般式1?3を満たす蛍光体の中から、NTSC比が76%以上となるものを採用するようにする程度は当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。
したがって、上記相違点3、4に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者であれば容易になし得ることである。

また、本願補正発明の効果は、引用発明、引用例1、2に記載された事項及び周知技術から予測し得る範囲内のものであり、格別のものとは認め難い。

よって、本願補正発明は、引用発明、引用例1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年11月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「波長365nm以上420nm以下の近紫外レーザー光を発生する近紫外レーザー光発生源と、青色蛍光体層と緑色蛍光体層と赤色蛍光体層とがストライプ状に形成されるとともに、所定の順に配列された蛍光体スクリーンとを備えた表示装置において、
前記青色蛍光体は、
一般式:(Sr_(1-x-y-z),Ba_(x),Ca_(y),Eu_(z))_(5)(PO_(4))_(3)Cl
(式中、x、yおよびzは0≦x<0.3、0≦y<0.3、0.001<z<0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体と、
一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))MgAl_(10)O_(17)
(式中、xは0<x<0.3を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体とから選ばれる少なくとも1種であり、
前記緑色蛍光体は、
一般式:(Ba_(1-x),Eu_(x))(Mg_(1-y),Mn_(y))Al_(10)O_(17)(式中、xおよびyは0.04<x<0.5、0.1<y<0.6を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびマンガン付活アルミン酸塩蛍光体と、
一般式:(Sr_(2-x-y-z-w),Ba_(x),Mg_(y),Mn_(z),Eu_(w))SiO_(4)
(式中、x、y、zおよびwは0.05<x<1、0≦y<0.2、0≦z<0.009、0.03<w<0.3を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびマンガン付活アルカリ土類マグネシウム珪酸塩蛍光体と、
一般式:ZnS:Au_(x),Al_(y)
(式中、xおよびyは0.0002≦x≦0.015、0.0001≦y≦0.0012を満たす数である)で表される組成を有する金およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体と、
一般式:(Sr_(1-x-y),Ca_(x),Eu_(y))Ga_(2)S_(4)
(式中、xおよびyは0≦x<0.2、0.005<y<0.3を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活硫化ストロンチウムガリウム蛍光体と、
一般式:(Sr_(3-x),Eu_(x))Si_(y)Al_(z)O_(v)N_(w)
(式中、x、y、z,vおよびwは0≦x<0.2、12<y<14、2<z<4、1<v<3、20<w<22を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活酸窒化ストロンチウムシリコンアルミニウム蛍光体とから選ばれる少なくとも1種であり、
前記赤色蛍光体は、
一般式:(La_(1-x-y),Eu_(x),Sm_(y))_(2)O_(2)S
(式中、xおよびyは0.01<x<0.2、0≦y≦0.2を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体と、
一般式:(Ca_(1-x),Eu_(x))AlSiN_(3)
(式中、xは0.005<x<0.03を満たす数である)で表される組成を有するユーロピウム付活窒化カルシウムアルミニウムシリコン蛍光体とから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする表示装置。」

4.引用例
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用例の記載事項は、上記「2.」「(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明の「青色、緑色、赤色の各蛍光体」及び「表示装置」についての限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「2.」「(4)」に記載したとおり、引用発明、引用例1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例1、2に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-29 
結審通知日 2014-11-04 
審決日 2014-11-18 
出願番号 特願2008-306475(P2008-306475)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
P 1 8・ 575- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 土屋 知久
北川 清伸
発明の名称 表示装置  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  
代理人 特許業務法人サクラ国際特許事務所  

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