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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1297609
審判番号 不服2013-21010  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-29 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2008-329369「プロジェクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日出願公開、特開2010-152046〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年12月25日の出願であって、平成25年7月29日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、同年10月29日に請求された拒絶査定不服審判であって、当審において、平成26年9月5日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年11月6日付けで意見書が提出されるととともに、手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成26年11月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
光源光を射出する光源と、
前記光源から射出された光源光を複数の部分光束に分割する第1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイから射出された前記複数の部分光束を集光する第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイから射出された前記複数の部分光束を対象とする照明領域に重畳させるコンデンサレンズと、
前記コンデンサレンズを経た光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルと、
を備え、
前記コンデンサレンズは、前記重畳とともにテレセントリックな特性の照明を実現する単レンズであり、
前記第2レンズアレイから射出された光束を第1色光と他の色光とに分離する第1色分離ミラーと、前記他の色光のうち、第2色光と第3色光とを分離する第2色分離ミラーと、前記第1色分離ミラーで反射された前記第1色光を再度反射して光路を折り曲げる第1折曲ミラーと、前記第2分離ミラーを透過した前記第3色光を反射して光路を折り曲げる第2及び第3折曲ミラーとを有する色分離導光光学系とをさらに備え、
前記液晶パネルは前記第1色光を変調する第1液晶パネルと前記第2色光を変調する第2液晶パネルを備え、
前記コンデンサレンズは、前記第1色分離ミラーと前記第1折曲ミラーとの間、及び前記第1色分離ミラーと前記第2色分離ミラーとの間であり、前記第2レンズアレイの射出端面から前記第1及び第2液晶パネルの光変調面までの光路の長さを3等分した区間のうち中間の区間内に配置され、
前記第2レンズアレイと前記第1液晶パネルとの間、及び前記第2レンズアレイと前記第2液晶パネルとの間には、レンズとして前記コンデンサレンズのみが配置されているプロジェクタ。」

3 引用刊行物
(1)引用刊行物1
当審における平成26年9月5日付けの拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された「特開2008-165136号公報」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)
a 発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光を液晶ライトバルブによって変調し、変調された像光を投射するプロジェクタに関する。」
「【0008】
上記プロジェクタでは、重畳レンズから第1液晶ライトバルブまでの光路において、第1色分離ミラーと折曲ミラーとの間の第1区間にのみ結合レンズを設けているので、この結合レンズによって第1色光に関する照明光学系のFナンバーを高い自由度で調整することができる。この際、従来第1液晶ライトバルブの直前に配置されていたフィールドレンズに代えて結合レンズを設けることになるので、色分離導光光学系等を構成するレンズ数の増加を防止でき、コストの増加や装置の大型化を防止できる。さらに、上記プロジェクタでは、フィールドレンズに代えて結合レンズを組み込むので、第1液晶ライトバルブの周辺で照明光が大きな入射角となることを防止でき、第1色光に関する照明光学系のテレセントリック性を確保することができる。」
「【0011】
また、本発明の別の態様によれば、第1区間に配置される結合レンズが、重畳レンズの最終端面から第1液晶ライトバルブの光変調面までの距離をLとした場合に、重畳レンズの最終端面から(1/4)L以上(3/4)L以下の位置に配置される正の単レンズである。
【0012】
第1区間に配置される結合レンズが重畳レンズの最終端面から(1/4)L未満の位置に配置されると、結合レンズが第1液晶ライトバルブから離れることから、重畳レンズを大きくすることなく照明光学系のFナンバーを小さくし、液晶ライトバルブ上に第1レンズアレイの像を結像させようとした場合、結合レンズの屈折力を小さくせざるを得ないので、第1液晶ライトバルブにおける光線はテレセントリックな状態から大きく外れ、重畳レンズや結合レンズが大型となりそれに伴って第2レンズアレイも大型になる。一方、第1区間に配置される結合レンズが重畳レンズの最終端面から(3/4)Lを超える位置に配置されると、結合レンズが第1液晶ライトバルブに近づくことから、照明光学系のFナンバーを小さくし、第1液晶ライトバルブに第1レンズアレイの像を結像させようとすると、結合レンズのパワーが大きくなり過ぎて、第1液晶ライトバルブにおける照明光はテレセントリックな状態から大きく外れ、収差も大きくなる。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係るプロジェクタの光学系の構成を説明する概念図である。
【0016】
このプロジェクタ10は、光源から射出された光束を画像情報に応じて変調してカラーの光学像を形成し、この光学像をスクリーン上に拡大投射するための光学機器であり、光源ランプユニット20、照明光学系30、色分離導光光学系40、光変調部60、クロスダイクロイックプリズム70、及び投射光学系80を備えて構成される。ここで、光源ランプユニット20と照明光学系30とは、色分離導光光学系40等に入射させるための照明光を生成する照明装置を構成する。
【0017】
光源ランプユニット20は、ランプ本体21から周囲に放射された光束を集めて射出し、照明光学系30等を介して光変調部60を照明するための光源装置である。光源ランプユニット20は、発光管であるランプ本体21と、ランプ本体21から前方に射出された光源光を反射する球面状の副鏡22と、ランプ本体21から後方に射出された光源光を反射する楕円面状の主鏡23と、コリメート用の凹レンズ24とを備える。この光源ランプユニット20において、ランプ本体21から射出された略白色の光源光は、副鏡22を介して又は直接的に主鏡23に入射して前方側に反射され、凹レンズ24によって平行化された状態で照明光学系30側に射出される。なお、上述したランプ本体21には、各色の波長に亘って高輝度の光を射出することができる点で、通常高圧水銀ランプが使用されるが、光源ランプユニット20に組み込み可能なランプは、高圧水銀ランプに限らず、各種発光ランプとすることができ、LED等の固体発光素子とすることもできる。また、主鏡23としては、楕円面に限らず放物面等の反射面形状を有する各種リフレクタを用いることができる。放物面状の主鏡23を用いた場合、主鏡23の後段に凹レンズ24等を設けることなく、光源ランプユニット20から平行光束を射出させることができる。
【0018】
照明光学系30は、光源ランプユニット20から射出された光束を複数の部分光束に分割し対象とする照明領域に重畳して入射させることにより照度を均一化するとともに、照明光を特定方向の偏光に変換する光学系であり、第1マルチレンズ31、第2マルチレンズ32、偏光変換装置34、及び重畳レンズ35を備えている。
【0019】
第1マルチレンズ31は、レンズアレイとも呼ばれ、ランプ本体21から射出された光束を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有し、システム光軸OAと直交する面内にマトリックス状に配列される複数の小レンズを備えて構成される。各小レンズの輪郭形状は、後述する光変調部60を構成する液晶表示パネル61r,61g,61bの画像形成領域の形状とほぼ相似形をなすように設定されている。第2マルチレンズ32は、前述した第1マルチレンズ31により分割された複数の部分光束を集光する光学素子である。第2マルチレンズ32は、第1マルチレンズ31と同様にシステム光軸OAに直交する面内にマトリックス状に配列される複数の小レンズを備えているが、集光を目的としているため、各小レンズの輪郭形状が液晶表示パネル61r,61g,61bの画像形成領域の形状と正確に対応している必要はない。なお、以上の第1及び第2マルチレンズ31,32と、以下に説明する重畳レンズ35や結合レンズ43a,43bとは、入射光を分割と重ね合わせよって均一化する光インテグレータとして機能する。
【0020】
偏光変換装置34は、PBSアレイと位相差板とで形成されており、第1マルチレンズ31により分割された各部分光束の偏光方向を一方向の直線偏光に揃える役割を有する。この偏光変換装置34のPBSアレイは、詳細な図示を省略しているが、システム光軸OAに対して傾斜配置される偏光分離膜及び反射ミラーを交互に配列した構成を具備する。前者の偏光分離膜は、各部分光束に含まれるP偏光光束及びS偏光光束のうち、一方の偏光光束を透過し、他方の偏光光束を反射する。反射された他方の偏光光束は、後者の反射ミラーによって曲折され、一方の偏光光束の射出方向、すなわちシステム光軸OAに沿った方向に射出される。射出された偏光光束のいずれかは、偏光変換装置34の光束射出面にストライプ状に設けられる位相差板によって偏光変換され、すべての偏光光束の偏光方向が揃えられる。このような偏光変換装置34を用いることにより、ランプ本体21から射出される光束を、一方向の偏光光束に揃えることができるため、光変調部60で利用する光源光の利用率を向上させることができる。
【0021】
重畳レンズ35は、後述する色分離導光光学系40の結合レンズ43a,43bと協働することにより、第1マルチレンズ31、第2マルチレンズ32、及び偏光変換装置34を経た複数の部分光束を集光して、液晶表示パネル61r,61g,61bの画像形成領域上に重畳させて入射させる。つまり、両マルチレンズ31,32と重畳レンズ35とを経た照明光は、次段の色分離導光光学系40に設けた結合レンズ43a,43b等を経て光束の状態が調整され、光変調部60の照明領域すなわち各色の液晶表示パネル61r,61g,61bの画像形成領域を均一に重畳照明する。
【0022】
色分離導光光学系40は、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41b、赤色用反射ミラー42a、青色用反射ミラー42b,42c、結合レンズ43a,43b、リレーレンズ45,46、及びフィールドレンズ43rを備える。これらのうち、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bは、略白色の照明光を3原色に分離するための色分離光学系を構成する。各ダイクロイックミラー41a,41bは、透明基板上に、所定の波長領域の光束を反射し他の波長領域の光束を透過する波長選択作用を有する誘電体多層膜を形成することによって得た光学素子であり、システム光軸OAに対してともに傾斜した状態で配置される。第1色分離ミラーである第1ダイクロイックミラー41aは、赤・緑・青(R・G・B)の3色のうち赤色光LRを反射し、緑色光LGと青色光LBとを透過させる。また、第2色分離ミラーである第2ダイクロイックミラー41bは、入射した緑色光LG及び青色光LBのうち緑色光LGを反射し青色光LBを透過させる。結果的に、光源ランプユニット20から照明光学系30を経て色分離導光光学系40に入射した照明光は、第1ダイクロイックミラー41aで反射されてその先に延びる第1光路OP1に導かれる赤色光LRと、第1ダイクロイックミラー41aを透過して第2ダイクロイックミラー41bで反射されてその先に延びる第2光路OP2に導かれる緑色光LGと、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bを透過してその先に延びる第3光路OP3に導かれる青色光LBとに分離される。
【0023】
色分離導光光学系40の第1光路OP1上に配置された第1結合レンズ43aは、正のパワーを有する単レンズであり、照明光学系30の重畳レンズ35と協働して、照明光学系30の第1光路OP1に関するFナンバーを一定以下に小さくしつつ、照明光学系のテレセントリック性を確保している。なお、重畳レンズ35から第1液晶表示パネル61rまでの第1光路OP1において、第1ダイクロイックミラー41aと折曲ミラーである赤色用反射ミラー42aとの間の第1区間に結合レンズ43aを設けている。そして、重畳レンズ35から第1ダイクロイックミラー41aまでの区間や、赤色用反射ミラー42aから第1液晶表示パネル61rまでの区間においては、何等のレンズも設けていない。別の観点からすると、この結合レンズ43aは、重畳レンズ35の最終端面から第1液晶表示パネル61rの画像形成領域すなわち光変調面までの距離をL1とした場合に、重畳レンズ35の最終端面から(1/4)L1以上(3/4)L1以下の位置に配置される。
【0024】
色分離導光光学系40の第2光路OP2上に配置された第2結合レンズ43bは、正のパワーを有する単レンズであり、照明光学系30の重畳レンズ35と協働して、照明光学系30の第2光路OP2に関するFナンバーを一定以下に小さくしつつ、照明光学系のテレセントリック性を確保している。なお、重畳レンズ35から第2液晶表示パネル61gまでの第2光路OP2において、第1ダイクロイックミラー41aと第2ダイクロイックミラー41bとの間の第2区間に結合レンズ43bを設けている。そして、重畳レンズ35から第1ダイクロイックミラー41aまでの区間や、第2ダイクロイックミラー41bから第2液晶表示パネル61gまでの区間においては、何等のレンズも設けていない。別の観点からすると、この結合レンズ43bは、重畳レンズ35の最終端面から第2液晶表示パネル61gの画像形成領域すなわち光変調面までの距離をL2とした場合に、重畳レンズ35の最終端面から(1/4)L2以上(3/4)L2以下の位置に配置される。
【0025】
色分離導光光学系40の第3光路OP3上に配置された一対のリレーレンズ45,46は、入射側の第1のリレーレンズ45の直前に形成された像を、略そのまま射出側のフィールドレンズ43rに伝達することにより、光の拡散等による光の利用効率の低下を防止している。つまり、両リレーレンズ45,46は、青色用の第3光路OP3が赤色用の第1光路OP1や緑色用の第2光路OP2よりも相対的に長くなることを補償したものである。青色用反射ミラー42b,42cは、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bを通過した青色光LBを、2度に亘って折り返して液晶表示パネル61b側に導くためのものである。
【0026】
光変調部60は、3色の照明光LR,LG,LBがそれぞれ入射する3つの液晶表示パネル61r,61g,61bを備える。ここで、赤色光LR用の液晶表示パネル61rと、これを挟む一対の偏光フィルタ62r,62rとは、照明光を画像情報に基づいて2次元的に輝度変調するための液晶ライトバルブを構成する。また、緑色光LG用の液晶表示パネル61gと、これを挟む一対の偏光フィルタ62g,62gも、緑色用の液晶ライトバルブを構成し、同様に、青色光LB用の液晶表示パネル61bと、一対の偏光フィルタ62b,62bも、青色用の液晶ライトバルブを構成する。各液晶表示パネル61r,61g,61bは、一対の透明なガラス基板間に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像信号に従って、それぞれに入射した偏光光束の偏光方向を変調する。」
b 図面の記載
「【図1】


c 引用例1記載の発明
上記a及びbの記載事項によると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「光源ランプユニット20、照明光学系30、色分離導光光学系40、光変調部60、クロスダイクロイックプリズム70、及び投射光学系80を備えて構成されるプロジェクタ10であって、
光源ランプユニット20は、ランプ本体21から周囲に放射された光束を集めて射出し、照明光学系30等を介して光変調部60を照明するための光源装置であり、
照明光学系30は、
ランプ本体21から射出された光束を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有する第1マルチレンズ31と、
第1マルチレンズ31により分割された複数の部分光束を集光する光学素子である第2マルチレンズ32と、
結合レンズ43a,43bと協働することにより、第1マルチレンズ31、第2マルチレンズ32を経た複数の部分光束を集光して、液晶表示パネル61r,61g,61bの画像形成領域上に重畳させて入射させる重畳レンズ35と、を備え、
色分離導光光学系40は、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41b、赤色用反射ミラー42a、青色用反射ミラー42b,42c、結合レンズ43a,43b、リレーレンズ45,46、及びフィールドレンズ43rを備え、
光源ランプユニット20から照明光学系30を経て色分離導光光学系40に入射した照明光は、第1ダイクロイックミラー41aで反射されてその先に延びる第1光路OP1に導かれる赤色光LRと、第1ダイクロイックミラー41aを透過して第2ダイクロイックミラー41bで反射されてその先に延びる第2光路OP2に導かれる緑色光LGと、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bを透過してその先に延びる第3光路OP3に導かれる青色光LBとに分離され、
第1結合レンズ43aは、照明光学系30の重畳レンズ35と協働して、第1光路OP1に関するFナンバーを一定以下に小さくしつつ、照明光学系のテレセントリック性を確保しており、
第2結合レンズ43bは、照明光学系30の重畳レンズ35と協働して、第2光路OP2に関するFナンバーを一定以下に小さくしつつ、照明光学系のテレセントリック性を確保しており、
重畳レンズ35から第1液晶表示パネル61rまでの第1光路OP1において、第1ダイクロイックミラー41aと折曲ミラーである赤色用反射ミラー42aとの間に第1結合レンズ43aを設けており、重畳レンズ35から第1ダイクロイックミラー41aまでの区間や、赤色用反射ミラー42aから第1液晶表示パネル61rまでの区間においては、何等のレンズも設けておらず、
重畳レンズ35から第2液晶表示パネル61gまでの第2光路OP2において、第1ダイクロイックミラー41aと第2ダイクロイックミラー41bとの間に第2結合レンズ43bを設けており、重畳レンズ35から第1ダイクロイックミラー41aまでの区間や、第2ダイクロイックミラー41bから第2液晶表示パネル61gまでの区間においては、何等のレンズも設けておらず、
青色用反射ミラー42b,42cは、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bを通過した青色光LBを、2度に亘って折り返して液晶表示パネル61b側に導くためのものであり、
光変調部60は、3色の照明光LR,LG,LBがそれぞれ入射する3つの液晶表示パネル61r,61g,61bであって、与えられた画像信号に従って、それぞれに入射した偏光光束の偏光方向を変調する液晶表示パネル61r,61g,61bを備える、
プロジェクタ10。」

(2)引用刊行物2
当審における平成26年9月5日付けの拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された「特開2003-297103号公報」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶パネルを用いた投射型プロジェクタ装置に関する。この投射型プロジェクタ装置は、前面投射のいわゆる液晶プロジェクタや、投射型テレビといった分野に広く利用できる。」
「【0034】図1で説明した照明装置を出射した平行光束は、インテグレータ31としての第1のマルチレンズアレイと第2のマルチレンズアレイによって複数の二次光源に分割される。また、第2のマルチレンズアレイの直後にある偏光変換素子32によって自然光はP偏光とS偏光に分離され、分離直後の一方の光路に配置したλ/2板によって偏光方向をそろえられる。次に、結像レンズ33とコンデンサレンズ35によってインテグレータ31の二次光源像が液晶パネル36面に重畳し照射される。尚、結像レンズ33とコンデンサレンズ35は、それぞれ主に、重畳作用と、テレセントリック化の作用を受け持っているが、レンズ枚数は2枚である必要は必ずしも無く、3枚でも、また逆に1枚でレンズ位置を変えることでもこの作用の実現は可能である。」
b 図面の記載
「【図8】



4 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「光源ランプユニット20は、ランプ本体21から周囲に放射された光束を集めて射出し、照明光学系30等を介して光変調部60を照明するための光源装置であ」る構成は、本願発明の「光源光を射出する光源」「を備え」る構成に相当する。

(2)引用発明の「第1マルチレンズ31」は、本願発明の「第1レンズアレイ」に相当する。
そうすると、引用発明の「ランプ本体21から射出された光束を複数の部分光束に分割する光束分割光学素子としての機能を有する第1マルチレンズ31」「を備え」る構成は、本願発明の「光源から射出された光源光を複数の部分光束に分割する第1レンズアレイ」「を備え」る構成に相当する。

(3)引用発明の「第2マルチレンズ32」は、本願発明の「第2レンズアレイ」に相当する。
そうすると、引用発明の「第1マルチレンズ31により分割された複数の部分光束を集光する光学素子である第2マルチレンズ32」「を備え」る構成は、本願発明の「第1レンズアレイから射出された前記複数の部分光束を集光する第2レンズアレイ」「を備え」る構成に相当する。

(4)引用発明の「重畳レンズ35」と「第1結合レンズ43a」とからなるレンズ系、及び、「重畳レンズ35」と「第2結合レンズ43b」とからなるレンズ系と、本願発明の「コンデンサレンズ」とは、「重畳させるレンズ」で共通する。
そうすると、引用発明の「結合レンズ43a,43bと協働することにより、第1マルチレンズ31、第2マルチレンズ32を経た複数の部分光束を集光して、液晶表示パネル61r,61g,61bの画像形成領域上に重畳させて入射させる重畳レンズ35」「を備え、」「第1結合レンズ43aは、照明光学系30の重畳レンズ35と協働して、第1光路OP1に関するFナンバーを一定以下に小さくしつつ、照明光学系のテレセントリック性を確保しており、第2結合レンズ43bは、照明光学系30の重畳レンズ35と協働して、第2光路OP2に関するFナンバーを一定以下に小さくしつつ、照明光学系のテレセントリック性を確保して」いる構成と、本願発明の「第2レンズアレイから射出された前記複数の部分光束を対象とする照明領域に重畳させるコンデンサレンズ」「を備え、」「コンデンサレンズは、前記重畳とともにテレセントリックな特性の照明を実現する単レンズであ」る構成とは、「第2レンズアレイから射出された前記複数の部分光束を対象とする照明領域に重畳させるレンズを備え、前記重畳させるレンズは、前記重畳とともにテレセントリックな特性の照明を実現するレンズであ」る構成で共通する。

(5)引用発明の「第1ダイクロイックミラー41a」、「第2ダイクロイックミラー41b」、「赤色光LR」、「緑色光LG」、「青色光LB」、「色分離導光光学系40」、「赤色用反射ミラー42a」及び「青色用反射ミラー42b,42c」は、本願発明の「第1色分離ミラー」、「第2色分離ミラー」、「第1色光」、「第2色光」、「第3色光」、「色分離導光光学系」、「第1折曲ミラー」及び「第2及び第3折曲ミラー」にそれぞれ相当する。
また、引用発明は、「重畳レンズ35から第1液晶表示パネル61rまでの第1光路OP1において、第1ダイクロイックミラー41aと折曲ミラーである赤色用反射ミラー42aとの間に第1結合レンズ43aを設けて」いるものであるから、本願発明の「第1色分離ミラーで反射された前記第1色光を再度反射して光路を折り曲げる第1折曲ミラー」を「備え」る構成に相当する構成を有するものである。
さらに、引用発明は「色分離導光光学系40は、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41b、赤色用反射ミラー42a、青色用反射ミラー42b,42c、結合レンズ43a,43b、リレーレンズ45,46、及びフィールドレンズ43rを備え」る構成を有するものであるから、引用発明の「光源ランプユニット20から照明光学系30を経て色分離導光光学系40に入射した照明光は、第1ダイクロイックミラー41aで反射されてその先に延びる第1光路OP1に導かれる赤色光LRと、第1ダイクロイックミラー41aを透過して第2ダイクロイックミラー41bで反射されてその先に延びる第2光路OP2に導かれる緑色光LGと、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bを透過してその先に延びる第3光路OP3に導かれる青色光LBとに分離され、」「青色用反射ミラー42b,42cは、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bを通過した青色光LBを、2度に亘って折り返して液晶表示パネル61b側に導くためのものであ」る構成は、本願発明の「第2レンズアレイから射出された光束を第1色光と他の色光とに分離する第1色分離ミラーと、前記他の色光のうち、第2色光と第3色光とを分離する第2色分離ミラーと、前記第1色分離ミラーで反射された前記第1色光を再度反射して光路を折り曲げる第1折曲ミラーと、前記第2分離ミラーを透過した前記第3色光を反射して光路を折り曲げる第2及び第3折曲ミラーとを有する色分離導光光学系とを」「備え」る構成に相当する。

(6)引用発明の「3つの液晶表示パネル61r,61g,61b」は、本願発明の「液晶パネル」に相当する。
そうすると、引用発明の「光変調部60は、3色の照明光LR,LG,LBがそれぞれ入射する3つの液晶表示パネル61r,61g,61bであって、与えられた画像信号に従って、それぞれに入射した偏光光束の偏光方向を変調する液晶表示パネル61r,61g,61bを備える」構成と、本願発明の「コンデンサレンズを経た光束を画像情報に応じて変調する液晶パネル」「を備え、」「液晶パネルは前記第1色光を変調する第1液晶パネルと前記第2色光を変調する第2液晶パネルを備え」る構成とは、「重畳させるレンズを経た光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルを備え、液晶パネルは前記第1色光を変調する第1液晶パネルと前記第2色光を変調する第2液晶パネルを備える」構成で共通する。

上記(1)ないし(6)から、本願発明と引用発明は、
「光源光を射出する光源と、
前記光源から射出された光源光を複数の部分光束に分割する第1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイから射出された前記複数の部分光束を集光する第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイから射出された前記複数の部分光束を対象とする照明領域に重畳させるレンズと、
前記重畳させるレンズを経た光束を画像情報に応じて変調する液晶パネルと、
を備え、
前記重畳させるレンズは、前記重畳とともにテレセントリックな特性の照明を実現するレンズであり、
前記第2レンズアレイから射出された光束を第1色光と他の色光とに分離する第1色分離ミラーと、前記他の色光のうち、第2色光と第3色光とを分離する第2色分離ミラーと、前記第1色分離ミラーで反射された前記第1色光を再度反射して光路を折り曲げる第1折曲ミラーと、前記第2分離ミラーを透過した前記第3色光を反射して光路を折り曲げる第2及び第3折曲ミラーとを有する色分離導光光学系とをさらに備え、
前記液晶パネルは前記第1色光を変調する第1液晶パネルと前記第2色光を変調する第2液晶パネルを備えているプロジェクタ。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
重畳させるレンズが、本願発明は、「重畳とともにテレセントリックな特性の照明を実現する単レンズであ」って、「第1色分離ミラーと前記第1折曲ミラーとの間、及び前記第1色分離ミラーと前記第2色分離ミラーとの間であり、前記第2レンズアレイの射出端面から前記第1及び第2液晶パネルの光変調面までの光路の長さを3等分した区間のうち中間の区間内に配置され、前記第2レンズアレイと前記第1液晶パネルとの間、及び前記第2レンズアレイと前記第2液晶パネルとの間には、レンズとして前記コンデンサレンズのみが配置されている」のに対し、引用発明は、「重畳レンズ35」と「照明光学系30の重畳レンズ35と協働して、第1光路OP1に関する」「照明光学系のテレセントリック性を確保して」いる「第1結合レンズ43a」とからなるレンズ系、「重畳レンズ35」と「照明光学系30の重畳レンズ35と協働して、第2光路OP2に関する」「照明光学系のテレセントリック性を確保して」いる「第2結合レンズ43b」とからなるレンズ系であって、「重畳レンズ35から第1液晶表示パネル61rまでの第1光路OP1において、第1ダイクロイックミラー41aと折曲ミラーである赤色用反射ミラー42aとの間に第1結合レンズ43aを設けており、重畳レンズ35から第1ダイクロイックミラー41aまでの区間や、赤色用反射ミラー42aから第1液晶表示パネル61rまでの区間においては、何等のレンズも設けておらず、重畳レンズ35から第2液晶表示パネル61gまでの第2光路OP2において、第1ダイクロイックミラー41aと第2ダイクロイックミラー41bとの間に第2結合レンズ43bを設けており、重畳レンズ35から第1ダイクロイックミラー41aまでの区間や、第2ダイクロイックミラー41bから第2液晶表示パネル61gまでの区間においては、何等のレンズも設けて」いない点。

5 当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
液晶パネル36を用いたプロジェクタにおいて、インテグレータ31と液晶パネル36との間に位置する、重畳作用を受け持つ結像レンズ33と、テレセントリック化の作用を受け持つコンデンサレンズ35とからなるレンズ系を1枚のレンズとし、レンズ位置を変えることでも、該レンズ系と同様の作用を実現可能であることが、引用例2(【0034】、図8)に記載されている。
そして、引用発明及び引用例2記載の事項はともに、液晶パネルを用いたプロジェクタにおけるインテグレーターからの出射光を液晶パネルにテレセントリックに重畳するレンズ系である点で共通するものであるから、引用発明において、重畳レンズ35とテレセントリック性を確保する結合レンズ43aとを、また、重畳レンズ35とテレセントリック性を確保する結合レンズ43bとを、それぞれ1枚のレンズ、すなわち、単レンズとすることは、当業者が容易になし得たことである。また、その際に、レンズの位置をどの位置にするかは、当業者であれば、引用文献1に記載された、レンズを大きくすることなく、照明光学系のFナンバーを小さくすること、Fナンバーを小さくしても照明光学系のテレセントリック性を確保すること(【0008】、【0012】、【0013】)を考慮しながら適宜設計し得ることであるし、引用発明は、「重畳レンズ35から第1液晶表示パネル61rまでの第1光路OP1において、第1ダイクロイックミラー41aと折曲ミラーである赤色用反射ミラー42aとの間に第1結合レンズ43aを設けており、重畳レンズ35から第1ダイクロイックミラー41aまでの区間や、赤色用反射ミラー42aから第1液晶表示パネル61rまでの区間においては、何等のレンズも設けておらず、重畳レンズ35から第2液晶表示パネル61gまでの第2光路OP2において、第1ダイクロイックミラー41aと第2ダイクロイックミラー41bとの間に第2結合レンズ43bを設けており、重畳レンズ35から第1ダイクロイックミラー41aまでの区間や、第2ダイクロイックミラー41bから第2液晶表示パネル61gまでの区間においては、何等のレンズも設けて」いないものであるから、引用発明の第2マルチレンズ32と液晶表示パネル61rとの間、及び、第2マルチレンズ32と液晶表示パネル61gとの間に前記1枚の単レンズであるコンデンサレンズのみを配置して、その位置を、第1ダイクロックミラー41aと赤色用反射ミラー41aとの間、及び第1ダイクロックミラー41aと第2ダイクロックミラー41bとの間であり、第2マルチレンズ32の射出端面から第1液晶表示パネル61r及び第2液晶表示パネル61gの光変調面までの光路の長さを3等分した区間のうち中間の区間内に配置して、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
相違点については上記のとおりであり、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2記載の事項から当業者が予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-12 
結審通知日 2014-12-16 
審決日 2014-12-24 
出願番号 特願2008-329369(P2008-329369)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G03B)
P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 久則井口 猶二  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 北川 清伸
土屋 知久
発明の名称 プロジェクタ  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 渡辺 和昭  
代理人 宮坂 一彦  

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