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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1297625
審判番号 不服2013-25758  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-27 
確定日 2015-02-12 
事件の表示 特願2011- 17726号「太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 4月28日出願公開、特開2011- 86964号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、2007年8月24日(優先権主張2006年8月25日)を国際出願日とする特願2008-530969号(以下「原出願」という。)の一部を平成23年1月31日に新たな特許出願としたものであって、平成25年6月3日付けで拒絶理由が通知され、同年7月31日付けで意見書が提出されたが、同年10月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

2.平成25年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年12月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「隣接する太陽電池セルの表面上に形成された集電極を導電体によって接続することにより、互いに電気的に接続された太陽電池モジュールであって、
前記導電体は導電性粒子を含まない樹脂からなる接着剤により前記太陽電池セルの表面に接合され、
前記集電極と前記導電体とは当接している、
太陽電池モジュール。」
と補正された。

本件補正は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「樹脂からなる接着剤」について「導電性粒子を含まない樹脂からなる接着剤」と限定するものであり、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(2)引用例
原出願の優先日前に頒布された登録実用新案第3123842号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

記載事項ア
「【0001】
本考案は太陽電池モジュールに係り、特に複数の太陽電池素子が配線により電気的に接続されてなる太陽電池モジュールに関する。」

記載事項イ
「【0016】
次に、本考案の主要部である接着剤からなる接着部4による接続構造について説明する。図2は、図1に示す太陽電池モジュール1のA-A部における断面の一部を拡大して示した一部拡大断面図である。
【0017】
まず、本考案における太陽電池素子2のシリコン基板20は、例えば図2に示すように、p型シリコン基板23の受光面側にn型拡散層24が形成され、裏面側にp^(+)層(BSF層)25が形成されたものである。そして、フィンガー電極21aとバスバー電極21bとから構成される表面電極21はn型拡散層24上に形成されている。一方、裏面電極22はp^(+)層(BSF層)25上に形成されている。
【0018】
また、配線3は、その一端が太陽電池素子2(例えば、図2中、左側の太陽電池素子2)の表面電極21(バスバー電極21b)上に直接接触して配置されている。そして、接着部4はこれら表面電極21と配線3とを覆うようにして設けられている。なお、接着部4は、例えば図1に示すように、シリコン基板20にまで架かるようにして設けられていることが好ましい。
【0019】
一方、配線3は、その他端が他の太陽電池素子2(例えば、図2中、右側の太陽電池素子2)の裏面電極22上に直接接触して配置されている。そして、接着部4はこれら裏面電極22と配線3とを覆うようにして設けられている。
【0020】
このように表面電極21または裏面電極22と配線3とを直接接触させた状態でそれらを覆うように接着剤からなる接着部4を設けることで、表面電極21または裏面電極22と配線3とを容易に固定することができると共に、それらの電気的接続も確保することができる。
【0021】
そして、このような接続構造によれば、表面電極21または裏面電極22と配線3とを接着剤からなる接着部4により電気的接続を行いつつ固定することができるため、従来はハンダ接続法による接合のために必要とされていた銀電極を廃止することができ、容易かつ低コストに製造でき、また薄型なものとすることもできる。」

記載事項ウ
「【0032】
このようにして複数の太陽電池素子2を製造した後、複数の太陽電池素子2を配線3を用いて電気的に接続する。各太陽電池素子2の配線3による接続は、例えば図1に示すように、隣接する太陽電池素子2のうちの一方の太陽電池素子2の表面電極21(バスバー電極21b)と他方の太陽電池素子2の裏面電極22とを配線3により接続する。また、太陽電池素子2の表面電極21または裏面電極22への配線3の電気的接続および固定は、接着剤からなる接着部4により以下のようにして行うことができる。
【0033】
例えば、図2に示すように、表面電極21または裏面電極22上に配線3が直接接触され、それらを覆うように接着部4が設けられているものについては、以下のようにして行うことができる。まず、表面電極21または裏面電極22上に配線3を直接接触させて配置し、圧着ツール等を用いてこれらを押圧することにより一時的に固定しておく。そして、表面電極21または裏面電極22と配線3とを覆うように接着剤を滴下等により塗布し、この接着剤を加熱により硬化させて接着部4とする。接着部4を形成した後は圧着ツール等を取り外す。このようにすることで、接着部4により表面電極21または裏面電極22に配線3を直接接触させた状態で固定することができ、表面電極21または裏面電極22に配線3を電気的に接続することができる。」

記載事項エ
「【0044】
本考案に用いられる接着剤は、表面電極21または裏面電極22と配線3とを接着させて固定できるものであればよく、例えばベアチップの実装等に用いられる公知の接着剤が用いられる。このようなものとしては、例えばエポキシ樹脂と硬化剤とからなるものが好ましいものとして挙げられる。」

記載事項オ
「【0047】
接着剤には、導電性粒子および絶縁性粒子から選ばれる少なくとも一方が含有されていることが好ましい。接着剤に導電性粒子または絶縁性粒子が含有されていることで、接着剤(接着部4)と、配線3、表面電極21、裏面電極22等との間でアンカー効果が発揮され、それらの固定力が向上される。
【0048】
特に、表面電極21または裏面電極22と配線3とを共晶合金を形成させて接合する場合、共晶合金を形成するために比較的高温で加熱を行う必要があり、接着剤の硬化が速くなりすぎるためにボイドが発生しやすくなるが、接着剤に導電性粒子または絶縁性粒子が含有されていることで、このようなボイドの発生も抑制される。
【0049】
また、図2に示すように表面電極21または裏面電極22と配線3とが直接接触することにより電気的に接続されているものや、図5に示すようにバンプ3aを介して表面電極21または裏面電極22と配線3とが電気的に接続されているものについては接着剤に導電性粒子または絶縁性粒子のいずれが含有されていてもよいが、図4に示すように表面電極21または裏面電極22と配線3とが接着部4のみにより電気的に接続される場合には、表面電極21または裏面電極22と配線3との電気的接続を確保する必要から、接着剤には導電性粒子が含有されている必要がある。」

記載事項カ
「【図1】



記載事項キ
「【図2】



記載事項ア?キの記載内容からして、引用例1には、
「隣接する太陽電池素子2のうちの一方の太陽電池素子2の表面電極21(バスバー電極21b)と他方の太陽電池素子2の裏面電極22とを配線3により接続し、複数の太陽電池素子2が配線3により電気的に接続されてなる太陽電池モジュールであって、表面電極21または裏面電極22上に配線3を直接接触させ、表面電極21または裏面電極22と配線3とを覆うように絶縁性粒子が含有されているエポキシ樹脂と硬化剤とからなる接着剤を滴下等により塗布し、この接着剤を加熱により硬化させて接着部4とし、接着部4は太陽電池素子2のシリコン基板20にまで架かるようにして設けられている太陽電池モジュール。」
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明1を対比する。
(a)引用発明1の「太陽電池素子2」、「表面電極21(バスバー電極21b)」と「裏面電極22」、「配線3」、「太陽電池モジュール」は、それぞれ本願補正発明の「太陽電池セル」、「太陽電池セルの表面上に形成された集電極」、「導電体」、「太陽電池モジュール」に相当するから、引用発明1の「隣接する太陽電池素子2のうちの一方の太陽電池素子2の表面電極21(バスバー電極21b)と他方の太陽電池素子2の裏面電極22とを配線3により接続し、複数の太陽電池素子2が配線3により電気的に接続されてなる太陽電池モジュール」は、本願補正発明の「隣接する太陽電池セルの表面上に形成された集電極を導電体によって接続することにより、互いに電気的に接続された太陽電池モジュール」に相当する。

(b)引用発明1の「絶縁性粒子が含有されているエポキシ樹脂と硬化剤とからなる接着剤」は、本願補正発明の「導電性粒子を含まない樹脂からなる接着剤」に相当する。また、引用発明1の「表面電極21または裏面電極22と配線3とを覆うように」「接着剤を滴下等により塗布し、この接着剤を加熱により硬化させ」た「接着部4」が、「太陽電池素子2のシリコン基板20にまで架かるようにして設けられている」のであるから、引用発明1の「配線3」は「接着部4」によって「太陽電池素子2」の表面側に設けられた「シリコン基板20」に接合されているといえる。そうすると、引用発明1の「表面電極21または裏面電極22と配線3とを覆うように絶縁性粒子が含有されているエポキシ樹脂と硬化剤とからなる接着剤を滴下等により塗布し、この接着剤を加熱により硬化させて接着部4とし、接着部4は太陽電池素子2のシリコン基板20にまで架かるようにして設けられている」ことは、本願補正発明の「前記導電体は導電性粒子を含まない樹脂からなる接着剤により前記太陽電池セルの表面に接合され」ることに相当する。

(c)引用発明1の「表面電極21または裏面電極22上に配線3を直接接触させ」ることは、本願補正発明の「前記集電極と前記導電体とは当接している」ことに相当する。

上記(a)?(c)に記載したことからして、引用発明1と本願補正発明は、
「隣接する太陽電池セルの表面上に形成された集電極を導電体によって接続することにより、互いに電気的に接続された太陽電池モジュールであって、
前記導電体は導電性粒子を含まない樹脂からなる接着剤により前記太陽電池セルの表面に接合され、
前記集電極と前記導電体とは当接している、
太陽電池モジュール。」である点で一致し、両者の間に相違点はない。

よって、本願補正発明は、引用発明1であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成25年12月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。(以下同項記載の発明を「本願発明」という。)

「隣接する太陽電池セルの表面上に形成された集電極を導電体によって接続することにより、互いに電気的に接続された太陽電池モジュールであって、
前記導電体は樹脂からなる接着剤により前記太陽電池セルの表面に接合され、
前記集電極と前記導電体とは直接的な接合により電気的に接合されている、
太陽電池モジュール。」

4.引用例
原査定の拒絶理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された特開2005-244171号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

記載事項ア
「【0001】
本発明は、一方の電極となる基板の一主面上に、粒状光電変換体の多数個を配設してなる光電変換装置(以下、光電変換素子ともいう)および複数の光電変換素子同士を直列接続した光電変換アレイならびに光発電装置に関する。」

記載事項イ
「【0070】
図11は、光電変換体として粒状結晶半導体を使用した光電変換セルの一実施形態を示す断面図である。断面線は、図13のY-Yにとっている。
【0071】
光電変換セルは、基板1と、基板1の導体面上に配設された複数の結晶半導体粒子3と、結晶半導体粒子3の間隙に充填された絶縁体層4と、結晶半導体粒子3の上に設けられた半導体層5および透明導電層6とを有する。」

記載事項ウ
「【0084】
フィンガー電極7は、半導体層5および透明導電層6の抵抗を低くするために、半導体層5または透明導電層6の上に、平行に一定間隔で設けられる電極である。
【0085】
バスバー電極9は、図11に示すように、結晶半導体粒子3を基板1に溶着していない透明導電層6の平坦部分に設けられる。バスバー電極9は、銅箔10およびその上に被覆された無鉛半田層の半田11からなる。バスバー電極9の延長部は、後述するように、光電変換セル同士を接続するための接続用電極9aとなっている。
【0086】
図12は、バスバー電極9と、フィンガー電極7との接続状態を示す断面図である。断面は、図11の一点鎖線X-X線にとっている。この断面図に示されるように、基板1の上に、絶縁体層4、半導体層5、透明導電層6がこの順に形成されている。透明導電層6の上には、フィンガー電極7が紙面に垂直な方向に形成されている。そして、バスバー電極9は、フィンガー電極7に直角に、透明導電層6およびフィンガー電極7と、異方性導電接着剤8で接合される。
【0087】
フィンガー電極7の電極材料としては、金,銀,銅等の低抵抗な導体粉7bと、少量の溶媒を含む熱硬化型樹脂からなるバインダー7aとを含む低温硬化の導電性ペーストを用いる。熱硬化型樹脂の硬化に要する温度は、400°C以下であることが望ましい。熱硬化型樹脂の硬化に要する温度が400°Cを超えると、半導体層5が変質するために十分な変換効率が得られなくなる。
【0088】
ここで、熱硬化型樹脂とはシリコーン系,エポキシ系,ウレタン系,フェノール系などの樹脂であるが、エポキシ系樹脂は他の樹脂材料に比べて低抵抗で耐候性に優れており、また透明導電層6との密着性、作業性などの点から最適である。例えば、Agを80?95重量%,エポキシ樹脂を5?20重量%でフィンガー電極7を構成するとよい。
【0089】
フィンガー電極7は、このように熱硬化型の導電性材料からなるので、低温で形成が可能であり、透明導電層6の材料として好適なITOを使用できる。フィンガー電極7の形成方法としては、スクリーン印刷法、ディスペンサ等による方法がある。
【0090】
バスバー電極9は、前述したように銅箔10およびその上に被覆された半田11からなるが、銅箔10は、特に銅またはアルミニウムを主成分とするものがよい。半田11は錫を主成分とするものがよい。無鉛半田層の半田11は、銅箔10表面の酸化、腐食を防止する効果があるので、外観が良好で安定な電気特性を有する光電変換セルを提供できる。また、金属箔で反射された光により微小ながら発電効率向上の効果も期待できる。
【0091】
また、バスバー電極9とフィンガー電極7とは、その間に異方性導電接着剤8を介して両者に圧力が加えられて電気的に接続されている。異方性導電接着剤8は、Niなどの、バスバー電極材料およびフィンガー電極材料より硬い導電粒子8aを含有する樹脂からなる。バスバー電極9とフィンガー電極7とは異方性導電接着剤8を介して圧着されている。金属粒子8aによるアンカー効果(圧着により樹脂からはみ出た金属粒子がバスバー電極とフィンガー電極とにめり込ませることにより両者の電極どうしを固着させる効果)が期待できる。
【0092】
このように、バスバー電極9は、表面が無鉛半田層の半田11で被覆された銅箔10からなり、かつ異方性導電接着剤8を介してフィンガー電極7に接着されているので、従来の、バスバー電極9として導電性ペーストを用いる場合に比べて、接着強度が十分に保てる。さらに、抵抗がより低い銅箔10の使用により電流特性が優れる。さらに外観が良好で、環境に対しても優れた光電変換セルを提供できる。
【0093】
図13は、光電変換セルの平面図である。光電変換セルの結晶半導体粒子3が配置されている領域をA,B,Cで示している。光電変換セルには、番号1aで示した部分を除いて、全面に透明導電層6が形成されている。透明導電層6の上には、フィンガー電極7が紙面垂直方向にほぼ一定間隔で形成されている。そして、領域A,B,C以外の部分、すなわち領域Aと領域Bとの間、および領域Bと領域Cとの間には、バスバー電極9が、フィンガー電極7の形成された方向と直角な方向に形成されている。
【0094】
本発明では、バスバー電極9は、図13に示すように、光電変換セルの右端面よりはみ出している。このはみ出した部分9aは、この光電変換セルと、それに隣接する光電変換セルの基板電極とを電気的に接続する接続用電極として機能する。
【0095】
また、バスバー電極9は、光電変換セルの左端面まで達していないで、図13に符号”1a”で示す部分を残している。この部分は、絶縁体層4、半導体層5、透明導電層6が形成されていないで、基板1が露出している。この露出した部分を、基板電極部1aという。
【0096】
図14、図15は、基板電極部1aの形成方法を説明するための光電変換セルの断面図である。図14に示すように、基板1の上で基板電極部1aを形成しようとする部分の周囲に、熱硬化樹脂、UV硬化樹脂などの土手Fを、ディスペンサで形成する。この状態で、基板1上の内側に絶縁層4を塗布する。次に、土手Fを取り除いて、基板電極部1aの部分にメタルマスクをカバーして、半導体層5、透明導電層6を形成する。なお、メタルマスクを用いる代わりに、容易に除去できる樹脂で、基板電極部1aをカバーして半導体層5、透明導電層6を成膜した後、樹脂を取り去っても良い。
【0097】
図14以外の方法として、絶縁層4、半導体層5、透明導電層6をすべて形成したあとで、基板1が露出するように、成膜された膜を削って基板電極部1aを形成しても構わない。その除去方法として、図5に示すように成膜された膜を、レーザ光線Lの照射で除去してもよい。
【0098】
図16は、複数の光電変換セル同士を直列接続してなる光電変換アレイを示す平面図である。1つの光電変換セルからはみ出した接続用電極9aが、隣接する光電変換セルの基板電極部1aに接続されている。接続用電極9aも基板電極部1aも、光電変換セルの光入射面側に設けられているので、この構成により、光入射面側における光電変換セル同士の直列接続を行うことができる。なお、隣接する光電変換セル間の距離D1は0.5?1mm程度がよい。

記載事項エ
「【図11】



記載事項オ
「【図12】



記載事項カ
「【図16】



記載事項ア?カの記載内容からして、引用例2には、
「光電変換セルと、それに隣接する光電変換セルの基板電極とを電気的に接続する接続用電極として機能するバスバー電極9により複数の光電変換素子同士を直列接続した光電変換アレイであって、光電変換セルは、基板1と、基板1の導体面上に配設された複数の結晶半導体粒子3と、結晶半導体粒子3の間隙に充填された絶縁体層4と、結晶半導体粒子3の上に設けられた半導体層5および透明導電層6とを有し、透明導電層6の上に、平行に一定間隔でフィンガー電極7が設けられ、バスバー電極9とフィンガー電極7とは、その間に異方性導電接着剤8を介して両者に圧力が加えられて電気的に接続されるとともに、バスバー電極9は、透明導電層6およびフィンガー電極7と異方性導電接着剤8で接合され、異方性導電接着剤8は、Niなどの、バスバー電極材料およびフィンガー電極材料より硬い導電粒子8aを含有する樹脂からなり、バスバー電極9とフィンガー電極7とは異方性導電接着剤8を介して圧着され、導電粒子8aがバスバー電極とフィンガー電極とにめり込ませることにより両者の電極どうしを固着させる光電変換アレイ。」
の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

5.対比・判断
本願発明と引用発明2を対比する。
(a)引用発明2の「光電変換セル」、「接続用電極として機能するバスバー電極9」、「光電変換アレイ」は、それぞれ本願発明の「太陽電池セル」、「導電体」、「太陽電池モジュール」に相当する。また、引用発明2の「光電変換セル」は、「基板1と、基板1の導体面上に配設された複数の結晶半導体粒子3と、結晶半導体粒子3の間隙に充填された絶縁体層4と、結晶半導体粒子3の上に設けられた半導体層5および透明導電層6」を有するものであるから「透明導電層6」は、「光電変換セル」の表面側に設けられているといえ、引用発明2の「フィンガー電極7」は、「光電変換セル」の「透明導電層6の上に」設けられるから、引用発明2の「フィンガー電極7」は、本願発明の「太陽電池セルの表面上に形成された集電極」に相当する。そうすると、引用発明2の「光電変換セルと、それに隣接する光電変換セルの基板電極とを電気的に接続する接続用電極として機能するバスバー電極9により複数の光電変換素子同士を直列接続した光電変換アレイであって、光電変換セルは、基板1と、基板1の導体面上に配設された複数の結晶半導体粒子3と、結晶半導体粒子3の間隙に充填された絶縁体層4と、結晶半導体粒子3の上に設けられた半導体層5および透明導電層6とを有し、透明導電層6の上に、平行に一定間隔でフィンガー電極7が設けられ、バスバー電極9とフィンガー電極7とは、その間に異方性導電接着剤8を介して両者に圧力が加えられて電気的に接続される」構成は、本願発明の「隣接する太陽電池セルの表面上に形成された集電極を導電体によって接続することにより、互いに電気的に接続された太陽電池モジュール」に相当する。

(b)引用発明2の「Niなどの、バスバー電極材料およびフィンガー電極材料より硬い導電粒子8aを含有する樹脂からな」る「異方性導電接着剤8」は、本願発明の「樹脂からなる接着剤」に相当し、上記(a)で述べたように引用発明2の「透明導電層6」は、「光電変換セル」の表面側に設けられているといえるから、引用発明2の「バスバー電極9は、透明導電層6およびフィンガー電極7と異方性導電接着剤8で接合され、異方性導電接着剤8は、Niなどの、バスバー電極材料およびフィンガー電極材料より硬い導電粒子8aを含有する樹脂からな」ることは、本願発明の「前記導電体は樹脂からなる接着剤により前記太陽電池セルの表面に接合され」ることに相当する。

(c)引用発明2の「導電粒子8a」は、「バスバー電極材料およびフィンガー電極材料より硬い」材料で形成されており、「バスバー電極9とフィンガー電極7とは異方性導電接着剤8を介して圧着され、導電粒子8aがバスバー電極とフィンガー電極とにめり込ませることにより両者の電極どうしを固着させ」るのであるから、「導電粒子8a」が「バスバー電極9とフィンガー電極7」の両方にめり込んで「バスバー電極9とフィンガー電極7」が直接接合されている部分を有することは自明なことである。そうすると、引用発明2の「バスバー電極9とフィンガー電極7とは異方性導電接着剤8を介して圧着され、導電粒子8aがバスバー電極とフィンガー電極とにめり込ませることにより両者の電極どうしを固着させ」ることは、本願発明の「前記集電極と前記導電体とは直接的な接合により電気的に接合されている」ことに相当する。

上記(a)?(c)に記載したことからして、引用発明2と本願発明は、
「隣接する太陽電池セルの表面上に形成された集電極を導電体によって接続することにより、互いに電気的に接続された太陽電池モジュールであって、
前記導電体は樹脂からなる接着剤により前記太陽電池セルの表面に接合され、
前記集電極と前記導電体とは直接的な接合により電気的に接合されている、
太陽電池モジュール。」である点で一致し、両者の間に相違点はない。
したがって、本願発明は、引用発明2である。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明2であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-09 
結審通知日 2014-12-16 
審決日 2014-12-24 
出願番号 特願2011-17726(P2011-17726)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 北川 清伸
山口 剛
発明の名称 太陽電池モジュール及び太陽電池モジュールの製造方法  
代理人 徳田 佳昭  
代理人 藤井 兼太郎  

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