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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04H
管理番号 1297720
審判番号 不服2013-8220  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-07 
確定日 2015-02-19 
事件の表示 特願2008-161249「集合住宅」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月 7日出願公開、特開2010- 1648〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成20年6月20日の出願であって,平成25年2月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成25年5月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に手続補正がなされたものであって、その後当審において、平成26年8月25日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成26年10月24日に手続補正書並びに意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成26年10月24日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。

「共用廊下側の壁に玄関扉と開口部と玄関パネルとが隣接して設けられた住戸を備えた集合住宅であって、
前記玄関扉と前記開口部とは幅と高さがそれぞれ同一寸法を有し、前記玄関扉と前記開口部は、前記壁に対して着脱可能に形成されていると共に前記玄関パネルの位置を変更することなくお互いの取り付け位置を交換可能なように形成されていることを特徴とする集合住宅。」


3.引用例の記載事項
当審拒絶理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-133023号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審で付与した。なお本引用例には、平成14年11月25日提出の手続補正の内容も記載されているが、本引用例の記載事項は、当該補正前の記載に基づいて引用した。)
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、集合住宅、事務所ビル等の建築物の壁体の構築法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ALC(軽量気泡コンクリート)、押出成形セメント等からなるパネルで建築物の内壁や外壁を構成する場合、壁のパネルを1枚ずつ躯体の開口部に付設した墨に合せて建込み固定している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来例によると、壁のパネルをそれぞれ1枚毎に墨に合せる必要があるので、現場での壁のパネルの建込みに手間がかかる問題があった。また改築に際して、壁体の形態を簡単に変えることができない不都合があった。
【0004】この発明の目的は、現場での壁体の施工を容易にすることである。この発明の他の目的は、壁体を多様な形態に容易に変えることができるようにすることである。」

(2)「【0008】
【実施例】以下この発明の実施例として集合住宅における壁体の構築法に適用したものを図面を参照して説明する。図1乃至図4に示すように、複数種類の基本壁ユニット1?9を用意しておいてから、これらの基本壁ユニットの中から選択して構築すべき壁体のデザイン等に応じて、基本壁ユニットを順次柱11と梁12に囲まれた開口部13に組み込んで適宜組合せることによりユニット壁体10を構成して、開口部の上下に固定した取付け部材14,15に固定して壁体を構築するものである。
【0009】ここで、上記した9種の基本壁ユニット1?9のそれぞれについて説明する。
【0010】図2(ア)に示す基本壁ユニット1は玄関ドアユニットである。この玄関ユニットは、図5(ア)示す縦長の長方形状のフレーム1aにドア体1bをヒンジを中心として開閉可能に取り付けたものである。・・・(後略)・・・
【0011】図3において、(ア)に示す基本壁ユニット3は腰窓ユニットである。この腰窓ユニットは、図5(ウ)に示すフレーム3aの前面下半部に腰壁パネル3bを取り付け、上半部に引き戸3cを取り付けているものである。図3(イ)に示す基本壁ユニット4は開口サッシュユニットである。このユニットは、図5(エ)に示す四角形状のフレーム4aに引き戸4b,4bを取り付けているものである。図3(ウ)に示す基本壁ユニット5は第1出窓ユニットである。・・・(後略)・・・
【0012】・・・(略)・・・
【0013】図4に示す基本壁ユニット7,8,9の構成を説明する。図4(ア)の基本壁ユニット7はメーターボックス用側壁ユニットであって、フレーム7aの前面に壁パネル7bを取り付けているものである。図4(イ)に示す基本壁ユニット8は袖壁ユニットであって、図5(カ)に示すようなフレーム8aに壁パネル8bを取り付けているものである。・・・(後略)・・・
【0014】基本壁ユニット1?9のうち、基本壁ユニット1及び開口サッシュユニット4を除くすべての基本壁ユニットにおいて、フレームに対する壁パネルの取付け方法は適宜である。取付け方法の一例として、例えば袖壁ユニット8に関して図6を参照して説明する。フレーム8aの紙面に垂直方向に伸びている上下のフレーム部及び補強フレーム部の各前面の位置に、これらのフレーム部及び補強フレーム部に沿って長くかつ断面フック状の受部材8c,…を固着してある。各受部材内に壁パネル8bの背面に取り付けた掛止め片8d,…を差し入れている。
【0015】図1の例では、玄関ユニット1、袖壁ユニット8、腰窓ユニット3の3種類の基本壁ユニットを組合せてユニット壁体10が構成されている。その組合せは、玄関ユニット1の両側に袖壁ユニット8を配し、両袖壁ユニットに腰窓ユニット3を隣接し、さらに各腰窓ユニットに袖壁ユニットを配設したものである。
【0016】図1におけるユニット壁体10の開口部13への取付け方法を説明する。図1及び図7に示すように開口部3の下部及び上部にフレーム状の取付け部材14,15をアンカーボルト16,17によって取付ける。そして例えば袖壁ユニット8では、図7(ア)に示すように袖壁ユニットのフレーム8aの下部を取付け部材14にボルト18及び固定枠19で結合する。上部においては、取付け部材15にフレーム8aの上部をボルト20及び固定枠21で固定する。
【0017】また図7(イ)は、開口サッシュユニット4の取付け状態を示すものである。この状態においては、フレーム4aの下部及び上部をアンカーボルト16,17を介して支持されている取付け部材14,15にボルト18と保持枠19とで取り付けられている。」

(3)「【0019】改築をする場合におけるユニット壁体の対応について図8及び図9を参照して説明する。
【0020】図8(ア)乃至(ウ)の各例のユニット壁体は、基本壁ユニットが一直線状に並ぶために、相互に取付け部材はそのまま変えることなく変更して改築に対応できる。同図(ア)?(エ)の各ユニット壁体に関しては、同図(オ)又は(カ)のユニット壁体に変える場合には、アルコーブユニット2及びクランク壁ユニット9の存在により一部取付け部材の取換えを必要とする。また図9は、改築に伴って行った図1に示すユニット壁体からの形態例である。図9(ア)では、図1の一方の腰窓ユニットに代えて第2出窓ユニット6を配置している例である。同図(イ)の例では、図1の他方の腰窓ユニットに代えて玄関ドアユニット1を配置している。
【0021】構築法として、基本壁パネル1?9はそのまま開口部13に建て込んでもよいが、現場で先にフレームを開口部に固定してから、壁パネルを各フレームに取り付けるものであってもよい。
【0022】
【発明の効果】この発明によれば、複数種類の基本壁ユニットから選択して適宜組合せて壁体を構築するものであるので、現場において多様な壁体の施工が容易かつ迅速に行えると共に、多様な形態の壁体を構築できて、改築時等に壁体の変更に迅速に対応できる。開口部にユニット壁体を取付け部材を介して取り付けるので、より一層壁体の施工が容易となる。」

(4)上記(3)の「また図9は、改築に伴って行った図1に示すユニット壁体からの形態例である。・・・同図(イ)の例では、図1の他方の腰壁ユニットに代えて玄関ドアユニット1を配置している。」との記載を参照しながら、【図1】と【図9】(イ)をみると、【図1】の他方の腰窓ユニット3と玄関ドアユニット1の配置は、【図9】(イ)では入れ替わっていることが明らかである。

(5)上記(1)ないし(4)からみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数種類の基本壁ユニット1?9を用意しておいてから、これらの基本壁ユニットの中から選択して構築すべき壁体のデザイン等に応じて、基本壁ユニットを順次柱11と梁12に囲まれた開口部13に組み込んで適宜組合せることによりユニット壁体10を構成して、開口部の上下に固定した取付け部材14,15に固定して構築する壁体を有する集合住宅において、
基本壁ユニット1?9には、
縦長の長方形状のフレーム1aにドア体1bをヒンジを中心として開閉可能に取り付けたものである玄関ドアユニット1、
フレーム3aの前面下半部に腰壁パネル3bを取り付け、上半部に引き戸3cを取り付けているものである腰窓ユニット3、
フレーム8aに壁パネル8bを取り付けているものである袖壁ユニット8、
を含み、
玄関ドアユニット1の両側に袖壁ユニット8を配し、両袖壁ユニット8に腰窓ユニット3を隣接し、さらに各腰窓ユニット3に袖壁ユニット8を配設したユニット壁体10が、改築に伴って他方の腰窓ユニット3と玄関ドアユニット1を交換して配置されることにより、
改築時等に壁体の変更に容易に対応できる、集合住宅。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)本願発明において、玄関扉と開口部とは幅と高さがそれぞれ同一寸法を有し、玄関扉と開口部は・・・お互いの取り付け位置を交換可能なものである。
玄関扉及び(開き戸や引き戸を有する)開口部は、一般的にそれらの枠体と一体となってその機能を発揮するものであって、本願発明の玄関扉と開口部が、幅と高さが同一寸法であり、交換可能であるならば、その枠体と一体の意味であるものと認められる。
また本明細書においても、「【0020】・・・そして、この取付部材38に玄関扉13の玄関枠40と第2開口部15のサッシ枠41がそれぞれビス止めされる。」と、さらに「【0021】・・・そして、この取付部材43に玄関扉13の玄関枠40と玄関パネル32及び第2開口部15のサッシ枠41と玄関パネル32がそれぞれビスによって共締めされる。・・・」と記載されているように、本願発明の実施例においても、玄関扉13の玄関枠40や開口部15のサッシ枠41を取付部材43に取り付けるものであることからも、交換可能で有る本願発明の玄関扉及び開口部は、それぞれ玄関枠及びサッシ枠とが一体となったものを意味すると認められる。
そうすると、引用発明の「縦長の長方形状のフレーム1aにドア体1bをヒンジを中心として開閉可能に取り付けたものである玄関ドアユニット1」,「上半部に引き戸3cを取り付けているものである腰窓ユニット3」及び「玄関ドアユニット1の両側に」配した「袖壁ユニット8」は、それぞれ本願発明の「玄関扉」,「開口部」及び「玄関パネル」に相当する。

(2)また集合住宅では、住戸の玄関は共用廊下側に位置しているので、引用発明の集合住宅における「玄関ドアユニット1の両側に袖壁ユニット8を配し、両袖壁ユニット8に腰窓ユニット3を隣接し」ている構成は、それらユニットが隣接して住戸の共用廊下側の壁に設けられているといえる。
とすれば、引用発明の「玄関ドアユニット1の両側に袖壁ユニット8を配し、両袖壁ユニット8に腰窓ユニット3を隣接し」ている「集合住宅」は、本願発明の「共用廊下側の壁に玄関扉と開口部と玄関パネルとが隣接して設けられた住戸を備えた集合住宅」に相当する。

(3)引用発明の「玄関ドアユニット1」と「袖壁ユニット8」は、改築に伴って交換して配置されるので、壁に対して着脱可能に形成され、高さが同一寸法であるといえる。
そうすると、引用発明の「玄関ドアユニット1の両側に袖壁ユニット8を配し、両袖壁ユニット8に腰窓ユニット3を隣接し、さらに各腰窓ユニット3に袖壁ユニット8を配設したユニット壁体10が、改築に伴って他方の腰窓ユニット3と玄関ドアユニット1を交換して配置されること」と、本願発明の「前記玄関扉と前記開口部とは幅と高さがそれぞれ同一寸法を有し、前記玄関扉と前記開口部は、前記壁に対して着脱可能に形成されていると共に前記玄関パネルの位置を変更することなくお互いの取り付け位置を交換可能なように形成されている」こととは、「玄関扉と開口部とは高さがそれぞれ同一寸法を有し、玄関扉と開口部は、壁に対して着脱可能に形成されていると共にお互いの取り付け位置を交換可能なように形成されている」ことで共通している。

(4)以上のことから、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。
〔一致点〕共用廊下側の壁に玄関扉と開口部と玄関パネルとが隣接して設けられた住戸を備えた集合住宅であって、
玄関扉と開口部とは高さがそれぞれ同一寸法を有し、玄関扉と開口部は、壁に対して着脱可能に形成されていると共にお互いの取り付け位置を交換可能なように形成されている集合住宅。

〔相違点〕玄関扉と開口部について、本願発明は、幅がそれぞれ同一寸法を有し、玄関パネルの位置を変更することなくお互いの取り付け位置を交換可能なように形成されているのに対し、引用発明は、幅が同一寸法ではなく、さらに玄関パネルの位置を変更することなくお互いの取り付け位置を交換可能なように形成されているかどうか不明な点。

5.判断
上記相違点について検討する。
(1)連結自在な壁の構成要素に、その高さや幅を同一寸法のものと用いることは、当審拒絶理由で引用した特開2000-2006号公報(段落【0011】?【0013】等参照。)または実願昭53-150632号(実開昭55-65307号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲,明細書2頁16行?3頁4行,5頁10行?6頁2行等参照)に記載されているように、本願出願前に公知または周知の技術であるので、引用発明の玄関扉と開口部の幅を同一寸法とすることは、上記公知または周知技術に基づいて、当業者が必要に応じて適宜なし得た程度のことであって、その際に、同一幅寸法の玄関扉と開口部とを交換すれば、それら玄関扉及び開口部と隣接する玄関パネルの位置が変更されないことは、当業者にとって自明なことである。
以上のことから、引用発明の玄関扉と開口部の幅を同一寸法とすることにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に成し得たことである。
また、本願発明の効果も、引用発明及び上記周知技術からみて格別のものではない。

(2)請求人は、平成26年10月24日提出の意見書において、以下の(ア)?(エ)の主張を行っている。
(ア)本発明は、幅と高さがそれぞれ同一寸法を有する玄関扉と開口部が壁に対して着脱可能に形成されていると共に玄関パネルの位置を変更することなくお互いの取り付け位置を交換可能なように形成されていることを特徴とし、この特徴により、壁体を構築することなく玄関扉と開口部の交換作業を簡単に行うことができると共に、玄関扉と開口部の交換の前後で住戸の専有面積を変えずに、住戸の平面プランを大幅に変更することができるため、ユーザの購入意欲やリフォーム意欲を高めることのできるといった優れた効果を得ることができます。

(イ)刊行物1に記載の発明は、壁体を構築する玄関パネルの位置を変更することなく玄関扉と開口部のお互いの取り付け位置を交換可能なように形成されている訳ではありません。また、刊行物1は、玄関扉と開口部の幅と高さがそれぞれ同一寸法を有している点についても何ら開示しておりません。

(ウ)刊行物2は、箱状のユニット単位で配置を行うことを前提とする発明を開示するものであり、本発明のように、玄関パネルの位置を変更することなく玄関扉と開口部のお互いの取り付け位置を交換したり、そのために玄関扉と開口部の幅と高さをそれぞれ同一寸法に設定したりする技術思想を備えていると言うことはできません。

(エ)刊行物3は、図面管理や生産管理の簡素化や現場施工のスピード化を図ることを目的として、小窓用パネル、大窓用パネル、扉用パネル、閉切パネル等の小型パネルをモジュール寸法に形成するとともに相互に接合連結自在に形成した発明を開示するものであります。

(3)上記(2)の主張について検討する。
当審拒絶理由で周知または公知の技術の参考例として挙げた、請求人が言うところの刊行物2及び刊行物3は、請求人が主張するように本願発明とは前提や課題等が異なるとしても、あくまで、連結自在な壁の構成要素に、その高さや幅を同一寸法とする公知または周知の技術であることの参考例であることに変わりはなく、そして当該公知または周知の技術を、壁の構成要素を交換可能とした引用発明に適用すれば、請求人が主張する本願発明の効果を奏するものとなることは、上記(1)で述べたとおりであるから、上記(2)の主張を採用することはできない。

6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載の発明及び周知技術に基いて、出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないいものであり、本願は、その他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-18 
結審通知日 2014-12-24 
審決日 2015-01-06 
出願番号 特願2008-161249(P2008-161249)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 洋行小林 俊久  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 住田 秀弘
竹村 真一郎
発明の名称 集合住宅  
代理人 北村 周彦  

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