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審決分類 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  D06F
審判 全部無効 2項進歩性  D06F
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  D06F
管理番号 1298095
審判番号 無効2013-800239  
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-12-25 
確定日 2015-02-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第2690256号発明「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1.本件特許第2690256号(以下「本件特許」という。)の請求項1?8に係る発明についての出願は、平成5年1月28日(パリ条約による優先権主張1992年1月29日、デンマーク王国)に出願され、平成9年8月29日にその発明について特許権の設定登録がされた。
2.平成11年2月15日に、本件特許の願書に添付した明細書の訂正をすることについて審判が請求され(訂正11-39016号)、同年8月16日に、同明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認めるとの審決がなされ、これが確定した。
3.平成13年7月28日に、大豊物産株式会社より、本件特許に係る特許を無効とすることについて審判の請求がされ(無効2001-35330号)、被請求人から願書に添付した明細書の訂正の請求がされ、平成15年1月29日に、訂正を認める、審判の請求は成り立たないとの審決がなされ、これが確定した。
4.平成23年2月3日に、東都フォルダー工業株式会社より、本件特許に係る特許を無効とすることについて審判の請求がされ(無効2011-800017号)、平成23年8月23日に、審判の請求は成り立たないとの審決がなされ、これが確定した。
5.請求人 東都フォルダー工業株式会社は、平成25年12月25日に本件特許無効審判を請求した。
6.被請求人 イエンセン デンマーク アクティー ゼルスカブは、平成26年6月12日に答弁書を提出した。
7.被請求人は、平成26年9月22日に口頭審理陳述要領書を提出した。
8.請求人は、平成26年9月24日に口頭審理陳述要領書を提出した。
9.平成26年10月7日に第1回口頭審理を行った。

第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1?8に係る発明(以下「本件発明1?8」という。)は、上記無効2001-35330号において提出された訂正請求書に添付された訂正明細書(以下「本件特許明細書」という。)の記載からみて、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置であって、該装置はコンベヤベルトからなり、該コンベヤベルトの正面側端部において、フラットワーク物品が、前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され、前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ、該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた、洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において、
前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって、互いに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり、
前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており、
フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入され、前記スライド(16)が、操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かすことを特徴とする装置。
【請求項2】 前記フラットワーク物品を延伸するために、前記2つのキャリッジ(8、9)が対をなした状態で互いに離れるように移動される前に、当該キャリッジが前記レール手段(7)の中央に向かって共に移動されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】 前記昇降手段の数が3つであり、前記2つのキャリッジ(8、9)を有するレール手段(7)に関して実質的に平行かつ対称に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】 前記コンベヤベルト(5)の正面側端部がレール手段(7)の後側かつ直下に設けられ、前記正面側端部が、始動位置から延伸された前記フラットワーク物品(22)の近傍の前進位置まで移動自在であり、かつ、コンベヤベルト(5)の正面側端部が、少なくとも前進位置において、コンベヤベルト(5)の下側で解放している真空源と連結されてなることを特徴とする請求項1、2および3記載の装置。
【請求項5】 前記レール手段(7)が、延伸されたフラットワーク物品(22)がキャリッジ(8、9)のクランプ(10、11)から実質的に自由に垂れ下がることができるような高さで設けられたことを特徴とする請求項1、2、3および4記載の装置。
【請求項6】 前記挿入装置(14)のスライド(16)が、操作者の高さと人間工学的な見地に基づく操作性とに応じ、前記昇降手段の下端側の係止部の調節によって調節されうる高さを有していることを特徴とする請求項1、2、3、4および5記載の装置。
【請求項7】 前記一対のクランプ(17、18)を有するスライド(16)が斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の底部に設けられたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5および6記載の装置。
【請求項8】 引き外しボタン(19)が前記横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるために斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の頂部側に設けられてなることを特徴とする請求項7記載の装置。

第3 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第2690256号の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、下記の証拠方法を提出し、以下の無効理由1?4を主張する。
1.無効理由1
本件特許の特許請求の範囲の記載は、平成6年法律第116号附則第6条第2項の規定によりなお従前の例によるとされた同法による改正前の特許法第36条第5項及び第6項の規定する要件を満たさない。よって、特許法第123条第1項第4号に該当する。
その具体的理由として、概略、以下のような主張をしている。
(1)本件特許の特許請求の範囲の下記(記載1)?(記載20)は不明瞭である。
ア 請求項1の記載について
(記載1)「フラットワーク物品」
(記載2)「該装置はコンベヤベルトからなり」
(記載3)「コンベヤベルトの正面側端部」
(記載4)「延伸装置」
(記載5)「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段」
(記載6)「前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」
(記載7)「フラットワーク物品の上端部が延伸され」
(記載8)「フラットワーク物品と接触するのに適しており」
(記載9)「コンベヤベルト正面側端部の中央と対向する位置」
(記載10)「操作位置より実質的に高い位置」
イ 請求項2の記載について
(記載11)「前記フラットワーク物品を延伸するために」
ウ 請求項3の記載について
(記載12)「レール手段(7)に関して実質的に平行かつ対称に設けられた」
エ 請求項4の記載について
(記載13)「コンベヤベルト(5)の正面側端部」
(記載14)「始動位置から延伸された前記フラットワーク物品」
(記載15)「前記正面側端部が、移動自在であり」
オ 請求項5の記載について
(記載16)「延伸された前記フラットワーク物品(22)」
(記載17)「実質的に自由に垂れ下がる」
カ 請求項6の記載について
(記載18)「操作者の高さと人間工学的な見地に基づく操作性とに応じ、前記昇降手段の下端側の係止部の調節によって調節されうる高さ」
キ 請求項7の記載について
(記載19)「スライド(16)がレール手段(15)の底部に設けられたこと」
ク 請求項8の記載について
(記載20)「引き外しボタン」
(2)本件特許の特許請求の範囲の請求項4?7は、引用する他の請求項番号が択一的に記載されていない。

2.無効理由2
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、平成6年法律第116号附則第6条第2項の規定によりなお従前の例によるとされた同法による改正前の特許法第36条第4項の規定する要件を満たさない。よって、特許法第123条第1項第4号に該当する。
その具体的理由として、概略、以下のような主張をしている。
発明の詳細な説明には、上記無効理由1に挙げた(記載1)?(記載20)に対応する発明の構成について、その定義、あるいは、いかなる範囲の態様が該当するのかについて、また、各構成が本件発明の目的・作用に照らしてどのような技術的意義を有するのかについて、当業者が理解できる程度の記載がなされていない。発明の詳細な説明には、本件発明1の「装置」に該当する物全般を、それらに所望される動作・機能を達成できるように当業者が容易に実施できる程度の記載がなされていない。

3.無効理由3
本件特許についての出願は、デンマーク国特許出願0106/92号(以下「基礎出願」という。)を基礎としてパリ条約による優先権を主張して日本国に出願されたものであるが、本件発明「装置」の基本的構造は、基礎出願の明細書に記載されていないから、本件発明に上記基礎出願に基づく優先権主張の効果は生じない。よって、本件発明の新規性進歩性の判断基準日は現実の出願日である平成5年1月28日である。そして、甲第18,20,22,23及び29号証は、本件特許についての現実の出願日前に頒布された刊行物であって、(1)本件発明1?3及び5?7は、甲第18号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、(2)本件発明1?8は、甲第18号証と、甲第20,22,23号証又は甲第20,22,23,29号証とに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、特許法第123条第1項第2号に該当する。

4.無効理由4
本件発明1?8に係る発明は、本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第22号証及び甲第29?32号証に記載された発明とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、特許法第123条第1項第2号に該当する。

5.証拠方法
審判請求書に添付して甲第1?32号証が提出され、また、口頭審理陳述要領書に添付して甲第33号証が提出された。
甲第1号証 広辞苑 昭和55年9月20日発行 第二版補訂版 253,461,1541,1676,1964,2366頁
甲第2号証 「産業機械」1979年3月号 No.342 昭和54年3月20日発行 20-23,39-42頁
甲第3号証 「産業機械」1990年10月号 No.481 平成2年10月20日発行 17-23頁
甲第4号証 「オートメーション」1977年2月号 昭和52年2月1日発行 40-41頁
甲第5号証 「オートメーション」1980年12月号 昭和55年12月1日発行 48-51,54-57頁
甲第6号証 「ベルトコンベヤ設計ハンドブック」工業調査会 1970年6月30日初版 1-20頁
甲第7号証の1 IPDL公報テキスト検索にて「フラットワーク」を検索キーワードとして検索した結果を示す画面の印刷物
甲第7号証の2 甲第7号証の1に示す検索結果を一覧表示した画面の印刷物
甲第7号証の3 甲第7号証の2に挙げられた文献のうち甲第12?15号証の「フラットワーク」の記載を抽出した表
甲第8号証の1 特開平6-71098号公報
甲第8号証の2 特許第2690256号公報
甲第8号証の3 特開平6-39197号公報
甲第8号証の4 特許第2690255号公報
甲第9号証の1 特開平6-99239号公報
甲第9号証の2 特開平5-50105号公報
甲第9号証の3 特許第2745432号公報
甲第9号証の4 特公平6-98371号公報
甲第10号証 平成23年(ワ)第15499号判決 1,63-64頁
甲第11号証の1 IPDL公報テキスト検索にて「ベルト(の)正面側端部」を検索キーワードとして検索した結果を示す画面の印刷物
甲第11号証の2 甲第17号証の1に示す検索結果を一覧表示した画面の印刷物
甲第12号証の1 IPDL公報テキスト検索にて「正面側端部」を検索キーワードとして検索した結果を示す画面の印刷物
甲第12号証の2 甲第12号証の1に示す検索した結果を一覧表示した画面の印刷物
甲第12号証の3 甲第12号証の2に挙げられた文献の「正面側端部」の記載を抽出した表
甲第13号証の1 特開平6-200712号公報
甲第13号証の2 特開平6-146838号公報
甲第13号証の3 特開平6-117144号公報
甲第13号証の4 特開平6-67613号公報
甲第13号証の5 特開平6-35264号公報
甲第13号証の6 特開平6-26433号公報
甲第13号証の7 特開平6-26316号公報
甲第13号証の8 特開平6-21671号公報
甲第13号証の9 特開平6-10668号公報
甲第13号証の10 特開平5-306631号公報
甲第13号証の11 特開平5-242933号公報
甲第13号証の12 特開平5-127343号公報
甲第13号証の13 特開平5-127342号公報
甲第13号証の14 特開平5-102682号公報
甲第13号証の15 特開平5-93456号公報
甲第13号証の16 特開平5-65751号公報
甲第13号証の17 特開平5-19826号公報
甲第13号証の18 特開平5-19577号公報
甲第13号証の19 特開平5-19545号公報
甲第13号証の20 特開平5-6084号公報
甲第13号証の21 特許第3156789号公報
甲第13号証の22 特許第3049619号公報
甲第13号証の23 特許第3016893号公報
甲第13号証の24 特許第3016892号公報
甲第13号証の25 特許第2991307号公報
甲第13号証の26 特許第2985205号公報
甲第13号証の27 特許第2958429号公報
甲第13号証の28 特許第2952902号公報
甲第13号証の29 特許第2827614号公報
甲第13号証の30 特許第2530152号公報
甲第13号証の31 特許第2530151号公報
甲第13号証の32 特許第2523923号公報
甲第13号証の33 特許第2521711号公報
甲第13号証の34 特許第2519409号公報
甲第13号証の35 特許第2509986号公報
甲第13号証の36 特公平8-20840号公報
甲第13号証の37 特公平8-6505号公報
甲第13号証の38 特公平8-4021号公報
甲第13号証の39 特公平8-4020号公報
甲第13号証の40 特公平7-74711号公報
甲第13号証の41 特公平7-69092号公報
甲第13号証の42 特公平7-23991号公報
甲第13号証の43 特公平7-5195号公報
甲第13号証の44 特公平6-4469号公報
甲第13号証の45 特公平6-4468号公報
甲第13号証の46 特公平4-35186号公報
甲第13号証の47 特公平2-12788号公報
甲第13号証の48 実願平4-75089号(実開平6-40297号)のCD-ROM
甲第13号証の49 実願平4-71954号(実開平6-38293号)のCD-ROM
甲第13号証の50 実願平4-69867号(実開平6-32919号)のCD-ROM
甲第13号証の51 実願平4-35019号(実開平5-95676号)のCD-ROM
甲第13号証の52 実願平4-26696号(実開平5-87523号)のCD-ROM
甲第13号証の53 実願平4-11789号(実開平5-73990号)のCD-ROM
甲第13号証の54 実願平3-70361号(実開平5-26906号)のCD-ROM
甲第13号証の55 実開平4-47940号公報
甲第13号証の56 実開平2-10689号公報
甲第13号証の57 実開昭63-52018号公報
甲第13号証の58 実開昭61-109563号公報
甲第13号証の59 実開昭61-70330号公報
甲第13号証の60 実用新案登録第2564966号公報
甲第13号証の61 実用新案登録第2561906号公報
甲第13号証の62 実用新案登録第2559547号公報
甲第13号証の63 実用新案登録第2559535号公報
甲第13号証の64 実用新案登録第2546409号公報
甲第13号証の65 実用新案登録第2520119号公報
甲第13号証の66 実用新案登録第2519141号公報
甲第13号証の67 実公平7-52548号公報
甲第13号証の68 実公平7-38424号公報
甲第13号証の69 実公平7-37710号公報
甲第13号証の70 実公平7-37351号公報
甲第13号証の71 実公平7-33040号公報
甲第13号証の72 実公平7-8613号公報
甲第13号証の73 実公平7-1916号公報
甲第13号証の74 実公平6-48732号公報
甲第13号証の75 実公平6-44292号公報
甲第13号証の76 実公平6-36227号公報
甲第13号証の77 実公平6-24455号公報
甲第13号証の78 実公平6-2177号公報
甲第13号証の79 実公平6-631号公報
甲第14号証 化学辞典 森北出版株式会社、1981年3月9日第1版第1刷発行、184頁
甲第15号証 小学館ランダムハウス英和大辞典 小学館、1991年6月20日第18刷発行、flatworkの項
甲第16号証 米国特許第5425190号明細書
甲第16号証(米国特許第5425190号明細書)の日本語翻訳文(部分)
甲第17号証 欧州特許出願公開第0554205号明細書
甲第17号証(欧州特許出願公開第0554205号明細書)の日本語翻訳文(部分)
甲第18号証 欧州特許出願公開第0523872号明細書
甲第19号証 甲第18号証の日本語翻訳文
甲第20号証 欧州特許出願公開第0339430号明細書
甲第21号証 甲第20号証の日本語翻訳文
甲第22号証 特開昭62-211100号公報
甲第23号証 実願平2-21699号(実開平3-114197号)のマイクロフィルム
甲第24号証 デンマーク国特許出願0106/92号明細書
甲第25号証 甲第24号証の日本語翻訳文
甲第26号証の1 デンマーク語辞典 北欧社、1972年(抜粋)
甲第26号証の2 デンマーク語辞典 大学書林、平成5年11月10日第1版発行(抜粋)
甲第27号証 無効審判(無効2001-35330号)において被請求人が提出した平成14年11月1日付け上申書 12頁
甲第28号証 東京地裁平成14年2月21日判決(平成12年(ワ)第11902号) 1,10,11頁
甲第29号証 米国特許第4967495号明細書
甲第29号証(米国特許第4967495号明細書)の日本語翻訳文
甲第30号証の1 平成22年(ワ)第17810号特許権侵害差止等請求事件において請求人が乙第47号証として提出した、日本クリーニング新聞、第913号、1991年12月23日発行、5,22頁
甲第30号証の2 平成22年(ワ)第17810号特許権侵害差止等請求事件において請求人が乙第48号証として提出した、BRAUN社製ALPHA1200Spreader/FeederシリーズMP4SSF型装置カタログ
甲第30号証の2の日本語翻訳文
甲第30号証の3 平成22年(ワ)第17810号特許権侵害差止等請求事件において請求人が乙第46号証として提出した報告書、1,2頁
甲第31号証 米国特許第4106227号明細書
甲第31号証(米国特許第4106227号明細書)の日本語翻訳文
甲第32号証 実願昭63-32599号(実開平1-138398号)のマイクロフィルム
甲第33号証 平成17年(行ケ)第10737号審決取消請求事件判決全文

第4 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本請求に係る第2690256号の特許を無効とする理由はない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、答弁書に添付して下記の証拠方法を提出し、請求人が主張する無効理由1?4はいずれも理由がないものであると主張する。

乙第1号証 デンマーク国の特許事務所AWAPATENTの弁理士であるキム・ガルスダス・ニールセン(Kim Garsdal Nielsen)が2014年(平成26年)5月20日に作成した、本件特許の優先権主張の基礎としたデンマーク国特許出願DP106/92と本件特許明細書との記載の同一性および特許第2690255号との関係についての「宣誓供述書」
乙第2号証 欧州特許出願公開第0554204号明細書
乙第3号証 本件特許に係る特許権の専用実施権者たる株式会社プレックスの従業員である元木孝治が平成26年1月14日に作成した、「フラットワーク物品」という用語に対する当業者の理解についての「フラットワークについて」と題する「供述書」
乙第4号証 大場正成、藤谷史朗が平成23年10月4日に作成した、本件特許の侵害事件における口頭説明、本件特許発明の当該技術分野における位置付け(同種装置開拓進歩の歴史)の「口頭説明概要」

第5 当審の判断
1.無効理由1について
(1)請求項1の記載について
ア (記載1)「フラットワーク物品」について
「フラットワーク物品」に関して、請求項1には「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置」と記載されている。また、本件特許明細書の発明の詳細な説明中にも「本発明は、・・・アイロン用ローラなど、洗濯加工処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置であって」(【0001】)という記載、「アイロン用ローラまたはフォールドマシン(folding machine)などにおけるつぎの処理工程でのフラットワーク物品のさらなる処理に重要である。」(【0021】)という記載がされている。よって、請求項1の記載及び発明の詳細な説明の記載から、「フラットワーク物品」は、アイロンローラ、フォールドマシン(folding machine)などの洗濯処理ユニットへ供給される物品であることを把握することができ、そういった物品が一般に「洗濯物」に該当するものであることも普通に理解することができる。
そして、「フラットワーク物品」に関する、発明の詳細な説明中の「フラットワーク物品がコンベヤベルトの正面側端部で延伸されるあいだに当該フラットワーク物品が皺にならないようにするため自由に垂れ下がらなければならない。」(【0002】)という記載、「コンベヤベルト上を運ばれるあいだにフラットワーク物品の垂れ下がった部分の皺を伸ばす」(【0008】)という記載、「各キャリッジには、それぞれ伸ばされるべきフラットワーク物品の角部を把持するのに適し」(【0017】)という記載、「最初はフラットワーク物品の前縁だけがコンベヤベルトに送られ、フラットワーク物品の残りの部分は自由に垂れ下がるが、フラットワーク物品はやがてコンベヤベルトに除々に引き上げられ、平坦でかつ延伸された状態で送出側端部6に運ばれる。垂れ下がっているフラットワーク物品に折り目があるとき、この折り目を別々のキャリッジにより同時に平滑にするために、フラットワーク物品は側端を有しており」(【0017】)という記載、「当該挿入装置14を用いる操作者は、おのおののクランプ17、18に角部(corner)がくるように一対のクランプ上にフラットワーク物品を置き」(【0017】)という記載、「一対のクランプ17、18がクランプ10、11を通過するときに、フラットワーク物品の角部が把持される。」(【0017】)という記載及び「先のフラットワーク物品の後縁が」(【0019】)という記載から、「フラットワーク物品」は、前縁、後縁、側端及び角部を有し、延伸された状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような物品であることが把握される。
よって、請求項1に記載された「フラットワーク物品」は、発明の詳細な説明の記載を参酌すれば、前縁、後縁、側端及び角部を有し、延伸された状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような洗濯物を意味すると理解することができる。
ところで、英語「flatwork」は、「(タオル・シーツ・テーブルクロスなど)機械アイロンで仕上げられるリンネル製品やリンネル衣料」(甲第15号証)、「簡単にアイロンがかけられる衣料品(シーツ・タオル・テーブルクロスなど)」(「新英和大辞典」第5版第26刷 株式会社研究社 797頁)として当業者によく知られた用語である。また、タオル・シーツ・テーブルクロスは、一般に前縁、後縁、側端及び角部を有し、延伸された状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような洗濯物であり、洗濯されるに際して、アイロンローラ、フォールドマシン(folding machine)などの洗濯処理ユニットへ供給される物品である。そうしてみると、本件特許明細書において日本語カタカナ表記の「フラットワーク」という語が洗濯処理との関連で用いられるときに、その読みと発音から当業者によく知られた英語「flatwork」を想起したとしても、英語「flatwork」の意味は上記のとおりであって、本件特許明細書における「フラットワーク物品」が意味するところと相違するものではないから、当業者が発明の詳細な説明の記載にしたがって「フラットワーク物品」を理解する際の妨げにはならない。よって、「フラットワーク物品」という用語によって請求項1の記載が不明瞭になるとはいえない。

請求人は、「請求項1には『フラットワーク物品』の定義は記載されていない。そして、発明の詳細な説明にも、『フラットワーク物品』に該当する物品がいかなるものであるかが説明されていない。」(審判請求書第16頁(1-1-1)欄)と主張する。しかし、「フラットワーク物品」は、請求項1中に定義は記載されないものの、発明の詳細な説明の記載を参酌して、前縁、後縁、側端及び角部を有し、延ばされた状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような洗濯物であると理解することができることは上記のとおりである。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。
また、請求人は、甲第1号証を示して、「記載1『フラットワーク物品』は日本語として一般的でないと言うべきである。」(審判請求書第16頁(1-1-2)欄)と主張する。しかし、「フラットワーク物品」が日本語として一般的でないとしても、本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載を参酌して、上記のとおりに理解することができる。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。
また、請求人は、甲第2?3号証、甲第7号証の1?2、甲第8号証の1?4及び甲第9号証の1?4を示して、「本件出願時にアイロンローラなどの洗濯処理ユニットのような洗濯設備に供給される物の名称として、『フラットワーク』あるいは『フラットワーク物品』が技術用語として確立していたと言うことは到底不可能である。記載1『フラットワーク物品』は、本件発明に特有の表現であると言わざるを得ない。」(審判請求書第17頁(1-1-3)欄)と主張する。しかし、「フラットワーク」あるいは「フラットワーク物品」が技術用語として確立しておらず、「フラットワーク物品」が本件特許明細書に特有の表現であるとしても、「フラットワーク物品」は、本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載を参酌して、上記のとおりに理解することができる。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。
また、請求人は、甲第15?17号証及び甲第9号証の1?4を示して、「『フラットワーク』と発音が似通う英語flatworkが存在し、その意味が機械アイロンで仕上げられるリンネル製品やリンネル衣料であるという事実(甲第15号証)、英語flatworkが記載された米国特許公報:US5,425,190(甲第16号証)、欧州特許公報:EP0554205A1(甲第17号証)が存在するという事実、はあっても、これらの事実は、(1-1-3)で述べた請求項1の記載『フラットワーク物品』が技術常識及び発明の詳細な説明の記載を参酌しても明確でないという請求人の主張の妥当性を検討する際の勘案事項とはならない。これらの事実は上記請求人の主張の反証とはなり得ないし、上記請求人の主張の妥当性を減ずるものでもない。」(審判請求書第18頁(1-1-4)?(1-1-5)欄)と主張する。しかし、「フラットワーク物品」は、英語flatworkの存在や英語flatworkが記載された特許公報(甲第15?17号証)の存在とは無関係に、本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載を参酌して、上記のとおりに理解することができるものである。また、日本語カタカナ表記の「フラットワーク」という語が洗濯処理との関連で用いられるときに、その読みと発音から当業者によく知られた英語「flatwork」を想起したとしても、英語「flatwork」の意味と本件特許明細書における「フラットワーク物品」の意味するところとは相違せず、当業者が発明の詳細な説明の記載にしたがって「フラットワーク物品」を理解する際の妨げになるものではないから、「フラットワーク物品」という用語によって本件発明が不明瞭になるとはいえない。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。
そして、請求人は、甲第24号証、甲第26号証の1及び甲第27号証を示して、「『フラットワーク』及び『フラットワーク物品』は本件の優先権主張の基礎出願の明細書の記載にも対応しておらず、本件明細書で例外的に使用された奇異な日本語と言わざるを得ない。」、「記載1の『フラットワーク』を『洗濯物』あるいは『衣服』と読み替えることは許されない。」(審判請求書第19頁(1-1-6)?(1-1-8)欄)と主張する。しかし、「フラットワーク」及び「フラットワーク物品」が本件の優先権主張の基礎出願の明細書の記載にも対応しているか否かは、「フラットワーク物品」という記載が明確でないことの根拠たり得ないものである。また、たとえ「フラットワーク物品」という用語が「本件明細書で例外的に使用された奇異な日本語」だとしても、「フラットワーク物品」は、発明の詳細な説明の記載を参酌して、上記のとおりに理解することができるものである。なお、日本語カタカナ表記の「フラットワーク」が洗濯処理との関連で用いられる場合に、その発音から当業者によく知られた英語「flatwork」を想起させ得ることを考えれば、「フラットワーク物品」という用語は「奇異な」日本語であるということはできない。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。

イ (記載2)「該装置はコンベヤベルトからなり」について
請求項1は、
「該装置はコンベヤベルトからなり、該コンベヤベルトの正面側端部において、フラットワーク物品が、前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され、前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ、該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた、洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において、」
という記載により、「洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置」に関係する部材、装置、手段について特定しようとしており、
「該装置はコンベヤベルトからなり」という特定とともに、
「延伸装置」について、「コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる」構造を含むこと、「フラットワーク物品」が「延伸装置」から移動することができるのが「コンベヤベルト正面側端部において」であることを特定し、
「挿入装置」について、「フラットワーク物品の隅部」が「クランプに挿入され」るのが「挿入装置によって」であり、「挿入装置」は「コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ」るものであって、「いくつか」あることを特定し、
「駆動手段」について、「一対のキャリッジ」に設けられたものであって、「当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した」ものであることを特定し、
「クランプ」について、「該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され」ることを特定し、
「手段」について、「フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための」ものであって、「洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置」に設けられたものであることを特定している。
ここで、上記「該装置はコンベヤベルトからなり」という記載において、「該装置」はその前段に記載された「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置」を指し、「から」は手段を表す助詞として、「?で」あるいは「?によって」の意味に、「なり」は自動詞「なる」の連用形として、行為の結果、完成することを表し、「できあがり」あるいは「しあがり」という意味で用いられていると解するのが自然である(甲第1号証)。よって、上記(記載2)については、「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置はコンベヤベルトによってできあがり」と解釈することができる。一方で、「該装置」は「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置」であることからして、「該装置」はコンベヤベルトのみからできあがるものではなく、洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための他の関連装置・手段を付属させ得ることは当業者の技術常識から明らかである。また、「該装置はコンベヤベルトからなり」という記載自体も、洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための他の関連装置を付属させ得ることを意識的に排除した表現とはいえない。
そうしてみると、請求項1中の上記「該装置はコンベヤベルトからなり、・・・洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において」という記載は、概略、該装置は「コンベヤベルト」によってできあがり、該装置には「延伸装置」、「挿入装置」、「駆動手段」、「クランプ」及び「フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段」を付属させたものとして理解することができるから、「該装置はコンベヤベルトからなり」という記載が不明瞭であるとはいえない。

請求人は、甲第1号証を示して、「請求項1の『該装置はコンベヤベルトからなり』は、該装置はコンベヤベルトによってできた、すなわち該装置はコンベヤベルトそのものであるとの意である。しかしながら、その一方で請求項1には、上記『該装置』が備える部位として、『延伸装置』、『操作者によって動かされるいくつかの挿入装置』、『一対のキャリッジ』に設けられた『駆動手段』、『フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルト正面側端部に移動するための手段』などが記載されており、これら部位がコンベヤベルトに属さないことは明らかである。すると、請求項1の記載『該装置はコンベヤベルトからなり』は、これ以外の請求項1の記載と矛盾しており、その意味が明確でない。」(審判請求書第20頁(1-2-1)欄)と主張する。しかし、上記のとおり、「該装置はコンベヤベルトからなり」という記載は、「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置はコンベヤベルトによってできあがり」と解釈される一方、「該装置」はコンベヤベルトのみからできあがるものではなく、洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための他の関連装置・手段を付属させ得ることは当業者の技術常識から明らかである。また、「該装置はコンベヤベルトからなり」という記載自体も、洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための他の関連装置を付属させ得ることを意識的に排除した表現とはいえない。よって、「該装置はコンベヤベルトからなり」という記載は、請求項1のこれ以外の記載と矛盾を生じさせるものではなく、その意味も明瞭である。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。
また、請求人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明にも請求項1と同様の記載がなされており、「発明の詳細な説明の記載を参酌しても、請求項1の記載『該装置はコンベヤベルトからなり』の意味は明瞭でない。」(審判請求書第20頁(1-2-2)欄)旨主張する。しかし、発明の詳細な説明の記載を参酌しなくとも、「該装置はコンベヤベルトからなり」という記載は、請求項1のこれ以外の記載と矛盾を生じさせるものではなく、また、その意味も明瞭であることは上記説示のとおりである。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。
また、請求人は、甲第10号証を示して、「請求項1の記載『本発明は、コンベヤベルトからなり』は、その字義的意味に反して、上記図1に示されるような、コンベアベルトの他に延伸装置などを含む装置と解することはできない。したがって、図面の記載を参酌しても、依然として、請求項1の記載『該装置は、コンベヤベルトからなり』は請求項1のその他の記載と矛盾する。」(審判請求書第21頁(1-2-3)欄)旨主張する。しかし、図面の記載を参酌しなくとも、「該装置はコンベヤベルトからなり」という記載は、請求項1のこれ以外の記載と矛盾を生じさせるものではなく、また、その意味も明瞭であることは上記説示のとおりである。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。

ウ (記載3)「コンベヤベルトの正面側端部」について
「コンベヤベルトの正面側端部」に関して、請求項1中の「該コンベヤベルトの正面側端部において、フラットワーク物品が、前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、」という記載から、「フラットワーク物品」が「延伸装置」から移動することができるのが「コンベヤベルト正面側端部において」であることが理解される。
また、請求項1中の「該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた、」という記載から、「延伸され」た「フラットワーク物品の上端部」が「コンベヤベルトの正面側端部に移動する」ことが理解される。
また、「前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ、」という記載から、「駆動手段」が「当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した」ものであることが理解される。
また、「前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており、」という記載から、「前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置」が「前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれて」いることが理解される。
そして、その他に、請求項1中には、「コンベヤベルトの正面側端部」に関する事項が記載されている部分はない。
ここで、上記「(1)ア」で説示したとおり、フラットワーク物品は、前縁、後縁、側端及び角部を有し、延伸された状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような洗濯物である。そして、本件発明1において、フラットワーク物品の隅部が延伸装置のクランプに挿入され、当該クランプの移動により、フラットワーク物品の上端部がコンベヤベルトの長手方向を横切る方向に延伸されることから、フラットワーク物品の上端部はある程度の幅を有するものである。そして、本件発明1において、フラットワーク物品が延伸装置から移動することができる状態においては、その状態におけるクランプの位置から、延伸されたフラットワーク物品の上端部は、コンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられているから、フラットワーク物品のコンベヤベルトへの移動先は、操作者からみて、少なくともコンベヤベルトの正面側にある端部の幅方向(コンベヤベルトの長手方向を横切る方向)中央を含む一定の領域となることが理解できる。
このことは、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「図2はキャリッジ8、9によって拡げられたフラットワーク物品を移動するための配列の概略断面図である。先のフラットワーク物品の後縁がコンベヤベルトの正面側端部を通過するまえにつぎの延伸操作が開始されなければならないという事実に鑑み、コンベヤベルトの正面側端部は、延伸操作のあいだ、クランプ10、11の経路のいくらか後側に位置づけられなければならない。」(【0019】)という記載とも整合するものである。
そうすると、本件発明1でいう「コンベヤベルトの正面側端部」とは、操作者からみて、コンベヤベルトの正面側にある端部を意味すると解するのが自然である。
一方、「コンベヤベルトの正面側端部」を「コンベヤベルト正面」の「側端部」を意味するものとした場合には、当該「側端部」には必ずしもフラットワーク物品は移動しないから、技術的な矛盾が生じることとなる。
よって、「コンベヤベルトの正面側端部」という記載は、「コンベヤベルトの正面側」にある「端部」の意味であり、「コンベヤベルト正面側端部」という記載は不明瞭であるとはいえない。

請求人は、「請求項1の『正面側端部』が、(a)正面側にある端部 を意味するのか、あるいは、(b)正面の側端部 を意味するのか、あるいはまた、上記(a)と(b)の両方の部位を意味するのか、もしくは上記(a)でも上記(b)でもない他の部位を意味するのかは、請求項1の記載からは把握できない。」(審判請求書第21頁(1-3-1)欄)と主張する。しかし、発明の詳細な説明の記載及び請求項1の記載から、「コンベヤベルト正面側端部」という記載は、「コンベヤベルト正面側」にある「端部」を意味するものと解するのが自然であることは、上記説示のとおりである。上記(b)の意味では技術的な矛盾が生じることとなるから、少なくとも上記(b)の意味に解することはできないし、請求項1及び発明の詳細な説明の記載には、上記(a)でも(b)でもない意味に解する記載は見当たらず、示唆もないから、上記(a)でも(b)でもない意味とすることもできない。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。
また、請求人は、甲第2?6号証、甲第11号証の1?2、甲第8号証の1?4、甲第12号証の1?3及び甲第13号証の1?79を示して、「上記『正面側端部』との名称が本件発明の出願時にベルトコンベヤあるいは業務用洗濯設備の分野で技術用語として確立していたと言うことはできない。記載3『コンベヤベルトの正面側端部』は、本件発明に特有の表現であると言わざるを得ない。」(審判請求書第21?22頁(1-3-2)欄)と主張する。しかし、たとえ「正面側端部」が技術用語として確立しておらず、「コンベヤベルトの正面側端部」が本件特許明細書に特有の表現であるとしても、「コンベヤベルトの正面側端部」は、「コンベヤベルトの正面側」にある「端部」の意味として理解できることは上記説示のとおりである。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。
また、請求人は、本件特許明細書の発明の詳細な説明中に用いられている「正面」、「正面側」という記載、及び「コンベヤベルトの取り入れ側端部」、「コンベヤベルトの送出側端部6」という類似表現を取り上げるとともに、甲第28号証を示して、「このような事実からは、『正面側端部』が(a)正面側にある端部 を意味するのか、あるいは、(b)正面の側端部 を意味するのか、あるいはまた、上記(a)と(b)の両方の部位を意味するのか、もしくは上記(a)でも上記(b)でもない他の部位を意味するのか、を判別することができない。」、「発明の詳細な説明と図面の記載を参酌しても請求項2の『ベルトコンベヤの正面側端部』の意味は曖昧で、発明『装置』における対応部位を特定することができない。よって、発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても、記載3『ベルトコンベヤの正面側端部』は明確でない。」(審判請求書第22?24頁(1-3-3)?(1-3-6)欄)と主張する。しかし、「コンベヤベルトの正面側端部」については、発明の詳細な説明及び請求項1の記載から、「コンベヤベルトの正面側」にある「端部」の意味として理解できることは上記説示のとおりである。上記(b)の意味では技術的な矛盾が生じることとなるから、少なくとも上記(b)の意味に解することはできないし、請求項1及び発明の詳細な説明の記載には、上記(a)でも(b)でもない意味に解する記載は見当たらず、示唆もないから、上記(a)でも(b)でもない意味とすることもできない。よって、請求人の上記主張は理由がなく、採用することができない。

エ (記載4)「延伸装置」について
「延伸装置」に関して、請求項1には、
「該コンベヤベルトの正面側端部において、フラットワーク物品が、前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ」という記載、
「前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され」という記載及び
「前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ、該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され」という記載がなされている。
これらの記載から、「延伸装置」は、「コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる」構造を含む装置であって、「一対のキャリッジ」に設けられた「クランプ」に「フラットワーク物品の隅部」が「挿入され」て、「当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間」することにより、当該「クランプ」は「コンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ」、「前記フラットワーク物品の上端部が延伸され」る動作を行う装置であると理解できる。
ここで、「延伸」とは「のばすこと。のびること。」(広辞苑第六版)を意味する用語であり、「のばす(伸ばす、延ばす)」とは「(1)物の長さ・距離・時間を長くする。また、広げて面積を大きくする。(2)曲がっているもの、縮んでいるものをまっすぐにする。『背筋を?・す』『皺を?・す』(3)時間を長びかせる。日時をおくらせる。延期する。(4)財産や勢力・能力などを大きくする。ふやす。(5)遠くへ逃がす。(6)溶かしたり、やわらかくしたりして広がるようにする。(7)のびのびとさせる。晴らす。(8)なぐりたおす。のす。」(広辞苑第六版)を意味する用語である。本件発明において、「延伸」される対象である「フラットワーク物品」が、上記(1)で説示したとおり、前縁、後縁、側端及び角部を有し、延伸された状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような洗濯物であることを考えれば、「フラットワーク物品」の「延伸」は、上記「(2)曲がっているもの、縮んでいるものをまっすぐにする。『背筋を?・す』『皺を?・す』」の意味で用いられていて、皺を生じて縮んでいる洗濯物をまっすぐにするという意味に解するのが自然である。
このことは、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「フラットワーク物品の垂れ下がった部分の皺を伸ばすために対をなして設けられた公知の延伸リボン」(【0008】)という記載、「フラットワーク物品を延伸するために、当該装置は、延伸装置を含んでおり、当該延伸装置の主要な要素は、前記2枚の側部部材1、2のあいだに延びるレール手段7、および該レール手段の上を走行する2個のキャリッジ8および9である。各キャリッジには、それぞれ伸ばされるべきフラットワーク物品の角部を把持するのに適し、かつ前記キャリッジが離れるように別々に動くとき、当該フラットワーク物品を延伸し、後述する手段によりコンベヤベルト5まで運搬するために当該フラットワーク物品の導入端部を伸ばすのに適した引き外し自在のクランプ10、11が設けられている。」(【0017】)という記載、「一方フラットワーク物品が比較的大きいばあい、キャリッジ8、9によって延伸されたフラットワーク物品が上部コンベヤベルトまで運ばれる。」(【0017】)という記載及び「図2はキャリッジ8、9によって拡げられたフラットワーク物品を移動するための配列の概略断面図である。」(【0019】)という記載にみられるように、フラットワーク物品の「延伸」が「伸ばす」、「拡げる」と同列で用いられていることとも整合する。
(なお、「拡げる」には「(2)(「展げる」とも書く)巻いたりたたんだりしてある物をのべる。ひらきのべる。」(広辞苑第六版)という意味がある。)
よって、「延伸装置」は、請求項1の記載から、その構造と動作を把握することができ、「延伸」の意味も明確であるから、不明瞭な記載であるとはいえない。

請求人は、甲第1号証、甲第14号証及び甲第3号証を示して、「請求項1に記載された『延伸装置』は『フラットワーク物品』をより薄くより長くするように引き延ばす装置を意味する。」、「すると、請求項1に記載された発明『装置』において洗濯物をより薄くより長くように引き延ばす『延伸装置』の設置は技術的に不可能とまでは言えないが、上記記載4の技術的意義を理解することはできない。」(審判請求書第24?25頁(1-4-1)欄)と主張する。
また、請求人は、甲第3号証を示して、「発明の詳細な説明の記載を考慮すると、請求項1に記載された『延伸装置』としては、『延伸』を請求項1の記載通りに解釈した場合の意味:(c)『フラットワーク物品』をより薄くより長くするように引き延ばす装置、あるいは、(d)発明の詳細は説明の『延伸リボン』に相当する)『フラットワーク物品』を広げたり開いたりする装置、またあるいは上記(c)と(d)を兼ねる装置 のいずれもが一応は想起できる。しかしながら、(1-4-1)で述べた一般的な洗濯工程(甲第3号証18頁図5、甲第3号証20頁図6)や本件発明『装置』と、『アイロンローラなどの洗濯処理ユニット』との関係からみて、上記(d)の装置や、上記(c)と(d)を兼ねる装置が具体的にどのようなもので、そのような『延伸』がいかなる技術的意義を有するのかは、理解し難い。このように、発明の詳細な説明を参酌しても、請求項1の『延伸装置』の機能、目的、作用を把握することはできない。」(審判請求書第25?26頁(1-4-2)欄)と主張する。
しかし、上記説示のとおり、「フラットワーク物品」の「延伸」は、皺を生じて縮んでいる洗濯物をまっすぐにするという意味に解するのが自然であり、アイロンローラなどの洗濯処理ユニットに供給する前の洗濯物の形状を整える装置として「延伸装置」の技術的意義も明確である。
さらに、請求人は、「化学辞典」(甲第14号証)を根拠に、「『延伸』された物の厚みは延伸前に比べて薄くなり、『延伸』された物の長さは長くなる。」と主張するが、「フラットワーク物品」のような洗濯物に対して、高分子材料に対して主に用いられる化学用語「延伸」の意味をあてはめるのは、本件発明の属する技術分野や本件特許明細書に記載された技術内容を鑑みれば適当ではない。
よって、請求人の上記主張は当を得たものではなく、採用することができない。

オ (記載5)「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段」について
「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段」に関して、請求項1には、「前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され」という記載がなされ、「挿入装置」について、「フラットワーク物品の隅部」が「該クランプ(延伸装置の一対のキャリッジに設けられたクランプ)に挿入され」るのが「挿入装置によって」であり、「挿入装置」は「コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ」、「操作者によって動かされ」るものであって、「いくつか」あることを特定している。この記載から、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段」については、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側」という記載を一体の表現としてとらえるのが合理的である。
そこで「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側」という記載についてみると、「反対」とは、「(1)物事が、対立・逆の関係にあること。一方が他方を否定する関係にあること。(2)むこう側に立ってさからうこと。ある意見などに対してさからうこと。」(広辞苑第六版)を意味する語であり、「側」とは、「(1)物の一つの方向・面。(2)相対する二つの一方。片方。(3)(中味に対し)外側を囲むもの。ふち。」(広辞苑第六版)を意味する語である。そして、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側」という記載が、コンベヤベルトとレール手段との位置関係を規定する記載であることを考えれば、上記「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段」については、「反対」を上記「(1)物事が、対立・逆の関係にあること。」の意味に、「側」を上記「(2)相対する二つの一方。片方。」の意味で用いた、「コンベヤベルトと対立の関係にある、コンベヤベルトと相対するレール手段」と解するのが自然であり、「レール手段の側」については、「側」を上記「(1)物の一つの方向・面。」の意味で用いた、「レール手段の方向」と解するのが自然である。そして、「相対する」とは、「互いに向かい合う。また、対立し合う。」(広辞苑第六版)を意味する語であるから、結局、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側」とは、「前記コンベヤベルトと向かい合うレール手段の方向」を意味するものと理解できる。
よって、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段」は、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側」という記載として、その意味は明確であり、不明瞭な記載であるとはいえない。

請求人は、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側」という記載のうち「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段」という箇所だけを取り出して縷々主張するが(審判請求書第26頁(1-5)欄)、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段」については「コンベヤベルトと向かい合うレール手段」の意味であること、そして、「前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側」という記載を一体の表現としてとらえて理解すべきものであることは上記説示のとおりである。よって、請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することができない。

カ (記載6)「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」について
「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」に関して、請求項1には、「前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ」という記載がなされ、「一対のキャリッジ」には「駆動手段」が設けられていること、該「駆動手段」は、「当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した」ものであることが特定されている。このことから、「前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」とは、一対のキャリッジの位置を表現した記載である。一方、請求項1の「前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置」という記載により、一対のキャリッジは、延伸装置のレールを走行するものである。そうすると、上記(記載6)「前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」とは、まずは、延伸装置のレール上の一対のキャリッジの位置についてのコンベヤベルトとの関係を表現した記載であるといえる。
次に、「コンベヤベルトの正面側端部の中央」という記載について、「コンベヤベルトの正面側端部」とは、上記「(1)ウ」において説示したとおり、コンベヤベルトの正面側にある端部を意味する。また、コンベヤベルトは、その長手方向を横切る方向に延伸されたフラットワーク物品を移動させるものであるから、コンベヤベルトの正面側の端部がある程度の幅を有することは明らかである。よって、「コンベヤベルトの正面側端部の中央」とは、コンベヤベルトの正面側にある端部におけるコンベヤベルトの幅方向の中央を意味するものと理解できる。
次に、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と」「反対側の地点」という記載に関して、「反対」及び「側」という語の意味は上記「(1)オ」に示したとおりであって、上記(記載6)が、延伸装置のレール上の一対のキャリッジの位置についてのコンベヤベルトとの関係を表現した記載であることを考えれば、「延伸装置のレール上の一対のキャリッジの位置」についての「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と」「反対側の地点」とは、「反対」を上記「(1)物事が、対立・逆の関係にあること。」の意味に、「側」を上記「(2)相対する二つの一方。片方。」の意味で用いた、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と」「対立の関係にある、コンベヤベルトと相対する延伸装置のレール上の地点」と解するのが自然である。そして、「相対する」とは、「互いに向かい合う。また、対立し合う。」(広辞苑第六版)を意味する語であること、「コンベヤベルトの正面側端部の中央」とは、コンベヤベルトの正面側にある端部におけるコンベヤベルトの幅方向の中央のことであるから、結局、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と」「反対側の地点」とは、「コンベヤベルトの正面側にある端部におけるコンベヤベルトの幅方向の中央と向かい合う延伸装置のレール上の地点」を意味するものと理解できる。
次に、「(反対側の)地点から延長した位置」という記載について、請求項1において当該「地点から延長した位置」は、一対のキャリッジを「移動させて離間せしめ」た位置とされている。また、一対のキャリッジは、延伸装置のレールを走行するものである。このことから、「(反対側の)地点から延長した位置」とは、当該「地点からみてレールの延長方向に距離を置いた位置」を意味するものと理解できる。
次に、「好ましくは」という記載について、「好ましい」とは、「(1)気に入っている。好みに合っている。感じがいい。(2)好都合である。望ましい。(3)異性に心をひかれるたちである。色好みである。」(広辞苑第六版)を意味する語であり、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と」「反対側の地点」に対して用いられた表現であることから、上記「好ましくは」という記載は、「(2)好都合である。望ましい。」の意味で用いられたものと解するのが自然である。ところで、本件特許明細書には、本件発明1として、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と反対側の地点」以外の地点についての例示や示唆はなく、また、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と反対側の地点」以外の態様を想定することもできないから、「好ましい(望ましい)」とされる地点は、実質上「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と反対側の地点」の1点に定まるといえる。
そうすると、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点」とは、結局のところ「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と反対側の地点」を意味するものと理解できる。
以上より、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」とは、「前記コンベヤベルトの正面側にある端部におけるコンベヤベルトの幅方向の中央と向かい合う延伸装置のレール上の地点からみてレールの延長方向に距離を置いた位置」を意味するものと理解できる。
よって、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」という記載は、不明瞭な記載であるとはいえない。

請求人は、「請求項1に記載された発明『装置』における『コンベヤベルトの正面側端部』が示す部位が不明瞭であるから、この部位を用いて特定される『前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置』も不明瞭となる。」(審判請求書第26頁(1-6-1)欄)と主張する。また、請求人は、「コンベヤベルトの正面側端部」の示す部位が選択できる場合であっても、その他の記載が明確でないため「請求項1の記載を如何様に解釈しても、記載4[当審注:記載6の誤記と思われる。]にある『位置』は意味不明である。」(審判請求書第27頁(1-6-1)欄)と主張する。さらに、請求人は、「発明の詳細な説明及び図面には、記載4[当審注:記載6の誤記と思われる。]にある『位置』を明確に特定するための参考となる記載が見いだせない。」(審判請求書第27頁(1-6-2)欄)と主張する。
しかし、本件特許明細書の請求項1及び発明の詳細な説明の記載に基いて「コンベヤベルト」や「延伸装置」の構造や位置関係を把握すれば、「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」の意味を理解できることは上記説示のとおりである。よって、請求人の上記主張を採用することができない。

キ (記載7)「フラットワーク物品の上端部が延伸され」について
「フラットワーク物品」については上記「(1)ア」で説示したとおり、「延伸」については上記「(1)エ」で説示したとおり、いずれもその意味は明確であるから、請求項1中の「フラットワーク物品の上端部が延伸され」という記載も明確である。
請求人の「(1-1)で記載1『フラットワーク物品』について述べたように本件発明『装置』における『フラットワーク物品』は意味不明であり、また、(1-4)で記載4『延伸装置』について述べたように本件発明『装置』における『延伸』も意味不明である。すると、『フラットワーク物品』を『延伸』することを表した記載7『フラットワーク物品の上端部が延伸され』も明確でない。」(審判請求書第27頁(1-7)欄)という主張は、採用することができない。

ク (記載8)「フラットワーク物品と接触するのに適しており」について
「フラットワーク物品と接触するのに適しており」に関して、請求項1には、「前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって、互いに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり、前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており」という記載がなされている。この記載から、挿入装置(14)が、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなること、及び、一対のキャリッジは、複数ある昇降手段のいずれかと対向する位置にあるときにフラットワーク物品と接触するのに適したものであることを理解することができる。
このような理解は、請求項1の「該コンベヤベルトの正面側端部において、フラットワーク物品が、前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され」という記載から把握される、一対のキャリッジにはクランプが設けられていること及び挿入装置によってフラットワーク物品の隅部が該クランプに挿入されること、すなわち、挿入装置によって、フラットワーク物品を一対のキャリッジに接触させていることとも整合するものである。
よって、「フラットワーク物品と接触するのに適しており」という記載は、不明瞭な記載であるとはいえない。

請求人は、「記載8は、その前の『前記一対のキャリッジ』がフラットワーク物品に接触するのに適していることを記載したものである。しかし請求項1には適しているか否かを判断する基準は記載されていない。」(審判請求書第27頁(1-8-1)欄)と主張する。しかし、上記説示のとおり、請求項1には、一対のキャリッジにはクランプが設けられ、挿入装置によって該クランプにフラットワーク物品の隅部が挿入されるものとなっていることが規定されているから、一対のキャリッジがフラットワーク物品に接触するのに適していることは明らかである。
また、請求人は、発明の詳細な説明の段落【0007】中の(記載8)に関する記載が不明瞭であるから、当該記載を参酌しても(記載8)は明確でない旨主張する(審判請求書第28頁(1-8-2)欄)。しかし、「フラットワーク物品と接触するのに適しており」という記載は、請求項1の記載からその意味を理解できることは上記説示のとおりである。
よって、請求人の主張は当を得たものとはいえず、採用することができない。

ケ (記載9)「コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置」について
「コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置」に関して、請求項1には、「前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって、互いに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり、前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており」という記載がなされている。当該記載中、「コンベヤベルトの正面側端部」については上記「(1)ウ」で説示したとおり、「コンベヤベルトの正面側端部の中央」については上記「(1)カ」で説示したとおり、いずれもその意味は明確である。また、一対のキャリッジが延伸装置のレール上にあることは明らかである。したがって、「コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置」とは、コンベヤベルトの正面側にある端部におけるコンベヤベルトの幅方向の中央と対向する延伸装置のレール上の位置を意味するものと理解できる。
よって、請求人の「(1-3)で述べたように、請求項1に記載された発明『装置』における『コンベヤベルトの正面側端部』が示す部位が不明瞭であるから、この部位を用いて特定される『コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置』も不明瞭となる。そして、発明の詳細な説明及び図面には、記載9にある『位置』を明確に特定するための参考となる記載が見いだせない。すると、記載9『コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置』は意味不明である。」(審判請求書第28頁(1-9)欄)という主張は、採用することができない。

コ (記載10)「操作位置より実質的に高い位置」について
「操作位置より実質的に高い位置」に関して、請求項1には、「フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入され、前記スライド(16)が、操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かすこと」という記載がなされている。この記載から、フラットワーク物品がスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入されること、スライド(16)は、前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在であること、スライド(16)が、一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かすこと、及び、一対のキャリッジ(8、9)は、操作位置より実質的に高い位置に設けられていること、を理解することができる。
ここで、「実質的」とは、「実際に内容が備わっているさま。また、外見や形式よりも内容・本質に重点をおくこと。」(広辞苑第六版)を意味する用語であるから、「操作位置より実質的に高い位置」という記載は、操作位置と一対のキャリッジとの相対的な位置関係について、一対のキャリッジが操作位置より実際に高い位置にあればよいことを特定したものと明確に把握することができる。そして、一対のキャリッジ(8、9)が操作位置より実際に高い位置に設けられていることは、フラットワーク物品がスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入されて、当該スライド(16)が、昇降手段のレール手段(15)に沿って、一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かされることとも整合している。
なお、「操作位置より実質的に高い位置」という記載は、操作位置と一対のキャリッジとの相対的な位置関係を特定するのみの記載である。しかしながら、装置全体における両者の設置箇所の具体的な高さは、本件特許明細書の発明の詳細な説明の「操作者はほぼ顔の位置までフラットワーク物品を持ち上げなければならないので、挿入操作が厄介になり、さらにまた操作者の腕および肩に過重の緊張を与える。」(【0003】)、「本発明の目的は、前述のとおりフラットワーク物品をコンベヤベルトの運ばれる高さに持ち上げることなく挿入しうるように操作ステーションを設計できる可能性を有すると共に、延伸操作中フラットワーク物品が自由に垂れ下がる可能性を有する装置を提供する」(【0004】)という課題を解決し得る範囲で、取り扱うフラットワーク物品の大きさや操作者の操作位置に応じて当業者が適宜に設定し得るものである。よって、請求項1において装置全体における両者の具体的設置箇所について更なる特定が必要とはいえない。
よって、「操作位置より実質的に高い位置」という記載は、不明瞭な記載であるとはいえない。

請求人は、「請求項1の記載からは、記載10の『実質的に』が、『高い位置』をどのように限定しているのかを理解することができない。」(審判請求書第28頁(1-10-1)欄)旨の主張、及び、発明の詳細な説明及び図面には「請求項1の『前記一対のキャリッジ(8、9)』と『操作位置』のそれぞれ高さ、あるいはこれら2つの部位の位置関係を具体的に説明した記載はない。・・・記載10が示す位置を明示する記載が無い。」(審判請求書第29頁(1-10-2)欄)旨の主張をするが、「操作位置より実質的に高い位置」という記載が、その意味を明確に把握できるものであることは上記説示のとおりである。よって、請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。

サ 小括
以上、ア?コで述べたとおり、(記載1)?(記載10)はいずれも不明瞭な記載とはいえず、請求項1の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである。

(2)請求項2の記載について
ア (記載11)「前記フラットワーク物品を延伸するために」について
「フラットワーク物品」については上記「(1)ア」で説示したとおり、「延伸」については上記「(1)エ」で説示したとおり、いずれもその意味は明確であり、よって、請求項2中の「前記フラットワーク物品を延伸するために」という記載の意味も明確である。
よって、請求項2の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである。

(3)請求項3の記載について
ア (記載12)「レール手段(7)に関して実質的に平行かつ対称に設けられた」について
請求項3には、「前記昇降手段の数が3つであり、前記2つのキャリッジ(8、9)を有するレール手段(7)に関して実質的に平行かつ対称に設けられた」と記載され、上記「(1)コ」で述べたとおり、「実質的」とは、「実際に内容が備わっているさま。また、外見や形式よりも内容・本質に重点をおくこと。」(広辞苑第六版)を意味する用語であるから、「操作位置より実質的に高い位置」という記載は、3つの昇降手段がレール手段に関して実際に平行かつ対称に設けられたものであればよいことを特定したものと明確に把握することができる。図1には、実際に3つの昇降手段がレール手段に関して平行かつ対称に設けられた実施例が記載されている。
よって、請求項3の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである。

(4)請求項4の記載について
ア (記載13)「コンベヤベルト(5)の正面側端部」、(記載14)「始動位置から延伸された前記フラットワーク物品」及び(記載15)「前記正面側端部が、移動自在であり」について
「コンベヤベルトの正面側端部」については上記「(1)ウ」で説示したとおり、「延伸」については上記「(1)エ」で説示したとおり、「フラットワーク物品」については上記「(1)ア」で説示したとおり、いずれもその意味は明確である。よって、請求項4中の上記(記載13)?(記載15)の記載の意味も明確に把握することができる。
よって、請求項4の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである。

(5)請求項5の記載について
ア (記載16)「延伸された前記フラットワーク物品(22)」、(記載17)「実質的に自由に垂れ下がる」について
「延伸」については上記「(1)エ」で説示したとおり、「フラットワーク物品」については上記「(1)ア」で説示したとおり、「実質的に」については上記「(1)コ」で説示したとおり、いずれもその意味は明確である。よって、請求項5中の上記(記載16)及び(記載17)の記載の意味も明確に把握することができる。
よって、請求項5の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである。

(6)請求項6の記載について
ア (記載18)「操作者の高さと人間工学的な見地に基づく操作性とに応じ、前記昇降手段の下端側の係止部の調節によって調節されうる高さ」について
請求項6には、「前記挿入装置(14)のスライド(16)が、操作者の高さと人間工学的な見地に基づく操作性とに応じ、前記昇降手段の下端側の係止部の調節によって調節されうる高さを有している」との記載がなされ、昇降手段の下端側の係止部を調節することで、挿入装置(14)のスライド(16)を、操作者の高さと人間工学的な見地に基づく操作性とに応じた高さに調節できることを特定したものであることを明確に把握することができる。
よって、請求項6の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである。

(7)請求項7の記載について
ア (記載19)「スライド(16)がレール手段(15)の底部に設けられたこと」について
請求項7には、「前記一対のクランプ(17、18)を有するスライド(16)が斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の底部に設けられた」と記載されている。そして、当該請求項7が引用する請求項1には、「フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入され、前記スライド(16)が、操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かす」との記載がある。これらを合わせみると、スライド(16)は、斜め上に延びる昇降手段のレール手段(15)の底部に、昇降移動自在に設けられたものであることを明確に把握することができる。また、レール手段は、その構造上何らかの立体形状であり、上部、底部、側部とみなされる部位を有することが明らかであるところ、レール手段(15)の「底部」とは、レール手段を斜め上に延びるように設置した際の、下方に向いた部位であることは明らかである。よって、上記(記載19)は、不明瞭な記載であるとはいえない。
よって、請求項7の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである。

(8)請求項8の記載について
ア (記載20)「引き外しボタン」について
請求項8には、「引き外しボタン(19)が前記横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるために斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の頂部側に設けられてなる」と記載されており、引き外しボタン(19)が、横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるためのものであって、斜め上に延びる昇降手段のレール手段(15)の頂部側に設けられていることを把握することができる。
そして、上記「(7)ア」で述べたとおり、レール手段の形状・構造を考慮すれば、レール手段(15)の「頂部側」とは、レール手段を斜め上に延びるように設置した際の、上方に向いた側の部位であることは明らかである。
また、本件特許明細書全体の記載を参酌すれば、「引き外しボタン」により移動させられるキャリッジには「引き外し自在のクランプ」が設けられていること、また、当該ボタンを押すことにより、挿入装置、延伸装置を動作させ、一対のキャリッジのクランプによる「引き外し」を含む、フラットワーク物品を移動させる一連の動作が実施されることが把握できる(【0017】)。たとえ、当該ボタン自体が何かを直接に引き外すものではないとしても、当該ボタンは、「引き外し」を含むこれら一連の動作を開始させるボタンとして理解することができるから、当該ボタンを「引き外しボタン」という名称にすることで、請求項8の記載が不明瞭になるとまではいえない。
よって、請求項8の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものといえる。

(9)請求項4?7における、他の請求項の引用形式について
請求項4には「・・・ことを特徴とする請求項1、2および3記載の装置。」という記載、請求項5には「・・・ことを特徴とする請求項1、2、3および4記載の装置。」という記載、請求項6には「・・・ことを特徴とする請求項1、2、3、4および5記載の装置。」、そして請求項7には「・・・ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5および6記載の装置。」という記載がなされている。
上記請求項4?7の記載は、当該請求項より先に記載された複数の請求項を「および」という接続語により列記する記載であるが、当該請求項より先に記載された複数の請求項を引用するにあたり、先に記載された複数の請求項を同時に引用するのでなく、列記された複数の請求項の中からいずれか一つを引用することを意図した記載であることは明らかであるから、上記請求項4?7の記載により、請求項4?7の記載全体が不明瞭になるとまではいえない。

(10)まとめ
以上、上記(1)?(9)で検討した記載事項は、いずれも不明瞭な記載とはいえず、請求項1?8の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものであるから、平成6年法律第116号附則第6条第2項の規定によりなお従前の例によるとされた同法による改正前の特許法第36条第5項及び第6項の規定する要件を満たしている。

2.無効理由2について
(1)請求項1に係る発明の実施について
上記1.(1)で述べたとおり、(記載1)?(記載10)はいずれも不明瞭な記載とはいえず、請求項1の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものであり、当業者は本件発明1を明確に把握することができる。
そして、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明並びに図1及び2の記載から十分に読み取ることができるものである。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度にその発明の目的・構成及び効果が記載されているといえる。

(2)請求項2?8に係る発明の実施について
上記1.(2)?(8)で述べたとおり、(記載11)?(記載20)はいずれも不明瞭な記載とはいえず、請求項2?8の記載は、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものであり、当業者は本件発明2?8を明確に把握することができる。
そして、本件発明2?8は、本件特許明細書の発明の詳細な説明並びに図1及び2の記載から十分に読み取ることができるものである。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明2?8の実施をすることができる程度にその発明の目的・構成及び効果が記載されているといえる。

(3)まとめ
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?8の実施をすることができる程度にその発明の目的・構成及び効果が記載されているといえるものであり、平成6年法律第116号附則第6条第2項の規定によりなお従前の例によるとされた同法による改正前の特許法第36条第4項の規定する要件を満たしている。

3.無効理由3について
(1)本件特許における優先権主張の効果の存否について
(1-1)請求人の主張
請求人は、本件特許明細書の請求項1に記載された、
・「フラットワーク物品を供給するための装置」
・「コンベヤベルトの正面側端部に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段」
・「前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」
・「フラットワーク物品の上端部が延伸され」
という事項は、本件特許の優先権主張の基礎となるデンマーク国特許出願0106/92号(以下「基礎出願」という。)の明細書に記載されていないため、本件発明1?8は、基礎出願の明細書に記載された発明とは認められず、当該基礎出願に基づくパリ条約の優先権の効果を享受することができないと主張する。
そこで、上記4つの事項が基礎出願の明細書に記載されたものであるかについて以下検討する。
なお、検討にあたっては、基礎出願の明細書の日本語翻訳文として請求人が提出した甲第25号証を参照することとする。

(1-2)「フラットワーク物品を供給するための装置」について
無効理由1において検討したとおり、本件特許明細書の請求項1に記載された「フラットワーク物品」は、前縁、後縁、側端及び角部を有し、延伸された状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような洗濯物を意味する。したがって、上記「フラットワーク物品を供給するための装置」は、「前縁、後縁、側端及び角部を有し、延伸された状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような洗濯物を供給するための装置」である。
一方、基礎出願の明細書に記載された発明は「洗濯物を挿入する装置」(甲第25号証第9頁「特許請求の範囲1」)である。
そして、基礎出願の明細書中には「洗濯物」に関して、「クリップの中に洗濯物の角を挟む。」(甲第25号証第1頁第5?6行)、「レールは運搬ベルト方向に移動自在であり、この移動は、運搬ベルト前面端で洗濯物の前端を保持するために利用される。」(甲第25号証第1頁第14?15行)、「本発明では、洗濯物の前端が運搬ベルトの前端で保持され送られるのではなく」(甲第25号証第2頁第4行)、「これらは、開かれる洗濯物の角を掴み、・・・洗濯物の上端を開くように設計されている。」(甲第25号証第3頁第16?17行)、「運搬ベルトに送られるのは洗濯物の最上端であり、洗濯物の残りの部分は、運搬ベルトに引っ張られて平らに開いた状態で走行端に送られるまでは、自由にぶら下がっている。下にぶら下がっている洗濯物にしわがある場合、しわを平らにし、同時にキャリッジを離間させ、洗濯物は、2つの拡張テープ12,13および12’,13’の間に側部から送られる。」(甲第25号証第3頁第18行?第4頁第1行)、「キャリッジ8,9の助けを借りて延伸される洗濯物」(甲第25号証第4頁第9?10行)、「オペレータは、洗濯物の角をつかんで」(甲第25号証第4頁第17行)及び「先の洗濯物の後端部が運搬ベルトの前面端を通過する前に」(甲第25号証第5頁第16行)等の記載があるから、基礎出願の明細書において、「洗濯物」は、前端、後端部、側部及び角を有し、平らに開いた状態となる形状であって、自由にぶら下がっているとしわがある場合があるようなものであることが理解できる。
そうしてみると、本件特許明細書の「フラットワーク物品」は、基礎出願の明細書の「洗濯物」と実質的に意味を同じくするものであるから、本件特許明細書に記載された「フラットワーク物品を供給するための装置」は、基礎出願の明細書に「洗濯物を挿入する装置」として記載されたものであるといえる。

(1-3)「コンベヤベルトの正面側端部に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段」及び「前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」について
本件特許明細書の請求項1には、「一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ」と記載されているので、「コンベヤベルトの正面側端部に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段」という記載及び「前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」という記載については合わせて検討する。
無効理由1において検討したとおり、請求項1に記載された「コンベヤベルトの正面側端部」とは、コンベヤベルトの操作者に面した側の端部あるいはコンベヤベルトの操作者から見た正面側の端部を意味し、「コンベヤベルトの正面側」にある「端部」を意味している。また、本件特許明細書の請求項1に記載された「前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」とは、コンベヤベルトの正面側にある端部におけるコンベヤベルトの幅方向の中央とほぼ対向する(延伸装置の)レール上の地点からみて当該レールの延長方向に距離を置いた位置である。
したがって、上記「一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ」とは、「一対のキャリッジには、当該キャリッジをコンベヤベルトの正面側にある端部におけるコンベヤベルトの幅方向の中央とほぼ対向するレール上の地点からみて当該レールの延長方向に距離を置いた位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられている」ことである。
一方、基礎出願の明細書の特許請求の範囲1には「レールのキャリッジ対は駆動手段を持ち、キャリッジ対のキャリッジを運搬ベルトの前面端のほぼ中心の点から延長線上にある位置へと離間させるよう設計されている」(甲第25号証第9頁第7?9行)と記載されている。「運搬ベルトの前面端」は、運搬ベルトの前面にある端部であり、オペレータが洗濯物を入れる側、すなわちオペレータに面した側の運搬ベルトの端部を意味し、上記「運搬ベルトの前面端のほぼ中心」は、その前面の端部においてある程度の幅を有する運搬ベルトの幅方向のほぼ中心を意味しているといえる。ところで、上記「運搬ベルトの前面端のほぼ中心の点から延長線上にある位置」はレール上を移動するキャリッジ対の位置を表現したものであるから、その位置は当然にレール上に存在することを考慮すれば、上記「運搬ベルトの前面端のほぼ中心の点」は、その前面の端部においてある程度の幅を有する運搬ベルトの幅方向のほぼ中心の点と対向するレール上の点を指すことは明らかであり、上記「(当該レール上の)点から延長線上にある位置」とは、当該レール上の点からみてレールの延長方向に距離を置いた位置であると理解できる。
そうしてみると、本件特許明細書の「コンベヤベルトの正面側端部」、「コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」は、それぞれ基礎出願の明細書の「運搬ベルトの前面端」、「運搬ベルトの前面端のほぼ中心の点から延長線上にある位置」と実質的に意味を同じくするものであり、また、本件特許明細書の「一対のキャリッジ」、「コンベヤベルト」が、それぞれ基礎出願の明細書の「キャリッジ対」、「運搬ベルト」に対応することは明らかである。
よって、本件特許明細書の「一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ」は、基礎出願の明細書の特許請求の範囲1の「レールのキャリッジ対は駆動手段を持ち、キャリッジ対のキャリッジを運搬ベルトの前面端のほぼ中心の点から延長線上にある位置へと離間させるよう設計されている」と実質的に同じ意味であり、基礎出願の明細書に記載されたものであるといえる。

(1-4)「フラットワーク物品の上端部が延伸され」
無効理由1において検討したとおり、請求項1に記載された「フラットワーク物品」の「延伸」とは、皺を生じて縮んでいる洗濯物をまっすぐにすることである。したがって、上記「フラットワーク物品の上端部が延伸され」とは、「皺を生じて縮んでいる洗濯物の上端部がまっすぐにされる」ことである。
一方、基礎出願の明細書の特許請求の範囲1には「洗濯物の上端がそこで広げられる」(甲第25号証第9頁第10行)と記載されている。
ここで、本件特許明細書の「フラットワーク物品(前縁、後縁、側端及び角部を有し、延伸された状態では平坦な形状であって、自由に垂れ下がった状態では皺を生じるような洗濯物)」にとって、皺を生じて縮んでいる洗濯物の上端部がまっすぐにされるとは、洗濯物の上端が皺のない状態に広げられることであることは明らかである。
このことは、請求人の「クランプで洗濯物の角をつかんだ後にクランプ対を互いに遠ざけるように移動することによる、洗濯物の上端に施す動作について、基礎明細書には、udspredes(甲第24号証の3頁21行)、udspredte(甲第24号証の3頁23行)、spredeoperationen(甲第24号証の4頁7行、甲第24号証の5頁32行)、spredeoperation(甲第24号証の5頁28行)、udstrakt(甲第24号証の7頁20行)、udstraekningen(甲第24号証の7頁23行)という語で表現されている。udspredはロープなどを張る、spredは広がる・広げる、udstraktは広げた・広がった(甲26号証の1)、udstraekningenは広さ・大きさの意である(甲第26号証の2)。すると、基礎明細書にクランプで洗濯物の角をつかんだ後にクランプ対を互いに遠ざけるように移動することによって、洗濯物の上端を張り広げる、すなわち洗濯物の上端を展開する(「展開」の意味については甲第1号証の1541頁を参照)という動作が記載されている。上記基礎明細書の記載からみて、この動作によって、洗濯物の皺や折り目がなくなる程度に平らになり、洗濯物が運搬ベルトに固定するために適した状態となることは、明らかである。」(審判請求書第40頁(1-7)欄参照)という説明とも合致するものである。
そうしてみると、本件特許明細書に記載された「フラットワーク物品の上端部が延伸され」は、基礎出願の明細書に「洗濯物の上端がそこで広げられる」として記載されたものといえる。

(1-5)小括
以上のとおり、本件特許明細書の請求項1に記載された、
・「フラットワーク物品を供給するための装置」
・「コンベヤベルトの正面側端部に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段」
・「前記コンベヤベルト正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置」
・「フラットワーク物品の上端部が延伸され」
という事項は、基礎出願の明細書に記載されたものである。
また、本件特許明細書の請求項1のその余の記載についても、基礎出願の明細書に記載されていないとする証拠はない。
したがって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?8は、基礎出願の明細書に記載された発明であるといえる。
よって、本件発明1?8は、基礎出願に基づくパリ条約の優先権の効果を享受するものであり、本件発明1?8についての新規性進歩性の判断基準日は本件特許出願の優先日(基礎出願の出願日)の1992年1月29日である。

(2)新規性及び進歩性の判断
(2-1)請求人の主張
請求人は、本件発明1?3及び5?7は、甲第18号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、本件発明1?8は、甲第18号証と、甲第20,22,23号証又は甲第20,22,23,29号証とに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、よって、特許法第123条第1項第2号に該当する、と主張する。
そこで、上記主張の基礎をなす甲第18号証について検討する。

(2-2)甲第18号証について
甲第18号証である欧州特許出願公開第0523872号明細書は、1993年1月20日に公開された特許文献であり、本件特許の優先日(1992年1月29日)より後に公知となった刊行物である。
よって、甲第18号証は、本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物ではないから、当該甲第18号証に基いて本件発明1?8の新規性進歩性を否定することはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1?8は、基礎出願に基づく優先権の効果を享受するものであり、甲第18号証は、本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物ではないから、本件発明1?3及び5?7は、甲第18号証に記載された発明であるとして、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるとすることはできず、また、本件発明1?8は、甲第18号証と、甲第20,22,23号証又は甲第20,22,23,29号証とに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとして、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
よって、本件発明1?8は、特許法第123条第1項第2号に該当するものではない。

4.無効理由4について
(1)本件特許によける優先権主張の効果の存否について
上記3.(1)において検討したとおり、本件発明1?8は、基礎出願に基づく優先権の効果を享受するものである。

(2)甲第22号証、甲第29?32号証の記載事項
(2-1)本件特許の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-211100号公報(甲第22号証)には、以下の事項が記載されている。
ア 「(1)矩形布片の1端部を保持して吊り下げる第1工程と、第1工程で吊り下げられた布片の最下端部を保持する第2工程と、第1及び第2工程で保持した保持点の一方を吊り上げ、他方の保持点に隣接する端部を保持する第3工程と、第1及び第2工程での保持点の一方を解放する第4工程とを具備したことを特徴とする布片の展開方法。
(2)矩形布片の1端部を保持して吊り下げながら搬送する第1チャックコンベアと、第1チャックコンベアで搬送された布片をしごきながらその最下端部を保持して搬送する第2チャックコンベアと、第1及び第2チャックコンベアで搬送された布片の一方の保持点を吊り上げ、他方の保持点に隣接する端部を保持する第3チャックコンベアと、第1及び第2チャックコンベアの一方の保持点を解放し、布片の相隣接する端部を保持して搬送する第4チャックコンベアとを具備したことを特徴とする布片展開装置。」(特許請求の範囲)
イ 「〔産業上の利用分野〕
本発明はランドリー機械のスプレッダ-、フィーダ等に適用される布片の展開方法とその展開装置に関する。」(第1頁右欄第7?10行)
ウ 「第1図および第2図は本発明に係る布片展開装置の一実施例を示すもので、第1図は矩形布片を長辺方向に展開する場合の構成を示したものであり、第2図は矩形布片を短辺方向に展開する場合の構成を示したものである。なお、第2図には第1図と構成の異なる部分のみが図示されており、共通部分は第1図をもって説明する。
第1図において、符号100は図示しない乾燥機より排出される矩形リネンSを本装置へ搬送するベルトコンベアである。
第1図中Aは第1チャックコンベアで、作業者がベルトコンベア100上に運ばれてくるリネンSの任意の1端を把まみ上げ、チャック114に把持させ、同チャック114はリネンSを吊り下げながら搬送する第1チャックコンベアであり、リネンSを吊り下げながら第2チャックコンベアBへ搬送するもので、リネンSを保持したチャック114は駆動装置115,129によりレール150に沿って移動するようになっている。」(第4頁左上欄第5行?右上欄第5行)
エ 「第2チャックコンベアBは、第1チャックコンベアAで搬送されたリネンSをしごき装置117でしごきながら、その最下端部を光電センサ等118にて検出し、チャック120でリネンSの最下端部を保持するもので、リネンSを保持したチャック120はチャック114によりリネンSを介して引張られ、第3及び第4チャックコンベアC,Dへ続くレール151に沿って移動するようになっている。」(第4頁右上欄第6?14行)
オ 「なお、第1チャックコンベアAのチャック114は第3チャックコンベアCの手前でほぼ垂直に上昇する。」(第4頁右上欄第14?16行)
カ 「第3チャックコンベアCは、第1及び第2チャックコンベアA,Bで搬送されたリネンSをしごき装置121でしごきながら、リネンSの端部(チャック120の保持点と隣接する端部)を光電センサ等122にて検出し、その端部をチャック124で保持するもので、リネンSを保持したチャック124は駆動装置125により第4チャックコンベアD又は第5チャックコンベアEへ搬送されるようになっている。」(第4頁右上欄第17行?左下欄第6行)
キ 「第4及び第5チャックコンベアD,Eは、第3チャックコンベアCよりリネンSを受け取り、リネンSの相隣接する端部を図示の如くチャックで保持して駆動装置126により次工程(アイロン掛け工程)へ搬送するもので、第1図の場合はリネンSの長辺側を展開する場合なのでチャック120と124とでリネンSを保持する。また、第2図の場合はリネンSの短辺側を展開する場合なのでチャック114と124とでリネンSを保持する。」(第4頁左下欄第6?15行)
ク 「第3図(a)(b)はチャック114,120,124の一例を示すもので、(a)は正面図を示し、(b)はその側面を断面図で示したものである。同図においてチャック114,120,124は、スプリング135のばね力によりピン134を常時下方へ押し下げることによってリネンSをレバー133,133で挾持する構造となっている。」(第4頁右下欄第1?7行)
ケ 「そしてレバー133,133を図中矢印方向へ外力によって押し上げると、レバー133が二点鎖線で示すようにピン134を中心に回動してリネンSの保持が解放される構造となっている。」(第4頁右下欄第7?11行)
コ 「また、これらのチャック114,120,124はローラ136がガイドレール139内を走行することによってガイドレール139に沿って移動し、その駆動力は図示の如くチェーン138によって伝達される。」(第4頁右下欄第11?15行)
サ 「ベルトコンベア100上または任意に山積みされたリネン塊より1枚のリネンSの任意の1端(ここでは第5図aとする)を作業者がつまみ上げ、第6図のようにチャック114にリネンSの角aを保持させる。」(第5頁左上欄第14?18行)
シ 「第2チャックコンベアBでは第7図のようにリネンSの下半分をしごき装置117でしごきながらその最下端部(角c)をセンサ118にて検出し、チャック120でリネンSの角cを保持する。リネンSの角cを保持したチャック120は、駆動装置129によって移動するチャック114によりリネンSを介して引張られ、レール151に沿って移動する。そしてチャック114は第3チャックコンベアCの手前でほぼ垂直に上昇し、第8図に示すようにリネンSの角a,d間の短辺部分をしごき装置121に導入する。」(第5頁右上欄第3?13行)
ス 「チャック114が垂直に上昇するに従ってリネンSの角dは第9図のようにチャック114の下方に垂れ下がることになり、この角dをセンサ121で検出して第3チャックコンベアCのチャック124で保持する。そして、リネンSの角aを第1チャックコンベアAのチャック114で、角cを第2チャックコンベアのチャック120で、角dを第3チャックコンベアCのチャック124で保持した状態で駆動装置129によってチャック114を牽引し、同時にリネンSを介してチャック120,124も牽引する。」(第5頁右上欄第14行?左下欄第5行)
セ 「次にこの状態からチャック120と124のみを第4チャックコンベアDへ移し、チャック114の保持のみを解放して搬送すれば、リネンSを第10図のように長辺方向に展開した状態で次工程(アイロン掛け工程)へ搬送することができる。」(第5頁左下欄第5?10行)
ソ 「また、第9図の状態からチャック114と124のみを第5チャックコンベアEへ移し、チャック120の保持のみを解放して搬送すれば、リネンSを第11図のように短辺方向に展開した状態で次工程(アイロン掛け工程)へ搬送することができる。」(第5頁左下欄第10?15行)
タ 「〔発明の効果〕
以上のように本発明によれば、矩形布の任意の1つの角をチャックに把持させれば矩形布を自動的に展開し、布片の相隣接する角を保持してコンベアで搬送することができるので、従来5?6人の人手に頼っていた乾燥工程とアイロン掛け工程間の作業を半数以下の作業者で行なうことができ、ランドリー工場の省人化を達成できると共に、アイロン装置等から離れた場所で作業することが出来るので労働環境の改善を図ることができる。」(第5頁右下欄第7?17行)

これらア?タの記載事項を総合すると、甲第22号証には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「ランドリー機械のスプレッダ-、フィーダ等に適用され、矩形リネンSを展開した状態で次工程であるアイロン掛け工程へ搬送することができる布片展開装置であって、
布片展開装置は、矩形リネンSの1端部を保持して吊り下げながら搬送する第1チャックコンベアと、第1チャックコンベアで搬送された矩形リネンSをしごきながらその最下端部を保持して搬送する第2チャックコンベアと、第1及び第2チャックコンベアで搬送された矩形リネンSの一方の保持点を吊り上げ、他方の保持点に隣接する端部を保持する第3チャックコンベアと、第1及び第2チャックコンベアの一方の保持点を解放し、矩形リネンSの相隣接する端部を保持して搬送する第4チャックコンベアとを具備しており、
第1チャックコンベアAは、作業者が矩形リネンSの任意の1端を把まみ上げ、第1チャックコンベアAのチャック114に矩形リネンSの角aを把持させ、該チャック114は前記矩形リネンSを吊り下げながら駆動装置115,129によりレール150に沿って移動して、第2チャックコンベアBへ搬送し、第1チャックコンベアAのチャック114は第3チャックコンベアCの手前でほぼ垂直に上昇し、矩形リネンSの角a,d間の短辺部分をしごき装置121に導入するものであり、
第2チャックコンベアBは、第1チャックコンベアAで搬送された矩形リネンSをしごき装置117でしごきながら、その最下端部の角cを光電センサ等118にて検出し、第2チャックコンベアBのチャック120で矩形リネンSの最下端部の角cを保持し、矩形リネンSの角cを保持したチャック120は、駆動装置129によって移動するチャック114により矩形リネンSを介して引張られ、第3及び第4チャックコンベアC,Dへ続くレール151に沿って移動するようになっており、
第3チャックコンベアCは、第1及び第2チャックコンベアA,Bで搬送された矩形リネンSをしごき装置121でしごきながら、矩形リネンSの第2チャックコンベアBのチャック120の保持点と隣接する端部の角dを光電センサ等122にて検出し、その端部の角dを第3チャックコンベアCのチャック124で保持し、矩形リネンSの角dを保持したチャック124は駆動装置125により第4チャックコンベアDへ搬送されるようになっており、
矩形リネンSの角aを第1チャックコンベアのチャック114で、角cを第2チャックコンベアのチャック120で、角dを第3チャックコンベアCのチャック124で保持した状態で駆動装置129によってチャック114を牽引し、同時に矩形リネンSを介してチャック120,124を牽引し、この状態からチャック120と124のみを第4チャックコンベアDへ移し、チャック114の保持のみを解放し、
第4チャックコンベアDは、第3チャックコンベアCより矩形リネンSを受け取り、該矩形リネンSの相隣接する長辺側の端部の角cとdをチャック120と124とで保持し、矩形リネンSを長辺方向に展開した状態で駆動装置126により次工程であるアイロン掛け工程へ搬送するものであり、
チャック114,120,124は、矩形リネンSをレバー133,133で挾持又は解放する構造であって、これらのチャック114,120,124はチェーン138の駆動力によってガイドレール139に沿って移動する、
布片展開装置。」(以下「甲22発明」という。)

(2-2)本件特許の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第4967495号明細書(甲第29号証)には、以下の事項が記載されている。
ア 「TECHNICAL FIELD
The technical field of the inventions is laundry feeding machinery and handling machinery.」(第1欄第3?5行)
(「技術分野
本発明の技術分野は,洗濯物の供給機械および取扱機械である。」(甲第29号証の日本語翻訳文第2頁第3?4行))
イ 「FIG. 13 is a similar view to FIG. 5 with a sheet clamping mechanism applied;
FIGS. 14 and 15 show front views of the mechanism with different arrangements of clamping mechanism applied;」(第3欄第29?33行)
(「第13図は、シーツクランプ機構が加わった第5図と同様の図である。
第14図及び第15図は、異なる構成のクランプ機構を備えた供給機構の正面図を示す。」(甲第29号証の日本語翻訳文第4頁第29?31行))
ウ 「A modification to the above described feed mechanism is illustrated in FIG. 13 of the drawings in which a pair of arms 90 are mounted at the top of the mechanism on the side members 11, 12 towards the rear thereof and extend forwardly over the top of the enclosure. The arms carry a guide way 91 on which one or more pairs of ram operated sheet clamps 92 are movably mounted on diabolo wheels 133 engaging the guideway for movement by clamp moving means 135 and extending down the front wall of the enclosure. The arrangement of supporting and operation of the sheet clamps may be, for example, as described and illustrated in U.S. Pat. No. 4,378,645, issued Apr. 5, 1983. The clamps may move from a receiving station in which they lie adjacent to one another to receive the corners of a sheet placed by an operator and then move automatically apart to spread the sheet along the front of the enclosure adjacent the closure member 21. When they reach the spread position, the clamps are arranged to open automatically allowing the sheet to be drawn onto the closure member by the suction in the ports of the closure member as described earlier. Operation of the apparatus then continues as before. The clamps then move together to receive the next sheet. FIG. 14 illustrates a pair of such clamps applied to a feed mechanism and FIG. 15 illustrates two pairs of such clamps 92 applied to the feed mechanism to feed two separate lanes of the feed mechanism. The arm mounting 90 for the clamps 92 is arranged to allow the clamps to be pivoted upwardly away from the front of the enclosure when not required.」(第8欄第44行?第9欄第6行)
(「上記供給機構の変形例を第13図に示す。第13図において、一対のアーム90が、供給機構の頂部において側部材11、12の後部寄りに取り付けられ、エンクロージャの頂部上方を前方に向け延びている。アームは、案内路91を支持し、その案内路91上で、1つまたは複数のラム作動シーツクランプ92が、エンクロージャの前壁を下に伸びるクランプ移動手段135によって、移動用案内路に係合するディアボロ状の輪133に移動自在に取り付けられている。シーツクランプの支持および動作の構成は、例えば、1983年4月5日付で発行された米国特許4,378,645号に記載および図示されたものと同様とすることができる。クランプは、クランプが相互に隣接して配置された受取ステーションから移動して、操作者によって載せられたシーツの隅を受け取り、それから、自動的に離間するように移動して、閉鎖部材21に隣接したエンクロージャの前部に沿ってシーツを拡開することができる。クランプは、拡開位置に到達すると自動的に開いて、シーツが前述のように閉鎖部材のポートにおける吸引力によって閉鎖部材に引き付けられるのを可能にするように構成される。それ以後の装置の動作は前述と同様である。その後、クランプは次のシーツを受け取るように一緒に移動する。第14図は供給装置に適用される一対のこのようなクランプを示し、第15図は供給機構の2つの別のレーンに供給する供給機構に適用される二対のこのようなクランプ92を示す。クランプ92のためのアーム取付台90は、不要時にクランプをエンクロージャの前部から離れるように上方に回動させることを可能にするように構成される。」(甲第29号証の日本語翻訳文第11頁第2?21行))

(2-3)本件特許の優先日前に頒布された刊行物である、平成22年(ワ)第17810号特許権侵害差止等請求事件において請求人が乙第47号証として提出した、日本クリーニング新聞 第913号 1991年12月23日発行、5,22頁(甲第30号証の1)には、以下の事項が記載されている。
ア 「大和機材(株)は米国ブラウン社製のスプレッダーフィーダー機『MP4SSF』を展示。1時間当たりの生産性も高く、シーツの他、小物類も処理が可能な万能機」(22面右下の写真の説明文)

(2-4)平成22年(ワ)第17810号特許権侵害差止等請求事件において請求人が乙第48号証として提出した、BRAUN社製ALPHA1200Spreader/FeederシリーズMP4SSF型装置カタログ(甲第30号証の2)には、以下の事項が記載されている。
ア カタログ第3頁下の仕様に関する「表」

(甲第30号証の2の日本語翻訳文第3頁下の仕様に関する「表」)


(2-5)平成22年(ワ)第17810号特許権侵害差止等請求事件において請求人が乙第46号証として提出した報告書、1,2頁(甲第30号証の3)には、以下の事項が記載されている。
ア 「1.ブラウン社製 スプレッダーフィーダー『MP4SSF』
日本クリーニング新聞第913号(1991(平成3)年12月23日)の22面には、1991年12月13日から15日まで名古屋において開催された展示会に、米国ブラウン社製スプレッダーファイーダーMP4SSFが展示されていたことが掲載されている(乙47)。
ブラウン社スプレッダーファイーダーMP4SSFは、現在でも同型機が販売されており、そのカタログをウェブサイトで入手することができる(乙48)。」(第1頁)
イ 「2.特許製品と新証拠との対比(被告作成図面)
ブラウン社スプレッダーファイーダーMP4SSFにおいて、投入クランプが『レール手段に沿ってスライド昇降』していることは明らかである。」(第2頁)
ウ 【図-2(乙48を図面化したもの)】として、4本の昇降レールが装置中央上方の一点で交わるように斜めに配設され、昇降クランプはそれぞれの昇降レールを上昇して、展開レール中央のキャリッジと対向する位置に移動する動作を示した図が記載されている。


(2-6)本件特許の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第4106277号明細書(甲第31号証)には、以下の事項が記載されている。
ア 「The present invention is directed to a novel and improved spreading apparatus for flatwork, such as bed sheets, which obviates the need for transfer devices at the inlet side of the flatwork-spreading clamps. In accordance with the preferred embodiment of this invention, three pairs of such clamps are provided, one pair for each operator station. Each operator inserts the adjacent corners of the leading (upper) edge of a piece of flatwork at his or her station into the pair of clamps located there. At each end station that station's clamps move in unison to the middle of the apparatus before being spread apart to the left and right, respectively. At the middle station this preliminary movement of the middle pair of clamps is not necessary because their normal position is at the middle of the apparatus. At each of the three stations, the respective operator inserts a flatwork piece into the corresponding pair of clamps, and these clamps continue to hold that flatwork piece until its leading (upper) edge has been spread and the flatwork piece is ready to be blown onto the conveyor which will carry it to the ironer or other processing equipment. There is no transfer operation between the operator and the flatwork-spreading clamps, and this is advantageous from the standpoint of simplicity, positiveness of operation and operator safety. 」(第1欄第35?59行)
(「本発明は、平たい布製品を敷設するクランプの入口側で移送装置の必要性を除去する、ベッドシーツのような平たい布製品用の新規な、改良された敷設装置を対象とする。本発明の好ましい実施態様によれば、3対のかかるクランプが、各操作者の部署に1対で、提供される。各操作者は、操作者の部署で平たい布製品の部片の前(上)縁の隣接角部を、そこに位置するクランプ対に挿入する。各端部部署で、その部署のクランプは、それぞれ左右に広げて敷設される前に装置の中央に一斉に移動する。中央部署では、中央クランプ対のこの予備移動は、その通常位置が、装置の中央にあるので必要でない。3部署の各々で、それぞれの操作者は、平たい布製品の部片を対応するクランプ対に挿入し、かつこれらのクランプは、その前(上)縁が敷設され、かつ平たい布製品の部片が、それをアイロナ又は他の処理装置に搬送するコンベヤに吹き付けられる準備ができるまで、その平たい布製品の部片を保持し続ける。操作者と、平たい布製品を敷設するクランプとの間には、移送操作はなく、かつこのことは、操作の簡易性、積極性及び操作者の安全の観点から好適である。」(甲第31号証の日本語翻訳文第2頁第2?14行))
イ 「FIG. 13 is a front elevational view showing a sheet inserted in the middle pair of clamps;
FIG. 14 is a front elevational view showing the middle clamps spread apart;」(第2欄第47?50行)
(「図13は、中央クランプ対に挿入されたシーツを示す正面図であり、
図14は、広げて敷設した中央クランプを示す正面図であり、」(甲第31号証の日本語翻訳文第3頁第12?13行))
ウ 「FIG. 16 is a front elevational view showing a flatwork piece inserted in the left end pair of clamps while the preceding flatwork piece is still being fed onto the conveyor;
FIG. 17 is a view similar to FIG. 16 after the preceding flatwork piece has been completely fed onto the conveyor and before the left end pair of clamps are moved over to the middle of the apparatus;
FIG. 18 is a front elevational view showing the left end clamps moved over to the middle of the apparatus;
FIG. 19 is a front elevational view showing the left end clamps spread apart;
FIG. 20 is a front elevational view showing a flatwork piece inserted in the right end clamps before these clamps are moved to the middle of the apparatus prior to spreading the flatwork piece; 」(第2欄第59行?第3欄2行)
(「図16は、先行する平たい布製品の部片が、なおもコンベヤに供給されている間に、左端クランプ対内に挿入された平たい布製品の部片を示す正面図であり、
図17は、先行する平たい布製品の部片が、完全にコンベヤに供給された後、かつ左端クランプ対が、装置の中央に移動する前の図16に類似した図である。
図18は、装置の中央に移動する左端クランプを示す正面図であり、
図19は、広げて敷設された左端クランプを示す正面図であり、
図20は、平たい布製品の部片の敷設に先立ち、右端クランプが装置の中央に移動する前に、右端クランプ内に挿入された平たい布製品の部片を示す正面図であり、」(甲第31号証の日本語翻訳文第3頁第16?23行))
エ 「The apparatus has three pairs of sheet clamps at the entry side, each pair served by an individual machine operator whose job is to insert the adjacent corners on the upper end of a sheet into her pair of clamps, after which the apparatus will spread these clamps apart laterally from the middle of the apparatus to the left and right respectively, to spread the upper (leading) end of this sheet, as explained hereinafter. The three pairs of clamps are operated one at a time and they act on different sheets. Normally, the three pairs of clamps are positioned at the middle, left end and right end of the apparatus. The middle clamps are designated M-1 and M-2 in FIG. 1, the left end clamps are designated L-1 and L-2, and the right end clamps are designated R-1 and R-2. 」(第5欄第35?51行)
(「装置は、入側に3対のシーツクランプを有し、各対は、個別の機械操作者が対応し、機械操作者の任務は、シーツの上端の隣接した角部を彼女のクランプ対に挿入することであり、その後装置は、以下で説明するように、これらクランプを装置の中央から横方向にそれぞれ左右に広げて敷設し、このシーツの上(前)端を敷設する。3対のクランプは、1つずつ操作され、かつ異なるシーツに働く。通常、3対のクランプは、装置の中央、左端及び右端に位置決めされる。中央クランプは、図1でM-1及びM2と指し示され、左端クランプは、L-1及びL-2と指し示され、かつ右端クランプは、R-1及びR-2と指し示される。」(甲第31号証の日本語翻訳文第6頁第24行?第7頁第1行))

(2-7)本件特許の優先日前に頒布された刊行物である実願昭63-32599号(実開平1-138398号)のマイクロフィルム(甲第32号証)には、以下の事項が記載されている。
ア 「ガイドレールに1対1組のシーツ保持具を1組又は2組往復移動可能に装備し、その保持具に駆動装置を駆動力伝達機構を介して各組毎に連係し、前記1対のシーツ保持具を、待機位置から所定位置に移動させ、その所定位置からそれぞれ逆方向に移動させてシーツを拡げ、その後待機位置に移動させるシーツ拡げ機において、前記駆動力伝達機構と1対の保持具の内の一方の保持具とを固定し、その1対の保持具に、保持具が待機位置から所定位置まで移動する間相互に係合する係合具を、それぞれ設け、前記駆動力伝達機構に、所定位置で前記係合具の係合状態を解除し、駆動力伝達機構が固定されていない他方の保持具に当接してその他方の保持具を前記一方の保持具の移動方向と逆方向に移動させる係合状態解除具を、固定したことを特徴とするシーツ拡げ機。」(実用新案登録請求の範囲)

(3)本件発明1と甲22発明との対比
本件発明1と甲22発明とを対比する。
甲22発明の「矩形リネンS」は、本件発明1の「フラットワーク物品」に相当し、甲22発明の「矩形リネンSを」「次工程であるアイロン掛け工程へ搬送することができる布片展開装置」は、本件発明1の「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置」に相当する。
甲22発明の「第1チャックコンベア」は、作業者が矩形リネンSの任意の1端を把まみ上げ、第1チャックコンベアAのチャック114に矩形リネンSの角aを把持させ、該チャック114は前記矩形リネンSを吊り下げながら駆動装置115,129によりレール150に沿って移動して、第2チャックコンベアBへ搬送するのものであるから、本件発明1の「挿入装置」に相当する。
甲22発明の「矩形リネンS」の「端部を保持して吊り下げながら搬送する」「チャック114」は、本件発明1の「フラットワーク物品の上端部を」「移動するための手段」であることに相当する。
甲22発明の「第2チャックコンベアBのチャック120」及び「第3チャックコンベアCのチャック124」は、第1チャックコンベアAのチャック114から搬送された矩形リネンSの角c及びdを保持して搬送するものであるから、本件発明1の「一対のキャリッジ」に相当するといえ、甲22発明の「第2チャックコンベアBのチャック120」及び「第3チャックコンベアCのチャック124」の「レバー133,133」は、矩形リネンSを挟持し又は解放し得る構造であるから、本件発明1の「一対のキャリッジ」に設けられた「引き外し自在のクランプ」に相当する。よって、甲22発明の「矩形リネンSの角c」及び「矩形リネンSの角d」が「第1チャックコンベアAで搬送され」て「第2チャックコンベアBのチャック120」及び「第3チャックコンベアCのチャック124で保持」されることは、本件発明1の「前記フラットワーク物品の隅部が」「挿入装置によって該クランプに挿入され」ることに相当する。
甲22発明の「第2チャックコンベアBのチャック120」が「駆動装置129によって移動するチャック114により矩形リネンSを介して引張られ」ること、「第3チャックコンベアC」の「チャック124は駆動装置125により」「搬送されるようになって」いること、及び「第4チャックコンベアD」が「駆動装置126により次工程であるアイロン掛け工程へ搬送するもの」であることは、本件発明1の「一対のキャリッジには、」「駆動手段が設けられ」ていることに相当する。
甲22発明の「第1チャックコンベアA」が「矩形リネンSの角d」を「第3チャックコンベアCのチャック124」に「保持」させるために「第1チャックコンベアAのチャック114を第3チャックコンベアCの手前でほぼ垂直に上昇」させることは、本件発明1の「挿入装置が」「フラットワーク物品を」「キャリッジの方へ持ち上げる」「手段からな」ることに相当する。(なお、上記の「フラットワーク物品をキャリッジの方へ持ち上げる手段」を以下では「昇手段」という。)
甲22発明の「第2チャックコンベアBのチャック120」が「第1チャックコンベアAで搬送された矩形リネンSをしごき装置117でしごきながら、その最下端部の角cを光電センサ等118にて検出し、チャック120で矩形リネンSの最下端部の角cを保持」すること、及び「第3チャックコンベアCのチャック124」が「第1及び第2チャックコンベアA,Bで搬送された矩形リネンSをしごき装置121でしごきながら、矩形リネンSのチャック120の保持点と隣接する端部の角dを光電センサ等122にて検出し、その端部の角dを第3チャックコンベアCのチャック124で保持」することは、本件発明1の「一対のキャリッジ」が、「昇手段」「と対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適して」いることに相当する。
甲22発明の「第1チャックコンベアA」の「レール150に沿って移動」する「チャック114」の「レバー133,133」に「作業者が矩形リネンSの任意の1端を把まみ上げ、」「矩形リネンSの角aを把持させ」ることは、本件発明1の「フラットワーク物品」が「昇手段」の「レール手段に沿って」「移動自在のスライドの」「クランプに挿入され」ることに相当する。
甲22発明の「矩形リネンS」が「レール150に沿って移動」する「チャック114」の「レバー133,133」に挟持され、該「チャック114」が「第3チャックコンベアCの手前でほぼ垂直に上昇」して、「第3チャックコンベアCのチャック124」に「矩形リネンSの角d」を保持させるように動いていることは、本件発明1の「フラットワーク物品」が「昇手段」の「レール手段(15)に沿って」「移動自在のスライド(16)の」「クランプ(17、18)に挿入され、前記スライドが」「キャリッジ」「に対してフラットワーク物品を上向きに動かす」ことに相当する。
甲22発明の装置のうち、「第2チャックコンベアB」、「第3チャックコンベアC」及び「第4チャックコンベアD」からなる部分は、第2チャックコンベアBのチャック120で矩形リネンSの角cを保持し、第3チャックコンベアCのチャック124で矩形リネンSの角dを保持し、この状態から第2チャックコンベアBのチャック120と第3チャックコンベアCのチャック124を第4チャックコンベアDへ移して、第4チャックコンベアDで矩形リネンSを角c,dを長辺方向に展開した状態にしている。そして、チャック120,124はレバー133で矩形リネンSを挟持し、レール151に沿って移動する。よって、甲22発明の「レバー133,133」を備えた「チャック120,124」が移動する「レール151」を含み、「矩形リネンS」の「角c,d」を保持して「長辺方向に展開した状態」にする「第2チャックコンベアB」、「第3チャックコンベアC」及び「第4チャックコンベアD」からなる部分は、本件発明1の「クランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールから」なり「クランプ」が「フラットワーク物品の上端部」を「延伸」する「延伸装置」に相当する。
甲22発明の「第4チャックコンベアDは、第3チャックコンベアCより矩形リネンSを受け取り、」「次工程であるアイロン掛け工程へ搬送するもの」であることは、本件発明1の「フラットワーク物品が、」「延伸装置から移動することができ」るものであることに相当する。
また、甲22発明の装置に具備される「第1チャックコンベア」ないし「第4チャックコンベア」は、本件発明1の装置の「コンベヤベルト」とは、コンベヤである限りにおいて一致する。

よって、本件発明1と甲22発明とは、
「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給する
ための装置であって、
該装置はコンベヤからなり、
フラットワーク物品が、引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、
前記フラットワーク物品の隅部が挿入装置によって該クランプに挿入され、
前記一対のキャリッジには、駆動手段が設けられ、
前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、
フラットワーク物品の上端部を移動するための手段が設けられた、
洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において、
挿入装置が昇手段であって、フラットワーク物品を一対のキャリッジの方へ持ち上げる昇手段からなり、
前記一対のキャリッジが、昇手段と対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、
フラットワーク物品が前記昇手段のレール手段に沿って移動自在のスライドのクランプに挿入され、前記スライドが、前記一対のキャリッジに対してフラットワーク物品を動かす、装置。」
である点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

(相違点1)
コンベヤに関して、本件発明1においては、コンベヤベルトであるのに対して、甲22発明においては、チャックコンベアである点。

(相違点2)
延伸装置に関して、本件発明1においては、レールがコンベヤベルトの正面側端部において、コンベヤベルトの長手方向を横切る配置にあり、フラットワーク物品をコンベヤベルトに移動させるものであるのに対して、甲22発明においては、上記相違点1から、そもそも、「コンベヤベルト(の正面側端部の中央)」に対応する構成が想定され得ないから、第2チャックコンベアB、第3チャックコンベアC及び第4チャックコンベアDのレール151はそのような配置にはなく、次工程であるアイロン掛け工程へ搬送するに際して、矩形リネンSをどこに移動させているのか明らかでない点。

(相違点3)
挿入装置に関して、本件発明1においては、コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ、操作者によって制御されるもので、いくつかあるのに対して、甲22発明においては、上記相違点1から、そもそも、「コンベヤベルト」に対応する構成が想定され得ないから、そのような箇所に設けられているものでなく、操作者によって動かされているかは明らかでなく、また、ひとつしかない点。

(相違点4)
一対のキャリッジの駆動手段に関して、本件発明1においては、当該キャリッジをコンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適したものであるのに対して、
甲22発明においては、上記相違点1から、そもそも、「コンベヤベルト(の正面側端部の中央)」に対応する構成が想定され得ないから、そのようなものでない点。

(相違点5)
フラットワーク物品の上端部が延伸されたときの一対のキャリッジのクランプの位置に関して、本件発明1においては、コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置にあり、クランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられるのに対して、甲22発明においては、矩形リネンSを展開した状態に保持するチャック120と124の位置は、そのような位置になく、また、上記相違点1から、そもそも、「コンベヤベルト(の正面側端部の中央)」に対応する構成が想定され得ないから、チャック120と124相互の位置関係も、そのような位置関係にあるとはいえない点。

(相違点6)
フラットワーク物品の上端部を移動するための手段に関して、本件発明1においては、フラットワーク物品をコンベヤベルトの正面側端部に移動するものであるのに対して、甲22発明においては、上記相違点1から、そもそも、「コンベヤベルト(の正面側端部の中央)」に対応する構成が想定され得ないから、そのようなものでない点。

(相違点7)
昇手段に関して、本件発明1においては、操作位置から昇降作動し、互いに隣接して設けられている複数の昇降手段からなるのに対して、甲22発明においては、操作位置から昇降作動するかは明らかでなく、ひとつしかない点。

(相違点8)
一対のキャリッジと昇手段とが対向する位置に関して、本件発明1においては、「(複数の)昇(降)手段の少なくともいくつかについて」「コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれて」いるのに対して、甲22発明においては、上記相違点1から、そもそも、「コンベヤベルト(の正面側端部の中央)」に対応する構成が想定され得ないから、第1チャックコンベアAのチャック114が第2チャックコンベアBのチャック120又は第3チャックコンベアCのチャック124に近づいたときの位置は「『コンベヤベルトの正面側端部の中央』と対向する位置からずれて」いるとはいえない点。

(相違点9)
レール手段に沿って移動自在のスライドに関して、本件発明1においては、その移動が「昇降」自在であり、スライドのクランプは「一対」あるのに対して、甲22発明においては、第3チャックコンベアCの手前でほぼ垂直に上昇するものであるが、降下することは明らかでなく、また、矩形リネンSの1端部しか保持していない点。

(相違点10)
一対のキャリッジに関して、本件発明1においては、操作位置より実質的に高い位置に設けられているのに対して、甲22発明においては、第3及び第4チャックコンベアC,Dへ続くレール151に沿って移動するチャック120,124は、そのような位置に設けられているか明らかでない点。

(4)判断
ア 相違点8について
一対のキャリッジと昇降手段とが対向する位置に関して、甲第29、31及び32号証に記載された装置は、いずれも本件発明1における昇降手段に相当する構成を備えていない。よって、甲第29、31及び32号証は、本件発明1の上記相違点8に係る構成を開示したものではない。
また、甲第30号証の1には、米国ブラウン社製のスプレッダーフィーダー機「MP4SSF」が展示されたことについて記載されているが、その具体的な装置構成を説明する記載はない。よって、甲第30号証の1は、本件発明1の上記相違点8に係る構成を開示したものではない。
甲第30号証の2には、ALPHA1200の写真が掲載されているが、その写真に掲載されたALPHA1200のModel NumberがMP4SSFであるかは不明であり、仮に、MP4SSFであったとしても、その具体的な装置構成は把握できない。よって、甲第30の号証の2は、本件発明1の上記相違点8に係る構成を開示したものではない。
甲第30号証の3には、甲第30号証の2のカタログに掲載された写真をもとに装置を図面化した【図-2(乙48を図面化したもの)】が記載されているものの、カタログ掲載写真をそのように図面化できる根拠は何ら明らかにされていない。そして、たとえ甲第30号証の1に記載された米国ブラウン社製のスプレッダーフィーダー機「MP4SSF」の装置構成が、甲第30号証の3の【図-2(乙48を図面化したもの)】に記載されたとおりのものであったとしても、当該装置構成は、4本の昇降レールが装置中央上方の一点で交わるように斜めに配設され、昇降クランプはそれぞれの昇降レールを上昇して、展開レール中央のキャリッジと対向する位置に移動するものであり、本件発明1の「(複数の)昇降手段の少なくともいくつかについて」「コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれている」構成とは相違するものである。よって、甲第30号証の3は、本件発明1の上記相違点8に係る構成を開示したものではない。
したがって、甲第29?32号証のいずれにも、本件発明1の上記相違点8に係る構成は開示されていない。
また、甲22発明は、そもそも、「コンベヤベルト(の正面側端部の中央)」に対応する構成が想定され得ないから、甲22発明に甲第29?32号証に記載された構成は適用できないし、適用しようとする動機づけを見出すこともできない。
そして、他に本件発明1の上記相違点8に係る構成を容易になし得たとする証拠はない。
したがって、甲22発明において、本件発明1の上記相違点8に係る構成とすることが容易であるということはできない。
そして、本件発明1は、上記相違点8に係る構成により、コンベヤベルトの正面側端部の中央で待機する一対のキャリッジに向かって移動することはないため、複数の挿入手段のスライドの衝突が発生することがないという顕著な効果を奏するものと認められる(本件特許明細書【0007】、【0017】の記載等参照)。
イ 相違点7及び9について
上記のとおり甲第29?32号証はいずれも、本件発明1の昇降手段の構成を開示するものではない。一方、上記相違点7及び9は、当該昇降手段に係る構成を相違点とするものである。したがって、甲第29?32号証のいずれにも、本件発明1の上記相違点7及び9に係る構成は開示されていない。また、他に本件発明1の上記相違点7及び9に係る構成を容易になし得たとする証拠はない。
したがって、甲22発明において、本件発明1の上記相違点7及び9に係る構成とすることが容易であるということはできない。
ウ 相違点2?6について
上記のとおり相違点2?6は、「コンベヤベルト(の正面側端部の中央)」との位置関係を相違点に含むものであるが、甲22発明は、そもそも、「コンベヤベルト(の正面側端部の中央)」に対応する構成が想定され得ない。したがって、甲22発明に甲第29?32号証に記載された構成は適用できないし、適用しようとする動機づけを見出すこともできない。また、他に本件発明1の上記相違点2?6に係る構成を容易になし得たとする証拠はない。
したがって、甲22発明において、本件発明1の上記相違点2?6に係る構成とすることが容易であるということはできない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、その余の相違点について検討するまでもなく、甲第22号証に記載された発明及び甲第29?32号証に記載された発明とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
オ 本件発明2?8について
請求項2?8は請求項1を引用しており、本件発明2?8は本件発明1の構成を全て含むものであるから、本件発明2?8は、上記と同じ理由により、甲第22号証に記載された発明及び甲第29?32号証に記載された発明とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(5)請求人の主張
請求人は、「甲第31号証には、また、FIg.17により、甲第22号証に記載されたチャックコンベア120,124に相当する把持部分が、レールの端の方すなわちコンベアベルトの幅方向の端に寄った位置で洗濯物を受け取ることが記載されている。そうすると、上記相違点3の構成Jに関する特徴は、甲第31号証に記載されている。」(審判請求書第66頁(4-3-1)欄)と主張する。
しかし、甲第31号証に記載された装置は、本件発明1における昇降手段に相当する構成を備えておらず、本件発明1における一対のキャリッジに相当する「the left end clamps L-1,L-2」及び「the right end clamps R-1,R-2.」は、コンベアベルトの正面側端部の中央とずれた位置において、作業者と対向するものであって、当該昇降手段と対向するものではない。よって、甲第31号証には、本件発明1の「一対のキャリッジと昇降手段とが対向する位置」を開示するものではなく、請求人の上記主張は理由がない。

(6)まとめ
以上のとおり、本件発明1?8は、甲第22号証に記載された発明及び甲第29?32号証に記載された発明とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでなく、特許法第123条第1項第2号に該当するものではない。

5.まとめ
よって、請求人の主張する無効理由1?4はいずれも理由がなく採用できないものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては本件発明1?8に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-24 
結審通知日 2015-01-05 
審決日 2015-01-21 
出願番号 特願平5-12971
審決分類 P 1 113・ 531- Y (D06F)
P 1 113・ 534- Y (D06F)
P 1 113・ 121- Y (D06F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 山崎 勝司
千壽 哲郎
登録日 1997-08-29 
登録番号 特許第2690256号(P2690256)
発明の名称 アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 井澤 洵  
代理人 井澤 幹  
代理人 近藤 祐史  
代理人 小林 豪  
代理人 大場 正成  
代理人 茂木 康彦  
代理人 三谷 祥子  

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