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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1298858
審判番号 不服2014-3458  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-02-25 
確定日 2015-03-20 
事件の表示 特願2009-193918号「金属屋根用熱可塑性樹脂積層ポリオレフィン系発泡断熱材、金属屋根および建築物」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月15日出願公開、特開2010-84508号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年8月25日(優先権主張 平成20年9月2日)の出願であって、平成25年11月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成26年2月25日に審判請求がなされものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明は、平成25年6月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「ポリオレフィン系樹脂発泡体層と熱可塑性樹脂層とが積層された金属屋根用熱可塑性樹脂積層ポリオレフィン系発泡断熱材であって、前記ポリオレフィン系樹脂発泡体層は圧縮永久歪が15%以下の範囲にあり、前記熱可塑性樹脂層は、光遮蔽剤を含み、かつ紫外線吸収剤および/または光安定剤を含んでいる金属屋根用熱可塑性樹脂積層ポリオレフィン系発泡断熱材。」

3.引用例及び周知例
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2008-30462号公報(以下、「引用例」という。)には次の事項が記載されている。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂発泡体の片面及び/又は両面の表層面に、紫外線吸収剤と光安定剤と光遮蔽剤とを少なくとも含むポリオレフィン系樹脂層を設けることを特徴とする耐候性ポリオレフィン系樹脂積層発泡体。」

(1b)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂架橋発泡体に耐候性を有したポリオレフィン系樹脂層を設けた耐候性ポリオレフィン系樹脂積層発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡体は冷暖房機器の配管用断熱材、水道管凍結防止用断熱材、金属屋根断熱材など保温、保冷、断熱の分野で広く使用されている。」

(1c)「【発明の効果】
【0009】
本発明の発泡体を用いることで、屋外での長期使用でも機械的特性の維持に優れた断熱材とすることが可能であり、これにより施工時に断熱材の紫外線暴露防止策を講じることなく施工可能となり、施工時間短縮、紫外線暴露防止策不要といったトータルコストダウンに有効である。」

(1d)「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の耐候性ポリオレフィン系樹脂積層発泡体とはポリオレフィン系樹脂発泡体に効率的かつ長期に屋外での使用に耐えうる耐候性を付与するため、・・・該樹脂層は紫外線吸収剤と光安定剤と光遮蔽剤を少なくとも含むことが必要である。かかる紫外線吸収剤は・・・光安定剤は・・・光遮蔽剤は・・・効果がある。これらの3成分を必須成分として併用添加したポリオレフィン系樹脂層を・・・可能となる。」

(1e)「【0023】
本発明のポリオレフィン系樹脂層に用いるポリオレフィン系樹脂は特に限定されないが、耐候性能を考慮した場合、長期耐候性に優れるエチレンを主鎖とするポリエチレン系樹脂あるいはその共重合体が好ましい。・・・かかるポリオレフィン系樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂発泡体と積層した後加熱し所定形状に成型できるように未延伸であることが好ましい。」

上記(1b)に、ポリオレフィン系樹脂発泡体は金属屋根断熱材として使用されることが記載されており、また、上記(1d)には、紫外線吸収、剤光安定剤、光遮蔽剤を必須成分とすることが記載されていることを考慮し、上記記載事項を総合すると、引用例には次の発明(「以下、引用発明という)が記載されている。

「ポリオレフィン系樹脂発泡体の片面及び/又は両面の表層面に、紫外線吸収剤と光安定剤と光遮蔽剤とを含むポリオレフィン系樹脂層を設けた金属屋根用耐候性ポリオレフィン系樹脂積層発泡断熱材。」

(2)周知例1
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2005-8869号公報(以下、「周知例1」という。)には次の事項が記載されている。

(2a)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と柔軟性を両立させ、真空成形、圧縮成形等の二次成形が容易なポリ乳酸架橋発泡体およびその製造方法に関するものである。」

(2b)「【0058】
[圧縮回復性]
圧縮回復性の評価は、JISK6767の圧縮永久歪みの測定方法に準拠して測定し、以下の基準で評価した。
圧縮回復性:○・・・圧縮永久歪みが15%未満
圧縮回復性:×・・・圧縮永久歪みが15%以上」

(2c)「【0068】
本発明のシート状ポリ乳酸架橋発泡体は、デスクマット、フロアマットなどのマット類、床材、壁材、天井材などの建築用材料、パイプカバー、エアコン、長尺屋根等の断熱材、粘着テープ用の基材、紙管巻芯等の緩衝材、車輌や鉄道等のドア基材、ピラー、シートバック、天井基材、ダッシュインシュレータやフロアーインシュレータ等のインシュレータ等の車輌用内装材、パッキン材等の幅広い用途に使用可能なものである。」

(3)周知例2
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平10-110058号公報(以下、「周知例2」という。)には次の事項が記載されている。
(3a)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、形状回復発泡体およびその製造方法に関する。

(3b)「【0006】この形状回復発泡体は、・・・内部の独立気泡によってシール性、断熱性、緩衝性等の物性に優れたものとなる。したがって、パイプ用断熱材、建材用断熱材、包装用緩衝材、車輛等の内装用緩衝材、建物用シール材、目地材等の多方面に有効に適用できると言うものであった。」

(3c)「【0018】形状回復発泡体の独立気泡率は、形状回復発泡体自体の必要とする回復量により決まり、おおよそ5%以上であれば使用することが可能であるが、特に好ましい範囲は30%?100%である。形状回復発泡体を構成する樹脂としては、特に限定されないが、圧縮永久歪み(JIS K 6767に準拠)が20%以下のもの、特に10%以下のものが形状回復性に優れ好ましい。」

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(a)引用発明の「ポリオレフィン系樹脂」は引用例の(1e)の記載からも明らかなとおり、「熱可塑性樹脂」である。したがって、引用発明の「金属屋根用耐候性ポリオレフィン系樹脂積層発泡断熱材」は、本願発明の「金属屋根用熱可塑性樹脂積層ポリオレフィン系発泡断熱材」に相当する。

(b)引用発明の「紫外線吸収剤と光安定剤と光遮蔽剤とを含む」は、本願発明の「光遮蔽剤を含み、かつ紫外線吸収剤および/または光安定剤を含んでいる」という技術内容を含むものである。

そうすると、両者は次の点で一致する。
「ポリオレフィン系樹脂発泡体層と熱可塑性樹脂層とが積層された金属屋根用熱可塑性樹脂積層ポリオレフィン系発泡断熱材であって、前記熱可塑性樹脂層は、光遮蔽剤を含み、かつ紫外線吸収剤および/または光安定剤を含んでいる金属屋根用熱可塑性樹脂積層ポリオレフィン系発泡断熱材。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
本願発明のポリオレフィン系樹脂発泡体層は圧縮永久歪が15%以下の範囲にあるのに対し、引用発明のポリオレフィン系樹脂発泡体層はそのような特定がなされていない点。

5.判断
(1)相違点について
上記周知例1、2には、長尺屋根、建材等の発泡断熱材の圧縮永久歪みを15%以下にすることが示されており、発泡断熱材の圧縮永久歪みを15%以下とすることは周知技術といえる。そして、それが断熱効果を損なわないようにするための目的も有することは明らかである。
したがって、引用発明のポリオレフィン系樹脂発泡体層の圧縮永久歪を、前記周知技術に基づき15%以下とすることは当業者が適宜なし得るこである。
また、本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術からみて格別なものではない。

(2)審判請求人の主張について
審判請求人は、「本願発明は「圧縮永久歪」を15%以下とすることにより、同段落に記載される不具合、すなわち「圧縮永久歪が15%を超えると、運搬や取付け等の施工作業時に材料や人体等により局部圧縮を受けた場合、厚みが減少し適度な断熱性能を得られない場合や、取り付けフレーム等の施工構造で断熱材に接触する部分や空調配管等屋根施工後に取り付ける配管等のフレームや固定用アングル等の接合部周辺で厚みが減少し適度な断熱性能を得られない場合がある」といった不具合を解消できるという顕著な効果を奏します。」と主張している。
しかしながら、「圧縮永久歪」を15%以下にすることが、前記のとおり周知技術であり、それにより断熱性能を得ることは明らかであるから、その限定により顕著な効果を奏するとまではいえない。よって、請求人の主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明及周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-12-26 
結審通知日 2015-01-13 
審決日 2015-01-27 
出願番号 特願2009-193918(P2009-193918)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 門 良成
本郷 徹
発明の名称 金属屋根用熱可塑性樹脂積層ポリオレフィン系発泡断熱材、金属屋根および建築物  
代理人 岩見 知典  

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