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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1299283
審判番号 不服2013-13909  
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-19 
確定日 2015-04-01 
事件の表示 特願2008-280615「オープン・ケーブル・アプリケーション・プラットフォームのセットトップ・ボックス(STB)の個人プロファイルおよび通信アプリケーション」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月 6日出願公開、特開2009-177786〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)10月31日(パリ条約による優先権主張2008年1月22日、米国、2008年3月18日、米国)の出願であって、平成23年11月17日付けの拒絶理由通知に応答して平成24年5月21日付けで手続補正がなされ、平成24年7月19日付けの拒絶理由通知に応答して平成25年1月23日付けで手続補正がなされたが、平成25年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年7月19日に拒絶査定不服審判が請求された。
その後当審において、平成26年5月22日付けで最初の拒絶理由が通知されたが、それに応答して平成26年9月10日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成26年9月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであり、その請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という)は下記のとおりである。
なお、本願発明の分説は、当審にて付したものである。

記(本願発明)
A)ケーブルテレビ・ネットワーク相互運用性をサポートし、オープン・アプリケーション・プラットフォームを提供するように動作可能なオペレーティング・システム層を有するセットトップ・ボックスを操作する方法であって、
B-1)前記セットトップ・ボックスと関連付けられている1つまたは複数の格納されているプロファイルを使用することであって、各プロファイルは個人情報および個人基本設定を含み、
B-2)前記セットトップ・ボックスとネットワーク上の別のエンティティとの間の1つまたは複数の2ウェイビデオマルチメディア・通信セッションを容易にするために、前記個人情報および個人基本設定のうちの1つまたは複数はサービス・アプリケーションまたは通信アプリケーションの操作のために前記セットトップ・ボックスで実行する前記サービス・アプリケーションまたは前記通信アプリケーションと共に使用され、
B-3)前記個人情報および個人基本設定のうちの1つまたは複数は前記セットトップ・ボックスから前記別のエンティティに前記1つまたは複数の2ウェイビデオマルチメディア・通信セッションのルートを決めるために使用される情報を含むことと、
C)前記1つまたは複数のプロファイルを管理することであって、前記管理は前記1つまたは複数のプロファイルの作成および編集のうちの1つまたは複数を含む管理すること
D)とを備える方法。

第3 当審の判断
1.刊行物1の記載
当審における、平成26年5月22日付けの拒絶理由に引用された刊行物1である国際公開第02/44909号には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

(ア)「衛星デジタル放送やケーブルテレビ(CATV)放送等を受信するセットトップボックス(STB)等のホームターミナルは電話回線等を利用してインターネットに接続したり、或いは放送局に接続して双方向の通信ができるようになっている。
そして、例えばユーザーがインターネットを利用しようとする場合、契約したプロバイダーのサーバー装置と接続するために、所定の手順に従ったホームターミナルの操作を行う必要があるが、中高年層を中心として電気機器の操作が苦手なユーザーにとって前記接続設定操作は煩雑なものであり、接続設定の完了までに操作をやり直すことが多く、またこのためホームターミナルやデジタルテレビを販売した業者がユーザーに代わって前記接続設定操作のサービスを行わなければならない場合もある。
本発明の目的は、ユーザーが前述した接続設定操作を簡単に行うことができるサーバー装置並びに情報処理装置を提供することにある。」(1頁12行?同頁25行)

(イ)「次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。先ず、本発明に係るサーバー装置と情報処理装置とを用いた通信の概要について説明すると、図1に示すように、ユーザー側に置かれた情報処理装置(0101)では、例えば衛星(0102)からの放送がパラボナアンテナ(0104)を介して受信されると共に、電話回線等を通じてインターネットプロバイダーや放送局のサーバー装置(0103)と接続されて双方向の通信が行われる。また、受信した放送はテレビ(0105)で出力される。
前記情報処理装置(0101)とは、前述したように、放送を受信すると共にインターネットプロバイダーや放送局との間で双方向の通信を行うものであり、例えばセットトップボックス(STB)等のホームターミナルに相当するものである。
また、受信される放送は、前記衛星放送に限らず、地上波放送やケーブルテレビ(CATV)放送等、種々の放送が含まれることは勿論である。
前記サーバー装置(0103)とはネットワーク上でユーザーに情報提供サービスを行うためのものであり、Webサーバー、ファイル・サーバー等、種々のものが含まれる。また、前記情報処理装置(0101)との接続は有線または無線のいずれであっても良い。」(2頁23行?3頁15行)

(ウ)「次に、情報処理装置とサーバー装置の具体的な構成について説明すると、図2に示すように、先ず情報処理装置(0201)は、ユーザーからの入力を受け付ける入力受付部(0202)と、入力受付部(0202)で入力されたユーザーの固有情報をサーバー装置(0203)へ送信する固有情報送信部(0204)と、サーバー装置(0203)から送信されてくる通信設定情報を受け付ける情報受付部(0205)と、情報受付部(0205)で受け付けられた通信設定情報を記録する情報記録部(0206)と、情報受付部(0205)で受け付けられた通信設定情報が複数である場合にそのメニューをつくるメニュー構築部(0207)と、メニュー構築部(0207)でつくられたメニューを表示するメニュー表示部(0208)とを具備するものである。
前記固有情報とは、ユーザーを特定するための個人情報であり、具体的にはユーザーの住所や該住所がある地域を特定する情報、或いは前記地域における電話の市外・市内局番の情報等の他、ユーザーの年齢、性別、家族構成、職業および趣味等の情報、或いはユーザーが加入している特定の電話料金割引サービスの契約等の情報も含まれる。
また、前記固有情報には、付属情報として情報処理装置(0201)を特定するための情報が付加されることもあり、具体的には情報処理装置(0201)の製造番号、製造者識別番号、モデル識別番号およびMACアドレス等である。
前記通信設定情報とは、ユーザーがサーバー装置(0203)に接続するための電話番号やIPアドレス、或いはURL等の通信接続先を示す情報である。
前記入力受付部(0202)は、ユーザーから入力される固有情報を受け付けたり、ユーザーがメニュー表示部(0208)で表示された複数の通信設定情報の中から1つの通信設定情報を選択する際の選択指示を受け付けるためのものである。」(3頁16行?4頁16行)

(エ)「次に、情報処理装置とサーバー装置における処理の流れについて説明すると、図4に示すように、先ず情報処理装置では、サーバー装置へユーザーの固有情報を送信する(ステップS0401)。具体的にはダイアルアップ接続を行う場合のユーザーの都道府県市町村等の地域や或いは該地域における電話の市外局番等を送信するものであり、例えばユーザーが大阪に在住している場合には「大阪」という地域を送信したり、或いは大阪の市外局番である「06」を送信する。そして、次にサーバー装置からの通信設定情報の受付け(ステップS0402)を行う。そして、通信設定情報を受付けた場合には該情報が1つであるか複数であるかを判断し(ステップS0403)、1つである場合にはその通信設定情報を記録し(ステップS0404)、処理が終了する。一方、通信設定情報が複数である場合にはそれらのメニューを構築し(ステップS0405)、構築したメニューを表示する(ステップS0406)。具体的には、前述したように、ユーザーが「大阪」や「06」という固有情報を送信することにより、サーバー装置から図3に示す06で始まる複数の接続ポイントの電話番号(通信設定情報)が表示される。そして、表示されたメニューにおける電話番号の中からユーザーが1つの選択入力を行い(ステップS0407)、該入力に従って1つの電話番号を取得し(ステップS0408)、次にこれを記録して(ステップS0404)、処理が終了する。」(8頁6行?同頁24行)

(オ)「本実施形態では、ユーザーの固有情報として、ユーザーの住所や該住所に対応する電話の市外局番等といった地域情報が用いられ、また該地域情報に対して適切なダイアルアップ接続の番号が通信設定情報としてユーザーに示されるようにしたが、本発明は、このような地域情報を基準とするものに限定されないことは勿論である。
具体的には、例えばユーザーの固有情報としてユーザーの趣味に関する情報が用いられる場合には、前記情報処理装置(0201)からユーザーの趣味の情報がサーバー装置(0203)へ送信され、サーバー装置(0203)では、受信した趣味の情報(固有情報)に基づいて、これに対応するジャンルのサイトにおけるトップページのURLが通信設定情報として検索され、これが情報処理装置(0201)へ送信されて、該情報処理装置(0201)がトップページに接続されることとなる。
より詳細には、図7に示すように、サーバー装置(0203)の通信設定情報管理部(0211)には、スポーツ、占い、ショッピング、エンタテイメントおよび旅行等というジャンルと該ジャンルのトップページのURLとが対になって管理されており、例えば占いのジャンルについては、図8に示すような種々の占いが行えるトップページのURLが管理されている。」(9頁13行?10頁4行)

2.引用発明
ここで、上記刊行物1の記載について検討する。

(1)前掲(ア),(イ)によると、刊行物1には、ケーブルテレビ(CATV)放送等を受信すると共に、ユーザーに情報提供サービスを行うインターネットプロバイダーや放送局のサーバー装置との間で双方向の通信を行うセットトップボックス(STB)等のホームターミナルに相当する情報処理装置、すなわちセットトップボックスに関する発明が記載されており、この発明は、セットトップボックスをサーバー装置に接続する接続設定操作を簡単に行うことができようにすることを目的とする。
以下、刊行物1に記載される情報処理装置は、その一例であるセットトップボックスとして認定する。

(2)前掲(ウ)ないし(オ)によると、セットトップボックスは、ユーザーから、住所、地域、市外・市内局番、年齢、性別、家族構成、職業、趣味などのユーザーの固有情報の入力を受け付け、サーバー装置へ送信し、サーバー装置からサーバー装置に接続するための電話番号やIPアドレス、或いはURL等の通信接続先を示す情報である通信設定情報を受け付けて記録する。
ここで、サーバー装置に送信する固有情報が地域、市外局番である場合には、通信設定情報として接続ポイントの電話番号を受け付け、ユーザーの趣味に関する情報である場合は、ユーザーの趣味に対応するジャンルのサイトにおけるトップページのURLを受け付ける。
すなわち、セットトップボックスは、ユーザーが入力する地域、市外局番または趣味に関する情報といったユーザーの固有情報をサーバー装置へ送信し、接続ポイントの電話番号やサイトにおけるトップページのURLである通信設定情報をサーバー装置から取得して記録し、その通信設定情報を用いてサーバー装置へ接続を行うという動作をするものであり、それにより、セットトップボックスをサーバー装置に簡単に接続することができるようにするものである。
そして、このセットトップボックスの動作は、セットトップボックスをサーバー装置へ接続するためにユーザーが行う操作に応じて動作するものであるから、セットトップボックスを操作する方法として捉えることができる。

(3)上記(2)で摘示したように、セットトップボックスは、ユーザーからユーザーの固有情報の入力を受け付ける。

(4)まとめ
上記(1)ないし(3)によれば、刊行物1には下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。

記(引用発明)
ケーブルテレビ(CATV)放送等を受信すると共に、ユーザーに情報提供サービスを行うインターネットプロバイダーや放送局のサーバー装置との間で双方向の通信を行うセットトップボックスを操作する方法であって、
ユーザーが入力する地域、市外局番または趣味に関する情報といったユーザーの固有情報をサーバー装置へ送信し、接続ポイントの電話番号やサイトにおけるトップページのURLである通信設定情報をサーバー装置から取得して記録し、その通信設定情報を用いてサーバー装置へ接続を行うという動作をすることにより、セットトップボックスをサーバー装置に簡単に接続することができるようにすること、
ユーザーの固有情報の入力を受け付けることを備える方法。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると次のことが認められる。

(a)本願発明の構成要件Aについて
引用発明のセットトップボックスと本願発明のセットトップ・ボックスを対比するにあたり、本願発明の「ケーブルテレビ・ネットワーク相互運用性をサポート」するという構成の意味について確認すると、本願明細書の段落【0003】ないし【0006】の記載によれば、ケーブルテレビジョン・システムに接続するセットトップ・ボックスを、eCommerce、オンライン・バンキングなどのインタラクティブ・サービスに使用することができることを示すものと認められる。
そして、引用発明のセットトップボックスは、ケーブルテレビ放送の受信と、インターネットなどのネットワーク経由で双方向の通信との2つの通信を行うものといえるから、ケーブルテレビ・ネットワーク相互運用性をサポートするものといえる。
したがって、引用発明は「ケーブルテレビ・ネットワーク相互運用性をサポートするセットトップ・ボックスを操作する方法」という点において本願発明と一致する。
ただし、本願発明のセットトップ・ボックスが「オープン・アプリケーション・プラットフォームを提供するように動作可能なオペレーティング・システム層を有する」のに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点で相違する。

(b)本願発明の構成要件B-1について
引用発明のユーザーの固有情報と本願発明のプロファイルを対比するにあたり、そのプロファイルに含まれる個人情報および個人基本設定の内容について確認すると、本願発明の個人情報は、名前、住所、クレジットカード情報、銀行取引情報、映画基本設定、通信基本設定、レストラン基本設定、業者基本設定、請求基本設定などであり(本願明細書の段落【0094】)、本願発明の個人基本設定は、セットトップ・ボックスの任意の機能、STBの表示特性、STBの操作、メニュー・オプション、通信基本設定、連絡先基本設定、セットトップ・ボックス管理などに関連するものである(段落【0096】)。
一方、引用発明のユーザーの地域や趣味などの固有情報は、ユーザーの個人情報といえ、本願発明の個人情報と同等のものである。
また、個人情報は一般にプロファイルとも表現されるものであるから、引用発明のユーザーの固有情報、すなわち個人情報は、プロファイルといえる。
以上のことから、引用発明のユーザーの固有情報は、個人情報を含むプロファイルである点で本願発明と一致し、本願発明のプロファイルは、個人基本設定を含むものであるのに対し、引用発明のプロファイルは、個人基本設定を含むものであるか不明である点で相違する。

引用発明のユーザーの固有情報、すなわちプロファイルは、ユーザーから入力されサーバー装置へ送信されるものであるから、セットトップ・ボックスに格納されるのは自明であり、ユーザーが使用するセットトップ・ボックスに設定されるのであるから、セットトップ・ボックスに関連付けられるものといえる。また、引用発明のセットトップ・ボックスはユーザーの固有情報、すなわちプロファイルを使用するものである。
そして、本願発明は「1つまたは複数の格納されているプロファイル」とされており、1つのプロファイルが格納されているものを含むものであるから、1つのプロファイルを有する引用発明は「前記セットトップ・ボックスと関連付けられている1つまたは複数の格納されているプロファイルを使用すること」を備えている点で本願発明と一致する。

なお、上述したように、本願発明は1つのプロファイルが格納されているものを含むものであるから、本願発明の「各プロファイル」という記載は、プロファイルが1つであるものも含めて表現していると認められるため、引用発明の1つのプロファイルも「各プロファイル」ということができる。
以下、引用発明のユーザーの固有情報は、『プロファイル』および『個人情報』であるとして対比検討を行う。

(c)本願発明の構成要件B-2について
引用発明は、ユーザーに情報提供サービスを行うインターネットプロバイダーや放送局のサーバー装置との間で双方向の通信を行うものであって、『プロファイル』を用いてセットトップ・ボックスをサーバー装置に簡単に接続することができるようにするものである。
ここで、ユーザーに情報提供サービスを行うインターネットプロバイダーや放送局のサーバー装置は、複数の「ネットワーク上の別のエンティティ」といえる。
また、セットトップ・ボックスとそれらとの間の双方向通信は、ビデオを含むマルチメディアを双方向で通信するものであるかは不明ではあるものの、少なくとも双方向で通信を行うものであるから、複数の『2ウェイ通信セッション』であるといえる。
さらに、引用発明は、セットトップ・ボックスをサーバー装置に接続し、サーバー装置と『2ウェイ通信セッション』を行うものであるから、『2ウェイ通信セッション』を行うための『通信機能』を備えているものといえるが、それらがサービス・アプリケーションまたは通信アプリケーションを使用して行われるものであるかは不明である。
そして、引用発明は、『プロファイル』を用いて通信設定情報を取得し、それによって、セットトップ・ボックスをサーバー装置に接続し、サーバー装置と『2ウェイ通信セッション』を行うものであるから、引用発明の『プロファイル』は、セットトップ・ボックスの『通信機能』と共に使用されるものといえる。

以上のことから、引用発明は、本願発明と「前記セットトップ・ボックスとネットワーク上の別のエンティティとの間の1つまたは複数の2ウェイ通信セッションを容易にするために、前記プロファイルのうちの1つまたは複数は前記セットトップ・ボックスの通信機能と共に使用され」という点で一致する。
ただし、『2ウェイ通信セッション』が、本願発明では「2ウェイビデオマルチメディア・通信セッション」であるのに対し、引用発明は「ビデオマルチメディア」の通信セッションであるか不明である点、および、セットトップ・ボックスの『通信機能』に関し、本願発明では「サービス・アプリケーションまたは通信アプリケーション」により実行されるものであり、本願発明の個人情報および個人基本設定、つまりプロファイルは、「サービス・アプリケーションまたは通信アプリケーションの操作のために前記セットトップ・ボックスで実行する前記サービス・アプリケーションまたは前記通信アプリケーションと共に使用され」るものであるのに対し、引用発明にはそのような特定はない点において、両者は相違する。

(d)本願発明の構成要件B-3について
引用発明は、『プロファイル』を用いて、接続ポイントの電話番号やサイトにおけるトップページのURLである通信設定情報を取得する。
そして、この接続ポイントの電話番号やサイトにおけるトップページのURLである通信設定情報は、セットトップ・ボックスをサーバー装置に接続し、サーバー装置と『2ウェイ通信セッション』を行うためのルートを決めるものといえるから、結局『プロファイル』は『2ウェイ通信セッション』のルートを決めるために用いられるといえ、引用発明は「前記プロファイルのうちの1つまたは複数は前記セットトップ・ボックスから前記別のエンティティに前記1つまたは複数の2ウェイ通信セッションのルートを決めるために使用される情報を含むこと」という点において、本願発明と共通するものである。

(e)本願発明の構成要件Cについて
引用発明は、『プロファイル』の入力を受け付けるものであり、『プロファイル』を作成するものといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記1つまたは複数のプロファイルを作成すること」を備えている点で一致するものの、本願発明が「前記1つまたは複数のプロファイルを管理することであって、前記管理は前記1つまたは複数のプロファイルの作成および編集のうちの1つまたは複数を含む管理すること」を備えているのに対し、引用発明は、1つまたは複数のプロファイルを作成することを備えているにとどまる点で相違する。

4.一致点・相違点
以上の対比(a)ないし(e)の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次の通りである。

[一致点]
ケーブルテレビ・ネットワーク相互運用性をサポートするセットトップ・ボックスを操作する方法であって、
前記セットトップ・ボックスと関連付けられている1つまたは複数の格納されているプロファイルを使用することであって、各プロファイルは個人情報を含み、
前記セットトップ・ボックスとネットワーク上の別のエンティティとの間の1つまたは複数の2ウェイ通信セッションを容易にするために、前記プロファイルのうちの1つまたは複数は前記セットトップ・ボックスの通信機能と共に使用され、
前記プロファイルのうちの1つまたは複数は前記セットトップ・ボックスから前記別のエンティティに前記1つまたは複数の2ウェイ通信セッションのルートを決めるために使用される情報を含むことと、
前記1つまたは複数のプロファイルを作成すること
とを備える方法。

[相違点1]
本願発明のセットトップ・ボックスが「オープン・アプリケーション・プラットフォームを提供するように動作可能なオペレーティング・システム層を有する」のに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。

[相違点2]
プロファイルに関して、本願発明の各プロファイルは、個人基本設定を含むものであるのに対し、引用発明の各プロファイルは、個人基本設定を含むものであるか不明である点。

[相違点3]
『2ウェイ通信セッション』に関して、本願発明では「2ウェイビデオマルチメディア・通信セッション」であるのに対し、引用発明は「ビデオマルチメディア」の通信セッションであるか不明である点。

[相違点4]
セットトップ・ボックスの『通信機能』に関し、本願発明では「サービス・アプリケーションまたは通信アプリケーション」により実行されるものであり、本願発明の個人情報および個人基本設定、つまりプロファイルは、「サービス・アプリケーションまたは通信アプリケーションの操作のために前記セットトップ・ボックスで実行する前記サービス・アプリケーションまたは前記通信アプリケーションと共に使用され」るものであるのに対し、引用発明にはそのような特定はない点。

[相違点5]
本願発明が「前記1つまたは複数のプロファイルを管理することであって、前記管理は前記1つまたは複数のプロファイルの作成および編集のうちの1つまたは複数を含む管理すること」を備えているのに対し、引用発明は、1つまたは複数のプロファイルを作成することを備えているにとどまる点。

5.相違点の判断
(1)相違点1について
当審における拒絶理由に引用された刊行物3である“KreaTV Application Platform”(スウェーデン、Motorola, Inc.、2006発行、URL:http://www.motorolasolutions.com/web/Business/Products/TV Video Distribution/Set-tops/Set-top Software/KreaTV/_Documents/Static Files/KreaTV_Application_Platform.pdf)には、Linux OSをベースとしたIPセットトップボックス用のオープン・ソフトウェア・プラットフォームであるKreaTVが示されており、このKreaTVは、同じく当審における拒絶理由に引用された刊行物4であるインターネットのアーカイブされた記事「Motorola、Linux搭載IP STB向けオープンソフト発表」(日本、アイティメディア株式会社、2007.06.19掲載、URL:https://web.archive.org/web/20070622000307/http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/19/news017.html)によれば、少なくとも本願の優先権主張日より前の2007年6月19日に発表済であることが確認できる。
この文献に示されるように、IPセットボックス、すなわちケーブルテレビ・ネットワーク相互運用性をサポートするセットトップ・ボックスを、オープン・アプリケーション・プラットフォームを提供するように動作可能なオペレーティング・システム層により実現する技術は周知のものであり、引用発明にこの周知技術を適用することは当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点4について
相違点1について検討したように、ケーブルテレビ・ネットワーク相互運用性をサポートするセットトップ・ボックスを、オープン・アプリケーション・プラットフォームを提供するように動作可能なオペレーティング・システム層により実現させることは当業者が容易になし得ることであり、オープン・アプリケーション・プラットフォームを提供するように動作可能なオペレーティング・システム層を採用した場合には、セットトップ・ボックスの各々の機能はアプリケーションで実現することができる。
そうすると、セットトップ・ボックスの通信機能を「サービス・アプリケーションまたは通信アプリケーション」により実行されるものとすることは、当業者が容易になし得ることであり、通信を行う際のプロファイルの使用に関しても、アプリケーションの操作にために使用して、「サービス・アプリケーションまたは通信アプリケーションの操作のために前記セットトップ・ボックスで実行する前記サービス・アプリケーションまたは前記通信アプリケーションと共に使用され」るものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

(3)相違点2について
上記3.(b)において検討したように、本願発明の個人基本設定は、セットトップ・ボックスの任意の機能、STBの表示特性、STBの操作、メニュー・オプション、通信基本設定、連絡先基本設定、セットトップ・ボックス管理などに関連するものであるが、セットトップ・ボックスのような映像機器において、そのようなユーザーによる初期設定を行って記録しておくことは周知の事項である。
よって、引用発明のセットトップ・ボックスにおいても、プロファイルに個人基本設定を含ませることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(4)相違点3について
上記3.(c)において検討したように、引用発明のセットトップ・ボックスは、サーバー装置と2ウェイ通信セッションを行うものであるが、ネットワーク上の2ウェイ通信セッションにおいて、ビデオやマルチメディアの2ウェイ通信セッションを行うことは、広く実施されている周知技術である(例えば、当審における拒絶理由に引用された刊行物2である国際公開第2007/103700号の段落[0133],[0207],[0230]?[0241]には、ネットワークに接続することが可能なセットトップ・ボックスにおいて、コミュニティに加入してビデオ会議などを行うことが示されている)。
したがって、引用発明のケーブルテレビ・ネットワーク相互運用性をサポートするセットトップ・ボックスにおいて「2ウェイビデオマルチメディア・通信セッション」を実現することは、当業者が容易になし得ることである。

(5)相違点5について
引用発明は、ユーザーからのプロファイルの入力を受け付け、プロファイルを作成するものであるところ、ユーザーの個人情報といったプロファイルは変更が生じるものであるから、そのプロファイルへ編集可能として管理する機能を設けることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、引用発明のセットトップ・ボックスにおいても、「前記1つまたは複数のプロファイルを管理することであって、前記管理は前記1つまたは複数のプロファイルの作成および編集のうちの1つまたは複数を含む管理すること」を備えることは、当業者が容易になし得ることである。

6.効果等について
本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

7.まとめ
以上のとおりであるから、本願の請求項10に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のように、本願の請求項10に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-10-30 
結審通知日 2014-11-04 
審決日 2014-11-17 
出願番号 特願2008-280615(P2008-280615)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 聡生三森 雄介  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 渡邊 聡
藤井 浩
発明の名称 オープン・ケーブル・アプリケーション・プラットフォームのセットトップ・ボックス(STB)の個人プロファイルおよび通信アプリケーション  
代理人 岡部 讓  
代理人 三山 勝巳  

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