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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1299865
審判番号 不服2014-13254  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-08 
確定日 2015-04-28 
事件の表示 特願2010- 16359「電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月11日出願公開、特開2011-155171、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成22年1月28日の出願であって、平成25年9月26日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年11月14日付けで手続補正がなされたが、平成26年4月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月8日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

第2.平成26年7月8日付けの手続補正の適否

1.補正の内容
平成26年7月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、本件補正前には、
「【請求項1】
半導体素子を封止した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に複数個、積層した積層体と、
上記半導体素子の動作制御をする制御回路基板とを備え、
個々の上記半導体モジュールは、
上記半導体素子を封止した本体部と、
該本体部から突出し、上記半導体素子に被制御電流を入出力するパワー端子と、
上記本体部から突出し、上記半導体素子に信号電流を入出力する互いに平行な複数本の制御端子と、
該制御端子と同一方向に上記本体部から突出し、上記半導体素子に導通しない固定強化用端子とを備え、
個々の上記半導体モジュールに設けられた上記複数本の制御端子と上記固定強化用端子とが、それぞれ上記制御回路基板に接続していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、個々の上記半導体モジュールは、2本の上記固定強化用端子を有し、該2本の固定強化用端子の間に上記複数本の制御端子が設けられ、上記2本の固定強化用端子と上記複数本の制御端子とが一列に配列していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
半導体素子を封止した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に複数個、積層した積層体と、
上記半導体素子の動作制御をする制御回路基板とを備え、
個々の上記半導体モジュールは、
上記半導体素子を封止した本体部と、
該本体部から突出し、上記半導体素子に被制御電流を入出力するパワー端子と、
上記本体部から突出し、上記半導体素子に信号電流を入出力し、一列に配列された互いに平行な複数本の制御端子と、
該複数本の制御端子のうち、両端に位置する上記制御端子から分岐すると共に、該制御端子と同一方向に延びる固定強化用端子とを備え、
個々の上記半導体モジュールに設けられた上記複数本の制御端子と上記固定強化用端子とが、それぞれ上記制御回路基板に接続していることを特徴とする電力変換装置。」
とあったのを、
「【請求項1】
半導体素子を封止した半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に複数個、積層した積層体と、
上記半導体素子の動作制御をする制御回路基板とを備え、
上記半導体素子は、スイッチング素子と、温度検出素子とを備え、
個々の上記半導体モジュールは、
上記半導体素子を封止した本体部と、
該本体部から突出し、上記半導体素子に被制御電流を入出力するパワー端子と、
上記本体部から突出し、上記半導体素子に信号電流を入出力する互いに平行な複数本の制御端子と、
該制御端子と同一方向に上記本体部から突出し、上記半導体素子に導通しない固定強化用端子とを備え、
上記複数本の制御端子と上記固定強化用端子とを一列に配列し、
上記固定強化用端子を上記スイッチング素子と接続する上記制御端子と、上記温度検出素子と接続する上記制御端子との間に配置し、
個々の上記半導体モジュールに設けられた上記複数本の制御端子と上記固定強化用端子とが、それぞれ上記制御回路基板に接続していることを特徴とする電力変換装置。」
と補正する補正事項を含むものである。

2.補正の適否
本件補正の上記補正事項は、
(a)補正前の請求項2及び請求項3を削除するとともに、
(b)請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「半導体素子」について、「スイッチング素子と、温度検出素子とを備え」るとの限定を付加し、
(c)同じく請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数本の制御端子」と「固定強化用端子」について、「一列に配列」する旨の限定を付加し、
(d)さらに、上記「固定強化用端子」について、「上記スイッチング素子と接続する上記制御端子と、上記温度検出素子と接続する上記制御端子との間に配置」する旨の限定を付加するものであり、
特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除、及び、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-206184号公報(以下、「引用例」という。)には、「パワー半導体モジュール及びそれを使用したモータ駆動装置」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
対向する両側部にそれぞれ端子列軸線方向に並ぶ端子列を備えたパワー半導体モジュールにおいて、少なくとも一方側の端子列の端子列軸線方向の両端部に、前記パワー半導体モジュールを基板に半田付けしたときに他の端子より半田接続強度が高くなるダミー端子が設けられていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項3】
前記端子列の一方が前記パワー半導体モジュールの動作を制御する信号のための制御用端子の列であり、前記ダミー端子が前記制御用端子の列の端子列軸線方向両端部に配置されている、請求項1又は請求項2に記載のパワー半導体モジュール。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のパワー半導体モジュールを使用したことを特徴とする、モータを駆動するためのモータ駆動装置。」

イ.「【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板の反りや基板に実装されたパワー半導体モジュールの高さ方向の段差を矯正する際に基板に生じる応力が他の端子よりも強い強度を有する端子列軸線方向両端部のダミー端子に受け持たれ、ダミー端子の間の他の端子には応力が作用しにくくなる。また、ダミー端子は基板に半田付けされたときに端子列の他の端子よりも半田接続強度が高くなるので、応力に対する耐久性も向上し、半田付け部の不良も減少する。」

ウ.「【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
最初に、図7を参照して、本発明のパワー半導体モジュール18を実装したプリント基板12を使用したモータ駆動装置10の全体構成を説明する。図7を参照すると、モータ駆動装置10は、内部に組み付けられたプリント基板12と、プリント基板12に主回路駆動電流(以下、主電流とも記載する。)を供給するための電源14とを備える。モータ駆動装置10は、、モータ16に接続されており、モータ16を駆動し、その動作を制御する。プリント基板12上には、モータ16の動作を制御するための主回路が設けられており、他の半導体(簡単化のために図示せず)などと共に、主電流を制御するためのパワー半導体モジュール18が実装されている。
【0017】
図1は、図7に示されている本発明のパワー半導体モジュール18の斜視図である。図1を参照すると、パワー半導体モジュール18は、中心軸線Oを挟んで対向する両側部に、中心軸線方向に並ぶ複数の端子からなる端子列をそれぞれ備えている。図1に示されている実施形態では、一方の側部に、プリント基板12に供給される主電流を通電するための複数の主回路用端子20aからなる端子列(以下、主回路用端子列と記載する。)20が設けられ、中心軸線Oを挟んでこれと対向する他方の側部には、パワー半導体モジュール18の動作すなわちパワー半導体モジュール18からの電力出力のスイッチングを制御する信号のための複数の制御用端子22aからなる端子列(以下、制御用端子列と記載する。)22が設けられている。なお、主回路用端子20aには制御用端子22aに比べて大きな電流又は電圧が印加されるので、主回路用端子20aは制御用端子22aに比べて太くなっている。【0018】
本発明のパワー半導体モジュール18では、パワー半導体モジュール18の対向する側部の各々に配置された端子列20,22の端子列軸線方向の最外側の両端部にそれぞれダミー端子24,26が設けられている。ダミー端子24,26は、例えば各側部の端子列の他の端子20a,22bに比べて太い又は半田付け面積が広く、プリント基板12に半田付けされたときに他の端子20a,22aよりも半田接続強度が高くなるように構成されている。」

エ.「【0022】
上記実施形態では、パワー半導体モジュール18の両側部に設けられた主回路用端子列20及び制御用端子列22の両方の端子列軸線方向両端部にダミー端子24,26が設けられているが、主回路用端子列20又は制御用端子列22の一方のみにダミー端子24又は26を設けてもよい。例えば、図4に示されているように、制御用端子列22の端子列軸線方向最外側の両端部にのみダミー端子26を設け、主回路用端子列20にはダミー端子24を設けなくてもよい。一般に、大きな電流又は電圧が印加される主回路用端子20aと比較して制御信号が入力される制御用端子22aは細く半田付け面積が小さくなるので、半田クラックや接続不良を起こしやすい。このため、制御用端子列22の端子列軸線方向最外側の両端部に半田接続強度の高いダミー端子26を設けるだけでも、半田付け部分の接続強度が高くなって半田クラックや接続不良が発生しにくくなる。また、図5に示されているように、主回路用端子列20の端子列軸線方向最外側の両端部にのみダミー端子24を設け、制御用端子列22にダミー端子26を設けないことも可能である。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0024】
本発明のパワー半導体モジュール18のダミー端子24,26は、主電流の通電や信号の受信に用いることを特に企図したものではない。しかしながら、図6に示されるように、各端子列20又は22の端子列軸線方向最外側に位置する二つのダミー端子24又は26間をパワー半導体モジュール18内で接続し、同じ側の端子列20又は22の二つのダミー端子24又は26間に電圧を印加するようにすることが好ましい。」

・上記引用例に記載の「パワー半導体モジュール及びそれを使用したモータ駆動装置」のうちの「モータ駆動装置」は、上記「ア.」の【請求項1】と【請求項5】の記載事項、及び図1、図7によれば、端子列と、当該端子列の端子列軸線方向の両端部に設けられ、基板に半田付けしたときに他の端子より半田接続強度が高くなるダミー端子とを備えたパワー半導体モジュールを使用した、モータを駆動するためのモータ駆動装置に関するものである。
・上記「ウ.」の段落【0016】の記載事項、図7によれば、2個のパワー半導体モジュールがモータを制御するための主回路が設けられたプリント基板に実装されている。
・上記「ウ.」の段落【0017】の記載事項、図1によれば、パワー半導体モジュールの本体部から突出する端子列は、プリント基板に供給される主電流を通電するための複数の主回路用端子の列と、パワー半導体モジュールからの電力出力のスイッチングを制御する信号のための複数の制御用端子の列からなる。
・上記「エ.」の段落【0022】の記載事項によれば、ダミー端子は、主電流の通電や信号の受信に用いることを企図したものではない。
・上記「ア.」の【請求項3】、「エ.」の段落【0022】の記載事項、及び図4によれば、ダミー端子は、制御用端子列の端子列軸線方向の両端部に設けられ、また、上記「イ.」の記載事項によれば、これによって基板に生じる応力が当該ダミー端子の間の他の端子(制御用端子)には作用しにくくなるものである。
・上記「ウ.」の段落【0018】の記載事項、及び図1、図4によれば、ダミー端子は、他の端子(制御用端子)に比べて太くまたは面積が広く、これによってプリント基板に半田付けしたときに他の端子(制御用端子)より半田接続強度が高くなるなるように構成されてなるものである。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「モータを制御するための主回路が設けられたプリント基板に実装された2個のパワー半導体モジュールを使用したモータ駆動装置において、
前記各パワー半導体モジュールは、
その本体部から突出する端子列であって、前記プリント基板に供給される主電流を通電するための複数の主回路用端子の列と、当該パワー半導体モジュールからの電力出力のスイッチングを制御する信号のための複数の制御用端子の列とからなる端子列と、
前記プリント基板に生じる応力がその間に位置する前記複数の制御用端子に作用しにくくするために、前記複数の制御用端子の列の端子列軸線方向の両端部に設けられ、主電流の通電や信号の受信に用いることを企図したものでないダミー端子と、を備え、
前記ダミー端子は、前記制御用端子に比べて太くまたは面積が広く、これによってプリント基板に半田付けしたときに前記制御用端子より半田接続強度が高くなるなるように構成されているモータ駆動装置。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「パワー半導体モジュール」は、本願補正発明における「半導体モジュール」に相当し、
引用発明における「モータを制御するための主回路が設けられたプリント基板に実装された2個のパワー半導体モジュールを使用したモータ駆動装置において、前記各パワー半導体モジュールは、その本体部から突出する端子列であって、前記プリント基板に供給される主電流を通電するための複数の主回路用端子の列と、当該パワー半導体モジュールからの電力出力のスイッチングを制御する信号のための複数の制御用端子の列とからなる端子列と」によれば、
(a)引用発明の「パワー半導体モジュール」においても、半導体素子を封止(内蔵)してなるものであることは自明といえることであり、当該パワー半導体モジュールには、プリント基板に供給される主電流を通電するための複数の主回路用端子の列や、電力出力のスイッチングを制御する信号のための複数の制御用端子の列が設けられていることからして、少なくとも半導体素子としてスイッチング素子を有することも明らかである。
(b)また、引用発明における、モータを制御するための主回路が設けられた「プリント基板」は、その主回路が実装されている2個のパワー半導体モジュール内の半導体素子の動作制御を行っていることも当然といえることであるから、本願補正発明における「制御回路基板」に相当するということができる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、後述の相違点を除いて「半導体素子を封止した[複数個の]半導体モジュールと、上記半導体素子の動作制御をする制御回路基板とを備え、上記半導体素子は、スイッチング素子とを備え」る点で共通する。

イ.引用発明における、各パワー半導体モジュールの「本体部」は、本願補正発明における「本体部」に相当し、
引用発明における「前記各パワー半導体モジュールは、その本体部から突出する端子列であって、前記プリント基板に供給される主電流を通電するための複数の主回路用端子の列と、当該パワー半導体モジュールからの電力出力のスイッチングを制御する信号のための複数の制御用端子の列とからなる端子列と」によれば、
引用発明の「端子列」のうち、
(a)主電流を通電するための「複数の主回路用端子の列」は、本願補正発明における、被制御電流を入出力する「パワー端子」に相当し、
(b)また、電力出力のスイッチングを制御する信号のための「複数の制御用端子の列」は、本願補正発明における、信号電流を入出力する「互いに平行な複数本の制御端子」に相当するといえ、
本願補正発明と引用発明とは、「個々の上記半導体モジュールは、上記半導体素子を封止した本体部と、該本体部から突出し、上記半導体素子に被制御電流を入出力するパワー端子と、上記本体部から突出し、上記半導体素子に信号電流を入出力する互いに平行な複数本の制御端子と」を備える点で一致する。

ウ.引用発明における「前記プリント基板に生じる応力がその間に位置する前記複数の制御用端子に作用しにくくするために、前記複数の制御用端子の列の端子列軸線方向の両端部に設けられ、主電流の通電や信号の受信に用いることを企図したものでないダミー端子と、を備え、前記ダミー端子は、前記制御用端子に比べて太くまたは面積が広く、これによってプリント基板に半田付けしたときに前記制御用端子より半田接続強度が高くなるなるように構成されている・・」によれば、
(a)引用発明の「ダミー端子」は、主電流の通電や信号の受信に用いることを企図したものでないことから、パワー半導体モジュール内の半導体素子に導通しないものであり、また、基板に半田付けしたときに制御用端子より半田接続強度が高くなるなるように構成されていることから、固定強化用ということができ、本願補正発明でいう「固定強化用端子」に相当するといえる。
(b)また、引用発明の「ダミー端子」は、複数の制御用端子の列の端子列軸線方向の両端部に設けられており、当該ダミー端子と複数の制御用端子とは一列に配列しているといえる(引用例の図1や図4も参照)。
(c)さらに、引用発明の「ダミー端子」についても、複数の制御用端子と同様に、プリント基板に半田付けによって接続しているといえるものである。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、後述の相違点を除いて「該制御端子と同一方向に上記本体部から突出し、上記半導体素子に導通しない固定強化用端子とを備え、上記複数本の制御端子と上記固定強化用端子とを一列に配列し、個々の上記半導体モジュールに設けられた上記複数本の制御端子と上記固定強化用端子とが、それぞれ上記制御回路基板に接続している」点で共通する。

エ.そして、引用発明における「モータを制御するための主回路が設けられたプリント基板に実装された2個のパワー半導体モジュールを使用したモータ駆動装置・・」によれば、
引用発明における「モータ駆動装置」は、2個のパワー半導体モジュールからの出力電力によってモータを駆動制御する装置であるといえ、本願補正発明における「電力変換装置」に相当するいうことができる(なお、本願明細書の段落【0024】には、「電力変換装置」は三相交流モータを駆動するためのものであることが記載されている)。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「半導体素子を封止した[複数個の]半導体モジュールと、
上記半導体素子の動作制御をする制御回路基板とを備え、
上記半導体素子は、スイッチング素子を備え、
個々の上記半導体モジュールは、
上記半導体素子を封止した本体部と、
該本体部から突出し、上記半導体素子に被制御電流を入出力するパワー端子と、
上記本体部から突出し、上記半導体素子に信号電流を入出力する互いに平行な複数本の制御端子と、
該制御端子と同一方向に上記本体部から突出し、上記半導体素子に導通しない固定強化用端子とを備え、
上記複数本の制御端子と上記固定強化用端子とを一列に配列し、
個々の上記半導体モジュールに設けられた上記複数本の制御端子と上記固定強化用端子とが、それぞれ上記制御回路基板に接続していることを特徴とする電力変換装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明では、「半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に複数個、積層した積層体と」を備える旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。

[相違点2]
半導体素子について、本願補正発明では、スイッチング素子のみでなく「温度検出素子」を備える旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点3]
固定強化用端子について、本願補正発明では、「上記スイッチング素子と接続する上記制御端子と、上記温度検出素子と接続する上記制御端子との間に配置」する旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定はなく、複数の制御端子の列の端子列軸線方向の両端部に設けられるものである点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
例えば原査定において提示した特開2009-194038号公報(特に段落【0023】?【0025】、図2、図6を参照)、さらには特開2006-332597号公報(段落【0002】、図8を参照)に記載されているように、半導体モジュールと当該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に複数個積層した積層体を構成した電力変換装置は周知であり、引用発明においても、このような半導体モジュールと冷却管とを交互に複数個積層した積層体を備えるものとすることは当業者であれば容易になし得ることである。

[相違点2]について
例えば上記特開2006-332597号公報の段落【0030】には、電力変換装置に用いられる各半導体モジュールに、IGBT等の半導体素子(スイッチング素子)の他に温度センサ素子を組み込むことが記載されており、引用発明においても、パワー半導体モジュール内にスイッチング素子の他に温度センサ素子を組み込むこと、すなわちパワー半導体モジュールに封止される半導体素子として、スイッチング素子のみでなく温度センサ素子も備えるものとすることは当業者が適宜なし得ることである。

[相違点3]について
上記「[相違点2]について」で検討したとおり、引用発明においても、パワー半導体モジュール内にスイッチング素子の他に温度センサ素子を組み込むことについては当業者が適宜なし得ることであるといえる。
しかしながら、そもそも引用発明における「ダミー端子」(本願補正発明でいう「固定強化用端子」)は、複数の制御用端子の列の端子列軸線方向の「両端部」に設けられることを前提とするものであるといえ、しかも、制御用端子に比べて太いまたは面積が広いものであることを考慮すると、「ダミー端子」をあえて制御端子と制御端子との間に配置すべき動機付けは見出し難く、引用発明からは、本願補正発明における「固定強化用端子を上記スイッチング素子と接続する上記制御端子と、上記温度検出素子と接続する上記制御端子との間に配置」するという発明特定事項を導き出すことはできない。
よって、少なくとも本願補正発明における上記発明特定事項については、引用発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものとすることはできない。

また、上記特開2009-194038号公報や上記特開2006-332597号公報、さらに原査定の拒絶の理由で提示された他の引用例(特開2007-134572号公報)のいずれにも、上記発明特定事項については記載も示唆もされていない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

また、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。

3.本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3.本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2015-04-16 
出願番号 特願2010-16359(P2010-16359)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 萩原 周治  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 井上 信一
関谷 隆一
発明の名称 電力変換装置  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 中村 広希  
代理人 大庭 弘貴  

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