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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1300300
審判番号 不服2014-4034  
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-03-03 
確定日 2015-04-30 
事件の表示 特願2009-196719「採用動画コミュニケーション支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月10日出願公開、特開2011- 48640〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年8月27日を出願日とする出願であって、平成25年8月29日付けで拒絶理由通知がなされ、平成25年11月5日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたが、平成25年11月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成26年3月3日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成26年3月3日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成26年3月3日付の手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正後の本願発明
平成26年3月3日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、補正前の平成25年11月5日付け手続補正による特許請求の範囲は、
「【請求項1】
求人者から特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
前記メッセージ動画付き説明資料データには、当該メッセージ動画付き説明資料データを第三者が閲覧できないようにするためのパスワードが設定されているとともに、特定の期間を経過したら当該メッセージ動画付き説明資料データに対するアクセスを不可能にするための閲覧可能期間が設定されており、
さらに、複数の前記メッセージ動画付き説明資料データを前記求人者のWebサイトにリンク付けすることによって、前記複数のメッセージ動画付き説明資料データで当該求人者のWebサイトのホームページを構成することを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項2】
前記メッセージ動画は、前記求人者が前記求職者と面接を行う段階である面接ステージより前の段階であって前記求人者と前記求職者とが相互理解を深める相互理解ステージにおいて、前記求人者に関する情報を前記特定の求職者に伝えるためのメッセージが動画で撮影されたものである、請求項1に記載の採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項3】
前記特定の求職者から前記求人者に向けたメッセージが動画で撮影された第2メッセージ動画を保存しておく第2メッセージ動画保存手段と、
前記第2メッセージ動画保存手段に保存された前記第2メッセージ動画に、前記求職者に関する情報または前記第2メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む第2説明テキストを合成して、前記求人者に向けた第2メッセージ動画付き説明資料データを生成する第2説明資料データ生成手段と、
前記求人者からの閲覧要求に応じて、前記第2メッセージ動画付き説明資料データを前記求人者へ配信する第2説明資料データ配信手段と、
を備える、請求項1または請求項2に記載の採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項4】
前記メッセージ動画は、カメラ機能付きの携帯型端末装置で撮影されたものである、請求項1?請求項3のいずれかに記載の採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項5】
前記メッセージ動画は、業務用カメラ装置で撮影されたものである、請求項1?請求項3のいずれかに記載の採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項6】
求人者から特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
前記メッセージ動画付き説明資料データには、当該メッセージ動画付き説明資料データが配信されるべき前記特定の求職者以外の第三者が閲覧できないようにするためのパスワードが設定されていることを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項7】
求人者から特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
前記メッセージ動画付き説明資料データには、特定の期間を経過したら当該メッセージ動画付き説明資料データに対するアクセスを不可能にするための閲覧可能期間が設定されていることを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項8】
求人者から特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
複数の前記メッセージ動画付き説明資料データを前記求人者のWebサイトにリンク付けすることによって、前記複数のメッセージ動画付き説明資料データで当該求人者のWebサイトのホームページを構成することを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。」
から、
「【請求項1】
採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する採用動画コミュニケーション支援システムであって、
求人者から不特定多数の求職者ではなく特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
前記メッセージ動画付き説明資料データには、当該メッセージ動画付き説明資料データを第三者が閲覧できないようにするためのパスワードが設定されているとともに、特定の期間を経過したら当該メッセージ動画付き説明資料データに対するアクセスを不可能にするための閲覧可能期間が設定されており、
さらに、複数の前記メッセージ動画付き説明資料データを前記求人者のWebサイトにリンク付けすることによって、前記複数のメッセージ動画付き説明資料データで当該求人者のWebサイトのホームページを構成することを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項2】
前記メッセージ動画は、前記求人者が前記求職者と面接を行う段階である面接ステージより前の段階であって前記求人者と前記求職者とが相互理解を深める相互理解ステージにおいて、前記求人者に関する情報を前記特定の求職者に伝えるためのメッセージが動画で撮影されたものである、請求項1に記載の採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項3】
前記特定の求職者から前記求人者に向けたメッセージが動画で撮影された第2メッセージ動画を保存しておく第2メッセージ動画保存手段と、
前記第2メッセージ動画保存手段に保存された前記第2メッセージ動画に、前記求職者に関する情報または前記第2メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む第2説明テキストを合成して、前記求人者に向けた第2メッセージ動画付き説明資料データを生成する第2説明資料データ生成手段と、
前記求人者からの閲覧要求に応じて、前記第2メッセージ動画付き説明資料データを前記求人者へ配信する第2説明資料データ配信手段と、
を備える、請求項1または請求項2に記載の採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項4】
前記メッセージ動画は、カメラ機能付きの携帯型端末装置で撮影されたものである、請求項1?請求項3のいずれかに記載の採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項5】
前記メッセージ動画は、業務用カメラ装置で撮影されたものである、請求項1?請求項3のいずれかに記載の採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項6】
採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する採用動画コミュニケーション支援システムであって、
求人者から不特定多数の求職者ではなく特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
前記メッセージ動画付き説明資料データには、当該メッセージ動画付き説明資料データが配信されるべき前記特定の求職者以外の第三者が閲覧できないようにするためのパスワードが設定されていることを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項7】
採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する採用動画コミュニケーション支援システムであって、
求人者から不特定多数の求職者ではなく特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
前記メッセージ動画付き説明資料データには、特定の期間を経過したら当該メッセージ動画付き説明資料データに対するアクセスを不可能にするための閲覧可能期間が設定されていることを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。
【請求項8】
採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する採用動画コミュニケーション支援システムであって、
求人者から不特定多数の求職者ではなく特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
複数の前記メッセージ動画付き説明資料データを前記求人者のWebサイトにリンク付けすることによって、前記複数のメッセージ動画付き説明資料データで当該求人者のWebサイトのホームページを構成することを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。」(なお、下線は変更箇所を示すものとして出願人が付与したものである。)
へと補正された。

2-2.補正の目的について
本件補正後の請求項1及び請求項6ないし8において、「採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する採用動画コミュニケーション支援システムであって」との記載を追加する補正は、補正前の「採用動画コミュニケーション支援システム」が「採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する」ものであるとの限定を加えるものである。
また、本件補正後の請求項1及び請求項6ないし8において、「不特定多数の求職者ではなく」との記載を追加する補正は、補正前の「特定の求職者」に「不特定多数の求職者ではなく」との限定を加えるものである。
よって、上記請求項1及び請求項6ないし8についての補正は、いずれも特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-3.独立特許要件について
そこで、本件補正後の前記請求項6に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)引用例
(1-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-38434号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。
(a)「【請求項5】
複数の求職者がそれぞれ使用する複数の第1の端末と、サーバと、複数の事業者の採用担当者がそれぞれ使用する複数の第2の端末との間で通信することにより、就職に関するデータを配信するためのシステムであって、
前記第2の端末が、
前記採用担当者の動画像及び音声を採取して動画像データを生成する第1の手段と、
前記動画像データに前記事業者に関するデータを同期編集付加した求人に関するデータを生成し、前記サーバに送信する第2の手段と、を具備し、
前記サーバが、前記第2の端末から受信した前記求人に関するデータを格納し、前記第1の端末からの配信要求に応じて、前記求人に関するデータを前記第1の端末に配信すること
を特徴とするシステム。」
(b)「【0002】
【従来の技術】
従来より、ネットワークを利用した求人又は求職が行われている。ネットワークを利用した求人としては、例えば、事業者が事業の内容、募集職種等のテキストをホームページに掲載することが行われていた。また、ネットワークを利用した求職としては、求職者が経歴、職歴、特技等のテキストを事業者に送信することが行われていた。
【0003】
しかしながら、上記のような従来の求人又は求職では、手続き、時間、及び、労力が、事業者の採用担当者及び求職者に必要となっていた。また、1つの求人に対して多数の求職者が応募する場合も多く、事業者の採用担当者が求人に応募した求職者の中から所望の人材を選択するためには、多大な時間とコストが必要であった。
【0004】
また、事業者の採用担当者には、求人に応募してきた求職者の情報が不足し、求人に応募した求職者には、事業者又は事業者の採用担当者の情報が不足していた。そのため、求職者が従業者として入社した後に、従業者の能力又は適性が業務に合致しないということが判明する場合があり、事業者及び従業者にとって不幸な結果が生ずる場合があった。さらに、事業者が、専門技術者を、必要なときに素早く探すことができないという場合があった。また、事業者が、要求する能力を有する者を採用することができない場合があった。また、求職者が、自己の能力を活かせる職を探すことができない場合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、求人に応募した求職者の中から所望の人材を選択するために必要な時間とコストを低減することができ、求職者が従業者として入社した後に、従業者の能力又は適性が業務に合致しないということが生ずることを防止することができる、就職に関するデータを配信するためのシステムを提供することを目的とする。」
(c)「【0022】
次に、本実施形態に係るデータを送信するためのシステムの動作について、図1?図7を参照しながら説明する。図6及び図7は、データを送信するためのシステムの第1のデータ送信処理を示すフローチャートである。
【0023】
まず、求職者が、自己の経歴、希望する仕事内容等を第1の端末(ここでは、第1の端末11とする)のビデオカメラ41及びマイクロフォン42に向かって話すと、第1の端末11のビデオカメラ41は、求職者の動画像をデータに変換し、第1の端末11のPC43に送信する。また、第1の端末11のマイクロフォン42は、求職者の音声をデータに変換し、PC43に送信する。第1の端末11のPC43のデータ生成部51は、ビデオカメラ41からのデータ及びマイクロフォン42からのデータを同期させた動画像データを生成し、さらに、この動画像データに求職者の経歴、事業者への要望に関するテキストを同期編集付加して求職に関するデータを生成し、ネットワーク通信部52に出力する(ステップS101)。
【0024】
第1の端末11のPC43のネットワーク通信部52は、データ生成部51から受け取った求職に関するデータを、第1のネットワークを介してサーバ31に送信する(ステップS102)。
サーバ31は、受信した求職に関するデータを格納する(ステップS201)。
【0025】
一方、事業者の採用担当者は、第2の端末(ここでは、第2の端末21とする)を用いて、求職に関するデータの送信をサーバ31に要求する(ステップS301)。なお、採用担当者が、求職に関するデータの送信要求とともに、採用基準等のデータを第2の端末21に入力し、第2の端末21が、採用基準等のデータをサーバ31に送信することとしても良い。
サーバ31は、第2の端末21から受信した求職に関するデータの送信要求に応じて、求職に関するデータを第2の端末21に送信する(ステップS202)。なお、サーバ31が、求職に関するデータの送信要求とともに採用基準等のデータを第2の端末21から受信した場合には、採用基準等に合致する求職に関するデータを抽出して第2の端末21に送信することとしても良い。
【0026】
第2の端末21のPC63のネットワーク通信部72は、サーバ31から受信した求職に関するデータをデータ処理部73に出力する。データ処理部73は、求職に関するデータに基づく画像を表示部74に表示させ、求職に関するデータに基づく音声をスピーカ75に出力させる(ステップS302)。なお、求職に関するデータに求職者の経歴等のテキストが同期編集付加されている場合には、このテキストをも表示部74に表示させることとしても良い。
【0027】
採用担当者は、求職者の画像を見るとともに求職者の音声を聞くことにより、求職者に関心を持った場合、事業者の事業内容、募集職種、待遇等を、第2の端末21のビデオカメラ61及びマイクロフォン62に向かって話す。第2の端末21のビデオカメラ61は、採用担当者の動画像をデータに変換し、第2の端末21のPC63に送信する。また、第2の端末21のマイクロフォン62は、採用担当者の音声をデータに変換し、PC63に送信する。第2の端末21のPC63のデータ生成部71は、ビデオカメラ61からのデータ及びマイクロフォン62からのデータを同期させた動画像データを生成する。そして、データ生成部71は、動画像データを含む電子メール、若しくは、動画像データのサーバへのアップロード又はダウンロードを行うためのURL(Uniform Resource Locator)、登録ID等のリンクアドレスを含む電子メール(以下、「採用担当者問い合わせメール」という)を生成して、ネットワーク通信部72に出力する(ステップS303)。なお、事業者の事業内容、募集職種、待遇等のテキストを前述した採用担当者問い合わせ動画像データに同期編集付加することとしても良い。
【0028】
第2の端末21のPC63のネットワーク通信部72は、データ生成部71から受け取った採用担当者問い合わせメールを、第2のネットワークを介してサーバ31に送信する(ステップS304)。
サーバ31は、受信した採用担当者問い合わせメールを第1の端末11に転送する(ステップS203)。
【0029】
第1の端末11のPC43のネットワーク通信部52は、サーバ31から受信した採用担当者問い合わせメールをデータ処理部53に出力する。データ処理部53は、採用担当者問い合わせメールに基づく画像を表示部54に表示させ、採用担当者問い合わせメールに基づく音声をスピーカ55に出力させる(ステップS103)。なお、事業者の事業内容、募集職種、待遇等のテキストが採用担当者問い合わせメールに付加されている場合には、このテキストをも表示部54に表示させることとしても良い。
【0030】
求職者は、採用担当者の画像を見るとともに採用担当者の音声を聞くことにより、事業者に関心を持った場合、採用担当者の問い合わせに対する回答を、第1の端末11のビデオカメラ41及びマイクロフォン42に向かって話す。第1の端末11のビデオカメラ41は、求職者の動画像を撮像してデータに変換し、第1の端末11のPC43に送信する。また、第1の端末11のマイクロフォン42は、求職者の音声を受信してデータに変換し、PC43に送信する。第1の端末11のPC43のデータ生成部51は、ビデオカメラ41からのデータ及びマイクロフォン42からのデータを同期させて動画像データを生成する。そして、データ生成部51は、動画像データを含む電子メール、若しくは、動画像データのサーバへのアップロード又はダウンロードを行うためのURL、登録ID等のリンクアドレスを含む電子メール(以下、「求職者回答メール」という)を生成して、ネットワーク通信部52に出力する(ステップS104)。
【0031】
第1の端末11のPC43のネットワーク通信部52は、データ生成部51から受け取った求職者回答メールを、第1のネットワークを介してサーバ31に送信する(ステップS105)。
サーバ31は、受信した求職者回答メールを第2の端末21に転送する(ステップS204)。
【0032】
第2の端末21のPC63のネットワーク通信部72は、サーバ31から受信した求職者回答メールをデータ処理部73に出力する。データ処理部73は、求職者回答メールに基づく画像を表示部74に表示させ、求職者回答メールに基づく音声をスピーカ75に出力させる(ステップS305)。
【0033】
なお、第1の端末11と第2の端末21との間のメールの送受信は、求職者及び採用担当者の双方が納得行くまで繰り返し行うこととしても良い。また、第1の端末11と第2の端末21との間のメールの送受信により、面接のアポイントメントを行うこととしても良い。
【0034】
このように、システム1によれば、求職者は、個性を活かした自己アピールをすることができ、採用担当者は、求職者の動画像及び音声を視聴することにより、求職者の能力又は適性が募集職種に合致するか否かの判断を行うことができる。これにより、採用担当者は、短時間で所望の人材を選択することができるので、求人に応募した求職者の中から所望の人材を選択するために必要な時間とコストを低減することができる。
また、採用担当者及び求職者は、面接を行う前に、面接を行ったと同様の情報を得ることができる。これにより、求職者が従業者として入社した後に、従業者の能力又は適性が業務に合致しないということが生ずることを防止することができる。」

以上(a)?(c)の記載から、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の求職者がそれぞれ使用する複数の第1の端末と、サーバと、複数の事業者の採用担当者がそれぞれ使用する複数の第2の端末との間で通信することにより、就職に関するデータを配信するためのシステムであって、
前記第2の端末が、
前記採用担当者の動画像及び音声を採取して動画像データを生成する第1の手段と、
前記動画像データに前記事業者に関するデータを同期編集付加した求人に関するデータを生成し、前記サーバに送信する第2の手段と、を具備し、
前記サーバが、前記第2の端末から受信した前記求人に関するデータを格納し、前記第1の端末からの配信要求に応じて、前記求人に関するデータを前記第1の端末に配信すること
を特徴とするシステムにおいて、
求職者が、自己の経歴、希望する仕事内容等を第1の端末のビデオカメラ及びマイクロフォンに向かって話すと、第1の端末のビデオカメラは、求職者の動画像をデータに変換し、第1の端末のPCに送信し、また、第1の端末のマイクロフォンは、求職者の音声をデータに変換し、PCに送信するものであり、第1の端末のPCのデータ生成部は、ビデオカメラからのデータ及びマイクロフォンからのデータを同期させた動画像データを生成し、さらに、この動画像データに求職者の経歴、事業者への要望に関するテキストを同期編集付加して求職に関するデータを生成し、ネットワーク通信部に出力し、第1の端末のPCのネットワーク通信部は、データ生成部から受け取った求職に関するデータを、サーバに送信し、サーバは受信した求職に関するデータを格納するものであり、
前記事業者の採用担当者は、前記第2の端末を用いて、求職に関するデータの送信を前記サーバに要求し、前記第2の端末は、サーバから受信した求職に関するデータに基づく画像を表示部に表示させ、求職に関するデータに基づく音声をスピーカに出力させ、
採用担当者は、求職者の画像を見るとともに求職者の音声を聞くことにより、求職者に関心を持った場合、事業者の事業内容、募集職種、待遇等を、前記第2の端末のビデオカメラ及びマイクロフォンに向かって話し、該第2の端末のビデオカメラは、採用担当者の動画像をデータに変換して該第2の端末のPCに送信し、また、該第2の端末のマイクロフォンは、採用担当者の音声をデータに変換してPCに送信するものであり、また、前記第2の端末のPCのデータ生成部は、ビデオカメラからのデータ及びマイクロフォンからのデータを同期させた動画像データを生成し、そして、該データ生成部は、動画像データのサーバへのアップロード又はダウンロードを行うためのURL(Uniform Resource Locator)、登録ID等のリンクアドレスを含む電子メール(以下、「採用担当者問い合わせメール」という)を生成して、ネットワーク通信部に出力するものであり、ここで、事業者の事業内容、募集職種、待遇等のテキストを前述した採用担当者問い合わせ動画像データに同期編集付加することとしても良いものであり、第2の端末のPCのネットワーク通信部は、データ生成部から受け取った採用担当者問い合わせメールをサーバに送信するものであり、
前記第1の端末のPCのネットワーク通信部は、サーバから受信した採用担当者問い合わせメールに基づく画像を表示部に表示させ、採用担当者問い合わせメールに基づく音声をスピーカに出力させ、なお、事業者の事業内容、募集職種、待遇等のテキストが採用担当者問い合わせメールに付加されている場合には、このテキストをも表示部に表示させることとしても良く、
求職者は、採用担当者の画像を見るとともに採用担当者の音声を聞くことにより、事業者に関心を持った場合、採用担当者の問い合わせに対する回答を、第1の端末のビデオカメラ及びマイクロフォンに向かって話し、該第1の端末のビデオカメラは、求職者の動画像を撮像してデータに変換し、該第1の端末のPCに送信し、また、第1の端末のマイクロフォンは、求職者の音声を受信してデータに変換し、PCに送信するものであり、該第1の端末のPCのデータ生成部は、ビデオカメラからのデータ及びマイクロフォンからのデータを同期させて動画像データを生成し、そして、データ生成部は、動画像データのサーバへのアップロード又はダウンロードを行うためのURL、登録ID等のリンクアドレスを含む電子メール(以下、「求職者回答メール」という)を生成して、ネットワーク通信部に出力するものであり、
前記第1の端末と前記第2の端末との間のメールの送受信は、求職者及び採用担当者の双方が納得行くまで繰り返し行うこととしても良く、
採用担当者及び求職者は、面接を行う前に、面接を行ったと同様の情報を得ることができ、これにより、求職者が従業者として入社した後に、従業者の能力又は適性が業務に合致しないということが生ずることを防止することができる、
システム。」

(1-2)原査定の拒絶の理由に周知例として引用された特開2005-228034号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。
(a)「【請求項1】
ユーザの端末から通信回線を介して接続可能なサーバを有し、
該サーバのデータベースには複数件の情報が記録されており、
該データベースに記録されている各情報には個別の閲覧キーを設定することができ、
該サーバの閲覧キー記録部には予めユーザ毎に利用できる閲覧キーが記録されており、
該サーバはユーザの端末から所定の情報の閲覧を求められた際に、該閲覧キー記録部を調べることにより該ユーザが該情報に対応する閲覧キーを取得していることを確認した上で該ユーザに該情報の閲覧をさせる
ことを特徴とする情報閲覧システム。」
(b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の情報の中から特定の情報を閲覧させる情報閲覧システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の情報をサーバに記録しておき、インターネットや専用回線等の通信回線を介して端末からサーバに記録されている情報を閲覧される情報閲覧システムは多く存在する。しかしサーバに記録した情報を誰にでも閲覧させることが好ましくなく、特定の者だけに閲覧を許可したい場合がある。
【0003】
その場合はID,パスワードを設定し、所定の認証を受けた者だけが閲覧できるようにされる。しかしこの場合、認証を受けた者は全ての情報を閲覧できるようになるが、認証を受けた者であっても特定の情報のみ閲覧させ、他の情報については閲覧を禁止したい場合がある。
【0004】
その場合には、ID、パスワードとは別に「閲覧キー」と呼ばれる認証手段を特定情報に設定し、閲覧者が閲覧キーをサーバに送信しなければその特定情報を閲覧できないようにすると良い。しかし情報毎に閲覧の可否を設定しようとすると情報毎に閲覧キーを設定しなければならなくなる。」
(c)「【0040】
閲覧キーは閲覧コードと閲覧パスワードとからなり、予め閲覧コードと閲覧パスワードとセットとして対応付けられている。そして、情報毎の所定の閲覧キーが存在すること、すなわち予め設定されている閲覧コードと閲覧パスワードとが揃っていることを条件として「鍵が開く」状態、つまり閲覧可能な状態とする。
・・・(中略)・・・
【0056】
本実施例では閲覧キーの閲覧パスワードについて有効期限を設定できるようにした。所定の期間を経過すると閲覧パスワードが変更され、変更前の閲覧パスワードがセットになっている閲覧キーでは閲覧できなくなるようにした。これは、契約更新を考慮したものであり、委託契約を更新した会員にだけ新しい閲覧パスワード、又は新しい閲覧パスワードが含まれた新しい閲覧キーを配布する。変更前の閲覧パスワードがセットになっている閲覧キーでは閲覧できなくなるので、委託契約の更新をしない会員は閲覧ができなくなる。」
(d)「【産業上の利用可能性】
【0078】
実施例では主に不動産情報の閲覧について説明したが、不動産情報に限らず他の分野の情報、例えば中古車情報、求人情報、求職情報、結婚相手紹介情報、派遣社員情報、取引情報等の閲覧にも利用可能である。」

以上(a)?(d)の記載から、周知例1には以下の技術(以下、「周知例1記載技術」という。)が記載されている。
「特定の者だけに閲覧を許可するために、情報に個別の閲覧キーを設定することにより、該閲覧キーを所有する者だけに閲覧を可能とする技術であり、求人情報及び求職情報の閲覧に利用可能である技術。」

(2)対比
本件補正発明と引用発明とを比較する。

(ア)引用発明の「複数の求職者がそれぞれ使用する複数の第1の端末と、サーバと、複数の事業者の採用担当者がそれぞれ使用する複数の第2の端末との間で通信することにより、就職に関するデータを配信するためのシステム」は、「求職者」と「事業者の採用担当者」との間で「就職に関するデータを配信する」ためのシステムであることから、引用発明の「求職者」及び「採用担当者」は、本件補正発明の「求職者」及び「求人者」に相当する。
(イ)引用発明の「前記採用担当者の動画像及び音声を採取して動画像データを生成する第1の手段」及び「採用担当者は、求職者の画像を見るとともに求職者の音声を聞くことにより、求職者に関心を持った場合、事業者の事業内容、募集職種、待遇等を、前記第2の端末のビデオカメラ及びマイクロフォンに向かって話し、該第2の端末のビデオカメラは、採用担当者の動画像をデータに変換して該第2の端末のPCに送信し、また、該第2の端末のマイクロフォンは、採用担当者の音声をデータに変換してPCに送信するものであり、また、前記第2の端末のPCのデータ生成部は、ビデオカメラからのデータ及びマイクロフォンからのデータを同期させた動画像データを生成し」との記載によれば、「採用担当者」は、「求職者」に対して事業者の事業内容、募集職種、待遇等について話し、それを動画として撮影するものであり、この事業者の事業内容、募集職種、待遇等について話しは、「求職者」に向けたメッセージであることは明らかである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「求人者から求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を生成する手段」
を備える点で共通する。
(ウ)引用発明の「前記動画像データに前記事業者に関するデータを同期編集付加した求人に関するデータを生成し、前記サーバに送信する第2の手段」及び「該データ生成部は、動画像データのサーバへのアップロード又はダウンロードを行うためのURL(Uniform Resource Locator)、登録ID等のリンクアドレスを含む電子メール(以下、「採用担当者問い合わせメール」という)を生成して、ネットワーク通信部に出力するものであり、ここで、事業者の事業内容、募集職種、待遇等のテキストを前述した採用担当者問い合わせ動画像データに同期編集付加することとしても良いものであり、第2の端末のPCのネットワーク通信部は、データ生成部から受け取った採用担当者問い合わせメールをサーバに送信するものであり」によれば、ここでは撮影により生成された動画像データに対して、「事業者の事業内容、募集職種、待遇等のテキスト」を同期編集付加したデータを生成しており、当該テキストは事業者の事業内容などの説明を行うテキストであるからこれも説明テキストであり、また、この動画像データと前記テキストを同期編集付加して生成したデータは、本件補正発明の「メッセージ動画付き説明資料データ」に相当するものといえる。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「前記メッセージ動画に、説明テキストを合成して、前記求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段」
を備える点で共通する。
(エ)引用発明の「前記サーバが、前記第2の端末から受信した前記求人に関するデータを格納し、前記第1の端末からの配信要求に応じて、前記求人に関するデータを前記第1の端末に配信する」及び「該データ生成部は、動画像データのサーバへのアップロード又はダウンロードを行うためのURL(Uniform Resource Locator)、登録ID等のリンクアドレスを含む電子メール(以下、「採用担当者問い合わせメール」という)を生成して、ネットワーク通信部に出力するものであり」によれば、「求職者」は第1の端末に配信された電子メールに記載されたURLにアクセスすることにより、前記動画像データの配信要求(閲覧要求)を行い、サーバは当該配信要求に応じて、当該動画像データを第1の端末に配信するものである。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記求職者へ配信する説明資料データ配信手段」
を備える点で共通する。
(オ)ここで、引用発明における「求職者」について詳細に検討する。
引用発明では、「前記事業者の採用担当者は、前記第2の端末を用いて、求職に関するデータの送信を前記サーバに要求し、前記第2の端末は、サーバから受信した求職に関するデータに基づく画像を表示部に表示させ、求職に関するデータに基づく音声をスピーカに出力させ」て、「採用担当者は、求職者の画像を見るとともに求職者の音声を聞くことにより、求職者に関心を持った場合」に動画像データを生成するものであり、「求職者に関心を持った場合」としているように、これは「特定の求職者」に対して動画像データを生成するものと認められる。
また、引用発明では「採用担当者」からの「動画像データのサーバへのアップロード又はダウンロードを行うためのURL(Uniform Resource Locator)、登録ID等のリンクアドレスを含む電子メール(以下、「採用担当者問い合わせメール」という)」を送信した後、「求職者」からも「動画像データのサーバへのアップロード又はダウンロードを行うためのURL、登録ID等のリンクアドレスを含む電子メール(以下、「求職者回答メール」という)」が送信され、さらに「前記第1の端末と前記第2の端末との間のメールの送受信は、求職者及び採用担当者の双方が納得行くまで繰り返し行うこととしても良く」、また、これにより「採用担当者及び求職者は、面接を行う前に、面接を行ったと同様の情報を得ることができ、これにより、求職者が従業者として入社した後に、従業者の能力又は適性が業務に合致しないということが生ずることを防止することができる」というものであることからも、引用発明における「求職者」は、「不特定多数の求職者ではなく特定の」者であることは明らかである。
そうすると、引用発明において、「採用担当者」により作成される動画像データの送信対象者である「求職者」は、本件補正発明の「不特定多数の求職者ではなく特定の求職者」又は「特定の求職者」に相当するものである。
(カ)引用発明のシステムは、就職つまり採用活動における「採用担当者」と「求職者」との間で、就職に関するデータ(動画像データにテキストを同期編集付加したデータ)によるやり取りを行うシステムであり、それにより「前記第1の端末と前記第2の端末との間のメールの送受信は、求職者及び採用担当者の双方が納得行くまで繰り返し行うこととしても良く」、また、「採用担当者及び求職者は、面接を行う前に、面接を行ったと同様の情報を得ることができ、これにより、求職者が従業者として入社した後に、従業者の能力又は適性が業務に合致しないということが生ずることを防止することができる」というのもであり、「採用担当者」と「求職者」との間での十分なコミュニケーションを前記データのやり取りにより支援するシステムである。
そうすると、引用発明の「システム」は、本件補正発明の「採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する採用動画コミュニケーション支援システム」に相当するものといえる。
(キ)以上のことから、本件補正発明と引用発明は、

「採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する採用動画コミュニケーション支援システムであって、
求人者から不特定多数の求職者ではなく特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を生成する手段と、
前記メッセージ動画に、説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
たことを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件補正発明では、「撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段」を備えており、「説明資料データ生成手段」では「前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画」に「説明テキストを合成」するものであるのに対し、引用発明ではそのような保存手段については記載がない点。

[相違点2]
本件補正発明の「説明テキスト」は、「前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む」ものであるのに対し、引用発明の「説明テキスト」は「事業者の事業内容、募集職種、待遇等」である点。

[相違点3]
本件補正発明では、「前記メッセージ動画付き説明資料データには、当該メッセージ動画付き説明資料データが配信されるべき前記特定の求職者以外の第三者が閲覧できないようにするためのパスワードが設定されている」のに対し、引用発明ではそのようになっていない点。

(3)当審の判断
(3-1)[相違点1]について
引用発明の「前記採用担当者の動画像及び音声を採取して動画像データを生成する第1の手段」及び「前記動画像データに前記事業者に関するデータを同期編集付加した求人に関するデータを生成し、前記サーバに送信する第2の手段」では、「該第2の端末のビデオカメラは、採用担当者の動画像をデータに変換して該第2の端末のPCに送信し、また、該第2の端末のマイクロフォンは、採用担当者の音声をデータに変換してPCに送信するものであり、また、前記第2の端末のPCのデータ生成部は、ビデオカメラからのデータ及びマイクロフォンからのデータを同期させた動画像データを生成」し、その後「事業者の事業内容、募集職種、待遇等のテキストを前述した採用担当者問い合わせ動画像データに同期編集付加する」処理を行うものであって、動画像データの生成と、テキストとの同期編集付加の処理は、それぞれ別々のタイミングで行われることは明らかであり、また、先に動画像データの生成が行われることから、生成される動画像データは、同期編集付加の処理が行われるまで、第2端末のPC内に保存しておくことになるのはコンピュータの技術常識からして当然のことであるから、引用発明においても前記動画像データを一旦保存するための保存手段、つまり本件補正発明の「撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段」を備えるものとすることになんの技術的困難性もない。
してみれば、引用発明において、生成した前記動画像データを一旦保存するための保存手段を備え、同期編集付加の処理を行う際に当該保存手段から読み出して処理を行うように構成することにより、上記相違点に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(3-2)[相違点2]について
引用発明の「事業者の事業内容」は、本件補正発明でいう「求人者に関する情報」の一種であるし、また、そもそも引用発明のシステムにおいても、どのような内容のテキストでも入力可能であることは明らかであって、「求職者」に対し有意と考えられる内容の選択に技術的な制約があるわけではないのであるから、「説明テキスト」として求職者に提供する情報を「前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む」ものとすることは、当業者であれば格別の技術的困難性なく適宜なし得た事項にすぎないから、この点で格別の技術的進歩性があるものではない。
(3-3)[相違点3]について
一般に、特定の者のみに情報の閲覧を許可する技術として、情報に対し閲覧キーを設定すること(上記「周知例1記載技術」を参照。)や、情報を暗号鍵を用いて暗号化すること(例えば、特開2006-185409号公報の「【請求項6】前記履歴書データベースに蓄積された履歴書データを、当該履歴書データに係る個人が選択する求人企業等に対して、該求人企業等において復号可能に提供する開示部と、前記選択された求人企業等が復号可能な暗号鍵を設定する暗号鍵設定部と、前記履歴書データを前記暗号鍵を用いて暗号化する暗号処理部とを有することを特徴とする請求項5に記載の代行処理システム。」、第【0089】段落、第【0107】-【0112】段落を参照。)は周知の技術であり、いわゆる第三者に対する個人情報の保護等に使用されるものであり、特に個人情報の提供がなされる求人、求職情報を扱うシステムにおいての適用が示唆されている。
そして、引用発明のシステムは、本件補正発明でいう「メッセージ動画付き説明資料データ」のやり取りにより、「前記第1の端末と前記第2の端末との間のメールの送受信は、求職者及び採用担当者の双方が納得行くまで繰り返し行うこととしても良く」、また、「採用担当者及び求職者は、面接を行う前に、面接を行ったと同様の情報を得ることができ、これにより、求職者が従業者として入社した後に、従業者の能力又は適性が業務に合致しないということが生ずることを防止することができる」というのもであり、ここでやり取りされる「メッセージ動画付き説明資料データ」は、一般に非公開である面接での応対内容に相当するものであり、「求職者」に関する個人情報が含まれることも明らかであることから、当該「メッセージ動画付き説明資料データ」は第三者に対して保護が必要なデータであることは当業者であれば自明である。
してみれば、第三者に対して保護が必要なデータである「メッセージ動画付き説明資料データ」に対して上記周知技術を適用し、第三者が閲覧できないようにするために、上記閲覧キーや暗号鍵に相当するパスワードを当該「メッセージ動画付き説明資料データ」に設定することにより、上記相違点3に係る構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
(3-4)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願の請求項に係る発明について
平成26年3月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年11月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項6】
求人者から特定の求職者に向けたメッセージが動画で撮影されたメッセージ動画を保存しておくメッセージ動画保存手段と、
前記メッセージ動画保存手段に保存された前記メッセージ動画に、前記求人者に関する情報または前記メッセージ動画の内容を補足する情報を少なくとも含む説明テキストを合成して、前記特定の求職者に向けたメッセージ動画付き説明資料データを生成する説明資料データ生成手段と、
前記特定の求職者からの閲覧要求に応じて、前記メッセージ動画付き説明資料データを前記特定の求職者へ配信する説明資料データ配信手段と、
を備え、
前記メッセージ動画付き説明資料データには、当該メッセージ動画付き説明資料データが配信されるべき前記特定の求職者以外の第三者が閲覧できないようにするためのパスワードが設定されていることを特徴とする採用動画コミュニケーション支援システム。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2-3(1)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2-3で検討した本件補正発明から「採用活動における求人者と求職者との間のコミュニケーションを支援する採用動画コミュニケーション支援システムであって」及び「不特定多数の求職者ではなく」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2-3(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術の作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-02-26 
結審通知日 2015-03-03 
審決日 2015-03-16 
出願番号 特願2009-196719(P2009-196719)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 小田 浩
金子 幸一
発明の名称 採用動画コミュニケーション支援システム  
代理人 大野 聖二  
代理人 森田 耕司  
代理人 津田 理  
代理人 加藤 真司  
代理人 鈴木 守  

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